JP2014022523A - 面発光レーザ素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】信頼性が高い面発光レーザ素子を提供すること。
【解決手段】光共振器を構成する第1の反射鏡および第2の反射鏡と、前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に配置された活性層と、前記第2の反射鏡と前記活性層との間に配置され、電流注入部と選択酸化熱処理によって前記電流注入部の外周に形成された選択酸化層とを有する電流狭窄層と、前記活性層と前記電流狭窄層との間に配置され、前記活性層からオーバーフローした少数キャリアに対してエネルギー障壁となるキャリア障壁層と、を備える面発光レーザ素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、面発光レーザ素子に関するものである。
選択酸化層を含む電流狭窄層を用いた面発光レーザ素子が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。選択酸化層は、アルミニウム(Al)を含むAl含有半導体層をメサポスト構造の外周側から選択酸化熱処理することによって形成される。Al含有半導体層の選択酸化された領域では、Alが酸化されて絶縁体であるAlが形成され、その内側にはAl含有半導体層が残存して電流経路が形成される。これによって、電流狭窄構造が実現される。
特開2011−14793号公報
面発光レーザ素子の実使用においては、信頼性が高いことが要求されている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、信頼性が高い面発光レーザ素子を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る面発光レーザ素子は、光共振器を構成する第1の反射鏡および第2の反射鏡と、前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に配置された活性層と、前記第2の反射鏡と前記活性層との間に配置され、電流注入部と選択酸化熱処理によって前記電流注入部の外周に形成された選択酸化層とを有する電流狭窄層と、前記活性層と前記電流狭窄層との間に配置され、前記活性層からオーバーフローした少数キャリアに対してエネルギー障壁となるキャリア障壁層と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層と前記活性層側で隣接する半導体層よりもバンドギャップエネルギーが高い半導体材料からなることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記半導体層よりもAl組成が高い半導体材料からなることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層は、選択酸化熱処理によって前記電流狭窄層を形成するためのAl含有半導体層よりも酸化レートが低くなるように、前記Al組成および/または層厚が設定されていることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層のAl組成は前記Al含有半導体層のAl組成と同じまたはより高いことを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層の層厚は20nm以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層は、前記光共振器内でレーザ光が形成する光の定在波の節の位置に配置されることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層は、前記定在波の節のうち、前記活性層側から1番目の節の位置に配置されることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記電流狭窄層は、前記定在波の節のうち、前記活性層側から2番目の節の位置に配置されることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記電流狭窄層と前記キャリア障壁層とは層厚方向において100nm以上離れていることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記少数キャリアは電子であり、前記キャリア障壁層はp型にドーピングされていることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記発明において、前記キャリア障壁層の少数キャリア濃度は、前記半導体層の少数キャリア濃度よりも1桁以上高いことを特徴とする。
本発明によれば、信頼性が高い面発光レーザ素子を実現できるという効果を奏する。
図1は、実施の形態1に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。 図2は、キャリア障壁層が無い面発光レーザ素子のエネルギーバンドおよびキャリアの流れを示す図である。 図3は、実施の形態1に係る面発光レーザ素子のエネルギーバンドおよびキャリアの流れを示す図である。 図4は、さまざまなAl組成および層厚を持つAlGaAs層の酸化レートを示す図である。 図5は、実施の形態2に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。 図6は、実施の形態2に係る面発光レーザ素子のエネルギーバンドおよびキャリアの流れを示す図である。
以下に、図面を参照して本発明に係る面発光レーザ素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図1に示すように、面発光レーザ素子100は、面方位(001)のn型GaAsからなる基板1上に積層された、第1の反射鏡として機能するアンドープの下部DBR(Distributed Bragg Reflector)ミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、キャリア障壁層8、p型スペ−サ層9、電流狭窄層10、p型スペーサ層11、p型コンタクト層12、p側電極13、位相調整層14、および第2の反射鏡として機能する上部誘電体DBRミラー15を備える。
p型コンタクト層12およびn型コンタクト層3は、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー15との間に配置されている。活性層6は、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー15との間に配置されている。電流狭窄層10は、p型コンタクト層12と活性層6との間に配置されている。キャリア障壁層8は、電流狭窄層10と活性層6との間に配置されている。p型スペーサ層9、11は、それぞれキャリア障壁層8と電流狭窄層10との間、および電流狭窄層10とp型コンタクト層12との間に介挿されている。p側電極13はp型コンタクト層12上に形成され、n側電極4はn型コンタクト層3上に形成されている。
n型クラッド層5からp型コンタクト層12までの積層構造は、エッチング処理等によって柱状に成形されたメサポストMとして形成されている。メサポスト径はたとえば直径30μmである。また、n型コンタクト層3はメサポストMの外周側に延設している。また、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー15とは光共振器を構成している。
下部DBRミラー2は、n型GaAs基板1上に積層されたアンドープGaAsバッファ層(不図示)上に形成される。下部DBRミラー2は、低屈折率層として機能するAl0.9Ga0.1As層と、高屈折率層として機能するGaAs層とを1ペアとする複合半導体層がたとえば40.5ペア積層された、周期構造を有する半導体多層膜ミラーとして形成されている。下部DBRミラー2の複合半導体層を構成する各層の層厚は、λ/4n(λ:レーザ発振波長、n:屈折率)である。たとえば、λが1.06μmの場合、Al0.9Ga0.1As層の層厚は約88nmであり、GaAs層の層厚は約76nmである。
n型コンタクト層3およびn型クラッド層5は、n型GaAsを材料として形成される。
p型クラッド層7は、p型AlGaAsを材料として形成される(たとえば、Al0.3Ga0.7Asが望ましい)。p型スペーサ層9、11は、p型AlGaAsを材料として形成される。p型コンタクト層12は、p型GaAsを材料として形成される。
p型クラッド層7、p型スペーサ層9、11のキャリア濃度は、p型ドーパントによる吸収損失の増加を防ぐため、たとえば3×1017cm−3程度となっている。また、n型クラッド層5、n型コンタクト層3、p型コンタクト層12のキャリア濃度はたとえばそれぞれ1×1018cm−3、2×1018cm−3、3×1019cm−3程度である。
下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー15とに挟まれたn型コンタクト層3、n型クラッド層5、p型クラッド層7、およびp型スペ−サ層9、11は、活性層6の位置に光共振器内でレーザ光が形成する光の定在波の腹が形成され、キャリア障壁層8および電流狭窄層10の位置に定在波の節が形成されるように調整されている。
電流狭窄層10は、電流注入部としての開口部10aと電流狭窄部としての選択酸化層10bとから構成されている。開口部10aはAl1−xGaAs(0≦x<0.1)からなり、選択酸化層10bは(Al1−xGaからなる。なお、xはたとえば0.02である。
電流狭窄層10は、Al1−xGaAsからなるAl含有半導体層を選択酸化熱処理することによって形成される。すなわち、選択酸化層10bは、このAl含有半導体層がメサポストMの外周部から積層面に沿って所定範囲だけ酸化されることで、開口部10aの外周にリング状に形成されている。選択酸化層10bは、絶縁性を有し、p側電極13から注入される電流を狭窄して開口部10a内に集中させることで、開口部10aの直下における活性層6に注入される電流密度を高める機能を有する。開口部10aの開口径はたとえば6μmであるが、高速動作と信頼性の観点では、たとえば4μm〜15μmが好ましい。さらに、高次の横モード発振を抑制するためには、たとえば4μm〜8μmがさらに好ましい。
キャリア障壁層8は、キャリア障壁層8を挟むp型クラッド層7およびp型スペーサ層9よりもAl組成が高いp型AlGaAsを材料として形成される。たとえば、p型クラッド層7およびp型スペーサ層9がAl0.3Ga0.7Asからなる場合、キャリア障壁層8はAl組成yが0.3(30%)より高いAlGa1−yAsからなる。
活性層6は、井戸層と障壁層とが交互に積層した多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)層の両側を分離閉じ込め(Separate Confinement Heterostructure)層で挟んだMQW−SCH構造を有する。なお、井戸層は所望の波長の光を放出するように選択される材料からなり、たとえばGaInAs系の半導体材料からなる。障壁層はたとえばGaAsからなる。この活性層6は、p側電極13から注入されて電流狭窄層10によって狭窄された電流により、たとえば1.0μm〜1.1μm(1.0μm帯とする)の波長の光を含む自然放出光を発するようにその半導体材料の組成および層厚が設定されている。
上部誘電体DBRミラー15は、低屈折率層として機能するSiO2層と、高屈折率層として機能するSiNx層とを1ペアとする複合誘電体層がたとえば9ペア積層された、周期構造を有する誘電体多層膜ミラーとして形成されており、下部DBRミラー2と同様に各層の層厚がλ/4nとされている。
p側電極13は、p型コンタクト層12の外延に沿ってリング状に形成されている。一方、n側電極4は、メサポストMの外周側に延設したn型コンタクト層3の延設部分の表面に形成され、メサポストMの周囲を取り囲むようにC字状に形成されている。
位相調整層14は、SiNxなどの誘電体からなり、上部誘電体DBRミラー15の直下に形成されている。この位相調整層14は、その層厚の調整によって、p型コンタクト層12が光の定在波の節に位置し、上部誘電体DBRミラー15の最下面が定在波の腹に位置するように調整する機能を有する。
つぎに、この面発光レーザ素子100の動作について説明する。はじめに、不図示のレーザ制御器が、p側電極13とn側電極4との間にバイアス電圧および変調電圧を印加し電流を注入する。p側のキャリア(ホール)は、p型コンタクト層12では層内を紙面横方向に流れ、その後p型スペーサ層11を通過し、電流狭窄層10の開口部10a内に集中して密度が高められた状態で、活性層6に注入される。一方、n側のキャリア(電子)については、n側電極4からn型コンタクト層3、n型クラッド層5を通過して、活性層6に注入される。
このように、本実施の形態1に係る面発光レーザ素子100は、p側のキャリアおよびn側のキャリアのいずれもが、DBRミラーを経由しないで活性層に注入される、いわゆるダブルイントラキャビティ構造を有する。
キャリアが注入された活性層6は、自然放出光を発生する。発生した自然放出光は、活性層6の光増幅作用と光共振器の作用とによって、1.0μm波長帯のいずれかの波長においてレーザ発振する。その結果、この面発光レーザ素子100は、上部誘電体DBRミラー15上から変調信号を含むレーザ信号光を出力する。レーザ発振時には光共振器内にはレーザ光の定在波が形成されている。
ここで、本発明者らが、信頼性が高い面発光レーザ素子を実現すべく鋭意検討を行ったところ、従来構成の面発光レーザ素子においては、活性層に注入された電子がオーバーフローして選択酸化層に到達し、面発光レーザ素子の信頼性を低下させる場合が有ることを発見した。
図2は、キャリア障壁層が無い以外は実施の形態1に係る面発光レーザ素子と同様の構成を有する面発光レーザ素子のエネルギーバンドおよびキャリアの流れを示す図である。符号VBは価電子帯、符号CBは伝導帯を示している。また、活性層6は、井戸層と障壁層とが交互に積層したMQW層6bと、MQW層6bを挟むn側SCH層6a、p側SCH層6cとで構成されている。
p側から注入されたホールHとn側から注入された電子E1とはそれぞれ活性層6に注入されるが、電子E1の一部である電子E2は、活性層6からオーバーフローし、少数キャリアとしてp型半導体層に流れ、選択酸化層10bに到達する。電子E2は選択酸化層10b近傍においてホールHの一部と非発光再結合する場合がある。
ここで、選択酸化層10bは、Alが酸化して酸化物が形成される際の体積収縮に起因して、内部に応力歪が発生し、歪応力が周辺に及んでいる。このため、選択酸化層10b近傍でキャリアの非発光再結合が生じると、その周辺の半導体結晶の欠陥の増殖が誘発される。このような結晶欠陥の増殖は素子の信頼性を低下させ、さらには、結晶欠陥が活性層6まで到達すると素子が故障する場合がある。
これに対して、図3は、実施の形態1に係る面発光レーザ素子100のエネルギーバンドおよびキャリアの流れを示す図である。図3に示すように、面発光レーザ素子100では、活性層6と選択酸化層10bとの間にキャリア障壁層8が配置されている。キャリア障壁層8は、電子E2が選択酸化層10bに到達するのを抑制または防止するエネルギー障壁として機能する。これによって、電子E2の選択酸化層10b近傍における非発光再結合、および非発光再結合に起因する結晶欠陥の増殖が抑制または防止される。その結果、面発光レーザ素子100の信頼性は大幅に向上する。
特に、面発光レーザ素子100の高出力化のために駆動電流密度として5kA/cm程度以上の比較的大きな電流を注入する場合は、オーバーフローする電子E2の量も多くなる。そのため、電子E2が選択酸化層10bに到達するのをキャリア障壁層8によって抑制または防止することによる、素子の信頼性を向上させる効果はよりいっそう顕著になる。
つぎに、キャリア障壁層8の好ましい特性について説明する。まず、キャリア障壁層8の伝導帯の下端(Conduction Band Minimum:CBM)のエネルギーレベルがキャリア障壁層8と活性層6側で隣接する半導体層(面発光レーザ素子100ではp型クラッド層7)のCBMのエネルギーレベルよりも高いことが、電子に対するエネルギー障壁となるために好ましい。たとえば、キャリア障壁層8のバンドギャップエネルギーをp型クラッド層7のバンドギャップエネルギーよりも大きくすれば、キャリア障壁層8のCBMのエネルギーレベルをp型クラッド層7のCBMのエネルギーレベルよりも高くすることが容易にできる。なお、上述したように、キャリア障壁層8がp型クラッド層7よりもAl組成が高いp型AlGaAsを材料として形成されることによって、キャリア障壁層8のバンドギャップエネルギーがp型クラッド層7のバンドギャップエネルギーよりも大きくなる。さらに、p型AlGaAsのAl組成が高い方が、バンドギャップエネルギーを大きくできるので、電子に対する障壁効果を高くすることができる。電子に対する障壁効果を高める観点では、p型クラッド層7とキャリア障壁層8との伝導帯でのヘテロ障壁の高さΔEcは大きいほど良いが、目安として室温の熱エネルギー(約26meV)よりも十分大きい100meV程度以上にするとよい。たとえば、p型クラッド層7およびp型スペーサ層9がAl0.3Ga0.7Asの場合、キャリア障壁層8のAl組成yが0.41より高いAlGa1−yAsとすると、ΔEcが100meV以上となるので電子に対する障壁効果を得ることができる。更にキャリア障壁層8のAl組成yを0.7程度にすると、ΔEcが約400meV程度と大きいため、電子に対する非常に大きな障壁効果を得ることが可能である。ここで、伝導帯と価電子帯のバンドオフセット比はΔEc:ΔEv=0.65:0.35を用いた。
また、キャリア障壁層8がp型になるようにドーピングを行うことによって、フェルミ面が移動するため、キャリア障壁層8のCBMのエネルギーレベルがよりいっそう高くなって電子E2に対する障壁効果を高めることができる。また、CBMのエネルギーレベルが高くなるのに伴って、価電子帯の上端(Valence Band Maximum:VBM)のエネルギーレベルも高くなるので、多数キャリアとしてのホールHに対する障壁効果を小さくすることができる。その結果、ホールHを活性層6に注入する際の電気抵抗が小さくなる。p型のドーピングとしては、たとえば亜鉛(Zn)やカーボン(C)やマグネシウム(Mg)等のp型ドーパントを、約1×1018cm−3またはそれ以上のキャリア濃度となるようにドーピングすればよい。
ただし、キャリア障壁層8のAl組成が高い場合は、電流狭窄層10を形成するためのAl含有半導体層を選択酸化熱処理して選択酸化層10bを形成する際に、キャリア障壁層8もメサポストMの外周側から選択酸化される場合がある。キャリア障壁層8が電流狭窄層10の開口部10aよりも内側まで酸化されてしまうと、電流狭窄層10の開口部10aにより形成される電流経路の障害となるおそれ、および信頼性低下を引き起こすおそれがある。このような問題を避けるために、キャリア障壁層8の酸化レートはAl含有層の酸化レートよりも低いことが好ましい。
キャリア障壁層8の酸化レートをAl含有層の酸化レートよりも低くするためには、キャリア障壁層8のAl組成をAl含有層のAl組成よりも低くする、および/または、キャリア障壁層8の層厚をAl含有層の層厚よりも薄くするのが好ましい。
図4は、さまざまなAl組成および層厚を持つAlGaAs層を水蒸気雰囲気中において約450℃で熱処理を行って酸化反応させた場合の酸化レートを示す図である。図4に示すように、AlGaAs層において、Al組成を低くする、および/または、層厚を薄くすることによって、酸化レートを低くすることができる。
図4に示すようにAl組成を94%以下にすると酸化レートが非常に低くなるため、Al含有半導体層との間で酸化レートに差がつけやすい。
また、図4に示すように、酸化レートは層厚が20nm以下では急激に低くなるので、キャリア障壁層8の層厚を20nm以下として、Al含有半導体層の層厚をキャリア障壁層8の層厚よりも厚くすれば、キャリア障壁層8とAl含有半導体層との間で酸化レートに差をつけやすいので好ましい。なお、酸化レートに必要な差をつけることができるのであれば、キャリア障壁層8のAl組成をAl含有層のAl組成と同じまたはそれ以上としてもよい。また、キャリア障壁層8の層厚は、10nm以上であれば、障壁機能を十分に発揮できるので好ましい。一方、Al含有半導体層の層厚としては、たとえば20nm〜60nmとすることができる。
なお、開口部10aと、キャリア障壁層8において選択酸化された領域との面方向における距離が、5μm程度以上離れていれば、選択酸化された領域が開口部10aを流れる電流に悪影響をおよぼすことがより確実に防止され好ましい。たとえば、キャリア障壁層8の酸化レートがAl含有半導体層の酸化レートの1/2以下であれば、開口部10aと、キャリア障壁層8において選択酸化された領域との面方向における距離を容易に離すことができるので好ましい。
つぎに、キャリア障壁層8および電流狭窄層10の好ましい配置について説明する。上述したように、キャリア障壁層8および電流狭窄層10は、下部DBRミラー2と上部誘電体DBRミラー15とで構成される光共振器内でレーザ光が形成する光の定在波の節の位置に配置されている。光強度が弱い節の位置にキャリア障壁層8を配置することによって、キャリア障壁層8が高濃度にp型にドーピングされたとしても、光吸収のあるp型ドーパントによる光吸収損失に起因する閾値電流上昇や発光効率低下が抑制される。
また、電流狭窄層10についても、多数キャリアとしてのホールHの障壁となることを抑制するためにp型にドーピングする場合が多いが、定在波の節の位置に配置されることによって、上記と同様に、閾値電流上昇や発光効率低下が抑制される。また、電流狭窄層10が定在波の節の位置に配置されることによって、電流狭窄層10による横方向の光閉じ込め効果が過度に強くなることが防止され、高次の横モードの発振が抑制される。
さらに、活性層6側から定在波の1番目の節の位置(活性層6の中心からλ/4n離れた位置)にキャリア障壁層8を配置し、2番目の節の位置(活性層6の中心から3λ/4n離れた位置)に電流狭窄層10を配置することが好ましい。これによって、活性層6と電流狭窄層10とが近接して電流狭窄の効果がより効果的に発揮されるとともに、面発光レーザ素子100の共振器長を短くすることができるので、光子寿命が小さくなり、より高速な応答特性を実現することができる。
また、このようにキャリア障壁層8と電流狭窄層10が離隔していれば、電流狭窄層10の応力歪のキャリア障壁層8への影響が小さいので、キャリア障壁層8近傍での非発光再結合による結晶欠陥の増殖が抑制されるので好ましい。なお、電流狭窄層10の層厚が30nmの場合、応力歪のおよぶ範囲は層厚方向の中心から100nm程度の距離の範囲内である。波長λを1060nm、屈折率nを3.5とした場合に、上記のように活性層6の中心からλ/4n(約70nm)離れた位置にキャリア障壁層8を配置し、活性層6の中心から3λ/4n(約210nm)離れた位置に電流狭窄層10を配置した場合、キャリア障壁層8と電流狭窄層10との層厚方向の距離は約140nmである。この場合、キャリア障壁層8(更に厳密にいうとキャリア障壁層8の活性層6側の境界面)は電流狭窄層10の応力歪のおよぶ距離(たとえば100nm)以上に電流狭窄層10から離れているので好ましい。
以上説明したように、本実施の形態1に係る面発光レーザ素子100は、信頼性が高いものである。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図5に示すように、面発光レーザ素子200は、図1に示す面発光レーザ素子100において、キャリア障壁層8をキャリア障壁層28に置き換えた構成を有する。
キャリア障壁層28は、キャリア障壁層28を挟むp型クラッド層7およびp型スペーサ層9と同じp型AlGaAsを材料として形成されるが、p型クラッド層7およびp型スペーサ層9よりも高濃度にp型にドーピングされている。キャリア障壁層28のキャリア濃度は、p型クラッド層7およびp型スペーサ層9のキャリア濃度より大きければ少数キャリアとしての電子に対するエネルギー障壁作用があるが、十分な効果を得るには1桁程度以上高い値にするとよい。例えばキャリア濃度が3×1018cm−3程度となるようにp型にドーピングしてよい。キャリア障壁層28のキャリア濃度が高いほど障壁効果は高まるが、一方で光の吸収損失は増加する。高いキャリア濃度でも吸収損失を抑えるためには、キャリア障壁層28をレーザ光が形成する光の定在波の節に配置したり、ドーピングプロファイルをできるだけ急峻にしたりするとよい。吸収損失が許容されるのであれば、キャリア障壁層28のキャリア濃度は1×1020cm−3程度まで増加させてもよい。
キャリア障壁層28のバンドギャップエネルギーは、p型クラッド層7およびp型スペーサ層9と同じである。しかしながら、キャリア障壁層28が高濃度にp型にドーピングされていることによって、フェルミ面が移動するため、キャリア障壁層28のCBMのエネルギーレベルがp型クラッド層7およびp型スペーサ層9のCBMのエネルギーレベルよりも高くなる。これによって、キャリア障壁層28は少数キャリアとしての電子に対するエネルギー障壁効果を発揮する。
図6は、実施の形態2に係る面発光レーザ素子のエネルギーバンドおよびキャリアの流れを示す図である。図6に示すように、キャリア障壁層28は、電子E2に対しては選択酸化層10bに到達するのを抑制または防止するエネルギー障壁として機能するが、多数キャリアとしてのホールHが活性層6に注入される際の障壁とはならない。したがって、ホールHを活性層6に注入する際の電気抵抗が高くならないので好ましい。
なお、本発明は、イントラキャビティ構造でない面発光レーザ素子にも適用できる。すなわち、活性層に注入されるキャリアが、下部DBRミラーおよび/または上下部DBRミラーのそれぞれを経由して活性層に注入される構造の面発光レーザ素子にも本発明は適用できる。
また、上記実施の形態では、活性層の下部にn型半導体層が配置され、活性層の上部にp型半導体層が配置されているが、活性層の上部にn型半導体層が配置され、活性層の下部にp型半導体層が配置されていてもよい。
また、上記実施の形態では、キャリア障壁層は活性層に対してp型半導体層側に配置され、少数キャリアとしての電子に対するエネルギー障壁となっているが、キャリア障壁層を活性層に対してn型半導体層側に配置し、少数キャリアとしてのホールに対するエネルギー障壁として機能させてもよい。この場合、たとえばキャリア障壁層をn型にドーピングすることによって、ホールに対する障壁効果を高くできる。
また、上記実施の形態では、1.0μm波長帯用にその化合物半導体の材料、サイズ等が設定されている。しかしながら、各材料やサイズ等は、所望のレーザ光の発振波長に応じて適宜設定されるものであり、特に限定はされない。たとえば、各半導体層を構成する半導体材料としてInP系の材料を用いてもよい。この場合、Al含有層やキャリア障壁層はInAlAs層で構成することができる。
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
1 基板
2 下部DBRミラー
3 n型コンタクト層
4 n側電極
5 n型クラッド層
6 活性層
7 p型クラッド層
8、28 キャリア障壁層
9、11 p型スペーサ層
10 電流狭窄層
10a 開口部
10b 選択酸化層
12 p型コンタクト層
13 p側電極
14 位相調整層
15 上部誘電体DBRミラー
100、200 面発光レーザ素子
CB 伝導帯
E1、E2 電子
H ホール
M メサポスト
VB 価電子帯

Claims (13)

  1. 光共振器を構成する第1の反射鏡および第2の反射鏡と、
    前記第1の反射鏡と前記第2の反射鏡との間に配置された活性層と、
    前記第2の反射鏡と前記活性層との間に配置され、電流注入部と選択酸化熱処理によって前記電流注入部の外周に形成された選択酸化層とを有する電流狭窄層と、
    前記活性層と前記電流狭窄層との間に配置され、前記活性層からオーバーフローした少数キャリアに対してエネルギー障壁となるキャリア障壁層と、
    を備えることを特徴とする面発光レーザ素子。
  2. 前記キャリア障壁層は、前記キャリア障壁層と前記活性層側で隣接する半導体層よりもバンドギャップエネルギーが高い半導体材料からなることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
  3. 前記キャリア障壁層と、前記半導体層との伝導帯のエネルギー障壁差が100meV以上であることを特徴とする請求項2に記載の面発光レーザ素子。
  4. 前記キャリア障壁層は、前記半導体層よりもAl組成が高い半導体材料からなることを特徴とする請求項2または3に記載の面発光レーザ素子。
  5. 前記キャリア障壁層は、選択酸化熱処理によって前記電流狭窄層を形成するためのAl含有半導体層よりも酸化レートが低くなるように、前記Al組成および/または層厚が設定されていることを特徴とする請求項4に記載の面発光レーザ素子。
  6. 前記キャリア障壁層のAl組成は前記Al含有半導体層のAl組成と同じまたはより高いことを特徴とする請求項5に記載の面発光レーザ素子。
  7. 前記キャリア障壁層の層厚は20nm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の面発光レーザ素子。
  8. 前記キャリア障壁層は、前記光共振器内でレーザ光が形成する光の定在波の節の位置に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
  9. 前記キャリア障壁層は、前記定在波の節のうち、前記活性層側から1番目の節の位置に配置されることを特徴とする請求項8に記載の面発光レーザ素子。
  10. 前記電流狭窄層は、前記定在波の節のうち、前記活性層側から2番目の節の位置に配置されることを特徴とする請求項9に記載の面発光レーザ素子。
  11. 前記電流狭窄層と前記キャリア障壁層とは層厚方向において100nm以上離れていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
  12. 前記少数キャリアは電子であり、前記キャリア障壁層はp型にドーピングされていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
  13. 前記キャリア障壁層のキャリア濃度は、前記半導体層のキャリア濃度よりも1桁以上高いことを特徴とする請求項2を引用する請求項12に記載の面発光レーザ素子。
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