JP2013197377A - 面発光レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速変調と伝送特性とを両立できる面発光レーザ素子を提供すること。
【解決手段】高屈折率層と低屈折率層の周期構造から構成され、光共振器を構成している下部多層膜反射鏡および上部多層膜反射鏡と、下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡との間に形成された活性層と、上部多層膜反射鏡と活性層との間に形成された、電流注入部と選択酸化熱処理によって電流注入部の外周に形成された電流狭窄部とを有する電流狭窄層と、上部多層膜反射鏡の直下に形成された、表面に凹部を有する屈折率差調整層と、を備え、凹部は、電流注入部の外径と略一致する内径を有するとともに、電流狭窄層と屈折率差調整層との積層方向から見た場合に電流注入部と略重なるように形成され、凹部の形成によって、光共振器内の、電流注入部に対応する領域における実効屈折率から、電流狭窄部に対応する領域における実効屈折率を引いた屈折率差が小さくなる。
【選択図】図1
【解決手段】高屈折率層と低屈折率層の周期構造から構成され、光共振器を構成している下部多層膜反射鏡および上部多層膜反射鏡と、下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡との間に形成された活性層と、上部多層膜反射鏡と活性層との間に形成された、電流注入部と選択酸化熱処理によって電流注入部の外周に形成された電流狭窄部とを有する電流狭窄層と、上部多層膜反射鏡の直下に形成された、表面に凹部を有する屈折率差調整層と、を備え、凹部は、電流注入部の外径と略一致する内径を有するとともに、電流狭窄層と屈折率差調整層との積層方向から見た場合に電流注入部と略重なるように形成され、凹部の形成によって、光共振器内の、電流注入部に対応する領域における実効屈折率から、電流狭窄部に対応する領域における実効屈折率を引いた屈折率差が小さくなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、面発光レーザ素子に関するものである。
面発光レーザ素子において、出力されるレーザ光信号の伝送特性を良好にするために、高次の横モード(以下、単に高次モードと呼ぶ)でのレーザ発振を抑制する技術が開示されている。特許文献1〜4では、高次モードの光に対して損失等を与えることによって、高次モードでのレーザ発振を抑制している。
近年要求されているたとえば10〜40Gbpsの高速変調の実現のためには、面発光レーザ素子の寄生容量を低減することが好ましい。酸化層によって形成した電流狭窄層を備えた面発光レーザ素子の場合、電流狭窄層の厚さを厚くする、あるいは電流狭窄層を複数層設けることによって、寄生容量は低減される。
しかしながら、電流狭窄層の厚さを厚くしたり、複数層設けた場合、横モードの屈折率閉じ込めが強くなるため、高次モードでのレーザ発振が起こり易くなるという問題があった。
特許文献1〜4では、高次モードに選択的に損失を与えることによって、高次モードのレーザ発振を抑制している。ところが、そのような方法の場合、モードが不安定になり、モード競合雑音などが発生し、伝送特性が劣化してしまうという問題があった。
特許文献1〜4では、高次モードに選択的に損失を与えることによって、高次モードのレーザ発振を抑制している。ところが、そのような方法の場合、モードが不安定になり、モード競合雑音などが発生し、伝送特性が劣化してしまうという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高速変調と伝送特性とを両立できる面発光レーザ素子を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る面発光レーザ素子は、高屈折率層と低屈折率層の周期構造から構成され、光共振器を構成している下部多層膜反射鏡および上部多層膜反射鏡と、前記下部多層膜反射鏡と前記上部多層膜反射鏡との間に形成された活性層と、前記上部多層膜反射鏡と前記活性層との間に形成された、電流注入部と選択酸化熱処理によって電流注入部の外周に形成された電流狭窄部とを有する電流狭窄層と、前記上部多層膜反射鏡の直下に形成された、表面に凹部を有する屈折率差調整層と、を備え、前記凹部は、前記電流注入部の外径と略一致する内径を有するとともに、前記電流狭窄層と前記屈折率差調整層との積層方向から見た場合に前記電流注入部と略重なるように形成され、前記凹部の形成によって、前記光共振器内の、前記電流注入部に対応する領域における実効屈折率から、前記電流狭窄部に対応する領域における実効屈折率を引いた屈折率差が小さくなることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記屈折率差調整層の凹部の深さは、前記屈折率差が−1.0×10−2より大きく、2.5×10−3以下になるように設定されていることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記屈折率差調整層の凹部の深さは、前記屈折率差が10−3以下になるように設定されていることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記屈折率差調整層は、誘電体からなることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記屈折率差調整層は、位相調整層として機能することを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、上部イントラキャビティ構造を有することを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記電流狭窄層の厚さは合計40nm以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記電流狭窄層の厚さは合計60nm以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記電流狭窄層を複数備えることを特徴とする。
また、本発明に係る面発光レーザ素子は、上記の発明において、前記屈折率差調整層の凹部の深さは、前記光共振器内の光損失が極小となるように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、寄生容量が低減されつつ高次モードでのレーザ発振が抑制されるので、高速変調と伝送特性とを両立できる面発光レーザ素子を実現できるという効果を奏する。
以下に、図面を参照して本発明に係る面発光レーザ素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図1に示すように、面発光レーザ素子100は、面方位(001)のn型GaAsからなる基板1上に積層された下部多層膜反射鏡として機能するアンドープの下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、電流狭窄層8、p型スペーサ層9、p型高導電率層10、p型スペーサ層11、p型コンタクト層12、p側電極13、屈折率差補正層の機能を有する位相調整層14、および上部多層膜反射鏡として機能する上部DBRミラー15を備える。
図1は、本発明の実施の形態1に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図1に示すように、面発光レーザ素子100は、面方位(001)のn型GaAsからなる基板1上に積層された下部多層膜反射鏡として機能するアンドープの下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、電流狭窄層8、p型スペーサ層9、p型高導電率層10、p型スペーサ層11、p型コンタクト層12、p側電極13、屈折率差補正層の機能を有する位相調整層14、および上部多層膜反射鏡として機能する上部DBRミラー15を備える。
p型コンタクト層12およびn型コンタクト層3は、下部DBRミラー2と上部DBRミラー15との間に形成されている。活性層6は、下部DBRミラー2と上部DBRミラー15との間に形成されている。電流狭窄層8は、上部DBRミラー15と活性層6との間に形成されている。p型高導電率層10は、p型コンタクト層12と電流狭窄層8との間に形成されている。p側電極13はp型コンタクト層12上に形成され、n側電極4はn型コンタクト層3上に形成されている。
n型クラッド層5からp型コンタクト層12までの積層構造は、エッチング処理等によって柱状に成形されたメサポストMとして形成されている。メサポスト径はたとえば直径30μmである。また、n型コンタクト層3はメサポストMの外周側に延設している。また、下部DBRミラー2と上部DBRミラー15とは共振器長Lの光共振器Rを形成している。
下部DBRミラー2は、n型GaAs基板1上に積層されたアンドープGaAsバッファ層(不図示)上に形成される。下部DBRミラー2は、たとえば低屈折率層として機能するAl0.9Ga0.1As半導体層と、高屈折率層として機能するGaAs半導体層とを1ペアとする複合半導体層がたとえば40.5ペア積層された半導体多層膜ミラーとして形成されている。下部DBRミラー2の複合半導体層を構成する各層の厚さは、λ/4n(λ:発振波長、n:屈折率)である。
n型コンタクト層3およびn型クラッド層5は、n型GaAsを材料として形成される。p型クラッド層7は、p型AlGaAsを材料として形成される(たとえば、Al0.3Ga0.7Asが望ましい。)。n型クラッド層5とp型クラッド層7とは活性層6を挟むように形成されており、分離閉じ込め(Separate Confinement Heterostructure、SCH)構造を形成している。
p型スペーサ層9、11は、p型AlGaAsを材料として形成される。p型高導電率層10は、p型GaAsを材料として形成される。p型コンタクト層12は、p型GaAsを材料として形成される。
n型クラッド層5、p型クラッド層7、p型スペーサ層9、11には、キャリア濃度がたとえば1×1018cm−3程度となるようにp型またはn型ドーパントが添加されており、確実にp型またはn型の導電型とされている。また、n型コンタクト層3、p型コンタクト層12のキャリア濃度はたとえばそれぞれ2×1018cm−3、3×1019cm−3程度である。また、p型高導電率層10のキャリア濃度は3×1019cm−3であり、p型スペーサ層9、11よりも高導電率とされている。このp型高導電率層10は、p側電極13から注入される電流の紙面横方向における経路となり、より効率的に活性層6に電流を注入するように機能している。
なお、p型高導電率層10のキャリア濃度は、高導電率、低抵抗の点からは3×1019cm−3以上が好ましく、製造上の容易さからは1×1021cm−3以下が好ましい。p型高導電率層は2層以上設けてもよい。
電流狭窄層8は、電流注入部としての開口部8aと電流狭窄部としての選択酸化層8bとから構成されている。開口部8aはAl1−xGaxAs(0≦x<0.2)からなり、選択酸化層8bは(Al1−xGax)2O3からなる。なお、xはたとえば0.02である。電流狭窄層8は、10Gbpsを超えるような高速変調を実現するのに重要な寄生容量低減のために、たとえば厚さが40nm以上、さらには60nm以上と比較的厚く形成されている。また、この電流狭窄層8は、Al1−xGaxAsからなるAl含有層を選択酸化熱処理することによって形成される。すなわち、選択酸化層8bは、このAl含有層がメサポストMの外周部から積層面に沿って所定範囲だけ酸化されることで開口部8aの外周にリング状に形成されている。選択酸化層8bは、絶縁性を有し、p側電極13から注入される電流を狭窄して開口部8a内に集中させることで、開口部8a直下における活性層6内の電流密度を高める機能を有する。なお、開口部8aの開口径はたとえば6μmである。
また、電流狭窄層8は、積層方向における、活性層6の中心から電流狭窄層8の中心までの距離がλ/4n〜7λ/4n、好ましくは3λ/4n〜5λ/4nの範囲になるように形成されている。ここで、nは、活性層6から電流狭窄層8までの実効屈折率とする。選択酸化層8bの応力により活性層6に転位が入りやすいので、信頼性の向上のためには、活性層6の中心から電流狭窄層8の中心までの距離は3λ/4n以上が望ましく、変調効率の低下を防ぐためには、5λ/4n以下が望ましい。また、信頼性の向上のためには、電流狭窄層8の厚さは70nm以下が好ましい。その他の層の厚さは、活性層6の位置に光共振器R内の光の定在波の腹が形成され、電流狭窄層8およびp型高導電率層10の位置に定在波の節が形成されるように調整されている。これによって、光に損失を与える電流狭窄層8およびp型高導電率層10と光の定在波との重なりが少なくなるので好ましい。
活性層6は、井戸層と障壁層とが交互に積層した多重量子井戸構造(MQW:Multiple Quantum Well)を有する。なお、井戸層はたとえばGaInAs系の半導体材料からなる。障壁層はたとえばGaAsからなる。この活性層6は、p側電極13から注入されて電流狭窄層8によって狭窄された電流により、たとえば1.0μm〜1.1μm(1.0μm帯とする)の波長の光を含む自然放出光を発するようにその半導体材料の組成および膜厚が設定されている。
上部DBRミラー15は、たとえば低屈折率層として機能するSiO2層と、高屈折率層として機能するSiNx層やアモルファスシリコン(a−Si)とを1ペアとする複合誘電体層がたとえば9ペア積層された誘電体多層膜ミラーとして形成されており、下部DBRミラー2と同様に各層の厚さがλ/4nとされている。
p側電極13は、p型コンタクト層12の外延に沿ってリング状に形成されている。一方、n側電極4は、メサポストMの外周側に延設したn型コンタクト層3の延設部分の表面に形成され、メサポストMの周囲を取り囲むようにC字状に形成されている。
位相調整層14は、SiNxなどの誘電体からなり、上部DBRミラー15の直下に形成されている。この位相調整層14は、その厚さの調整によって、p型コンタクト層12が光の定在波の節に位置し、上部DBRミラー15の最下面が定在波の腹に位置するように調整する機能を有する。ここで、位相調整層14は、表面に形成された深さΔLの凹部14aを有する。この凹部14aの内径は、電流狭窄層8の開口部8aの外径または選択酸化層8bの内径と略一致するように設定されている。また、凹部14aは、電流狭窄層8と位相調整層14との積層方向から見た場合に開口部8aと略重なるように位置している。
つぎに、この面発光レーザ素子100の動作について説明する。はじめに、不図示のレーザ制御器が、p側電極13とn側電極4との間にバイアス電圧および変調電圧を印加し電流を注入する。p側のキャリア(ホール)については、p側電極13からp型コンタクト層12、p型スペーサ層11を通過し、高導電率のp型高導電率層10においては層内を紙面横方向に流れ、その後p型スペーサ層9を通過し、電流狭窄層8の開口部8a内に集中して密度が高められた状態で、活性層6に注入される。一方、n側のキャリア(電子)については、n側電極4からn型コンタクト層3、n型クラッド層5を通過して、活性層6に注入される。
このように、この面発光レーザ素子100は、p側のキャリアおよびn側のキャリアのいずれもが、DBRミラーを経由しないで活性層に注入される、いわゆるダブルイントラキャビティ構造を有する。
キャリアが注入された活性層6は、自然放出光を発生する。発生した自然放出光は、活性層6の光増幅作用と光共振器Rの作用とによって、1.0μm波長帯のいずれかの波長においてレーザ発振する。その結果、この面発光レーザ素子100は、上部DBRミラー15上から変調信号を含むレーザ信号光を出力する。レーザ発振時には光共振器R内にはレーザ光の定在波が形成されている。
ここで、光共振器R内の、電流狭窄層8の開口部8aに対応する領域A1における、光共振器Rの長さ方向(半導体層の積層方向)での実効屈折率neff1と、選択酸化層8bに対応する領域A2における、光共振器Rの長さ方向での実効屈折率neff2とを比較すると、選択酸化層8bは半導体層よりも屈折率が低いために、neff2<neff1である。このように領域A1と領域A2とで実効屈折率の屈折率差が生じる結果、レーザ光は領域A1への横方向の光閉じ込めを受ける。
寄生容量低減のために選択酸化層8bの厚さを厚くすると、領域A1と領域A2との屈折率差が増大するため、横モードの基本モード(以下、単に基本モードと呼ぶ)の光だけでなく、高次モードもが領域A1への光閉じ込めを受けるようになる。そのため、高次モードでのレーザ発振が起こりやすくなるため、上部DBRミラー15上から出力されるレーザ信号光に高次モードの光が混入することとなる。特に、選択酸化層の膜厚が40nm以上になると領域A1と領域A2の実効屈折率の差が5×10−3以上となり、高次モードの光の混入が顕著になる。
これに対して、本実施の形態1に係る面発光レーザ素子100では、屈折率差調整層として機能する位相調整層14が、開口部8aと略重なるように形成された深さΔLの凹部14aを有する。このために、領域A1では、光共振器Rの共振器長が(L−ΔL)に短くなるので、実効屈折率neff1が減少する。これによって、上記屈折率差は小さくなるように調整され、高次モードの光の閉じ込めが抑制されるので、高次モードでのレーザ発振が抑制される。
なお、凹部14aの深さをΔL、凹部14aが無い場合の光共振器Rの共振器長をLとし、凹部14aを設けたことによって領域A1の実効屈折率がΔneff1だけ変化するとした場合、以下の関係式(1)が成り立つ。なお、「〜」はその両辺の値が略等しいことを意味する。
ΔL/L〜Δneff1/neff1〜Δλ/λ ・・・ (1)
式(1)において、λは、光共振器Rの共振器長がLである場合のレーザ発振波長である。凹部14aが存在することによってレーザ発振波長は(λ−Δλ)になる。したがって、凹部14aの深さΔLは、所望のレーザ発振波長と、選択酸化層8bの厚さおよびその屈折率と、基本モードが好適な横方向の光閉じ込めを受けつつ、高次モードは横方向の光閉じ込めが十分に抑制され、カットオフとなるような(neff1−neff2)の値と、を勘案して、その深さΔLを設定することが好ましい。(neff1−neff2)の値はたとえば2.5×10−3以下、より好適には1×10−3以下が好ましい。なお、(neff1−neff2)が負の値、たとえば−1×10−3から−1×10−2程度となり、いわゆる反導波路が形成されるような状態でもよい。なぜなら、このような場合であっても、電流注入を行った際、熱レンズ効果により、上記開口部の屈折率が、注入する電流値によって、1×10−2程度以上高くなるため、レーザ発振時には(neff1−neff2)は正の値となるからである。
また、位相調整層14に凹部14aを形成したことによって、光共振器R内での光の定在波の節の位置が変化するため、たとえば定在波の節と電流狭窄層8またはp型高導電率層10との位置関係が変化し、それによって光共振器R内の光損失が増大する場合がある。したがって、凹部14aの深さΔLは、光共振器R内の光損失(特に基本モードの光に対する光損失)が小さいような値に設定することがより好ましい。
位相調整層14の凹部14aは、たとえば以下のように作製することができる。まず、面発光レーザ素子100のメサポストMを形成した後に、たとえばプラズマCVD法等によって、p型コンタクト層12に、位相調整層14を形成すべきSiNx等からなる誘電体層を形成する。つぎに、フォトリソグラフィ技術によって、この誘電体層上に、凹部14aの形状に孔が開いたマスクを形成する。つぎに、マスクの孔の内部に露出した誘電体層を所定の深さΔLだけエッチングし、その後マスクを除去することによって、凹部14aを形成することができる。
つぎに、図1に示す実施の形態1に係る面発光レーザ素子100の構成によって実現される光学特性について、2D−FVM(有限体積法)を用いてシミュレーション計算した。以下、その計算結果について説明する。
まず、光共振器Rの共振器長Lを約2μm、選択酸化層8b(電流狭窄層8)の厚さを40nm、光共振器R内の実効屈折率差(neff1−neff2)を5×10−3、レーザ発振波長λを約1.06μm(1060nm)、位相調整層14の材質をSiNx(屈折率:1.94)、凹部14a以外の部分における位相調整層14の厚さを100nmに設定し、深さΔLと光共振器R内の光損失との関係を計算した(これらの計算条件を条件1とする)。上述の通り、深さΔLを増やすとともに実効屈折率差(neff1−neff2)が減少する。
図2は、面発光レーザ素子の凹部の深さと光損失との関係を示す図である。なお、光損失は基本モードの光に対するものである。図2に示すように、深さΔLが20nmのときに光損失が極小となった。なお、ΔLを20nmとした場合、実効屈折率差(neff1−neff2)は−5×10−3程度となる。以下、凹部14aの深さΔLを20nmとした面発光レーザ素子を実施例1、凹部14aを形成しない面発光レーザ素子を比較例1とする。
図3は、比較例1の面発光レーザ素子の光学特性を示す図である。面発光レーザ素子の環境温度は298K、駆動電流は直流電流として計算している。図3(a)は面発光レーザ素子の駆動電流と出力されるレーザ光の光強度との関係を示している。なお、凡例において、「LP01」は基本モードであるLP01モードのレーザ光の光強度、「LP11」、「LP21」はそれぞれ高次モードであるLP11モード、LP21モードのレーザ光の強度をそれぞれ示し、「Total」はこれらのモードの光強度を合計した総強度を示している。図3(b)は面発光レーザ素子の駆動電流とサイドモード抑圧比(Side-Mode Suppression Ratio:SMSR)との関係を示している。ここで、SMSRとは、基本モードのレーザ光と、最も強度が高い高次モードのレーザ光との強度比である。図3(c)は、駆動電流が5.0mAのときの、面発光レーザ素子が出力するレーザ光の強度スペクトルを示している。なお、図3(b)、(c)は縦軸が対数目盛である点に注意されたい。
図3に示すように、比較例1の面発光レーザ素子では、駆動電流が小さいときは基本モードのレーザ光の強度が高いが、駆動電流が大きくなると、総強度に占める高次モードのレーザ光の強度の割合が高くなり、SMSRが低下した。また、図3(c)に示すように、基本モードである約1060.7nmのレーザ光の強度に対して、高次モードである約1059.8nmのレーザ光の強度が高かった。また、図3(c)の強度スペクトルにおけるRMSでの半値全幅も0.35nmと比較的広い値となった。
一方、図4は、実施例1の面発光レーザ素子の光学特性を示す図である。面発光レーザ素子の環境温度、駆動電流、および図4(a)〜(c)における凡例や座標軸等の意味は図3(a)〜(c)と同様である。
図4に示すように、実施例1の面発光レーザ素子では、総強度に占める基本モードのレーザ光の強度の割合が非常に高くなり、SMSRも非常に高くなった。また、図4(c)に示すように、基本モードである約1060.5nmのレーザ光の強度が、他の高次モードのレーザ光の強度に対して非常に高かった。また、図4(c)の強度スペクトルにおけるRMSでの半値全幅も0.06nmと非常に狭い値であった。図4の結果から、実施例1の面発光レーザ素子は単一モード性が高いことが確認された。
つぎに、上述した計算条件1において、選択酸化層8b(電流狭窄層8)の厚さを60nmに変更し、深さΔLと光共振器R内の光損失との関係を計算した(これらの計算条件を条件2とする)。
図5は、面発光レーザ素子の凹部の深さと光損失との関係を示す図である。なお、光損失は基本モードの光に対するものである。図5に示すように、深さΔLが30nmのときに光損失が極小となった。なお、ΔLを30nmとした場合、実効屈折率差(neff1−neff2)は−7.5×10−3程度となる。以下、凹部14aの深さΔLを30nmとした面発光レーザ素子を実施例2、凹部14aを形成しない面発光レーザ素子を比較例2とする。
図6は、比較例2の面発光レーザ素子の光学特性を示す図である。面発光レーザ素子の環境温度、駆動電流、および図6(a)〜(c)における凡例や座標軸等の意味は図3(a)〜(c)と同様である。
図6に示すように、比較例2の面発光レーザ素子では、図示した駆動電流の範囲のほぼ全体で、総強度に占める高次モードのレーザ光の強度の割合が高くなり、SMSRが低かった。また、図6(c)に示すように、基本モードである約1059.8nmのレーザ光の強度に対して、高次モードである約1058.8nmのレーザ光の強度が高かった。また、図6(c)の強度スペクトルにおけるRMSでの半値全幅も0.26nmと比較的広い値となった。
一方、図7は、実施例2の面発光レーザ素子の光学特性を示す図である。面発光レーザ素子の環境温度、駆動電流、および図7(a)〜(c)における凡例や座標軸等の意味は図3(a)〜(c)と同様である。
図7に示すように、実施例2の面発光レーザ素子では、総強度に占める基本モードのレーザ光の強度の割合が非常に高くなり、SMSRも非常に高くなった。また、図7(c)に示すように、基本モードである約1059.7nmのレーザ光の強度が、他の高次モードのレーザ光の強度に対して非常に高かった。また、図7(c)の強度スペクトルにおけるRMSでの半値全幅も0.03nmと非常に狭い値であった。図7の結果から、実施例2の面発光レーザ素子は単一モード性が高いことが確認された。
以上説明したように、本実施の形態1およびその実施例の面発光レーザ素子は、寄生容量が低減されつつ、高次モードでのレーザ発振が抑制された単一モード性が高いものであるので、高速変調と伝送特性とを両立できる面発光レーザ素子である。
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、位相調整層が屈折率差調整層としての機能を有していたが、位相調整層の他に、上部DBRミラーの直下に屈折率差調整層を設けても良いし、あるいは上部DBRミラーの直下に位置する他の誘電体層や半導体層に屈折率差調整層としての機能を持たせても良い。
上記実施の形態1では、位相調整層が屈折率差調整層としての機能を有していたが、位相調整層の他に、上部DBRミラーの直下に屈折率差調整層を設けても良いし、あるいは上部DBRミラーの直下に位置する他の誘電体層や半導体層に屈折率差調整層としての機能を持たせても良い。
図8は、実施の形態2に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図8に示すように、面発光レーザ素子200は、基板1、下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、電流狭窄層8、p型スペーサ層9、p型高導電率層10、p型スペーサ層11、屈折率差調整層としてのp型コンタクト層22、p側電極13、および上部DBRミラー15を備える。すなわち、この面発光レーザ素子200は、実施の形態1に係る面発光レーザ素子100において、位相調整層14を削除し、p型コンタクト層12を屈折率差調整層としてのp型コンタクト層22に置き換えた構成を有する。
p型コンタクト層22は、例えばp型コンタクト層12と同様の組成および厚さとできる。また、p型コンタクト層22は、開口部8aと略重なるように形成された凹部22aを有するので、光共振器R内の開口部8aに対応する領域の実効屈折率を増大させ、選択酸化層8bに対応する領域の実効屈折率との屈折率差が小さくなるように調整する屈折率差調整層として機能する。その結果、面発光レーザ素子200は、寄生容量が低減されつつ高次モードでのレーザ発振が抑制された、単一モード性が高いものとなる。
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図9に示すように、面発光レーザ素子300は、基板1、下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、電流狭窄層38A、p型スペーサ層39、電流狭窄層38B、p型スペーサ層9、p型高導電率層10、p型スペーサ層11、p型コンタクト層12、p側電極13、屈折率差補正層の機能を有する位相調整層34、および上部DBRミラー15を備える。すなわち、この面発光レーザ素子300は、実施の形態1に係る面発光レーザ素子100において、電流狭窄層8を、電流狭窄層38A、p型スペーサ層39、および電流狭窄層38Bの積層構造に置き換え、かつ位相調整層14を位相調整層34に置き換えた構成を有する。
図9は、実施の形態3に係る面発光レーザ素子の模式的な断面図である。図9に示すように、面発光レーザ素子300は、基板1、下部DBRミラー2、n型コンタクト層3、n側電極4、n型クラッド層5、活性層6、p型クラッド層7、電流狭窄層38A、p型スペーサ層39、電流狭窄層38B、p型スペーサ層9、p型高導電率層10、p型スペーサ層11、p型コンタクト層12、p側電極13、屈折率差補正層の機能を有する位相調整層34、および上部DBRミラー15を備える。すなわち、この面発光レーザ素子300は、実施の形態1に係る面発光レーザ素子100において、電流狭窄層8を、電流狭窄層38A、p型スペーサ層39、および電流狭窄層38Bの積層構造に置き換え、かつ位相調整層14を位相調整層34に置き換えた構成を有する。
p型スペーサ層39は、たとえばp型スペーサ層9と同様の組成および厚さとできる。電流狭窄層38Aは、電流注入部としての開口部38Aaと電流狭窄部としての選択酸化層38Abとから構成されている。電流狭窄層38Bは、電流注入部としての開口部38Baと電流狭窄部としての選択酸化層38Bbとから構成されている。電流狭窄層38A、38Bの組成は電流狭窄層8と同様にできる。電流狭窄層38A、38Bの合計の厚さは、寄生容量低減のために、たとえば40nm以上、さらには60nm以上と比較的厚くされている。電流狭窄層38A、38Bのそれぞれの厚さは特に限定されないが、たとえば電流狭窄層38A、38Bの厚さはいずれも20nmである。また、活性層6により近接している開口部38Aaの開口径は、開口部38Baの開口径よりも小さくなっている。これによって、電流はより効果的に活性層6に高密度で注入される。開口部38Aaと開口部38Baの開口径の好ましい範囲は開口部8aと同様にできる。
位相調整層34は、開口部38Aa、38Baのそれぞれの内径と略同じ内径をそれぞれ有し、開口部38Aa、38Baのそれぞれと略重なるように形成された2段階の凹部34a、34bを有する。これによって、光共振器R内の開口部38Aa、38Baが重なる部分に対応する領域の実効屈折率と、開口部38Baだけに対応する領域の実効屈折率とは、それぞれ異なる量だけ増大される。これによって、寄生容量が低減されつつ、開口部38Aaに対応する領域の実効屈折率を高次モードが抑制されるように制御されるため、単一モード性が高いものとなる。
上部DBRミラー15の上面からの凹部34a、34bの深さについては、たとえば電流狭窄層38A、38Bの厚さがいずれも20nmの場合、それぞれ20nm、10nmであることが好ましい。すなわち、電流狭窄層38A、38Bの厚さの合計が、実施例1と同様に40nmであれば、凹部34aの深さは実施例1と同様に20nmとすることが好ましい。
なお、上記実施の形態3では、2つの電流狭窄層の開口部の開口径が互いに異なるが、同一にしても良い。また、電流狭窄層の数が増えても、高次モードの発振に関わる光閉じ込めの議論は開口部に対応する領域の光共振器Rの長さ方向での実効屈折率と選択酸化層に対応する領域の光共振器Rの長さ方向での実効屈折率の差で決まるので、電流狭窄層の数は3以上としても良い。
また、屈折率差調整層は、誘電体または半導体からなるもののいずれでもよいが、誘電体からなることが好ましい。誘電体の場合は、半導体よりも屈折率が比較的低いので、同量の実効屈折率差を調整するための凹部の深さが深くなる(式(1)参照)。その結果、たとえばエッチングによって凹部を形成する場合の深さの作製誤差を小さくできるので、深さの精度が高くなる。誘電体としては、SiNxまたはSiO2が好ましいが、特に限定はされない。
また、上記実施の形態に係る面発光レーザ素子100は、ダブルイントラキャビティ構造を有しているが、本発明はこれに限定されず、活性層の上部から注入されるキャリアが、上部DBRミラーを経由しないで活性層に注入される、いわゆる上部イントラキャビティ構造を有する面発光レーザ素子や、イントラキャビティ構造でない面発光レーザ素子にも、本発明は適用できる。すなわち、活性層に注入されるキャリアが、下部DBRミラーまたは上下部DBRミラーのそれぞれを経由して活性層に注入される構造の面発光レーザ素子でもよい。
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
1 基板
2 下部DBRミラー
3 n型コンタクト層
4 n側電極
5 n型クラッド層
6 活性層
7 p型クラッド層
8、38A、38B 電流狭窄層
8a、38Aa、38Ba 開口部
8b、38Ab、38Bb 選択酸化層
9、11、39 p型スペーサ層
10 p型高導電率層
12、22 p型コンタクト層
13 p側電極
14、34 位相調整層
14a、22a、34a、34b 凹部
15 上部DBRミラー
100〜300 面発光レーザ素子
A1、A2 領域
R 光共振器
M メサポスト
2 下部DBRミラー
3 n型コンタクト層
4 n側電極
5 n型クラッド層
6 活性層
7 p型クラッド層
8、38A、38B 電流狭窄層
8a、38Aa、38Ba 開口部
8b、38Ab、38Bb 選択酸化層
9、11、39 p型スペーサ層
10 p型高導電率層
12、22 p型コンタクト層
13 p側電極
14、34 位相調整層
14a、22a、34a、34b 凹部
15 上部DBRミラー
100〜300 面発光レーザ素子
A1、A2 領域
R 光共振器
M メサポスト
Claims (10)
- 高屈折率層と低屈折率層の周期構造から構成され、光共振器を構成している下部多層膜反射鏡および上部多層膜反射鏡と、
前記下部多層膜反射鏡と前記上部多層膜反射鏡との間に形成された活性層と、
前記上部多層膜反射鏡と前記活性層との間に形成された、電流注入部と選択酸化熱処理によって電流注入部の外周に形成された電流狭窄部とを有する電流狭窄層と、
前記上部多層膜反射鏡の直下に形成された、表面に凹部を有する屈折率差調整層と、
を備え、
前記凹部は、前記電流注入部の外径と略一致する内径を有するとともに、前記電流狭窄層と前記屈折率差調整層との積層方向から見た場合に前記電流注入部と略重なるように形成され、前記凹部の形成によって、前記光共振器内の、前記電流注入部に対応する領域における実効屈折率から、前記電流狭窄部に対応する領域における実効屈折率を引いた屈折率差が小さくなることを特徴とする面発光レーザ素子。 - 前記屈折率差調整層の凹部の深さは、前記屈折率差が−1.0×10−2より大きく、2.5×10−3以下になるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ素子。
- 前記屈折率差調整層の凹部の深さは、前記屈折率差が10−3以下になるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の面発光レーザ素子。
- 前記屈折率差調整層は、誘電体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- 前記屈折率差調整層は、位相調整層として機能することを特徴とする請求項4に記載の面発光レーザ素子。
- 上部イントラキャビティ構造を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- 前記電流狭窄層の厚さは合計40nm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- 前記電流狭窄層の厚さは合計60nm以上であることを特徴とする請求項7に記載の面発光レーザ素子。
- 前記電流狭窄層を複数備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- 前記屈折率差調整層の凹部の深さは、前記光共振器内の光損失が極小となるように設定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
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- 2012-03-21 JP JP2012063883A patent/JP2013197377A/ja active Pending
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