以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る面発光型半導体レーザは、図1〜図3に示すように、基板10と、基板10上に設けられ、AlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hとAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22h(a<b<1)を交互に積層して形成された(図2参照)n型(第1導電型)DBR20と、n型DBR20上に設けられたn型クラッド層30と、第1導電型クラッド層30上に設けられた活性層32と、活性層32上に設けられたp型(第2導電型)クラッド層34と、n型クラッド層30、活性層32、及びp型クラッド層34を第1導電型DBRとで挟むように設けられ、AlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kとAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kを交互に積層して形成された(図3参照)p型DBR50とを備える。n型DBR20及びp型DBR50それぞれのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21h、511,512,・・・・・51kとAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22h、521,522,・・・・・52kの合計膜厚は、レーザ発振波長の1/2程度の光学距離であり、AlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21h、511,512,・・・・・51kの膜厚はAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22h、521,522,・・・・・52kの膜厚より薄い。
基板10は、例えば、n型のドーパントとしてシリコン(Si)がドープされた導電性のn型(第1導電型)のガリウム砒素(GaAs)等からなる半導体基板である。
n型DBR20は、図2に示すように、ペア数hが50〜80程度となるように、AlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hとAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22h(a<b<1)を交互に積層して形成される。AlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hのAl組成比aは、45%≦a≦50%であることが好ましい。AlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hのAl組成比は、45%以下であると図4に示すようにレーザ発振波長(660nm)において吸収係数が高くなり光を吸収してしまうので好ましくなく、50%以上であると高い共振器反射率を得るために好ましくない。また、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hのAl組成比bは、90%≦b≦95%であることが好ましい。AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hのAl組成比は、上記の範囲以外であるときは、2種の半導体層の屈折率差が小さくなってしまい高反射率が得られなくなるので、高い共振器反射率を得るために好ましくない。
p型DBR50は、図3に示すように、ペア数kが30〜50程度となるように、AlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kとAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52k(a<b<1)を交互に積層して形成される。AlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kのAl組成比aは、45%≦a≦50%であることが好ましい。AlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kのAl組成比は、45%以下であると図4に示すようにレーザ発振波長(660nm)において吸収係数が高くなり光を吸収してしまうので好ましくなく、50%以上であると高い共振器反射率を得るために好ましくない。また、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kのAl組成比bは、90%≦b≦95%であることが好ましい。AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kのAl組成比は、上記の範囲以外であるときは、2種の半導体層の屈折率差が小さくなってしまい高反射率が得られなくなるので、高い共振器反射率を得るために好ましくない。
n型DBR20とp型DBR50を構成する半導体層のそれぞれの膜厚は、低い熱抵抗、且つ、高い反射率となるように決定される。そこで、低い熱抵抗、且つ、高い反射率を得るためにn型DBR20とp型DBR50を構成する半導体層のうちAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21h、511,512,・・・・・51kの膜厚は、レーザ発振波長の3/20の光学距離より厚く、レーザ発振波長の1/4の光学距離より薄いことが好ましい。
n型DBR20とp型DBR50の熱抵抗については、以下に示す式(1)によって求められる。
熱抵抗(K/W)=[1/熱伝導率(W/μm・K)]×[膜厚(μm)/伝熱断面積(μm2)]・・・(1)
n型DBR20及びp型DBR50を構成する層の熱抵抗は、図5のグラフに示すように、Al組成比が50%近傍のときに最大となる。つまり、Al組成比が50%近傍の層の厚さをなるべく減少させることが好ましい。
n型DBR20とp型DBR50の反射率については、n型DBR20とp型DBR50を構成する層がAlを含む半導体層であるので、Al組成比の増加に伴ってワイドギャップ化し屈折率が小さくなる特徴を有する。そこで、n型DBR20とp型DBR50が高い反射率を得るためには、n型DBR20及びp型DBR50を構成する層のうち、Al組成比が大きい半導体層の厚さをなるべく減少させて構成することが好ましい。
n型DBR20とp型DBR50を構成する層の膜厚と熱抵抗の関係を示すための実施例を後述する実施例1〜3に、膜厚と反射率の関係を示すための実施例を後述する実施例4,5において詳述する。
n型クラッド層30は、例えば、n型のドーパントとしてSiがドープされたInGaAlPからなる。n型クラッド層30上には、n型のドーパントとしてSiがドープされたInGaAlPからなり、活性層32内の光密度を調整する機能を有するn型光ガイド層(図示略)を設けても構わない。
活性層32は、n型クラッド層30から供給される電子とp型クラッド層34から供給される正孔が再結合し光を発生する。活性層32は、例えば、井戸層(ウェル層)を井戸層よりもバンドギャップの大きなバリア層(層障壁層)でサンドイッチ状に挟んだ量子井戸(QW)構造とすることができる。なお、この量子井戸構造は、井戸層が1つではなく多重化してもよく、活性層32を多重量子井戸構造(MQW)にすることもできる。MQWである活性層32は、InGaAlPとインジウム・ガリウム・リン(InGaP)とが交互に2〜4ペア積層された構造とすることができる。活性層32上には、例えば、p型のドーパントとしてマグネシウム(Mg)がドープされたInGaAlPからなり、活性層32内の光密度を調整する役割を持つp型光ガイド層(図示略)を設けることができる。
p型クラッド層34は、例えば、p型のドーパントとしてMgがドープされたInGaAlPからなる。p型クラッド層34上には、酸化狭窄層40が設けられている。酸化狭窄層40は、導波路となる領域に選択的に電流を流すために電流狭窄構造を有する層である。酸化狭窄層40は一例として、図1に示すように、p型クラッド層34上に設けられるが、活性層32とp側コンタクト層との間にあればよい。酸化狭窄層40の電流狭窄構造は、酸化速度が異なるアルミニウムの組成層を選択的に酸化することによって形成することができる。
実施の形態に係る面発光型半導体レーザは、更に、n型クラッド層30に電圧を印加するn型電極(カソード電極)60と、p型クラッド層34に電圧を印加するp型電極(アノード電極)62を備える。図1に示すように、n型電極60は基板10の裏面側に、p型電極62はp型DBR50の表面に配置される。n型電極60は、例えばAl金属からなり、p型電極62は、例えばパラジウム(Pd)−金(Au)合金からなる。p型電極62は、リング状の形状であり、8μm〜25μm程度のアパーチャ径を持ったレーザの出射領域である開口部を有する。そして、n型電極60は基板10に、p型電極62はp型DBR50に、それぞれオーミック接続される。なお、基板10とn型電極60の間に、n型のn側コンタクト層を配置してもよい。また、p型DBR50とp型電極62の間に、p型のp側コンタクト層を配置してもよい。
以下に、実施の形態に係る面発光型半導体レーザのn型DBR20とp型DBR50を構成する層の膜厚と熱抵抗の関係について、実施例1〜3において説明する。実施例1〜3では、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層のペア数は固定して、構成する半導体層の膜厚を3パターン変更した面発光型半導体レーザをそれぞれ用意して検証する。
(実施例1)
実施例1で用いる面発光型半導体レーザはすべて、図1に示すようなメサ構造の面発光型半導体レーザである。ここで用いる面発光型半導体レーザのメサ直径は10μmであり、伝熱断面積が78.5μm2となる。実施例1で用いる第1〜第3パターンの面発光型半導体レーザの各数値は、それぞれ図6(a)〜(c)の表に示される。
まず、第1パターンにおける面発光型半導体レーザは、従来の面発光型半導体レーザと同様でp型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚がそれぞれレーザ発振波長の約1/4の光学距離で交互に積層して形成されているものである。
第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が90%で膜厚が53.16nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.816μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.020μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が90%の熱伝導率は0.651W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.212K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.101K/Wとなる。よって、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は、0.313K/Wとなる。
第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が90%で膜厚が53.16nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.771μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.080μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が90%の熱伝導率は0.651W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.324K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.154K/Wとなる。よって、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.478K/Wとなる。
次に、第2パターンにおける面発光型半導体レーザは、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったまま、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚をそれぞれ変化させたものである。
第2パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が40.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が90%で膜厚が60.94nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.520μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.316μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が90%の熱伝導率は0.651W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.178K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.116K/Wとなる。よって、第2パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は0.293K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値と比して6.3%改善されたことになる。
第2パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が40.0nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が90%で膜厚が60.94nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.320μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.535μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が90%の熱伝導率は0.651W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.271K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.176K/Wとなる。よって、第2パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.448K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値と比して6.3%改善されたことになる。
次に、第3パターンにおける面発光型半導体レーザは、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったまま、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚をそれぞれ第2パターンにおける面発光型半導体レーザよりも更に変化させたものである。
第3パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が90%で膜厚が67.0nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.330μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.546μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が90%の熱伝導率は0.651W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.156K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.127K/Wとなる。よって、第3パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は0.283K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値と比して9.7%改善されたことになる。
第3パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が90%で膜厚が67.0nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.030μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.886μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が90%の熱伝導率は0.651W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.238K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.194K/Wとなる。よって、第3パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.431K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値と比して9.7%改善されたことになる。
(実施例2)
実施例2で用いる面発光型半導体レーザはすべて、図1に示すようなメサ構造の面発光型半導体レーザである。ここで用いる面発光型半導体レーザのメサ直径は10μmであり、伝熱断面積が78.5μm2となる。実施例2で用いる第1〜第3パターンの面発光型半導体レーザの各数値は、それぞれ図7(a)〜(c)の表に示される。
まず、第1パターンにおける面発光型半導体レーザは、従来の面発光型半導体レーザと同様でp型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚がそれぞれレーザ発振波長の約1/4の光学距離で交互に積層して形成されているものである。
第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が53.40nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.816μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は1.869μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.212K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.062K/Wとなる。よって、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は、0.274K/Wとなる。
第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が53.40nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.771μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.097μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.324K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.102K/Wとなる。よって、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.426K/Wとなる。
次に、第2パターンにおける面発光型半導体レーザは、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったまま、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚をそれぞれ変化させたものである。
第2パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が40.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が62.5nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.520μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.375μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.178K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.078K/Wとなる。よって、第2パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は0.256K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値と比して8.3%改善されたことになる。
第2パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が40.0nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が62.5nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.320μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.625μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.271K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.119K/Wとなる。よって、第2パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.391K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値と比して8.3%改善されたことになる。
次に、第3パターンにおける面発光型半導体レーザは、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったまま、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚をそれぞれ第2パターンにおける面発光型半導体レーザよりも更に変化させたものである。
第3パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が68.0nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.330μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.584μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.156K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.085K/Wとなる。よって、第3パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は0.241K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値と比して13.8%改善されたことになる。
第3パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が68.0nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は1.925μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.740μmとなる。Al組成比が50%の熱伝導率は0.11W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.225K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.123K/Wとなる。よって、第3パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.348K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値と比して13.8%改善されたことになる。
(実施例3)
実施例3で用いる面発光型半導体レーザはすべて、図1に示すようなメサ構造の面発光型半導体レーザである。ここで用いる面発光型半導体レーザのメサ直径は10μmであり、伝熱断面積が78.5μm2となる。実施例3で用いる第1〜第3パターンの面発光型半導体レーザの各数値は、それぞれ図6(a)〜(c)の表に示される。
まず、第1パターンにおける面発光型半導体レーザは、従来の面発光型半導体レーザと同様でp型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚がそれぞれレーザ発振波長の約1/4の光学距離で交互に積層して形成されているものである。
第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が45%で膜厚が47.22nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が53.40nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.653μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は1.869μmとなる。Al組成比が45%の熱伝導率は0.098W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.193K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.062K/Wとなる。よって、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は、0.255K/Wとなる。
第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が45%で膜厚が47.22nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が53.40nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.739μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.097μmとなる。Al組成比が45%の熱伝導率は0.098W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.320K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.102K/Wとなる。よって、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.422K/Wとなる。
次に、第2パターンにおける面発光型半導体レーザは、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったまま、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚をそれぞれ変化させたものである。
第2パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が45%で膜厚が40.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が61.0nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.520μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.318μmとなる。Al組成比が45%の熱伝導率は0.098W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.178K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.076K/Wとなる。よって、第2パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は0.254K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値と比して0.3%改善されたことになる。
第2パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が45%で膜厚が40.0nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が61.0nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は2.320μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.538μmとなる。Al組成比が45%の熱伝導率は0.098W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.271K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.116K/Wとなる。よって、第2パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.387K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値と比して0.3%改善されたことになる。
次に、第3パターンにおける面発光型半導体レーザは、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったまま、p型DBR50とn型DBR20を構成する半導体層の膜厚をそれぞれ第2パターンにおける面発光型半導体レーザよりも更に変化させたものである。
第3パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が45%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が67.0nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの合計膜厚は1.330μm、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの合計膜厚は2.546μmとなる。Al組成比が45%の熱伝導率は0.098W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの熱抵抗値は0.155K/W、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの熱抵抗値は0.084K/Wとなる。よって、第3パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値は0.239K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのp型DBR50の合計熱抵抗値と比して6.4%改善されたことになる。
第3パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が45%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が67.0nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。n型DBR20のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの合計膜厚は1.925μm、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの合計膜厚は3.685μmとなる。Al組成比が45%の熱伝導率は0.098W/μmK、Al組成比が95%の熱伝導率は0.774W/μmKである。式(1)より、p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの熱抵抗値は0.225K/W、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの熱抵抗値は0.121K/Wとなる。よって、第3パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値は0.346K/Wとなり、第1パターンにおける面発光型半導体レーザのn型DBR20の合計熱抵抗値と比して6.4%改善されたことになる。
以上、実施例1〜3より、図5のグラフで示したように熱抵抗値が大きいAl組成比が45%〜50%の膜厚を減らして、Al組成比90%〜95%の膜厚を増やすことで、1ペアの合計光学膜厚をほぼ同一に保ったままp型DBR50及びn型DBR20の熱抵抗を減少させることができる。
以下に、実施の形態に係る面発光型半導体レーザのn型DBR20とp型DBR50を構成する層の膜厚と反射率の関係について、実施例4,5において説明する。
(実施例4)
実施例4で用いる面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が53.4nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの屈折率は3.453、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの屈折率は3.09である。実施例4における面発光型半導体レーザのp型DBR50の反射率は、図9(a)のグラフに示すように、赤色面発光型半導体レーザの発振波長である波長640〜680nmで高い反射率を有する。ちなみに、主な赤色面発光型半導体レーザのレーザ発振波長である660nmにおいて、p型DBR50の反射率は99.87%である。
実施例4で用いる面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が90%で膜厚が53.16nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの屈折率は3.453であり、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの屈折率は3.104である。実施例4における面発光型半導体レーザのn型DBR20の反射率は、図9(b)のグラフに示すように、赤色面発光型半導体レーザの発振波長である波長640〜680nmで高い反射率を有する。ちなみに、主な赤色面発光型半導体レーザのレーザ発振波長である660nmにおいて、n型DBR20の反射率は99.99%である。
(実施例5)
実施例5で用いる面発光型半導体レーザのp型DBR50は、Al組成比が50%で膜厚が35.0nmのAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kと、Al組成比が95%で膜厚が68.0nmのAlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kとの38ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層511,512,・・・・・51kの屈折率は3.453、AlbGa1-bAs層521,522,・・・・・52kの屈折率は3.09である。実施例5における面発光型半導体レーザのp型DBR50の反射率は、図10(a)のグラフに示すように、赤色面発光型半導体レーザの発振波長である波長640〜680nmで高い反射率を有する。ちなみに、主な赤色面発光型半導体レーザのレーザ発振波長である660nmにおいて、p型DBR50の反射率は99.83%である。
実施例5で用いる面発光型半導体レーザのn型DBR20は、Al組成比が50%で膜厚が47.78nmのAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hと、Al組成比が95%で膜厚が68.0nmのAlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hとの58ペアで構成される。p型DBR50のAlaGa1-aAs層211,212,・・・・・21hの屈折率は3.453であり、AlbGa1-bAs層221,222,・・・・・22hの屈折率は3.09である。実施例5における面発光型半導体レーザのn型DBR20の反射率は、図10(b)のグラフに示すように、赤色面発光型半導体レーザの発振波長である波長640〜680nmで高い反射率を有する。ちなみに、主な赤色面発光型半導体レーザのレーザ発振波長である660nmにおいて、n型DBR20の反射率は99.99%である。
以上、実施例4,5より、p型DBR50及びn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚はレーザ発振波長の1/2の光学距離を維持しつつ、Al組成比が50%の膜厚を減らしても高反射率が得られる。
本発明の実施の形態に係る面発光型半導体レーザによれば、p型DBR50及びn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚はレーザ発振波長の1/2の光学距離を維持しつつ、熱抵抗値が大きいAl組成比45%〜50%の膜厚を減らして、Al組成比90%〜95%の膜厚を増やすことでp型DBR50及びn型DBR20の熱抵抗を減少させることができる。実施の形態に係る面発光型半導体レーザは、p型DBR50及びn型DBR20の熱抵抗を減少させることによって放熱性を高めることができるので、高電流注入時にも活性層の温度の上昇を抑制して高出力動作が可能となる。
更に、本発明の実施の形態に係る面発光型半導体レーザによれば、p型DBR50及びn型DBR20を構成する半導体層の1ペアの合計光学膜厚はレーザ発振波長の1/2の光学距離を維持しつつ、Al組成比45%〜50%の膜厚を減らしても高反射率が得られるので、高い共振器反射率を得ることができる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
例えば、実施の形態においては、面発光型半導体レーザを単数で記載したが、複数の面発光型半導体レーザを2次元アレイ状に配置して用いることもできる。複数の面発光型半導体レーザをアレイ状に配置することで、単体のときよりも高光出力を実現することができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。