JP4579526B2 - 面発光レーザ - Google Patents

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Description

本発明は面発光レーザに関するものである。
メトロ・アクセス用光通信網の信号光源として、毎秒10ギガビット以上の高速で動作する波長1.3〜1.55μmの半導体レーザが必要とされている。このような半導体レーザには、直接変調可能であること、シングルモード発振可能であること、アンクール(uncooled)で使用できること、低消費電力であること、光ファイバへの結合効率が高いことなどの特性が要求される。これらの要求に応えることのできる半導体レーザとして、基板に対して垂直にレーザ光を出射する面発光レーザ(Vertical cavity surface emitting laser、以下、VCSELという)がある。
VCSELは、半導体基板上に適当なペア数の下部多層膜反射鏡、活性層を含む共振器および適当なペア数の上部多層膜反射鏡を有している。共振器長は、発振波長をλ、共振器を構成する媒質の屈折率をnとした時、λ/nまたはその整数倍に設定される。また、前記多層膜反射鏡は、屈折率の異なる層をλ/4n倍の厚さで交互に積層することにより形成される。
0.85μm帯のレーザ光を発振するVCSELは従来より研究・開発が行われ、実用化されている。これは、GaAs基板上にAlA1Ga1−A1As/AlA2Ga1−A2As(0≦A1≦1、0≦A2≦1)からなる多層膜反射鏡を有し、活性層としてGaAs量子井戸層/AlGaAs障壁層を用いたものである。一方、1.2μm以上の長波長帯においては、ファブリ・ペロー型などの一般的な半導体レーザではGaInAsP系活性層/InP基板というような組合せのInP系の材料が用いられている。しかしながら、VCSELを構成する材料系としては、InP系よりもGaAs系の方が以下のような理由により有利である。すなわち、GaAs基板を用いた場合、多層膜反射鏡としてAlGaAsを用いることができるため、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることができ、少ないペア数で高い反射率が得られる。その結果、素子抵抗を小さくすることができ、低消費電力化に有利となる。また、AlGaAsは熱抵抗が小さく、これを多層膜反射鏡に用いることで高温動作の可能なVCSELが得られるため、アンクールでの使用という観点からも有利である。
さらに、GaInAsPなどのPを含む半導体材料には組成を制御しにくい等、結晶成長上の困難があることが知られている。そこで、近年では、1.2μm帯またはそれ以上の波長でレーザ光を発振する材料として、GaAsに格子整合するGaInNAsがさかんに研究・開発されている。すなわち、GaInNAsの結晶成長は比較的簡単で、良好な結晶が得られやすいというメリットがある。
GaInNAsを量子井戸層として用いる場合、障壁層としてはこれより大きなバンドギャップを与える組成のGaInNAs、あるいはGaNAsなどが適当である。たとえば、Borchertらは、GaAsを基板とし、GaInNAsを量子井戸層および障壁層として用いた長波長帯の半導体レーザにおいて、低発振閾値・高発光効率のレーザ動作を実現している(非特許文献1)。
B.Borchert, A.Y.Egorov, S.Illek and H.Riechert, ''Static and Dynamic Characteristics of 1.29-um GaInNAs Ridge-Waveguide Laser Diodes'', IEEE Photonics Technology Letters, Vol.12, No.6, June 2000, p.597-599 (USA)
なお、GaInNAsの代わりに、V族構成元素としてSbを含んだGaInNAsSbが用いられることもある。同様に、GaNAsの代わりにGaNAsSbが用いられることもある。
ところで、上記のような長波長帯レーザの量子井戸層として用いられる発光波長1.2μmのGaInNAs結晶は、GaAs基板上では+2%以上の大きな圧縮歪を持つことが知られている。一方、障壁層として用いる材料は、良好なキャリア閉じ込めにより低発振閾値・高温動作を実現するためにバンドギャップ組成波長を1μm以下とする必要がある。障壁層としてGaNAsを用いると、バンドギャップ組成波長が1μm以下となるN組成は1%以下であり、これを満たすGaNAs結晶のGaAs基板上における歪量は0〜−0.2%となる。
このような歪量子井戸構造における正味の歪、すなわちネット歪εnetは、以下の式(1)で表される。
εnet=(N・ε・L+N・ε・L)/(N・L+N・L) 式(1)
ここで、Nは層数、εは結晶の歪量、Lは層厚さを表す。添え字wは井戸層、添え字bは障壁層に対応する。
VCSELの長期信頼性の観点からは、ネット歪をゼロに近くすることが望ましい。ネット歪をゼロとするためには、式(1)の右辺がゼロとなるように量子井戸層や障壁層の厚さを設定する必要がある。ここで、発光波長1.3μmのGaInNAs量子井戸層のGaAs基板上における臨界膜厚は約7nmであり、これを考慮すると、ネット歪をゼロとするためには約15nm以上の厚さの障壁層が必要となる。
一方、VCSELにおいて、障壁層の厚さを厚くすると以下のような弊害があった。以下、図7を用いて説明する。ここで、図7(a)は従来のGaInNAs系長波長帯VCSELの共振器構造を示したものであり、共振器長L=λ/nとしたものである。図7(b)は、この共振器内における光定在波の分布を示したものである。共振器30は、GaInNAs量子井戸層27およびGaNAs障壁層28からなる多重量子井戸活性層26を含んでいる。光閉じ込めを大きくして低発振閾値を得るためには、光定在波の腹(前記光定在波の分布の極大点)29の位置に量子井戸活性層27の中心井戸層27aを配置し、他の井戸層27bを前記光定在波の腹29の近傍に配置する必要がある。ところが、ネット歪をゼロに近くするために障壁層の厚さを厚くすると、中心井戸層27a以外の井戸層27bが光定在波の腹29から遠くなってしまい、その結果光閉じ込めが十分に得られず、閾値の増大や光出力の低下を招くこととなる。
以上のような理由から、GaInNAs系の材料を用いた長波長帯VCSELにおいては、低閾値・高出力動作・良好な温度特性と高信頼性動作とを両立させることが困難となっていた。
以上の問題を解決するため、本発明のVCSELの態様は、半導体基板上に、複数の量子井戸層および障壁層を含む多重量子井戸活性層を備えた共振器と、当該共振器の上下を挟む多層膜反射鏡とを有する面発光レーザにおいて、前記複数の量子井戸層は、一層当りの圧縮歪が+2%以上であって、少なくとも一層はGax1In1−x1y1Asy2Sb1−y1−y2(0<x1<1、0<y1、y2<1、0<y1+y2≦1)からなり、前記障壁層は、一層当りの歪量が0%〜−0.2%であって、バンドギャップ波長λgが1μm以下のGaNy3Asy4Sb1−y3−y4(0<y3<0.01、0<y4<1、0<y3+y4≦1)またはN組成が1%以下のGaNAsからなり、前記多重量子井戸活性層の少なくとも片側に近接して引張歪閉じ込め層を有し、前記多重量子井戸活性層は、前記共振器に生じる光定在波の腹の位置に中心井戸層もしくは中心障壁層を持つように配置され、前記多重量子井戸活性層と前記引張歪閉じ込め層の合計厚さは、式(1)により示される臨界膜厚Hc以下であることを特徴とする。
Hc=(A/ε net ){ln(Hc/4)+1} ・・・(1)
(但し、Aは{4/π}{(1−0.25ν)/(1+ν)}により決まる定数(ν:ポアッソン比)、ε net は前記多重量子井戸活性層および前記引張歪閉じ込め層領域における正味の歪量である。)
請求項1に記載の発明によれば、1.2μm以上の発振波長を持つVCSELにおいて、障壁層のN組成を1%以下とすることにより、障壁層のバンドギャップ組成波長が1μm以下となるため、十分なキャリア閉じ込めを得ることができる。そして、障壁層のN組成を上記のようにすることによるネット歪の増加を、引張歪光閉じ込め層により補償することができるため、量子井戸活性層と引張歪光閉じ込め層の全体におけるネット歪を小さくすることができる。なお、以下において、化合物半導体を「A・・・B・・・(Sb)」と表記した場合は、「A・・・B・・・またはA・・・B・・・Sb」を指すものとする。なお、A、A等はIII族元素、B、B等はV族元素である。たとえば、GaInNAs(Sb)と表記した場合は、GaInNAsまたはGaInNAsSbを指す。
また、本発明のVCSELの態様は、障壁層のうち、量子井戸層の間に存在する障壁層の1層当りの厚さは25nm以下であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、障壁層一層当たりの厚さを25nm以下とすることで、光閉じ込めを大きくすることができ、しきい値電流密度の低減及び光高出力化を実現することができる。
また、請求項3に記載のVCSELは、多重量子井戸活性層と引張歪閉じ込め層の合計厚さは、式(2)により示される臨界膜厚H以下であることを特徴とする。
=(A/εnet){ln(H/4)+1} ・・・式(2)
(但し、Aは{4/π}{(1−0.25ν)/(1+ν)}で表される定数(ν:ポアッソン比)、εnetは前記多重量子井戸活性層および前記引張歪閉じ込め層領域における正味の歪量である。)
ここで、請求項2または3に記載の発明においては、前記合計厚さを臨界膜厚以下とするために、引張歪光閉じ込め層の厚さを厚くすることによりネット歪εnetを小さくすることが有効である。
請求項4に記載のVCSELは、引張歪閉じ込め層は、少なくとも一部がGaAsP、GaInAsP、AlGaInNAsP、GaAsPSb、GaInAsPSb、AlGaInNAsPSbのいずれかからなることを特徴とする。これらの材料は、基板を構成するGaAsよりも格子定数を小さくすることが可能であるため、引張歪閉じ込め層の材料として好適である。
請求項5に記載のVCSELは、半導体基板はGaAsであり、前記多層膜反射鏡はAlx3Ga1−x3As(0≦x3≦1)により構成されることを特徴とする。
請求項6に記載のVCSELは、半導体基板上に、複数組の多重量子井戸活性層を含み、式(3)で示される共振器長Lの共振器を有する面発光レーザにおいて、前記複数組の多重量子井戸活性層は、1層辺りの歪量の絶対値が2%以上である複数の量子井戸層と障壁層を有し、前記複数組の多重量子井戸活性層は、前記共振器に生じる光定在波の腹の位置に中心井戸層もしくは中心障壁層を持つように配置されていることを特徴とする。
L=mλ/2neff ・・・式(3)
(但し、mは3以上の整数、λは発振波長、neffは共振器の実効屈折率である。)
請求項7に記載のVCSELは、多重量子井戸活性層の歪量は−0.5%以上、+0.5%以下であることを特徴とする。
請求項6または7に記載の発明においては、大きな歪を生じる量子井戸活性層を持ったVCSELにおいて、ネット歪を増加させないために障壁層の厚さをある程度以上に保ちながら、良好な光閉じ込めを得ることができる。
さらに、請求項7に記載の発明によれば、上記の請求項6に記載の発明において、特にネット歪を小さくできるような障壁層の厚さとしながらも、良好な光閉じ込めを得ることができる。
本発明のVCSELの態様は、量子井戸層の少なくとも一層はGax4In1−x4y5Asy6Sb1−y5−y6(0<x4<1、0<y5、y6<1、0<y5+y6≦1)からなり、障壁層の少なくとも一層はGaNy7Asy8y9Sb1−y7−y8−y9(0<y7≦1、0<y8<1、0≦y9<1、0<y7+y8+y9≦1)またはAlx6Ga1−x6y10Asy11Sb1−y10−y11(0<x6、x7、y10、y11<1、0<y10+y11≦1)のいずれかからなることを特徴とする。この発明によれば、GaAs基板上で大きな圧縮歪を持つGaInNAs系の面発光レーザにおいて、ネット歪を小さくできるような障壁層の厚さとしながらも、良好な光閉じ込めを得ることができる。
本発明のVCSELの態様は、量子井戸層の数が3以上、15以下であることを特徴とする。量子井戸数を3以上とすることで、良好な利得が得られ、また、量子井戸数を15以下とすることで、共振器中での光吸収による損失を抑制することができる。
本発明のVCSELの態様は、発振波長が1.2μm以上であることを特徴とする。
本発明の請求項1乃至5に記載の発明によれば、良好なキャリア閉じ込めを実現しつつ、ネット歪を小さくすることができるため、発振閾値・温度特性・長期信頼性が共に良好なGaAs基板上のGaInNAs系VCSELを提供することができる。
また、本発明の請求項6乃至9に記載の発明によれば、障壁層の厚さをある程度以上に保ちながらも、良好な光閉じ込めを得ることができるため、発振閾値・光出力特性・長期信頼性が共に良好なGaAs基板上のGaInNAs系VCSELを提供することができる。
また、本発明の請求項10に記載の発明によれば、発振閾値・温度特性・光出力特性・長期信頼性が良好な長波長帯VCSELを提供することができる。
本発明の好適な実施形態について、以下に図面を参照しながら説明する。
[実施形態1]
実施形態1として、多重量子井戸活性層の上下に引張歪光閉じ込め層を設けた1.3μm帯VCSELについて説明する。
図1に、実施形態1に係るVCSELの縦断面図を示す。n型GaAs基板1上に、n型Al0.9Ga0.1As/GaAsを35.5ペア積層した下部多層膜反射鏡2、共振器長L=λ/n(λは発振波長、nは媒質の屈折率)を有する共振器3、p型Al0.9Ga0.1As/GaAsを積層した上部多層膜反射鏡5が積層されている。共振器3は活性層4を含んでいる。この積層構造の上部は、少なくとも上部多層膜反射鏡5の全層を含むように、直径dが約40μmのメサポスト6を形成している。
上部多層膜反射鏡5のうち、共振器3に最も近いペア中に、膜厚20nmのp型AlAs層が挿入され、これをメサポスト6の周囲から所定量酸化して酸化層9を形成することにより、選択酸化型電流狭窄構造が形成されている。酸化アパーチャ直径dOAは約6μmとする。上部多層膜反射鏡5の最上層表面には、p側電極7がリング状に形成されている。また、n型GaAs基板1の裏面にはn側電極8が形成されている。
ここで、共振器3の拡大図を図2(a)に、バンドギャップ図を図2(b)に示す。
活性層4は、7.3nm厚さのGa0.65In0.350.012As0.988量子井戸層14、20nm厚さのGaN0.006As0.994障壁層13(量子井戸層間)および30nm厚さのGaN0.006As0.994障壁層13’(量子井戸層の外側)からなる3重量子井戸構造となっており、活性層4の上および下にGaAs0.890.11引張歪光閉じ込め層12bおよび12aが形成されている。この引張歪光閉じ込め層12bおよび12aと活性層4とを合わせた部分を、ここでは歪層と呼ぶ。図中では符号15で示している。
さらに引張歪閉じ込め層12bおよび12aの上下に、GaAs光閉じ込め層11bおよび11aが形成され、全体が共振器長L=λ/nの共振器構造となっている。なお、本実施形態1においてはnが約3.5であるため、共振器長Lの値は約370nmとなる。なお、ここで共振器長Lとは「GaAs光閉じ込め層11aの厚さ+歪層15の厚さ+GaAs光閉じ込め層11bの厚さ」であり、下部多層膜反射鏡2と上部多層膜反射鏡5とで挟まれた部分の長さを指す。
なお、以上の構造は、有機金属気相成長法、分子線エピタキシー法、ガスソース分子線エピタキシー法、化学ビームエピタキシー法などのよく知られた結晶成長法により作製可能である。
ここで、引張歪光閉じ込め層12bおよび12aの適切な厚さについて説明する。歪層15のネット歪εnetは、引張歪光閉じ込め層12aおよび12bの厚さdn-SCHおよびdp-SCHにより、以下の式(4)で表される関係にある。なお、εn-SCHおよびεp-SCHは引張歪閉じ込め層12aおよび12bの歪量である。
εnet=(εn-SCH・dn-SCH+εMQW・dMQW+εp-SCH・dp-SCH)/(dn-SCH+dMQW+dp-SCH) 式(4)
このネット歪εnetを用いて、式(2)から臨界膜厚Hが求められる。このようにして求めた実施形態1のVCSELにおける臨界膜厚を引張歪光閉じ込め層12aまたは12bの膜厚に対してプロットした結果を、図3のグラフにおける点線で示す。なお、引張歪閉じ込め層12aと12bは同じ膜厚であるとして計算している。また、実施形態1のVCSELにおいて、前記引張歪閉じ込め層12a(12b)の膜厚に対応する歪層15の厚さを実線で表す。
図3よりわかるように、GaAs0.890.11引張歪光閉じ込め層の片側厚さが約17nm以上であれば、歪層15の厚さが臨界膜厚以下となることがわかる。以上の検討結果に鑑み、引張歪光閉じ込め層12aおよび12bの厚さをそれぞれ30nmとした。なお、引張歪光閉じ込め層自体の臨界膜厚は、式(2)から計算されるように630nmである。
このVCSELでは、閾値電流0.5mA、スロープ効率0.3W/A、100℃以上でのCW発振が得られ、低閾値・高効率・良好な温度特性が確認された。また、100℃、6mAでの連続通電において、3000時間通電後の光出力は初期値の95%であり、良好な長期信頼性が示された。
なお、引張歪光閉じ込め層を構成する材料は、GaAsP以外の材料、たとえばGaInAsP、AlGaInNAsPSbであってもよく、これらの結晶がGaAs基板上において持つ歪量に応じて、歪層の厚さが式(2)で示される臨界膜厚を超えないように、引張歪光閉じ込め層の厚さを設定すればよい。また、本実施形態1では、n型GaAs基板上に形成されたVCSELについて説明したが、導電型を逆にしたVCSELとしてもよいことは言うまでもない。
[実施形態2]
実施形態2として、GaInNAs(Sb)活性層およびGaNAs(Sb)障壁層からなる複数組の多重量子井戸活性層を用いた1.3μm帯VCSELについて説明する。
この実施形態2に係るVCSELの共振器部分の縦断面図を図4(a)に示す。共振器20内には二組の3重量子井戸活性層16aおよび16bを有しており、これらは共に7.3nm厚さのGa0.65In0.350.012As0.988量子井戸層17と16nm厚さのGaN0.019As0.981障壁層18からなっている。ここで各層の歪量は、量子井戸層17は+2.27%、障壁層18は−0.38%であるため、これらの各々の3重量子井戸活性層16aおよび16bのネット歪は、式(4)を用いて計算すると+0.30%となる。
また、共振器長L=1.5λ/nとし、この時の共振器20内における光定在波の電界分布を図4(b)に示す。3重量子井戸活性層16aおよび16bは、これらに含まれる中心井戸層17’が、それぞれ図4(b)に示された光定在波の腹19aおよび19bに位置するように配置されているものとする。
このVCSELの共振器以外の部分の構造は、図1に示したものと同様である。
この実施形態2に係るVCSELと、図7に示したような従来の共振器構造を持つVCSELについて、得られる光出力を以下のような方法で比較した。多重量子井戸活性層を有する光共振器から出力される光強度Pは、以下のように式(5)で表される。
P ∝ Itotal=(E+(E+・・・+(E 式(5)
ここで、Eは、量子井戸QWにおける光定在波の電界強度を表し、Itotalはこれらの二乗の和である。但し、電界強度は最大値が1となるように規格化されているものとする。図7に示した従来の共振器構造および図4(a)に示した本実施形態1に係るVCSELの共振器構造のそれぞれについて、式(5)にもとづきItotalを計算すると、前者は2.585、後者は5.17となる。つまり、本実施形態2においては、光出力を従来の2倍に向上できることが示された。
ここで、多重量子井戸活性層の組数は、上に示したものには限られない。たとえば、図5(a)および(b)は、共振器長L=2λ/nとし、三組の3重量子井戸活性層16a、16bおよび16cを、これらに含まれる中心井戸層17’がそれぞれ光定在波の腹19a、19bおよび19cに位置するように配置した場合における、共振器構造および光定在波分布である。この場合、式(5)を用いて計算すると、図7に示したような従来の共振器構造を持つVCSELに比べて、光出力を3倍に向上できることがわかる。
また、図6(a)および(b)は、共振器長L=1.5λ/nとし、二組の5重量子井戸活性層18aおよび18bを、これらに含まれる中心井戸層17’がそれぞれ光定在波の腹19aおよび19bに位置するように配置した場合における、共振器構造および定在波分布である。この場合、図7に示したような従来の共振器構造を持つVCSELに比べて、光出力を5倍に向上させることができる。
なお、本実施形態2の各形態例においては、各々の組に含まれる量子井戸層の数を奇数とし、中心井戸層が定在波の腹に一致するように配置した場合について示したが、各々の組に含まれる量子井戸層の数が偶数である場合には、中心障壁層が定在波の腹に一致するように配置すれば良い。
なお、障壁層はGaNAs(Sb)に代えてGaNAsP(Sb)またはAlGaNAs(Sb)としてもよい。また、本実施形態2では、n型GaAs基板上に形成されたVCSELについて説明したが、導電型を逆にしたVCSELとしてもよいことは言うまでもない。
以上示したように、本実施形態2に係るVCSELは、障壁層の厚さをある程度以上に保つことにより量子井戸活性層のネット歪を小さくしながらも、良好な光閉じ込めを得ることができるため、低閾値・高出力動作と高信頼性とを両立させることができる。なお、高信頼性を得るために、量子井戸活性層のネット歪は−0.5%以上、+0.5%以下であることが望ましい。
は、本発明の実施形態1に係るVCSELの層構造を示す縦断面図である。 (a)は、図1に示したVCSELの共振器構造を示す縦断面図である。(b)は、(a)に対応するバンドギャップ図である。 は、GaAs0.890.11引張歪光閉じ込め層の片側厚さに対して、歪層の厚さおよび歪層の臨界膜厚を示したグラフである。 (a)は、本発明の実施形態2に係るVCSELの共振器構造を示す縦断面図である。(b)は、共振器中の定在波分布を示す図である。 (a)は、本発明の実施形態2に係るVCSELの他の共振器構造を示す縦断面図である。(b)は、共振器中の定在波分布を示す図である。 (a)は、本発明の実施形態2に係るVCSELの他の共振器構造を示す縦断面図である。(b)は、共振器中の定在波分布を示す図である。 (a)は、従来のGaInNAs系長波長帯VCSELの共振器構造を示す縦断面図である。(b)は、共振器中の定在波分布を示す図である。
符号の説明
1 n型GaAs基板
2 下部多層膜反射鏡
3 共振器
4 活性層
5 上部多層膜反射鏡
6 メサポスト
7 p側電極
8 n側電極
11a、11b GaAs光閉じ込め層
12a、12b 、GaAs0.890.11引張歪光閉じ込め層
13、13’ GaN0.006As0.994障壁層
14 Ga0.65In0.350.012As0.988量子井戸層
15 歪層
16a、16b 3重量子井戸活性層
17 Ga0.61In0.390.018As0.982量子井戸層
18 GaN0.019As0.981障壁層
19a、19b、19c 光定在波の腹
20 共振器
26 多重量子井戸活性層
27 GaInNAs量子井戸層
28 GaNAs障壁層
29 光定在波の腹
30 共振器

Claims (9)

  1. 半導体基板上に、複数の量子井戸層および障壁層を含む多重量子井戸活性層を備えた共振器と、当該共振器の上下を挟む多層膜反射鏡とを有する面発光レーザにおいて、
    前記複数の量子井戸層は、一層当りの圧縮歪が+2%以上であって、少なくとも一層はGax1In1−x1y1Asy2Sb1−y1−y2(0<x1<1、0<y1、y2<1、0<y1+y2≦1)からなり、
    前記障壁層は、一層当りの歪量が0%〜−0.2%であって、バンドギャップ波長λgが1μm以下のGaNy3Asy4Sb1−y3−y4(0<y3<0.01、0<y4<1、0<y3+y4≦1)またはN組成が1%以下のGaNAsからなり、
    前記多重量子井戸活性層の少なくとも片側に近接して引張歪閉じ込め層を有し、
    前記多重量子井戸活性層は、前記共振器に生じる光定在波の腹の位置に中心井戸層もしくは中心障壁層を持つように配置され、
    前記多重量子井戸活性層と前記引張歪閉じ込め層の合計厚さは、式(1)により示される臨界膜厚Hc以下であることを特徴とする面発光レーザ。
    Hc=(A/εnet){ln(Hc/4)+1} ・・・(1)
    (但し、Aは{4/π}{(1−0.25ν)/(1+ν)}により決まる定数(ν:ポアッソン比)、εnetは前記多重量子井戸活性層および前記引張歪閉じ込め層領域における正味の歪量である。)
  2. 前記障壁層のうち、前記量子井戸層の間に存在する障壁層の1層当りの厚さは25nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
  3. 前記引張歪閉じ込め層は、少なくとも一部がGaAsP、GaInAsP、AlGaInNAsP、GaAsPSb、GaInAsPSb、AlGaInNAsPSbのいずれかからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
  4. 前記半導体基板はGaAsであり、前記多層膜反射鏡はAlx3Ga1−x3As(0≦x3≦1)により構成されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の面発光レーザ。
  5. 前記共振器は、複数組の前記多重量子井戸活性層を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の面発光レーザ。
  6. 前記共振器は、式(2)で示される共振器長Lを備えていることを特徴とする請求項5に記載の面発光レーザ。
    L=mλ/2neff・・・(2)
    (但し、mは3以上の整数、λは発振波長、neffは共振器の実効屈折率である。)
  7. 前記多重量子井戸活性層の歪量は−0.5%以上、+0.5%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の面発光レーザ。
  8. 前記量子井戸層の数が3以上、15以下であることを特徴とする、請求項5乃至のいずれか1項に記載の面発光レーザ。
  9. 発振波長が1.2μm以上であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の面発光レーザ。
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