JP2007194561A - 面発光レーザ - Google Patents

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Abstract

【課題】850nm帯面発光レーザにおける、高速変調化に伴う素子信頼性低下の課題を解決するための技術を提供する。
【解決手段】第1導電型GaAs基板上に、第1導電型多層膜ブラッグ反射鏡(DBR)層、活性層、及び第2導電型DBR層を有する発振波長が820nm以上880nm以下の面発光レーザであって、前記活性層が、圧縮性の歪みを有するInxGa1-xAs1−y1y1ウェル層と、引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2バリア層とを有する量子井戸構造を有し、前記ウェル層のP組成y1と前記バリア層のP組成y2との間に、|y1−y2|≦0.05の関係が成立することを特徴とする面発光レーザ。
【選択図】 図1

Description

本発明は、面発光レーザに関し、特に、850nm帯の面発光レーザにおける高速変調動作と高信頼性に関してである。
面発光レーザ(VCSEL)は、その低コスト性、低消費電力性から広くデータ通信用の光源として用いられている。特に波長が850nm帯のVCSELは、ギガビットイーサネット(登録商標)やファイバーチャネル用の光源として広く用いられている。データ通信速度の増大に従って、VCSELの変調速度は10Gbps(ギガビット毎秒)といった高速変調動作が要求されてきている。VCSELを高速で変調するためには、緩和振動周波数(fr)を上げることと、CR時定数を小さくすることが必要となる。
frに関しては、電流を小さい領域に狭窄することによって電流密度を増大させ、狭窄された領域での光子密度を高くすることでfrを増加させることが可能である。しかしながら、VCSELにおいては、活性層の電流密度を大きくすることによって、活性層の温度も急速に上昇し、素子の信頼性に問題が生じる。これは、活性層におけるダークライン欠陥や点欠陥等に起因した転位の増殖速度が、電流密度に関しては電流密度の2乗に比例して、または活性層の温度に関しては温度の指数関数に比例して増大するために、素子寿命が短くなるためである。以上のことから、高速変調動作と素子の信頼性との間には、非常に強いトレードオフの関係がある。
従来、850nm帯のVCSELの活性層にはGaAs/AlGaAs系の量子井戸活性層が用いられているが、このGaAsの転位の増殖速度は、GaAs基板上の歪みInGaAsやInP基板上のInGaAsP系の材料と比較して大きく、容易に転位が増殖する。また、バリア層のAlGaAsは、光強度の強い所では転位が増殖しやすい。このような点から、GaAs/AlGaAs系の量子井戸活性層を用いた850nm帯のVCSELにおいて、高速・高信頼性を両立するのは困難である。
転位の増殖速度は活性層の材料系に大きく依存するので、信頼性向上のために転位の動きにくい材料系を850nm帯VCSELの活性層に用いる技術が非特許文献1に開示されている。この文献では、ウェル層としてInGaAsPを用い、バリア層としてInGaPを用いている。ウェル層にInを入れて転位の増殖速度を抑制し、バリア層にはAlを用いない材料系にすることで、素子の信頼性向上を図っている。これは、Alを用いない系を用いることによって、Alに起因する成長中やプロセス工程での酸素の混入による非発光再結合センターの増加を抑制することができる。
また、InGaAsPウェル層に圧縮性の歪みをかけ、InGaPバリア層に引張性の歪みをかけることによって、活性層全体として歪みが補償される構造になっているため、歪みに対する信頼性も高くなっている。また、特許文献1では780nm帯のVCSELの高信頼性を目的として、ウェル層としてInGaAsPを用い、バリア層としてInGaPまたはInGaAsPを用いることを開示している。その効果は、上記非特許文献1と同じである。
また、端面発光型の半導体レーザの高信頼活性層材料としてInGaAsPウェルと、GaAsPバリアとを組み合わせた技術が開示されている(例えば、特許文献2、3)。特許文献2では、従来のAlGaAs系材料の端面発光型レーザの劣化の大きな要因の一つであるレーザ端面におけるCOD(衝撃劣化)を抑制するために、端面におけるAlに起因した自然酸化がなくなるようにAlを用いない材料系としてInGaAsP/GaAsP系材料を用いることを開示している。また、特許文献3では、780nm帯のAlを用いない材料系としてGaAsPあるいはInGaAsP系材料をバリア層に用いることを開示している。
しかしながら、非特許文献1において報告されたように、ウェル層としてInGaAsPを用い、バリア層としてInGaPを用いた活性層構造にはいくつかの問題がある。まず第1の問題点は、特許文献3にも指摘されているようにInGaAsPウェル層とInGaPバリア層の価電子帯バンド不連続値(ΔEv)が大きいことによって、ウェル層間で正孔キャリアの注入が不均一になってしまう点である。
これは、ウェル層間を正孔が通り抜ける際にバリア層のポテンシャル障壁が高いため十分な通り抜けができないため、最もp側半導体側のウェル層と最もn側半導体側のウェル層との間で正孔濃度に大きな差が生じてしまうためである。注入された正孔キャリアの少ないウェル層は利得が十分でないため、レーザ発振への寄与が弱まってしまう問題点が生じる。しかしながら、高速変調動作にはウェル数を増やすことにより1ウェル当たりのキャリア密度を下げて微分利得を増大させることが必要となるため、不均一キャリア注入が生じるΔEvの大きい材料系による量子井戸構造の活性層では難があると考えられる。
第2の問題点は、InGaPバリア層へのC(炭素)ドーピングがn型になってしまい、信頼性の高い変調ドープ構造を作成することが難しい点である。高速変調動作には量子井戸構造に変調p型ドーピングすることが有効であり、この場合バリア層にのみp型ドーピングを施し、発光層であるウェル層には発光効率を低下させないためにドーピングをしない。バリア層にドーピングするp型ドーパントとしては、拡散が小さく点欠陥を生じさせないような性質が求められるため、C(炭素)ドーパントが有効である。
しかしながら、CドーパントはInGaPにドープされると通常の成長条件下ではn型のドーパントとなることが知られており、p型ドーパントとして用いることができない。InGaPのp型ドーパントとしてはZnやBeがあるが、いずれも拡散、点欠陥の発生といった問題点がある。従って、InGaPバリア層を用いると、信頼性の高い変調ドープ構造を作製することができない。
第3の問題点は、ウェル層とバリア層とのヘテロ界面においてV族切り替え界面の問題が生じる点である。InGaAsPとInGaPで構成される量子井戸構造では、この2つの材料の接合するところにヘテロ界面が生じるが、そこでは急峻なV族切り替え技術が要求される。
急峻性を高めるために、V族切り替え時間を十分にとると、待機中に表面が劣化し、ヘテロ界面に非発光中心が多数形成されてしまう。例えば、InGaAsPウェル層とInGaPバリア層の場合、As/PのV族切り替えを急峻にするためのヘテロ界面での成長中断時間を変えると、量子井戸構造からのフォトルミネッセンスが大きく変わることが報告されている(例えば、非特許文献2)。これは上記材料系の組み合わせのV族組成がウェル層とバリア層で大きく異なるために、界面V族組成を急峻にするためには十分な待機時間が必要であるが、一方このような成長中断している間に界面には非発光再結合中心や変性層が生じるため光学特性は劣化するといったトレードオフがあることに問題がある。
一方、特許文献2で開示された技術は、端面発光レーザの劣化の大きな要因の一つであるレーザ端面におけるCOD(衝撃劣化)を抑制するために、活性層材料にAlを用いない材料系であるInGaAsP/GaAsP系を用いることを開示している。この発明は、端面発光レーザのCOD劣化を抑制するための技術を開示しており、それをそのままVCSEL構造に適用することはできない。これは、VCSELの活性層領域は大気に晒されていないため、COD劣化という劣化形態がVCSELには存在せず、特許文献2で問題としている劣化の形態はVCSELでは問題にならないからである。
本発明の課題は、VCSEL構造における、大気に晒されることのない活性層領域の転位の増殖による劣化を抑制する技術であり、このため、COD劣化の抑制を意図した特許文献2で指定された請求項に記載の主要な構成要素が、850nm帯のVCSELには適用できないといった問題がある。
また、特許文献1では、780nm帯のAlフリーの活性層材料としてGaAsPあるいはInGaAsP系材料をバリア層に用いることを開示している。しかし、量子井戸構造はウェル層とバリア層から形成されており、それらの組成、層厚等の適切な組み合わせにおいて機能するものであり、発振波長が異なる場合は設計思想から大幅に変える必要があり、本発明の850nmVCSELの活性層としてそのまま適用することはできない。
例えば、特許文献3の実施例では、ウェル層はGaAs層に格子整合したIn0.162Ga0.838As0.6710.329で構成し、バリア層は歪み量−1%のGaAs0.720.28で構成しているが、この構造では量子井戸構造全体の平均歪みがGaAs基板と整合しておらず、歪みによる信頼性の点で問題が生じる。また価電子帯バンド不連続値もこの組成組み合わせでは十分ではなく、キャリア閉じこめに問題がある。
この問題を解決するためにウェル層に圧縮性の歪みを加え、歪みを補償するような組成に設定すると、今度はその組成がInGaAsPの不混和領域に入ってしまい、結晶成長上の問題が発生する。このように、780nm帯のInGaAsPウェル/GaAsPバリアの材料系では、高信頼な歪み構造、十分なキャリア閉じこめ、良好な結晶性等の設計思想が実現できない点に課題がある。
特開2004−281968号公報(第11頁、図1) 特開2002−305352号公報(第6頁、図1) 特開2004−039747号公報(第22頁、図2) H.C.Kuo等、"Electronics Letters"、2003年、Vol.39、No.14、p.1051−1053 H.C.Kuo等、Journal of Crystal Growth 2004年 Vol.261、355−358頁、図2
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであり、低閾値性、高効率性、高速変調性といった高性能な素子特性と高信頼性とを同時に満足する850nm帯VCSELを提供すること目的とする。
本発明の一つの態様に係る面発光レーザは、第1導電型GaAs基板上に、第1導電型多層膜ブラッグ反射鏡(DBR)層、活性層、及び第2導電型DBR層を有する発振波長が820nm以上880nm以下の面発光レーザであって、前記活性層が、圧縮性の歪みを有するInxGa1-xAs1−y1y1ウェル層と、引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2バリア層とを有する量子井戸構造を有し、前記ウェル層のP組成y1と前記バリア層のP組成y2との間に、|y1−y2|≦0.05の関係が成立することを特徴とするものである。
これは、圧縮性の歪みを有するInGa1−xAs1−y1y1ウェル層と引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2バリア層から構成する。この材料系では、ウェル層にInが含まれていることにより、欠陥の増殖速度が従来のGaAsウェル層に比べて遅い。また、バリア層はAlを含まないGaAsPから構成されているために、Alに起因する成長中やプロセス工程での酸素の混入による非発光再結合センターの増加を抑制することができる。このため、本材料系により構成された面発光レーザは、高い信頼性を有する。さらに、ウェル層とバリア層のV族組成がほぼ同じになるような材料系の組み合わせにすることにより、ヘテロ界面における非発光再結合センターや変性層の影響を受けない、実質的に高信頼な量子井戸構造が実現可能となる。
また、前記第1導電型DBR層と前記活性層の間、または前記第2導電型DBR層と前記活性層の間に選択酸化型またはイオン注入型の電流狭窄層を有するとよい。さらに、前記量子井戸構造が複数の前記ウェル層を有し、前記ウェル層の間に位置するバリア層の層厚が10nm以下であり、前記ウェル層の間に位置するバリア層のP組成y2が、0.15≦y2≦0.35であることを特徴とするとよい。これは、バリア層のP組成を上記のようにすることによって、タイプ2型の超格子構造ではなく、タイプ1型の超格子構造を作成することができ、このことによって、高信頼性を有する量子井戸構造を作成することができる。
さらに、前記量子井戸構造の前記基板に最も近い層と最も遠い層とが前記バリア層であり、前記量子井戸構造の前記基板に最も近い層と最も遠い層とが、層厚5nm以下のGaAs層に接しているとよい。これは、クラッド層と活性層領域における量子井戸構造を作成する間に待機するためであり、この待機時間に生じる表面酸化、不純物付着や変性層の形成などをGaAs層によって防ぐことができる。
さらにまた、前記バリア層が、炭素をドーピングすることにより形成されたp型半導体を有することを特徴とすることが好ましい。これは、炭素は拡散が小さく点欠陥を生じさせないため、信頼性の高い変調ドープ構造を作成することができ、量子井戸構造に変調p型ドーピングすることによって信頼性の高い高速変調を行うことができるようになるためである。
本発明の他の態様に係る面発光レーザは、第1導電型GaAs基板上に、第1導電型多層膜ブラッグ反射鏡(DBR)層、活性層、選択酸化型またはイオン注入型の電流狭窄層、及び第2導電型DBR層が順次積層され、第1電極と、前記第2導電型DBR層に接し電気的に接続された第2の電極と、を有する発振波長が820nm以上880nm以下の面発光レーザであって、前記活性層が、圧縮性の歪みを有するInxGa1-xAs1−y1−z1y1Sbz1ウェル層と、引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2バリア層を有する量子井戸構造を有することを特徴とするものである。ウェル層とバリア層のV族組成がほぼ同じになるような材料系の組み合わせにすることにより、ヘテロ界面における非発光再結合センターや変性層の影響を受けない、実質的に高信頼な量子井戸構造が実現可能となると同時に、Sbを含む材料を用いることによって、設計の自由度を増加させることができる。
本発明に係る面発光レーザによれば、本発明の面発光レーザは、活性層の材料としてP組成のほぼ等しいInGaAsP(Sb)/GaAsP系を用いているので、従来のGaAs/AlGaAs系の活性層で問題であった信頼性の問題を緩和する効果や、従来のInGaAsP/InGaP系の活性層で問題であったV族切り替え界面での非発光センターや正孔の不均一注入の問題を解決する効果を有する。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を、850nm帯の面発光レーザに適用したものである。ここでいう850nm帯の面発光レーザとは、発振波長が820nm以上880nm以下の面発光レーザのことである。
図1に本実施の形態に係る面発光レーザの構成図を示す。本実施の形態に係る面発光レーザ1においては、第1導電型のGaAs基板11上に、第1導電型の多層膜ブラッグ反射鏡(DBR)層12、活性層領域14を含んだ共振器部13、選択酸化型またはイオン注入型の電流狭窄構造15、第2導電型のDBR層16が順次積層されている。第1導電型のDBR層12上には第1の電極17が形成され、第2導電型のDBR層16上には第2の電極18が形成されている。
第1導電型のDBR層12と第2導電型のDBR層16とは、高屈折率層121、161と低屈折率層122、162の周期構造によって構成されている。電流狭窄構造15は、高抵抗層151と狭窄層152から構成される。
第1の電極17と第2の電極18との間に電圧が印加されたときに活性層領域14に流れこむ電流は、この電流狭窄構造15において、狭窄層152の幅に狭窄されることになる。なお、図1においては電流狭窄構造15が第2導電型DBR層16と共振器部13との間に形成されていたが、第1導電型DBR層12と共振器部13との間に形成されてもよく、また、第2導電型DBR層16と共振器部13との間、第1導電型DBR層12と共振器部13との間の両方に形成されても良い。
共振器部13は、活性層領域14と活性層領域14の上下に積層されているGaAs層19とクラッド層20とを有している。活性層領域14は、ウェル層141とバリア層142から構成される量子井戸構造になっている。本実施の形態に係る面発光レーザにおいては、ウェル層141は圧縮性の歪みを有するInGa1−xAs1−y1y1から構成され、バリア層142は引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2層から構成されている。なお、上述の構成では、ウェル層141の構成をInGaAsPにしているが、InGaAsPSbで構成されていてもよい。また、ウェル層141のP組成y1とバリア層142のP組成y2との間に、|y1−y2|≦0.05の関係が成立している。この理由を以下に説明する。
まず、このV族組成が略等しいInGaAsPから構成されるウェル層141とGaAsPから構成されるバリア層142との組み合わせにより、850nm帯の発光と良好なキャリア閉じこめおよび歪みの点からみて安定な構造が実現できると保証された訳ではない。即ち、InGaAsP/GaAsP系の組み合わせにおいて、波長、キャリア閉じこめ、歪み安定性といった観点から850nmVCSELの活性層として機能するような組成の組み合わせが存在するかどうかが重要な点となる。
そこで、本材料系が850nmの活性層として機能するかどうかを、ウェル層141、バリア層142の組成を変えてバンド計算を行って調べた。その結果、850nm帯ではInGaAsP/GaAsP系の組み合わせにおいてV族組成が略等しい(|y1−y2|≦0.05)としても、キャリア閉じこめは良好であり、かつ量子井戸構造の平均歪み量はほぼGaAs基板と整合することを見いだした。
図2は、850nm帯発光のInGaAsPの組成および格子整合条件組成を図示したものである。横軸はInGaAsPのIn組成であり、縦軸はInGaAsPのP組成である。図2において、右端の線はIn組成が0であるので、GaAsPの組成である。つまり、右端の線がバリア層の組成にあたる。
ここでは、InGaAsPをウェル層141として用いるので、ウェル層141の層厚を変化させることによって量子準位シフト量が発生するため、発光波長を変えることができる。例えば、ウェル層141の層厚を5nmとすると量子準位シフト量が大きいため、バリア層142の障壁の高さにも少し依存するが)、ウェル層の歪んだ状態でのバルクのバンドギャップEgstは、1.382eV(λ=897nm)程度と小さくても良いが、ウェル層141の層厚が10nmの場合は、量子準位シフト量が大きくないため、ウェル層141の歪んだ状態でのバルクのバンドギャップEgstは、1.421eV(λ=873nm)程度が必要となる。
ウェル層141の層厚としては、5nmから10nm程度が量子効果を出すのに最も適した層厚であるので、図2の中における斜線部分に示された(In,P)組成領域が850nm発光用のウェル層141の組成として適していることが示される。また、図2にGaAs基板11と格子整合するような(In,P)組成を点線で示した。この点線より左側の領域では圧縮性の歪みが、右側の領域では引張性の歪みが生じる。斜め線で示された(In,P)組成領域は、上述のGaAs基板11と整合する組成を示す点線より左側の領域に位置するため、850nm帯のウェル層141は必ず圧縮性の歪みがかかっていることがわかる。また、InやPの組成が大きいほど図2において、上述の点線との間隔が大きくなることから圧縮性の歪み量が大きくなることがわかる。
また、図2に示されるように、V族元素が略同一の組成条件下では、850nm帯の適正組成を示す斜線部分において、GaAs基板11と格子整合する点線に対して略対称の位置に図2に示されるグラフの右端の線が位置するため、GaAsPで構成されるバリア層142における圧縮性歪みとInGaAsPで構成されるウェル層141における引張性歪みが略等しい量になるので、量子井戸構造の平均格子定数はほぼGaAs基板11と一致させることができ、歪み構造の安定性も保証される。
次に、InGaAsPから構成されるウェル層141と略同じV族元素の組成を有するGaAsPから構成されるバリア層142とのバンド構造を考えてみる。ここではP組成0.2を例にとり、Inx1Ga1−x1As0.80.2/GaAs0.80.2の量子井戸構造において、ウェル層141のIn組成x1を大きくしていった時のバンドラインアップを調べた。図3にその結果を示した。
図3において、横軸はInGa1−xAs0.80.2中のIn組成であり、縦軸がエネルギー(eV)であり、上に示される曲線が価電子帯上端のエネルギー準位であり、下に示される曲線が伝導帯下端のエネルギー準位である。また、図3におけるグラフの左端の線は、In組成が0を示す線であるので、バリア層142であるGaAs0.80.2の価電子帯上端、伝導帯下端のエネルギー位置を示している。
GaAs0.80.2から構成されるバリア層142は引張性の歪みがかかっているので、価電子帯上端には軽い正孔がきている。Inx1Ga1−x1As0.80.2から構成されるウェル層141のIn組成x1を徐々に上げていくと、伝導帯下端のエネルギーは単調に下がって行くが、ウェル層141のIn組成x1が低いときには、価電子帯上端は軽い正孔で占められているためほとんどエネルギー位置が変化せず、ほとんどGaAs0.80.2の正孔のエネルギーと変わらない。このため、正孔の閉じこめができず、伝導帯の底と価電子帯の底が別の層にあるタイプ2型の超格子構造となっている。この状況は、GaAs基板11と略格子整合するまで続く。
さらにIn組成を上げていくとバリア層142には圧縮性の歪みがかかることになり、重い正孔が価電子帯上端に位置するようになる。そのため、単調に価電子帯上端エネルギーが下がって行くことになる。このように、P組成を一定としてIn組成を大きくしてゆくと、格子整合条件組成まではタイプ2型の超格子構造であり、格子整合条件よりIn組成を大きくしてゆくとウェル内への電子、正孔キャリア閉じこめが共に大きくなってゆくことがわかる。
さらに、ウェル層141のInGaAsPバルクのバンドギャップが1.382eVに一定になるように、(In,P)組成を変化させたときのバンド端変化を調べた。図4にその結果を示す。図4において、横軸はInGaAsPのP組成であり、縦軸はエネルギー(eV)である。上の曲線がInGaAsPのP組成を変化させたときの伝導帯下端のエネルギー準位であり、下の曲線がInGaAsPのP組成を変化させたときの価電子帯上端のエネルギー準位である。バンドギャップを1.382eV一定になるように変化させるのは、図2においてウェル層141のInGaAsPバルクの組成を、Egst=1.382eVの線上に沿った斜め矢印に沿って変化させたことと同じである。
図4に示されるように、InGaAsPウェル層のバンドギャップを1.382eV一定にして(In,P)組成を変化させた場合、伝導帯および価電子帯の端のエネルギーはほとんど変わらないことがわかる。このことは、ウェル層141のバンドギャップが決まれば、その(In,P)組成の選び方でバンドのラインアップが変わることはなく、結晶成長上もしくは積層する層構造の歪みの点で有利な組成を自由に選ぶことができることを意味する。このため、ヘテロ界面を形成する上で有利な、GaAsPで構成されるバリア層142のP組成とInGaAsPで構成されるウェル層141のP組成が等しいような構成が総合的に考えて良いということになる。
以上のことから、ウェル層141のバルクのバンドギャップを一定にした時、GaAsPで構成されるバリア層142との伝導帯バンド不連続値ΔEcや価電子帯バンド不連続値ΔEvは、GaAsPのP組成によって決まることがわかる。図5に、図2に示した850nm帯発光のInGaAsPの組成および格子整合条件組成と、このグラフの右端軸にGaAsPのP組成で決まる伝導帯バンド不連続値ΔEcと価電子帯バンド不連続値ΔEvの値を示した。
図5に示されるように、GaAsPから構成されるバリア層142においてP組成が増大するにしたがって、伝導帯バンド不連続値ΔEcと価電子帯バンド不連続値ΔEvが増大することがわかる。P組成が0.15より小さい場合ΔEvは29meVより小さくなるためウェル層141への正孔の閉じこめ効果が小さくなり、デバイスとして良好な特性が得られない。一方、バリア層142とウェル層141とのP組成を大きくしてゆくと今度は、バリア層142を構成するGaAsPとウェル層141を構成するInGaAsP層とがともにGaAs基板11に対する格子不整合度が大きくなり、量子井戸としては歪みが整合していても、単層としての歪み臨界を越えることになり、素子特性や素子の信頼性の点で問題が生じてくる。
また、量子井戸構造は面発光レーザ(VCSEL)に適用されるため、量子井戸構造は電界強度の腹の部分に存在していることが重要である。このため、バリア層142の層厚は端面発光レーザの場合より小さいことが重要であり、10nm以下であることが望ましい。さらに、バリア層142の層厚は、正孔と電子の閉じ込め効果が確実なものにするためにウェル層141の層厚以上であることが必要である。この層厚条件から、結晶構造安定上の臨界P組成が、0.35であることがわかる。
以上のことから、本発明の850nm帯のInxGa1-xAs1−y1y1/GaAs1−y2y2系量子井戸構造では、P組成がウェル層141とバリア層142とで|y1−y2|≦0.05である場合に、信頼性、特性共に良好な活性層が得られることが明らかになる。また、好ましくはバリア層のP組成y2が、0.15≦y2≦0.35である時にその効果が顕著であることを示された。さらにバリア層142の層厚は10nmより小さくすることでウェル層141を出来るだけ密集させることが望ましい。
また、最も第1導電型DBR層12側に位置するバリア層142と、最も電流狭窄構造15側に位置する層のバリア層142には、5nm以下のGaAs層19が接触していることが望ましい。これは、量子井戸構造の両側は、例えばAlGaAs系材料でクラッドし、さらにその外側はAlGaAs系の多層膜ブラック反射鏡で挟むような構造になるが、この際、InGaAsP/GaAsP系量子井戸構造とAlGaAs系材料とでは最適成長温度が一般に異なるため、AlGaAs層と量子井戸構造とを積層する間に、待機工程を設け、成長温度を次に成長する層の最適温度に合わせる。
しかし、その場合、AlGaAs層やGaAsP層が露出した状態での待機になり、Alによる待機中の表面酸化、不純物付着や、GaAsP層における変性層の形成などが生じる。これを防ぐために、本発明ではGaAs層を量子井戸構造の両側に配置し、待機工程中はGaAs面が露出しているような構造にする。しかし、GaAs層が厚いと850nmの光を吸収し、VCSELの特性を低下させてしまうため、このGaAs層の層厚は、5nm以下にして量子準位の波長が850nmより短波にする必要がある。
さらにバリア層142がC(炭素)をドーピングされた構成にすることが好ましい。レーザを高速変調する手法の一つとして量子井戸構造のバリア層にp型ドーピングを施す、いわゆる変調ドープ構造がある。p型のドーパントとしては、信頼性の点から拡散定数が小さく、欠陥の作りにくいドーパントが求められる。炭素(C)はIII−V族化合物半導体に対して両性不純物として作用し、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)等に比べて拡散し難くまた欠陥も生じにくいが、母体材料によってはn型ドーパントとなる。例えば、InPやInGaPなどに対してはn型ドーパントとして作用する。本発明のGaAsPから構成されるバリア層142に対しては炭素(C)ドーパントはp型のドーパントとして機能するので、p型変調ドープ構造が作製可能となる。
第1の電極17と第2の電極18に電圧が印加されることによって面発光レーザ1に注入された電流は、電流狭窄構造15によって所望の大きさに狭窄される。そして、この狭窄された電流はウェル層141で電子と正孔の発光再結合という形で光に変換される。ここで生成された光は、第1導電型のDBR層12と第2導電型のDBR層16から形成される光共振器により定在波が形成される。また、上記の定在波の腹の近傍に密集して位置するウェル層141によるゲインと共振器中のロスが釣り合った時に、レーザ発振を起こすことができる。
第1導電型のDBR層12、第2導電型のDBR層16及び共振器部13は、面発光レーザ1の発振波長である850nm帯になるように層厚設計がされている。ウェル層141における発光波長も850nm帯になるように上述のように組成、層厚を設計しているので、発光した光は効率良く光共振され低閾値でレーザ発振する。
また、ウェル層141は圧縮性の歪みを有し重い正孔の面内有効質量が軽くなるため、低キャリア注入で反転分布が生じ、低閾値発振の要因となる。さらに、バリア層142のP組成y2が上述の範囲にあることによって、電子と正孔とのウェル層141内への閉じ込めが強くすることが可能となり、低閾値発振、高温動作、高速変調等の良好なレーザ動作特性の一因とすることができる。
一方、バリア層142はウェル層141とは逆の歪みである引張性の歪みを有しているため歪み構造が安定であること、ウェル層141とバリア層142とのP組成が略等しいためにヘテロ界面での欠陥が少ないこと、及びウェル層141にInが含有されていることによる転位が増大することが低いことから高信頼性を有する面発光レーザを作成することができる。さらに、5nm以下のGaAs層19による待機界面の高品質化により、電流注入時の活性層劣化が大幅に抑制され高信頼性動作が可能となる。また、バリア層142における変調Cドーピングにより、高信頼性を維持したまま高速変調動作を可能としている。
ウェル層141がInGaAsPの代わりにInGaAsPSbで構成されている場合は、小さいIn組成でも正孔のキャリア閉じこめが可能となり、設計の自由度が増す。InGaAsP層においては、ある程度In組成を大きくしなければ、タイプ2型超格子になったり、正孔の閉じこめが弱かったりする。
この問題点を克服するために、本発明ではウェル層141にさらにアンチモン(Sb)を添加しInGaAsPSbウェル層としてもよい。Sb元素をGaAs系材料に入れると、伝導帯下端のエネルギーはほとんど変化しないで、価電子帯上端のバンドエネルギーが伝導帯側に引き寄せられる形で上昇する。このため、In元素よりも効果的に正孔のキャリア閉じこめが可能となる。SbはInと同様、混晶の格子定数を大きくする方向に働くので、歪みの点からは、InとSbは同じような効果がある。一方でIn元素は、電子のキャリア閉じこめを実現する上で必要であり、InとSbの混入割合を調整することにより、ΔEcやΔEvを比較的自由に設計することが可能となる。
本実施例に係る面発光レーザの構成図を図6に示す。本実施例においては、上述の実施の形態における構成に、第1導電型のDBR層と第2導電型DBR層とにおいて、低屈折率層と高屈折率層との間にグレーディット層を挟んでいる。そこで図6を用いて本発明による面発光レーザの第1の実施例を説明する。ここでは発振波長850nmの面発光レーザを例にとって説明する。面発光レーザの構造を概略的に見ると、n型のDBR層22とp型のDBR層26とそれに挟まれた形で共振器部23が積層され、n型電極27、p型電極28と電流狭窄構造25とがプロセスによって形成されている。以下、各部について詳細に説明する。
まず、Siドープ(4×1018cm−3)のn型GaAs基板21上に、低屈折率層としてSiドープ(2×1018cm−3)Al0.9Ga0.1As層221と高屈折率層としてSiドープ(2×1018cm−3)Al0.13Ga0.87As層222との一対を基本単位にして35.5ペア(終端はAl0.9Ga0.1As層122)のn型DBR層12を有機金属気相成長(MOCVD)法にて積層する。もちろん、分子線エピタキシー成長(MBE)法を用いてもよい。低屈折率層と高屈折率層の間は、電気抵抗低減のためにSiドープAlGaAsグレーディット層223が挿入される。DBRを構成する各層厚は、いわゆるλ/4の多層反射膜になるように設計される。
次に共振器部23であるが、n型DBR層22の上にSiドープAl0.3Ga0.7Asn型クラッド層291を積層し、続いて4nm厚のアンドープGaAs層301を積層し、その上に、6nm厚のアンドープIn0.17Ga0.83As0.80.2ウェル層241と7nm厚のアンドープGaAs0.80.2バリア層242からなる2重量子井戸構造から構成される活性層領域24を形成する。引き続き、4nm厚のアンドープGaAs層302と炭素(C)ドープAl0.3Ga0.7Asp型クラッド層292を積層して共振器部23が構成される。共振器部23は、光学長として丁度1波長分の共振構造になるように層厚が設計され、活性層領域24の量子井戸構造の中心が、共振器部に形成される電界強度の定在波の腹にあたるように設計されている。
引き続いて、共振器部23上に電流狭窄構造25を形成するためにAl組成の高いCドープ(2×1018cm−3)Al0.98Ga0.02As層を積層する。これは、ウエハ成長後のプロセスによってCドープ(2×1018cm−3)Al0.98Ga0.02As層を電流ブロック領域251と電流通過領域252を形成する。
Cドープ(2×1018cm−3)Al0.98Ga0.02As層上には、高屈折率層としてCドープ(2×1018cm−3)Al0.13Ga0.87As層261と低屈折率層としてCドープ(2×1018cm−3)Al0.9Ga0.1As層262との一対を基本単位にして計25ペアのp型DBR層26を積層する。ここでも低屈折率層と高屈折率層の間は、電気抵抗低減のためにCドープAlGaAsグレーディット層263が挿入される。最後の層の一部は、p側オーミックコンタクトが取りやすいように30nmの高濃度のCドープ(2×1019cm−3)GaAs層264が積層されている。DBRを構成する各層厚は、n型DBR層と同様に、いわゆるλ/4の多層反射膜になるように設計される。
以上のようにして形成された積層構造を、通常のデバイスプロセス工程で面発光レーザ素子に加工する。まず、フォトレジストをエピタキシャル成長膜上へ塗布し、円形のレジストマスクを形成する。つぎに、ドライエッチングにより、下部n型DBR層22の高屈折率層221が露出するまでエッチングを行い、直径約30μmの円柱状構造を形成する。
この工程により、Al0.98Ga0.02As層の側面が露出する。そして、水蒸気雰囲気中の炉内において温度約400度で約10分間加熱を行うことによって、この層の酸化を行う。電流狭窄層のAl組成は0.98と大きく、p型のDBR層26の中のAl組成0.9と差があるため酸化速度が速く、p型の半導体多層膜では酸化があまり進まず、Al0.98Ga0.02As層で選択的に酸化が進む。これにより、ドーナッツ型の電流ブロック領域251が形成され、中心部には直径が約8μmの電流通過領域252が形成され、電流狭窄構造25が形成される。
次に、メサ上にチタン(Ti)/金(Au)のリング状のp型電極28を形成する。またn側電極として、n型DBR層22の高屈折率層であるAlGaAs層222を露出させて、その部分にAuGe合金のn型電極27を形成する。
本実施例1で用いたウェル/バリア組成は、図5における斜線部分の組成領域に入っており、フォトルミネッセンス(PL)の発光波長は約847nmであった。室温におけるPL半値全幅は約27meVと狭く、これは十分に良好なキャリア閉じこめ効果による(ΔEc、ΔEvはそれぞれ75meV、26meV程度)ものである。実施例1の面発光レーザは、活性層領域24を構成する量子井戸構造にP組成が等しいInGaAsP/GaAsP材料を用いているので、ウェル/バリアのヘテロ界面での成長待機時間がほとんどないため非発光センターの発生が十分に抑制され素子特性の向上に寄与している。
また、実施例1のウェル/バリア組成における歪み量は、それぞれ0.51%(圧縮)/―0.72%(引張)であり、量子井戸構造としては平均−0.447%の引張歪みになっており、十分歪み構造上安定である。さらにウェル層に欠陥増殖の少ないInGaAsP系材料を用い、さらにバリア層もAlフリーにしているために、電流通電動作中の素子信頼性が高い。
また、本実施例1では、活性層領域24を構成する量子井戸構造の両側に4nmのGaAs層が設けられ、このGaAs層中で成長待機して、成長温度をAl0.3Ga0.7As層の最適成長温度(この場合650℃)と量子井戸構造の最適成長温度(この場合550℃)の間で変えているので、成長待機工程による欠陥発生が極力抑制されている。このため、GaAs層の導入により発振閾値電流はGaAs層の無い場合と比較して約20%減少した。
第2の実施例では、バリア層の一部にCドーピングを施した。図7は、図6における共振器部23の部分を拡大した層構造図である。第2の実施例では、バリア層242の一部にCドープ(2×1018cm−3)された3nm層厚のGaAs0.80.2層244が3つのバリア層中に挿入されている。このCドープ層244は、炭素原子がウェル層241に混入しないようにウェル層241との界面から2nm離されている。CはGaAs0.80.2層244でp型のドーパントとなるが、そこで生じた正孔は、すべて2つのウェル層241に移動する。従って、ウェル層241では約1.5×1018cm−3の正孔が溜まることになる。この変調Cドープ構造によりウェル層241の微分利得が増大し、このため高速変調が可能となる。
第3の実施例では、第1の実施例において用いたウェル層241をInGaAsPではなく、InGaAsPSbに置き換えている。具体的な組成、層厚としては、In0.12Ga0.88As0.7660.2Sb0.034ウェル層241、6nmである。In組成が0.12であるIn0.12Ga0.88As0.80.2ウェル層241ではGaAs0.80.2バリア層242とのΔEvはほとんど零で、正孔の閉じこめ効果はないが、これにSbを3.4%程度加えることにより、ΔEvは約46meV、ΔEcは約53meVとなる。
第1の実施例において用いたInGaAsPから構成されるウェル層241ではΔEc/ΔEvの配分比は約3(=75meV/26meV)であったが、Sbを加えることによりほぼ同じバンドギャップにおいてΔEc/ΔEvの配分比が1.15(=53meV/46meV)になっている。このように、Sb添加によりバンド設計の自由度が増加する。
また、小さなIn組成でもタイプI型の良好な量子井戸構造が形成できるため、In偏析による量子井戸構造の乱れが抑制される。さらに、結晶成長上、少量のSbは、サーファクタント効果を有することが知られており、この効果により、成長界面の平坦性が向上することが期待される。Sbの添加量はP組成に比べて少量であるので、ウェル/バリアでのP組成はほぼ同じにすることが可能であり、V族切り替えシーケンスによる界面劣化は実施例1と同様、極小に抑えられる。
上述の実施の形態及び実施例においては、面発光レーザの発振波長として850nmの例をあげたが、820nm以上880nm以下においても本発明の材料系で同様の効果が期待される。また、上述の実施の形態及び実施例においてでは、電流狭窄構造にAlGaAsの選択酸化を用いたが、プロトン等のイオン注入による電流狭窄構造であってもよい。さらに、上述の実施の形態及び実施例においてでは量子井戸構造のウェル数を2としたが、本発明によるウェル/バリア層ではΔEvが小さくかつバリア層厚も10nmより小さいので、3から5個のウェル層を電界強度の腹近傍に納めることも可能である。さらにまた、上述の実施の形態及び実施例においてでは、n型電極をn型DBR層から取ったが、基板側から取ってもよい。また、上述の実施の形態及び実施例においてでは、n型基板上で例示したが、p型基板を用いて積層順番を反対にしても良い。
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
本実施の形態に係る面発光レーザの構造図である。 850nmで発光するInGaAsP系のInとPの取りうる組成領域を示した図である。 InGa1−xAs0.80.2系のバンド端エネルギーのIn組成x依存性を示したグラフである。 一定バンドギャップを有するInGaAsPのバンド端エネルギーの組成依存性を示したグラフである。 良好な特性で850nm発光するInGaAsP系のInとPの取りうる組成領域と組成を変化させた時のバンド端の変化を説明した図である。 本発明の実施例1にかかる面発光レーザの構造を示す断面図である。 本発明の実施例2にかかる量子井戸構造を示す断面図である。
符号の説明
1 面発光レーザ
11 基板 12 第1導電型DBR層 13 共振器部 14 活性層領域
15 電流狭窄構造 16 第2導電型DBR層 17 第1の電極 18 第2の電極
19 GaAs層 20 クラッド層
21 GaAs基板 22 n型DBR層 23 共振器部 24 活性層領域
25 電流狭窄構造 26 p型DBR層 27 p型電極 28 n型電極
121 高屈折率層 122 低屈折率層 141 ウェル層 142 バリア層
151 高抵抗層 152 狭窄層
221 高屈折率層 222 低屈折率層 223 グレーディット層
241 ウェル層 242 バリア層 244 Cドープ層
251 電流ブロック領域 252 電流通過領域
261 CドープAl0.13Ga0.87As層 262 CドープAl0.9Ga0.1As層263 グレーディット層 264 高濃度CドープGaAs層
291 SiドープAl0.3Ga0.7Asn型クラッド層
292 炭素(C)ドープAl0.3Ga0.7Asp型クラッド層
301、302 アンドープGaAs層

Claims (10)

  1. 第1導電型GaAs基板上に、第1導電型多層膜ブラッグ反射鏡(DBR)層、活性層、及び第2導電型DBR層を有する発振波長が820nm以上880nm以下の面発光レーザであって、
    前記活性層が、圧縮性の歪みを有するInxGa1-xAs1−y1y1ウェル層と、引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2バリア層とを有する量子井戸構造を有し、
    前記ウェル層のP組成y1と前記バリア層のP組成y2との間に、
    |y1−y2|≦0.05
    の関係が成立することを特徴とする面発光レーザ。
  2. 前記第1導電型DBR層と前記活性層の間、または前記第2導電型DBR層と前記活性層の間に選択酸化型またはイオン注入型の電流狭窄層を有する請求項1に記載の面発光レーザ。
  3. 前記量子井戸構造が複数の前記ウェル層を有し、前記ウェル層の間に位置するバリア層の層厚が10nm以下であり、
    前記ウェル層の間に位置するバリア層のP組成y2が、0.15≦y2≦0.35であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の面発光レーザ。
  4. 前記量子井戸構造の前記基板に最も近い層と最も遠い層とが前記バリア層であり、
    前記量子井戸構造の前記基板に最も近い層と最も遠い層とが、層厚5nm以下のGaAs層に接していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の面発光レーザ。
  5. 前記バリア層が、炭素をドーピングすることにより形成されたp型半導体を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の面発光レーザ。
  6. 第1導電型GaAs基板上に、第1導電型多層膜ブラッグ反射鏡(DBR)層、活性層、及び第2導電型DBR層を有する発振波長が820nm以上880nm以下の面発光レーザであって、
    前記活性層が、圧縮性の歪みを有するInxGa1-xAs1−y1−z1y1Sbz1ウェル層と、引張性の歪みを有するGaAs1−y2y2バリア層を有する量子井戸構造を有することを特徴とする面発光レーザ。
  7. 前記第1導電型DBR層と前記活性層の間、または前記第2導電型DBR層と前記活性層の間に選択酸化型またはイオン注入型の電流狭窄層を有する請求項6に記載の面発光レーザ。
  8. 前記量子井戸構造が複数の前記ウェル層を有し、前記ウェル層の間に位置するバリア層の層厚が10nm以下であることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の面発光レーザ。
  9. 前記量子井戸構造の前記基板に最も近い層と最も遠い層とが前記バリア層であり、
    前記量子井戸構造の前記基板に最も近い層と最も遠い層とが、層厚5nm以下のGaAs層に接していることを特徴とする、請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の面発光レーザ。
    請求項5又は請求項6に記載の面発光レーザ。
  10. 前記バリア層が、炭素をドーピングすることにより形成されたp型半導体を有することを特徴とする、請求項6乃至請求項9に記載の面発光レーザ。
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