JP2014001335A - 熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・sを超え、かつハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であるポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、該熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%であることで解決できる。
【選択図】 なし
Description
高熱伝導性熱可塑性樹脂を、例えば、通常良く用いられる射出成形法で成形しようとすると、その高熱伝導性が故に金型内に流入した樹脂が高速に冷却固化してしまい、金型内のゲート部が固化した後は、全く型内に樹脂を流入させることができなくなるという課題がある。高熱伝導性熱可塑性樹脂の射出成形におけるこのような問題を解決するためには、ホットランナーと特殊形状のゲートの組み合わせなど特殊な金型が必要となり、汎用金型での成形が不可能であることが普及の妨げとなっている。
また、フィラー分散状態は、熱伝導性熱可塑性樹脂の混練工程や熱伝導性などの物性において、重要となる。例えば、樹脂とフィラーの濡れ性が悪く、その界面に空隙(空気層)が形成されたり、フィラーの凝集体が生成したりすると、ストランドが不安定になりフィラー高充填化ができず、高熱伝導率化が阻害される。あるいは、フィラーの分散状態が不均一であると、熱伝導率が理論値に比べて悪化するなどの問題が生じる。
樹脂としてエラストマーを選定することは、フィラー分散性が良好となりやすいためメリットが大きい。しかし、樹脂のソフトセグメント量を増加して溶融粘度を低くすると、フィラー分散は良好になりやすいが、一方で耐熱性が低下するという課題がある。耐熱性を上げるために樹脂のハードセグメント量を多くすると、フィラーを高充填した際、それに伴い脆化する傾向があり、それらの両立が課題である。
また、フィラーの種類によっては、吸湿性が高く、そのフィラーを含む樹脂組成物の耐湿熱性が問題になる事がある。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] 200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・sを超え、かつハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であるポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、該熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
[2] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメント成分の70質量%以上が、テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸と1,4−ブタンジオールからなる、ブチレンテレフタレート単位及び/またはブチレンナフタレート単位からなることを特徴とする[1]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分が、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリラクトン、ポリアルキレンカーボネートジオールのいずれかであることを特徴とする[1]〜[2]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
[4] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする[3]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[5] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリ‐ε‐カプロラクトンであることを特徴とする[3]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[6] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリヘキサメチレンカーボネートジオールであることを特徴とする[3]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[7] 前記熱伝導フィラー(B)の単体での熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
[8] 前記熱伝導フィラー(B)がカップリング剤によって表面処理されていることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
[9] 前記熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜20%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜95%であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
本発明においては、熱伝導フィラーを単にフィラーと称する事がある。
本発明に用いられるポリエステルエラストマー(A)は、ハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であることが必要である。ソフトセグメント量が15質量%未満であると、フィラー高充填後の樹脂組成物の溶融粘度が著しく上昇し、かつ著しく脆化するため、実用的でない。ソフトセグメント量が80質量%超になると、ポリエステルエラストマー樹脂の融点が著しく低下するため、耐熱性が問題となる。また、ソフトセグメントは熱伝導を阻害する要因となるため、その量が増加すると、高熱伝導率を得にくい傾向がある。樹脂組成物の機械的強度、耐熱性を考慮すると、ソフトセグメント量は70〜25質量%が好ましく、より好ましくは60〜30質量%である。
ハードセグメントとソフトセグメントの割合を異なる種類間で比較する場合、種類により分子量が異なるため、モル%でなく質量%で考慮する必要がある。そのため、ハードセグメントとソフトセグメントの割合は質量%で記載している。
例えば、ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメントがブチレンテレフタレート単位、ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールである場合、エラストマー中のポリテトラメチレングリコールの質量%をソフトセグメントの質量%とする。また、エラストマー中のテレフタル酸、1,4−ブタンジオールの各質量%の合計をハードセグメントの質量%とする。
ハードセグメント、ソフトセグメントに他の成分を用いた場合も、同様の方法により、ソフトセグメントの質量%を計算する。
ハードセグメント成分のうちジオール成分は、結晶性が良好であり、成形性・耐熱性が優れるという観点から1,4−ブタンジオールが好ましい。
耐熱老化性がより良好であることから、ソフトセグメント成分としてポリラクトン、ポリアルキレンカーボネートジオールが好ましい。より好ましくは、ポリアルキレンカーボネートジオールである。
これらのポリラクトン類は、単独または2種以上を混合して用いることができ、物性、ハンドリング性などのバランスを考慮すると、ポリ‐ε‐カプロラクトンが最も好ましい。また、ポリエステルエラストマー(A)は、反応性や生産性を考慮すると、ε‐カプロラクトンを原料に用いて重合することが好ましい。
これらのポリアルキレンカーボネートジオールは、単独または2種以上を混合して用いることができ、物性、ハンドリング性などのバランスを考慮すると、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールが最も好ましい。また、ポリエステルエラストマー(A)は、ブロック性を維持するため、ある程度分子量を増加させたポリアルキレンカーボネートジオールを原料に用いて重合することが好ましい。
200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・s超であるとは、ポリエステルエラストマー(A)がその温度条件で溶融しない場合も含む。
ポリエステルエラストマー(A)の融点が200℃超の場合、設定温度を融点以上にし、10kgf荷重時の溶融粘度を測定する必要ある。10kgf荷重時の溶融粘度が高く、測定が困難である場合は、随時設定温度を上げて、溶融粘度が測定可能な温度に設定する必要がある。
270℃、10kgf荷重時の溶融粘度が10000dPa・sを超えると、本発明の方法でもフィラー分散性に悪影響を及ぼす場合がある。好ましくは、260℃、10kgf荷重時の溶融粘度が10000dPa・s以下である。より好ましくは、250℃、10kgf荷重時の溶融粘度が10000dPa・s以下、さらに好ましくは7000dPa・s以下、特に好ましくは5000dPa・s以下である。
これら酸化防止剤は、単独で、または複合して使用できる。添加量は、ポリエステルエラストマー(A)に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。0.1質量%未満だと熱劣化防止効果に乏しくなることがある。5質量%を超えると、他物性などに悪影響を与える場合がある。
上記成分の共重合量としては、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
フィラーの粒子頻度がこれらの範囲を満足することで、同じ仕込み量でも、これらの範囲を満足しない場合に比べてフィラー充填率ならびに熱伝導率が、効率よく向上して好ましい。
粒子頻度がこれらの範囲を満足することで、フィラーが吸湿性であってもフィラー表面積を耐湿熱性が満足できる程度まで小さくする事が可能である。
一般的に、フィラーが吸湿性である場合、その原因は表面の官能基にある。よって、表面の官能基量が減少すれば、吸湿性は改善する。多くの場合、表面官能基量は表面積の大きさに依存するため、粒径・粒子頻度制御によって表面積を制御することで吸湿性、さらには耐湿熱性を改善することが可能である。
ただし、これら(式1)、(式2)で扱う粒径、及び粒子頻度とは、ポリエステルエラストマー樹脂と配合する前の熱伝導フィラー単独での粒径、及び粒子頻度を示す。すなわち、熱伝導フィラー(B)の形状に関わらず、凝集体である場合は、凝集体の粒径、及び粒子頻度を対象とする。また、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、ラグビーボール状、六面体状などフィラーのアスペクト比が異なる場合は、長径と短径の平均値を対象とする。ただし、凝集体である場合はこの限りでない。これらのいずれにも該当しない場合は、1粒子あたりの平均粒径、及び粒子頻度を対象とする。なお、本発明での平均粒径、及び粒子頻度はレーザー散乱粒度分布計などの粒度分布測定装置を用いて測定したものとする。
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
(式2)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
全フィラー量を100質量%としたとき、そのうち25〜70質量%(B−i)をポリエステルエラストマー(A)に混合して混練したのち、残フィラー75〜30質量%(B−ii)を添加して混練を行う。残フィラーの添加は、一回で行なっても良いし、複数回に分けて行っても良い。残フィラーを一回で添加するほうが、製造工程が煩雑にならないため、好ましい。
この条件を満足しない場合、すなわち、一回目にポリエステルエラストマーと混合するフィラー量が25質量%未満あるいは75質量%超である場合、フィラーを分割する効果が薄れ、分散状態が良好でなくなる可能性がある。なお、ポリエステルエラストマー(A)と最初に混合する熱伝導フィラーが(B−i)、後から混合する熱伝導フィラーが(B−ii)である。分割添加が好ましい理由として、(B−i)を混練することにより、この段階での樹脂組成物の溶融粘度が大きくなり、その後、(B−ii)を添加した際、大きなせん断力で混練することができ、フィラー分散効果が高くなるためと考えられる。
全フィラー量のうち30〜60質量%(B−i)をポリエステルエラストマー(A)に混合して混練したのち、残フィラー70〜40質量%(B−ii)を添加して混練を行うほうが、より好ましく、35〜50質量%(B−i)をポリエステルエラストマー(A)に混合して混練したのち、残フィラー65〜50質量%(B−ii)を添加して混練を行うほうが、さらに好ましい。
この中でもサイドフィードを利用する方法は、分散性が良好となり、生産効率が良いため好ましい。
平均粒径の異なる2種類のフィラーを用いる場合、ポリエステルエラストマー中への最密充填、樹脂組成物の熱伝導率、ハンドリングのしやすさを考慮すると、粒径が小さいフィラーの平均粒径は1〜20μm、粒径が大きいフィラーの平均粒径は20〜100μmであることが好ましい。
ここでいう任意に切り出した領域とは、ポリエステルエラストマー樹脂とフィラーの分散状態が十分に確認できる範囲である必要があり、フィラー平均粒径の5倍以上の長さを1辺とする正方領域であることが好ましい。正方領域の1辺の長さがそれ未満となると、限定された部分のみ観察することになり、全体の分散状態の確認が困難であり、正確な分散状態を把握できない。正方領域の1辺の長さは、フィラーの平均粒径の5〜10倍が好ましい。
設定した任意の正方領域の面積に対する空隙部分の面積を求めることで、下記式3により、空隙面積率を算出する。
(任意に切り出した正方領域内の空隙部分の面積の合計)/(任意に切り出した正方領域の全面積)×100
またポリエステルエラストマー樹脂とフィラーと空隙の判別をしやすくするために、SEM観察にはカーボン蒸着を使用することが好ましい。とくに空隙の判別ができるように、SEM画像をとることが必須である。
中でも、一般的に普及しており、誰でも入手可能であるという観点から、オープンソースである「ImageJ」を用いるのが好ましい。
カップリング剤としては、特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、リン酸エステルカップリング剤など従来公知のものを使用することができる。中でも、シランカップリング剤がポリエステルエラストマーの物性を低下させることが少ないため好ましく用いられる。
無機化合物(フィラー)の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
このような表面処理されている熱伝導フィラーとしては、次のようなものが例示できる。シランカップリング処理マグネシアとして、宇部マテリアルズ(株)製のRF−10C−SC、RF−50−SCなど、アルミネートカップリング処理マグネシアとして、三共精粉(株)製のMCA−10、MCA−50など、リン酸エステルカップリング処理マグネシアとして、三共精粉(株)製のMCP−10、MCP−50など、チタネートカップリング処理マグネシアとして、三共精粉(株)製MCT−10、MCT−50、MCT9SA−10、MCT9SA−50などが使用可能である。
フィラーの分散性が向上することにより、樹脂組成物の熱伝導性がさらに向上して好ましい。
本発明に係る熱伝導性樹脂組成物が、ポリエステルエラストマー(A)、熱伝導フィラー(B)以外の成分を含む場合も、同様に配合量を決定する。
本発明に係る熱伝導性樹脂組成物は、ポリエステルエラストマー(A)中の熱伝導フィラー(B)の分散性が非常に良いので、樹脂組成物中の空隙(空気層)がほとんどない。したがって、熱伝導フィラー(B)が、配合比通り充填されているかどうかは、得られた熱伝導性樹脂組成物の比重を測定すれば、(A)、(B)各々の比重を基に確認する事ができる。
本発明に係る熱伝導性樹脂組成物は、ポリエステルエラストマー(A)と熱伝導フィラー(B)の合計で、90体積%以上占めることが好ましい。熱伝導性樹脂組成物中の(A)と(B)の合計は、95体積%以上がより好ましく、97体積%以上がさらに好ましい。
島津製作所(株)製のフローテスター(CFT−500C型)を用いて測定した。200℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した樹脂試料を充填し、充填1分経過後、プランジャーを介して試料に荷重(10kgf)をかけ、シリンダー底部のダイ(孔径:1.0mm、厚み:10mm)より、溶融した試料を押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。ポリエステルエラストマー樹脂の融点が200℃超の場合、ポリエステルエラストマー樹脂の融点に応じて、205、220、250℃に設定して、測定した。
1種類、または2種類以上の熱伝導フィラー(B)をB’、B’’、B’’’・・・と表し、これらの質量の合計を100質量%とし、さらに、全フィラーの粒子頻度の合計を100%として、1〜10μmの粒径の粒子頻度を(式1)、10〜100μmの粒径の粒子頻度を(式2)により求めた。
(式1)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
(式2)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、ジメチルテレフタレート194質量部、1,4−ブタンジオール109質量部、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール「PTMG2000」(三菱化学(株)製)580質量部、テトラブチルチタネート0.25質量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステルエラストマー(A1)を得た。このポリエステルエラストマー(A1)の組成および物性は表1に示すような値となった。
ポリエステルエラストマー(A2)〜(A6)、(C1)〜(C2)、(X1)〜(X2))は、表1、3に示すような組成で、ポリエステルエラストマー(A1)と同様の方法により合成した。
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)220質量部、ε‐カプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製)269質量部を仕込み、窒素ガスパージ後、230℃で攪拌しながら120分溶融反応させた。その後、真空下で未反応ε‐カプロラクトンを除去し、ポリエステルエラストマー(A7)を得た。このポリエステルエラストマー(A7)の組成および物性は表2に示すような値となった。
ポリブチレンテレフタレート(PBT)220質量部と数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオール118質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリエステルエラストマー(A8)を得た。このポリエステルエラストマー(A8)の組成および物性は表2に示すような値となった。
ポリエステルエラストマー(A9)は、表2に示す組成でポリエステルエラストマー(A8)と同様な方法により合成した。
(B1):シランカップリング処理マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C−SC、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径12.5μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]36%、[10〜100μm]58%、[その他]6%)
(B2):シランカップリング処理マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C−SC、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径7.4μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]58%、[10〜100μm]40%、[その他]2%)
(B3):マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C−C、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径10.7μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]43%、[10〜100μm]50%、[その他]7%)
(B4):シランカップリング処理マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−50−SC、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径53.6μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]0%、[10〜100μm]86%、[その他]14%)
(B5):マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−50−C、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径56.3μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]0%、[10〜100μm]86%、[その他]14%)
上記の方法で重合したポリエステルエラストマー(A1)35質量部と、熱伝導フィラー(B1)25質量部の混合物とを混合した後、180℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機ラボプラストミル20C200に投入し、40rpmで10分間混練した。取り出した後、チップ上にカットしたものを熱伝導フィラー(B4)40体積部と混合したのち、再度、40rpmで10分間混練した。
ポリエステルエラストマー、熱伝導フィラーの種類や配合量を、表4〜5に示すように変更した以外は実施例1と同様にして混練した。いずれの水準もフィラー分割添加の方法で混練し、粒径が異なる2種のフィラーを用いた場合は、平均粒径が小さいフィラーと混練したのち、平均粒径が大きいフィラーと混練した。なお、混練温度はポリエステルエラストマー(A)の融点+20℃程度となるように設定した。
ポリエステルエラストマー(X1)と、熱伝導フィラー(B3)、(B5)の混合物とを表6に示す割合で混合した後、180℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機ラボプラストミル20C200に投入し、20rpmで10分間混練した。
使用したフィラーは表面処理をしていないものであり、フィラー一括添加の方法で混練したが、ポリエステルエラストマーが超低溶融粘度であることにより、得られた樹脂組成物は、フィラー充填量が高く、フィラー分散性が良好であった。ポリエステルエラストマー(X2)も同条件で混練し、同様の結果が得られた。
以下のようにして、熱伝導率、衝撃強度、耐熱性、耐湿熱性、空隙面積率の評価を行った。
各種測定に用いたシートサンプルは、テスター産業(株)製ヒートプレス機SA−302−Iを用いて作製した。所定の厚みを有する型枠内に樹脂組成物を入れ、ポリエステルエラストマー(A)の融点+20℃程度の温度条件で2分間溶融後、100kgf/cm2の荷重をかけ、1分後に水につけて急冷し、所定の厚みのシートサンプルを得た。
比熱は、TAインスツルメンツ(株)製DSC2920を用いて測定した。樹脂組成物10.0mgをアルミパンに入れ、室温から10℃/分の昇温温度で200℃まで昇温し、200℃に達してから5分間保持した後に、10℃/分で降温した。同様に、基準物質としてサファイア26.8mgをアルミパンに入れ、同条件で測定した。さらに、ブランクとしてサンプルを入れていない空のアルミパンを同条件で測定した。それぞれのDSC曲線の23℃におけるHeat Flowの値を読み取り、下記式4により比熱容量を算出した。
Cpは試料比熱、C’pは23℃における基準物質(サファイア)比熱、hは空容器と試料のDSC曲線の差、Hは空容器と基準物質(サファイア)のDSC曲線の差、mは試料質量(g)、m’は基準物質(サファイア)質量(g)を表す。
(式4)
Cp=(h/H)×(m’/m)×C’p
比重は、東洋精機(株)製自動比重計D−H100を用いて測定した。ヒートプレスして得られた厚さ0.5mmのシートを、10mm×10mmのサイズにサンプリングし、水中置換法により比重測定を行った。
熱拡散率は、アイフェイズ(株)製の熱拡散係数測定装置ai−phase Mobile1を用いて測定した。ヒートプレス機で厚さ0.5mmのシート状に加工した混練樹脂組成物の、厚み方向の熱拡散率を測定した。
熱伝導率は、前記方法で求めた比熱、比重、熱拡散率から下式により算出した。
(式5)
熱伝導率(W/m・K)=比重×比熱(J/g・K)×熱拡散率(m2/sec)
ヒートプレスして得られた厚み0.5mmのシートサンプルを作製し、東洋精機(株)製インパクトテスターにより、衝撃強度を測定した。衝撃球は0.5インチ半球状のものを使用した。
衝撃強度は値が高いほど良好であり、0.8J以上が望ましく、1.0J以上がとくに好ましい。0.1J以下であると、脆性が著しく悪化するため、好ましくない。
ヒートプレスして得られた厚み1mmのシートサンプルを10mm×50mmのサイズに切断してサンプルを作製した。これを恒温槽に投入し、所定温度で1000時間経過後、その引張伸度を測定し、初期値の50%となる温度を調べた。
その温度が高いほど耐熱老化性が高く良好であり、下記のように判定した。
◎:160℃以上
○:130℃以上160℃未満
△:110℃以上130℃未満
×:110℃未満
ヒートプレスして得られた厚み1mmのシートサンプルを10mm×50mmのサイズに切断してサンプルを作製した。これを恒温恒湿槽に投入し、85℃×85%Rhの条件下におけるサンプルの膨張率を観察した。恒温恒湿槽投入前と恒温恒湿槽投入後1000時間経過後の長さ、幅、厚さ(mm)をそれぞれ測定し、各方向における膨張率(%)を算出した。さらにそれらの積をとり、体積膨張率(%)を算出した。このとき恒温恒湿槽投入前の膨張率を100%とする。なお、測定には定圧ノギスを使用した。
体積膨張率は小さいほど好ましい。体積膨張率が110%以下であると、脆性の悪化が小さく、良好である。膨張率が110%を超えると、脆性が悪化するため、高湿度下での使用は好ましくない。
ヒートプレスして得られたシートサンプルの断面を、クロスセクションポリッシャ加工により作製し、SEM観察を行なった。オープンソースである画像解析ソフト「ImageJ」を用いて、SEM観察面において任意に切り出した正方領域面積あたりの空隙面積率を上記で説明した(式3)により算出した。正方領域の1辺は、フィラーの平均粒径が50μm以上の場合はその平均粒径の5倍、それ以外の場合はその平均粒径の7倍とした。
Claims (9)
- 200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・sを超え、かつハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であるポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、該熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメント成分の70質量%以上が、テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸と1,4−ブタンジオールからなる、ブチレンテレフタレート単位及び/またはブチレンナフタレート単位からなることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分が、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリラクトン、及びポリアルキレンカーボネートジオールのいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリ‐ε‐カプロラクトンであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリヘキサメチレンカーボネートジオールであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記熱伝導フィラー(B)の単体での熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記熱伝導フィラー(B)がカップリング剤によって表面処理されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 前記熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜20%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜95%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
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