JP2014001335A - 熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フィラー高充填化が可能で、かつ良好な耐熱性を有する高熱伝導性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・sを超え、かつハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であるポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、該熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%であることで解決できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フィラー高充填化と良好なフィラー分散性を両立し、かつ優れた耐熱性・耐湿熱性を有する高熱伝導性樹脂組成物に関する。
近年、パソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装などの発熱の問題がクローズアップされており、熱伝導率の高い材料が求められている。これらの用途に熱可塑性樹脂組成物を使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、熱伝導性の高い無機化合物を熱可塑性樹脂中に高充填することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。熱伝導率の高い無機化合物としては、黒鉛、炭素繊維、金属ケイ素、マグネシウム、アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、マグネシア、アルミナなどが挙げられ、通常は30体積%以上、さらには50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。このフィラー高充填化技術において、しばしば問題となるのは、成形性とフィラー分散状態である。
高熱伝導性熱可塑性樹脂を、例えば、通常良く用いられる射出成形法で成形しようとすると、その高熱伝導性が故に金型内に流入した樹脂が高速に冷却固化してしまい、金型内のゲート部が固化した後は、全く型内に樹脂を流入させることができなくなるという課題がある。高熱伝導性熱可塑性樹脂の射出成形におけるこのような問題を解決するためには、ホットランナーと特殊形状のゲートの組み合わせなど特殊な金型が必要となり、汎用金型での成形が不可能であることが普及の妨げとなっている。
また、フィラー分散状態は、熱伝導性熱可塑性樹脂の混練工程や熱伝導性などの物性において、重要となる。例えば、樹脂とフィラーの濡れ性が悪く、その界面に空隙(空気層)が形成されたり、フィラーの凝集体が生成したりすると、ストランドが不安定になりフィラー高充填化ができず、高熱伝導率化が阻害される。あるいは、フィラーの分散状態が不均一であると、熱伝導率が理論値に比べて悪化するなどの問題が生じる。
樹脂としてエラストマーを選定することは、フィラー分散性が良好となりやすいためメリットが大きい。しかし、樹脂のソフトセグメント量を増加して溶融粘度を低くすると、フィラー分散は良好になりやすいが、一方で耐熱性が低下するという課題がある。耐熱性を上げるために樹脂のハードセグメント量を多くすると、フィラーを高充填した際、それに伴い脆化する傾向があり、それらの両立が課題である。
かかる成形性に関する問題を解決すべく、フィラーを高充填した熱可塑性樹脂の射出成形性を向上させるため、室温で液体の有機化合物を添加する方法が例示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながらこのような方法では、射出成形時に液体の有機化合物がブリードアウトし、金型を汚染するなどの課題がある。
一方、かかる成形性に関する問題を解決すべく、金型内冷却時の固化速度を大幅に遅延しうる樹脂の使用により、成形流動性を改良し、射出成形性を改善するという発明がなされた(例えば、特許文献2参照)。しかし、かかる発明は射出成形時の成形流動性という点では改良されたものの、射出成形温度は高く設定する必要があり、また、フィラー充填率は60体積%程度を上限としており、フィラーを十分に高充填化できずに高熱伝導性を達成することができていないという点で問題である。このような問題が生じる理由としては、樹脂とフィラーの濡れ性が十分でなくフィラー分散性が悪化するために、混練の際にストランドが切れるなどの問題に起因してフィラー高充填化が困難となることや、60体積%以上のフィラー高充填化により、樹脂組成物の溶融粘度が著しく上昇するために射出成形が困難となることなどが挙げられる。
他方、かかるフィラー分散状態に関する問題を解決すべく、フィラー凝集体を形成させることなく、樹脂中に均一に分散するため、流動性改質剤を混合してフィラーの流動性を改良する方法が例示されている(例えば、特許文献3参照)。かかるフィラー表面改質により、樹脂への分散性が良好となり、熱伝導性は改善するものの、フィラー高充填化という課題においては達成できていない。
また、フィラーの種類によっては、吸湿性が高く、そのフィラーを含む樹脂組成物の耐湿熱性が問題になる事がある。
特許第3948240号公報 特開2009−91440号公報 特許第3714502号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、フィラー高充填化と良好なフィラー分散性を両立し、かつ優れた耐熱性・耐湿熱性を有する高熱伝導性樹脂組成物を提供することにある。ここで、フィラー高充填化とは、単に樹脂組成物の熱伝導性が高いというだけでなく、樹脂組成物の耐衝撃性が高く、脆化しないことを意味する。
本発明者らのこれまでの検討によれば、フィラー高充填化と良好なフィラー分散性の両立するために、マトリクス樹脂を超低溶融粘度とする必要があった。本発明の最大の特徴は、ポリエステルエラストマー樹脂のソフトセグメント量を特定の範囲とし、フィラーの表面処理やフィラーの添加方法などを最適化したことで、たとえ溶融粘度が高くても、フィラー高充填化と良好なフィラー分散性の両立が可能となったことである。これにより、従前の検討では達成が困難であった耐熱老化性などの付与が可能となった。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] 200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・sを超え、かつハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であるポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、該熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
[2] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメント成分の70質量%以上が、テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸と1,4−ブタンジオールからなる、ブチレンテレフタレート単位及び/またはブチレンナフタレート単位からなることを特徴とする[1]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分が、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリラクトン、ポリアルキレンカーボネートジオールのいずれかであることを特徴とする[1]〜[2]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
[4] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする[3]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[5] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリ‐ε‐カプロラクトンであることを特徴とする[3]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[6] 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリヘキサメチレンカーボネートジオールであることを特徴とする[3]に記載の熱伝導性樹脂組成物。
[7] 前記熱伝導フィラー(B)の単体での熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
[8] 前記熱伝導フィラー(B)がカップリング剤によって表面処理されていることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
[9] 前記熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜20%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜95%であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
フィラーの粒子頻度については、下記で説明する。
本発明においては、熱伝導フィラーを単にフィラーと称する事がある。
本発明により、ポリエステルエラストマー樹脂のハードセグメント量が多く溶融粘度が比較的高くても、フィラー分散状態を良好に維持したまま、フィラーを高充填することが可能となり、良好な耐熱性を実現できる。これは、フィラーを分割添加することで、フィラーの良好な分散性を実現している。また、カップリング剤によって表面処理されているフィラーを用いることで、よりフィラーの分散性を向上させ、熱伝導率をさらに向上させることもできる。また、フィラーの粒径の粒子頻度が特定の範囲のフィラーを用いることで、フィラーが吸湿性のものであってもフィラー表面積を小さくすることにより、良好な耐湿熱性をも実現できる。
以下、本発明を詳述する。
本発明に用いられるポリエステルエラストマー(A)は、ハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であることが必要である。ソフトセグメント量が15質量%未満であると、フィラー高充填後の樹脂組成物の溶融粘度が著しく上昇し、かつ著しく脆化するため、実用的でない。ソフトセグメント量が80質量%超になると、ポリエステルエラストマー樹脂の融点が著しく低下するため、耐熱性が問題となる。また、ソフトセグメントは熱伝導を阻害する要因となるため、その量が増加すると、高熱伝導率を得にくい傾向がある。樹脂組成物の機械的強度、耐熱性を考慮すると、ソフトセグメント量は70〜25質量%が好ましく、より好ましくは60〜30質量%である。
ここで、ポリエステルエラストマー(A)は、ハードセグメントとソフトセグメントから構成される熱可塑性ポリエステルエラストマーである。ハードセグメントとは、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートに代表されるような結晶性を有する高融点ポリエステルセグメントを示し、ソフトセグメントとは、例えば、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール類やポリ‐ε‐カプロラクトン、ポリブチレンアジペートのような低融点重合体セグメントを示す。
ハードセグメントとソフトセグメントの割合を異なる種類間で比較する場合、種類により分子量が異なるため、モル%でなく質量%で考慮する必要がある。そのため、ハードセグメントとソフトセグメントの割合は質量%で記載している。
ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメントの質量%は、下記のようにして計算する。
例えば、ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメントがブチレンテレフタレート単位、ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールである場合、エラストマー中のポリテトラメチレングリコールの質量%をソフトセグメントの質量%とする。また、エラストマー中のテレフタル酸、1,4−ブタンジオールの各質量%の合計をハードセグメントの質量%とする。
ハードセグメント、ソフトセグメントに他の成分を用いた場合も、同様の方法により、ソフトセグメントの質量%を計算する。
ハードセグメント成分のうちジカルボン酸成分は、耐熱性や機械強度の観点からナフタレンジカルボン酸がより好ましい。ジカルボン酸成分として、そのメチルエステル誘導体を用いてもよい。ナフタレンジカルボン酸は、反応性、ポリマー鎖の立体構造などを考慮すると、その異性体の中でも、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそのメチルエステル誘導体が好ましい。
ハードセグメント成分のうちジオール成分は、結晶性が良好であり、成形性・耐熱性が優れるという観点から1,4−ブタンジオールが好ましい。
ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメントの各成分の合計量を100質量%とすると、その70質量%以上が、テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸と1,4−ブタンジオールからなる、ブチレンテレフタレート単位及び/またはブチレンナフタレート単位からなることが望ましい。テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸と1,4−ブタンジオールとは、必ずしも等量でなくてもよい。より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。70質量%未満であると、機械的強度、耐熱性が低下する傾向がある。
ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分としては、重合性・物性などを考慮すると、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリラクトン、ポリアルキレンカーボネートジオールのいずれかから選ばれる1種類または2種類以上であることが望ましい。
耐熱老化性がより良好であることから、ソフトセグメント成分としてポリラクトン、ポリアルキレンカーボネートジオールが好ましい。より好ましくは、ポリアルキレンカーボネートジオールである。
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド・プロピレンオキシド)共重合体、ポリ(エチレンオキシド・テトラヒドロフラン)共重合体、ポリ(エチレンオキシド・プロピレンオキシド・テトラヒドロフラン)共重合体などが挙げられ、ポリエステルエラストマー(A)のジオール成分の合計量を100質量%としたとき、ポリアルキレンエーテルグリコールは、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。上限は耐熱性やブロッキングなどの取り扱い性を考慮すると好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
ポリアルキレンエーテルグリコールとしてポリテトラメチレングリコールが望ましい。ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量は400以上であることが好ましく、より好ましくは500以上、さらに好ましくは600以上、特に好ましくは700以上であり、上限は好ましくは4000以下、より好ましくは3500以下、さらに好ましくは3000以下である。ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が400未満であると、耐加水分解性が低下することがある。一方4000を超えると、ブチレンテレフタレート及び/またはブチレンナフタレート単位からなるポリエステル部分との相溶性が低下し、ブロック状に共重合することが難しくなる場合がある。
上記ポリラクトンとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエナンラクトン、ポリカプリロラクトンなどが挙げられ、ポリエステルエラストマー(A)のジオール成分の合計量を100質量%としたとき、ポリラクトンは、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。上限は耐熱性やブロッキングなどの取り扱い性を考慮すると好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
これらのポリラクトン類は、単独または2種以上を混合して用いることができ、物性、ハンドリング性などのバランスを考慮すると、ポリ‐ε‐カプロラクトンが最も好ましい。また、ポリエステルエラストマー(A)は、反応性や生産性を考慮すると、ε‐カプロラクトンを原料に用いて重合することが好ましい。
ハードセグメント成分を構成する結晶性の高融点ポリエステルと上記ラクトンとを反応させることにより、ポリエステル型ブロック共重合体が得られる。反応は、通常窒素雰囲気下、200℃〜250℃の温度で、0.5〜3時間溶融反応させ、次いで真空下で未反応のラクトン類を除去することにより行われる。
上記ポリアルキレンカーボネートジオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる脂肪族ポリカーボネートジオールなどが挙げられ、ポリエステルエラストマー(A)のジオール成分の合計量を100質量%としたとき、ポリアルキレンカーボネートジオールは、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。上限は耐熱性やブロッキングなどの取り扱い性を考慮すると好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
これらのポリアルキレンカーボネートジオールは、単独または2種以上を混合して用いることができ、物性、ハンドリング性などのバランスを考慮すると、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールが最も好ましい。また、ポリエステルエラストマー(A)は、ブロック性を維持するため、ある程度分子量を増加させたポリアルキレンカーボネートジオールを原料に用いて重合することが好ましい。
ポリアルキレンカーボネートジオールの分子量は数平均分子量で2000〜80000であることが好ましい。この分子量が大きいほど、ブロック性が高くなる。該ポリカーボネートジオールの分子量は2000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上がさらに好ましい。該ポリカーボネートジオールの分子量の上限は、ハードセグメントとソフトセグメントの相溶性の観点より80000以下が好ましく、70000以下がより好ましく、60000以下がさらに好ましい。該ポリカーボネートジオールの分子量が大きすぎると相溶性が低下し、相分離を起こすため、機械的特性に悪影響を及ぼす場合がある。
ポリエステルエラストマー(A)の還元粘度は特に制限はないが、0.5〜3.5dl/gであることが望ましい。0.5dl/g未満であると、機械強度が著しく低下する。3.5dl/g超であると、溶融粘度が高くなるためにハンドリング性が悪くなるほか、重合時間が長くなるため生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。好ましくは0.7〜3.0dl/g、より好ましくは0.8〜2.8dl/gである。
ポリエステルエラストマー(A)は、200℃、10kgf荷重時での溶融粘度が2000dPa・s超であっても、フィラーの表面処理やフィラーの添加方法を、従来の方法から本発明の方法に変更することで、フィラー高充填化と良好なフィラー分散性の両立が可能である。
200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・s超であるとは、ポリエステルエラストマー(A)がその温度条件で溶融しない場合も含む。
ポリエステルエラストマー(A)の融点が200℃超の場合、設定温度を融点以上にし、10kgf荷重時の溶融粘度を測定する必要ある。10kgf荷重時の溶融粘度が高く、測定が困難である場合は、随時設定温度を上げて、溶融粘度が測定可能な温度に設定する必要がある。
270℃、10kgf荷重時の溶融粘度が10000dPa・sを超えると、本発明の方法でもフィラー分散性に悪影響を及ぼす場合がある。好ましくは、260℃、10kgf荷重時の溶融粘度が10000dPa・s以下である。より好ましくは、250℃、10kgf荷重時の溶融粘度が10000dPa・s以下、さらに好ましくは7000dPa・s以下、特に好ましくは5000dPa・s以下である。
本発明のポリエステルエラストマーの製造方法としては、公知の方法をとることができるが、例えば、上記のジカルボン酸及びジオール成分を150〜250℃でエステル化反応後、減圧しながら230〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステルを得ることができる。あるいは、上記のジカルボン酸のジメチルエステルなどの誘導体とジオール成分を用いて150℃〜250℃でエステル交換反応後、減圧しながら230℃〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステルを得ることができる。
ポリエステルエラストマー(A)を製造する際には、熱劣化、酸化劣化などを抑制するなどの目的で酸化防止剤を添加することが好ましく、反応前、反応途中あるいは反応終了後に添加してもよい。例えば、公知のヒンダードフェノール系、リン系、チオエーテル系の酸化防止剤を用いることができる。
これら酸化防止剤は、単独で、または複合して使用できる。添加量は、ポリエステルエラストマー(A)に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。0.1質量%未満だと熱劣化防止効果に乏しくなることがある。5質量%を超えると、他物性などに悪影響を与える場合がある。
また、ポリエステルエラストマー(A)には、反応性や得られた共重合体の機械的特性、化学的特性を損なわない範囲で、共重合可能な公知の成分が使用できる。該成分としては炭素数8〜22の2価以上の芳香族カルボン酸、炭素数4〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、さらには炭素数8〜15の2価以上の脂環式カルボン酸などのカルボン酸類及びこれらのエステル形成性誘導体、炭素数2〜20の脂肪族化合物であって分子内に2個以上の水酸基を有する化合物類、炭素数6〜40の芳香族化合物であって分子内に2個以上の水酸基を有する化合物類、及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
具体的には、カルボン酸類としては、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸などのカルボン酸又はそのエステル形成能を有する誘導体が挙げられ、水酸基含有化合物類としては、1,4−ブタンジオールの他に、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの化合物又はそのエステル形成能を有する誘導体が挙げられる。
また、p−オキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体のような環状エステルなども使用可能である。
上記成分の共重合量としては、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
さらに、本発明では、反応性基を少なくとも2個有するエポキシ化合物、有機カルボン酸及び/又はその無水物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物などの群から選ばれる多官能性化合物を添加することにより、高分子量の共重合体を比較的短時間で得ることができ、ブロック共重合体の熱安定性の点からも有用である。
上記多官能性化合物を添加する方法には、特に制限はなく、通常の方法が利用される。例えば、重縮合終了前の任意の段階で添加する方法、重縮合終了後、不活性ガス雰囲気下で添加する方法、共重合体をペレット状、フレーク状、あるいは粉体状に取り出した後、添加し、押出機あるいはニーダーで溶融混合する方法などが挙げられる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物に配合する熱伝導フィラー(B)は、特に制限されるものではない。組成物の熱伝導率を向上させる効果を考慮すると、単体での熱伝導率が10W/m・K以上のものが好ましい。10W/m・K未満では、組成物の熱伝導率を向上させる効果に劣る。単体での熱伝導率は、より好ましくは15W/m・K以上、さらに好ましくは20W/m・K以上、特に好ましくは30W/m・K以上のものが用いられる。熱伝導フィラー(B)単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/m・K以下、さらには2500W/m・K以下のものが好ましく用いられる。
該熱伝導フィラー(B)は1種類、または2種類以上のフィラーを含有することができる。フィラーが2種類以上とは、フィラーの物質種、形状、平均粒径、粒度分布、表面処理剤などの内、少なくとも一つが異なる2種以上という意味である。
熱伝導フィラー(B)の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、など種々の形状を例示することができる。またこれら熱伝導フィラー(B)は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地などには特に限定はなく、適宜選択することができる。
1種類、または2種類以上の熱伝導フィラー(B)をB’、B’’、B’’’・・・と表し、これらの質量の合計を100質量%とし、さらに、全フィラーの粒子頻度の合計を100%として、1〜10μmの粒径の粒子頻度を(式1)、10〜100μmの粒径の粒子頻度を(式2)により求めたとき、該熱伝導フィラー(B)の1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%である。好ましくは1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜25%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が65〜95%であり、より好ましくは1〜10μmの粒径の粒子頻度が5〜25%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が67〜95%である。
フィラーの粒子頻度がこれらの範囲を満足することで、同じ仕込み量でも、これらの範囲を満足しない場合に比べてフィラー充填率ならびに熱伝導率が、効率よく向上して好ましい。
なお、フィラー充填率ならびに熱伝導率に加え、耐湿熱性をも満足させるためには、熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜20%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜95%であることが好ましい。より好ましくは1〜10μmの粒径の粒子頻度が5〜18%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜92%である。
粒子頻度がこれらの範囲を満足することで、フィラーが吸湿性であってもフィラー表面積を耐湿熱性が満足できる程度まで小さくする事が可能である。
一般的に、フィラーが吸湿性である場合、その原因は表面の官能基にある。よって、表面の官能基量が減少すれば、吸湿性は改善する。多くの場合、表面官能基量は表面積の大きさに依存するため、粒径・粒子頻度制御によって表面積を制御することで吸湿性、さらには耐湿熱性を改善することが可能である。
使用フィラーが1種類の場合は(式1)、(式2)のB’の項まで、同様に2種類の場合はB’’まで、3種類の場合はB’’’までというように、種類数に対応した項までの粒子頻度の和を考慮するものとする。
ただし、これら(式1)、(式2)で扱う粒径、及び粒子頻度とは、ポリエステルエラストマー樹脂と配合する前の熱伝導フィラー単独での粒径、及び粒子頻度を示す。すなわち、熱伝導フィラー(B)の形状に関わらず、凝集体である場合は、凝集体の粒径、及び粒子頻度を対象とする。また、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、ラグビーボール状、六面体状などフィラーのアスペクト比が異なる場合は、長径と短径の平均値を対象とする。ただし、凝集体である場合はこの限りでない。これらのいずれにも該当しない場合は、1粒子あたりの平均粒径、及び粒子頻度を対象とする。なお、本発明での平均粒径、及び粒子頻度はレーザー散乱粒度分布計などの粒度分布測定装置を用いて測定したものとする。
(式1)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
(式2)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
本発明においては、ポリエステルエラストマー(A)の溶融粘度が高くても、フィラーの分散性を良好とするために、次のようにフィラーを分割して添加、混練することが重要である。
全フィラー量を100質量%としたとき、そのうち25〜70質量%(B−i)をポリエステルエラストマー(A)に混合して混練したのち、残フィラー75〜30質量%(B−ii)を添加して混練を行う。残フィラーの添加は、一回で行なっても良いし、複数回に分けて行っても良い。残フィラーを一回で添加するほうが、製造工程が煩雑にならないため、好ましい。
この条件を満足しない場合、すなわち、一回目にポリエステルエラストマーと混合するフィラー量が25質量%未満あるいは75質量%超である場合、フィラーを分割する効果が薄れ、分散状態が良好でなくなる可能性がある。なお、ポリエステルエラストマー(A)と最初に混合する熱伝導フィラーが(B−i)、後から混合する熱伝導フィラーが(B−ii)である。分割添加が好ましい理由として、(B−i)を混練することにより、この段階での樹脂組成物の溶融粘度が大きくなり、その後、(B−ii)を添加した際、大きなせん断力で混練することができ、フィラー分散効果が高くなるためと考えられる。
全フィラー量のうち30〜60質量%(B−i)をポリエステルエラストマー(A)に混合して混練したのち、残フィラー70〜40質量%(B−ii)を添加して混練を行うほうが、より好ましく、35〜50質量%(B−i)をポリエステルエラストマー(A)に混合して混練したのち、残フィラー65〜50質量%(B−ii)を添加して混練を行うほうが、さらに好ましい。
混練方法は種々の方法を用いることができる。例えば、サイドフィードを1系列利用し、ポリエステルエラストマーとフィラーの一部(B−i)をドライブレンドしたものを元フィードに投入し、サイドフィードに残りのフィラー(B−ii)を投入して、連続的に混練することができる。または、サイドフィードを2系列利用し、ポリエステルエラストマーを元フィードに投入し、元フィードに近いサイドフィードにフィラーの一部(B−i)、元フィードから遠いサイドフィードに残りのフィラー(B−ii)を投入して、連続的に混練してもよい。あるいは、ポリエステルエラストマー(A)とフィラーの一部(B−i)とを混練して、一旦ペレットなどとして取り出し、それを残りのフィラー(B−ii)と混合した後、再度、混練してもよい。
この中でもサイドフィードを利用する方法は、分散性が良好となり、生産効率が良いため好ましい。
ポリエステルエラストマー(A)と熱伝導フィラー(B)との混練機台は、特に限定されるものではない。例えば、単軸、二軸などの押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。または、加熱ロール、バンバリーミキサーなどの混練機を使用してもよい。
2種類以上の熱伝導フィラー(B)を用いる場合、その分け方は特に制限されるものではない。例えば、平均粒径が異なる2種類のフィラーを用いる場合、平均粒径が小さいフィラーを(B−i)、平均粒径が大きいフィラーを(B−ii)として分けることができる。また、平均粒径が大きいフィラーを(B−i)、平均粒径が小さいフィラーを(B−ii)として分けることができる。2種類のフィラーを混合して均一化したものを(B−i)、(B−ii)に分けてもよい。
本発明において使用される熱伝導フィラー(B)の平均粒径は、1〜100μmであることが好ましい。1.5〜80μmであることがより好ましく、2〜70μmであることがさらに好ましい。
平均粒径の異なる2種類のフィラーを用いる場合、ポリエステルエラストマー中への最密充填、樹脂組成物の熱伝導率、ハンドリングのしやすさを考慮すると、粒径が小さいフィラーの平均粒径は1〜20μm、粒径が大きいフィラーの平均粒径は20〜100μmであることが好ましい。
上記のようにして得られた熱伝導性樹脂組成物は、フィラー分散性が良好であり、樹脂組成物中の空隙(空気層)が非常に少ない。すなわち、0.5mm厚さのシートに加工後、クロスセクションポリッシャ加工により作製した断面のSEM観察画像において、任意に切り出した領域面積あたりの空隙面積率が1.5%以下とすることが出来る。空隙面積が1.5%超であると、熱伝導性などの諸物性に悪影響を及ぼす可能性が高い。空隙面積率は、1.0%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.2%以下が最も好ましい。
ここでいう任意に切り出した領域とは、ポリエステルエラストマー樹脂とフィラーの分散状態が十分に確認できる範囲である必要があり、フィラー平均粒径の5倍以上の長さを1辺とする正方領域であることが好ましい。正方領域の1辺の長さがそれ未満となると、限定された部分のみ観察することになり、全体の分散状態の確認が困難であり、正確な分散状態を把握できない。正方領域の1辺の長さは、フィラーの平均粒径の5〜10倍が好ましい。
設定した任意の正方領域の面積に対する空隙部分の面積を求めることで、下記式3により、空隙面積率を算出する。
(式3)
(任意に切り出した正方領域内の空隙部分の面積の合計)/(任意に切り出した正方領域の全面積)×100
断面作製はクロスセクションポリッシャ加工で行なう必要がある。断面作製の他の方法には、例えば、フェザーカッターなどによる割断法などがあるが、切断作業時に空隙が潰れてしまう可能性があるために、好ましくない。
またポリエステルエラストマー樹脂とフィラーと空隙の判別をしやすくするために、SEM観察にはカーボン蒸着を使用することが好ましい。とくに空隙の判別ができるように、SEM画像をとることが必須である。
SEM観察した断面画像の解析ソフトは、特に限定されるものではないが、切り出し領域の面積と空隙の面積を割り出せるソフトである必要がある。
中でも、一般的に普及しており、誰でも入手可能であるという観点から、オープンソースである「ImageJ」を用いるのが好ましい。
電気絶縁性を示す熱伝導フィラー(B)としては具体的には、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化銅、亜酸化銅、などの金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、などの金属窒化物、炭化ケイ素などの金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド、などの絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、などの金属水酸化物、を例示することができる。
中でも電気絶縁性に優れることから、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、などの金属窒化物、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化ベリリウム、などの金属酸化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、などの金属水酸化物、ダイヤモンド、などの絶縁性炭素材料、をより好ましく用いることができる。また、酸化亜鉛は上記材料に比べて電気絶縁性はやや劣るものの、用途によっては十分使用可能である。これらのうち、ポリエステルエラストマーとの濡れ性が比較的良好であることから、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化亜鉛が好ましく、より好ましくは酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)である。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
また、電気伝導性を示す熱伝導フィラー(B)としては具体的には、黒鉛、炭素繊維、などの炭素材料、金属ケイ素、アルミニウム、マグネシウムなどの金属材料を例示することができる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
ポリエステルエラストマー(A)の溶融粘度が高くても、フィラーの分散性を良好とするために、熱伝導フィラー(B)は、カップリング剤によって表面処理されていることが好ましい。
カップリング剤としては、特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、リン酸エステルカップリング剤など従来公知のものを使用することができる。中でも、シランカップリング剤がポリエステルエラストマーの物性を低下させることが少ないため好ましく用いられる。
無機化合物(フィラー)の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
このような表面処理されている熱伝導フィラーとしては、次のようなものが例示できる。シランカップリング処理マグネシアとして、宇部マテリアルズ(株)製のRF−10C−SC、RF−50−SCなど、アルミネートカップリング処理マグネシアとして、三共精粉(株)製のMCA−10、MCA−50など、リン酸エステルカップリング処理マグネシアとして、三共精粉(株)製のMCP−10、MCP−50など、チタネートカップリング処理マグネシアとして、三共精粉(株)製MCT−10、MCT−50、MCT9SA−10、MCT9SA−50などが使用可能である。
フィラーの分散性が向上することにより、樹脂組成物の熱伝導性がさらに向上して好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂組成物におけるポリエステルエラストマー(A)及び、熱伝導フィラー(B)は、ポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部となるように含有する。(A)の含有量が多いほど、得られる樹脂組成物の耐衝撃性、成形加工性が向上し、溶融混練時のポリエステルエラストマーとの混練が容易になる傾向がある、という観点、及び(B)が多いほど熱伝導率が向上する傾向があり好ましいという観点を考慮してこれらを両立させるために、含有量は、好ましくは(A)60〜20体積部及び(B)40〜80体積部、より好ましくは(A)50〜25体積部及び(B)50〜75体積部、さらに好ましくは(A)40〜30体積部及び(B)60〜70体積部である。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、ポリエステルエラストマー(A)と熱伝導フィラー(B)の配合割合が、体積部で表されるが、樹脂組成物を製造する際は、(A)、(B)各々の比重より、質量基準で配合を行う。(A)はポリエステルエラストマー単体の比重、(B)はフィラーの化学種単体の比重を基に配合量を決める。このように体積部で配合量を表すのは、本発明により得られる樹脂組成物の重要な特性である熱伝導性が、組成物中の熱伝導フィラーの質量割合ではなく、体積割合が大きな意味を持つからである。
本発明に係る熱伝導性樹脂組成物が、ポリエステルエラストマー(A)、熱伝導フィラー(B)以外の成分を含む場合も、同様に配合量を決定する。
本発明に係る熱伝導性樹脂組成物は、ポリエステルエラストマー(A)中の熱伝導フィラー(B)の分散性が非常に良いので、樹脂組成物中の空隙(空気層)がほとんどない。したがって、熱伝導フィラー(B)が、配合比通り充填されているかどうかは、得られた熱伝導性樹脂組成物の比重を測定すれば、(A)、(B)各々の比重を基に確認する事ができる。
本発明に係る熱伝導性樹脂組成物は、ポリエステルエラストマー(A)と熱伝導フィラー(B)の合計で、90体積%以上占めることが好ましい。熱伝導性樹脂組成物中の(A)と(B)の合計は、95体積%以上がより好ましく、97体積%以上がさらに好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂組成物をより高性能なものにするため、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤などの熱安定剤などを、単独又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。さらに必要に応じて、一般に良く知られている、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、リン系以外の難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤などを、単独又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
本発明の熱伝導性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤などを乾燥させた後、単軸、2軸などの押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプなどを用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物の成形加工法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形などが利用できる。これらの中でも成形サイクルが短く生産効率に優れることから、射出成形法により射出成形することが好ましい。
本願発明の組成物は、実施例でも示すとおり良好な熱伝導性を示し、0.7W/m・K以上、好ましくは1W/m・K以上、さらに好ましくは2.0W/m・K以上の成形体を得ることが可能である。
このようにして得られた組成物は、樹脂フィルム、樹脂成形品、樹脂発泡体、塗料やコーティング剤、などさまざまな形態で、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、などの各種の用途に幅広く用いることが可能である。本発明で得られた高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、現在広く用いられている射出成形機や押出成形機などの一般的なプラスチック用成形機が使用可能であるため、複雑な形状を有する製品への成形も容易である。特に優れた成形加工性、高熱伝導性、という優れた特性を併せ持つことから、発熱源を内部に有する携帯電話、ディスプレー、コンピューターなどの筐体用樹脂として、非常に有用である。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、などの射出成形品などに好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。
さらには発熱源を内部に有するがファンなどによる強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、などの小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車などにおけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカーなどの配電部品用樹脂、モーターなどの封止用材料、としても非常に有用に用いることができる。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は従来良く知られている組成物に比べて、溶融成形性、耐衝撃性が良好であり、上記の用途における部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された各測定値は次の方法によって測定したものである。
(溶融粘度)
島津製作所(株)製のフローテスター(CFT−500C型)を用いて測定した。200℃に設定した加熱体中央のシリンダー中に水分率0.1%以下に乾燥した樹脂試料を充填し、充填1分経過後、プランジャーを介して試料に荷重(10kgf)をかけ、シリンダー底部のダイ(孔径:1.0mm、厚み:10mm)より、溶融した試料を押出し、プランジャーの降下距離と降下時間を記録し、溶融粘度を算出した。ポリエステルエラストマー樹脂の融点が200℃超の場合、ポリエステルエラストマー樹脂の融点に応じて、205、220、250℃に設定して、測定した。
(粒子頻度)
1種類、または2種類以上の熱伝導フィラー(B)をB’、B’’、B’’’・・・と表し、これらの質量の合計を100質量%とし、さらに、全フィラーの粒子頻度の合計を100%として、1〜10μmの粒径の粒子頻度を(式1)、10〜100μmの粒径の粒子頻度を(式2)により求めた。
(式1)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の1〜10μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
(式2)
{(熱伝導フィラーB’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+(熱伝導フィラーB’’’の混合割合[質量%])/100×(熱伝導フィラーB’’’の10〜100μmの粒子頻度[%])/100
+・・・}×100
(製造例:ポリエステルエラストマー(A1))
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、ジメチルテレフタレート194質量部、1,4−ブタンジオール109質量部、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール「PTMG2000」(三菱化学(株)製)580質量部、テトラブチルチタネート0.25質量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステルエラストマー(A1)を得た。このポリエステルエラストマー(A1)の組成および物性は表1に示すような値となった。
(製造例:ポリエステルエラストマー(A2)〜(A6)、(C1)〜(C2)、(X1)〜(X2))
ポリエステルエラストマー(A2)〜(A6)、(C1)〜(C2)、(X1)〜(X2))は、表1、3に示すような組成で、ポリエステルエラストマー(A1)と同様の方法により合成した。
(製造例:ポリエステルエラストマー(A7))
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)220質量部、ε‐カプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製)269質量部を仕込み、窒素ガスパージ後、230℃で攪拌しながら120分溶融反応させた。その後、真空下で未反応ε‐カプロラクトンを除去し、ポリエステルエラストマー(A7)を得た。このポリエステルエラストマー(A7)の組成および物性は表2に示すような値となった。
(製造例:ポリエステルエラストマー(A8))
ポリブチレンテレフタレート(PBT)220質量部と数平均分子量10000を有するポリカーボネートジオール118質量部とを230〜245℃、130Pa下で1時間攪拌し、樹脂が透明になったことを確認し、内容物を取り出し、冷却し、ポリエステルエラストマー(A8)を得た。このポリエステルエラストマー(A8)の組成および物性は表2に示すような値となった。
(製造例:ポリエステルエラストマー(A9))
ポリエステルエラストマー(A9)は、表2に示す組成でポリエステルエラストマー(A8)と同様な方法により合成した。
ポリエステルエラストマー(A1)〜(A9)、(C1)〜(C2)はいずれも200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・s超である(もしくはその条件では溶融しない)。ポリエステルエラストマー(X1)〜(X2)は200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・s以下となるものであり、参考例として用いた。
ポリエステルエラストマー(A1)〜(A9)は、ハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%を満足するが、ポリエステルエラストマー(C1)〜(C2)は、それを満足しないものである。
実施例及び比較例に用いた熱伝導フィラーは、下記の通りである。表面処理に関して記載の無いものは、未処理のフィラーである。
(B1):シランカップリング処理マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C−SC、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径12.5μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]36%、[10〜100μm]58%、[その他]6%)
(B2):シランカップリング処理マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C−SC、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径7.4μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]58%、[10〜100μm]40%、[その他]2%)
(B3):マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−10C−C、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径10.7μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]43%、[10〜100μm]50%、[その他]7%)
(B4):シランカップリング処理マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−50−SC、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径53.6μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]0%、[10〜100μm]86%、[その他]14%)
(B5):マグネシア(宇部マテリアルズ(株)製RF−50−C、単体での熱伝導率42〜60W/m・K、平均粒径56.3μm、体積固有抵抗1017Ω・cm、比重3.58、粒子頻度:[1〜10μm]0%、[10〜100μm]86%、[その他]14%)
(実施例1)
上記の方法で重合したポリエステルエラストマー(A1)35質量部と、熱伝導フィラー(B1)25質量部の混合物とを混合した後、180℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機ラボプラストミル20C200に投入し、40rpmで10分間混練した。取り出した後、チップ上にカットしたものを熱伝導フィラー(B4)40体積部と混合したのち、再度、40rpmで10分間混練した。
(実施例2〜11、比較例1〜4)
ポリエステルエラストマー、熱伝導フィラーの種類や配合量を、表4〜5に示すように変更した以外は実施例1と同様にして混練した。いずれの水準もフィラー分割添加の方法で混練し、粒径が異なる2種のフィラーを用いた場合は、平均粒径が小さいフィラーと混練したのち、平均粒径が大きいフィラーと混練した。なお、混練温度はポリエステルエラストマー(A)の融点+20℃程度となるように設定した。
(参考例1)
ポリエステルエラストマー(X1)と、熱伝導フィラー(B3)、(B5)の混合物とを表6に示す割合で混合した後、180℃に予熱した東洋精機(株)製卓上型混練機ラボプラストミル20C200に投入し、20rpmで10分間混練した。
使用したフィラーは表面処理をしていないものであり、フィラー一括添加の方法で混練したが、ポリエステルエラストマーが超低溶融粘度であることにより、得られた樹脂組成物は、フィラー充填量が高く、フィラー分散性が良好であった。ポリエステルエラストマー(X2)も同条件で混練し、同様の結果が得られた。
[評価方法]
以下のようにして、熱伝導率、衝撃強度、耐熱性、耐湿熱性、空隙面積率の評価を行った。
(評価用シートサンプルの作製)
各種測定に用いたシートサンプルは、テスター産業(株)製ヒートプレス機SA−302−Iを用いて作製した。所定の厚みを有する型枠内に樹脂組成物を入れ、ポリエステルエラストマー(A)の融点+20℃程度の温度条件で2分間溶融後、100kgf/cmの荷重をかけ、1分後に水につけて急冷し、所定の厚みのシートサンプルを得た。
(熱伝導率)
比熱は、TAインスツルメンツ(株)製DSC2920を用いて測定した。樹脂組成物10.0mgをアルミパンに入れ、室温から10℃/分の昇温温度で200℃まで昇温し、200℃に達してから5分間保持した後に、10℃/分で降温した。同様に、基準物質としてサファイア26.8mgをアルミパンに入れ、同条件で測定した。さらに、ブランクとしてサンプルを入れていない空のアルミパンを同条件で測定した。それぞれのDSC曲線の23℃におけるHeat Flowの値を読み取り、下記式4により比熱容量を算出した。
Cpは試料比熱、C’pは23℃における基準物質(サファイア)比熱、hは空容器と試料のDSC曲線の差、Hは空容器と基準物質(サファイア)のDSC曲線の差、mは試料質量(g)、m’は基準物質(サファイア)質量(g)を表す。
(式4)
Cp=(h/H)×(m’/m)×C’p
比重は、東洋精機(株)製自動比重計D−H100を用いて測定した。ヒートプレスして得られた厚さ0.5mmのシートを、10mm×10mmのサイズにサンプリングし、水中置換法により比重測定を行った。
熱拡散率は、アイフェイズ(株)製の熱拡散係数測定装置ai−phase Mobile1を用いて測定した。ヒートプレス機で厚さ0.5mmのシート状に加工した混練樹脂組成物の、厚み方向の熱拡散率を測定した。
熱伝導率は、前記方法で求めた比熱、比重、熱拡散率から下式により算出した。
(式5)
熱伝導率(W/m・K)=比重×比熱(J/g・K)×熱拡散率(m/sec)
(衝撃強度)
ヒートプレスして得られた厚み0.5mmのシートサンプルを作製し、東洋精機(株)製インパクトテスターにより、衝撃強度を測定した。衝撃球は0.5インチ半球状のものを使用した。
衝撃強度は値が高いほど良好であり、0.8J以上が望ましく、1.0J以上がとくに好ましい。0.1J以下であると、脆性が著しく悪化するため、好ましくない。
(耐熱老化性)
ヒートプレスして得られた厚み1mmのシートサンプルを10mm×50mmのサイズに切断してサンプルを作製した。これを恒温槽に投入し、所定温度で1000時間経過後、その引張伸度を測定し、初期値の50%となる温度を調べた。
その温度が高いほど耐熱老化性が高く良好であり、下記のように判定した。
◎:160℃以上
○:130℃以上160℃未満
△:110℃以上130℃未満
×:110℃未満
(耐湿熱性)
ヒートプレスして得られた厚み1mmのシートサンプルを10mm×50mmのサイズに切断してサンプルを作製した。これを恒温恒湿槽に投入し、85℃×85%Rhの条件下におけるサンプルの膨張率を観察した。恒温恒湿槽投入前と恒温恒湿槽投入後1000時間経過後の長さ、幅、厚さ(mm)をそれぞれ測定し、各方向における膨張率(%)を算出した。さらにそれらの積をとり、体積膨張率(%)を算出した。このとき恒温恒湿槽投入前の膨張率を100%とする。なお、測定には定圧ノギスを使用した。
体積膨張率は小さいほど好ましい。体積膨張率が110%以下であると、脆性の悪化が小さく、良好である。膨張率が110%を超えると、脆性が悪化するため、高湿度下での使用は好ましくない。
(空隙面積率)
ヒートプレスして得られたシートサンプルの断面を、クロスセクションポリッシャ加工により作製し、SEM観察を行なった。オープンソースである画像解析ソフト「ImageJ」を用いて、SEM観察面において任意に切り出した正方領域面積あたりの空隙面積率を上記で説明した(式3)により算出した。正方領域の1辺は、フィラーの平均粒径が50μm以上の場合はその平均粒径の5倍、それ以外の場合はその平均粒径の7倍とした。
それぞれの配合、及び結果を表4〜6に示す。表4〜6より、本発明の範囲外の組成物と比べ、本発明の組成物は特に優れた熱伝導性を示し、衝撃強度が良好であり、かつ耐熱性、耐湿熱も良好であることがわかる。
ポリエステルエラストマー(A)の200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・s超の実施例1〜11は、200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・s以下であるポリエステルエラストマー(X)を用いた参考例1、2と同様にフィラー充填量が高く、かつフィラー分散性が良好であった。また、実施例1〜11は、参考例1、2に比べ、耐熱性が高く良好であることがわかる。
ポリエステルエラストマー(A)のハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%である実施例1〜11に比べて、この条件を満足しない比較例1、2の組成物は、良好な衝撃強度と良好な耐熱性を両立していないことがわかる。
1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%かつ10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%である熱伝導フィラーを用いた実施例1〜11の組成物に比べて、そうでない熱伝導フィラーを用いた比較例3、4の組成物は、フィラー高充填化が達成できず、熱伝導率が劣ることがわかる。
ソフトセグメント成分がポリ‐ε‐カプロラクトン、ポリヘキサメチレンカーボネートである実施例7、8、9は、ソフトセグメント成分がポリテトラメチレングリコールである実施例に比べ、耐熱性において優れた結果が得られていることがわかる。
カップリング剤によって表面処理されていない熱伝導フィラーを用いた実施例11の組成物は、熱伝導性樹脂組成物としては実用的であるが、フィラーの分散状態が良好でなく、熱伝導率がやや劣ることがわかる。
1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜20%かつ10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜95%である熱伝導フィラーを用いた実施例1〜9、11の組成物に比べて、そうでない熱伝導フィラーを用いた実施例10の組成物は、熱伝導性樹脂組成物としては実用的であるが、耐湿熱性がやや劣ることがわかる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、フィラー高充填化と良好なフィラー分散性を両立し、高熱伝導性でありながら、さらに優れた耐熱性・耐湿熱性を有する高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物であり、産業上の利用価値が大きい。

Claims (9)

  1. 200℃、10kgf荷重時における溶融粘度が2000dPa・sを超え、かつハードセグメント量が20〜85質量%、ソフトセグメント量が80〜15質量%であるポリエステルエラストマー(A)70〜20体積部及び、熱伝導フィラー(B)30〜80体積部を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、該熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜30%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が60〜95%であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
  2. 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するハードセグメント成分の70質量%以上が、テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸と1,4−ブタンジオールからなる、ブチレンテレフタレート単位及び/またはブチレンナフタレート単位からなることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  3. 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分が、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリラクトン、及びポリアルキレンカーボネートジオールのいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  4. 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  5. 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリ‐ε‐カプロラクトンであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  6. 前記ポリエステルエラストマー(A)を構成するソフトセグメント成分がポリヘキサメチレンカーボネートジオールであることを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  7. 前記熱伝導フィラー(B)の単体での熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  8. 前記熱伝導フィラー(B)がカップリング剤によって表面処理されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
  9. 前記熱伝導フィラー(B)が1種類、または2種類以上のフィラーからなり、全フィラーの粒子頻度の合計を100%としたとき、1〜10μmの粒径の粒子頻度が3〜20%、かつ、10〜100μmの粒径の粒子頻度が70〜95%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
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