JP2013533892A - ナノ材料で強化された樹脂および関連材料 - Google Patents

ナノ材料で強化された樹脂および関連材料 Download PDF

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    • C08L79/08Polyimides; Polyester-imides; Polyamide-imides; Polyamide acids or similar polyimide precursors

Abstract

本組成物は、樹脂に分散された例えばグラフェン、ポリアミド酸、カーボンナノチューブ、または、ジメチルアセトアミドなどの強化材料を含む。強化材料は、樹脂中に約0.001〜約10質量%で存在する。さらに、これらの組成物の製造方法、および、具体的な一連の機械特性を達成するために組成物を適合化する方法も提供する。
【選択図】図23

Description

関連出願
[0001]本願は、米国特許出願第61/317,852号(2010年3月26日付けで出願)、米国特許出願第61/415,470号(2010年11月19日付けで出願)、および、米国特許出願第61/453,732号(2011年3月17日付けで出願)の優先権を主張する。これらの出願は、この参照により様々な目的に応じてそれらの全体が開示に含まれる。
発明の分野
[0002]本発明の開示は、ナノスケール材料の分野に関し、さらに、樹脂組成物の分野に関する。
[0003]例えば航空宇宙分野の構造物や航空学的な用途で用いられる現存の先端複合材料は、上記用途やその他の用途で求められる性能を満たしていない。従って、例えばより高い極限強度、破損ひずみ(strain-to-failure)、破壊靱性、疲れ寿命、耐衝撃性、損傷許容度、減衰およびその他の利点などの改善された機械特性を有する強化された複合材料が必要である。また、それに関連してこのような改善された材料を加工する方法も必要である。
[0004]第一の形態において、本発明は、内部に強化材が分散された樹脂を含む組成物を提供し、ここで該強化材は、グラフェン本体、ポリアミド酸、カーボンナノチューブ、強化溶媒、またはそれらのあらゆる組み合わせを含み、さらに該強化材は、組成物の総質量に基づき約0.001〜約10質量%で存在する。
[0005]さらに組成物の製造方法も提供し、本方法は、(a)グラフェン本体、(b)ポリアミド酸、(c)アミド、または(d)カーボンナノチューブのうち少なくとも1種を含む強化材を少なくとも1種の樹脂と接触させることにより、強化材が前駆混合物の約0.001%〜約1.0質量%で存在する前駆混合物を形成すること、を含む。
[0006]さらに、強化樹脂組成物の合成方法も開示し、本方法は、エポキシ、ポリエステルおよびビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を選択すること;グラフェン、カーボンナノチューブ、ポリアミド酸およびアミドからなる群より選択される少なくとも1種の強化材料を選択すること;および、強化材が強化樹脂組成物の約0.001%〜約1.0質量%で存在する強化樹脂組成物が形成されるように、少なくとも1種の強化材料を少なくとも1種の樹脂に分散させること、を含む。
[0007]加えて、硬化されたナノコンポジットが提供される。このような材料は、硬化された樹脂;および、硬化されたナノコンポジット材料中に分散されるナノ粒子を含み、ここでナノ粒子の質量分率は、硬化されたナノコンポジット樹脂の総質量に基づいて約0.0005質量%から約1質量%未満である。
[0008]要約および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことによりさらに理解される。本発明を説明する目的で、本発明の代表的な実施態様の図面を示すが、本発明は、開示された特定の方法、組成物および装置に限定されず、加えてこれらの図面は、必ずしも一定の縮尺で書かれたものではない。各図面は以下の通りである:
図1aは、a)引張試験の試験サンプルの概略図を図示する。 図1bは、b)SENB試験の試験サンプルの概略図を図示する。 図2は、グラフェンベースのナノ樹脂プレートを図示する。 図3aは、未加工のエポキシに関する典型的な応力−ひずみプロットを図示する。 図3bは、グラフェンナノ樹脂に関する典型的な応力−ひずみプロットを図示する。 図4aは、「F」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の引張特性を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図4bは、「F」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の引張特性を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図5aは、「F」硬化サイクルを用いたGICを説明する図であり、a)未加工の荷重変位を示す。 図5bは、「F」硬化サイクルを用いたGICを説明する図であり、b)グラフェンナノ樹脂の荷重変位を示す。 図5cは、「F」硬化サイクルを用いたGICを説明する図であり、c)ナノ樹脂内におけるグラフェンシート含有量の質量%に対する様々なGICを示す。 図6aは、「V」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の引張特性を説明する図であり、a)典型的な非線形の応力−ひずみプロットを示す。 図6bは、「V」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の引張特性を説明する図であり、b)Grの極限引張強度−質量%を示す。 図6cは、「V」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の引張特性を説明する図であり、c)Grの破損ひずみ−質量%を示す。 図6dは、「V」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の引張特性を説明する図であり、d)Grの弾性係数−質量%を示す。 図7は、「V」硬化サイクルを用いたナノ樹脂中のグラフェンの質量%に対するGICを図示する。 図8aは、典型的な応力−ひずみ曲線を説明する図であり、a)遅い=F硬化サイクルを示す。 図8bは、典型的な応力−ひずみ曲線を説明する図であり、b)中間=V硬化サイクルを示す。 図9aは、「F」および「V」型硬化サイクルによるグラフェン0.006%における引張特性の比較を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図9bは、「F」および「V」型硬化サイクルによるグラフェン0.006%における引張特性の比較を説明する図であり、b)破損ひずみ、を示す。 図9cは、「F」および「V」型硬化サイクルによるグラフェン0.006%における引張特性の比較を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図10は、「F」および「V」硬化サイクルによるグラフェン0.006%の特性の比較を図示する。 図11aは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.02%の場合における引張試験特性の比較を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図11bは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.02%の場合における引張試験特性の比較を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図11cは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.02%の場合における引張試験特性の比較を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図12は、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.02%の場合のGICの比較を図示する。 図13aは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.05%の場合における引張試験特性の比較を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図13bは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.05%の場合における引張試験特性の比較を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図13cは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTの含量が0.05%の場合における引張試験特性の比較を説明する図であり、c)弾性係数であるを示す。 図14は、「F」、「V」および「A」硬化を用いて酸処理したSWCNTの含量が0.05%の場合のGICの比較を図示する。 図15aは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いたSWCNTに関する0.02%における引張試験特性の比較を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図15bは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いたSWCNTに関する0.02%における引張試験特性の比較を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図15cは、「F」、「V」および「A」硬化サイクルを用いたSWCNTに関する0.02%における引張試験特性の比較を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図16は、「F」、「V」および 「A」 硬化サイクルを用いたSWCNTの0.02%ローディングにおけるGICの比較を図示する。 図17は、ポリアミド酸ナノ樹脂プレートを図示する。 図18aは、ポリアミド酸ナノ樹脂に対する界面活性剤の作用を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図18bは、ポリアミド酸ナノ樹脂に対する界面活性剤の作用を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図18cは、ポリアミド酸ナノ樹脂に対する界面活性剤の作用を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図18dは、ポリアミド酸ナノ樹脂に対する界面活性剤の作用を説明する図であり、d)破壊靱性を示す。 図19aは、ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性へのDMAC溶媒の作用を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図19bは、ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性へのDMAC溶媒の作用を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図19cは、ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性へのDMAC溶媒の作用を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図19dは、ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性へのDMAC溶媒の作用を説明する図であり、d)破壊靱性を示す。 図20は、DMACナノ樹脂の典型的な荷重−荷重点変位を図示する。 図21aは、DMACナノ樹脂の機械特性へのDMAC質量%の作用を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図21bは、DMACナノ樹脂の機械特性へのDMAC質量%の作用を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図21cは、DMACナノ樹脂の機械特性へのDMAC質量%の作用を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図21dは、DMACナノ樹脂の機械特性へのDMAC質量%の作用を説明する図であり、d)破壊靱性を示す。 図22aは、DMACナノ樹脂の再現性を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図22bは、DMACナノ樹脂の再現性を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図22cは、DMACナノ樹脂の再現性を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図22dは、DMACナノ樹脂の再現性を説明する図であり、d)破壊靱性を示す。 図23aは、SENB破断面の低倍率のSEM顕微鏡写真を説明する図であり、a)未加工のエポキシのSEM顕微鏡写真である。 図23bは、SENB破断面の低倍率のSEM顕微鏡写真を説明する図であり、b)ナノ材料のパーセンテージが適切な最も高い強度を有するナノ樹脂のSEM顕微鏡写真である。 図23cは、SENB破断面の低倍率のSEM顕微鏡写真を説明する図であり、c)ナノ材料のパーセンテージが最適値よりも高い最も高い強度を有するナノ樹脂(クラックの先端が上から下へに伝わっている)のSEM顕微鏡写真である。 図24aは、a)未加工のエポキシのドリル穴のエッジの低倍率のSEM顕微鏡写真を図示する。 図24bは、b)最も高い強度を有するナノ樹脂のドリル穴のエッジの低倍率のSEM顕微鏡写真を図示する。 図24cは、c)最も高い靱性を有するナノ樹脂のドリル穴のエッジの低倍率のSEM顕微鏡写真を図示する。 図25は、所定位置に一方向炭素繊維テープが貼られたアルミニウム底のプレートと湿潤した皿を図示する。 図26は、一方向炭素/エポキシコンポジットのパネルの周りに配置した吸収フレーム(bleeder frame)を図示する。 図27は、高温で密封されるテープを図示する。 図28は、完全真空バッグの組立品を図示する。 図29は、引張試験のための一方向(UD)コンポジット試料の構造を図示する。 図30は、4点で曲げ荷重をかけた概略図を説明する(厚さ3.2mm=1/8インチ、幅=12.7mm=1/2インチ)。 図31は、モードI破壊靱性試験のためのDCBコンポジット試料の構造を図示する。 図32は、グラフェンまたはGOの様々な共有結合における官能化の化学反応を示す略図である(現存する出版物より)。 図33は、GOプレートの底面の外縁にカルボン酸が存在するまたは存在しないグラフェン酸化物の模式的な構造を説明する(図は現存する出版物に記載の図である)。 図34は、ビニルエステル樹脂の化学構造を図示する。 図35は、ナノコンポジットの機械的試験を説明する図であり、(a)引張試験のための装置;(b)SENB試験のための装置である。 図36は、RGNS−I、RGNS−IIおよびGNS−IIIのFTIRスペクトル解析(固体として、および、GNS−IIIは水中で超音波処理した)を図示する。 図37は、固形グラファイト粉末、RGNS−I、RGNS−IIおよびGNS−IIIのラマンスペクトル解析を図示する。 図38aは、RGNS−II粉末のXPS解析を図示する。 図38bは、RGNS−II粉末のXPS解析を図示する。 図38cは、RGNS−II粉末のXPS解析を図示する。 図39aは、GNS−III粉末のXPS解析を図示する。 図39bは、GNS−III粉末のXPS解析を図示する。 図39cは、GNS−III粉末のXPS解析を図示する。 図40は、RGNS−IIおよびGNS−IIIにおけるXRD解析を図示する。 図41は、RGNS−I、RGNS−IIおよびGNS−IIIの不活性雰囲気における3種の異なる加熱速度での熱重量分析の結果を図示する。 図42aは、グラフェンの形態学的な調査を説明する図であり、砕いたグラフェンシートを示すRGNS−Iの(a)SEM画像である。 図42bは、グラフェンの形態学的な調査を説明する図であり、砕いたグラフェンシートを示すRGNS−Iの(b)TEM画像である。 図43は、グラフェンの形態学的な調査を説明する図であり、単一のグラフェンシートを示すRGNS−IIのTEM画像である。 図44aは、グラフェンの形態学的な調査を説明する図であり、グラフェンシートの集合体を示すGNS−IIIの(a)SEM画像である。 図44bは、グラフェンの形態学的な調査を説明する図であり、グラフェンシートの集合体を示すGNS−IIIの(b)TEM画像である。 図45aは、合成されたグラフェンおよびエタノールに懸濁したグラフェンを説明する図であり、(a)RGNS−Iのゲル段階を示す。 図45bは、合成されたグラフェンおよびエタノールに懸濁したグラフェンを説明する図であり、(b)熱衝撃後に固化したRGNS−II、を示す。 図45cは、合成されたグラフェンおよびエタノールに懸濁したグラフェンを説明する図であり、(c)熱衝撃後に固化したGNS−IIIを示す。 図46は、ナノコンポジット調製物で用いられる基本成分の透過率のFTIRスペクトルの解析を図示する。 図47は、DMAC溶媒を含む純粋なビニルエステル樹脂の透過率のFTIRスペクトルの解析を図示する。 図48は、グラフェンおよびDMAC溶媒を含むビニルエステル樹脂の透過率のFTIRスペクトルの解析を図示する。 図49は、グラフェンおよびTHF溶媒を含むビニルエステル樹脂の透過率のFTIRスペクトルの解析を図示する。 図50は、DMAC溶媒およびグラフェンを含むビニルエステルナノコンポジットのラマンスペクトルの解析を図示する。 図51は、THF溶媒およびグラフェンを含むビニルエステルナノコンポジットのラマンスペクトルの解析を図示する。 図52aは、VEGRDMAC0.02の形態学的な調査を説明する図であり、VE中のRGNS−II分散液を示す(a)SEM画像である。 図52bは、VEGRDMAC0.02の形態学的な調査を説明する図であり、VE中のRGNS−II分散液を示す(b)TEM画像である。 図53aは、VEGRTHF0.02の形態学的な調査を説明する図であり、(a)VE中のRGNS−II分散液を示すFESEM画像である。 図53bは、VEGRTHF0.02の形態学的な調査を説明する図であり、(b)VE中のRGNS−II分散液を示すFESEM画像である。 図54aは、(a)未加工のVEの動的機械的熱解析を図示する。 図54bは、(b)VEDMACコンポジットの動的機械的熱解析を図示する。 図55aは、(a)VEGRDMAC0.02の動的機械的熱解析を図示する。 図55bは、(b)VEGRTHF0.02ナノコンポジットの動的機械的熱解析を図示する。 図56は、機械特性評価に用いられる引張強度試験用試料の寸法を示す。 図57aは、コンポジットおよびナノコンポジットの(a)引張試験の後に得られたサンプルを図示する。 図57bは、コンポジットおよびナノコンポジットの(b)典型的な応力−ひずみプロットを図示する。 図58aは、未加工の樹脂およびナノコンポジットの機械特性を説明する図であり、(a)引張強度を示す。 図58bは、未加工の樹脂およびナノコンポジットの機械特性を説明する図であり、(b)引張係数(プロットと共に標準偏差のバーを示した)を示す。 図59は、機械特性評価に用いられるSENB試料の寸法を示す。 図60aは、コンポジットおよびナノコンポジットの(a)SENB試験の後に得られたサンプルを図示する。 図60bは、コンポジットおよびナノコンポジットの(b)典型的な荷重−伸びプロットを図示する。 図61aは、未加工の樹脂およびナノコンポジットの機械特性を説明する図であり、SENB試験から計算した(a)KICを示す。 図61bは、未加工の樹脂およびナノコンポジットの機械特性を説明する図であり、SENB試験から計算した(b)GIC値(プロットと共に標準偏差のバーを示した)を示す。 図62は、未加工のコンポジットと比較した、ナノコンポジットの様々な機械特性を図示する。 図63aは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、未加工のVE樹脂の(a)SENBにおける破損を示す。 図63bは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、未加工のVE樹脂の(b)引張試験における破損を示す。 図64aは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、VEDMACの(a)SENBにおける破損を示す。 図64bは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、VEDMACの(b)引張試験における破損を示す。 図65aは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、VEGRDMAC0.02の(a)SENBにおける破損を示す。 図65bは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、VEGRDMAC0.02の(b)引張試験における破損を示す。 図66aは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、VEGRTHF0.02の(a)SENBにおける破損を示す。 図66bは、破損モードを研究するためのFESEM画像を説明する図であり、VEGRTHF0.02の(b)引張試験における破損を示す。 図67aは、未加工の樹脂とナノコンポジットとの機械特性の比較であり、(a)引張強度を示す。 図67bは、未加工の樹脂とナノコンポジットとの機械特性の比較であり、(b)引張係数を示す。 図68aは、未加工の樹脂とナノコンポジットとの機械特性の比較を説明する図であり、SENB試験から計算した(a)KICを示す。 図68bは、未加工の樹脂とナノコンポジットとの機械特性の比較を説明する図であり、SENB試験から計算した(b)GIC値を示す。 図69aは、試験サンプルの概略図であり、a)イヌの骨形サンプルの引張試験を図示する。 図69bは、試験サンプルの概略図であり、b)SENBサンプルを図示する。 図70aは、典型的な応力−ひずみプロットを説明する図であり、a)未加工のビニルエステルを示す。 図70bは、典型的な応力−ひずみプロットを説明する図であり、b)ハイブリッドVE−DMAC−GIFナノ樹脂プレートを示す。 図71aは、ハイブリッドVE−DMACGNSと未加工VE−DMACナノ樹脂との引張特性の比較を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図71bは、ハイブリッドVE−DMACGNSと未加工VE−DMACナノ樹脂との引張特性の比較を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図71cは、ハイブリッドVE−DMACGNSと未加工VE−DMACナノ樹脂との引張特性の比較を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図72aは、a)ビニルエステル−未加工の荷重−変位を図示する。 図72bは、b)ビニルエステル−DMACナノ樹脂の荷重−変位を図示する。 図73は、VE−未加工、VE−DMおよび3種のハイブリッド(VE−DM−GNSナノ樹脂)のGICの比較を図示する。 図74aは、試験サンプルの概略を説明する図であり、a)イヌの骨形サンプルの引張強度サンプルを示す。 図74bは、試験サンプルの概略を説明する図であり、b)SENBサンプルを示す。 図75aは、a)ポリエステル−未加工の典型的な応力−ひずみ曲線を図示する。 図75bは、b)ポリエステル−GIII002ナノ樹脂の典型的な応力−ひずみ曲線を図示する。 図76aは、ポリエステル−未加工、ポリエステル−ナノ樹脂、および、ポリエステル−ハイブリッドの引張特性の比較を説明する図であり、a)極限引張強度を示す。 図76bは、ポリエステル−未加工、ポリエステル−ナノ樹脂、および、ポリエステル−ハイブリッドの引張特性の比較を説明する図であり、b)破損ひずみを示す。 図76cは、ポリエステル−未加工、ポリエステル−ナノ樹脂、および、ポリエステル−ハイブリッドの引張特性の比較を説明する図であり、c)弾性係数を示す。 図77aは、a)未加工ポリエステルの荷重−変位を図示する。 図77bは、b)ポリエステル−GIIIナノ樹脂の荷重−変位を図示する。 図77cは、c)ポリエステル−DMAc−GIFハイブリッドの荷重−変位を図示する。 図78は、PE−未加工、PE−GIII、および、3種のハイブリッド(PE−DMAc−グラフェン)のGICの比較を図示する。
[0087]以下の詳細な説明を添付の図面および実施例(これらもこの開示の一部を形成する)と共に参照することにより、本発明をより容易に理解することができる。当然のことながら、本発明は、本明細書において説明されたおよび/または示された特定の装置、方法、用途、条件またはパラメーターに限定されることはなく、本明細書において用いられる用語は、具体的な実施態様を単なる一例として説明する目的のための用語であり、特許請求された発明を限定することは目的としない。また明細書(添付の請求項も含む)でも用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は複数形も含み、特定の数値が述べられている場合は、文章中に明らかな他の指示がない限り、少なくともその具体的な値を含む。
[0088]本明細書で用いられる用語「複数」は、1より多いことを意味する。各種値が示されている場合、その他の実施態様は、一方の具体的な値から、および/または、他方の具体的な値を含む。同様に値が「約」という接頭語を使用して近似値として示される場合、当然のことながら、値を特定することにより他の実施態様が形成される。全ての範囲は、包括的であり、様々な組み合わせが可能である。
[0089]様々な特許およびその他の公報が本明細書で述べられる。これらはそれぞれ、様々な目的でその全体を参照により本明細書に包含させる。
[0090]第一の形態において、本発明の開示により、組成物が提供される。本組成物は、適切には、内部に強化材が分散された樹脂を含む。強化材は、適切には、グラフェン本体、ポリアミド酸、カーボンナノチューブ、強化溶媒、またはこれらの組み合わせである。
[0091]開示された組成物に、様々な樹脂を使用することができる。エポキシ、ビニルエステルおよびポリエステルはいずれも適切であると考えられる。エポキシ(一般的には、エポキシドとポリアミンとの反応生成物ともいう)が特に適切であると考えられる。エポキシの一つの例としては、ビスフェノールAとアルキルグリシジルエーテルとのジグリシジルエーテルをベースとするエポキシが挙げられる。
[0092]ビニルエステルおよびポリエステルも、開示された組成物に適切である。様々なビニルエステルを使用することができる。ライヒホールド(Reichhold)製のハイドレックス(HydrexTM)ビニルエステル系は、適切なビニルエステルの一つである。さらにバイペール(Vipel)およびアッシュランド(Ashland)も適切なビニルエステルの商業的な生産業者である。その他のビニルエステル組成物は、米国特許第4,31,644号、米国特許第5,164,464号、米国特許出願第10/679,871号、米国特許第4,996,270号(これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)で説明される。
[0093]適切なポリエステルとしては、これらに限定されないが、ポリグリコリド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、アジピン酸ポリエチレン(PEA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、および、芳香族ポリエステルが挙げられ、これらはいずれも開示された組成物で使用するのに適している。典型的なポリエステルおの一つは、ヘキシオン(Hexion)712−3765(www.hexion.com;モメンティブ(Momentive)より入手可能)である;このポリエステルを使用した代表的な実施態様を本明細書で説明する。ポリエステル供給元を一部列挙すれば、アッシュランド、ライヒホールド、AOC(www.aoc-resins.com)、DSM(www.dsm.com)、および、トータル(Total)(www.total.com)が挙げられる。
[0094]前述の樹脂の列挙は、当然のことながら本発明の開示の範囲を制限しないものとする。前述の樹脂(エポキシ、ビニルエステル、および、ポリエステル)はいずれも、コポリマー(グラフト、ブロック、ランダム、交互、周期的)として存在していてもよい。
[0095]様々なその他の樹脂(例えば熱硬化性および熱可塑性性など)も開示された強化材料と共に使用することができる。ポリエチレン、PMMA、ポリスチレン、ポリプロピレン、マレイミドなどはいずれも適切な樹脂の候補である。実質的にあらゆる樹脂が、開示された強化材料および方法の結果として強化された機械特性を示すと予想される。
[0096]強化材料について言えば、強化材料は、強化溶媒を含んでいてもよい。いかなる一つの理論に縛られるつもりはないが、強化溶媒を使用すると、得られた組成物に機械的靱性が付与される。
[0097]強化溶媒は、数種類含まれていてもよい。有用な強化溶媒の一種として、揮発性を有する極性のプロトン性溶媒がある。このような溶媒の例としては、これらに限定されないが、ギ酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、酢酸、および、水が挙げられ、これらは適切であると考えられる。本明細書において説明されているように、樹脂中に強化溶媒が含まれることによって得られた組成物に靱性が付与される。非プロトン性溶媒、例えばアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、酢酸エチル、および、n−メチルピロリドン(NMP)はいずれも適切であると考えられる。開示された組成物にとって特に適切なものはDMACであり、本明細書で示される代表的な実施態様は、DMACを含む樹脂である。その他のアセトアミドも適切であり、例えばN,N−二置換アセトアミドが挙げられる。
[0098]また強化溶媒は、非極性溶媒であってもよい。適切な非極性溶媒としては、トルエン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、および、ジエチルエーテルが挙げられる。またクロロホルムも、開示された組成物および方法において非極性溶媒として用いられる。
[0099]またポリアミド酸も適切な強化材料である。いかなる特定の動作理論に縛られるつもりはないが、開示された組成物中にポリアミド酸を含ませることによって、得られた組成物に機械的靱性が付与される。
[0100]様々なポリアミド酸が、強化材料として使用することができる。適切な酸を一部列挙すると、ピロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−オキシジアニリン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン、4,4’−オキシジフタル酸無水物−4,4’−オキシジアニリン、4,4’−ビスフェノールA二無水物−4,4’−オキシジアニリン、エチレングリコールビス(無水トリメリト酸)−4,4’−オキシジアニリンなどが挙げられる。前述したものは非限定的な列挙であって、開示された組成物に使用することができるポリアミド酸の限定と解釈されないこととする。
[0101]強化材は、樹脂内に均一に分散させることが適切であるが、必ずしもそうでなくてもよい。本組成物は、強化材の分散状態が異なる2またはそれより多くの領域があってもよい(例えば第一の領域は比較的高濃度の強化材を含み、第二の領域は、比較的低濃度の強化材を含む)。
[0102]強化材としてのグラフェン本体について、約0.1nm〜約500nm、または、約1nm〜約100nm、または、約5nm〜約50nmの断面寸法を有するグラフェン本体が特に適切であると考えられる。グラフェン本体は、実質的にはどのような形状であってもよく、グラフェン本体はプレート様でもよいし、ロッド様でもよいし、または、ブロック様であってもよい。グラフェン本体のアスペクト比(例えば、幅に対する長さの比、または、長さに対する高さの比)は、約1:20,000、または、約10:10,000、または、約20:5000、または、約50:1000、または、さらには約100:500であってもよい。
[0103]また強化材としてのグラフェン本体は多層であってもよい。グラフェン本体は、1、2、5、10、20、50、100、200、500またはさらにそれより多くの層を含んでいてもよい。またグラフェンは官能化されていてもよい(すなわち、1種またはそれより多くの官能基を有していてもよい)。グラフェン本体は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、またはそれらのあらゆる組み合わせを含んでいてもよい。特に適切なものは、カルボキシルが結合したグラフェンであると考えられる。グラフェンは、市販のものを購入してもよい。グラフェンの供給元としては、グラフェン・インダストリーズ(Graphene Industries)(www.grapheneindustries.com)、グラフェン・ソリューションズ(Graphene Solutions)(www.graphenesolutions.com)、および当業者によく知られているその他の供給元が挙げられる。
[0104]あるいは使用者がグラフェンを製造してもよい。グラフェンの製造方法としては、よく知られたハマーズ法(Hummers method)が挙げられる。その他のグラフェン製造方法は、以下でより詳細に説明する。
[0105]その他の適切な強化材料としては、米国特許第7,658,870号(この特許は、その全体を参照により本明細書に包含させる)で列挙されているカーボンナノチューブなどの材料が挙げられる。これらの材料は無機物質の性質を有するものでもよく、例えばTiO、ZnO、SiC、および、Yが挙げられる。このような材料は、少なくとも1つの寸法(例えば直径)が約100nmまたはそれ未満であることが適切であるが、これは必ずしもそうでなくてもよい。強化材料として用いられるカーボンナノチューブを標準(すなわち、実質的にまたは完全に官能基を含まない)としてもよい。あるいはカーボンナノチューブは、(例えば酸処理によって)官能化されていてもよい。カーボンナノチューブは、カルボキシル基を有していてもよい(例えば米国特許第7,807,127号、参照により本明細書に組み入れる)。カーボンナノチューブにアルコール基、アミノ基およびその他の官能基が存在していてもよい。
[0106]前述の樹脂および強化材料のあらゆる組み合わせが適切であると考えられる。いくつかの組成物は、2種またはそれより多くの樹脂を含んでいてもよい。また、複数の強化材料を含む組成物でもよい。例えば、グラフェン本体とジメチルアセトアミドとを含む組成物でもよい。加えて、ポリアミド酸を例えばジメチルアセトアミドなどのアミドと共に含む組成物でもよい。ポリエステル、グラフェンおよびポリアミド酸を含む組成物でもよい。本明細書において説明されているように、特定の機械特性プロファイルを有する最終的な組成物が得られるように、使用者が樹脂および強化材料を調製してもよい。例えば、エポキシとグラフェンとを組み合わせることにより、特に強度が得られる可能性がある。
[0107]樹脂がビニルエステルである場合、カーボンナノチューブは、特に適切な強化材であると考えられる。またこれらの組成物は、溶媒としてジメチルアセトアミドを含んでいてもよい。また、ポリエステル樹脂と、強化材として材料ポリアミド酸とを併用した組成物も、適切である。グラフェンとポリエステル樹脂との併用が特に適切である。またエポキシ樹脂とグラフェンとの併用も適切であり、この組成物はさらに、ポリアミド酸、ジメチルアセトアミドまたはその両方を含んでいてもよい。強化材料としてグラフェン本体が選択される場合、グラフェン本体は、実質的にあらゆる形状(ロッド形、プレート形、シート形、チャンク形、ブロック形)を有していてもよい。典型的なグラフェンの形態は、米国特許第7,071,258号、米国特許第6,869,581号、および、米国特許出願第12/589,897号(これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる)で説明される。
[0108]強化材は、適切には、組成物の総質量に基づき約0.001質量%〜約10質量%で存在するが、強化材は、最低でも約0.0005質量%で存在していてもよく、または、いくつかの実施態様において、約1.5質量%、約2質量%、約3質量%、または、さらには約5質量%で存在していてもよい。その他の適切な組成物の総質量に基づく質量パーセンテージは、最低でも0.0005質量%であり、上限は、以下に示す質量パーセンテージ:0.002、0.005、0.008、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5、0.8、1および1.2質量%のいずれか一つであってもよい。このような質量パーセンテージで強化材が存在すると、現存の樹脂材料や最先端の樹脂材料と比較して驚くべき且つ優れた結果が得られることが確認された。
[0109]ある種のDMACとポリアミド酸とを含む材料の場合、強化材料は、適切には約0.1〜10質量%で存在し、または、ポリエステルとビニルエステルが樹脂として機能する場合は約2〜約3質量%で存在していてもよい。エポキシが樹脂である実施態様において、強化材料は、適切には約5〜約7質量%で存在する。本明細書において考察されたように、DMACおよびポリアミド酸(その他の強化溶媒と共に)によって、得られた組成物に機械的靱性が付与される。
[0110]その他の強化材料も、得られた組成物に機械的強度を付与する。このような強化材料としては、ナノ粒子(例えばナノダイヤモンドなど)が挙げられる。ナノ粒子の場合、約0.001〜1質量%の含量、または、さらには約0.2質量%の含量が適切であると考えられる。その他の適切な組成物の総質量に基づく質量パーセンテージは、最低でも0.0005質量%であり、上限は、以下に示す質量パーセンテージ:0.002、0.005、0.008、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5、および、0.8質量%のいずれか一つであってもよい。またカーボンナノチューブも樹脂組成物に強度を付与する。カーボンナノチューブは、適切には約0.01〜約1質量%で存在し、特に適切には、約0.02質量%の含量である。
[0111]またグラフェンシートも適切な強化材料である。グラフェンがポリエステルまたはビニルエステルを強化する場合、グラフェンは、適切には約0.001〜約1質量%で存在し、より適切には約0.002質量%で存在する。グラフェンがエポキシを強化する場合、グラフェンは、適切には約0.001〜約1質量%で存在していてもよく、さらにより適切には約0.006質量%で存在する。その他の適切な組成物の総質量に基づく質量パーセンテージは、最低でも0.0005質量%であり、上限は、以下に示す質量パーセンテージ;0.002、0.005、0.008、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5、および、0.8質量%のいずれか一つであってもよい。
[0112]本明細書においてグラフェン、ナノ粒子およびカーボンナノチューブが強度を付与する強化材として言及されるが、当然のことながらグラフェン、ナノ粒子およびカーボンナノチューブは得られた組成物に靱性を与えるようにも機能する。いくつかの実施態様において、グラフェン、ナノ粒子およびカーボンナノチューブは、ポリアミド酸またはDMACほど効果的に組成物に靱性を与えない場合もあるが、それでもグラフェン、ナノ粒子およびカーボンナノチューブは得られた組成物を強化する。
[0113]開示された組成物中に含まれる樹脂は、硬化されることが適切である。しかしながら、いくつかの実施態様において、樹脂は未硬化の状態であってもよいし、または、部分的に硬化された状態であってもよい。当然のことながら、本発明の開示は、両方の中間体(すなわち樹脂が硬化されていない組成物、または、部分的に硬化された組成物)、および、硬化された樹脂を含む最終的な組成物を含む。
[0114]また組成物は、繊維、鉄筋、ガラス繊維などのその他の強化材を含んでいてもよい。特に海運および航空宇宙分野の用途の場合は、ガラス繊維および炭素繊維が特に適切な強化材料であると考えられるが、これらの用途において必ずしもガラス繊維、炭素繊維またはその両方が含まれていなくてもよい。
[0115]以下の実施例でさらに詳細に説明されるように、強化材料が調和して用いられることにより、樹脂の機械特性において有意な改善が達成される。強化材を包含させることにより、組成物の引張強度、破損ひずみ、破壊靱性、限界応力拡大係数、限界ひずみエネルギー解放率(critical strain energy release rate)、減衰定数または弾性係数の少なくとも1種が、実質的に強化材を含まない樹脂と比較して約1%〜約600%改善される。これは、強化された樹脂、および、強化されていないが樹脂が硬化されている組成物でも観察される可能性がある。相対的に10%〜約100%の改善を達成することが可能であり、または、20%〜約50%の改善を達成することも可能である。
[0116] 強化材を包含させることによって、本発明の開示に係る炭素繊維を含む組成物の引張強度、破損ひずみ、破壊靱性、限界応力拡大係数、限界ひずみエネルギー解放率、減衰定数または弾性係数の少なくとも1種が、実質的に強化材を含まないいわゆる「未加工の」炭素繊維樹脂と比べて約10%〜約250%も変更される。
[0117]また本発明の開示は、組成物の製造方法も提供する。これらの方法は、(a)グラフェン本体、(b)ポリアミド酸、(c)強化溶媒、または(d)カーボンナノチューブの少なくとも1種を含む強化材を少なくとも1種の樹脂と接触させることにより、強化材が前駆混合物の約0.001%〜約10質量%で存在する前駆混合物を形成すること、を含む。
[0118]適切な樹脂としては、本明細書において説明されているように、エポキシ、ポリエステルおよびビニルエステルが挙げられる。またこのような樹脂は、上述したように、熱硬化物質であってもよいし、または熱可塑性物質であってもよい。
[0119]強化材料は、第一の溶媒と組み合わせてもよいし、第一の溶媒に分散させてもよいし、または、第一の溶媒と混合してもよい。このような溶媒は、アセトアミド、アルコールまたはその両方であり得る。例えばジメチルアセトアミド(DMAC)などのN,N−二置換アミドが特に適切であると考えられる。
[0120]第一の溶媒は、前駆混合物の質量の約0.1%〜約10%、または、さらには前駆混合物の質量の約0.5%〜約1%を構成するように存在していてもよい。
[0121]強化材料は、様々な手段で第一の溶媒中に分散させてもよい。強化材料を第一の溶媒に分散するために、混合、超音波処理、振盪などがいずれも利用可能である。第一の溶媒に強化材料を分散させてから、強化材料を樹脂と混合してもよい。その他の実施態様において、強化材料は、樹脂に直接分散される。
[0122]強化材がグラフェン本体である場合、グラフェン本体は、適切には前駆混合物の約0.001%〜約0.1質量%で存在する。適切なグラフェン本体は、本明細書の他の所で説明されている。また、適切なポリアミド酸、カーボンナノチューブおよび強化溶媒も本明細書の他の所で説明されている。
[0123]さらに使用者は、第二の溶媒を用いてもよい。第二の溶媒は、第一の溶媒に添加してもよいし、樹脂に添加してもよいし、または、さらには樹脂と強化材との混合物にも添加してもよい。第二の溶媒としては、メチルエチルケトン、過酸化ジアリール、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン、過酸エステル、過酸化ジアシル、ヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
[0124]前駆混合物は、適切には、硬化される。硬化サイクルは、樹脂の製造元の指示に従って行ってもよい。硬化は、約24時間未満、12時間未満、5時間未満で行ってもよく、または、1時間未満で行ってもよい。
[0125]いくつかの実施態様において(以下で説明される典型的な方法を含む)、硬化は、前駆混合物を、第一の温度に第一の期間、および、第二の温度に第二の期間曝露することを含む。第一の温度および第二の温度は互いに異なっていてもよい;これらの温度は、少なくとも約5℃、10℃、25℃、50℃異なっていてもよく、または、それよりもさらに大きく異なっていてもよい。以下で説明されているように、硬化サイクルは、2回の(またはそれよりも多くの)温度への曝露を含んでいてもよい。
[0126]温度への曝露時間は、同一でもよいしまたは異なっていてもよい。曝露時間は、互いに約1分〜約20時間異なっていてもよいし、または、約60分〜約10時間異なっていてもよい。これに限定されないが、典型的な硬化サイクルは添付の実施例で説明される。硬化は、オートクレーブで行ってもよいし、対流式オーブンで行ってもよいし、またはその両方で行ってもよい。
[0127]硬化温度は、適性に中程度の温度でもよく;材料は、室温で、または、たった約30℃で硬化することも可能である。また硬化は、より高温でも起る可能性があり、例えば80℃、100℃、120℃で、または150、200℃もの高温でも起こる可能性があり、または、250℃もの高温でも起こる可能性がある。
[0128]本発明の開示はまた、強化樹脂組成物の合成方法も提供する。本方法は、エポキシ、ポリエステルおよびビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を選択すること;グラフェン、カーボンナノチューブ、強化溶媒、ポリアミド酸からなる群より選択される少なくとも1種の強化材料を選択すること;および、強化材が強化樹脂組成物の約0.001%〜約10質量%で存在する強化樹脂組成物が形成されるように、少なくとも1種の強化材料を少なくとも1種の樹脂に分散させること、を含む。
[0129]適切なエポキシ、ポリエステルおよびビニルエステルは、本明細書の他の所で説明されている。また適切な強化材料も本明細書の他の所で説明されている。グラフェン、ポリアミド酸、および、二置換アミド(例えば、N,N−二置換アミド)からなる群より選択される強化材料が特に適切であると考えられる。
[0130]いくつかの実施態様において、使用者は、選択された少なくとも1種の樹脂、選択された少なくとも1種の強化材料またはその両方を含む強化樹脂組成物の1種またはそれより多くの機械特性の概算に基づいて、少なくとも1種の樹脂、少なくとも1種の強化材料またはその両方を選択することができる。このようにすることにより、使用者が、望ましい一連の機械特性を有する組成物を合成するためにシステムを適用できるようにすることができる。このような概算は、表またはその他の表示に提示されてもよい。このような概算は、コンピューターで読取り可能な媒体、例えばUSBドライブまたはコンピューターのハードドライブに提示されてもよい。
[0131]このような例の一つは、調節可能性(tunability)行列の形態で以下に記載される。様々な組成物の機械特性を評価するために、使用者は、どの樹脂、強化材料および加工条件を組み合わせれば、望ましい一連の機械特性を有する組成物が生産されるかを決定することができる。
[0132]また使用者は、強化樹脂組成物を硬化してもよい。適切な硬化サイクルは、本明細書の他の所で説明されている;硬化は、組成物を、2種の(またはそれより多くの)異なる温度に2種の(またはそれより多くの)異なる持続時間曝露することを要する場合がある。
[0133]さらに、硬化されたナノコンポジットも提供する。このような材料は、硬化された樹脂、および、硬化されたナノコンポジット材料中に分散されるナノ粒子を含み、ここでナノ粒子の質量分率は、硬化されたナノコンポジット樹脂の総質量に基づいて約0.0005質量%から約0.1質量%未満である。
[0134]硬化された樹脂は、多種多様の材料を含んでいてもよい。このような材料としては、これらに限定されないが、ビニルエステル、ポリエステル、エポキシ、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。開示された組成物に特に適切なものは、ビニルエステル、ポリエステル、および、エポキシであると考えられる。
[0135]ナノ粒子は、適切には、約1nm〜約1000nm、または、約20nm〜約500nm、または、約50nm〜約200nmの断面寸法を有し、または、約100nmの断面寸法を有する。ナノ粒子は様々な材料を含んでもよく、このような材料としては、SiC、TiO、Y、炭素、Au、Ag、Cu、Ge、Pt、Fe、CoPt、PbS、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、PbSe、ZnSe、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、CaCO、酸化第二鉄などが挙げられる。特に適切なナノ粒子は、SiC、TiO、Y、および、炭素であると考えられる。
[0136]いかなる特定の理論に縛られるつもりはないが、ナノ粒子は、硬化されたナノコンポジットに改善された機械特性を付与する。本発明の開示に係る硬化されたナノコンポジットは、引張強度、靱性、ひずみエネルギー解放率、弾性率、破損ひずみ、または、減衰定数の少なくとも1種が、ナノ粒子なしで硬化された樹脂のそれに相当する特性よりも少なくとも50%高いことを特徴とする。これらの特性は、ナノ粒子なしで硬化された樹脂のそれに相当する特性よりも50%〜600%高い、または、よりも70%〜500%高い、または、80%〜200%高い可能性がある。減衰は、繰り返しの荷重で振動エネルギーが弱くなっていくことである。減衰定数は、できる限り速く振動を減衰させる材料または構造の能力の尺度である。材料の減衰定数が高ければ高いほど、所定の期間内でかけられた振動がより速く減衰して(一般的にはミリ秒で測定)、自由振動試験の場合の1秒未満で、振動レベルが少なくとも0.707×元の振幅よりも低くなる。
[0137]以下、これらに限定されないが、本発明の実施態様を説明する。これらの実施態様は、決して本発明の開示を制限しないものとする。
[0138]説明に役立つ実施態様−組成物の調節可能性
[0139]一形態において、本発明の開示は、マトリックスと、マトリックスと共に強化相として機能するその他の成分とを組み合わせることによってマトリックス相の機械特性を強化することを提供し、マトリックスに、より高い強度もしくは靱性のいずれか、またはその両方を付与するものである。
[0140]当然のことながら、本明細書において説明される実施態様は単に説明のためであり、特許請求された発明の範囲を限定するものではない。例えば、本明細書において様々な材料のなかでもエポキシ材料を特徴としているが、本発明は、そこに強化材料を分散されることができる実質的にその他あらゆる高分子系にも適用することができる。エポキシは、機械特性の観点で特に適切なマトリックス材料であると考えられる。
[0141]本明細書で述べられた強化材料の例としては、酸処理(または官能化)したグラフェンシート、グラフェンシート、酸処理(または官能化)した単層カーボンナノチューブ、例えばAT−SWCNT、SWCNT、ポリアミド酸、および、ジメチルアセトアミド(DMAまたはDMAC)が挙げられ、ただしこれらに限定されないこととし、個々に用いてもよいし、または、互いに組み合わせて用いてもよい。その他の強化材料も発明の組成物に包含させることも適切であり、ただし材料の一覧において全てを網羅したわけではない。材料の個々の使用に加えて、述べられた材料の組み合わせも適切である。
[0142]例えばエポキシなどの熱硬化性樹脂は、高い機械的性能が求められるコンポジット構造材料において有用である。樹脂の機械特性を改善する多くの様々な試みとしては、エポキシ中にゴム粒子を分散させることが挙げられるが、この方法は、ガラス転移温度が低くなるために高温性能が低下する可能性がある。
[0143]特に高分子コンポジットに含まれる構造的な強化材は、荷重をマトリックスから強化材料に移動させる能力に基づいている。しかしながら、構造的な用途でコンポジットにナノ材料/ナノチューブを使用することは、分散/凝集、配向および界面応力などの問題のためにうまくいっていない。
[0144]重要な3種の製造パラメーターとしては、(1)ナノ材料、(2)ナノ製造、および、(3)ナノプロセスが挙げられる。ここでこれらを詳細に試験し、以下に記載されたように行列で示すことができる。
[0145]一実施態様において、本願は、樹脂組成物の靱性、極限引張強度および破損ひずみを改善する技術を提供する。これは、樹脂(例えばエポキシ)を、強化相として機能するその他の成分と組み合わせることによって達成することができる。
[0146]高い靱性を有する材料、高い強度を有する材料、または、高い強度と靱性の両方を有する材料の生産において上記の目的を達成するために、すなわち、「最も高い強度を有する」から「最も高い靱性を有する」に至る様々なレベルで調節可能性を達成するために、以下の様々な系統のナノ材料:1−酸処理(または官能化)したグラフェンシート(Gr)、還元グラフェン、2−酸処理(または官能化)した単層カーボンナノチューブ(AT−SWCNT)、3−SWCNT、4−ポリアミド酸(P)、および、5−ジメチルアセトアミド(「DMA」または「DMAC」)を考察した。これらの材料を取り込んで得られた樹脂(例えばエポキシ)は、いくつかの実施態様において、調節可能なナノ樹脂と称する。
[0147]DMACおよびポリアミド酸の場合、これらの成分は未加工のエポキシ樹脂と組み合わせてもよく、これらは互いに十分に溶解する。官能化Gr、酸処理したSWCNTおよびSWCNTの場合、これらの成分は、未加工のエポキシ樹脂と組み合わされる。エチルアルコール(これは、混合後、混合中または混合後に蒸発させることができる)は、Grに加えてSWCNTを分散するための溶媒として有用である。DMACは、ポリアミド酸に適した溶媒である。ポリアミド酸を用いる場合、少量のフッ素系界面活性剤(これは、混合後、混合中に蒸発させることができる)が有用である。
[0148]重要な1つパラメーターは、様々なナノ製造技術の作用であり、このような技術は、例えばDMAC、ポリアミド酸、酸処理したSWCNTおよびGrなどの強化相の質量パーセンテージとそれらの配合を変化させること、および、凝集を防ぎうまく分散するように樹脂内に分散/混合することを含む。使用者にとって好ましい強化材料の含量は、様々なナノ材料および樹脂によって異なる。
[0149]その他の重要なパラメーターは、得られた生成物への硬化サイクル(ナノプロセスと称する)に関し、例えばナノ材料を取り入れることにより、樹脂の硬化反応速度とそれらの硬化サイクルを変更することである。ここで提案されている強化成分は、先進ナノ樹脂に、破壊靱性、極限引張強度および破損ひずみの実質的な強化を提供する。(1)ナノ材料、(2)ナノ製造、および、(3)ナノプロセスに応じて、これらの3つのパラメーターはそれぞれ、多数の下位パラメーター(本明細書の他の所で説明される)を有し、これらの下位パラメーターを試験して、これらの特性の支持可能性を達成するのに十分なパラメーターを使用者に与える数学的な行列を得てもよい。(上記で説明した様々な3種の主要なパラメーターからの)様々な下位パラメーターを組み合わせて所定の用途において具体的に要求される特性を付与することによって、その用途に合った(本明細書の他の所で説明した)ナノ樹脂の生産が可能である。
[0150]また本発明は、様々な特性を有する高性能ナノ樹脂の製造方法も提供する。このようなナノ樹脂は、高い強度の樹脂、高い靱性を有する樹脂、または、これら両方の特性を有する樹脂を含む。
[0151]いかなる特定の動作理論にとらわれるつもりはないが、我々はは、(1)ナノ材料;(2)ナノ製造;および、(3)ナノプロセスの3種のパラメーターは、実質的な強化と共にこのような驚くべき調節可能性を達成することに役立つと考える。一例として、高い極限引張強度と高い強度を有するナノ樹脂(いわゆる「最も高い強度を有する」ナノ樹脂)は、連続繊維ナノコンポジットに適している。最も高い強度を有するナノ樹脂が、製造されたナノコンポジットの機械特性に与える作用を、様々な種類のナノ樹脂を用いた一方向グラファイト繊維と平織されたEガラス繊維を利用して調査した。
[0152]当然のことながら、本明細書において、様々なサンプルを、便宜上「最も高い強度を有する」、「高い強度および高い靱性を有する」、「最も高い靱性を有する」等のように説明することとする。このような標識は、本発明の開示を何ら制限するものではないとする。例えば、本明細書において説明される研究においてグラフェン−エポキシ材料を「最も高い強度を有する」と標識したが、これは、その樹脂よりも高い強度を有する、他の本発明の開示に従って製造された材料は存在し得ない、または、このようなグラフェン−エポキシ樹脂を、機械的靱性を有するように配合または加工することができないということを具体的に述べたものではないこととする。このような標識は単に便宜上であって、組成物の機械特性を何ら限定するものではないと解釈することとする。
[0153]本ナノ樹脂の機械特性の特徴付けは、引張強度および破壊力学のための試験片を用いて評価する(単一端部切欠曲げ試験(single-edge-notch-bend; SENB)を使用)。極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数などの引張特性は、ASTMD638の方法に従って測定し、一方でひずみエネルギー解放率などの破壊特性は、ASTM標準規格D5045に従って計算する。ナノ樹脂材料の各系統ごとにいくつかの試料をインストロン(InstronTM)万能試験装置タイプ4200を用いて試験した。
[0154]機械特性の改善率を実証するために、未加工のエポキシ、加えて強化材料を取り入れた樹脂に試験を行った。これらの結果から、極限引張強度、破損ひずみおよびひずみエネルギー解放率(GIC)の有意な改善が実証される。
[0155]積層された構造複合材は、広い温度範囲にわたって機械的な性能を有することが適切である。しかしながら、ごく低いレベルのひずみでも壊れやすいエポキシに微小割れが形成されることから、現存の設計は制限を受けており、その結果としてコンポジット構造の質量増加が起こる。
[0156]これらの問題を解決するためには、破損ひずみの向上や破壊靱性の向上で示されるような延性の改善が特に望ましい。樹脂内にナノ材料を分散させると、得られた材料の価値と性能が強化される。ナノ材料を取り込むことによってエポキシ樹脂の硬化反応速度とそれらの硬化サイクルが変更されるが、これは、本明細書の他の所で説明した「ナノプロセス」パラメーターに関して論じられた通りである。
[0157]1.ナノ材料
[0158]以下の典型的なナノ材料を調査した;この一覧は非限定的であって、本発明の開示の範囲を制限しないこととする:
[0159]1.1.酸処理(または官能化)したグラフェン(Gr)、
[0160]1.2.酸処理(または官能化)した単層カーボンナノチューブ(AT−SWCNT)、
[0161]1.3.SWCNT、
[0162]1.4.ポリアミド酸(P)、
[0163]1.5.ジメチルアセトアミド(DMAC)、および、
[0164]1.6.官能化されていないグラフェン。
[0165]得られたエポキシ樹脂は調節可能なナノ樹脂と称され、ここで材料1.1は、顕著な強度の改善を示す。1.1から1.5にかけて、強化材料の役割が、高い強度を付与することから、高い靱性を付与することに移り変わる。DMAC溶液およびポリアミド酸の具体的なケースにおいて、これらの成分は、未加工のエポキシ樹脂と化学的に結合し、互いに十分に溶解する。Gr、酸処理したSWCNTおよびSWCNTのケースにおいて、これらの成分は、未加工のエポキシ樹脂と物理的に結合する。アルコールは、Gr、加えてSWCNTを分散させるのに適切な溶媒であり、またDMAC溶液もポリアミド酸のための溶媒として用いられる。SWCNTおよびグラフェンシートは、酸処理によって官能化してもよい。
[0166]ポリアミド酸材料は、カルボン酸とアミド官能基の両方を含む酸と定義される。このような材料の一つは、デュラミド(Duramide)100(富士フィルム(Fuji Film), www.fujifilm.com)である。芳香族ポリイミドは、開示された組成物および方法にとって適切なポリアミド酸である。いくつかの適切なポリアミド酸が、Polyimide Membranes:Applications, Fabrications, and Properties (Haruhiko Ohya, Vladislav V. Kudryavtsev, Svetlana I. Semenova)(1996, 講談社(Kodansha Ltd.))の表2.12に記載されている。典型的なポリアミド酸の合成法は米国特許第4,269,968号に記載されており、この合成法は、芳香族二無水物を芳香族ジアミンと反応させることを含む。このポリアミド酸は、二無水物をジアミンと反応させることによって合成される可能性があるために、必ずしも芳香族である必要はない。この二無水物は、適切には、1個またはそれより多くのカルボキシル基またはその他の官能基を含む。また米国特許第6,320,019号は、典型的なポリアミド酸の合成法も説明している。ポリアミド酸は、シグマ・アルドリッチ(www.sigmaaldrich.com)より入手可能である。
[0167]DMACはN,N−ジメチルアセトアミドとして知られている。DMACは、様々な方法で製造することもでき、例えば、酢酸ジメチルをジメチルアミンと反応させる方法がある。様々なDMAC合成法が、米国特許出願第11/720,791号(参照により本明細書に組み入れる)に説明されている。DMACは、比較的沸点が高いことを特徴とする極性溶媒である。その他の二置換ジアミド(例えば、式R(CO)HR’R”(式中、R、R’およびR”は、炭素または水素を含む)で示されるN,N−二置換ジアミド)も、DMACと共に適切な強化材と考えられる。このような材料としては、ジエチルアセトアミド、メチルエチルアセトアミド、N,N−ジメチルオクタンアミド、N,N−ジメチルデカンアミドが挙げられる。N,N−二置換アミドの一般式は、米国特許第4,115,204号(参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。またジメチルホルムアミドも、式H(CO)NRR’で示されるその他の化合物と共に使用することができる。DMACおよびその他の適切な強化材は、シグマ・アルドリッチ(www.sigmaaldrrich.com)より入手可能である。
[0168]2.ナノ製造
[0169]ナノ製造において、様々な考察が行われる。これらの考察のなかでも特に、以下に示すものが挙げられる:
[0170]ナノ材料の適切な質量パーセンテージの確認;この工程は、ナノ材料を樹脂中に良好に分散して(すなわち凝集を予防して)、さらに最大の特性の改善をもたらすために樹脂に含ませることができるナノ材料のパーセンテージを決定する。
[0171]樹脂内に混合しようとするナノ材料の製造:この工程は、製造した/官能化したナノ材料を樹脂と使用者にとって好ましい質量パーセンテージで混合する際に、改善をもたらすために、製造したナノ材料が樹脂中に分散されるように(すなわち凝集が低減されるか、または、凝集が起こらないように)、ナノ材料を製造する手順およびプロセスを提供する。
[0172]製造されたナノ材料を樹脂に混合する手順およびプロセス:この工程は、最大の特性の改善をもたらすために製造されたナノ材料が樹脂中に分散されるように(すなわち凝集が起らないように)、これらの製造された/官能化したナノ材料が樹脂と好ましい質量パーセンテージで混合されるように、製造された/官能化したナノ材料を樹脂に混合する手順およびプロセスを提供する。
[0173]以下の章で、上記で概説したナノ製造工程を詳述する:
[0174]2.1.1.ナノ材料の質量パーセンテージ
[0175]この工程は、ナノ材料のパーセンテージを決定する(本明細書の他の所で説明している)。
[0176]2.2.1.樹脂内に混合しようとするナノ材料の製造(例えばSWCNTおよびGrのナノ材料の超音波処理および分散)
[0177]この章では、超音波処理装置とホットプレート付きマグネチックスターラーとを利用して、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、酸処理したSWCNT、または、グラフェンなどのナノ材料をエポキシ系に分散し、典型的な混合技術を説明する(ただしこれらに限定されない)。いくつかの実施態様において、ナノ樹脂のナノ製造は、3つの主要な工程に従ってなされる。
[0178]第一の工程において、使用者は、所定含量になるようにナノ材料のパーセンテージを変化させる。第二の工程において、使用者は、必要なナノ材料を、例えばエチルアルコール溶液などの適切な溶媒に分散させる。その他の工程において、使用者は、ナノ材料を含むエチルアルコール溶液をエポキシ系のA部分に均質に分散させ、エチルアルコール溶液を蒸発させ、手動で混合するプロセス中に形成される微小気泡の量を最小化する。ナノ製造工程後、硬化サイクルを(ナノ樹脂には対流式オーブンなどの高温炉を用い、ナノコンポジットにはオートクレーブを用いて)変化させるが、これがいわゆる「ナノプロセス」を構成する。
[0179]エポキシ系にナノ材料を分散させることは、エポキシ材料の高粘性とナノ材料の凝集(それらの間にファンデルワールス力が働くため)に起因する問題がある。いくつかの実施態様において、必要量のナノ材料を分散させるのに適切な媒体として、エチルアルコール溶液(粘度がエポキシの粘度と比較してかなり低いため)が用いられる。
[0180]ナノ材料およびアルコール溶液は、適切には、超音波処理を用いて、水温を約30℃に設定してほぼ2日かけて混合される。ナノ材料とエチルアルコールとの比率は、混合物の粘度がエチルアルコールの粘度と類似した粘度に保たれるような範囲であってもよい。エチルアルコールによって、エチルアルコール溶液中およびエポキシ内におけるナノ材料の均質な分散が達成され、さらに、蒸発プロセスも短くなる。ナノ材料とエチルアルコールとの混合物を必要なの量のエポキシのA部分に添加し、続いて手動でゆっくり約10分間撹拌する。
[0181]まず10〜20回撹拌器を往復させる間に、ナノ材料はエポキシのA部分に移り、透明なエチルアルコール溶液が上層に残ったままになる(分離状態になる)。過量のエチルアルコールは、吸引装置を用いて除去してもよい。このようにすることによって、エチルアルコールの蒸発時間を短くすることができる。
[0182]ナノ材料のエポキシ内への均質な混合を達成するために、使用者は、混合用の皿を45度の角度に保ち、混合装置としてガラス棒を用いてそれを手動で一方向に回して、さらに逆方向に回して混合してもよい。形成される可能性がある気泡は、超音波処理で脱気することにより除去することができる。
[0183]2.3.1.製造されたナノ材料を樹脂に混合する手順およびプロセス(例えばSWCNTおよびGrのナノ材料の剪断混合)
[0184]ナノ材料の分散、気泡の除去および混合物からのエチルアルコール溶液の完全な蒸発を達成するために、ホットプレート付きマグネチックスターラー、および、冷たい空気のフロー(適切には、剪断流が渦を巻くように、容器の壁に沿って混合物の表面に対して45度の角度で)を使用してもよい。
[0185]ある実験において、混合物から揮発性のエチルアルコールを蒸発させるために、ホットプレート付きマグネチックスターラーを、約30℃で一定に加熱しながら250rpmに設定した。エチルアルコールを蒸発させながら加熱することにより、粘度を低く、かつ比較的一定に維持した。いくつかのケースにおいて、熱処理を行わなくても混合物の溶媒によって樹脂の特徴がもたらされる場合もある。
[0186]ホットプレート付きマグネチックスターラーを利用して加熱および混合することに加えて、冷たい空気のフローがアルコールの蒸発および気泡の除去を促進する。均一な混合物を得るために、冷たい空気を、混合物の表面に対して約45度の角度で、容器の壁に沿うように調節してもよい;ここで適切には、空気流によって形成された回転は、マグネチックスターラーによって生じた渦と同じ方向の回転を有する。この空気は、最上部の混合物層が隣の層にかぶさるように切り込み、マグネチックスターラーによって生じた渦の方向に混合物の上面が動くように調節することもできる。
[0187]続いてこの混合物に、適切には、B部分(硬化剤)をA部分:B部分の比率が約3:1になるように添加する。ナノ材料のA部分とB部分との混合は、手動でゆっくり撹拌することにより行ってもよい。さらなる系の脱気は、必要に応じて真空炉で達成してもよい。続いてこの混合物を(例えばアルミニウム製の)型に注入して、外気との反応を防ぐために密封容器中で保持してもよい。
[0188]2.2.2.および2.3.2.ナノ材料の調合および樹脂への混合(ポリアミド酸のナノ製造)
[0189]ポリアミド酸ナノ樹脂の製造は、数種の工程を含む場合がある。工程1は、ポリアミド酸溶液の調製である。工程2は、ポリアミド酸溶液をエポキシ系のB部分またはA部分と混合することである。工程3は、硬化サイクル(すなわち200℃で30分)である。
[0190]ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性は、その他の必須の溶媒の質量パーセンテージに関係なく、ポリアミド酸を、まずエポキシ系のA部分と混合するか、または、まずエポキシ系のB部分と混合するかによって影響を受ける可能性がある。ポリアミド酸溶液は、まずエポキシ系のB部分と混合し、次にA部分と混合してもよい。
[0191]一例として、これらに限定されないが、3質量%のポリアミド酸を、まず6質量%ジメチルアセトアミド(DMAC)溶液に添加し、続いてガラス棒を用いて手動で撹拌した。この溶液に0.7質量%のフッ素系界面活性剤を添加し、続いて室温でさらに5分間、手動で極めてゆっくり撹拌した。この溶液を約2分超音波処理した。この段階で、この溶液は、黄色がかった色と水に似た粘度を有していた。
[0192]ポリアミド酸−DMAC−フッ素系界面活性剤の混合物を、必要量のエポキシのB部分に室温で添加し、続いて手動で極めてゆっくり約30分撹拌した。ポリアミド酸溶液がエポキシのB部分に入り込んで白色の小さい粒子状になり、これがさらに小さい断片に壊れて均一に分散された。使用者は、皿を45度の角度に保ち、ガラス棒と皿の壁とで混合物を剪断してもよい。
[0193]フッ素系界面活性剤がある特定の質量パーセンテージだと、ポリアミド酸がB部分に入り込み、溶解しないと予想される。この混合物をエポキシのA部分に添加し、続いて手動で極めてゆっくり約10分撹拌する。必要に応じて約50℃で加熱して混合物の粘度を低くし、閉込められていた気泡を表面に浮き上がらせて破裂させてもよい。必要に応じてさらに脱気するために、真空オーブン中にミキサーを設置してもよい。続いてこの混合物をアルミニウム製の型に注入し、外気との直接の接触を防ぐために密封容器中で保持した。この混合物は、高温炉を用いてすぐに硬化が可能な状態であった。
[0194]2.2.3.および2.3.3.ナノ材料の調製および樹脂への混合(ジメチルアセトアミドのナノ製造)
[0195]ジメチルアセトアミド(DMAC)ナノ樹脂材料の製造は、数種の工程を含む場合があり、例えば(1)DMAC−エポキシ溶液を調製する工程、および、(2)硬化サイクルを用いる工程がある。異なる質量パーセンテージのDMACを必要量のエポキシのA部分と室温で混合し、続いて手動で極めてゆっくり約15分間撹拌した。DMAC溶液とエポキシのA部分とを組み合わせるとエポキシの粘度が低くなるため、剪断混合が常に必要である。
[0196]混合物の中に入れたガラス棒を、時計回りおよび反時計回りに50往復させることを約8セット行ってかき回した。この混合物を、超音波処理を用いて適切に脱気する。続いてこの均一な溶液に、エポキシのB部分を適切に添加して、エポキシと硬化剤との比率が3:1のエポキシ樹脂を作製した。A部分とB部分とを手動でゆっくり約10分間撹拌することにより混合し続ける。必要に応じて約50℃で加熱して混合物の粘度を低くし、閉込められていた気泡を表面に浮き上がらせて破裂させる。必要に応じてさらに脱気するために、真空オーブン中にミキサーを設置してもよい。
[0197]2.4.材料、寸法および配合
[0198]ベース材料として、3:1の比率でそれぞれ一緒に混合されたA部分の樹脂とB部分の硬化剤とを含む未加工のエポキシを用いた。このエポキシは、B部分として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、アルキルグリシジルエーテルおよび改変された脂肪族アミンをベースとする。
[0199]正方形のプレートから、縦と横が20×20cmの全体寸法、および、約0.3cmの平均厚さを有する試料を切り出した。先進ナノ樹脂材料の機械特性を特徴付けるために、2種の異なる機械的試験を行った。それは、(1)極限引張強度、破損ひずみ、および、ヤング率(弾性率)の決定および適合化のための引張試験、および、(2)ひずみエネルギー解放率(GIC)のための単一端部切欠曲げ試験(SENB)である。
[0200]これらの試験の性質のために少なくとも5種の試料を試験し、報告された結果は平均値に基づく。引張強度試験片を、イヌの骨形に、ASTM標準規格に従って(図1aを参照)、25.4mmの全体のゲージ長、8.0mmの平均幅、および、約3mmの平均厚さに作製した。強度、破損ひずみおよび弾性係数などの引張特性を、記録された応力−ひずみグラフから測定した。試料の厚さの辺に取り付けられた25.0mmのゲージ長を有する伸び計を用いてひずみを測定した。
[0201]インストロンTM万能試験装置を用い、ここでクロスヘッド速度を1.0mm/分の一定速度に設定した。破壊試験片をASTM標準規格に従って、56mmの基準の全長(L)、約12.8mmの幅(W)、約3.2mmの平均厚さ(B)、および、約4.0の幅と厚さとの比率(W/B)に作製した。フライス装置を用いて、長さ約6mmおよび幅約1.5mmの人工的な切込を試料幅全長の中央に入れた。その後、鋭いかみそり刃を挿入して前後に動かすことによって自然なクラックを起こした(図1bを参照)。
[0202]全てのSENB試料を、ASTM標準規格の手順に従って、SENB試験を有効に行うためにクラックの長さ「a」と試料の幅との比率「a/W」がおよそ0.5になるように作製した。ここでも同様に、必要な備品を備えたインストロン万能試験装置を用いてSENB試験を行った。SENB試験のために、インストロンのクロスヘッド速度を0.25mm/分の一定速度に設定した。ひずみエネルギー解放率について報告された値(GIC)は、ASTMの手法に従っており、少なくとも5つの試験片の平均に基づく。各SENB試験ごとに、適用された荷重−荷重点変位を記録した。有効と考えられる結果について、方程式(1)で示される大きさの基準の関係を満たしていた。人工の鋭いクラックの存在に起因する破損を起こすのに要する全エネルギーに付随するひずみエネルギー解放率を計算した(図1)。人工的な鋭いクラックの存在下における破損に対する材料の耐性の尺度として破壊靱性を計算した。
上記式中、Kは、条件付または試験KIC値を示し、σγは、試験の温度と荷重との比率に関する材料の降伏強度である。所定の全長と幅との比率「L/W」が4のSENB試料について、方程式(2)で説明されているように、KはKICと同等であり、MPa−m1/2という単位で示される。
上記式中、Pは、荷重−変位曲線から測定された、適用された最大荷重である(単位はKN)。BおよびWは、それぞれ試料の厚さおよび幅(cm)である。関数f(x)は、以下の方程式(3)で示されるように定義され、ここでxは、試料の幅に対する測定されたクラックの長さの比率である。
[0203]単位KJ/mで示される限界ひずみエネルギー解放率(GIC)の計算は、方程式(4)で示されるように、Uで示される補正したひずみエネルギーに基づく(ASTM標準規格D5045を参照)。
上記式中、Uは、補正したひずみエネルギーを示し、これは、SENBサンプルおよびその補正試験において記録された荷重−変位曲線の下の面積から計算されるエネルギー差である。ψは、エネルギー補正係数と定義される。
[0204]3.ナノプロセス(硬化サイクルおよび加工装置)
[0205]ナノプロセスは、例えば以下に示す形態を含む:
[0206]3.1)硬化サイクル:この工程は、特性の改善がもたらされるように硬化サイクルを調査する工程である。
[0207]3.2)加工装置:この工程は、改善された材料の生産に有用な器具を決定する工程である。
[0208]ナノ樹脂と称されるこれらの新世代エポキシ樹脂の機械特性に対する様々な硬化サイクルの作用を試験するために、3種の異なる硬化サイクルを考察した。ナノ材料を包含させること、および、ナノ製造中の工程によって、先進ナノ樹脂の特徴が変化する可能性があり、そのために硬化サイクルおよび加工手順が変更される可能性もある。従って、高性能ナノ樹脂を製造するために、同様に硬化プロセス(すなわちナノプロセス)を調節してもよい。
3.1)硬化サイクル
[0209]ナノ樹脂の硬化サイクルは、適切には、外部の圧力がない状態での特定の温度−時間曲線に従って行われる。第一の硬化サイクルは、製造元が提示する温度−時間曲線に従って行われた;簡略化するために、このサイクルは、比較的遅い硬化サイクルであることから、「F」という文字で示される。第二の硬化サイクルは、代替サイクルであり、「V」という文字示され、比較的中程度のペースの硬化サイクルである。第三の硬化サイクルは、ポリアミド酸の硬化温度に相当し、「A」で示され、比較的速い硬化サイクルである。「F」型(すなわち樹脂製造元が推奨する)硬化サイクルを用いて、先進ナノ樹脂との比較のために、ベースのエポキシ材料として用いられた未加工のエポキシ樹脂を硬化させた:
「F」は、遅い硬化サイクルであり、製造元が提示するサイクルである:
室温で24時間、
35℃で4時間、
49℃で2時間、
57℃で4時間、
66℃で2時間、加熱速度は約1℃/分。
「V」は、中程度の硬化サイクルであり、以下の通りに使用される:
室温で5時間、
120℃で1時間、加熱速度は1℃/分。
「A」は、速い硬化サイクルであり、以下の通りに使用される:
200℃で30分間、加熱速度は1℃/分。
[0210]3.2)加工装置:
[0211]本明細書において提唱されるナノ樹脂材料の機械特性に対する高温炉の作用を試験するために、加工装置は、対流オーブンを含み、さらに、選択された試料に対しては、オートクレーブを含む。確認の目的で、試料名の説明に最後の文字「A」がある場合は、オートクレーブプロセスを示し、一方で最後の文字「C」がある場合は、対流式オーブンを示す。
[0212]酸処理したグラフェンシート含有ナノ樹脂
[0213]機械特性を改善するために、未加工のエポキシと共に酸処理したグラフェンシート(Gr)を使用する。いかなる特定の動作理論にとらわれるつもりはないが、強化成分としてのグラフェンは、マトリックスと強化成分との間の荷重伝達機構を向上させる可能性がある。しかしながら、Gr−エポキシ(すなわちナノ樹脂)材料の機械特性は、グラフェンシート/プレートの不適切な分散および/または不規則な配置のために著しく低下する可能性がある。
[0214]文献で報告されている混合技術のほとんどがうまくいっていない。一般的にグラフェンシートおよびプレートは集合体およびクラスターの形態であり、従って、エポキシが高粘性のために、このような材料をエポキシ内に均一に分散することが主な課題である。しかしながら、ここで、新規に開発され説明された混合技術を提供する。
[0215]この章では、グラフェンシート/プレートの様々な質量パーセンテージの作用、さらには、2種の異なる硬化サイクル、すなわち、文字「F」で示される比較的遅いサイクルと文字「V」で示される中程度のペースのサイクルの作用について集中的に論じる。
[0216]これらの目的を達成するために、0.004〜0.008%の範囲で0.002の増加率でグラフェンを包含し、「F」硬化サイクルを用いた試料と、さらに、0.002の増加率で0.006〜0.1%の範囲でグラフェンを包含し、「V」硬化サイクルを用いた試料の2グループを製造した。図2は、様々な質量分率を有し、様々な硬化サイクルで硬化された2種の典型的なグラフェンベースのナノ樹脂プレートを説明する。これらのプレートの目視検査から、気泡がなく、極めて滑らかな表面であることが示された(図2を参照)。
[0217]試料名の説明:第一のサンプルのコード文字「E」は、エポキシ樹脂を意味し、次の文字(または複数の文字)は用いられるナノ材料を識別するものであり、この場合、例えばグラフェンシート(すなわちGr)である。最初に示される数字は、製造されたプレートの数を意味し、残りの数字は、用いられるナノ材料の質量パーセンテージを示す(例えば006は、ナノ樹脂の質量に基づき0.006%のGrを包含することと同じ意味である)。最後のコード文字は、例えば「F」または「V」などの用いられた硬化サイクルのタイプを意味する。対流式オーブンは、どちらの硬化サイクルにも使用された。
[0218]1.1.グラフェンシートベースのナノ樹脂の実験結果
[0219]1.1.1.遅い硬化サイクル(「F」硬化サイクル)
[0220]未加工のエポキシ(FGH−3Sと称する)およびグラフェンシートベースのナノ樹脂の引張試験に基づく実験結果(すなわち、EGR1006−Fに基づく典型的な応力−ひずみプロット)において、以下のようにして「F」型硬化サイクルが用いられた。
[0221]上述したように、「F」型硬化サイクルは、製造元が提示する硬化サイクルである。未加工のエポキシ試料を細かく試験したところ、それらは脆性破壊を起こし、破断面は滑らかで荷重方向に垂直であったことが明らかになった(図3a)。約0.004〜0.008%のグラフェンシートを包含する試料は、類似の脆性破壊を示したが、破断面は荒れており、極限引張強度は未加工のエポキシと比較してかなり高かった(図3b)。
[0222]図4aおよび4bは、グラフェンシートの質量パーセンテージに対するグラフェンナノ樹脂の極限引張強度および破損ひずみをそれぞれ未加工のエポキシと比較する図である。これらの結果から、最大の極限強度および破損ひずみは0.006質量%のグラフェンシート濃度で起こり、その後、強度および破損ひずみが減少することが実証される(しかしながら0.01%もの濃度で起こっても、改善を観察することができる)。強度の強化は約43%であり、破損ひずみの強化は約64%である。弾性係数は約7%減少し、ほぼ一定を保った。
[0223]破壊靱性またはクラック発生と拡大に対する材料の耐性は、荷重−荷重点変位のプロットを用いたエネルギー計算を使用する。図5aは、SENB試験から得られた未加工のエポキシの典型的な荷重−荷重点変位を示し、図5bは、0.006%のグラフェンを包含するグラフェンナノ樹脂の類似のプロットを示す。
[0224]行われた試験に関して、クロスヘッドの移動速度を0.25mm/分に維持した。図5cに破壊靱性の試験結果の比較を示すが、ここでGICは、グラフェンシート包含量を示す様々な質量パーセンテージに対して表示される。これらのプロットは、GICの最大の改善が0.004%のグラフェンで得られ、0.006%でわずかに減少していることを示す。0.004%グラフェンにおけるGICの強化は約7%であり、0.006%グラフェンにおける強化は約5%である。前述したように、0.006%グラフェンシート包含で極限引張強度は実質的に改善されたが、破壊靱性はわずかに増加し、ほとんど未加工のエポキシの破壊靱性に近い破壊靱性を示した。
[0225]表1は、未加工のエポキシと「F」型硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂との、極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性の比較を示す。結果から、極限引張強度は約43%増加し、破損ひずみは約64%改善され、弾性係数はわずかに減少し(7%)、および、破壊靱性はわずかに改善された(すなわち7%)ことが示される。強化のパーセンテージは、括弧内に示した。
[0226]1.1.2.中程度の硬化サイクル(「V」硬化サイクル)
[0227]以下、「V」型硬化サイクルを用いたグラフェンを含むエポキシのナノ樹脂についての引張試験の実験結果(すなわち典型的な応力−ひずみプロット、EGR1006−V)を考察する。前述したように、「V」型硬化サイクルは中程度の硬化サイクルである。前の章で説明したように、未加工のエポキシ試料は脆性破壊を起こしたが、「V」型硬化サイクルを用いて硬化した0.006%〜0.1%のグラフェンシートを包含するグラフェンナノ樹脂は、破損を起こす前にどちらかといえば延性破壊を示した(図6a)。グラフェンナノ樹脂の破断面の目視検査から、表面が荒れていることがわかった。遅い硬化サイクルが中程度の硬化サイクルに変わると、応力−ひずみ曲線の特徴も変化する。
[0228]硬化サイクルの温度を高め、硬化時間を短くすることによって、グラフェンナノ樹脂はより強くなる(すなわち極限強度、破損ひずみおよび破壊靱性がより高くなる)(図3bおよび6aを比較)。図6b、6cおよび6dは、グラフェンシートの質量パーセンテージに対するグラフェンナノ樹脂の極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数の、未加工のエポキシと比較したバリエーションを示す。
[0229]これらの結果から、高い引張強度、加えて破損ひずみは0.006質量%のグラフェン濃度で発生することが実証される。この荷重の後に、極限引張強度はわずかに減少したが、ほぼ一定を保ち、一方で破損ひずみは減少し、0.02%で大きく低下した(図6c)。弾性係数はわずかに減少した(図6d)。0.006%でゆっくり(すなわち「F」)から中程度(すなわち「V」)に硬化サイクルを変化させると、その時点で、強度の強化は約76%であり、破損ひずみの強化は約228%である。弾性係数は全体的に約10%〜15%減少したが、グラフェンの質量パーセンテージが増加すると一定を保った(図6d)。
[0230]図7に、「V」型硬化サイクルの場合の破壊靱性の試験結果を示すが、ここでGICは、グラフェンの様々な質量パーセンテージに対してプロットされる。これらのプロットから、グラフェンが0.008〜0.02%の範囲において最大のGICが達成され、続いてわずかに減少したことが示されるが、グラフェン含量が0.1%までなお改善を示したが、0.008%〜0.02%のレベルには決して達しなかった。「F」(図5)および「V」(図7)に関連するGICの比較から、硬化温度が増加につれてGICがほぼ二倍になり、それに対応する硬化時間は減少することが実証される(図5における約600J/m、および、図7における約1200J/mを参照)。0.02%のグラフェンにおけるGICの強化は約125%であり、グラフェン0.006%における強化は約79%である。
[0231]表2は、含量0.006%〜0.1の範囲における中程度の硬化サイクル(すなわち「V」)を用いた未加工のエポキシとグラフェンナノ樹脂との平均極限引張強度、平均破損ひずみ、平均弾性係数および平均破壊靱性のデータを比較する表である。この結果から、平均極限引張強度が70%増加し、平均破損ひずみが189%改善され、平均弾性係数が12%減少し、平均破壊靱性が88%増加したことが示された。強化のパーセンテージは括弧内に示した。
[0232]1.1.3.グラフェン包含を0.006%に固定した場合の硬化サイクル「V」および「F」の作用
[0233]グラフェンシートなどのナノ材料を包含させることや本明細書において提唱されるナノ製造技術によって先進ナノ樹脂の特徴はある程度変更され、それにより新しい硬化サイクル(すなわちナノプロセス)も同様に確認できる。それゆえに、高機能ナノ樹脂を得るために、対応する硬化サイクルを調節してもよい。ナノ樹脂の機械特性に対する硬化サイクルの作用を試験するために、2種の異なる硬化サイクルを、グラフェンを0.006%に固定して研究した。
[0234]製造元が提示する温度−時間曲線に従った第一の硬化サイクルは、第3章で説明したように文字「F」で示される(すなわち遅い硬化サイクル)。第二の硬化サイクルは、本発明に関して開発された代替サイクルであり、第3章で説明したように文字「V」で示される(すなわち中程度の硬化サイクル)。「V」硬化サイクルは、「F」硬化サイクルと比較してより高温およびより短い時間をベースとする。
[0235]図8aおよび8bは、グラフェン含量を0.006%に固定し、それぞれ「F」および「V」硬化サイクルを用いたグラフェンナノ樹脂の典型的な引張応力−ひずみ曲線を示す。これらのプロットは、この研究において試験された5つのレプリカ試料のグループからランダムに選択された;表3に報告された結果は、これら5つのレプリカサンプルの平均である。明らかに「F」硬化サイクルで硬化されたグラフェンナノ樹脂試料はより非線形的な挙動を示し、より高い極限強度および破損ひずみを示した(図8aおよび8bを参照)。
[0236]図9a、9bおよび9cは、異なる硬化サイクルによる極限強度、破損ひずみおよび弾性係数の棒グラフの比較を示す。これらの結果から、代替の「V」硬化サイクルを使用した場合、極限強度は約20%改善され、破損ひずみは約100%増加し、弾性係数は実質的に同一なままであることが示される。
[0237]図10は、グラフェンシートを0.006%包含する場合の「F」硬化サイクルと「V」硬化サイクルとの破壊靱性の試験結果の比較を示す。このプロットから、「V」硬化サイクルから得られたGICは、「F」硬化サイクルから得られたGICと比較して約71%強化されたことが示される。
[0238]表3は、グラフェン含量を0.006%に固定して、2種の異なる「F」および「V」硬化サイクルを用いて単に硬化した2つの同一なグラフェンナノ樹脂の極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性の比較を示す。未加工のエポキシの特性に対する強化のパーセンテージは括弧内に示す。
[0239]1.2.最も高い強度を有するナノ樹脂の減衰
[0240]最も高い強度を有するナノ樹脂の減衰特性(すなわち振動音響制御)が未加工の樹脂と比較して約250%改善された。
[0241]II.より高い強度とより高い靱性を有するナノ樹脂:酸処理したSWCNTナノ樹脂
[0242]II.1.酸処理手順
[0243]硝酸を用いた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の酸処理を以下のようにして行った:適切なサイズのビーカーを用いて所定量のSWCNTを硝酸に3:1の比率で添加し、水で希釈した。ビーカーをシリコーンオイルで充填された皿で覆って、ホットプレート付きマグネチックスターを用いて一定の温度を保った。
[0244]ホットプレート温度を約115℃に設定し、マグネチックスターラーを約1000rpmに設定した。
[0245]24時間混合した後、使用者は、この混合物をより大きいビーカーに移して追加の水で満たした。使用者はこの混合物を約5分間超音波処理し、ビーカーの上部を覆い、酸処理したSWCNTが底部に全て沈殿するまでフードの下でそのまま放置した(例えば一晩)。使用者は、この混合物を、0.5マイクロメーターの孔サイズを有するメンブレンフィルターを用いてろ過してもよい。適切な約7のpHを達成するために、この混合物を蒸留水で数回洗浄してもよい。続いてろ過した酸処理(すなわち官能化)SWCNTをそれより小さい他のビーカーに移し、ホットプレートを用いて余分な水分を蒸発させる。
[0246]II.2.硬化サイクル(すなわちナノプロセス)
[0247]この章では、0.02%および0.05%の2種の異なる含量の質量パーセンテージを有する酸処理したSWCNTナノ樹脂の機械特性に対する3種の異なる硬化サイクル(すなわちF、VおよびA)の作用について集中的に論じる。前述したように、「F」硬化サイクルは遅い硬化を示し、「V」は中程度の硬化を示し、および、「A」は速い硬化を示す。注目すべきことに、硬化温度が上昇するにつれて、硬化時間は遅い硬化サイクルから速い硬化サイクルに短くなる。
[0248]第一の文字「AT」は、「酸処理した」SWCNTを示し、これらの文字の後に記載される第一の数字は、製造されたプレートの数を示し、続いて用いられたCNTのパーセンテージを示す。最後の2文字について、そのうち最初の文字は硬化サイクルのタイプ(例えば「F」または「V」など)を示し、2番炉目の文字は炉(または加工装置)のタイプを意味する。例えば、図11のAT102−FCを参照。ここで説明した実施態様について、対流式オーブンが用いられた。
[0249]II.3.実験結果
[0250]図11a、11bおよび11cは、AT−SWCNTの含量(パーセンテージ)を0.02%に固定して様々な硬化サイクルを用いた未加工のエポキシと酸処理したSWCNTナノ樹脂とを、極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数に関して比較する図である。これらの結果から、遅い硬化サイクルを用いることにより最大の極限強度が達成されたが、中程度の硬化サイクルを用いることにより破損ひずみが最大値に達したことが示される(図11aおよび11b)。破損ひずみは、遅い硬化サイクルなのかまたは中程度の硬化サイクルなのかに関わらずほぼ一定を保った。弾性係数は、遅い硬化サイクルから速い硬化サイクルにかけて硬化温度が増加し硬化時間が減少するにつれ減少した(図11c)。
[0251]図12は、様々な硬化サイクルにおけるひずみエネルギー解放率(すなわちGIC)の、未加工のエポキシと酸処理したSWCNTナノ樹脂との比較を示す。この結果から、硬化温度が増加して硬化時間が減少するのと同時にGICは増加することが示される。最大のGICは、「A」型硬化サイクルを用いた場合に起こった(図12)。
[0252]表4に、含量を0.02%に固定し、上述の3種の異なる硬化サイクルを用いて酸処理したSWCNTナノ樹脂における極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性のの比較を示す。一般的に、硬化温度を増加させて硬化サイクルを短くすると極限引張強度は減少する。硬化温度を増加させて硬化サイクルを短くすると、破壊靱性が増加した(表4を参照)。強化のパーセンテージは、括弧内に示した。
[0253]図13a、13bおよび13cは、含量(パーセンテージ)を0.05%に固定して上述の硬化サイクルを用いた未加工のエポキシと酸処理したSWCNTナノ樹脂との、極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数に関する棒グラフの比較を示す。遅い硬化サイクルを用いることによって高い極限強度が達成され、中程度の硬化サイクルを用いることによって破損ひずみが高い値に達した(図13aおよび13b)。破損ひずみは、遅い硬化サイクルなのかまたは中程度の硬化サイクルなのかに関わらずほぼ一定を保った。3種の異なる硬化サイクルを用い、含量が0.02%および0.05%のいずれの場合でも場合の極限強度および破損ひずみに関する結果はほぼ同じである。
[0254]図14は、異なる硬化サイクルを用いた場合の、未加工のエポキシと酸処理したSWCNTナノ樹脂との、ひずみエネルギー解放率(すなわちGIC)の比較を示す。ここでも同様に、破壊靱性はランダムではあるが増加し、一方で最大のGICは、含量0.02%のケースと同様に「A」型硬化サイクルを用いた場合に達成された(図12)。
[0255]表5は、含量を0.05%に固定して、3種の異なる硬化サイクルを用いた酸処理SWCNTナノ樹脂における極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性の比較を示す。
[0256]ここでも同様に、この結果から機械特性が代替硬化サイクルの影響を受けることが示される。この結果は、酸処理して含量を0.02%から0.05%に増加した場合とほぼ同じである。強化のパーセンテージは、括弧内に示した。酸処理したSWCNTナノ樹脂は、グラフェンナノ樹脂の次に高い極限引張強度と、グラフェンナノ樹脂と比べて高い破壊靱性を有していた。
[0257]II.4.より高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂の減衰
[0258]ナノ樹脂の減衰特性(すなわち振動音響制御)が未加工の樹脂と比較して約300%改善されることが確認された。
[0259]III.高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂:SWCNTナノ樹脂
[0260]この章では、本明細書において提唱される遅いサイクルから速いサイクルに至る3種の硬化サイクルの、含量0.02%のSWCNTナノ樹脂の機械特性に対する作用について集中的に論じる。
[0261]試料名の説明:文字「SW」はSWCNTと同じ意味であり、この文字の後の最初の数字は、製造されたプレートの数、続いて用いられたSWCNTのパーセンテージを示す。最後の2文字について、最初の文字は硬化サイクルのタイプ(例えば「F」または「V」など)を示し、2番目の文字は炉(すなわちナノプロセス装置)のタイプを意味する。例えば図15のSW102−FCを参照。ここで記載された全てのケースについて、対流式オーブンが用いられた。
[0262]III.1.実験結果
[0263]図15a、15bおよび15cは、含量(パーセンテージ)を0.02%に固定したままで3種の硬化サイクルを用いた場合の未加工のエポキシとSWCNTナノ樹脂とを、極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数に関して比較する図である。
[0264]これらの結果から、極限強度はわずかに増加したが、硬化サイクルに関係なくほぼ同一なままであったことが示される(図15a)。破損ひずみは、硬化温度が増加して硬化時間が短くなるにつれて実質的に一定の増加を示した(図15b)。弾性係数は、遅い硬化サイクルから速い硬化サイクルにかけてわずかに減少した(図15c)。
[0265]図16は、異なる硬化サイクルの未加工のエポキシとSWCNTナノ樹脂との、ひずみエネルギー解放率(すなわちGIC)に関する比較を示す。この結果から、GICはランダムに増加し、中程度の硬化サイクルを用いた場合に最大値に達したことが示される。
[0266]表6は、含量を0.02%に固定して3種の全ての異なる硬化サイクルを用いたSWCNTナノ樹脂を、極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性に関して比較した表である。これらのデータからも、機械特性は、代替硬化サイクルの影響を受ける可能性があることが実証される。強化のパーセンテージは、括弧内に示した。SWCNTナノ樹脂は、酸処理したSWCNTナノ樹脂よりも低い極限引張強度および破壊靱性を有するために、高い強度および高い靱性を有すると称される。
[0267]III.2.高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂の減衰
[0268]高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂の減衰の特性(すなわち振動音響制御)は未加工の樹脂と比較して約300%改善されたことが確認された。
[0269]IV.より高い靱性と高い強度を有するナノ樹脂:ポリアミド酸ナノ樹脂
[0270]ポリアミド酸は、いわゆる未加工のエポキシと組み合わせることができるその他の典型的な強化成分である。いかなる一つの理論にとらわれるつもりはないが、硬化プロセス後にポリアミド酸分子が顕微鏡レベルで一体化すると、ポリアミド酸分子は、未加工のエポキシ内で硬質の棒のような挙動を示すと考えられる。
[0271]ポリアミド酸は、エポキシのA部分にもB部分にも溶解しない。従って、必要な質量パーセンテージのポリアミド酸を溶解させるための溶媒としてジメチルアセトアミド溶液(すなわちDMAC)を用い、液体の表面張力を低くするための界面活性剤としてフッ素系界面活性剤溶液を用いた。
[0272]ポリアミド酸は黄色がかった色をしており、室温で未加工のエポキシの粘度と類似の粘度を有し、典型的には冷凍庫中で保存される。DMAC溶液およびフッ素系界面活性剤はいずれも無色であり、水に類似した低い粘度を有する。ポリアミド酸の場合の硬化サイクルは、200℃で30分間硬化させることである。ポリアミド酸溶液−エポキシの混合物は、ポリアミド酸ナノ樹脂と称される。
[0273]図17は、上記のナノ製造の章で示された混合技術を用いて200℃で30分間硬化されたポリアミド酸ナノ樹脂プレートを示す。製造された全てのプレートの目視検査から、適切な混合技術のために、気泡が存在した形跡はなく、極めて滑らかな表面であることが示された。プレートの黄色がかった色は、この混合物中に含まれるポリアミド酸によくみられるものである。
[0274]まずポリアミド酸溶液をエポキシのB部分と混合、得られた溶液をA部分に混合した。ナノ樹脂プレートを硬化させるのに要する炉として対流式オーブンを用いた。
[0275]試料名の説明:文字「P」はポリアミド酸を意味し、第二の文字「D」はジメチルアセトアミド溶媒を意味し、第三の文字「S」はフッ素系界面活性剤を意味する。最後の文字は、用いられる高温炉のタイプ(対流式オーブンまたはオートクレーブのいずれか)を示す。これらの文字の後の数字は、対応するそれぞれの項目の質量パーセンテージを示す。例えばP3D6S7−Cは、3質量%のポリアミド酸、6質量%のDMAC溶媒を用いていることを意味し、「7」は、0.7質量%の界面活性剤を示し、最後の文字「C」は対流式オーブンを意味し、または、文字「A」であればオートクレーブを意味する。
[0276]IV.1.実験結果
[0277]図18a、18b、18cおよび18dは、それぞれ極限強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性に関して、未加工のエポキシとポリアミド酸ナノ樹脂とを比較したフッ素系界面活性剤の作用を示す図である。これらの結果から、極限強度、破損ひずみおよび破壊靱性は、界面活性剤の使用の影響を受け、それにより強化されることが示される。弾性係数はわずかに減少し、界面活性剤に関わらず一定を保った。
[0278]表7は、0.7質量%の界面活性剤を利用したポリアミド酸ナノ樹脂の場合の機械特性の強化を示す。極限引張強度は約30%、破損ひずみは約26%、破壊靱性は約428%の有意な改善を示したが、このような改善は、ポリアミド酸ナノ樹脂中に、混合および溶液の均一性を強化する(および分離を防ぐ)界面活性剤が存在することによるものである。強化のパーセンテージは括弧内に示される。
[0279]この章では、ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性および強化に対するジメチルアセトアミド溶媒(すなわちDMAC)の作用について集中的に論じる。DMAC溶媒の2種の異なる質量パーセンテージ8%および10%を選択し、同時に必要な界面活性剤の質量パーセンテージを0.7%で一定に維持した。
[0280]図19a、19b、19cおよび19dは、それぞれ極限強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性に関して未加工のエポキシとポリアミド酸ナノ樹脂とを比較して、DMAC溶媒の作用を実証する図である。これらの結果から、極限強度が、溶媒8質量%においてわずかに増加し、溶媒10質量%において減少したことが示される。
[0281]破損ひずみは増加し、溶媒のパーセンテージが異なっても関係なく一定を保った。弾性係数は、溶媒の量を増加させることによっていくらか減少した。未加工のエポキシにより高い靱性を付与することに関して、DMAC溶媒は破壊靱性に作用を有していた。
[0282]表8は、DMAC溶媒の異なる質量パーセンテージ(すなわち8%および10%)を利用し、同時に界面活性剤を0.7質量%に固定することによる、ポリアミド酸ナノ樹脂の機械特性の強化を示す。このようなポリアミド酸ナノ樹脂の組み合わせにおいて、8%に設定されたDMAC溶媒を包含することにより、極限引張強度は約15%改善され、破損ひずみは95%改善され、破壊靱性は437%改善され、弾性係数は約32%減少した。強化のパーセンテージは、括弧内に示した。このようなポリアミド酸ナノ樹脂は、酸処理したSWCNTおよびSWCNTナノ樹脂よりも高い破壊靱性を有するが極限引張強度はそれよりもかなり低いことから、このポリアミド酸ナノ樹脂を、より高い靱性と高い強度を有する、と名付けた。
[0283]II.2.より高い靱性と高い強度を有するナノ樹脂の減衰
[0284]より高い靱性と高い強度を有するナノ樹脂の減衰の特性(すなわち振動音響制御)は未加工の樹脂と比較して約350%改善されることが確認された。
[0285]V.最も高い靱性を有するナノ樹脂:DMACナノ樹脂
[0286]V.I.ジメチルアセトアミド質量分率の作用
ポリアミド酸とエポキシのA部分またはB部分とを直接混合してもよく、ここで、溶媒として問題のジメチルアセトアミド溶液(すなわちDMAC)が用いられ、フッ素系界面活性剤も、前の章で示したように液体の表面張力を減少させるのに用いることができる。DMAC溶媒は無色であり、水と類似した粘性が低い液体である。このDMAC溶媒とエポキシ樹脂との混合物は、DMACナノ樹脂と称される。
この目的を達成するために、3種の異なる質量パーセンテージ、すなわち4%、8%および10質量%のDMACを含むDMACナノ樹脂を考察した。この一連のDMACナノ樹脂の硬化温度は、「V」と称される中程度の硬化サイクルである。高温炉として対流式オーブンが利用される。
[0287]試料名の説明:第一のコード文字「E」はエポキシを意味し、続いて文字「D」はジメチルアセトアミド溶液を意味する。文字「D」の後の最初の数字は製造されたプレートの数を示し、2番目の数字(または複数の数字)は、DMAC溶媒の必要な質量パーセンテージを示す。最後の2文字は、それぞれ、用いられた硬化サイクルのタイプ(すなわち中程度の硬化サイクルの場合は「V」)を意味し、続いて、対流式オーブン(すなわち「C」)などの利用された高温炉のタイプを示す。例えばED14−VCは、「V」型硬化サイクルおよび対流式オーブン、エポキシ中に4質量%のDMACが用いられていることを意味する。
[0288]V.2.結果
[0289]図20は、中程度の硬化サイクルを用い対流式オーブンを利用した、10%DMAC溶液を含むDMACナノ樹脂の典型的な荷重−荷重点変位を示す。荷重−荷重点変位曲線は、破壊靱性(すなわちGIC)を計算するために必要である。全ての試験について、クロスヘッドの移動速度を0.25mm/分に維持した。図21dは、未加工のエポキシとDMACナノ樹脂とのDMACの質量分率に対する破壊靱性の比較を示す図である。GIC値は、DMACが増加するにつれてほぼ直線的に増加した。
[0290]図21a、21bおよび21cは、DMACの質量分率に対する極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数の比較を示す図である。これらの結果から、最大の極限強度および最大の破損ひずみは、DMACが4質量%のときに達成されたことが示される。4%より多くのDMAC含量の場合、極限強度は未加工のエポキシの値まで減少したが、破損ひずみはほぼ二倍になった。DMACのパーセンテージが増加すると弾性係数は実質的に減少した。
[0291]いかなる一つの理論にとらわれるつもりはないが、DMACナノ樹脂の機械特性は、DMACの異なる質量分率によって影響を受ける。表9は、DMACの異なる質量分率の関数として極限強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性で示される機械特性の変化を示す。強化または劣化のパーセンテージは以下のように括弧内に示した。
[0292]V3.DMACナノ樹脂の再現性
[0293]これらの結果から、10%のDMACの質量分率を選択した場合、ナノ樹脂の破壊靱性が約500%改善されたが、極限引張強度は、未加工の樹脂と比較して変化しなかったことが示される(表9を参照)。また、破損ひずみが、10%のDMAC質量分率において約53%改善したことも示され、一方で弾性係数は38%減少した。
[0294]結果(特に破壊靱性)の再現性を調査するために、ED110−VCに類似した2種のその他のDMACナノ樹脂プレートを製造した。図22a、22b、22cおよび22dは、それぞれ極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性に関する、同じ混合技術を用いて異なる時間で製造された3種の同一なDMACナノ樹脂の比較を示す。
[0295]破壊靱性の値は一定を保ち、約600%の改善を示した(図22d)。しかしながら、極限強度は未加工のエポキシの範囲に留まった(図22a)。破損ひずみは有意に改善され、第二のプレートは約267%、第三のプレートは580%改善した。第三のプレートにおいて弾性係数は約100%で減少した。脆性のエポキシの靱性を高くすることは、DMACナノ樹脂を用いて、さらに最大の破壊靱性を示した10%質量分率で実現することができる。
[0296]表10は、DMAC質量分率が10%の3種の異なるDMACナノ樹脂の極限強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性によって機械特性の強化を示す。強化または劣化のパーセンテージは括弧内に示される。DMACナノ樹脂を、最大の破壊靱性を有することから、最も高い靱性を有すると名付けた。
[0297]V.4.最も高い靱性を有するナノ樹脂の減衰
最も高い靱性を有するナノ樹脂の減衰特性(すなわち振動音響制御)は、未加工の樹脂と比較して約400%改善されることが確認された。
[0298]調節可能なナノ樹脂技術は、脆性のマトリックスを高い靱性を有するマトリックスに変換する。
[0299]全ての様々な調節可能なナノ樹脂は、例えば脆性の未加工のエポキシを高い靱性を有するエポキシに変化させ、ここで靱性の程度は様々であるが、当然ながら増加しており、最も高い強度を有する状態から最も高い靱性を有する状態になる。例えば図23は、脆性の未加工のエポキシから高い靱性を有するエポキシまたは最も高い強度を有するエポキシへの変化を示す(SENB試験から得たSEM)。未加工の破断面は、脆性破損を示す(図23aを参照);そのパーセンテージのナノ材料を有する最も高い強度を有するナノ樹脂(例えば図4を参照)は、高い靱性を有する破断面を示す(図23bを参照);および、ナノ材料の含量(パーセンテージ)が適切な値よりもかなり高い場合(例えば図4を参照)、ここでも同様に、破断面はもろくみえる(図23cを参照)。
[0300]加えて、このような先進ナノ樹脂サンプルを機械加工したり穴を開けたりしたところ、未加工の樹脂の切り口と比較して、それよりもかなり優れた切り口の品質(クラックがない)が得られる(図24を参照)。
[0301]ナノ樹脂の調節可能性の行列(NTM)
[0302]最も高い強度を有する状態から最も高い靱性を有する状態、さらにその間の全ての状態にわたり特定の特徴/特性を有する望ましいナノ樹脂を製造するために、以下で説明するナノ樹脂の調節可能性の行列(NTM)を使用することができる。この行列は、具体的な性能特性を有するナノ樹脂を製造するのに非常に適する可能性がある材料および加工技術を選択するために、当業者にいくつかの基準を提供する非限定的なツールである。
[0303]望ましい特性を有するナノ樹脂のために、ここで開示されるNTMの後に、行列の望ましい特性の段から得たそれに対応する配合を示す。この行列は、「Ti:j、k−1」という構成要素で形成され、ここで構成要素「i」は望ましい特性を示し、「i」は、それぞれ最も高い強度を有する状態から最も高い靱性を有する状態に相当する数字1〜5のいずれかであり得る(NTMにおける「特性(i)」の下の5段を参照)。「i」が固定される場合、「j」は1から6に動き(NTMにおける「パラメーター(j)」の下の段を参照)、それぞれの「j」に固定された「k−l」が存在する(NTMにおける「成分(k−l)」の下の段を参照)。NTMにおける「k」または「l」に関して利用できる情報が記載されていない場合、それらは「0」値をとることとする。
[0304]1)最も高い強度を有する、2)より高い強度と高い靱性を有する、3)高い強度と高い靱性を有する、4)より高い靱性と高い強度を有する、および、5)最も高い靱性を有する状態に関する具体的なプロトコールを、以下のNTMに示す。原則的に、いずれの用途の場合でも、この研究において開発され発表された実施例としてNTMに従ったエポキシ樹脂のケースで示されるように、望ましい特性がわかっている場合(すなわち1〜5)、そのような望ましい特性を有するナノ樹脂を生産するための配合は、NTMに記載されないことがある。
[0305]NTMにおいて、上記の構成要素は太字で示される。NTMにおいて、その他の構成要素は標準文字で示され、これらはその他のケースにおいて、ここで直接的に考察されたエポキシ系以外の材料を用いて高性能の調節可能なナノ樹脂が生産される可能性がある。
[0306]要約
[0307]未加工のエポキシの機械特性を改善して、同時に数ある特性のなかでも調節可能性を達成するために、ナノ材料の5種の異なるグループおよび様々な製造方法を考察した。ナノ材料は、酸処理したグラフェンシート、酸処理した単層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、ポリアミド酸、および、ジメチルアセトアミドを用いた。
[0308]ナノ材料は、極限引張強度、破損ひずみ、破壊靱性および減衰で示される機械特性を強化できることが実験的に証明された。また各グループ内で、ナノ材料の含量の割合を変化させたり、または、硬化サイクルの代替形態を用いたりすることにより、様々な強度、破損ひずみ、破壊靱性および減衰が得られる。
[0309]実験的な発見から、グラフェンナノ樹脂は、そのグループ内で最大の極限引張強度を示したが、一方で破壊靱性および減衰の特性の改善は最も低かったことが示された。DMACナノ樹脂は、そのグループ内で最大の破壊靱性および減衰の改善を示したが、極限強度は最も低かった;なお残りのナノ樹脂は、その間の特性を示した。
[0310]これら5種のナノ樹脂のグループにおいて、一つの極端なものとして最も高い強度を有すると称される最大の極限強度を有するナノ樹脂(すなわちグラフェンナノ樹脂)から、もう一方の極端なものとして最大の破壊靱性および減衰の改善を示す最も高い靱性を有するナノ樹脂(すなわちDMACナノ樹脂)に至る範囲でナノ樹脂が得られたことによって、調節可能性が示された。
[0311]酸処理したSWCNTナノ樹脂は、その平均極限強度がグラフェンナノ樹脂の平均極限強度よりも低いため、より高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂である。SWCNTナノ樹脂は、高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂であり;および、最後に、ポリアミド酸ナノ樹脂は、平均破壊靱性が最も高い靱性を有するナノ樹脂であるDMACナノ樹脂の平均破壊靱性よりも低いため、より高い靱性と高い強度を有するナノ樹脂である。
[0312]コンポジットラミネートの機械特性に対するナノ樹脂の作用
[0313]本明細書において説明されているように、新規の調節可能なナノ樹脂は、エポキシマトリックス系の極限引張強度、弾性率および破損ひずみなどの主要な機械特性の改善;曲げ強さおよび弾性率;破壊靱性;および減衰を示す。ナノ樹脂の引張強度を約70%まで、破損ひずみを約300%まで、破壊靱性を約600%まで、および、減衰を約400%まで改善するために、エポキシマトリックス系の研究が続けられており、その開発技術が確立された。
[0314]この章は、コンポジットラミネートの機械特性に対するナノ樹脂を含むことによる作用について論じる(ここでこの材料はナノコンポジットと称される)。未加工ベースのコンポジットと比較してナノコンポジットの機械特性を評価するために、対称的なコンポジットラミネートを製造した。これらの目的を達成するために、2種の異なるナノ樹脂、加えて2種の異なる強化繊維を考察した。
[0315]実験に選択されたナノ樹脂は、最大の極限引張強度を有するナノ樹脂;すなわち0.08質量%のグラフェンを有するグラフェンナノ樹脂(すなわち最も高い強度を有する)、および、0.06質量%のSWCNTを含む酸処理したナノ樹脂(すなわちより高い強度と高い靱性を有する)である。湿式積層技術を用いてコンポジットラミネートを製造するのに一方向炭素繊維(東レ(Tory), T700)およびEガラス平織物を用いた。
[0316]ASTMD3039に基づく縦方向の引張試験(少なくとも5種の切り取り試片を試験した)によって、未加工ベースのコンポジットとナノ樹脂ベースのナノコンポジットラミネートについての、縦方向でのコンポジットの極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数が得られた。
[0317]ASTMD6272曲げ試験標準規格を用いることによって縦方向の曲げ(4点曲げ)試験を行い、曲げ強さおよび弾性率を確立した。モードI破壊靱性特性を決定するために、ASTMD5528−01試験標準規格を用いて二重片持ちばり(DCB)試験を行った。最後に、コンポジットおよびナノコンポジットの減衰の特性を確立するために減衰試験を行った。
[0318]コンポジットラミネートの製造工程
[0319]最も高い強度を有するナノ樹脂(すなわちグラフェンナノ樹脂)、加えてより高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂(すなわち酸処理したSWCNTナノ樹脂)をベースとした本発明の高性能ナノ樹脂を用いて未加工のコンポジットとナノコンポジットラミネートとを製造するために、温度と圧力が制御された真空バッグ法およびオートクレーブオーブンを用いた。一方向炭素繊維テープまたはEガラス平織物のいずれかで作製された平坦で対称的なコンポジットラミネートを作製するために、ボトムおよびトッププレートとして表面が研磨されたアルミニウムプレートを使用した。
[0320]いずれのアルミニウムプレートも正方形とし、ここでボトムプレートは17×17インチの全体寸法を有し、トッププレートはそれより小さく、14×14インチの寸法を有していた。いずれのアルミニウムプレートもテフロン(Teflon)シートで全体をきつくラップし、これをラップがはずれないようにプレートの裏面にテープを回して貼り、より一層滑らかな表面にした。テフロンシートにより、第一に、アルミニウムプレートからコンポジットラミネートの取り外しを簡単にすること、および;第二に、非常に滑らかなでしわのない望ましい仕上げ表面を得ることという2つの目的が達成される(図25)。
[0321]幅8.0インチおよび長さ12.0インチの全体寸法を有するこれらのコンポジットのパネルから全てのサンプルを切り出した。パネルの厚さを、ASTM標準規格によって約0.040インチとした。それより長いロールから典型的な寸法(すなわち8.0×12.0インチ)に層を切断した。層を切断した後に個々の繊維を所定位置に保つために、一般的なタップを用いてそれらの末端を固定した。繊維テープに樹脂を染み込ませて、アルミニウムプレート上で湿った層を互いに重ね合わせてプレスすることによって積層した(図25を参照)。
[0322]以下に、これらに限定されないが、本発明の材料の製造方法の例を示す。第一に、使用者は、「樹脂を染み込ませるための」第一の層をそれより大きい皿に置く。次に使用者は、ブラシを樹脂のプールに半分だけ浸して、ブラシにエポキシ樹脂を吸収させてもよい(過剰な樹脂は除去しない)。使用者は、ブラシで層の表面を、下の末端から上の末端まで全体に等しい間隔で数ヶ所触り、この作業を層の幅に沿って繰り返してもよい。
[0323]樹脂(例えばエポキシであるが、その他の樹脂もコンポジットに使用できる)は、適切には、均一に塗り拡げられる。続いて使用者は、下の末端から上の末端まで全体にわたり端から端まで往復させて、ブラシの持ち手に圧力をかけて、適切には端から端まで一方向にのみ往復させてはけ塗りすることにより、エポキシ樹脂を層表面全体に塗布してもよい。
[0324]層に染み込ませる際に個々の繊維が引き出されるのを最小化するために、幅方向に沿って両端を押さえることにより層の末端を固定した(図25)。アルミニウム底のプレート上の適切な位置に第一の樹脂を染み込ませた層を移す前に、テフロン面をエポキシ樹脂材料で同様にはけ塗りすることが適切である。続いて使用者は、同様に樹脂材料を均一に塗り広げたアルミニウム底のプレートの上に、樹脂を染み込ませた側から第一の層を積層してもよい。このプロセスによって、確実に全ての繊維に樹脂を染み込ませて、繊維束とトウにも十分な樹脂を染み込ませる(図25)。
[0325]次に使用者は、適切には、樹脂を塗り広げた皿の中で第二の層を置き換えるが、ここでも同様に、層の上面だけを下の末端から上の末端まで等しい距離で数ヶ所樹脂を染み込ませる。
[0326]使用者は、適切には、ブラシの持ち手に均一な圧力をかけながら、下の末端から上の末端まで一方向にのみ往復させて樹脂を塗り拡げ、このプロセスを繰り返し、さらに(あらかじめ積層させてある)第一の層の上面に樹脂材料にも同様に塗布する。第二の層は、適切には、樹脂を塗り広げた皿から移動させて第一の層の上面に積層して、第二の層の樹脂を染み込ませた表面が第一の層の樹脂を染み込ませた表面の上面に置かれるようにする。
[0327]第二の層は、適切には、上の末端だけを接触させる際に第一の層に対して約90度で(すなわち空間に垂直に)保持する。第二の層は、適切には、この空間角度を90度から0度に小さくして、最終的に下の末端が接触するように積層する;このプロセスは、層間の「空気の取り込み」を最小化する。
[0328]繊維に十分な樹脂を染み込ませて、過量の樹脂と取り込まれた空気を全て除去し、加えて優れた圧縮としわのない表面を提供するために、適切には、ローラーを用いてトップ層を底部層に向かってプレスする。このプロセスによって、繊維の樹脂が染み込んでいない所をなくして空気のポケットを減らす(これらの現象はいずれもコンポジットの性能に有害である)。適切には、最後の層の上面と、この最後の層のトップに置かれるアルミニウムプレート上面のテフロン面とに樹脂を均一に塗り拡げる(図26)。最後に、後に行われる真空プロセスおよび加熱の間に過量の樹脂を捕らえるために、吸収材(bleeder material)の層を用いてコンポジットのパネル/ラミネートの4辺全ての端部をフレームに入れる(図26)。
[0329]この代表的な実施態様において、アルミニウムプレート上面を、樹脂を染み込ませた断片で置き換え、最後の層トップの前もってマークを付けた所定位置に設置する。真空バッグ法を完了させるために、4辺の端部周辺に、高温で密封されるテープ(図27で示されるように、組成物の境界周辺に貼ったテープ)を底部のプレート上に配置した(図27)。(加熱や硬化中に生成した)揮発物質と過量の樹脂を吸収するために、アルミニウムプレートの頂上面に吸収材システム(数種の吸収シート層からなる)を配置する。続いて吸収シートの上に真空装置の連結部を配置させ、真空バッグ法を完了させる(図28)。続いて、この組み立て体全体をオートクレーブ内に入れ、ここで熱および圧力をかける。場合によっては、ここで製造された全てのコンポジットパネルに、真空ポンプだけを用いて約14Psiで加圧される。このようなコンポジットラミネートを硬化させるために、それに相当する樹脂およびナノ樹脂の硬化サイクルを適用し、対流式オーブンの代わりにオートクレーブを用いた。
[0330]未加工のコンポジットおよびナノコンポジットの引張試験
[0331]コンポジットラミネートの機械特性に対する新規の強化されたナノ樹脂の作用を調査するために、未加工の樹脂を用いた未加工のコンポジットと、改善された極限引張強度に基づき強化されたナノ樹脂を用いたナノコンポジットラミネートとを製造した。
[0332]コンポジットの極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数を改善するために、極限引張強度、破損ひずみおよび破壊靱性において有意な改善が実証されたそれに対応する選択されたナノ樹脂を使用した。例えば、中程度または「V」型硬化サイクルを用いて硬化されたグラフェンナノ樹脂(例えば、0.08質量%のグラフェン)は、未加工の樹脂と比べて、極限引張強度において約70%の改善、破損ひずみにおいて189%の改善、弾性係数において約10〜14%のわずかな減少、および、破壊靱性において約88%の改善を示した。
[0333]ASTMD3039標準規格を用いて引張強度の荷重を行うために未加工のエポキシを用いたコンポジット(すなわち未加工のコンポジット)およびナノ樹脂を用いたコンポジット(すなわちナノコンポジット)のパネルを製造した。図29は、ASTMコードで定義される試料の構造を示す。全体寸法203×305mm(8.0×12.0インチ)の試料を全て、コンポジットのパネルから切り出した。いずれの試料も、長さ約250mm(10.0インチ)、および、幅15mm(約0.5インチ)であった。長さ56mm(2.25インチ)、幅15mm(約0.5インチ)、および、厚さ1.75mm(0.0695インチ)の全体寸法を有するアルミニウム製のタブを、高剪断強度を有するエポキシ接着剤を用いて試料の端部に接着した。ASTM標準規格によって提唱された荷重率を、ここで試験される全ての試料について2mm/分(0.08インチ/分)に設定した。極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数などの結果の精度を確認するために、各ケースごとに5つの切り取り試片を試験した。
[0334]表11、12および13に、2種の異なるナノ樹脂(すなわちグラフェンと酸処理したSWCNT)から製造され、加えて2種の異なる強化材(すなわち一方向炭素繊維とEガラス平織物)を用いたコンポジットラミネートへの引張試験からの結果を要約した。これらの表は、未加工のコンポジットと、最も高い強度を有する調節可能なナノ樹脂(すなわちグラフェンナノ樹脂)およびより高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂(すなわち酸処理したSWCNT)をベースとした本発明の強化されたナノ樹脂を用いたナノコンポジットとの比較を示す。それによれば、表11は、未加工のコンポジットと、強化材としてグラフェンナノ樹脂(すなわち0.08質量%のグラフェンを含む)と一方向炭素繊維を用いたナノコンポジットとの比較を示す。これらの結果から、極限引張強度は約40.26%、破損ひずみは約31.70%、弾性係数は約4.3%改善されたことが示される。
[0335]表12は、未加工のコンポジットと、Eガラス平織物およびナノ樹脂として酸処理したSWCNT(すなわち0.06質量%のSWCNT)を用いて製造されたナノコンポジットとの比較を示す。このナノコンポジットにおいて、極限引張強度は約53%強化され、破損ひずみは約26%改善され、弾性係数は約33.5%増加した。
[0336]表13は、未加工のコンポジットと、一方向炭素繊維および前のケースと同じ酸処理したSWCNTナノ樹脂(すなわち0.06質量%のSWCNT)を用いて製造されたナノコンポジットとの比較を示す表であり、ここでも同様に、結果から、極限引張強度は約69%強化され、破損ひずみは約3%改善され、弾性係数は約64%増加したことが実証される。
[0337]縦方向での曲げ試験(4点曲げ)、ASTMD6272−02
[0338]表14は、未加工のコンポジットと、一方向炭素繊維および前のケースと同じ酸処理したSWCNTナノ樹脂(すなわち0.06質量%SWCNT)、加えて最も高い靱性を有するナノ樹脂(すなわち10%DMACを含むナノ樹脂)を用いて製造されたナノコンポジットとを1.5mm/分の荷重率を用いた曲げ試験(図30を参照)について比較した表であり、同表に改善のパーセンテージを示した。最も高い靱性を有するナノ樹脂は、より高い強度と高い靱性を有するナノ樹脂よりも顕著に曲げ強さおよび弾性率を改善した。
[0339]開口型モードIの破壊靱性DCB試験(ASTMD5528−01)
[0340]表15は、未加工のコンポジットと、一方向炭素繊維および最も高い靱性を有するナノ樹脂(すなわちDMAC10%ナノ樹脂)を用いて製造されたナノコンポジットとの、2mm/分の荷重率を用いたDCB試験での比較を示す(試料の構造の詳細については図31を参照)。この表に、改善のパーセンテージを示す。
例示的な実施態様−グラフェン
[0341]以下、強化材料としてグラフェンを含む代表的な実施態様を示す。
[0342]開示された材料および方法に有用なグラフェン酸化物は、様々な方法でグラファイトの酸化を制御することによって生産することができる。このようなグラフェンの開発に適した様々なアプローチとしては、例えば微小機械的な切断、エピタキシャル成長および化学処理(例えばグラファイトの酸化、剥離および還元など)のような技術が挙げられる。しかしながら、比較的大量のグラフェン生産の場合は、化学的アプローチが広く適用することができる。追加の技術として、例えばグラファイトの高温分解および液相剥離と併用されるソルボサーマル合成なども報告されている。ある研究者によって、グラファイトからの電解剥離による効率的なグラフェンナノシートのラージスケール生産が報告されている。
機能化グラフェンの製造技術
[0343]官能化したグラフェン(図33を参照)は、文献で説明されている化学合成法に従って効果的に生産することができる。強い化学酸化剤を用いてグラファイト粉末を酸化し、続いて酸およびその他のイオンを除去する。適切には高温での熱衝撃によって酸化されたグラフェンを剥離する。多種多様な化学合成法が文献で説明されているが、それらのどれも手順を詳細に説明していない。熱衝撃に必要な温度は、適切には250℃〜1100℃の範囲で様々である。
還元グラフェンの製造技術
[0344]いくつかの実施態様において、官能化したグラフェンは、化学的酸化の結果として生成した官能基を除去する1種またはそれより多くの還元剤で処理される。このようにして得られた還元材料を加熱剥離し、単一の層のグラフェンを生産することができる。
一方で、本明細書に記載の代表的な実施態様で用いられるグラフェン材料を、具体的に説明されているプロトコールに従って作製した。しかしながら、本発明の開示は、当然ながらこのような具体的なグラフェンの改変体に限定されないこととする。グラフェンは、一般的には炭素の同素体として知られており、1原子分の厚さを有する、ハニカム様の結晶格子で存在する炭素原子の平面シート(sp混成軌道の結合様式で)の構造を有する。グラフェンは、袋状にするとフラーレンにもなり、ロールさせるとナノチューブになり、または、さらに積層すると3Dグラファイト構造にもなる。
グラフェンは、市販品を購入してもよい。グラフェン材料の供給元としては、グラフェン・インダストリーズ(www.grapheneindustries.com)、グラフォス(Graphos)(www.graphos.it)、グラフェン・スーパーマーケット(Graphene Supermarket)(www.graphene-supermarket.com)、およびその他の供給元が挙げられる。グラフェンの合成方法は当業者によく知られていると予想される;典型的な合成方法としては、ハマーズ法、および、米国特許第7,824,651号、米国特許第7,071,258号(参照により本明細書に組み入れる)で説明されている方法が挙げられる。グラフェンは、炭化ケイ素上でのエピタキシャル成長(例えば、Sutter, Nature Materials, 2009)、金属基板上でのエピタキシャル成長によって、酸化黒鉛の還元、金属−炭素溶融物からの成長によって(Amini, J. of Appl. Phys., 2010)、ナノチューブを切り開くことによって、および、その他の方法によって形成してもよい。
[0345]本明細書において開示された例示的な実施態様で用いられるグラフェンを作製するために、以下のプロトコールを用いた。これらのプロトコールは単に説明のためであって、本発明の開示を、いずれかの具体的な立体配置のグラフェン、または、いずれかの具体的な方法で作製されたグラフェンに制限するものと理解されないことする。
[0346]RNGS−I:酸化黒鉛を当業界でよく知られている改変ハマーズ法を適用することによって製造した。硫酸(46ml)を氷槽中で約0℃に予め冷却し、続いて2gのグラファイト粉末を添加した。この混合物をマグネチックスターラーで30分撹拌し、続いて段階的に6gのKMnOを添加した。反応混合物の温度を、適切に約20℃以下に保った;この温度は、適切には氷槽を用いて制御される。反応槽の温度を(液体の温度を高めることによって)35℃に高め、この反応混合物を、灰色の半固体状のペーストが得られるまで2時間撹拌した。
[0347]上述のペーストに超純水(92ml)をゆっくり添加し、得られたものをマグネチックスターラーでゆっくり撹拌した。続いてこの粘性のゲル液体を280mlの純水に添加し、続いて(マグネチックスターラーを用いて)約1時間力強く撹拌した。この溶液に過酸化水素を添加した;この溶液の色は灰色から黄色になった。この官能化したグラファイト溶液を焼結/フリットガラス漏斗に通過させてろ過し、10%希塩酸溶液で数回洗浄した。
[0348]高速遠心分離機を用いて得られた組成物を単離した。一定温度のインキュベーター中で半固体の内容物を50℃で96時間乾燥させ、残留物を(残留物の体積の2倍量の)エタノール中で48時間超音波処理した。
[0349]RNGS−II:遠心分離後に得られた半固体の内容物を石英の丸底フラスコ中に入れて、一定温度のインキュベーター中でそのまま50℃で72時間放置した。フラスコにアルゴンガスを30分間通し、水平の予熱した炉で、内容物におよそ1000℃の温度で約15〜30秒間の熱衝撃を与えた。乾燥した固形の黒色粉末を得た。
[0350]NGS−III:pH4.93のグラファイトフレーク(アズベリー・カーボンズ(Asbury Carbons),1721)2グラムをフリット漏斗に入れて250mlの蒸留水に添加した。この混合物を2時間超音波処理し、テフロンTMコーティングされたろ紙(50ミクロンメッシュ)を用いて真空中でろ過した;高速遠心分離機は、ろ過が実行不可能な場合、固体を分離するのに適している。一定温度のインキュベーターで半固体材料を50℃で14日間乾燥させた。乾燥させた材料を石英ガラス製の丸底フラスコに移し、アルゴンガスで30分間パージした。フラスコの内容物に(上記で説明したように)30秒でおよそ1000℃の熱衝撃を与えた。
[0351]用いられた材料
[0352]グラファイト
[0353]2種の異なる形態のグラファイトをアズベリー・カーボンズ(米国)から入手した。アズベリー・カーボンズから得られた製品のデータシートによれば、グラファイトフレーク(1721)は酸処理されており、一方でグラファイト粉末(3775)は会社独自の技術を用いて製造されたと述べられている。
[0354]ポリマー
[0355]いくつかの非限定的な実施態様に関して、スチレン中のビニルエステル樹脂(図34)は、ファイバー・ガラス・ハワイLLC(Fiber Glass Hawaii LLC, ホノルル)から購入された。この樹脂は、ハイドレックス100という商標名でライヒホールド社(Reichhold Inc.)によって配合されたものである。
[0356]その他の化学物質
[0357]濃硫酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素および塩化水素は、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から購入した。これらの化学物質は分析グレードのものであり、それ以上精製しないで用いた。合成プロセス中に用いられた水は抵抗率が約18μの超純水であった。
[0358]特徴付けの方法
[0359]この章では、材料を特徴付けるのに用いられる様々な分析技術を説明する。
[0360]FTIR分光分析調査
[0361]FTIR解析をサーモ・ニコレット(Thermo Nicolet)FT−TRスペクトロメーターでオムニック(Omnic)ソフトウェアを用いて行った。KBrペレット上に反応性ナノグラフェンシートまたはポリマーの固体の粉末の液体懸濁液をとり、分光器下でで直接解析した。4cm−1の解像度で最低でも60回スキャンした。バックグラウンドスペクトルを回収した後、サンプルのスペクトルを回収した。オムニックまたはオリジン(Origin)ソフトウェアを用いてスペクトルの基準を修正した。
[0362]ラマン分光分析調査
[0363]開示されたラマンスペクトルをインビクタス(Invictus)785nm NIRレーザーで励起し、ファイバー結合マイクロラマンRXNシステム(カイザー・オプティカル・システムズ社(Kaiser Optical Systems, Inc.),ミシガン州アナーバー)で50μmのスリットを用いて測定した。カイザー・オプティカル・システムズによって提供されたソフトウェアで宇宙線を除去し、その後スペクトルを2回測定し、宇宙線によるランダムピークを消去した。全てのスペクトルを同一条件下で測定した。
[0364]ここで示された全てのスペクトルは、それらの基準に合わせて滑らかにして修正された。説明をわかりやすくするために、これらのスペクトルを垂直にシフトさせた。市販の厚さ0.5mmの研磨されたアルミニウムシートは、アノメット社(Anomet, Inc., カナダ国オンタリオ州)から購入し、メタノールで洗浄し、基板として用いた。バックグラウンドスペクトルを回収し、その後サンプルのスペクトルを回収した。オリジンソフトウェアを用いてスペクトルの基準を修正した。
[0365]X線電子分光調査
[0366]クレイトス(Kratos)のアクシス・ウルトラ(Axis Ultra)装置で解析中のシステム圧力を10−8トールとしてXPS解析を行った。X線源は、単色のAIKα(1486.6eV)であり、X線出力は280ワット(14keV,20mA)であった。取り出し角はサンプル面に対して90°とした。全てのピークについてCls=285eVのピークを基準とした。
[0367]広角X線回折研究
[0368]Cu−Kα源を用いたブルカー(Bruker)装置のD8XRDを用いてグラファイトおよびグラフェンサンプルにおける中間層を記録した。採用されたX線スキャン速度は0.1度/秒であった。
[0369]顕微鏡調査
[0370]FESEM解析を日立(Hitachi)S4800で行い、TEM解析をLEO912エネルギー−フィルタリング透過型電子顕微鏡(Energy-Filtering Transmission Electron Microscope)で行った。FESEM解析中の帯電を防ぐためにサンプルを金−パラジウムで薄くコーティングし、ビーコ・イノーバ(Veeco Innova)装置をタッピングモードで操作してAFM画像を得た。
[0371]熱重量分析
[0372]TAインスツルメンツ(TA instruments)製のSDT2960装置で熱重量分析(TGA)を行った。装置のパンで一定の質量が達成されるまで半固体サンプルの質量を安定化させた。調節可能な加熱速度を固体サンプルにあわせた。
[0373]動的機械的熱解析
[0374]パーキン・エルマー(Perkin Elmer)のDMA8000動的機械的熱解析装置を用いてサンプルを試験した。DMTA装置に試料を置き、二重持ちばり曲げモードで3種の異なる周波数(0.01Hz、1.0Hzおよび10.0Hz)で振動させた。試料を5℃/分の速度で−150℃から200℃に加熱した。ひずみ振幅を0.01%に維持した。この研究のために長方形のサンプル形を選択した。
[0375]機械的な性能評価
[0376]インストロン(R)万能試験装置を用いてナノコンポジットの機械特性を決定した(図35)。引張試験のために、サンプルをイヌの骨形に切り出し、ASTMD638に従って試験した。全長50mmを使用し、クロスヘッド速度は1mm/分とした。平面ひずみ破壊靱性およびひずみエネルギー解放率のために、サンプルを長方形に切り出し、ASTM5045に従って単一端部切欠曲げ(SENB)モードで試験した。
[0377]グラフェンの開発および特徴付け
[0378]官能化した反応性グラフェンの製造技術
[0379]改変ハマーズ法を適用して酸化黒鉛を製造した。ACSグレードの硫酸(46ml)を氷槽中で0℃に予め30分冷却し、続いて2gのグラファイト粉末を添加した。この混合物を30分撹拌し、続いて6gのKMnOを段階的に添加した。この反応混合物の温度を20℃未満に30分間保った。反応槽の温度を35℃に高め(一定に維持し)、反応混合物を2時間撹拌し、灰色の半固体状のペーストを得た。この反応混合物を室温にし、そのまま48時間静置した。続いて上記ペーストに水(92ml)ををゆっくり添加し、内容物を30分間ゆっくり撹拌した。続いてこの粘性のゲル液体を280mlの純水に添加し、続いて1時間力強く撹拌した。この溶液に10mlの30%過酸化水素を添加したところ、即座に溶液の色が灰色から黄色になった。続いて官能化したグラファイト溶液を焼結/フリットガラス漏斗に通過させてろ過し、10%希塩酸溶液(合計で30ml,ACSグレード)で3回洗浄した。
[0380]最後に、高速遠心分離機を用いて内容物を単離した。半固体の内容物を50℃で72時間乾燥させ、ACSグレードの無水エタノール中で48時間超音波処理した。
[0381]剥離した反応性グラフェンの製造技術
[0382]遠心分離後に得られた固体含量を石英丸底フラスコに入れた。アルゴンガスをフラスコに15分間通し、内容物に1100℃の温度で15〜30秒間熱衝撃を与えた。黒色の乾燥固体粉末を得たが、これはナノフィラーとして使用することができる。
[0383]官能化したグラフェンの製造技術
[0384]その他の実験において、pH4.93の2グラムのグラファイトフレーク(アズベリー・カーボンズ−1721)をフリットガラス漏斗にとり、250mlの蒸留水を添加した。この混合物を2時間超音波処理し、真空中でろ過した。内容物をろ過することが不可能な場合に、高速遠心分離機を用いて固体を分離した。この半固体材料を50℃で14日乾燥させた。乾燥させた材料を石英ガラス製の丸底フラスコに移し、アルゴンガスで30分間パージした。フラスコの内容物に1100℃で30秒間熱衝撃を与えた。
[0385]FTIR分光分析を用いたグラフェンの特徴付け
[0386]フーリエ変換赤外線分光分析技術は、材料中の結合および結合群が特定の周波数で振動する原理を検討するためのものである。分子が赤外線(IR)に晒されると、分子は、その分子に特徴的な周波数でエネルギーを吸収する。続いてIRエネルギーの透過率および反射率を周波数の関数として吸収/透過率プロットに変換する。続いてこのようにして得られたFTIRスペクトルを解析し、ライブラリーからの既知の材料のシグネチャーと比較する。
[0387]図36(a〜d)は、RGNS−I、熱衝撃を与えたRGNS−II、および、加熱剥離したGNS−IIIS(固形化し乾燥させてKBrで粉砕し、ペレットを形成した)およびGNS−IIIL(溶媒中で超音波処理し、続いてこの材料をKBrペレット上に置き、溶媒を蒸発させた)で得られたFTIRスペクトルを示す。酸(−COOH)官能基は1714cm−1で観察することができるが、C=C芳香族のストレッチは1515cm−1および1538cm−1で、C−OHのストレッチは1224cm−1で、および、C−Oストレッチは1056cm−1で観察することができる。1628cm−1における振動は、未酸化のグラファイトドメインに起因する可能性がある。
[0388]ラマン分光法を用いたグラフェンの特徴付け
[0389]ラマン分光法は、単色光と相互作用する際の分子の振動または回転モードを研究するために用いられる。この技術では、可視光、赤外線または近紫外線の範囲の光が用いられ、そこでこのような光が分子の結合および電子雲と相互作用する。単色光からのフォトンは分子にエネルギーを付与し、その結果として基底状態から新しい一時的なエネルギー状態へのジャンプが起る。分子が平衡状態になると、分子はフォトンを放出し、異なる回転または振動モードで新しいエネルギー状態に戻る。しかしながら、分子のエネルギー状態が変化したため、放出されたフォトンは異なる周波数を有し、それにより、放出されたフォトンの周波数が励起波長からシフトする。この周波数の差が、分子の特定の振動または回転状態に特異的である。ラマン解析において、広範囲の周波数に材料を晒し、特定のラマン強度を周波数の関数としてプロットする。
[0390]図37は、固化して乾燥させたRGNS−I、IIおよびIIIフィルムのラマン解析を示す。秩序だったグラファイトは、グラファイト結晶格子のからのG−バンドに相当する1575cm−1に2つの主要なバンドを示し、さらに、グラファイト端部からのD−バンドを示す1355cm−1にピークを示す。図2aに示されるRGNS−Iからのラマンスペクトルは、G−バンドにおける1602cm−1へのシフトとD−バンドにおける1328cm−1へのシフトを示しており、これは、材料表面上の置換を示唆している。
[0391]RGNS−IIのケースにおいて(図37b)、G−バンドは1601cm−1で見出されたが、D−バンドは1336cm−1にシフトしており、これは、置換されたシートが剥離したことを示し、このように場合、RGNS−Iと比較してより高い波長でラマンシグナルを示す。
[0392]GNS−IIIで得られた2種のラマンシグナル(図37c)は、グラファイト吸収周辺の周波数である1584cm−1で見出され(G−バンド)、加えて、グラフェン吸収に類似した周波数であるおよそ1326cm−1で確認された。
[0393]XPS分光分析を用いたグラフェンの特徴付け
[0394]X線電子分光法(XPS)は、材料中の元素の化学的な状態、実験式、元素組成および電子の状態を測定する定量的な技術である。XPSスペクトルは、真空中で材料にX線照射し、同時に運動エネルギー、および、解析中の材料の表面から離脱したエレクトロンの数を記録することにより得られる。続いてラザフォードの方程式を用いて元素の結合エネルギーを計算する。典型的なXPSスペクトルは、材料中に存在する様々な元素からのエレクトロンの結合エネルギーをエレクトロン数の関数としてプロットすることによって構築される。
[0395]図38aに示されるRGNS−IIの表面を調査するスキャンによれば、ClsおよびOlsの鋭いピークが表示され、これは、材料の酸化プロセスが成功したことを示す。炭素ピークのデコンボリューション(図38b)によれば、284.5eVに集中して芳香族または共役した炭素に相当する2つのピーク、285.8eVにおけるC−OH結合、および、289eVに集中してC=OおよびO−C=O結合を示す山が表示された。また酸素ピークのデコンボリューション(図38c)も3種の主要なピークを示した。さらに、530.6eVに集中してピークが見出されたが、これはC=OおよびO=C−OH結合に相当し、533.8eVはC−OH結合に相当する。536eV周辺の幅広の山は、オージェピークを示す。
[0396]図39aは、GNS−IIIの表面を調査するスキャンを示す。このスペクトルから、S2p、ClsおよびOlsからの3種の別個のピークが明確に観察することができる。これらのピークのデコンボリューションから、炭素表面上で起こっている反応のメカニズムが示される。デコンボリューションされたClsスペクトルにおいて(図39b)、254.8eVに出現したピークは、共役したC=C結合に起因するものの可能性があるが、286eVに出現したピークは、C−OH結合のシフトである可能性がある。289eV〜292eVの間に出現した幅広の山は、O−C=O結合に起因する可能性がある。デコンボリューションされたOlsスペクトル(図39c)から2つのピークが表示され、そのうち一方は、およそ532eVに出現し、シフトしたC=Oに起因し、もう一方は533.8eVに出現し、C−OH結合に起因する。様々な元素のピーク位置から、グラフェン表面では十分な官能化が起ったことが示される。しかしながら、GNS−III表面に有意な量の硫黄が見出され、これは、まだ硫酸が最終的なGNS−III構造に存在することを示唆している。
[0397]XRD技術を用いたグラフェンの特徴付け
[0398]X線粉末回折(XRD)は、結晶質の材料の相の同定のために用いられる分析技術であり、単位格子からの情報を提供することができる。この技術において、入射光線がサンプルと相互作用し、ブラッグ則(nλ=2dsinθ)が満たされている場合に回析波と共に強めあう干渉が生じる。続いてこれらの回折X線は検出器を通過して、計数される。様々な角度でサンプルをスキャンし、強度を角度2シータの関数としてプロットする。各材料が固有のd−スペースからなるため、回折ピークをd−スペースに変換することにより、材料の同定が可能になる。
[0399]図40に、グラファイト粉末、RGNS−IIおよびGNS−IIIの広角X線回折パターンを示す。純粋なグラファイト粉末の場合、ピークは、(002)結晶面に相当する3.36Åのd−スペースを示す2θ=26.50に出現し、一方でピークは、(100)結晶面に相当する2.13Åのd−スペースを示す2θ=42.40に出現した。2.03Åのd−スペースを示す2θ=44.5に出現したピークは、(101)結晶面に起因して出現したものであり、1.67Åのd−スペースを示す2θ=54.67に出現したピークは、(004)結晶面に相当する。
[0400]RGNS−IIの場合(図40)、2θ=26.50における鋭いピークの代わりに、3.62Å(002)のd−スペースで2θ=24.58に幅広のピークが出現し、これは、剥離したグラフェンシートまたはプレートに相当する。しかしながら、(100)面を示す2θ=43.17におけるピークは、2.09Åのd−スペースを示した。2θ値におけるわずかなシフトは、解析中の粉末サンプルの異なる厚さによる可能性がある。
[0401]GNS−IIIの場合におけるXRDピーク(図40)は、厳密に類似したd−スペースを有するグラファイト粉末におけるXRDピークに類似しており、これは、全てのGNS−IIIがグラフェンに変換されているわけではないことを示唆している。しかしながら2θ=26.66(002)におけるピークの強度は、グラファイト粉末よりも低かった。
[0402]グラフェンの熱重量分析
[0403]材料の分解/分解パターンを時間および温度の関数として理解するために、材料に対して熱重量分析(TGA)が行われる。典型的な熱重量実験において、材料は、望ましい環境条件下で断熱的および/または非等温モードで加熱される。加熱速度は、必要条件に応じて固定されるか、または、可変であり、質量減少のプロットを時間または温度の関数として記録する。質量減少曲線の第一の導関数は、研究中の材料の分解現象を理解するために用いることができる。
[0404]図41は、3種の異なる加熱速度で得られたRGNSに関する不活性雰囲気のサーモグラムを示す。図41aに示されるRGNS−Iの熱分解パターンは、144〜164℃でおよそ10質量%の損失が起ったことを示唆する。この質量減少は、付随して起る揮発性成分(例えば官能化中に利用された酸など)に起因する可能性がある。250℃の温度までにおよそ40質量%の材料が失われたが、これは、より小さい構成要素が分解したためと思われる。完全な分解後に得られた残留物は、40〜50質量%の範囲であった。この時点においてもなお25℃の加熱速度における低い残留物の内容は不明確であり、さらなる調査が必要である。
[0405]RGNS−IIの熱安定性をTGA技術によって決定し、図41bに示した。RGNS−IIは500℃まで熱的に安定であり、分解の開始は525℃の温度で観察されたことが確認された。この場合、一工程の分解パターンが観察され、これは、存在し得るあらゆる揮発性成分が存在しないことを示す。1000℃の高温分解後に得られた残留物は、20〜40質量%であった。
[0406]GNS−IIIの分解は、その他2種の材料の場合のように一定していなかった(図41c)。およそ300℃の温度で10質量%の質量減少が観察された。460℃まで分解パターンはランダムであり、その後安定化し、50〜60質量%の残留物が生じた。
[0407]グラフェンの形態学的な調査
[0408]ナノ粒子の表面の形態を可視化するために、モデム分析ツールが必要である。電界放射型走査電子顕微鏡法(FESEM)や透過型電子顕微鏡法(TEM)などの顕微鏡技術によって、材料の有用な見識を得ることができる。しかしながら、これらの技術は所定期間たった後の形態を解像することができないため、限界がある。FESEM技術の場合、ある程度までは材料の構造は可視化されるが、その後、連続的な電子ビームの衝撃によって表面上に電荷の構築が始まる。このような電荷を除去するためには、導電性コーティングの薄層が必要であるが、コーティング手順は材料表面上の特徴を覆い隠すことが多い。TEM技術の場合、画像を形成するためには、材料がコントラストを示すことが重要である。従って、このような問題のために、単一のグラフェン層は、顕微鏡上で捕らえるのが困難である。以下の章で、顕微鏡下で観察される先進グラフェンの形態を説明する。
[0409]電子顕微鏡技術を用いたグラフェンの形態学的な調査
[0410]図42は、RGNS−IのFESEMおよびTEM画像を示す。熱衝撃を与える前にバルク状態の材料表面の特徴を観察することが必要である。FESEM画像(図42a)から、グラフェンプレートが10マイクロメートルよりも大きいことがわかる。さらにこのプレートの外観は半透明である。このプレートは紙のように崩れるため、プレートの厚さを測定することは困難であった。TEM画像(図42b)は、数層のグラフェンプレートを示しており、無定形炭素の量はわずかであった。これらの層は熱衝撃工程中に剥離し、材料は単一層のグラフェンに変換される。
[0411]図43は、完全に剥離したRGNS−IIで得られたTEM画像を示す。このようなTEMを研究することによって、グラフェン剥離が数段階であることが実証できる。装置のグリッド上にグラフェンの単一のシートを明らかに観察することができる。この反応性ナノグラフェンシートの推定厚さはおよそ4〜7nmであり、これは、顕微鏡下で観察されたグラフェンシートは、実際には少なくとも3〜10層でできていることが示される。
[0412]図44は、GNS−IIIのFESEMおよびTEM画像を示す。低分解能FESEM画像(図44a)から、グラフェンプレートは、高度に秩序化された積層体状に配置されることが示された。さらに、プレートの大きさはRGNS−IIよりも大きいように見える。より高解像度のTEM画像において(図44b)、これらの層は、積層されたグラファイトフレークのように見える。
[0413]視像によるグラフェンの外観
[0414]図45は、可視光で見えるRGNS−I、RGNS−IIおよびGNS−IIIの写真を示す。RGNS−Iサンプル(図45a)は、周囲条件で長時間、または、溶媒および捕捉された水分が蒸発するような高温で乾燥するまでゲル段階のままである。RGNS−Iは、24時間超音波処理すると、エタノール中に均質に懸濁することができる。このサンプルは、無期限に均質な懸濁液を示す。RGNS−IIサンプル(図45b)は熱衝撃後に得られたものであり、ピッチのように真っ黒のように見える。このサンプルは、24時間超音波処理すると、エタノール中に均質に懸濁することができる。しかしながらRGNS−IIは、そのままさらに24時間静置すると容器の底に沈降する。GNS−IIIサンプル(図45c)は、見た目が灰色の顆粒状の特徴を有する。このサンプルは、エタノール中に懸濁することが難しく、液状媒体中で不均質な分布を示す。
[0415]ナノコンポジットの開発
[0416]導入
[0417]本ナノ粒子は、ナノ粒子と高分子マトリックスとの界面における接触を最大化する高い比表面積を有する。境界面における高い表面積のために、マトリックスとナノサイズの強化材とが良好に接着しあう。このようなケースにおいて、応力は、効率的にマトリックスから強化材に移動する。それゆえに強化材としてナノ材料を使用することにより、境界面においてクラックが伝達する長さが延長されて最終材料の強度および靱性が改善される。
[0418]ナノコンポジット調製物
[0419]ポリマーマトリックス中に、ポリビニルエステルを溶解させる溶媒の補助によりナノ粒子(調節剤)を分散させた。溶媒は、ナノ粒子の一様/均質な分布のための媒体として作用するため、望ましい溶媒におけるVEの溶解性を検証することが必要である。それゆえに剥離したグラフェン粉末を、分析グレードの(純度99%以上の)DMACまたはTHF溶媒のいずれか5ml中で継続的に72時間超音波処理した。続いてこのようにして得られたコロイド状の溶液をポリマーに添加した。この章では、様々なナノコンポジットのための調製物に適した方法を詳述する。
[0420]ビニルエステルおよびジメチルアセトアミド(VEDMAC)コンポジット
[0421]分析グレードのジメチルアセトアミド5mlを、ビニルエステル180mgに添加し、ホモジナイザーを用いて少なくとも15分間よく混合し、続いて真空中で5分間脱気する。最後に、上記のビニルエステルとジメチルアセトアミドとの混合物に工業グレードのメチルエチルケトン過酸化物(MEK)1.5mlを穏やかに混合し、ポリプロピレン製の型に注入する。24時間後に硬化されたプレートを型から取り出し、2枚のアルミニウムプレート間でさらに48時間プレスする。
[0422]ビニルエステルおよびジメチルアセトアミド(VEGRDMAC−ハイブリッド)ナノコンポジット
[0423]上記グラフェンを5mlの分析グレードのDMAC中で16時間超音波処理した。続いて、DMAC(ナノ樹脂の0.5%〜2.5質量%)中の均一なグラフェン(ナノ樹脂の0.002%〜0.03質量%)の溶液を180mgのビニルエステルに添加し、続いてホモジナイザーを用いて力強く15分間混合した。最後に、1.5mlの工業グレードのMEKを上記の混合物と穏やかに混合し、ポリプロピレン製の型に注入した。24時間後に硬化されたプレートを型から取り出し、2枚のアルミニウムプレート間でさらに48時間プレスした。
[0424]ビニルエステルグラフェン(VEGRTHF)ナノコンポジットの製造
[0425]上記グラフェン(ナノ樹脂の0.01%〜0.05質量%)を5mlのテトラヒドロフラン(THF)(ナノ樹脂の0.5%〜2.5質量%)中で16時間超音波処理した。続いてTHF中の均一なグラフェン溶液を180mgのビニルエステルに添加し、続いてホモジナイザーを用いて15分間力強く混合した。最後に、1.5mlのMEKを上記混合物と穏やかに混合し、ポリプロピレン製の型に注入する。24時間後に硬化されたプレートを型から取り出し、2枚のアルミニウムプレート間でさらに48時間プレスした。
[0426]ナノコンポジットの特徴付け
[0427]分光分析技術を用いてビニルエステル樹脂における硬化プロセスをモニターした。FTIRとラマン分光分析技術を用いてこのコンポジットおよびナノコンポジットを研究した。樹脂系に起こる変化を研究するために、硬化プロセスの様々な段階で材料をサンプリングした。FESEMとTEM技術を用いて樹脂中のグラフェンの分布を研究した。
[0428]FTIR分光分析を用いたポリマーナノコンポジットの特徴付け
[0429]図46は、ナノコンポジット製造で用いられる様々な成分のFTIRスペクトルを示す。しかしながら、最終的なナノコンポジット中の具体的な材料または族を、オーバーラップした異なる構成要素からスペクトルのバンドとして同定することは困難である。
[0430]図47〜49に、異なるナノコンポジットからのFTIRスペクトルを示す。未加工のビニルエステルコンポジットおよびナノコンポジットの場合、1624cm−1に出現したピークから、明らかにスチレン二重結合の存在が示唆された。575、830および891cm−1に出現したピークは、面を曲げる振動から生じたC−Hを示す。1115、1249および1295cm−1に出現したピークは、C−Oストレッチに起因するものである。1401および1457cm−1に出現したピークは、メチル基の対称的および非対称な曲げ振動に起因するものである。1511、1582および1624cm−1に出現したピークは、芳香族核の環ストレッチの振動に起因するものである。1721cm−1に出現したピークは、エステルカルボニルストレッチに起因するものである。3種のピークのうち2872および2933cm−1に出現したピークは、対称的および非対称な−CHストレッチに起因するものであり、一方で3036cm−1に出現したピークは、芳香環の−CHである。3400cm−1に出現した大きな山は、水素結合した−OHストレッチに起因するものである。
[0431]我々はさらに、異なる時間および温度からのFTIRスペクトルも比較した。室温条件で、および、樹脂組成物を硬化して7日後のゲル状樹脂組成物におけるスペクトルを記録した。さらに硬化して7日後に70℃で再度硬化した組成物におけるスペクトルも記録した。興味深いことに、ナノコンポジット組成物中に溶媒が存在していても、スペクトルの割り当ては影響を受けなかった。これは、2種の溶媒からのスペクトルのバンドと前述したポリマーのスペクトルのバンドとがオーバーラップすることによる可能性がある。
[0432]しかしながら異なる時間および温度からのスペクトルはそれほど大きな差を示さない。これは、異なる化学成分からのスペクトルの割り当てがオーバーラップすることに起因する可能性がある。しかしながら、芳香環ストレッチに起因するおよそ1600cm−1と、カルボニルエステルストレッチに起因する1730cm−1とに出現した2つの重要なピークは、時間および温度の増加に伴い外観が変化した。およそ1600cm−1におけるピークの割れは、時間および温度に伴いスチレンが蒸発すると強く出現するベンゼン環ストレッチに起因する可能性がある。およそ1600cm−1に出現した追加のベンゼン環ストレッチは、このようなピークの割れは溶媒としてDMACを含むコンポジットの場合では観察されないためにナノコンポジット中のグラフェンの存在に起因する可能性がある。これらのピークは、初期のうちは1624cm−1におけるスチレンストレッチのためにオーバーラップする。同様に、このような成分は、スチレンが蒸発するとより高い強度を有するエステル結合を形成し、そのストレッチは、明らかに1746cm−1に出現したバンドの割れとして観察することができる。
[0433]ラマン分光法を用いたポリマーナノコンポジットの特徴付け
[0434]グラフェン(RGNS−II)は、ラマンスペクトルにおいて明確なピークを示す。それゆえに、ナノコンポジット中のグラフェンの存在を可視化するために、グラフェン濃度を様々に変化させたナノコンポジットでラマンスペクトル(図50,51)を得て、未加工のコンポジットで得られたラマンスペクトルと比較した。コンポジットと室温で硬化されたナノコンポジットでスペクトルを得た。2種の異なる種類のナノコンポジットからのスペクトルを綿密に観察したところ、グラフェンからのピークが存在しないことが発見された。ナノコンポジット中に(グラフェンからの)GおよびDバンドピークが存在しないことは、グラフェンナノシートのサイズが小さいことに起因する可能性がある。このようなナノシートは、(前の章で説明した透過電子顕微鏡解析からわかるように)均一に分散されており、場合によってはサンプルの大部分に埋まっている可能性がある。これらのナノシートはラマンスキャンの領域中で利用できなかった。
[0435]電子顕微鏡技術を用いた高分子グラフェンナノコンポジットの形態学的な調査
[0436]溶媒の存在、および、グラフェンナノシートの取り込みは、高分子コンポジットの形態学的な外観を変更する可能性がある。連続的なポリマーマトリックス中に外来元素を分散させることは、高分子鎖充填の配置全体に影響を与える可能性があり、それにより存在し得る欠陥または欠点と共に受け継がれたポケットを生じる。ポリマーマトリックス中にナノ材料の凝集が生じているようなケースにおいて、コンポジットの全体の特性は悪影響を受ける可能性がある。ナノコンポジットの大部分におけるグラフェンの分散をチェックした。
[0437]FESEM技術を用いてナノコンポジットサンプルの上面を解析した。しかしながらFESEM方法を用いた表面構造解析では、材料の見識は得られなかった。次に、ナノコンポジットサンプルを液体窒素中で折り、続いてFESEMおよびTEM技術を用いて断面図を解析した。
[0438]図52aは、VEGRDMAC0.02ナノコンポジットの断面図のFESEMを示す。顕微鏡写真では、目の詰まった上面、それと共に密集して押し固められた断面図を観察することができる。スキャン領域に捕獲物、ピンホールまたはその他のあらゆるタイプの欠陥があった痕跡はみられず、これは、この材料が完全に硬化されたことを示唆している。さらに、ごく微量のDMAC溶媒の存在が、グラフェンの存在を捕らえるためのスキャニング解像度を制限している。TEM技術(図52b)を用いて、材料の大部分におけるグラフェンの分散をチェックした。高分子コンポジット中の単一層のグラフェンは、2つの炭化水素間のコントラストがないために検出するのは不可能である。しかしながら、ナノコンポジット層間のグラフェンの存在を表示する方法はほとんどない。
[0439]図53は、VEGRTHF0.02ナノコンポジットの断面図のFESEM画像を示す。この場合、グラフェンを分散させるための溶媒としてTHFを用いた。この溶媒の唯一無比な点は、ポリマーマトリックス中にグラフェンを均一に分散させ、室温で蒸発してまったく残留しないことである。このような溶媒は、溶媒の影響をなくし、最終的に硬化されたナノコンポジットにおけるグラフェンナノシートの影響を可視化することに役立つ。
[0440]VEGRTHF0.02ナノコンポジットは、グラフェンを分散させるための媒体としてDMACを用いた前者のケースとは異なる、表面の質感が顆粒状の形態(図53a)を示した。この場合、FESEM技術によって、ポリマー層間にグラフェンの存在を捕獲することができた。図53bでは、凝集したグラフェン構造を明確に観察することができる。グラフェンの存在を示す領域はそれほど頻繁に観察されなかったことは言及する価値があることで、なぜならこれは、凝集が観察されたわずかな部位を除いては、ナノシートの分散が比較的均質であることを示すからである。
[0441]ナノコンポジットの機械的解析
[0442]導入
[0443]ナノ粒子は、材料のネットワークにさらなる強度を付与する活性な官能基と反応性を示す可能性がある高い表面積を有する。グラフェンナノシートは、これまでに知られているナノ材料のなかでも最大のアスペクト比を有すると考えられてきた。しかしながら、高分子ナノコンポジット中のグラフェンナノシートの真のポテンシャルは、それらが適切に官能化され、マトリックス中に均一に分散されている場合にしか達成することはできない。その上、高分子マトリックス中でグラフェン上に生成した官能基が官能基と反応することができれば、かなりの特性を獲得することができる。以下の章で、ポリマーマトリックスを改変した結果として得られた機械特性のバリエーションを詳述する。
[0444]動的機械分析
[0445]動的機械分析(DMA)は、材料を研究して特徴付けるために使用される重要な技術である。この技術は、高分子材料の粘弾性挙動の解析において有用である。典型的なDMA実験において、材料に正弦波応力が適用され、生じたひずみが測定され、それにより複素弾性係数を決定することが可能になる。応力頻度とサンプル温度は可変であり、それにより複素弾性係数にバリエーションが生じる。このような実験は、材料のガラス転移温度の決定、加えて付随する分子運動に相当する転位の理解に役立つ。
[0446]DMA技術は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の決定について十分に立証された技術である。Tgは、ポリマーの弾性係数が急激に下降する点とされる。しかしながらTgは、一般的には最大の減衰比、すなわちE”/E’またはtanδを示す点と定義されるが、数人の研究者は、Tgは、E’曲線の傾きにおいて変化が始まった時点からより正確に決定することができることを見出した。図54〜55に、異なるコンポジットおよびナノコンポジットの貯蔵弾性率(E’)およびtanδ曲線を示し、以下の表(表16)にそれに相当するTg値を示す:
[0447]上記表で報告されたTg値は、同じサンプルに対する2回の異なるスキャンごとに表示される。これらのサンプルは、まず−150℃から200℃までをスキャンし、再度同じサンプルを第一のスキャンとまったく同じ実験条件に従って−150℃から200℃まで解析した。第二のスキャンからの結果は、硬化後のサンプルからの結果と考えることができる。
[0448]図54aは、未加工のVE樹脂コンポジットで得られた温度の関数としての貯蔵弾性率(E’)およびtanδ曲線を示す。この実験を3種の異なる周波数、すなわち0.1Hz、1.0Hzおよび10.0Hzで行った。曲線は、明らかに2種の異なる緩和過程を示す。45℃の近辺に出現したα−緩和過程は材料のTgと関連する。このような緩和は、時間および温度の変化の結果として材料がある相から他の相を通過する際に生じるポリマー主鎖における小さい歪みのために起こる。約125℃の温度に出現したβ−緩和過程は、大規模な分子運動に起因するものである。このような運動は、モノマー単位に関連する構造の動きか、または、架橋が不十分なものの存在に起因する可能性がある。
[0449]図54bは、DMACを含むVE樹脂で得られた温度の関数としての貯蔵弾性率(F)およびtanδ曲線を示す。興味深いことに、このコンポジットは、材料のTgに関連するα−緩和過程に相当するtanδ曲線で単一のピークを示した。E’曲線から計算したTg値は、1.0Hzの周波数で47℃であることがわかり、これは、溶媒の存在のためにポリマー中での大規模な動きが抑制されたことを示唆している。
[0450]図55aは、VEGRDMAC0.02ナノコンポジットから得られた温度の関数としての貯蔵弾性率(E’)およびtanδ曲線を示す。VEDMACコンポジットの場合と同様に、このナノコンポジットは、単一のα−緩和過程を示した。この場合、Tg値はおよそ40℃であり、VEDMACコンポジットよりも低い値であった。Tgを、パーキン・エルマー製のDMTA装置によってE’、すなわち貯蔵弾性率から測定し、その結果を上記表16に示した。
[0451]図55bは、VEGRTHF0.02ナノコンポジットから得られた温度の関数としての貯蔵弾性率(E’)、および、tanδ曲線を示す。上記のケースとは異なり、このナノコンポジットは2つの緩和過程を示した。Tgに関連するα−緩和過程はおよそ55℃でみられ、一方でβ−緩和過程はおよそ125℃で出現した。第二の緩和過程は、グラフェンに関連する高分子ドメインからの長距離の移動に起因する可能性がある。この場合、第二の緩和過程は、組成物中に溶媒が存在しないことによる可能性がある。
[0452]表6.1に示すように異なる組成物のTg値を比較することが興味深い。コンポジットおよびナノコンポジットにおける硬化後の作用をチェックするために同じサンプルに2回スキャンを行った。第一のスキャンにおいて、−150℃から200℃まで、5℃/分の加熱速度でサンプルを加熱した。このサンプルを周囲条件にして、−150℃から200℃まで5℃/分の加熱速度で再度スキャンした(第二のスキャン)。実験全体にわたりサンプルを固定したままにした。
[0453]一般的には、Tg値は1.0Hzの周波数で報告される。表6.1によれば、未加工のVE樹脂を改変した場合、Tg値は第一のスキャンの間に増加したようである。VEGRTHFナノコンポジットで最大のTgが報告された。同様に、第二のスキャンの場合においても、VEGRTHFナノコンポジットで最大のTgが記録された。これらの結果は、グラフェンの存在によって、高分子ネットワークにおける橋かけ密度(すなわち剛性)が強化されることを示唆している。
ナノコンポジットの引張試験
[0454]ASTMD638を用いて、ビニルエステルナノコンポジットの引張特性を決定した。試験片をダンベル形に製造した。以下の図56に試験サンプルの寸法を示す。図57に、破壊されたサンプルの典型的な形状と解析後に得られたプロットを示す。
[0455]引張強度の値を計算するために、以下のように、最大の荷重をゲージ長における断面の面積で割る:
[0456]引張係数を計算するために、以下のように、あらゆるセグメントに相当する応力をそれに対応するひずみの差で割る:
[0457]図58aに、溶媒と様々な量グラフェンとを含むコンポジットおよびナノコンポジットの極限引張強度(UTS)を示す。各組成物ごとに少なくとも6〜9サンプルを試験し、結果を標準偏差のバーと共に示した。例えばエポキシのような高分子マトリックスにグラフェンを取り込むことにより、ナノコンポジットの強度が改善されることが報告されている。しかしながら、我々のビニルエステル樹脂ナノコンポジットで種々の結果が得られた。グラフェン含量が0.03質量%である場合にVEGRTHFナノコンポジットのUTS値が最大になり、一方でVEGRDMACの場合、0.002質量%のグラフェン含量で最大値が出た。興味深いことに、0.5質量%DMAC溶媒を含むコンポジットのUTSが未加工のコンポジットよりも低い。
[0458]図58bは、溶媒と様々な量のグラフェンとを含むコンポジットおよびナノコンポジットの引張係数(TM)を示す。このTMから、VEGRTHFナノコンポジットの場合、放物線状の増加率が示され、0.01質量%のグラフェン含量で最大値が達成された。同様に、VEGRDMACナノコンポジットの場合、増加率は0.01質量%のグラフェン含量で最大であった。未加工のVE樹脂コンポジットおよびVEDMACのTM値は同一であり、これは、溶媒はビニルエステルコンポジットのTMに影響を与えないことを示唆している。
ナノコンポジットの単一端部切欠ビーム試験
[0459]ASTMD5045を用いて、ビニルエステルナノコンポジットの靱性を限界応力拡大係数KICおよび破壊の開始時における限界ひずみエネルギー解放率GICに関して調べた。2以外のW/b比率を有し、さらに2<W/b<4の基準を満たす3点曲げ試料を製造した(ここで「W」は幅であり、「b」は厚さである)。またサンプル製造において0.44<a/W<0.55のパラメーターも考慮した(ここで「a」はクラックの長さである)。以下の図59に3点曲げ試験法用の試験片のサンプル製造に用いた寸法を示す。
[0460]Kを単位MPa・m(1/2)で計算するために、S/W=4の曲げ試料に用いられた一般式は、K=(P/bW0.5)f(x)である。式中、0<x<1であり、Pは荷重であり、「b」は試料の厚さであり、「W」は試料の幅であり、「a」はクラックの長さである。「x」の値はa/Wとして与えられ、f(x)値はASTM5045で示された表から得られる。
[0461]修正されたエネルギー「U」から曲げ試料に関するG値をKJ/mの単位で計算するために、G=U/(bWΦ)で示される方程式を用いた(式中「b」は試料の厚さであり、Wは試料の幅であり、Φはエネルギーの校正係数である)。Φ値は、ASTMD5045で示された表から得られる。図60に、破壊されたサンプルの典型的な形状および解析後に得られたプロットを示す。
[0462]図61aは、グラフェン含量が異なるコンポジットおよびナノコンポジットの限界応力拡大係数(KIC)を示す。VEGRTHFナノコンポジットの場合におけるKIC値は、放物線状の改善傾向を示し、グラフェン0.03質量%のケースで最大値を記録したが、一方でVEGRDMACの場合、逆の放物線状の増加傾向を示し、0.002質量%で最大値を記録した。VEGRDMACナノコンポジットのKIC値は未加工のVEコンポジットよりも高かった(ただしVEGRDMAC0.002の場合を除く)。
[0463]図61bに、グラフェン含量が異なるコンポジットおよびナノコンポジットの計算されたひずみエネルギー解放率(GIC)を示す。VEGRTHFナノコンポジットの場合では、グラフェン濃度の増加に伴いGIC値が増加するが、一方でVEGRDMACナノコンポジットの場合では、グラフェン濃度の増加に伴いGICは減少することを観察することができる。実際には、比較的低いグラフェン含量のVEGRDMACナノコンポジットは、比較的高いGIC値を示す。
[0464]図62に様々な調節剤の関数としての機械特性におけるバリエーションをまとめた。ここで、異なるコンポジットおよびナノコンポジットで得られる比較的低い値を表示するために、第一のY軸はとぎれていることに留意すべきである。改変は、ビニルエステル樹脂の特性に有意な影響を与えたことが観察できる。VEGRDMAC0.002ナノコンポジットの場合、有意なレベルの改善が達成されており、ここで引張強度はおよそ60%改善され、同時に破壊靱性はおよそ30%増加した。VEGRDMAC0.002の場合において、GICにおいて高い増加率(150%)が達成された。VEGRTHFナノコンポジットの場合、機械特性において多様な変化が観察された。また、付表Bに異なるナノコンポジットで起るパーセンテージの変化も示した。
[0465]ナノコンポジットの破損解析
[0466]コンポジットおよびナノコンポジットにおける破壊モードおよびメカニズムを研究するために、破損した破壊試験および引張強度試験片の破断面をFESEMで試験した。図63に、SENBおよび引張試験中に破損した未加工のVE試料のFESEM顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真から、SENB試験において(図63a)、試料の引き延ばしのときに破損したようである。上述の前提を裏付けるポリマーの顕著なストレッチをはっきりと観察することができる。引張試験中に(図63b)、これらのサンプルは混合モードで破損したようである。サンプルの大部分が、鎖が伸長した形態を示した。しかしながら、脆性破壊も観察された。
[0467]図64に、SENBおよび引張試験中に破損したVEDMAC試料のFESEM顕微鏡写真を示す。これらの試料は少量の溶媒を含んでおり、このような溶媒は鎖伸長プロセスに役立つ可能性がある。予想通りに、これらの試料は、SENB、および、引張試験中に延性モードで破損したようである。
[0468]図65に、SENBおよび引張試験において破損したVEGRDMAC試料のFESEM顕微鏡写真を示す。ポリマー表面が伸長したようにみえることから、SENB試験中の破壊モードは延性の性質を有する。上記のケースと類似して、引張試験においてもサンプルは延性モードで破損し、サンプルの大部分が鎖が伸長した形態を示した。
[0469]図66に、SENBおよび引張試験において破損したVEGRTHF試料のFESEM顕微鏡写真を示す。ポリマー表面が迅速なクラックの伝達を受けたことから、SENB試験中の破壊モードは脆性の性質を有する。上記のケースと類似して、引張試験においてもサンプルは脆性モードで破損した。クラックが始まり、荷重が増加するにつれてクラックが伝達され、伸長して、最終的にひび割れた。
[0470]図67は、未加工の樹脂とナノコンポジットとの機械特性の比較を説明する図であり、(a)引張強度;および、(b)引張係数である、図68は、未加工の樹脂とナノコンポジットとの機械特性の比較を説明する図であり、SENB試験から計算した(a)KIC;および、(b)GIC値である。
[0471]グラフェンナノシートの取り込みは、高分子樹脂の特性を有意に改変することができる。グラフェンの分散、および、その界面における周囲のポリマーマトリックスとの相互作用は、その結果得られたナノコンポジットの極限の特性の制御において重要な役割を担う。さらに、望ましい物理化学的特性を達成するためには溶媒の選択が重要であった。
[0472]3種の異なる技術を用いてグラフェンナノシートを合成し、異なる分析技術を用いて特徴付けた。FTIR、ラマン、XPSおよびXRD分光分析研究によって、グラフェンシートの合成が成功したことを確認した。さらに高分解能電子顕微鏡研究によって、グラフェンシートの形成が示された。グラフェン、RGNS−IIは、高度に官能化され、剥離したことがわかった。従って、高分子ナノコンポジットの製造にはRGNS−IIを選択した。グラフェンは、DMACのような非プロトン性溶媒中で安定な懸濁液を形成するため、DMACをグラフェンをポリマーに均質に分散させるための媒体として使用した。DMAC溶媒の作用を取り除き、高分子マトリックス中のグラフェンの作用可視化するために、ポリマー中にグラフェンを一様に分散させるための媒体としてさらにTHFも選択した。THF溶媒は室温で揮発性を有するため、残留物を残さずに蒸発する。
[0473]2種の異なる溶媒(すなわちDMACおよびTHF)を用いてグラフェンをビニルエステル樹脂中に均一に分散させた。異なる分析技術を用いてナノコンポジットを特徴付け、ナノコンポジット開発の際の溶媒の作用を研究した。分光分析研究では明確なピークは観察されなかったが、それでもなおナノコンポジット中にグラフェンが存在するというかすかな兆候がみられた。高分解能電子顕微鏡研究によって、ナノコンポジット中のグラフェンの存在を確認した。
[0474]未加工のコンポジット、DMAC溶媒を含むコンポジット、および、様々な量のグラフェンを含むナノコンポジットの粘弾性を動的機械分析を用いて調査した。溶媒およびグラフェンの存在は、ナノコンポジットのガラス転移温度に影響を与えたことがわかった。溶媒非存在下でのグラフェンの存在は、ナノコンポジットのガラス転移温度を上昇させた。
[0475]引張強度およびSENBモードでコンポジットおよびナノコンポジットを試験した。THFを用いて製造されたナノコンポジットの場合、グラフェンの量を0.03質量%まで減少させたら引張強度はおよそ40%に増加したことがわかった。しかしながら、グラフェン濃度をさらに減少させたところ、引張強度は減少した。DMACを用いて製造されたナノコンポジットの場合、グラフェン濃度を減少させたところ、強度がおよそ60%に増加した。さらに、THFを使用したナノコンポジットの場合、比較的高いグラフェン濃度で引張係数がおよそ50%に増加した。同様に、DMACを使用したナノコンポジットの場合、VGD0.01のケースを除いて全てのケースで引張係数が減少した。
[0476]SENB試験モードにおいて、THFを使用したナノコンポジットは、比較的高いグラフェン濃度で、KIC値のおよそ35%の増加を示し、一方でDMACを使用したナノコンポジットの場合、グラフェン濃度を減少させたところKIC値は増加した(最大でおよそ40%)。THFを使用したナノコンポジットにおいて、比較的高いグラフェン濃度でGIC値は減少し、一方でDMACを使用したナノコンポジットにおいて、比較的低いグラフェン濃度でGIC値はおよそ180%に増加した。グラフェン濃度の有利な値は0.03質量%であり、この濃度でポリマー特性において相乗作用が生じる。
[0477]高分解能電子顕微鏡技術を用いて、引張強度およびSENB試験において破損した試料のモードおよびメカニズムを試験した。DMAC溶媒を添加すると、ポリマーおよびそのナノコンポジットは、延性モードで破損したことがわかった。しかしながら、THFを使用したナノコンポジットにおいて、これらは脆性破壊モードで破損した。従って、溶媒は、グラフェンとポリマー鎖との結合プロセスに干渉すると結論付けた。まれなケースであるが、溶媒が、グラフェンと活性なポリマー部位とのカップリング剤として作用する場合がある。
[0478]この研究をグラフェンビニルエステルナノコンポジットに行ったところ、官能化されたグラフェンナノシートは、調節可能性を有する高分子ナノコンポジットを製造するのに効果的に用いることができることが示された。粘弾性の研究から、このようなナノコンポジットの硬化後は、機械特性の改善が必須であることが示唆された。一般的に、高いアスペクト比を有するグラフェンの均一な分散物は、風力タービン用のブレード、ボートおよびインフラストラクチャーのための接着剤など様々な分野で利用することができるより高い強度を有し軽量のナノコンポジットを作製するためのポリマー中の活性な充填剤として利用することができる。
[0479]高品質グラフェンシートは、溶液中の市販のグラフェンシートと比較して、自立性のある乾燥材料として運搬することができる。DMACおよびグラフェンを配合した引張強度および機械特性が改善されたビニルエステルベースのナノ樹脂を開発した。
[0480]第一の実施態様において、本願は、組成物を提供する。これらの組成物は、適切には、樹脂、および、樹脂内に分散されたグラフェン本体を含み、ここでグラフェン本体は、約0.001〜約1.0質量%で存在する。グラフェンは、適切には組成物の総質量に基づき0.001〜0.01質量%で存在し、約0.001〜約0.005%で存在していてもよい。適切なグラフェン材料および関連するこのような材料の製造方法は、米国特許出願第61/323,999号(2010年4月14日付けで出願、これらの全体は、参照により本明細書に組み入れられる)で説明される。
[0481]特許請求された組成物には様々な樹脂を用いることができる。特に適切なものは、ポリエステル(例えばビニルポリエステル)であると考えられる。このような樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、重合性樹脂、デンドリマー、架橋性樹脂、それらのあらゆるハイブリッド、混合物およびコポリマーであってもよい。
[0482]適切な熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリル樹脂、セルロイド、酢酸セルロース、環状オレフィンコポリマー、エチレン−酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、フッ素プラスチック、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルテレフタレート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、それらの組み合わせなどが挙げられる。
[0483]さらに特許請求された発明には様々な熱硬化物質も適している。熱硬化物質としては、加硫ゴム、フェノール−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル、シアノアクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ビニルエステル、ポリシロキサンなどが挙げられる。放射線硬化性樹脂としては、ポリアミド、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリシロキサンなどが挙げられる。
[0484]重合性樹脂としては、以下のもの:アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリル酸樹脂、セルロイド、酢酸セルロース、環状オレフィンコポリマー、エチレン−酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、エポキシ、フッ素プラスチック、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、加硫ゴム、ビニルエステル、フェノール−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル、シアノアクリレート、ポリアクリレート、ポリシロキサン等のうち1種またはそれより多くが挙げられる。
[0485]また架橋性樹脂も適切である。このような樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリル酸樹脂、セルロイド、酢酸セルロース、環状オレフィンコポリマー、エチレン−酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、エポキシ、フッ素プラスチック、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、加硫ゴム、ビニルエステル、フェノール−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン樹脂、ポリイミド、シアン酸エステル、シアノアクリレート、ポリアクリレート、ポリシロキサンなどが挙げられる。これらのポリマーのいずれかのコポリマーおよび混合物も特許請求された発明で使用することができる。
[0486]以下に示すもの:ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール樹脂、ポリアクリレート、ポリシロキサンが特に適切であると考えられる。ビニルエステル−ポリエステル樹脂を含む組成物に所定の試験を行ったが、本発明は、決して一種の樹脂にのみ限定されることはない。このような樹脂は硬化された形態でもよいし、または、未硬化の形態でもよく、さらに、いくつかの実施態様においては、部分的に硬化された形態であってもよい。
[0487]グラフェン本体は、適切には組成物の約0.002〜約0.05質量%で存在していてもよく、または、組成物の約0.02〜約0.03質量%であってもよい。グラフェン本体は、プレートの形態で存在していてもよく、さらに、1層、2層、3層または複数層のグラフェン層を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、グラフェン本体は、10層、15層、20層またはさらにそれよりも多くの層を有していてもよい。グラフェンは、剥離した形態で存在していてもよい。またグラフェン本体は、シートの形態で存在していてもよいし、粒子として存在していてもよいし、ロッド等として存在していてもよい。本組成物は、様々な形状およびサイズのグラフェン本体を含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、本組成物は、実質的に単分散の状態のグラフェン本体を含む。
[0488]グラフェン本体は、適切には、約0.1nm〜約100nmの範囲、または、1〜10nmの範囲の少なくとも1つの断面寸法を有し、または、約5nmの断面寸法を有していてもよい。断面寸法は、厚さ、長さ、幅、高さ、直径等である。グラフェン本体(例えばプレート)は、適切には、約3nm〜約10nmの範囲の厚さを有する。
[0489]またグラフェン本体は、適切には、約5,000〜約20,000の範囲のアスペクト比も有する。アスペクト比は、物体の長さ(すなわち物体の最長の軸)の物体の厚さ(最も短い軸)に対する比率と定義される。いくつかの実施態様において、アスペクト比は、5,000未満であり、例えば2,000、1,000、500、200、100、50、10、5であり、または約1であってもよい。
[0490]いくつかの実施態様において、グラフェン本体は、少なくとも1種の官能基を含む。適切な官能基としては、ヒドロキシル、エポキシ、カルボキシル、および、カルボニルなどが挙げられる。また窒素を含む官能基も適切であり、特に適切なものは、カルボキシル基であると考えられる。
[0491]また本組成物は、追加の材料を含んでいてもよい。約1000ダルトンよりも小さい分子量を有する有機分子(例えば溶媒)が適している。このような溶媒としては、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、および、メチルエチルケトンのいずれかが挙げられる。溶媒の混合物または共溶媒も、特許請求された発明に適している。
[0492]グラフェン本体は、組成物内に実質的に均一に分散させることが適切であるが、完全な均一性は必ずしも必要ではない。所定の物品において、グラフェン本体の分散状態が異なる領域が含まれる。本明細書において説明されているように、グラフェン本体の包含によって、実質的にグラフェン本体を含まない樹脂と比べて、極限引張強度、引張係数、限界応力拡大係数、または、限界ひずみエネルギー解放率の少なくとも1種における改善が達成される。この点に関するさらなる詳細は、本明細書の他の所で示されている。
[0493]また特許請求された発明は、グラフェンを含む樹脂を形成する方法も提供する。このような方法は、グラフェン本体の集合体を樹脂に分散させて、第一の溶媒中にグラフェン本体が分散された前駆混合物を形成すること;および、前駆混合物を硬化すること、を含む。
[0494]グラフェン本体は、適切には、超音波処理等で物理的に混合することによって第一の溶媒中に分散される。第一の溶媒としては、適切には、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。揮発性の極性プロトン性溶媒、例えばギ酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、酢酸も、水と同様に適切である。さらに、非プロトン性溶媒、例えばアセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、酢酸エチル、n−メチルピロリドン(NMP)、ならびに非極性溶媒、例えばトルエン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、および、クロロホルムも、特許請求された方法にも適している。特に適切な溶媒は、ジメチルアセトアミドであると考えられる。
[0495]第一の溶媒は、適切には、前駆混合物の質量の約0.10%〜約10.0%で存在し;約2.5質量%で存在することが特に適切であると考えられる。第一の溶媒は、前駆体の質量の約1%〜約3%で存在していてもよい。
[0496]いくつかの実施態様において、本方法はさらに、グラフェン本体、樹脂またはその両方を第二の溶媒と接触させることを含む。第二の溶媒は、適切には、メチルエチルケトンである。その他の適切な第二の溶媒としては、ジアリール、および、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン(例えば、過酸化メチルエチルケトン)、過酸エステル、過酸化ジアシル、ヒドロペルオキシド(例えば、クメンヒドロペルオキシド)などが挙げられる。第二の溶媒は、適切には、前駆混合物の質量の約0.5%〜約5.0%で存在する。第二の溶媒は、適切には、前駆混合物の約0.75質量%で存在する。
[0497]グラフェン本体は、適切には前駆混合物の質量の約0.001%〜約0.5%で存在し、または、該混合物の約0.002質量%で存在する。特に適切な組み合わせは、ビニルエステル樹脂と共に、約2.5%のDMAC溶媒と約0.002質量%で存在するグラフェン本体とを用いて、ナノコンポジットを生産することである、
[0498]硬化工程は、適切には型の中で行われる。硬化は、熱硬化、放射線硬化、熱硬化、結晶化、ガラス固化、溶媒除去等によって達成してもよい。
[0499]例示的な実施態様−ビニルエステル
[0500]ここで、本発明の開示に係るビニルエステル組成物の例示的な非限定的な実施態様を説明する。単一端部切欠曲げ試験(SENB)を用いた引張試験および破壊靱性試験によってビニルエステルナノ樹脂の特徴付けを行った。極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数などの引張特性は、ASTMD638標準試験法を用いて測定し、一方でひずみエネルギー解放率などの破壊靱性特性は、ASTMD5045標準規格を用いて計算した。ほとんどの場合、インストロン万能試験装置タイプ4200を用いて5種の試料を試験した。機械特性の改善のパーセンテージを示すために、未加工のビニルエステル、加えてそれに対応するナノ樹脂およびハイブリッドナノ樹脂に試験を行った。結果から、極限引張強度および破損ひずみにおいて有意な改善が示され、同様に靱性も改善された。
[0501]試料の寸法
[0502]ベースの未加工材料として、ビニルエステル樹脂系のハイドレックス100(33350)ライヒホールドと触媒のMEK過酸化物硬化剤を用いた。全ての試料を、それより大きい全体寸法20×20cmおよび平均厚さ約3.0mmの正方形プレートから切り出した。本明細書において提唱されるハイブリッドビニルエステルナノ樹脂の機械特性を特徴付けるために、2種の異なる機械的試験を行った。ここで2種の異なる機械的試験は、1)極限引張強度、破損ひずみおよびヤング率(弾性率)を決定するための引張試験;および、2)ひずみエネルギー解放率(GIC)を決定するための、単一端部切欠曲げ試験(SENB)である。
[0503]引張強度用試料を、イヌの骨形に、図69aに示されるASTMD638−03標準規格に従って、25.4mmの全体ゲージ長、8.0mmの平均幅、および、約3.0mmの平均厚さに製造した。記録された応力−ひずみグラフから、強度、破損ひずみおよび弾性係数などの引張特性を測定した。試料の厚さの辺に取り付けられた25.0mmのゲージ長を有する伸び計を用いてひずみを測定した。インストロン万能試験装置を用い、ここでクロスヘッド速度速度を1.0mm/分の一定速度に設定した。
[0504]破壊靱性試験片を、ASTMD5045標準規格に従って、56mmの基準の全長(L)、約12.8mmの幅(W)、約3.2mmの平均厚さ(B)、および、約4.0の幅と厚さとの比率(WB)に作製した。フライス装置を用いて、長さ約6mmおよび幅約1.5mmの人工的な切込を試料幅全長の中央に入れた。その後、鋭いかみそり刃を挿入して前後に動かすことによって自然なクラックを起こした(図69bを参照)。全てのSENB試料を、ASTMD5045−99標準規格の手順に従って、SENB試験を有効に行うためにクラックの長さ(a)と試料の幅との比率(a/W)がおよそ0.5になるように作製した。ここでも同様に、必要な備品を備えたインストロン万能試験装置を用いてSENB試験を行った。
[0505]SENB試験のために、インストロンのクロスヘッド速度を0.25mm/分の一定速度設定した。ひずみエネルギー解放率について報告された値(GIC)は、ASTMの手法に従っており、少なくとも5つの試験片の平均に基づく。各SENB試験ごとに、適用された荷重−荷重点変位を記録した人工の鋭いクラックの存在に起因する破断を起こすのに要する全エネルギーに関連するひずみエネルギー解放率を計算した。人工的な鋭いクラックの存在下における破断に対する材料の耐性の尺度として破壊靱性を計算した。
[0506]ナノ製造
[0507]ジメチルアセトアミドのナノ製造
[0508]VE−DMACナノ樹脂の製造は、VE−DMAC溶液のナノ樹脂を製造すること、続いて硬化剤としてMEK過酸化物を適用すること、続いて室温で硬化すること、を含む。研究された実施態様において、DMAC溶媒の質量パーセンテージをビニルエステル全量の2.5%に一定に維持し、これを樹脂のA部分と室温で手動で極めてゆっくり約15分撹拌することによって混合した。撹拌中の微小な気泡形成を最小化するために、混合装置としてガラス棒を用いた。DMAC溶媒によって、ビニルエステル樹脂の粘度を低くした。
[0509]この混合物の内部中央にガラス棒を垂直に置き、手動で時計回りおよび反時計回りに50往復させて撹拌し、これを8回繰り返した。手動で撹拌するする間に形成された気泡を除去するために、この混合物を超音波処理装置を用いて例えば約10分間脱気した。続いてこの均一な溶液に触媒のMEK過酸化物を添加した。この溶液を約10分間手動で撹拌することによりよく混合した。この混合物を研磨されたアルミニウム製の型に注入し、閉じた容器内で維持し、そのまま室温で硬化させた。
[0510]グラフェンナノシートの超音波処理および分散
[0511]この章では、超音波処理装置、続いてホットプレート付きマグネチックスターラーを用いて、様々な条件化で生産された様々なタイプのグラフェンなどのナノ材料を分散させるための、典型的なビニルエステル樹脂との混合技術を説明する。典型的な工程は、以下に示す通りである:
[0512]工程1は、適切な溶媒(この場合はDMAC溶液)中にグラフェンを分散させることである。工程2は、ビニルエステルにグラフェン−ジメチルアセトアミド溶液を均一に分散させることであり、ここで使用者は、混合プロセス(すなわちナノ製造)中における微小な気泡の形成を最小にしてもよい。工程3は、触媒MEK過酸化物を用いて、適切に混合することにより、微小な気泡がわずかしか形成されないか、またはまったく形成されないようにして適切な(例えば均一な)分散を実現することである。
[0513]必要量のGNSを均一に分散させるための媒体としてDMAC溶液を用い、まず、水温を約30℃に設定した超音波処理装置を用いて、GNSとDMAC溶液とを概ね2日間混合した。このハイブリッド研究において、質量分率がビニルエステル樹脂の2.5%のDMAC溶媒、および、固定した質量分率がビニルエステル樹脂の0.002%のGNSを使用した。最終工程で、ビニルエステル樹脂にGNS−DMAC混合物の溶液を添加し、続いてこれを手動でゆっくり約15分間撹拌した、
[0514]樹脂系中のGNSの均一な混合を達成するために、約45度の角度に容器を保持して、混合装置としてガラス棒を使用してもよい。使用者は、時計回り方向に約50回撹拌し、続いてこの工程を数回追加で繰り返してもよい。混合中に形成された気泡を除去するために、この混合物を超音波処理装置を用いて約10分間脱気してもよい。
[0515]使用者は、適切には、この十分に分散された混合物に触媒のMEK過酸化物を添加する。手動でさらに10分間撹拌しながらA部分と部分との混合を続ける(例えば、前述したように、連続して時計回りに(4回)回転させおよび反時計回りに(4回)回転させること(すなわち8回)を50セット行う)。混合後、この混合物を十分研磨されたアルミニウム製の型に注入し、閉じた容器内で維持し、そのまま室温で硬化させた。
[0516]試料名の説明
[0517]これらのサンプルについて、最初の2文字の「VE」は、ファイバー・ガラス・ハワイ製のビニルエステルを意味する。容器上の表示によれば、この樹脂系は、室温硬化サイクルを有する100%ビニルエステル樹脂のハイドレックス100(33350)ライヒホールドであると証明されている。「VE」の後の最初の文字は、溶媒溶液を示す(この場合はDMAC)。DMACの後の最初の数字は製造されたプレートの数を意味しており、それに続く番号は、用いられる溶媒の質量パーセンテージを示す(例えば2.5は、2.5質量%のDMAC溶媒が用いられることと同義である)。
[0518]この研究において、考察された全てのケースでDMACの質量パーセンテージを2.5%に固定したままにした。残りの最後の文字は、用いられた異なるタイプのGNSを示す(例えば、以下で説明されるように、RGNS−I=GIF、RGNS−II=GII、および、GNS−III=GIII)。文字Gの後の残りの数字は、利用されたGNSの質量パーセンテージを示す(例えば002は、0.002質量%のGNSが用いらたことを意味する)。
[0519]3種の異なるタイプのグラフェンナノシート(GNS)
[0520]GNSの機械特性(すなわち引張強度、破損ひずみおよび弾性係数)は、マトリックス(この場合はビニルエステル)から繊維への荷重伝達メカニズムを向上させる。ビニルエステル中のGNSの均一な分散が有用である。
[0521]この章では、ビニルエステルの機械特性を強化する溶媒溶液としてDMACを用いた、3種の異なるタイプのGNSを利用するプロセスについて集中的に論じる。ここで考察されるケースについて、GNSの質量パーセンテージを0.002%に固定したままにし、DMACの質量パーセンテージを2.5%に固定したままにした。比較する目的で、未加工のビニルエステル樹脂とVE−DMAC溶液ナノ樹脂も製造した。
[0522]これらの例示的な実施態様において、それぞれRGNSI=GIF、RGNSII=GII、GNSIII=GIIIと名付けられた3種の異なるタイプのGNSを用いたハイブリッドVE−DMAC−GNSナノ樹脂プレートが使用された。まず第一に、GIFは、フィルムの形態であり、GIIおよびGIIIは、固体「粒子」の形態である。全てのプレートの目視検査から、滑らかな表面と気泡が存在しないことが明らかになった。
[0523]GNSの実験結果
[0524]5種のナノ樹脂、すなわち未加工のビニルエステル、VE−DMACナノ樹脂、および、室温で硬化された3種のハイブリッドのVE−DMAC−GNSナノ樹脂の引張荷重実験結果を本明細書において考察した。未加工のビニルエステル樹脂の応力−ひずみプロットは、破壊応力までは直線的なカーブを示しており、これは、全てのサンプルの破断面は滑らかで荷重方向に垂直であったため、これらのサンプルは脆性破壊を起こしたことを示す(図70aを参照)。異なるタイプのGNSを包含するハイブリッド試料は、破壊応力まで非線形の挙動を示しており、破断面はわずかに荒れていた。図70bに、ハイブリッドVE−DMAC−GIFの典型的な応力−ひずみ曲線を示す。全てのハイブリッド試料は、未加工のビニルエステルよりもかなり高い極限引張強度と破損ひずみを示した。
[0525]図71aおよび71bは、3種全てのハイブリッドVE−DMAC−GNSと、VE−DMACナノ樹脂および未加工のビニルエステルベースのプレートとの、極限引張強度および破損ひずみそれぞれの比較を示す。結果から、高い引張強度、加えて高い破損ひずみは、DMAC−RGNSI=GIFタイプのハイブリッドビニルエステルのケースに付随して起ることが実証される。RGNSI=GIFハイブリッドに関して、極限引張強度の強化は約130%であり、破損ひずみの強化は約418%である。GNSIII=GIIIハイブリッドに関して、極限引張強度の強化は約101%であり、破損ひずみの強化は約204%である。またその他のハイブリッドケースも有意な改善を示した。いずれのケースにおいても弾性係数は減少した。
[0526]破壊靱性は、荷重−荷重点変位曲線の下の面積に比例するエネルギーを必要とするクラック発生に対する材料の耐性である(図72を参照)。図72aは、未加工のビニルエステル樹脂に関する典型的な荷重−荷重点変位を示し、一方で図72bは、DMAC溶媒2.5%における、VE−DMACナノ樹脂に関する類似のプロットを示す。2.5%のDMACおよび0.002%のGNSにおける残りの3種のハイブリッドのVEで、類似の荷重−荷重点変位曲線が得られた。全ての荷重−荷重点変位曲線は、破壊点まで直線的な挙動を示した。いずれのケースにおいても、クロスヘッドの移動速度を0.25mm/分に維持した。
[0527]図73に破壊靱性の試験結果の比較を示すが、ここでGICは、未加工のビニルエステル、VE−DMACナノ樹脂、および、様々なGNSタイプを含む(ただし含量パーセンテージはいずれも0.002質量%)3種のハイブリッドVE−DMAC−GNSナノ樹脂に対して示される。これらのプロットから、最大のGIC値は、ハイブリッドVE−DMAC−GNSIII=GIIIで得られることが示された。0.002%GNSIIIにおけるGICの強化は、括弧内に示したように約22%である。このハイブリッドビニルエステルの極限引張強度は、未加工のビニルエステルと比較して約101%改善された(図71aを参照)。
[0528]以下の表は、未加工のビニルエステル、VE−DMACナノ樹脂、および、3種の異なるハイブリッドのVE−DMAC−GNSナノ樹脂材料の、極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性についての比較を示す。ハイブリッドのVE−DMAC−RGNSI=GIFナノ樹脂の場合、極限引張強度は約130%増加し、破損ひずみ約は418%改善し、弾性係数は33%まで減少し、破壊靱性は程度の差はあるが変わらないままであった。実際の値の隣の括弧内に強化のパーセンテージを記載した。考察された全てのケースは、極限引張強度、加えて破損ひずみに関して有意な改善を示し、さらに破壊靱性も改善を示した。
[0529]以下の表(表17)は、未加工のVEと、VE−DMACおよび3種のハイブリッドVE−DMAC−GNSナノ樹脂との比較である:
[0530]要約−ビニルエステル樹脂
[0531]破壊靱性を改善しつつ主に極限引張強度の強化を重点的にビニルエステルの機械特性を改善するために、4種の異なる強化物質;すなわちDMACおよび3種の異なるタイプのグラフェンナノシート(GNS)を使用した。第一のビニルエステルナノ樹脂プレートをジメチルアセトアミド溶媒で作製し、残りの3種のハイブリッドのナノ樹脂プレートを、ジメチルアセトアミド溶液と3種の異なるタイプのGNSの組み合わせから製造した。ビニルエステル−DMAC、加えてハイブリッドビニルエステル−DMAC−GNSナノ樹脂は、極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性の形態で測定したところ、機械特性を強化した。
[0532]ハイブリッドビニルエステル−DMAC−GIFグラフェンナノ樹脂は、それらの様々なハイブリッド種のなかでも、約130%の最大の極限引張強度、および、約418%の最大の破損ひずみを示した。ハイブリッドビニルエステル−DMAC−GIIIグラフェンナノ樹脂は、それらの様々なハイブリッド種のなかでも、約22%の最大の破壊靱性の改善を示し、同時にその極限引張強度は約101%増加し、その破損ひずみは約204%改善した。
また残りのビニルエステルハイブリッドナノ樹脂も極限引張強度、および、破損ひずみにおいて有意な強化を示した。いずれのケースにおいても弾性係数はわずかに減少し、ハイブリッドビニルエステルのケースで最も大きい低下がみられた。最大の極限引張強度を示した(130%)ハイブリッドのケースにおいて、すなわちハイブリッドビニルエステル−DMAC−GIFグラフェンナノ樹脂において、弾性係数は有意に約33%減少し、これが、破壊靱性が約10%低下した唯一のケースであった。一実施態様において、すなわちハイブリッドビニルエステル−DMAC−GIFグラフェンナノ樹脂において、強度は110%改善され、破壊靱性は22%改善された。
[0533]例示的な実施態様−ポリエステル
[0534]ここで、このマトリックスを、その他の2種の成分とを、それぞれ個々に、または、組み合わせて(この場合、ハイブリッド強化材として役立つ可能性がある)用いることによって、主として極限引張強度および破壊靱性を同時に改善するために、オルトフタル酸ラミネートポリエステル(すなわちPE)樹脂の機械特性の強化の例を説明する。この目的を達成するために、2種の異なる種類の強化材、すなわち:1)溶媒としてエタノールのみを使用したグラフェンナノシート(GNS)タイプGNSIII(すなわちGIII)、および、2)GNSIII=GIIIおよびRGNSI=GIFと名付けられた2種の異なるタイプのGNSをそれぞれ、溶媒としてジメチルアセトアミド(すなわちDMAC)と併用した、2種の異なるハイブリッド強化材を考察した。PE−GIII樹脂系は「ナノ樹脂」と称し、PE−DMAC−GNSとの組み合わせは「ハイブリッドナノ樹脂」と称する。
[0535]DMACおよびGNS(またはそれらの組み合わせ)などの強化成分は、最適化が適切に行われる場合、極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性の形態の特性を強化することができる。このような並外れた特性を達成するのに寄与する3種の一次パラメーターとしては、1)ナノ材料の選択、2)ナノ製造、および、3)ナノプロセスが挙げられる。
[0536]引張強度および破壊靱性試験(単一端部切欠曲げ試験、すなわちSENB)によってポリエステルナノ樹脂の特性を特徴付けた。ASTM標準規格D638に従って極限引張強度、破損ひずみおよび弾性係数などの引張特性を測定し、一方でASTM標準規格D5045に従ってひずみエネルギー解放率などの破壊特性を計算した。インストロン万能試験装置タイプ4200を用いて、通常少なくとも5種の試料を試験した。機械的な改善のパーセンテージを示すために、未加工のポリエステルにも同様に試験を行った。結果から、極限引張強度、破損ひずみおよび破壊靱性が同時に改善されたことが示される。
[0537]試料の寸法
[0538]ベースの未加工ポリエステル材料として、オルトフタル酸ラミネートポリエステル樹脂と触媒のメチルエチルケトン過酸化物(すなわちMEKP)硬化剤を用いた。全ての試料をそれより大きい全体寸法20×20cmおよび平均厚さ約3.0mmの正方形プレートから切り出した。本明細書において提唱されるポリエステルナノ樹脂の機械的な特性を特徴付けるために、2種の異なる機械的試験、すなわち:1)極限引張強度、破損ひずみ、および、ヤング率(弾性率)を決定するための引張試験、2)ひずみエネルギー解放率(すなわちGIC)を決定するための単一端部切欠曲げ試験(SENB)を行った。引張強度用試料を、イヌの骨形に、ASTMD638−03標準規格に従って(図74aを参照)、25.4mmの全体ゲージ長、8.0mmの平均幅、および、約3.0mmの平均厚さに作製した。強度、破損ひずみおよび弾性係数などの引張特性を、記録された応力−ひずみグラフから測定した。試料の厚さの辺に取り付けられた25.0mmのゲージ長を有する伸び計を用いてひずみを測定した。インストロン万能試験装置を用い、ここでクロスヘッド速度を1.0mm/分の一定速度に設定した。破壊試験片をASTM標準規格に従って、56mmの基準の全長(L)、約12.8mmの幅(W)、約3.2mmの平均厚さ(B)、および、約4.0の幅と厚さとの比率(W/B)に作製した。フライス装置を用いて、長さ約6mmおよび幅約1.5mmの人工的な切込を試料幅全長の中央に入れた。その後、鋭いかみそり刃を挿入して前後に動かすことによって自然なクラックを起こした(図74bを参照)。全てのSENB試料を、ASTMD5045−99標準規格の手順に従って、SENB試験を有効に行うためにクラックの長さ(a)と試料の幅との比率(a/W)がおよそ0.5になるように作製した。
[0539]ここでも同様に、必要な備品を備えたインストロン万能試験装置を用いてSENB試験を行った。SENB試験のために、インストロンのクロスヘッド速度を0.25mm/分の一定速度に設定した。ひずみエネルギー解放率について報告された値(GIC)は、ASTMの手法に従っており、少なくとも5つの試験片の平均に基づく。各SENB試験ごとに、適用された荷重−荷重点変位を記録した。有効と考えられる結果について、大きさの基準を満たしていた。人工の鋭いクラックの存在に起因する破断を起こすのに要する全エネルギーに関連するひずみエネルギー解放率を計算した。人工的な鋭いクラックの存在下における破断に対する材料の耐性の尺度として破壊靱性を計算した。
[0540]ナノ製造
[0541]GNSの超音波処理および分散
[0542]この章では、2種の異なる超音波処理装置を利用したナノ材料(この場合、GIIIおよびGIFと名付けられた異なるタイプのグラフェン)を分散させる技術を説明する。一般的に、我々のナノ樹脂の製造は、3つの工程を含む。
[0543]工程1は、ハイブリッドの場合はDMAC溶媒中に、および、ナノ樹脂の場合は溶媒としてエタノールを用いてGNSを分散させることである。工程2は、ポリエステルにグラフェン−DMAC、または、グラフェン−エタノール混合物を均一かつ均質に分散させることであり、この工程は、微小な気泡の形成量、および、エタノールのような不要な溶媒の蒸発を最小化するための工程である(すなわちナノ製造)。工程3は、触媒のMEKPを用いて適切に混合することにより、確実に均一に分布および分散させ、さらに微小な気泡も生じさせないことである。
[0544]ポリエステル樹脂中のナノ材料の分散は、困難である。ポリエステル樹脂が大きい容器からそれより小さいカップに注がれるときに、気泡が形成される可能性がある。従って少なくとも20分間サンプルを真空にした。
[0545]必要量のグラフェンを均一に分散させるためだけでなく、強化物質として適切な媒体として、DMAC溶液が用いられた。2種の異なる超音波処理方法、すなわちチップ超音波発生装置と槽を用いる超音波処理装置を利用してDMAC溶液中にGNSを分散させた。チップまたは局所的な超音波処理装置を、5分間の持続時間を含む等しいインターバルで、25に設定された振幅で4回使用した。残りの12時間の超音波処理プロセスには、熱い水浴を用いる超音波発生装置を水温を30℃に設定して連続的に用いた。全てのハイブリッドの場合において、DMACの質量分率を2.5%に固定して設定し、一方でGIIIグラフェンの質量分率をそれぞれ0.002%および0.02%に固定して設定した。GIFグラフェンの質量分率の設定は、0.002%のみとした。ポリエステルナノ樹脂の場合において、同じ超音波処理技術を用いた0.002%の質量分率のGIIIにエタノール1グラムを添加した。第二の工程において、グラフェン−DMAC混合物を必要量のポリエステル樹脂に添加し、これを続いて手動でゆっくり約15分間撹拌した。樹脂系中でグラフェン−DMACを均一に混合するために、カップを約45度の角度に維持し、混合装置としてガラス棒を使用した。せん断混合しないで時計回り方向で約50回撹拌し、このプロセスを少なくとも8回繰り返し、続いて反時計回りに50回撹拌してもよい。この混合物をガラス棒とカップの壁との間でせん断すると、気泡が生じる可能性がある。グラフェン−エタノールの場合において、この混合物を、予めサンプルカップ内に入れたポリエステルの上に注いだ。手動で極めてゆっくり中心を回転させて混合しながら冷たい空気の送風技術を用いてエタノール溶媒を蒸発させた。この混合物の質量をモニターしながら完全にエタノールを蒸発させた。
[0546]続いてこの十分に分散された混合物に触媒MEKPを添加してもよい。A部分とB部分の混合は、手動で極めてゆっくり撹拌することによってさらに追加の10分間継続しなければならず、ここで撹拌は、前述したように時計回りに50回の回転(4回)、および、反時計回りに50回の回転(4回)の順番で8セット行われた。混合後、この混合物をよく研磨されたアルミニウム製の型に注入し、140Fで2時間硬化した。
[0547]試料名の説明
[0548]最初の2文字「PE」は、ファイバー・ガラス・ハワイから購入したポリエステルを意味する。容器上の表示によれば、この樹脂系は、オルトフタル酸ラミネートポリエステル樹脂であると証明されている。一般的に、「PE」の後の最初の文字は、を強化物質として溶媒のタイプ(この場合はDMAC溶液)を示す。溶媒の名称が示されていない場合、溶媒としてエタノールが用いられたが、この混合物から蒸発させた。DMACの後の最初の数字は製造されたプレートの数を意味し、それに続く数字は、その溶媒の質量パーセンテージを示す(すなわち例えば2.5は、2.5質量%のDMAC溶液が用いられることと同義である)。このハイブリッド研究において、DMACの質量パーセンテージを2.5%に固定したままにしたことに留意することが重要である考察された全てのケースにおいて。最後の文字は、例えばGIIIまたはGIFなどの様々なタイプのGNSを指定する。文字Gの後の残りの数字は、用いられた様々なタイプのGNSの質量パーセンテージを示す(すなわち例えば002は、0.002%と同義である)。
[0549]2種の異なるタイプのGNS
[0550]様々な機械特性を改善するためにマトリックス系に包含させる強化物質としてグラフェンナノシート(すなわちGNS)を用いた。GNSの機械特性(すなわち引張強度、破損ひずみおよび弾性係数)は、マトリックス(この場合はポリエステル)から繊維への荷重伝達メカニズムを向上させることができる。GNSの分散が不適切な場合、凝集を引き起こす可能性があり、これが最終的に所定の機械特性を劣化させる。
[0551]この章では、ポリエステルの機械特性を強化するための溶媒としてDMAC溶液を用い、2種の異なるタイプのグラフェン(すなわち2種の異なる質量パーセンテージのGNSIII−GIII、および、1質量パーセンテージのRGNSI=GIF)を利用したハイブリッドプロセスについて集中的に論じる。ポリエステル−GIIIグラフェンナノ樹脂において、グラフェンの質量パーセンテージを0.002%に固定したままにし、溶媒としてエタノールを用い、混合前にエタノールを完全に蒸発させた。GIIIおよびGIFとのハイブリッドポリエステル−DMACは、GIIIを異なる質量パーセンテージで、すなわち0.002%および0.02%で固定して用い、GIFを0.002%のみで用い、DMACの質量パーセンテージを2.5%に固定して用いた。比較する目的で、未加工のポリエステル樹脂も製造した。
[0552]応力−ひずみ実験の結果
[0553]140Fで2時間硬化した5種のポリエステルナノ樹脂およびハイブリッドのケース;すなわち、ポリエステル−未加工、PE−GIIIナノ樹脂、および、3種の異なるタイプのグラフェン2種とのハイブリッドPE−DMACの引張応力−ひずみ実験のプロットを以下で考察した。未加工のポリエステル樹脂の応力−ひずみプロットから、破壊応力までほぼ非線形の挙動が示され、破断面は滑らかで荷重方向に垂直であったことから、脆性の破断であった(図75aを参照)。またGIIIタイプのグラフェンのみを包含するポリエステルナノ樹脂試料も、破壊応力まで未加工のポリエステルと類似の非線形の挙動を示し、程度の差はあるが同一の破断面であった。図75bに、ナノ樹脂PE−GIIIに関する典型的な応力−ひずみ曲線を示す。この0.002%のGIIIグラフェンを含み、溶媒としてエタノールを用いたポリエステル−GIIIナノ樹脂は、極限引張強度において最大の強化を示した(約11%の改善)。残りのハイブリッド試料も類似の応力−ひずみ曲線を示したが、強度の改善の程度はこのポリエステルナノ樹脂よりも低かった。
[0554]図76aおよび76bは、未加工のポリエステルベースのプレート、PE−GIIIナノ樹脂、および、3種のハイブリッドのPE−DMAC−グラフェンの極限引張強度および破損ひずみそれぞれの比較を示す。結果から、最大の極限引張強度は、ナノ樹脂濃度が0.002%のポリエステル−GIIIで起った(約11%の改善)ことが示される。0.002%濃度のGIIIおよびGIFとのハイブリッドポリエステル−DMACは、それぞれおよそ5%および3%でわずかな強度の改善を示した。0.02%のGIIIとのハイブリッドサンプルでは、極限引張強度が4%低下した(図76aを参照)。最大の破損ひずみは、2種の濃度0.002%のGIIIおよびGIFとのハイブリッドの場合で起った(それぞれ76%および71%の改善)。その他のケースでも同様に破損ひずみが強化された(図76bを参照)。全てのケースにおいて弾性係数は低からそれより高く低下し、最大の低下(43%)は濃度0.02%のGIIIとのハイブリッドケースで起った(図76cを参照)。
[0555]荷重−たわみ実験の結果
[0556]破壊靱性またはクラック発生に対する材料の耐性は、荷重−荷重点変位曲線の下の面積に関するエネルギーを必要とする(図77を参照)。図77aは、未加工のポリエステル樹脂系の場合の典型的な荷重−荷重点変位を示し、一方で図77bおよび77cは、PE−GIIIナノ樹脂およびPE−DMAC−GIFハイブリッドのケースの類似のプロットを示す。残りのその他のケースでも類似の荷重−荷重点変位曲線が得られた。全ての荷重−荷重点変位曲線は、破壊点まで直線的な挙動を示した。全てのケースでクロスヘッドの移動速度を0.25mm/分に維持した。
[0557]図78に破壊靱性の試験結果の比較を示すが、ここで未加工のポリエステル、PE−GIIIナノ樹脂、および、3種のハイブリッドのPE−DMAC−グラフェンに対するGICが示される。この比較プロットから、最大のGIC(66%の改善)が、濃度0.002%におけるハイブリッドPE−DMAC−GIIIで起ったことが示される。このハイブリッドケースについて前述したように、極限引張強度は約5%強化され、破損ひずみは約76%改善され、弾性係数は約29%低下した。またその他のハイブリッドのケースも、約55%のGICの改善を示した。ポリエステル−GIIIナノ樹脂は、なかでも最も小さい改善を示した(約28%)(図78を参照)。
[0558]以下の表は、未加工のポリエステル、PE−GIIIナノ樹脂、および、3種のハイブリッドのPE−DMA−グラフェンナノ樹脂材料の極限引張強度、破損ひずみ、弾性係数および破壊靱性についての全体的な比較を示す。これらの結果から、濃度0.002%でGIIIを含むPE−GIIIナノ樹脂において極限引張強度(約11%)および破壊靱性(約28%)が同時に改善されたことが示された。このケースにおいて、破損ひずみも約28%増加しが、弾性係数はわずかに低下した(約7%)。破壊靱性における最大の改善(約66%)は、濃度0.002%の官能化されていないグラフェンで作製されたハイブリッドPE−DMAC−GIIIで起ったが、極限引張強度は約5%しか増加しなかった。またその他のケースでも極限引張強度および破壊靱性における同時の強化が示された(表を参照)。強化のパーセンテージは、括弧内に実際の値の隣に記載される。全てのケースで、破損ひずみに関して有意な改善が示された(表18):
[0559]要約
[0560]極限引張強度および破壊靱性同時の改善に重点を置いてポリエステルの機械特性を強化するために、2種の異なる強化物質;すなわち2種の異なるグラフェンタイプ(すなわちGNSIII=GIIIおよびRGNSI−GIF)を溶媒および物質としてDMACと組み合わせて使用した。まず、ポリエステルナノ樹脂プレートを、溶媒として且つグラフェンを分散させるのに適切な媒体としてエタノールを用いてGIIIグラフェンで作製し、残りの3種のハイブリッドのポリエステルプレートを、溶媒として且つ物質としてDMACを用いて2種の異なるタイプのグラフェンから作製した。PE−GIIIナノ樹脂、加えてハイブリッドPE−DMAc−グラフェンは、極限引張強度、破損ひずみおよび破壊靱性の形態の機械特性を強化することができることが示された(表1を参照)。
[0561]実験上の発見から、PE−GIIIナノ樹脂は約11%の最大の極限引張強度の改善を示し、同時に破壊靱性も約28%の改善を示すことがわかった。一方で濃度0.002%のハイブリッドPE−DMAC−GIIIは、約66%の最大の破壊靱性を示し、同時に極限引張強度も約5%改善した。また濃度0.002%のハイブリッドPE−DMAC−GIFもPE−DMAC−GIIIの結果と類似の結果を示し、極限引張強度で3%の強化および破壊靱性で58%の改善を示した。濃度0.02%のGIIIの濃度において、極限引張強度はわずかに低下したが、破壊靱性は約54%増加した。全てのハイブリッドポリエステルの場合において弾性係数は低から高へ減少し、の最小の低下(約7%)はポリエステルナノ樹脂で起こった。

Claims (89)

  1. 内部に強化材が分散された樹脂を含む組成物であって:
    ここで該強化材は、グラフェン本体、ポリアミド酸、カーボンナノチューブ、強化溶媒、またはそれらのあらゆる組み合わせを含み、および、
    該強化材は、組成物の総質量に基づき約0.001質量%〜約10質量%で存在する、上記組成物。
  2. 前記強化材が、樹脂内に実質的に均一に分散される、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記樹脂が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記樹脂が、ビニルエステルを含む、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記強化材が、カーボンナノチューブを含む、請求項4に記載の組成物。
  6. ジメチルアセトアミドをさらに含む、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記樹脂が、ポリエステルを含む、請求項3に記載の組成物。
  8. ジメチルアセトアミドをさらに含む、請求項7に記載の組成物。
  9. 前記強化材が、グラフェンを含む、請求項7に記載の組成物。
  10. 前記樹脂が、エポキシを含む、請求項3に記載の組成物。
  11. 前記強化材が、グラフェン、ポリアミド酸、アセトアミド、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記強化材が、ジメチルアセトアミドを含む、請求項10に記載の組成物。
  13. 前記樹脂が、熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
  14. 前記樹脂が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
  15. 前記強化材が、グラフェン本体を含む、請求項1に記載の組成物。
  16. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、約0.1nm〜約100nmの範囲の断面寸法を有する、請求項15に記載の組成物。
  17. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、約1nm〜約10nmの範囲の断面寸法を有する、請求項15に記載の組成物。
  18. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、約1,000〜約20,000の範囲のアスペクト比を有する、請求項15に記載の組成物。
  19. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、1〜約100の層を含む、請求項15に記載の組成物。
  20. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項15に記載の組成物。
  21. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、カルボキシル基を含む、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記樹脂が硬化される、請求項1に記載の組成物。
  23. 前記樹脂が未硬化である、請求項1に記載の組成物。
  24. 樹脂内に配置された繊維をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
  25. 前記繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項24に記載の組成物。
  26. 前記強化材が、組成物の総質量に基づき約0.01〜約0.1質量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
  27. 前記強化材が、組成物の総質量に基づき約0.05〜約0.07質量%で存在する、請求項26に記載の組成物。
  28. 強化材を包含させることによって、組成物の引張強度、破損ひずみ、破壊靱性、限界応力拡大係数、限界ひずみエネルギー解放率、減衰定数または弾性係数の少なくとも1種が、実質的に強化材を含まない樹脂と比較して約1%〜約80%変更される、請求項22に記載の組成物。
  29. 強化材を包含させることによって、組成物の引張強度、破損ひずみ、破壊靱性、限界応力拡大係数、限界ひずみエネルギー解放率、減衰定数または弾性係数の少なくとも1種が、実質的に強化材を含まない樹脂と比較して約10%〜約600%変更される、請求項22に記載の組成物。
  30. 前記強化材を包含させることによって、組成物の引張強度、破損ひずみ、破壊靱性、限界応力拡大係数、限界ひずみエネルギー解放率、減衰定数または弾性係数の少なくとも1種が、炭素繊維を含む樹脂(ここで該樹脂は実質的に強化材を含まない)と比較して約10%〜約250%変更される、請求項25に記載の組成物。
  31. 前記強化溶媒が、揮発性のプロトン性溶媒、酢酸、水、非プロトン性溶媒、非極性溶媒、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
  32. 前記揮発性のプロトン性溶媒が、ギ酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、酢酸、水、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項31に記載の組成物。
  33. 前記非プロトン性溶媒が、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、n−メチルピロリドン、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項31に記載の組成物。
  34. 前記非極性溶媒が、トルエン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、クロロホルム、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項31に記載の組成物。
  35. 前記強化材が、ポリアミド酸を含む、請求項1に記載の組成物。
  36. 前記ポリアミド酸が、ピロメリト酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−オキシジアニリン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物−4,4’−オキシジアニリン、4,4’−オキシジフタル酸無水物−4,4’−オキシジアニリン、4,4’−ビスフェノールA二無水物−4,4’−オキシジアニリン、エチレングリコールビス(無水トリメリト酸)−4,4’−オキシジアニリン、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項35に記載の組成物。
  37. 前記強化材が、少なくとも2種の樹脂の混合物内に分散される、請求項1に記載の組成物。
  38. (a)グラフェン本体、(b)ポリアミド酸、(c)アミド、または(d)カーボンナノチューブのうち少なくとも1種を含む強化材を少なくとも1種の樹脂と接触させることにより、強化材が前駆混合物の約0.001%〜約1.0質量%で存在する前駆混合物を形成することを含む、組成物の製造方法。
  39. 前記少なくとも1種の樹脂が、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項38に記載の方法。
  40. 前記強化材を第一の溶媒と合わせることをさらに含む、請求項38に記載の方法。
  41. 第一の溶媒が、アセトアミド、アルコールまたはその両方を含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記アセトアミドが、N,N−二置換アミドを含む、請求項41に記載の方法。
  43. 前記N,N−二置換アミドが、ジメチルアセトアミドを含む、請求項42に記載の方法。
  44. 第一の溶媒が、アルコールを含む、請求項40に記載の方法。
  45. 第一の溶媒が、前駆混合物の質量の約0.1%〜約10%で存在する、請求項40に記載の方法。
  46. 第一の溶媒が、前駆混合物の質量の約0.5%〜約1%で存在する、請求項45に記載の方法。
  47. 前記強化材が、混合、超音波処理またはそれらの組み合わせによって第一の溶媒、樹脂またはその両方に分散される、請求項40に記載の方法。
  48. 前記強化材が、前駆混合物の約0.001%〜約0.1質量%で存在するグラフェン本体を含む、請求項38に記載の方法。
  49. 前記グラフェン本体の少なくとも1種が、約0.1nm〜約100nmの範囲の断面寸法を有する、請求項48に記載の方法。
  50. 前記強化材が、ポリアミド酸を含む、請求項38に記載の方法。
  51. 前記強化材が、N,N−二置換アミドを含む、請求項38に記載の方法。
  52. N,N−二置換アミドが、ジメチルアセトアミドを含む、請求項51に記載の方法。
  53. 第二の溶媒の添加をさらに含む、請求項40に記載の方法。
  54. 前記第二の溶媒が、メチルエチルケトン、過酸化ジアリール、過酸化ジアルキル、過酸化ケトン、過酸エステル、過酸化ジアシル、ヒドロペルオキシド、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項53に記載の方法。
  55. 前記前駆混合物を硬化することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
  56. 前記硬化が、約24時間未満で行われる、請求項55に記載の方法。
  57. 前記硬化が、約5時間未満で行われる、請求項56に記載の方法。
  58. 前記硬化が、約30分未満で行われる、請求項57に記載の方法。
  59. 前記硬化が、前駆混合物を第一の温度に第一の期間晒し、さらに第二の温度に第二の期間晒すことを含む、請求項55に記載の方法。
  60. 前記第一の温度と第二の温度とが、互いに少なくとも5℃異なる、請求項59に記載の方法。
  61. 前記第一の温度と第二の温度とが、互いに少なくとも10℃異なる、請求項60に記載の方法。
  62. 前記第一の期間と第二の期間とが、互いに約1分〜約20時間異なる、請求項59に記載の方法。
  63. 前記第一の期間と第二の期間とが、互いに約60分〜約10時間異なる、請求項62に記載の方法。
  64. 前記硬化が、オートクレーブ、対流式オーブン、またはその両方で行われる、請求項55に記載の方法。
  65. 前記硬化が、オートクレーブで行われる、請求項64に記載の方法。
  66. 前記硬化が、対流式オーブンで行われる、請求項64に記載の方法。
  67. 強化樹脂組成物の合成方法であって、該方法は:
    エポキシ、ポリエステルおよびビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を選択すること;
    グラフェン、カーボンナノチューブ、ポリアミド酸およびアミドからなる群より選択される少なくとも1種の強化材料を選択すること;および、
    強化樹脂組成物の約0001%〜約1.0質量%で強化材が存在する強化樹脂組成物が形成されるように、少なくとも1種の強化材料を少なくとも1種の樹脂に分散させること、
    を含む、上記方法。
  68. 前記樹脂が、ビニルエステルを含む、請求項67に記載の方法。
  69. 前記樹脂が、エポキシを含む、請求項67に記載の方法。
  70. 前記樹脂が、ポリエステルを含む、請求項67に記載の方法。
  71. 前記強化材料が、グラフェン、ポリアミド酸、および、二置換アミドからなる群より選択される、請求項67に記載の方法。
  72. 前記二置換アミドが、N,N−二置換アミドを含む、請求項72に記載の方法。
  73. 前記N,N−二置換アミドが、ジメチルアセトアミドを含む、請求項72に記載の方法、
  74. 使用者が、選択された少なくとも1種の樹脂、選択された少なくとも1種の強化材料またはその両方を含む強化樹脂組成物の1種またはそれより多くの機械特性の概算に基づき、少なくとも1種の樹脂、少なくとも1種の強化材料またはその両方を選択する、請求項67に記載の方法。
  75. 前記概算が、コンピューターで読取り可能な媒体に含まれる、請求項74に記載の方法。
  76. 前記強化樹脂組成物を硬化することをさらに含む、請求項67に記載の方法。
  77. 硬化されたナノコンポジット材料であって、該材料は:
    硬化された樹脂;
    硬化されたナノコンポジット材料中に分散されるナノ粒子、
    を含み、ここでナノ粒子の質量分率は、硬化されたナノコンポジット樹脂の総質量に基づいて約0.0005質量%から約1質量%未満である、上記材料。
  78. 前記ナノ粒子の質量分率が、硬化されたナノコンポジット樹脂の総質量に基づいて約0.0005質量%から約0.1質量%未満である、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット材料。
  79. 前記硬化された樹脂が、以下の樹脂:ビニルエステル、ポリエステル、エポキシ、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはそれらのあらゆる組み合わせのうち1種またはそれより多くを含む、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット材料。
  80. 前記硬化された樹脂が、以下の樹脂;ビニルエステル、ポリエステル、エポキシのうち1種またはそれより多くを含む、請求項79に記載の硬化された樹脂。
  81. 前記ナノ粒子が、以下のナノ粒子:SiC、TiO、Y、炭素、Au、Ag、Cu、Ge、Pt、Fe、CoPt、PbS、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、PbSe、ZnSe、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、CaCO、酸化第二鉄、またはそれらのあらゆる組み合わせのうち1種またはそれより多くを含む、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
  82. 前記ナノ粒子が、SiC、TiO、Y、炭素、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む、請求項81に記載の硬化されたナノコンポジット。
  83. 前記炭素が、官能化したナノチューブ、官能化されていないナノチューブ、官能化したグラフェン、官能化されていないグラフェン、還元グラフェン、ナノダイヤモンド、または、それらのあらゆる組み合わせを含む、請求項81に記載の硬化されたナノコンポジット。
  84. 前記硬化されたナノコンポジットが、ナノ粒子なしで硬化された樹脂の引張強度よりも25%〜600%高い引張強度を有することを特徴とする、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
  85. 前記硬化されたナノコンポジットが、ナノ粒子なしで硬化された樹脂の靱性よりも少なくとも50%高い靱性を有することを特徴とする、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
  86. 前記硬化されたナノコンポジットが、ナノ粒子なしで硬化された樹脂の弾性率よりも50%〜600%高い弾性率を有することを特徴とする、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
  87. 前記硬化されたナノコンポジットが、ナノ粒子なしで硬化された樹脂のひずみエネルギー解放率よりも50%〜600%高いひずみエネルギー解放率を有することを特徴とする、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
  88. 前記硬化されたナノコンポジットが、ナノ粒子なしで硬化された樹脂の破損ひずみよりも50%〜600%高い破損ひずみを有することを特徴とする、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
  89. 前記硬化されたナノコンポジットが、ナノ粒子なしで硬化された樹脂の減衰定数よりも50%〜600%高い減衰定数を有することを特徴とする、請求項77に記載の硬化されたナノコンポジット。
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