JP2013246211A - ラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】異物付着故障の削減と配向不良故障の削減を行うことができるラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ウェブWのラビングローラ72に接する面の裏側をエアプレス装置50のノズル50AからウェブW幅方向に噴出されるエアの圧力によりウェブWをラビングローラ72に押圧させる工程では、ウェブW幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板52が設けられているエアプレス装置50を用いてラビング処理するようにする。
【選択図】図6

Description

本発明はラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法に関し、特に、液晶分子を配向させるための液晶配向膜の形成に好適なラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法に関する。
近年、光学フィルムの需要が増加しつつある。この光学フィルムとしては、液晶セルに位相差板として使用される光学補償フィルムや、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の各種の機能を有するフィルムが代表的である。
このような光学フィルムの製造方法の代表的なものとして、帯状可撓性の支持体(以下、「ウェブ」と言う)の表面にラビング処理を施し、次いで、ウェブの表面に各種塗布装置を使用して塗布液を塗布し、これを乾燥させ、その後に硬化させて各種組成の塗布膜(機能性膜)を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
このラビング処理は、液晶表示素子における液晶分子の配向処理方法の代表的なものであり、ウェブの表面に配向膜を形成し、この配向膜の表面をラビング布が表面に設けられた回転駆動するラビングローラにより一方向にラビングする方法が一般的である。
そして、特許文献2は、ウェブの裏面側より流体圧を印加してウェブをラビングローラに押圧させることが開示されている。これにより、ウェブにしわが生じることなく均一なラビングができるので、配向不良に起因する表面の欠陥を大幅に低減させることができる。
特開平9−73081号公報 特開2006−267919号公報
ところで、特許文献1や特許文献2のラビング処理に用いられるラビングローラは、ラビングによりウェブ表面から削り取られた微細な屑が付着したり、消耗によりラビング布の毛足繊維が切断又は脱離したりするという問題がある。
そして、このような微細な屑等が多くなると、光学フィルムは異物付着故障が増加し、ラビング布の毛足繊維が消耗すると、光学フィルムは配向不良故障が増加してしまうという問題が生じる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、異物付着故障の削減と配向不良故障の削減を行うことができるラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、帯状可撓性の支持体を連続走行させる工程と、前記支持体をラビング布が表面に設けられた回転駆動するラビングローラに巻き掛ける工程と、前記支持体の前記ラビングローラに接する面の裏側をエアプレス装置のノズルから前記支持体幅方向に噴出されるエアの圧力により前記支持体を前記ラビングローラに押圧させる工程と、を有し、前記エアプレス装置は、前記支持体幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板を有する。
従来では、エアの圧力は支持体の両端部側のエア圧力不足にあわせて支持体の中央部は過度のエア圧力を加える必要があったため、支持体の中央部のラビング布は消耗しやすかった。ラビング布が消耗することで、光学フィルムは配向不良故障が増加していた。また、支持体の中央部の過度のエア圧力により異物が発生しやすくなり、エア圧力の小さい支持体の両端部に異物やラビング布の切断又は脱離した毛足繊維が集まりやすくなることで、支持体の両端部で異物付着故障が増加していた。
本発明によれば、エアプレス装置の圧損板を支持体幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板とすることで、ノズルから噴出されるエアの圧力を支持体幅方向において平準化することができる。これにより、支持体に均一にラビングできるようになるので、ラビング布の毛足繊維が消耗しにくくなるとともに異物の発生を抑えることができる。したがって、本発明により、異物付着故障の削減と配向不良故障の削減を行うことができる。
本発明において、前記エアプレス装置は、前記支持体幅方向の2つのノズルを有することが好ましい。
エアプレス装置に支持体幅方向の2つのノズルを有することで、エアの圧力を支持体幅方向において更に平準化することができる。
本発明において、前記エアプレス装置にはエアの圧力を平準化するチャンバーが取り付けられており、前記チャンバーにエアが供給されて前記圧力が平準化されたエアを前記エアプレス装置に供給することが好ましい。また、前記エアプレス装置内部にはエアの圧力を平準化する多孔管が取り付けられており、前記多孔管にエアが供給されて前記圧力が平準化されたエアを前記ノズルに供給することが好ましい。
これらによってもエアの圧力を支持体幅方向において平準化することができるので、異物付着故障の削減と配向不良故障の削減を行うことができる。
また、本発明は、前記ラビング処理方法によりラビング処理を施し、ラビング処理後の前記支持体の表面に塗布手段によって塗布液を塗布することにより機能性膜を形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法を提供する。
本発明によれば、均一なラビングができることで、異物付着故障と配向不良故障を大幅に低減させることができるので、品質の良好な光学フィルムを得ることができる。
本発明に係るラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法によれば、異物付着故障と配向不良故障を大幅に低減させることができる。
本発明に係るラビング方法及び光学フィルムの製造方法が適用される光学フィルムの製造ラインを示す説明図 エアプレス装置とラビング処理装置との位置関係を示す要部拡大図 エアプレス装置の圧損板の例を示す図 エアプレス装置のノズルの例を示す図 他のエアプレス装置の構成を示す図 実験1に用いたエアプレス装置の圧損板を示す図 実験1の結果を示すグラフ 実験2のエアプレス装置の条件と結果を示すグラフ
以下、添付図面に従って本発明に係るラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。図1は、本発明に係るラビング処理方法及び光学フィルムの製造方法が適用される光学フィルムの製造ラインを示す説明図である。
光学フィルムの製造ライン10は、図1に示されるように、送り出し機66から予め配向膜形成用のポリマー層が形成された透明支持体であるウェブWが送り出されるようになっている。ウェブWはガイドローラ68によってガイドされて、ラビング処理装置70(ラビング手段)に送りこまれるようになっている。ラビングローラ72は、ポリマー層にラビング処理を施すべく設けられている。
ラビングローラ72の下流には除塵機74が設けられており、ウェブWの表面に付着した塵を取り除くことができるようになっている。除塵機74の下流にはグラビア塗布装置11が設けられており、ディスコネマティック液晶を含む塗布液がウェブWに塗布できるようになっている。
この下流には、乾燥ゾーン76、加熱ゾーン78が順次設けられており、ウェブW上に液晶層が形成できるようになっている。更に、この下流には紫外線ランプ80が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーを形成できるようになっている。そして、この下流に設けられた巻取り機82により、ポリマーが形成されたウェブWが巻き取られるようになっている。
ラビング処理装置70は、ポリマー層にラビング処理を施すための装置であり、本例ではラビングローラ72による1段のローラ構成となっている。なお、ラビング処理装置70として、複数段のローラ構成も採用できる。
ラビング処理装置70は、外周表面にベルベット等の植毛布からなるラビング用の布が巻付けられたラビングローラ72を矢印F方向に回転駆動させ、たとえば、10〜1000rpm程度まで回転速度を制御することができるようになっている。ラビングローラ72の形状は、たとえば、外径が50〜500mmであり、長さが、ラビング角度をつけた状態でもウェブWの幅より若干長くなるローラ状にできる。また、ラビング処理装置70は、任意のラビング角度に調整できるように、ウェブWの走行方向に対して水平面で回転自在とできるようになっている。
ラビングローラ72の上方には、図示しないローラステージが設けられており、このローラステージの下面にスプリングを介してバックアップローラ86、88が、ラビングローラ72と干渉しない位置に、回動自在に取り付けられている。バックアップローラ86、88には、ウェブWのテンションを検出する張力検出器(不図示)が備えられており、ラビング時のテンションの管理を行うことができるようになっている。
更に、バックアップローラ86、88は上下の調整が可能となっており、ローラを上下に移動させてウェブWのラビングローラ72へのラップ角を調整することができるようになっている。
また、ラビングローラ72の上方にはエアプレス装置50が設けられており、ウェブWの裏面側に気体(エア、窒素ガス等)を噴き付け、ウェブWをラビングローラ72へ押圧させることができるようになっている。
図2は、エアプレス装置50とラビング処理装置70との位置関係を示す要部拡大図であり、(A)は、正面図であり、(B)は、左側面図である。
図2に示されるように、エアプレス装置50は、ウェブWの幅と略同一長さ(所定のラビング角度をつけた状態のウェブWの幅も含む)であり、噴出し口であるノズル50Aが、ラビングローラ72の軸心と平行になるように配されている。また、エアプレス装置50には、圧損板52が備えられている。
この気体噴き付け位置は、ウェブWのラップ角を二等分する中心線上である。なお、エアプレス装置50へ気体を供給するエア供給手段(ブロワ又はエアコンプレッサ、等)の図示は省略してある。
図3は、エアプレス装置50に備えられた圧損板52を示す図であり、圧損板52を上面(又は下面)から見た図である。
従来の圧損板は、ウェブWの幅方向において開口率の等しい圧損板が用いられていた(図6(a)参照)。そして、従来の圧損板を用いたエアプレス装置では、ウェブWの両端部側においてエア圧力の不足が生じていた。したがって、従来の圧損板を用いたエアプレス装置では、エアの圧力はウェブWの両端部側のエア圧力不足にあわせてウェブWの中央部は過度のエア圧力を加える必要があったため、ウェブWの中央部のラビングローラ72のラビング布は消耗しやすく、光学フィルムは配向不良故障が増加していた。また、ウェブWの中央部の過度のエア圧力により異物が発生しやすくなり、エア圧力の小さいウェブWの両端部に異物やラビング布の切断又は脱離した毛足繊維が集まりやすくなることで、支持体の両端部で異物付着故障が増加していた。
そこで、図3に示すように、エアプレス装置の圧損板をウェブWの幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板とした。なお、中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板の開口部53の形状は、特に限定されず、様々な形状を取り得る。なお、本実施形態において、中央部とは、ウェブWの全幅に対し、中心から−40〜+40%幅の範囲であり、端部とは、ウェブWの全幅に対しウェブWの端部から10%の部分をいう。
図3は、本発明に掛かるエアプレス装置50に備えられた圧損板52の例を示したものである。図3(a)と図3(c)の開口部53は3段階で開口率を中央部より端部のほうが高いようにしたものであり、図3(b)は中央部の開口率をゼロ(開口部なし)とし、端部に開口部53を備えるようにしたものであり、図3(d)は連続的に中央部から端部に行くに伴って開口率を高くしたものである。
したがって、エアプレス装置の圧損板をウェブWの幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板としたことで、ウェブWの裏面にウェブWの幅方向に均一な圧力でエアを噴き付けて、ウェブWをラビングローラ72へ押圧させることができるようになる。
以上のようにしてノズル50Aから噴出されるエアの圧力をウェブWの幅方向において平準化したことにより、ウェブWに均一にラビングできるようになるので、ラビング布の毛足繊維が消耗しにくくなるとともに異物の発生を抑えることができる。したがって、異物付着故障の削減と配向不良故障の削減を行うことができる。
本実施形態において、エアプレス装置50は、図4に示すように、ウェブW幅方向の2つのノズルを有することが好ましい。エアプレス装置にウェブ幅方向の2つのノズルを有することで、エアの圧力を支持体幅方向において更に平準化することができる。なお、2つのノズルは、エアプレス装置50に2つのノズル50A,50Aが形成されていれば良く、様々な態様を取り得る。
また、本実施形態において、図5(a)に示すように、エアプレス装置50にはエアの圧力を平準化するチャンバー56が取り付けられおり、チャンバー56にエアが供給されることで圧力が平準化されたエアをエアプレス装置50に供給することが好ましい。また、本実施形態において、エアプレス装置50内部にはエアの圧力を平準化する多孔管58が取り付けられおり、多孔管58にエアが供給されることで圧力が平準化されたエアをノズルに供給することが好ましい。これらによってもエアの圧力をウェブW幅方向において平準化することができるので、異物付着故障の削減と配向不良故障の削減を行うことができる。
次に、ラビング処理装置70の下流の構成について説明する。
除塵機74としては公知の各種タイプのものが採用できる。たとえば、静電除塵した圧縮エア(窒素ガス)をウェブWの表面に吹き付け、ウェブWの表面に付着した塵を取り除く構成のものが採用できる。
グラビア塗布装置11は、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18でガイドされて走行するウェブWに対して、回転駆動されるグラビアローラ12で塗布液を塗布する装置である。上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、ウェブWがグラビアローラ12に所定の圧力で押し付けられながら走行するように配置されている。
グラビアローラ12、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、ウェブWの幅と略同一の長さを有する。
このうち、グラビアローラ12の直径は20〜250mmであることが好ましい。グラビアローラ12の直径をこのような範囲とすることにより、ウェブWの振動を抑制できる効果が得られる。上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18の直径の制限は特に無いが、直径が60mm以上であることが好ましい。上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18の直径をこのような範囲とすることにより、ウェブWの振動を抑制できる効果が得られる。
グラビアローラ12は、図1の矢印に示されるように回転駆動される。この回転方向は、ウェブWの走行方向に対して逆転方向となる。なお、図1とは逆の順転の駆動による塗布も、塗布条件(たとえば、ドクターブレードの設置)によっては採用できる。
グラビアローラ12の駆動方法は、インバータモータによるダイレクト駆動(軸直結)であるが、各種モータと減速機(ギアヘッド)との組み合わせ、各種モータよりタイミングベルト等の巻き掛け伝達手段による方法であってもよい。
グラビアローラ12表面のセル(cell)形状は、公知のピラミッド型、格子型及び斜線型等のいずれであってもよい。すなわち、塗布速度、塗布液の粘度、塗布膜厚等により適宜のセルを選択すればよい。
グラビアローラ12の下方には、液受けパン14が設けられており、この液受けパン14には塗布液が満たされている。そして、グラビアローラ12の約下半分は塗布液に浸漬されている。この構成により、グラビアローラ12表面のセルに塗布液が供給されることとなる。
塗布前に塗布液の余剰分を掻き落とすべく、グラビアローラ12の約10時に位置にその先端が接するようにドクターブレード15が設置されている。このドクターブレード15は、基端部の回動中心15Aを中心として、図1の矢印方向に、図示しない付勢手段により付勢されている。
なお、塗布手段としてのグラビア塗布装置11は一例であり、これ以外の形式の塗布手段を採用してもよい。このような塗布手段としては、バーコータ、ロールコータ(トランスファロールコータ、リバースロールコータ等)、ダイコータ、エクストルージョンコータ、ファウンテンコータ、カーテンコータ、ディップコータ、スプレーコータ又はスライドホッパ等が採用できる。
グラビア塗布装置11の下流の、乾燥ゾーン76及び加熱ゾーン78としては、塗布層を乾燥させ、ウェブW上に液晶層が形成できるようになっているものであればよい。たとえば、図示のようにトンネル状の乾燥ゾーン76及び加熱ゾーン78とし、内部に乾燥手段及び加熱手段(ヒータや熱風発生機)を備えたものが採用できる。
紫外線ランプ80としては、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーを形成できるようになっているものであればよい。
紫外線ランプ80の下流に設けられた巻取り機82は、ポリマーが形成されたウェブWを巻き取ることができるようになっている。
本実施の形態において、光学フィルムの製造ライン10全体、特にグラビア塗布装置11は、クリーンルーム等の清浄な雰囲気に設置するとよい。その際、清浄度はクラス1000以下が好ましく、クラス100以下がより好ましく、クラス10以下が更に好ましい。
次に、光学フィルムを構成する各素材について説明する。
本発明に使用するウェブWとしては、光透過率が80%以上であるポリマーフィルムを用いることが好ましい。ポリマーフィルムとしては、外力により複屈折が発現しにくいものが好ましい。ポリマーの例には、セルロース系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー(たとえば、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア、ゼオネックス(いずれも、日本ゼオン(株)製))及びポリメチルメタクリレートが含まれる、セルロース系ポリマーが好ましく、セルロースエステルがより好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルが更に好ましい。
次に、ポリマーフィルムの表面処理について説明する。ポリマーフィルムを偏光板の透明保護膜として使用する場合、ポリマーフィルムを表面処理することが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理を実施する。酸処理又はアルカリ処理、すなわちポリマーフィルムに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
次に、配向膜について説明する。配向膜は、光学異方性層のディスコティック液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。疎水性基は光学異方性層のディスコティック液晶性分子と親和性があるため、疎水性基をポリビニルアルコールに導入することにより、ディスコティック液晶性分子を均一に配向させることができる。
図1に示される光学フィルムの製造ライン10を使用して各種の条件で光学フィルム(光学補償フィルム)の製造を行った。
トリアセチルセルロース(フジタック、富士写真フィルム(株)製、厚さ:80μm、幅:1340mm)の長尺状のウェブWの一方の側に、長鎖アルキル変性ポバール(MP−203、クラレ(株)製)5重量%の溶液を塗布し、90°Cで4分間乾燥させた後、ラビング処理を行って膜厚2.0μmの配向膜形成用樹脂層を形成した。
ウェブWの搬送速度は、24m/分とした。トリアセチルセルロースフィルムは、フィルム面内の直交する二方向の屈折率をnx,ny、厚さ方向の屈折率をnz、そしてフィルムの厚さをdとしたとき、(nx−ny)×d=16nm、{(nx−ny)/2−nz}×d=75nmであった。また上記配向膜形成用樹脂層の形成は、図1に示される光学フィルムの製造ライン10を用いて行った。
[実験1]
上記のウェブWが巻回された光学フィルムの製造ライン10の送り出し機66から、40m/分の搬送速度でウェブWを送り出し、ラビング処理装置70において、ウェブWを連続して40m/分で搬送しながら、樹脂層表面にラビング処理を施した。
ラビング処理は、ラビングローラ72のラップ角を8°、ラビングローラ72の外径を300mm、ラビングローラ72の回転数を500rpm、ラビング角度を4.5°、ウェブWの搬送張力290N/mの条件で行った。
ラビング処理の際のエアプレス装置50のノズル50AとウェブWの裏面との間隔(クリアランス)は、10mmに設定した。エアプレス装置50のノズル50Aの開口幅は、1mmである。
ここで、図6に示すエアプレス装置50の圧損板52を用いて実験を行った。図6(a)は従来用いられている圧損板であり、ウェブWの全幅に対し、開口率はウェブW幅方向に均一で19%であった。図6(b)は本発明に係る圧損板であり、ウェブWの全幅に対し、中央部の1050mm幅(全幅の70%)が6%の開口率、中央の両端から150mm幅(全幅の10%)が7%の開口率、その脇75mm幅(全幅の5%)が18.7%の開口率である圧損板を用いた。
図6(a)と図6(b)のエアプレス装置50からのエアの噴出圧を、以下の通り測定した。エアの噴出圧の測定は、ダミーのラビングローラ72に、先端がローラ表面と面一になるように埋め込んだ針(微細な円筒状)に印加される風圧を、針の背面に連通させたマノメータで読み取ることにより行った。
噴出圧の測定結果を図7に示す。この図7のグラフの横軸は、ウェブWの幅方向の測定位置であり、縦軸は、エアの噴出圧である。
図7から分かるように、エアプレス装置の圧損板をウェブWの幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板にすることで、ウェブWの裏面にウェブWの幅方向に均一な圧力でエアを噴き付けることができる。
[実験2]
更に、エアプレス装置50を図8の水準1〜20の条件にして実験を行った。水準1〜4は形状1(図3(a)に相当)の圧損板、水準5〜8は形状2(図3(b)に相当)の圧損板、水準9〜12は形状3(図3(c)に相当)の圧損板、水準13〜16は形状4(図3(d)に相当)の圧損板を用いて実験を行い、水準17〜20はエアプレス装置50の圧損板の無い状態で実験を行った。そして、水準3、4、7、8、15、16、19及び20では、図5(a)の圧力チャンバー56を設け、水準2、4、6、8、10、12、14、16、18及び20では、図5(b)の多孔管58を設けて実験を行った。また、この実験では、図4の2つのノズルを有するエアプレス装置を使用した。
得られた配向膜を有するウェブWを、連続して40m/分で搬送しながら、配向膜上に、ディスコティック化合物TE−8の(3)とTE−8の(5)の重量比で4:1の混合物に、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を上記混合物に対して1重量%添加した混合物の10重量%メチルエチルケトン溶液(塗布液)を、グラビア塗布装置11にて、塗布量5ml/mで塗布し、次いで、乾燥ゾーン76及び加熱ゾーン78を通過させた。
乾燥ゾーン76には0.1m/秒の風を送り、加熱ゾーン78は130°Cに調製した。ウェブWは、塗布後3秒後に乾燥ゾーン76に入り、更に3秒後に加熱ゾーン78に入った。ウェブWは加熱ゾーン78を約3分で通過した。
次いで、この配向膜及び液晶層が塗布されたウェブWを、連続して40m/分で搬送しながら、液晶層の表面に紫外線ランプ80により紫外線を照射した。すなわち、加熱ゾーン78を通過したウェブWに、紫外線ランプ80(出力:160W/cm、発光長:1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、液晶層を架橋させた。
更に、配向膜及び液晶層が形成されたウェブWは、検査装置により表面の光学特性が測定され、検査され、次いで、液晶層表面に保護フィルムがラミネート機(図示略)により積層され、巻取り機82により巻き取られ、光学補償フィルムが得られた。
水準1〜20で得られた光学補償フィルムのフィルム輝点欠陥の評価を行った。輝点欠陥の評価は以下の通り行った。
フィルムの長さ方向について、製膜巻取り時点から5mの部位、全長の1/4の部位、全長の1/2の部位、全長の3/4の部位および巻き最終端から5mの部位について、幅方向 10視野 合計50点について、それぞれ直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し二枚の偏光板の間に塗工フィルムを置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm当たりの直径に応じた輝点数をカウントし平均値を求めた。評価は、輝点個数が0.3個/cm未満のものを品質最も良好とし5点、輝点個数が0.3個/cm以上0.5個/cm未満のものを品質良好とし4点、0.5個/cm以上0.7個/cm未満のものを品質許容内とし3点、0.7個/cm〜1.0個/cm未満のものを品質許容限度とし2点、1.0個/cm以上のものを品質許容外とし1点とした。
評価結果を図8の表に示す。図8の結果から分かるように、ウェブ方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板が設けられているエアプレス装置を用いたものは、光学補償フィルムの品質が許容限度(評価2点以上)である。
10…光学フィルムの製造ライン、11…グラビア塗布装置、12…グラビアローラ、14…液受けパン、50…エアプレス装置、50A…ノズル、52…圧損板、53…開口部、56…チャンバー、58…多孔管、66…送り出し機、68…ガイドローラ、70…ラビング処理装置、72…ラビングローラ、74…除塵機、76…乾燥ゾーン、78…加熱ゾーン、80…紫外線ランプ、82…巻取り機、86、88…バックアップローラ、W…ウェブ

Claims (5)

  1. 帯状可撓性の支持体を連続走行させる工程と、
    前記支持体をラビング布が表面に設けられた回転駆動するラビングローラに巻き掛ける工程と、
    前記支持体の前記ラビングローラに接する面の裏側をエアプレス装置のノズルから前記支持体幅方向に噴出されるエアの圧力により前記支持体を前記ラビングローラに押圧させる工程と、を有し、
    前記エアプレス装置は、前記支持体幅方向において中央部より端部のほうが開口率の高い圧損板を有するラビング処理方法。
  2. 前記エアプレス装置は、前記支持体幅方向の2つのノズルを有する請求項1に記載のラビング処理方法。
  3. 前記エアプレス装置にはエアの圧力を平準化するチャンバーが取り付けられており、前記チャンバーにエアが供給されて前記圧力が平準化されたエアを前記エアプレス装置に供給する請求項1または2に記載のラビング処理方法。
  4. 前記エアプレス装置内部にはエアの圧力を平準化する多孔管が取り付けられており、前記多孔管にエアが供給されて前記圧力が平準化されたエアを前記ノズルに供給する請求項1から3の何れか1項に記載のラビング処理方法。
  5. 請求項1から4の何れか1項に記載のラビング処理方法によりラビング処理を施し、ラビング処理後の前記支持体の表面に塗布手段によって塗布液を塗布することにより機能性膜を形成する光学フィルムの製造方法。
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