JP2013245559A - スタータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられ、リングギヤ23と連係可能なピニオン機構70と、ピニオン機構70にリングギヤ23側へ向かう押圧力を付勢する第一電磁装置9と、モータ部3への通電および遮断を行う第二電磁装置120と、出力軸4、ピニオン機構70、第一電磁装置9および第二電磁装置120を内蔵するハウジングと、を備え、出力軸4と同軸上に第一電磁装置9を配置するとともに、第一電磁装置9と並列になるように第二電磁装置120を配置したことを特徴としている。
【選択図】図1
Description
第一電磁装置および第二電磁装置は、同軸上に直列に配置されているとともに、出力軸と並列に配置されている。したがって、従来技術のスタータは、出力軸の径方向外側において軸方向に大型化してしまうため、車両への取付スペースの確保が必要となり、レイアウト性が悪化するおそれがある。
また、第一電磁装置および第二電磁装置は、出力軸およびピニオン機構とともにハウジングに内蔵されるので、第一電磁装置および第二電磁装置とハウジングとの連結部分がハウジングの外部に露出することがない。これにより、各電磁装置はハウジングにて保護されるとともに、ハウジングの内部に水や塵埃が入り込むのを抑制できるので、電磁装置の耐衝撃性、防塵性および防水性に優れたスタータを得ることができる。
また、第一電磁装置および第二電磁装置は、出力軸およびピニオン機構とともにハウジングに内蔵されるので、第一電磁装置および第二電磁装置とハウジングとの連結部分がハウジングの外部に露出することがない。これにより、各電磁装置はハウジングにて保護されるとともに、ハウジングの内部に水や塵埃が入り込むのを抑制できるので、電磁装置の耐衝撃性、防塵性および防水性に優れたスタータを得ることができる。
図1は、本発明の実施形態におけるスタータ1の断面図である。なお、図1では、中心線より上側にスタータ1の静止状態を示し、下側にスタータ1のピニオンギヤ74とリングギヤ23とが噛合した状態を示している。
図1に示すように、スタータ1は、エンジン(不図示)の始動時に、エンジンのリングギヤ23と連係(噛合)し、エンジンの始動を行うのに必要な回転力を発生するものである。スタータ1は、モータ部3と、モータ部3の一方側(図1における左側)に連結されている出力軸4と、出力軸4上にスライド移動可能に設けられたクラッチ機構5およびピニオン機構70と、ピニオン機構70を軸方向に沿って移動させるための第一電磁装置9と、モータ部3への通電および遮断を行う第二電磁装置120と、を備えている。
ブラシ付直流モータ51は、略円筒状のモータヨーク53と、モータヨーク53の径方向内側に配置され、モータヨーク53に対して回転自在に設けられているアーマチュア54とを有している。モータヨーク53の内周面には、複数(本実施形態では6個)の永久磁石57が、周方向に磁極が交互となるように設けられている。
アーマチュア54は、回転軸52と、回転軸52の永久磁石57に対応する位置に外嵌固定されているアーマチュアコア58と、回転軸52のアーマチュアコア58よりも遊星歯車機構2側(図1における左側)に外嵌固定されているコンミテータ61とにより構成されている。
各セグメント62のアーマチュアコア58側端には、折り返すように曲折形成されたライザ63が設けられている。ライザ63には、アーマチュアコア58に巻装されている巻線59の端末部が接続されている。
遊星歯車機構2は、回転軸52と一体形成されたサンギヤ13と、サンギヤ13に噛合され、サンギヤ13を中心に公転する複数のプラネタリギヤ14と、これらプラネタリギヤ14の外周側に設けられた環状の内歯リングギヤ15とにより構成されている。
トッププレート12は、不図示のエンジンにスタータ1を固定するため、例えばアルミニウムにより形成されたハウジング17に装着されている。
ハウジング17は、一方側(図1における左側)に第一底部117aを有し他方側(図1における右側)に第一開口部117bを有する有底筒状の第一筒部117と、第一筒部117の径方向外側において一方側に第二底部127aを有し他方側に第二開口部127bを有する有底筒状の第二筒部127と、により形成されている。ハウジング17は、例えばダイカスト鋳造により形成されている。ハウジング17の第一筒部117には、主に出力軸4やクラッチ機構5、ピニオン機構70、第一電磁装置9等が内蔵されており、ハウジング17の第二筒部127には、主に第二電磁装置120が内蔵されている。
第一筒部117の第一開口部117b側の外周面には、軸方向に沿うように雌ネジ部17bが刻設されている。また、モータヨーク53の他方側(図1における右側)に配置されたエンドプレート55には、雌ネジ部17bに対応する位置にボルト孔55aが形成されている。このボルト孔55aにボルト95を挿入し、雌ネジ部17bにボルト95を螺入することによって、モータ部3とハウジング17とが一体化される。
第一筒部117の内壁には、後述するクラッチアウタ18のモータ部3側への変位を規制するリング状のストッパ94が設けられている。このストッパ94は、樹脂やゴム等により形成され、クラッチアウタ18が当接した際の衝撃を緩和できるようになっている。
また、第一筒部117には、トッププレート12よりも第一底部117a側に、第一電磁装置9を構成する第一ヨーク25が内嵌固定されている。第一電磁装置9については後述する。
軸受孔47には、出力軸4の一方側端(図1における左側端)を回転自在に支持するための滑り軸受17dが圧入固定されている。この滑り軸受17dには所望の基油からなる潤滑油が含浸されており、出力軸4を円滑に摺接させることができるようになっている。
また、軸受孔47の底部には、第一筒部117の第一底部117aと出力軸4の一方側端面4cとの間に、荷重受部材50が配置されている。
荷重受部材50を配置することにより、一方側(図1における左側)に向かって出力軸4にスラスト荷重が発生したときでも、ハウジング17に設けた荷重受部材50で出力軸4の移動を規制しつつ、出力軸4のスラスト荷重を受けることができる。また、出力軸4の回転時には、出力軸4の一方側端面4cと荷重受部材50とが摺接するので、出力軸4の一方側端面4cとハウジング17とが直接摺接するのを防止できる。したがって、ハウジング17の摩耗を防止して耐久性に優れたスタータ1とすることができる。
なお、荷重受部材50の周囲には、出力軸4の一方側端面4cとの摺接時の摩擦を軽減するためのグリスが塗布される。このグリスとしては、滑り軸受17dに含浸される潤滑油と同種の基油を含むものが採用されており、滑り軸受17dの潤滑油を長期間保持できるようになっている。
第二筒部127には、第二電磁装置120を構成する第二ヨーク125が内嵌固定されている。第二電磁装置120については後述する。
出力軸4の軸方向略中央には、ヘリカルスプライン19が形成されている。ヘリカルスプライン19には、クラッチ機構5がヘリカル噛合されている。
クラッチ機構5は、略円筒状のクラッチアウタ18と、このクラッチアウタ18と同軸に形成されたクラッチインナ22と、クラッチアウタ18およびクラッチインナ22を一体的に固定するクラッチカバー6と、を有している。
クラッチ機構5には、クラッチアウタ18側からの回転力はクラッチインナ22に動力を伝達するが、クラッチインナ22側からの回転力はクラッチアウタ18に伝達しない、所謂公知のワンウェイクラッチ機能が設けられている。これにより、エンジン始動時に、クラッチアウタ18よりもクラッチインナ22の方が速くなるオーバーラン状態になった際には、エンジンのリングギヤ23側からの回転力を遮断するように構成されている。また、クラッチ機構5は、クラッチアウタ18とクラッチインナ22との間に生じるトルク差、および回転速度差が所定値以内の場合、互いに回転力を伝達する一方、トルク差および回転速度差が所定値を越えた場合、回転力の伝達が遮断される所謂トルクリミッタ機能も備えている。
クラッチインナ22は、クラッチアウタ18のスリーブ18aよりも拡径形成されている。クラッチインナ22、段部18cの内周面および出力軸4との間には、空間が形成されており、この空間には、後述するリターンスプリング21が配置されている。
クラッチインナ22の外周面には、クラッチアウタ18の一方側端面と径方向で対応した位置に、略円盤状のクラッチワッシャ64が外嵌固定されている。
本体筒部68は、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に外挿され、本体筒部68の他方側の縁部をクラッチアウタ18の他方側端面にカシメることにより、クラッチアウタ18およびクラッチワッシャ64に固定される。
底壁66の略中央には、一方側と他方側とを貫通する開口が形成されており、出力軸4が挿通されている。また、底壁66の開口には、軸方向の一方側に向かって延びる補強筒部67が形成されている。補強筒部67は、出力軸4と同心円状に形成されている。補強筒部67の内径は、規制段差部22bの外径よりも大きく形成されている。これにより、補強筒部67は、規制段差部22bと干渉することなく、規制段差部22bの径方向外側に配置される。
移動規制部20は、出力軸4に外嵌された略リング状の部材であり、サークリップ20aによって軸方向一方側への移動が規制された状態に設けられるとともに、クラッチアウタ18に形成された段部18cと干渉可能なように、段部18cの内周面よりも大径に形成されている。後述するようにクラッチ機構5が一方側にスライド移動したときには、クラッチアウタ18の段部18cと移動規制部20とが干渉する。これにより、クラッチ機構5およびピニオン機構70の一方側へのスライド移動量が規制される。
このように形成されたクラッチ機構5には、クラッチインナ22の先端に、ピニオン機構70が一体的に設けられている。
ピニオン機構70は、クラッチインナ22の先端に一体成形された筒状のピニオンインナ71を有している。ピニオンインナ71の内周面には、軸方向両側にそれぞれ出力軸4にピニオンインナ71を摺動可能に支持するための2つの滑り軸受72,72が設けられている。
収納部76のクラッチ機構5側に形成されている開口部は、クラッチインナ22の基端側に設けられた段差部71aによって閉塞された状態になっている。すなわち、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71によって軸方向に摺動可能に支持された状態になっている。これにより、ピニオンギヤ74は、ピニオンインナ71に対して大きくがたつくことなく軸方向にスライド移動する。
ピニオンスプリング11は、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが当接したときに軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収する、ダンパ機構として機能している。これにより、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、スタータ1の耐久性向上を図っている。
ピニオンインナ71の一方側(図1における左側)には、出力軸4に外嵌固定された止め輪77が設けられている。これにより、ピニオンインナ71に対して出力軸4の一方側にピニオンギヤ74が抜けるのを規制している。
ここで、延長筒部74dの外径は、クラッチカバー6の補強筒部67の内径よりも小さく形成されている。これにより、ピニオンギヤ74が他方側に移動しても、延長筒部74dがクラッチカバー6と干渉することなく、規制段差部22bと当接可能とされている。
ハウジング17の第一筒部117内には、クラッチ機構5のクラッチインナ22よりもモータ部3側に、第一電磁装置9が配置されている。第一電磁装置9は、主に第一ヨーク25と、ギヤプランジャホルダ26と、第一励磁コイル24と、ギヤプランジャ80とにより構成されている。
第一ヨーク25は、例えば磁性材により形成された有底筒状の部材であり、第一ヨーク底部25aの径方向中央の大部分が大きく開口されている。第一電磁装置9は、第一ヨーク25が第一筒部117の内周面に内嵌されることで固定されている。
第一ヨーク底部25aの反対側端には、例えば磁性材により形成された円環状のギヤプランジャホルダ26が設けられている。ギヤプランジャホルダ26の径方向内側は、軸方向の他方側に向かって延出された円筒部26aとなっている。これにより、後述するギヤプランジャ80の鉄心88との離間距離が狭くなるので、ギヤプランジャホルダ26による鉄心88の吸引力を上げることができる。
第一励磁コイル24の内周面と出力軸4の外周面との間の空隙には、ギヤプランジャ機構37が第一励磁コイル24に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
ギヤプランジャ機構37は、磁性材で形成された略円筒状の外側プランジャ27と、この外側プランジャ27と出力軸4の外周面との間の空隙に配置されたギヤプランジャ80とを有している。これら外側プランジャ27とギヤプランジャ80とは、互いに同心となるように設けられ、軸方向に相対移動可能に設けられている。また、ギヤプランジャホルダ26と外側プランジャ27との間には、両者を離反方向に付勢する板ばね材からなるリターンスプリング27aが配設されている。
外側プランジャ27のモータ部3側端には、径方向外側に張り出す外フランジ部29が一体成形されている。ここで、外側プランジャ27は、スタータ1の静止状態において、リターンスプリング27aによりモータ部3側に付勢される。さらに、外側プランジャ27は、クラッチ機構5のリターンスプリング21により、後述するギヤプランジャ80およびリング部材28を介して、モータ部3側に付勢される。これにより、外フランジ部29は、スタータ1の静止状態において、トッププレート12と当接しており、外側プランジャ27の初期位置を位置決めしている。
外側プランジャ27の径方向内側に配置されたギヤプランジャ80は、径方向内側に配置されたギヤプランジャインナ81と、径方向外側に配置されたギヤプランジャアウタ85と、ギヤプランジャインナ81とギヤプランジャアウタ85との間に配置されるギヤプランジャスプリング91と、を備えている。
ギヤプランジャインナ81は、樹脂等により略円筒形状に形成されている。ギヤプランジャインナ81の内径は、出力軸4に外挿可能なように、出力軸4の外径よりも若干大きく形成されている。これにより、ギヤプランジャインナ81は、出力軸4に対して軸方向にスライド移動可能に設けられている。
ギヤプランジャインナ81の他方側端81b(図1における右側端)は、他方側から一方側に向かって漸次外径が大きくなる爪部83が周方向に複数個所設けられている。また、爪部83の一方側(図1における左側)には、周方向に沿って溝部84が形成されている。
ギヤプランジャアウタ85の他方側端85a(図1における右側端)には、径方向内側に張り出した内フランジ部86が一体的に形成されている。内フランジ部86の内径は、ギヤプランジャインナ81の爪部83の外径よりも小さく、かつギヤプランジャインナ81の溝部84の底部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、ギヤプランジャインナ81の溝部84内にギヤプランジャアウタ85の内フランジ部86を配置することで、ギヤプランジャインナ81とギヤプランジャアウタ85とが一体化され、ギヤプランジャ機構37が構成される。
また、外フランジ部87の一方側(図1における左側)であって、ギヤプランジャアウタ85の外周面には、リング状の鉄心88が設けられている。鉄心88は、例えば樹脂モールドにより、ギヤプランジャアウタ85と一体成型されている。鉄心88は、第一励磁コイル24に電流が供給されたときに発生する磁束により、所定の吸引力で第一電磁装置9に吸引される。
ギヤプランジャスプリング91は、収納部90に収納された状態で、ギヤプランジャインナ81の外フランジ部82と、ギヤプランジャアウタ85の内フランジ部86とにより圧縮変形させられている。そして、ギヤプランジャインナ81は一方側(図1における左側)に向かって、ギヤプランジャアウタ85は他方側(図1における右側)に向かって、互いに付勢された状態となっている。
このため、スタータ1の静止状態において、ギヤプランジャインナ81は、ピニオン機構70側のクラッチアウタ18と弾性的に当接する。したがって、ギヤプランジャ80とクラッチ機構5との間に空隙が発生するのを防止できる。これにより、クラッチ機構5が軸方向に沿ってガタつくのを抑制できるので、クラッチ機構5とギヤプランジャ80とが衝突して騒音が発生するのを防止できる。
すなわち、ギヤプランジャスプリング91は、クラッチ機構5と外側プランジャ27との間における軸方向の空隙の発生を防止し、クラッチ機構5のガタつきを吸収するガタ吸収機構を構成している。
ハウジング17の第二筒部127内には、クラッチ機構5のクラッチインナ22よりもモータ部3側に、第一電磁装置9に対して並列となるように第二電磁装置120が配置されている。
第二電磁装置120は、第三電源P3から供給される電力をモータ部3へ通電および遮断する機能を有している。第三電源P3は、例えば車両に搭載される12Vバッテリである。第二電磁装置120は、主に第二ヨーク125と、第二励磁コイル124と、スイッチプランジャ130と、可動接点板8(請求項の「可動接点部」に相当)と、固定接点板34(請求項の「固定接点部」に相当)と、により構成されている。
第二ヨーク125は、例えば磁性材により形成された有底筒状の部材であり、第二筒部127の第二底部127a側に第二ヨーク底部125aが配置され、第二筒部127の第二開口部127b側に第二ヨーク開口部125bが配置されている。第二電磁装置120は、第二ヨーク125が第二筒部127の内周面に内嵌されることで固定されている。
第二ヨーク開口部125bには、例えば磁性材により形成された円環状のホルダプレート126が設けられている。ホルダプレート126は、第二ヨーク開口部125bに例えばカシメられて固定されている。
第二ヨーク125とホルダプレート126とにより形成される収納部125cには、略円筒状に形成された第二励磁コイル124が収納されている。
スイッチプランジャ130の第二ヨーク底部125a側は、他の部分よりも縮径された小径部130aとなっており、スイッチリターンスプリング132が挿入配置されている。スイッチリターンスプリング132は、例えば非磁性のステンレス鋼等により形成されている。
可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向に沿ってスライド移動可能に取り付けられているとともに、スイッチスプリング32によって浮動的に支持されている。可動接点板8は、後述のブラシホルダ33に設けられた固定接点板34に対して、接近離反可能になっている。
第二固定接点板34bの外周側には、軸方向に折曲して一体形成された切起し部34cが設けられている。切起し部34cには挿通孔が形成されており、この挿通孔を介して、軸端子44aが後述するブラシホルダ33の外壁33aを貫通し、スタータ1の径方向外側に突出するよう設けられている。
ブラシホルダ33径方向外側の外壁33aには、スタータ1の径方向外側に突出するように軸端子44aが設けられている。さらに、軸端子44aの突出側の先端には、第三電源P3の陽極が電気的に接続されるターミナルボルト44bが取付けられている。
4個のブラシ41は、2個の陽極側ブラシと2個の陰極側ブラシとで構成され、このうち2個の陽極側ブラシが不図示のピグテールを介して固定接点板34の第一固定接点板34aに接続されている。固定接点板34の第二固定接点板34bは、ターミナルボルト44bを介して第三電源P3の陽極が電気的に接続されており、固定接点板34に可動接点板8が当接した際、ターミナルボルト44b、固定接点板34、ピグテール(不図示)を介して4個のブラシ41のうちの2個の陽極側ブラシに第三電源P3から電圧が印加され、巻線59に電流が供給されるようになっている。
また、4個のブラシ41のうち、2個の陰極側ブラシは、不図示のピグテールを介してリング状のセンタープレートに接続されている。そして、このセンタープレート、ハウジング17、および不図示の車体を介して、第三電源P3(本実施形態では12Vバッテリに相当)の陰極に4個のブラシ41のうちの2個の陰極側ブラシが電気的に接続されるようになっている
続いて、図面を用いて、リングギヤ23の静止時にエンジンを始動する際のスタータ1の動作について説明する。
図1における中心線の上側の状態に示すように、スイッチングリレーS1がOFF状態であって、第一励磁コイル24に電流を供給する前のスタータ1の静止状態にあっては、リターンスプリング21に付勢されたクラッチアウタ18が、ピニオンギヤ74と一体化されているクラッチインナ22を引っ張った状態で、モータ部3側(図1における右側)へ一杯に付勢されている。クラッチ機構5のクラッチアウタ18は、ストッパ94に当接した位置で停止しており、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との噛合が断たれている。
車両のイグニションスイッチ(不図示)をONすると、ECUの指令に基づいてスイッチングリレーS1がONされる。これにより、第一励磁コイル24は、第一電源P1から電流が供給されて励磁され、外側プランジャ27およびギヤプランジャ80を磁束が通過して磁路が形成される。そして、図2に示すように、外側プランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図2における左側)へ向かってスライド移動する。
このとき、外側プランジャ27の内周面にリング部材28が一体的に設けられていることから、このリング部材28がギヤプランジャ80を押圧し、初期的にギヤプランジャ80をリングギヤ23側に向かって押圧している。これにより、外側プランジャ27およびギヤプランジャ80は、一体となってリングギヤ23側へ向かってスライド移動することができる。
ピニオンギヤ74は、図3に示すように、リングギヤ23側に所定距離移動する。そして、ピニオンギヤ74の一方側(図3における左側)端面74bとリングギヤ23の他方側(図3における右側)端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となっている。
続いて、ECUの指令に基づき、所定のタイミングでスイッチングリレーS2がONされる。なお、所定のタイミングとは、例えば、スイッチングリレーS1がONされた後にピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが当接するか、または両者間の軸方向寸法距離がゼロの状態となるタイミングであり、ECU内にマッピングされている。
スイッチングリレーS2がONされると、第二励磁コイル124は、第二電源P2から電流が供給されて励磁され、スイッチプランジャ130を磁束が通過して磁路が形成される。そして、図4に示すように、スイッチプランジャ130が第二筒部127の第二底部127a側(図4における左側)へ向かってスライド移動する。これにより、可動接点板8と固定接点板34とが当接する。可動接点板8は、スイッチシャフト30に対して軸方向変位可能に浮動支持されているので、スイッチスプリング32の押圧力が可動接点板8および固定接点板34に加わることになる。
ここで、クラッチカバー6の補強筒部67は、第一規制部97を構成する延長筒部74dおよび規制段差部22bよりも径方向外側に配置されている。したがって、クラッチカバー6の補強筒部67と第一規制部97とが干渉することなく、ピニオンスプリング11によるダンパ機構が機能できる。
すると、アーマチュアコア58に磁界が発生し、この磁界とモータヨーク53に設けられている永久磁石57との間で磁気的な吸引力や反発力が生じて、アーマチュア54が回転し始める。そして、アーマチュア54が回転することにより、このアーマチュア54の回転軸52の回転力(モータ部3の回転力)が遊星歯車機構2を介して出力軸4に伝達され、出力軸4が回転し始める。
出力軸4の回転速度が上昇すると、出力軸4のヘリカルスプライン19に噛合されたクラッチアウタ18に回転慣性力が作用し、リングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。ただし、前述のとおり、出力軸4のヘリカルスプライン19およびクラッチアウタ18のヘリカルスプライン18bの傾斜角度は、軸方向に対して例えば16°程度である。したがって、クラッチアウタ18に発生するスラスト荷重は、リングギヤ23側に不用意に飛び出さない程度の大きさになっている。
さらに、ギヤプランジャ80には、リングギヤ23側へ向かう所定の吸引力が作用している。したがって、クラッチアウタ18は、回転慣性力によるスラスト荷重とギヤプランジャ80の押圧力との合力により、ヘリカルスプライン18b,19の傾斜角に沿うように回転しつつ、リングギヤ23側へ向かってスライド移動する。
そして、図7に示すように、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合し、リングギヤ23が回転させられてエンジンが始動する。
続いて、図面を用いて、リングギヤ23の惰性回転時にエンジンを始動する際のスタータ1の動作について説明する。ここで、リングギヤ23の惰性回転時にエンジンを始動する場合としては、例えば、アイドリングストップ機能を備えた車両において、エンジンの燃料噴射を停止した直後、エンジンおよびリングギヤが惰性回転している時にエンジンを再始動させる場合が想定される。なお、以下では、リングギヤ23の静止時にエンジンを始動する際のスタータ1の動作と重複する動作については、詳細な説明を省略している。
ところで、リングギヤ23の惰性回転時であって、ピニオンギヤ74(すなわちスタータ1)が静止している場合には、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との間に、大きな回転速度差が発生している。この状態で、スイッチングリレーS1がONされて第一励磁コイル24が励磁され、ピニオンギヤ74がリングギヤ23側に押し出された場合には、以下のような課題が発生する。
例えば、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の噛合位相がずれていると、ギヤ同志が噛合することはなく、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23が摩耗するおそれがある。
また、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の噛合位相が合致すると、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23が噛合して、クラッチ機構5が作動する。しかしながら、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との回転速度差が大きな状態が継続すると、クラッチ機構5にリングギヤ23の回転力による負荷が継続して伝達され、クラッチ機構5の構成部品が摩耗するおそれがある。
そこで、リングギヤ23の惰性回転時においては、予めアーマチュア54およびこれに連動するピニオンギヤ74を回転させ、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との回転速度差を小さくしてから互いに噛合させている。
スイッチングリレーS2がONされると、第二励磁コイル124は、第二電源P2から電流が供給されて励磁される。スイッチプランジャ130は、第二底部127a側へ向かってスライド移動し、可動接点板8と固定接点板34とが当接する。これにより、第三電源P3の電圧がアーマチュア54の巻線59に印加され、アーマチュア54が回転するとともにピニオンギヤ74が回転する。ここで、スイッチングリレーS1はOFF状態であるため、ピニオンギヤ74はリターンスプリング21によりモータ部3側へ一杯に付勢されている。したがって、図9に示すように、ピニオンギヤ74は、リングギヤ23から離間した状態で回転する。このとき、ピニオンギヤ74とリングギヤ23との間の回転速度差は、ピニオンギヤ74が静止している場合と比較して小さくなる。
続いて、ECUの指令に基づいてスイッチングリレーS1がONされる。これにより、第一励磁コイル24は、第一電源P1から電流が供給されて励磁され、図10に示すように、外側プランジャ27およびギヤプランジャ80がリングギヤ23側(図10における左側)へ向かってスライド移動する。
このとき、スイッチングリレーS2はON状態となっているので、アーマチュア54およびピニオンギヤ74は回転している。したがって、図11に示すように、ピニオンギヤ74は、所定の回転数を維持したまま、リングギヤ23側へ向かってスライド移動し、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが衝突する。
しかし、例えば、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも速い場合には、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが衝突して、リングギヤ23の回転力がピニオンギヤ74に付与される。これにより、ピニオンギヤ74の回転速度は加速され、ピニオンギヤ74の回転速度がリングギヤ23の回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
これに対して、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度よりも遅い場合には、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが衝突して、ピニオンギヤ74の回転力がリングギヤ23に付与される。これにより、リングギヤ23の回転速度は加速され、リングギヤ23の回転速度がピニオンギヤ74の回転速度に追いついて両者の回転が同期する。
なお、前述のとおり、ピニオン機構70は、ピニオンスプリング11を備えているので、ピニオンギヤ74の一方側端面74bとリングギヤ23の他方側端面23aとが衝突したとき、ピニオンスプリング11が軸方向に弾性変形することで衝撃を吸収できる。したがって、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の摩耗を抑制し、ピニオンギヤ74およびリングギヤ23の延命化を図ることができる。
また、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とがヘリカル噛合していることから、出力軸4の回転速度がリングギヤ23の回転速度よりも大きくなると、ピニオンギヤ74にリングギヤ23方向(飛び込み方向)へのスラスト荷重が発生する。これにより、ピニオンギヤ74は、リングギヤ23側へ向かってさらに移動する。
そして、ピニオンギヤ74とリングギヤ23とが所定の噛み合い位置で噛合し、リングギヤ23が回転させられてエンジンが始動する(図7参照)。
本実施形態によれば、出力軸4と同軸上に配置された第一電磁装置9に対して第二電磁装置120が並列に配置されているので、出力軸4の径方向外側において軸方向にスタータ1が大型化するのを抑制できる。したがって、良好なレイアウト性を確保できる。
また、第一電磁装置9および第二電磁装置120は、出力軸4およびピニオン機構70とともにハウジング17に内蔵されるので、第一電磁装置9および第二電磁装置120とハウジング17との連結部分がハウジング17の外部に露出することがない。これにより、第一電磁装置9および第二電磁装置120はハウジング17にて保護されるとともに、ハウジング17の内部に水や塵埃が入り込むのを抑制できるので、第一電磁装置9および第二電磁装置120の耐衝撃性、防塵性および防水性に優れたスタータ1を得ることができる。
3 モータ部
4 出力軸
5 クラッチ機構
8 可動接点板(可動接点部)
9 第一電磁装置
17 ハウジング
23 リングギヤ
24 第一励磁コイル
34 固定接点板(固定接点部)
41 ブラシ
53 モータヨーク
58 アーマチュアコア
59 巻線
70 ピニオン機構
80 ギヤプランジャ
120 第二電磁装置
124 第二励磁コイル
130 スイッチプランジャ
S1 スイッチングリレー(スイッチング手段)
S2 スイッチングリレー(スイッチング手段)
Claims (6)
- モータ部の回転力を受けて回転する出力軸と、
前記出力軸上にスライド移動可能に設けられ、エンジンのリングギヤと連係可能なピニオン機構と、
前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢する第一電磁装置と、
前記モータ部への通電および遮断を行う第二電磁装置と、
前記出力軸、前記ピニオン機構、前記第一電磁装置および前記第二電磁装置を内蔵するハウジングと、
を備え、
前記出力軸と同軸上に前記第一電磁装置を配置するとともに、前記第一電磁装置と並列になるように前記第二電磁装置を配置したことを特徴とするスタータ。 - 前記第一電磁装置および前記第二電磁装置は、それぞれ個別のスイッチング手段によってON状態とOFF状態とを切替可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のスタータ。
- 前記出力軸と前記ピニオン機構との間に設けられ、前記出力軸の回転力を前記ピニオン機構に伝達するクラッチ機構を備え、
前記第一電磁装置は、前記クラッチ機構を介して前記ピニオン機構に前記リングギヤ側へ向かう押圧力を付勢することを特徴とする請求項1または2に記載のスタータ。 - 前記第一電磁装置は、
前記出力軸の周囲を取り囲むように筒状に設けられた第一励磁コイルと、
前記出力軸と前記第一励磁コイルとの間に設けられ、前記第一励磁コイルへの通電に基づいて前記出力軸に沿ってスライド移動し、前記ピニオン機構に押圧力を付勢するギヤプランジャと、
を備え、
前記第一励磁コイルへの通電前に、前記クラッチ機構に前記ギヤプランジャが弾性的に当接されていることを特徴とする請求項3に記載のスタータ。 - 前記第二電磁装置は、
前記出力軸の軸方向に沿うように筒状に設けられた第二励磁コイルと、
前記第二励磁コイルの径方向内側に配置され、前記第二励磁コイルの軸方向に沿ってスライド移動可能なスイッチプランジャと、
前記スイッチプランジャに連結されて、前記第二励磁コイルの軸方向に沿ってスライド移動可能な可動接点部と、
前記可動接点部と接離可能に設けられ、前記可動接点部と接触することにより、前記モータ部に電力を供給する固定接点部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスタータ。 - 前記モータ部は、
筒状のモータヨークと、
前記モータヨークに対して回転自在に設けられ、巻線が巻装されているアーマチュアコアと、
前記巻線に電力を供給するためのブラシと、
を備え、
前記第一電磁装置、前記第二電磁装置および前記ブラシは、前記アーマチュアコアよりも前記リングギヤ側に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスタータ。
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