以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるエポキシ化合物(A)は、前記した通り、下記構造式1
(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基アルコキシ基を表し、nは繰り返し単位であり、2〜10の整数である。)
で表される樹脂構造を有するものである。
このように本発明で用いるエポキシ化合物(A)は、所謂、カリックスアレーン型の環状構造を有しており、そのため該エポキシ化合物(A)の硬化物における分子運動が抑制される結果、優れた耐熱性を発現する。更に、このような剛直な環構造は硬化物の誘電率や誘電正接を下げる効果にも寄与する。フェノールノボラック型エポキシ樹脂など従来のエポキシ樹脂は、耐熱性には優れるが誘電特性が十分なものではなく、硬化剤としてポリフェニレンエーテル樹脂等の誘電特性に優れる硬化剤と併用したとしても十分な誘電特性が発現しない上、耐熱性も低下してしまうものであった。しかしながら、本願発明で用いる前記エポキシ化合物(A)は耐熱性に加え誘電特性にも優れるものであり、これとポリフェニレンエーテル樹脂と組合せて用いた場合には、耐熱性を低下させることなく、更に優れた誘電特性を兼備する硬化物を得ることが出来る。
上記構造式1において、ナフタレン環上のメチレン基の結合位置が任意の部位は、同一環上に2つの結合部位を有するものであることが該エポキシ化合物(A)の製造が容易なものとなる点から好ましく、特に該ナフタレン環の2,4−位においてメチレン基が結合しているものであることが、規則的な分子構造が形成され硬化物の耐熱性や誘電特性に優れる点から好ましい。
また、前記構造式1中のnは2〜10の整数であるが、化学構造の対象性に優れ耐熱性の向上効果が顕著に現れる点から2,4,6,又は8であることが好ましく、特に4であることが最も好ましい。
かかるエポキシ化合物(A)は、MSスペクトルにおいて理論構造の分子量を確認することにより構造を同定することができる。
前記構造式1中のR1は、前述の通り、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基である。ここで、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基が、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基等の炭素原子数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。本発明では、R1が水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基であるものがより好ましく、中でも、耐熱性により優れる硬化物が得られることから水素原子であるものが特に好ましい。
また、構造式1中のナフトール骨格は、α−ナフトール骨格及びβ−ナフトール骨格の何れであっても良いが、最終的に得られるエポキシ化合物の硬化物における耐熱性に優れ、低熱膨張性にも優れることから、α−ナフトール骨格であることが好ましい。更に、本発明では前記ナフトール骨格として、α−ナフトール骨格と、β−ナフトール骨格とが共存していても良く、この場合、より耐熱性に優れる硬化物が得られることから、両者の存在比率は、α−ナフトール化合物1モルに対してβ−ナフトール化合物が1.2モル以下となる割合であることが好ましい。
上記したエポキシ化合物(A)は、以下の方法により製造することができる。
即ち、ナフトール化合物とホルムアルデヒドとを両者のモル比(ナフトール/ホルムアルデヒド)が1.0/1.0〜1.0/2.0となる割合で、塩基性触媒の存在下に反応させてカリックスアレーン型のナフトール化合物を得(工程1)、次いで、これにエピハロヒドリンを塩基性触媒存在下に反応させてエポキシ化する(工程2)方法により製造することができる。
ここで、前記工程1の反応は、具体的には20〜100℃の温度条件で行うことができる。
工程1で用いられるナフトール化合物は、具体的には、α−ナフトール、1−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−エチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−エチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−プロピルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−プロピルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−ブチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−ブチルナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−プロピルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−プロピルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−ブチルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−ブチルオキシナフタレン等のα−ナフトール化合物;β−ナフトール、2−ヒドロキシ−3−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−エチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−エチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−プロピルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−プロピルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−ブチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ブチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5−エトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5−プロピルオキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−プロピルオキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5−ブチルオキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ブチルオキシナフタレン等のβ−ナフトール化合物が挙げられるが、中でも、最終的に得られるエポキシ化合物の硬化物における耐熱性に優れることから、α−ナフトール化合物であることが好ましく、α−ナフトールであることが特に好ましい。
また、本発明では、前記α−ナフトール化合物とβ−ナフトール化合物とを併用しても良く、その場合、α−ナフトール化合物1モルに対してβ−ナフトール化合物が1.2モル以下となる割合で用いることが耐熱性の観点から好ましい。
一方、工程1で用いられるホルムアルデヒド源としては、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。ここで、ホルマリンは水希釈性や製造時の作業性の点から30〜60質量%のホルマリンであることが好ましい。
工程1で用いられる塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特に触媒活性に優れる点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
また、工程1における塩基性触媒の使用量は、前記ナフトール化合物1モルに対して0.02モル以上となる割合であることが、カリックスアレーン構造の形成が容易となることから好ましい。更に、最も好ましい分子構造であるナフトール型カリックス(4)アレーン化合物の選択制を高めることが出来ることから、前記モル比(ナフトール化合物/ホルムアルデヒド)は1.0以下であることが好ましい。ここで、ナフトール型カリックス(4)アレーン化合物とは、α−ナフトール化合物の4分子がメチレン結合を介して結合し、環状構造を形成している化合物である。
次に、工程2として、工程1で得られたカリックスアレーン型ナフトール化合物を、エピハロヒドリンと反応させることにより、目的とするエポキシ化合物(A)とすることができる。
斯かる工程2は、具体的には、前記カリックスアレーン型ナフトール化合物中のフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
なお、工業生産を行う際、エポキシ化合物生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、工程1と同様に、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ化反応の触媒活性に優れる点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ化合物の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ化合物とするために、得られたエポキシ化合物を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とするエポキシ化合物(A)を得ることができる。
本発明の硬化性組成物は、以上詳述したエポキシ化合物(A)を主剤とし、次に説明するポリフェニレンエーテル樹脂(B)を硬化剤として用いるものである。前述の通り、従来主に使用されてきたフェノールノボラック型エポキシ樹脂等の鎖状構造を有するエポキシ樹脂は、耐熱性には優れるが誘電特性が十分なものではなく、ポリフェニレンエーテル樹脂等の誘電特性に優れる硬化剤と併用したとしても十分な誘電特性が発現せず、また、耐熱性も低下してしまうものであった。しかしながら、本願発明で用いる前記エポキシ化合物(A)は耐熱性に加え誘電特性にも優れるものであり、これとポリフェニレンエーテル樹脂と組合せて用いた場合には、耐熱性を低下させることなく、更に優れた誘電特性を兼備する硬化物を得ることが出来る。
本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂(B)は、例えば、以下に示す種々の化合物等が挙げられる。
(1)フェノール性水酸基を有する化合物を単独で用いる単独重縮合や、該化合物を2種以上用いる共重合により得られる化合物(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B1)」とする。)
(2)ポリスチレンなどとアロイ化されたポリフェニレンエーテル樹脂(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B2)」とする。)
(3)ポリフェニレンエーテル樹脂とフェノール性化合物とを反応開始剤の存在下で分解再配列反応させて得られる化合物(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B3)」とする。)
(4)ポリブタジエンポリマーで変性されたポリフェニレンエーテル樹脂(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B4)」とする。)
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B1)の製造で用いるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,6−ジプロピルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2−メチル−6−プロピルフェノール、2−エチル−6−プロピルフェノール、m−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,3−ジプロピルフェノール、2−メチル−3−エチルフェノール、2−メチル−3−プロピルフェノール、2−エチル−3−メチルフェノール、2−エチル−3−プロピルフェノール、2−プロピル−3−メチルフェール、2−プロピル−3−エチル−フェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,6−トリエチルフェノール、2,3,6−トリプロピルフェノール、2,6−ジメチル−3−エチルフェノール、2,6−ジメチル−3−プロピルフェノール等が挙げられる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物の単独重縮合や共重合により得られるポリフェニレンエーテル樹脂(B1)を具体的に例示すると、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルにスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体、2,6−ジメチルフェノール/23,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合したグラフト共重合体が挙げられる。
これらポリフェニレンエーテル樹脂(B1)の中でも、1一つのフェニレン骨格につき該フェニレン骨格の炭素原子に結合したメチル基を1〜4つ有する樹脂が好ましい。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B1)は重量平均分子量が1,000〜5,000の樹脂が好ましい。
前記ポリスチレンなどとのアロイ化ポリマーであるポリフェニレンエーテル樹脂(B2)は、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリスチレンとのアロイ化ポリマー、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとスチレン−ブタジエンコポリマーとのアロイ化ポリマー等が挙げられる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂とフェノール性化合物とを反応開始剤の存在下で分解再配列反応させて得られるポリフェニレンエーテル樹脂(B3)は、例えば、以下のような樹脂が挙げられる。
(3−1)数平均分子量が13,000〜25,000のポリフェニレンエーテル樹脂とフェノール性水酸基を一つ有するフェノール系化合物とを反応開始剤の存在下で分解再配列反応させて得られる数平均分子量1,000〜4,000の化合物(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)」とする。)
(3−2)数平均分子量が10,000〜30,000のポリフェニレンエーテル樹脂とフェノール性水酸基を二つ以上有するフェノール系化合物とを反応開始剤の存在下で分解再配列反応させて得られる数平均分子量5,000以下の化合物(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)」とする。)
(3−3)数平均分子量が1,800〜3000のポリフェニレンエーテル樹脂とフェノール性水酸基を二つ以上有するフェノール系化合物とを反応開始剤の存在下で分解再配列反応させて得られる数平均分子量1,500以下の化合物(以下「ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−3)」とする。)
数平均分子量が10,000を超えるようなポリフェニレンエーテル樹脂は融点及び溶融粘度が高いため、このようなポリフェニレンエーテル樹脂と前記エポキシ樹脂(A)を用いた樹脂組成物に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物も粘度が高くなり、プリント配線基板を作製する際に補強基材に含浸しにくくなる時がある。これに対し、上記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3)は分解再配列反応により分子量が低減している為、粘度も低く、補強基材への含浸が行い易い利点がある。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)は、数平均分子量(Mn)が10,000を超えるようなポリフェニレンエーテル樹脂を分解再配列反応により低分子量化して得られるものである。数平均分子量(Mn)が10,000を超えるようなポリフェニレンエーテル樹脂は融点及び溶融粘度が高いため、このようなポリフェニレンエーテル樹脂と前記エポキシ樹脂(A)を用いた樹脂組成物に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物も粘度が高くなり、プリント配線基板を作製する際に補強基材に含浸しにくくなる時がある。これに対し、上記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)は分解再配列反応により分子量が低減している為、粘度も低く、補強基材への含浸が行い易い利点がある。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)分解再配列反応の際にフェノール性水酸基を一つ有するフェノール系化合物(1価のフェノール系化合物)を用いて得られる化合物であることから、分子末端に水酸基が存在しないため、誘電率と誘電正接をより低く抑える効果に優れる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)の製造に用いることができるフェノール性水酸基を一つ有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、p−クロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−キシレノール、メシトール、2,6−ジメチル−4−(ベンゾイロキシ)フェノール、p−メトキシフェノール、p−フェノキシフェノール、ヒドロキノンモノベンゾエート、β−ナフトール、p−ヒドロキシベンゾニトリル、2,6−ジメチルフェノール、p−ニトロフェノール、メチルp−ヒドロキシベンゾエート、サリチル酸メチル等が挙げられる。
前記フェノール系化合物の中でも、2,6−キシレノールは溶剤溶解性が良好であり、誘電率低減効果のあるアルキル基を含有し、また上記の分解再配列反応の反応性が高いことから、好適に用いられる。
前記開始剤としては、例えば、3,3´,5,5´−テトラメチル−1,4−ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシル等の酸化剤、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を好ましく例示できる。また、必要に応じて触媒として金属塩類、例えばナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩等を添加して本反応を促進することもできる。また、反応後の成分として、低分子量アルコールのような揮発性の高い成分が発生する開始剤が、誘電率上昇を抑制できるため、より好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)を得るための具体的な操作を例示すると、まずトルエンやトリクロロエタンのような芳香族あるいはハロゲン系等の溶剤中に、前記数平均分子量が13,000〜25,000のポリフェニレンエーテル樹脂と1価のフェノール系化合物とを好ましくはポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して1価のフェノール系化合物を1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部の割合で配合し、更に必要に応じて開始剤やカルボン酸金属塩等を加える。そしてこのような混合液を加熱することにより、高分子量のポリフェニレンエーテル樹脂の分解再配列反応を進行させて、数平均分子量1,000〜4,000のポリフェニレンエーテル樹脂(B1−1)を得ることができる。このときの反応条件は、原料となるポリフェニレンエーテル樹脂の分子量や、目的とするポリフェニレンエーテル樹脂の所望の分子量等によって適宜調整されるが、好ましくは50〜120℃で5〜120分間加熱するという条件を好ましく例示できる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)は前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)と同様に粘度が低く、これを用いることにより流動性が良好な熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。加えて、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)の分子鎖の量末端には、硬化に寄与するフェノール系化合物に由来する水酸基を有するために、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)を含む熱硬化性樹脂組成物は更に高い耐熱性を有する硬化物を提供できる。また、上記熱硬化性組成物は指触乾燥性が速いという利点もある。
ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)の数平均分子量は2,000〜4,000がより好ましく、2,000〜4,000が更に好ましい。
前記フェノール性水酸基を二つ以上有するフェノール系化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS,ビスフェノールF等のビスフェノール類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック類が上げられる。中でも分解再配列反応が効率よく行われ、両末端にフェノール性水酸基を有するポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)が得やすいことからビスフェノール類が好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。
反応開始剤は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−1)の製造に用いる反応開始剤を好ましく使用することができる。
ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)を得るための具体的な操作を例示すると、まずトルエンやトリクロロエタンのような芳香族あるいはハロゲン系等の溶剤中に、前記数平均分子量が10,000〜30,000のポリフェニレンエーテル樹脂と2価のフェノール系化合物とを好ましくはポリフェニレンエーテル樹脂100質量部に対して2価のフェノール系化合物を1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部の割合で配合し、更に必要に応じて開始剤やカルボン酸金属塩等を加える。そしてこのような混合液を加熱することにより、高分子量のポリフェニレンエーテル樹脂の分解再配列反応を進行させて、数平均分子量5,000以下のポリフェニレンエーテル樹脂(B1−2)を得ることができる。このときの反応条件は、原料となるポリフェニレンエーテル樹脂の分子量や、目的とするポリフェニレンエーテル樹脂の所望の分子量等によって適宜調整されるが、好ましくは50〜120℃で5〜120分間加熱するという条件であることが好ましい。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−3)の数平均分子量は1,000以下が好ましい。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−3)を用いることにより、本発明の硬化性組成物からなるワニスはポットライフの長いものとなる。
ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−3)の分子量分布(Mw/Mn:Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)としては、2〜4、さらには2〜3の範囲であることがポットライフが長いワニスを提供できることから好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−3)の調製に用いるフェノール性水酸基を二つ以上有するフェノール系化合物は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)の調製に用いるものを使用することができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B3−3)は、原料として用いる数平均分子量が10,000〜30,000のポリフェニレンエーテル樹脂のかわりに数平均分子量が1,800〜3000のポリフェニレンエーテル樹脂を用いる以外はポリフェニレンエーテル樹脂(B3−2)を得る方法と同様にして得ることができる。
前記ポリブタジエンポリマーで変性されたポリフェニレンエーテル樹脂(B4)は、高周波帯域での良好な誘電特性を備え、伝送損失を有意に低減可能であり、また、吸湿耐熱性、熱膨張特性に優れ、しかも金属箔との間の引き剥がし強さを満足させるプリント配線板を製造可能な熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。ポリフェニレンエーテル樹脂(B4)の中でもポリフェニレンエーテル樹脂(b1)に、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有するブタジエンポリマー(b2)及び架橋剤(b3)を反応させて得られるポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)が好ましい。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B4)を調製する際には上記ブタジエンポリマー(b2)と架橋剤(b3)とを予備的な反応(予備反応)をさせておくのが好ましい。予備反応とは、反応温度、例えば60〜170℃でラジカルを発生させて、ブタジエンポリマー(b2)成分と架橋剤(b3)成分とを反応させることであり、ブタジエンポリマー(b2)成分中の所定量が架橋し、架橋剤(b3)成分の所定量が転化する。すなわち、この状態はゲル化には至っていない未硬化状態のことである。なお、一般に言われる硬化反応とは、熱プレス又は溶剤揮発温度以上でラジカルを発生させて硬化させることであり、本発明における予備反応との違いは明白である。
以下、ブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4)の好適な製造方法について説明する。
ポリフェニレンエーテル樹脂(b1)は、前記のポリフェニレンエーテル樹脂(B1)を使用することができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B1)とポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー等とのアロイ化ポリマーなど、いわゆる変性ポリフェニレンエーテルも用いることができるが、この場合はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル成分及び2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体成分を50%以上含有するポリマーであることがより好ましい。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(b1)の分子量については、特に制限はないが、プリント配線板としたときの誘電特性や耐熱性と、プリプレグとしたときの樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、数平均分子量(Mn)が7,000〜30,000の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
本発明において、ポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーの製造に用いられるブタジエンポリマー(b2)は、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位を分子中に40%以上含有する化学変性されていないブタジエンポリマーが誘電特性、耐湿性及び吸湿後の耐熱性に優れる硬化物が得られることから好ましい。
ブタジエンポリマー(b2)中の、側鎖に1,2−ビニル基を有する1,2−ブタジエン単位の含有量は、樹脂組成物の硬化性を考慮すると、50%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。また、ブタジエンポリマー(b2)の数平均分子量は、500〜10,000の範囲であることが好ましい。更に、樹脂組成物の硬化性や硬化物としたときの誘電特性と、プリプレグとしたときの樹脂の流動性とのバランスを考慮すると、700〜8,000の範囲であることがより好ましく、1,000〜5,000の範囲であることがさらに好ましい。なお、数平均分子量とは、ポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分における数平均分子量の定義記載と同様である。
ブタジエンポリマー(b2)として、例えば、−〔CH2−CH=CH−CH2〕−単位(j)及び−〔CH2−CH(CH=CH2)〕−単位(k)からなる化学変性されていないブタジエンポリマーであり、j:kの比が60〜5:40〜95であるものを用いることができる。
本発明において好適に用いられるブタジエンポリマー(b2)成分の具体例としては、B−1000、B−2000、B−3000(日本曹達(株)製、商品名)、B−1000、B−2000、B−3000(新日本石油化学(株)製、商品名)、Ricon142、Ricon150、Ricon152、Ricon153、Ricon154(SARTOMER社製、商品名)等を商業的に入手可能である。
前記架橋剤(b3)は、分子中に前記ブタジエンポリマー(b2)との反応性を有する官能基を有する化合物であり、例えば分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を含有する架橋性モノマー又は架橋性ポリマーが挙げられる。架橋剤(b3)成分としては、具体的には、ビニル化合物、マレイミド化合物、ジアリルフタレート、(メタ)アクリロイル化合物、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
この中でも好適に用いられる架橋剤(b3)としては、少なくとも一種以上のマレイミド化合物又は少なくとも一種以上のビニル化合物を含有すると、ブタジエンポリマー(b2)成分との共架橋性に優れるため樹脂組成物としたときの硬化性や保存安定性が良好であることや、プリント配線板としたときの成形性、誘電特性、吸湿後の誘電特性、熱膨張特性、金属箔引き剥がし強さ、Tg、吸湿時の耐熱性及び難燃性等のトータルバランスが優れるという観点から望ましい。
本発明の架橋剤(b3)成分として好適に用いられるマレイミド化合物は、下記の一般式(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)で表される各種のモノマレイミド化合物やポリマレイミド化合物を好適に用いることができる。
(式中、R1は、m価の脂肪族性又は芳香族性の有機基であり、Xa及びXbは、水素原子、ハロゲン原子及び脂肪族性の有機基から選ばれた同一又は異なっていてもよい一価の原子又は有機基であり、そしてmは、1以上の整数を示す。)
前記一般式(4)において、R1は好ましくは、フェニル、アルキルフェニル、ジアルキルフェニル、アルコキシフェニル、ベンジル、ドデシル、アルキル、シクロアルキルであり、Xa及びXbは好ましくは、水素原子である。
(式中、R3は脂肪族性、脂環式、芳香族性、複素環式のいずれかである一価又は二価の有機基であり、sは0又は1であり、sが0であり、R3が一価の基である場合、フェニル、アルキルフェニル、ジアルキルフェニル、アルコキシフェニル、ベンジル、ドデシル、アルキル、シクロアルキルであることが好ましく、そしてsが1であり、R3が二価の基である場合、アルキレン、フルオレン、シクロへキシレン−アルキレン−シクロへキシレンであることが好ましい)
(式中、R2は、−C(Xc)2−、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、又は連結する結合であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい、Xcは炭素数1〜4のアルキル基、−CF3、−OCH3、−NH2、ハロゲン原子又は水素原子を示し、それぞれ同一又は異なっていてもよい、それぞれベンゼン環の置換位置は相互に独立であり、n及びpは、0又は1〜10の整数を示す)
(式中、qは平均値で0〜10である。)
(式中、rは平均値で0〜10である。)
前記一般式(4)で示されるモノマレイミド化合物の具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
一般式(5)で表されるポリマレイミド化合物の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ) フェニル] スルホキシド、4,4´−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ) フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン、一般式(6)、(7)、(8)等のような脂肪族性、脂環式、芳香族性及び複素環式のポリマレイミドなど(ただし、各々異性体を含む)が挙げられる。
プリント配線板としたときの耐湿性、耐熱性、破壊強度、金属箔引き剥がし強さ及び低熱膨張特性の観点からは、芳香族性のポリマレイミドが好ましく、その中でも、特に熱膨張係数をさらに低める点では、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることがより好ましく、破壊強度及び金属箔引き剥がし強さをさらに高める点では、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることがより好ましい。
また、プレプリグとしたときの成形性を高める点では、緩やかな硬化反応となるモノマレイミドが好ましく、その中でもコストの点でN−フェニルマレイミドを用いることがより好ましい。そして、上記マレイミド化合物は単独でも、二種類以上を組み合わせて用いてもよく又はこれら少なくとも一種以上のマレイミド化合物と上記に示した架橋剤を一種以上併用して用いてもよい。
架橋剤(b3)成分において、マレイミド化合物とその他の架橋剤とを併用して用いる場合は、架橋剤(b3)成分中のマレイミド化合物の割合が50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上であるが、他の架橋剤と併用して用いるよりも、マレイミド化合物を単独で用いるほうがより好ましい。
ブタジエンポリマー(b2)成分として好適に用いられるビニル化合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジビニルビフェニルが挙げられる。ジビニルビフェニルが好ましい。本発明において好適に用いられるブタジエンポリマー(b2)成分の具体例としては、ジビニルビフェニル(新日鐵化学(株)製)が商業的に入手可能である。
前記ポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)は、好ましくは媒体中に展開させたポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分の存在下で、ブタジエンポリマー(b2)成分と、架橋剤(b3)成分とをゲル化しない程度に予備反応させることにより製造される。これにより、本来非相溶系であるポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分とブタジエンポリマー(b2)成分及び架橋剤(b3)成分との間に、分子鎖同士が互いに物理的に絡み合ったセミIPNポリマーが形成され、完全に硬化させる前段階の未硬化の状態で、見かけ上均一化(相容化)したプレポリマーが得られる。
ポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分を溶媒に溶解させるなどにより媒体中に展開させた後、この溶液中にブタジエンポリマー(b2)成分及び架橋剤(b3)成分を溶解又は分散させて、60〜170℃で、0.1〜20時間、加熱・撹拌させることにより製造することができる。溶液中でポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマーを製造する場合、溶液中の固形分(不揮発分)濃度が通常5〜80重量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。
そして、ポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)を製造した後は、濃縮などにより溶媒を完全に除去して無溶媒の樹脂組成物としてもよく又はそのまま溶媒に溶解若しくは分散させたポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー溶液としてもよい。また、溶液とする場合においても、濃縮等により固形分(不揮発分)濃度を高くした溶液としてもよい。
ポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)の製造に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分、ブタジエンポリマー(b2)成分及び架橋剤(b3)成分の配合割合は、ポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分の配合割合が、ブタジエンポリマー(b2)成分と架橋剤(b3)成分との合計量100質量部に対して2〜200重量部の範囲とするのが好ましく、10〜100質量部とすることがより好ましく、15〜50質量部とすることがさらに好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂(b1)成分の配合割合は、熱膨張係数、誘電特性と樹脂ワニスの粘度に起因する塗工作業性及びプリプレグの溶融粘度に起因するプリント配線板としたときの成形性とのバランスを考慮して、ブタジエンポリマー(b2)成分と架橋剤(b3)成分との合計量100質量部に対して配合することが好ましい。
また、架橋剤(b3)成分の配合割合は、ブタジエンポリマー(b2)成分100質量部に対して2〜200質量部の範囲とするのが好ましく、5〜100質量部とすることがより好ましく、10〜75質量部の範囲とすることがさらに好ましい。架橋剤(b3)成分の配合割合は、熱膨張係数、Tg及び金属箔引き剥がし強さと誘電特性とのバランスを考慮して、ブタジエンポリマー(b2)成分100重量部に対して配合することが好ましい。
前記ポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)は、その製造の際に、架橋剤(b3)成分の転化率(反応率)が5〜100%の範囲となるように予備反応させて得られる。より好ましい範囲としては、上記ブタジエンポリマー(b2)成分及び架橋剤(b3)成分の配合割合によって異なり、架橋剤(b3)成分の配合割合が、ブタジエンポリマー(b2)成分100質量部に対して2〜10質量部の範囲の場合は、架橋剤(b3)成分の転化率(反応率)を10〜100%の範囲とするのがより好ましく、10〜100質量部の範囲の場合は、架橋剤(b3)成分の転化率(反応率)を7〜90%の範囲とするのがより好ましく、100〜200質量部の範囲の場合は、架橋剤(b3)成分の転化率(反応率)を5〜80%の範囲とするのがより好ましい。
架橋剤(b3)成分の転化率(反応率)は、樹脂組成物やプリプレグで外観が均一でかつタックなしであること、プリント配線板で、吸湿時の耐熱性や金属箔引き剥がし強さ、熱膨張係数を考慮すると、5%以上であることが好ましい。
なお、前記ポリブタジエンポリマー変性ポリフェニレンエーテル樹脂(B4−1)とは、架橋剤(b3)成分が100%転化した状態を含む。また、架橋剤(b3)成分の転化が100%未満であり、反応しない、未転化の架橋剤(b3)成分が残存する状態も含む。
架橋剤(b3)成分の転化率(反応率)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリフェニレンエーテル変性ブタジエンプレポリマー中の(b3)成分の残存量と予め作成した(b3)成分の検量線とから換算したものである。
本発明の硬化性樹脂組成物には、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)以外の硬化剤を本発明の硬化を損なわない範囲で加えることもできる。
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)以外の硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
前記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
前記酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。これらその他の硬化剤成分の中でも、硬化性に優れることから、前記フェノール系化合物が好ましい。
本発明の硬化性組成物における前記エポキシ化合物(A)と前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)の配合割合は、特に制限されるものではないが、得られる硬化物が耐熱性により優れるものとなることから、前記エポキシ化合物(A)が有するエポキシ基の合計1当量に対して、前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物が前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)以外の硬化剤を含有する場合には、前記エポキシ化合物(A)が有するエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤成分が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが好ましい。このとき、前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)と、前記その他の硬化剤との割合は、本願発明が奏する低誘電率・低誘電正接に優れる効果が十分に発揮されることから、全硬化剤成分100質量部中前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましい。
本発明の硬化性組成物は、前記エポキシ化合物(A)及び前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)に加え、更に、前記エポキシ化合物(A)以外のナフタレン系エポキシ樹脂(A’)(以下、これを「ナフタレン系エポキシ樹脂(A’)」と略記する。)を用いることが、組成物の溶剤溶解性が向上し、プリント配線基板用組成物の調整が容易となる点から好ましい。
ここで用いるナフタレン系エポキシ樹脂(A’)は、具体的には、2,7−ジグリシジルオキシナフタレン、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等が挙げられる。これらのなかでも特に前記エポキシ化合物(A)との相溶性に優れる点から2,7−ジグリシジルオキシナフタレン、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、又は、α−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテルが好ましい。とりわけ、本発明においてはエポキシ樹脂(A)の前駆体であるカリックスアレーン型ナフトール化合物を製造する際、α−ナフトールと共にβ−ナフトールを併用し、該カリックスアレーン型ナフトール化合物とα−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックとの混合物を得、次いで、これをエポキシ化することにより、エポキシ化合物(A)とα−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテルとの混合物を製造したものが溶剤溶解性に優れる点から好ましい。
ここで、前記エポキシ化合物(A)とナフタレン系エポキシ樹脂(A’)との存在割合は、両者の混合物をGPCにより測定した場合におけるナフタレン系エポキシ樹脂(A’)の面積比率基準の含有率が3〜50%となる割合であることが、硬化物の耐熱性と溶剤溶解性とに優れる点から好ましい。
前記エポキシ化合物(A)とナフタレン系エポキシ樹脂(A’)との存在割合を算出する際のGPC測定条件は、具体的には以下の通りである。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
本発明の硬化性組成物では、エポキシ化合物(A)と併用し得るエポキシ化合物乃至エポキシ樹脂成分として前記ナフタレン系エポキシ樹脂(A’)に加え、樹脂成分の有機溶剤への溶解性を損なわない範囲でその他のエポキシ樹脂(A”)を使用してもよい。その他のエポキシ樹脂(A”)の使用量は、例えば、全エポキシ成分中、5〜50質量%となる範囲であることが好ましい。
ここで使用され得るその他のエポキシ樹脂(A”)としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を及びHCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が前記エポキシ化合物(A)及び前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)に加えて、前記したナフタレン系エポキシ樹脂(A’)や、更にその他のエポキシ樹脂(A”)を含有する場合、これらの配合割合は、硬化性組成物中の全エポキシ成分が含有するエポキシ基の合計1当量に対し、前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが、硬化性が良好となり硬化物の耐熱性に優れる点から好ましい。
また、本発明の硬化性組成物が、更に前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)以外の硬化剤を含有する場合、これらの配合割合は、硬化性組成物中の全エポキシ成分が含有するエポキシ基の合計1当量に対し、硬化剤成分が含有するフェノール性水酸基の合計が0.7〜1.5当量の範囲となる割合であることが、硬化性が良好となり硬化物の耐熱性に優れる点から好ましい。
本発明では、必要に応じて硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2−エチル−4−メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
以上詳述した本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用ワニス等に調整する場合、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線基板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分が30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、難燃性をさらに高めるために、例えばプリント配線基板用途においては、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール系化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.5〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ成分、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5〜100質量部の範囲で配合することが好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の硬化性組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ成分、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明の硬化性組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等が挙げられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高耐熱性及び難燃性といった特性からプリント配線板材料やビルドアップ用接着フィルムに用いることが好ましい。
ここで、本発明の硬化性組成物からプリント回路基板を製造するには、前記有機溶剤(C)を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
本発明の硬化性組成物をレジストインキとして使用する場合には、例えば該硬化性組成物の触媒としてカチオン重合触媒を用い、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該硬化性組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
本発明の硬化性組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(x)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(x)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における層(x)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、硬化性組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルム(y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(x)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(x)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明の硬化物を得る方法としては、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%
」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、軟化点、13C−NMR、GPC及びMSは以下の条件にて測定した。
1)軟化点測定法:JIS K7234
2)13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
3)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアル
に準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
4)MS :日本電子株式会社製 二重収束型質量分析装置 AX505H(FD505
H)
製造例1 エポキシ化合物(A−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール216質量部(1.50モル)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液146質量部(1.80モル)、イソプロピルアルコール121質量部、49%水酸化ナトリウム水溶液46質量部(0.56モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、80℃に昇温し1時間攪拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ40質量部を添加して中和した後、冷却し結晶物をろ別した。その後、水200質量部で3回洗浄を繰り返した後に、加熱減圧下乾燥してナフトール化合物(a−1)224質量部得た。得られたナフトール化合物(a−1)の水酸基当量は156グラム/当量であった。得られたナフトール化合物のGPCチャートを図1に、MSスペクトルを図2に示す。
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたナフトール化合物(a−1)156質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ化合物にメチルイソブチルケトン300質量部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100質量部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のエポキシ化合物(A−1)201質量部を得た。得られたエポキシ化合物(A−1)のエポキシ当量は239グラム/当量であった。得られたエポキシ化合物(A−1)のGPCチャートを図3に、13C−NMRチャートを図4に、MSスペクトルを図5に示す。MSスペクトルから前記構造式1においてn=4の場合の化合物に相当する848のピークが検出された。また、GPCチャートから算出される前記構造式1においてn=4の場合に相当する化合物の含有率は85.6%であった。
製造例2 エポキシ樹脂混合物(A−2)の製造
α−ナフトール216質量部(1.50モル)をα−ナフトール144質量部(1.00モル)とβ−ナフトール72質量部(0.50モル)にした以外は製造例1と同様にして、エポキシ樹脂混合物(A−2)199質量部を得た。得られたエポキシ樹脂混合物(A−2)の軟化点は133℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は115.0dPa・s、エポキシ当量は240グラム/当量であった。得られたエポキシ樹脂混合物(A−2)のGPCチャートを図6に、13C−NMRチャートを図7に、MSスペクトルを図8に示す。MSスペクトルから前記構造式1においてn=4を示す848のピークが検出された。また、GPCチャートから算出される前記構造式1におけるn=4体の含有率は34.1%であった。従って、前記エポキシ樹脂混合物(A−2)は、前記構造式1においてn=4のエポキシ化合物とα−ナフトール/β−ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテルとの混合物であることが判明した。
製造例3 ポリフェニレンエーテル樹脂(B−2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、トルエン250質量部を入れ、内温を90℃に制御しながらポリフェニレンエーテル樹脂[SABIC社製「ノリル640−111」数平均分子量(Mn)25,000]90質量部、ビスフェノールA 7質量部、過酸化ベンゾイル7質量部を入れ、2時間撹拌を続けて反応させることにより、数平均分子量(Mn)2,500のポリフェニレンエーテル樹脂(B−2)を得た。
比較製造例1 エポキシ樹脂(A’−1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、水158質量部、蓚酸5質量部を仕込み、室温から100℃まで45分で昇温しながら撹拌した。続いて、42質量%ホルマリン水溶液177質量部(2.45モル)を1時間要して滴下した。滴下終了後、さらに100℃で1時間攪拌し、その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去しナフトール樹脂(a’−1)498質量部を得た。得られたナフトール樹脂(a’−1)の軟化点は133℃(B&R法)、水酸基当量は154グラム/当量であった。また、MSスペクトルの結果からカリックスアレーン構造は確認できなかった。次いで、ナフトール樹脂(a’−1)154質量部(水酸基1.0当量)とエピクロルヒドリンを実施例1と同様に反応させ、エポキシ樹脂(A’−1)193質量部を得た。エポキシ当量は236グラム/当量であった。
実施例4〜6及び比較例2、3
主剤であるエポキシ成分として、(A−1)、(A−2)、(A’−1)、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(A’−2)(DIC株式会社製「エピクロンN−680」)を、硬化剤としてポリフェニレンエーテル樹脂(B−1)(SABIC社製「SA90−100」)及び(B−2)を、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を用いて表1に示した組成で配合し、更にメチルエチルケトンを加えて不揮発分が58質量%となるように調整した。これをプレスで150℃の温度で10分間成形した後、175℃で5時間硬化させて評価サンプルを作成した。これについて下記の方法で評価し、結果を表1に示した。
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<誘電率・誘電正接>
JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」を用いて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。