JP2013237254A - 感熱記録材、その製造方法及びこの感熱記録材を用いた印刷物の製造方法 - Google Patents

感熱記録材、その製造方法及びこの感熱記録材を用いた印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水性及び耐可塑剤性に優れる感熱記録材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすビニルアルコール系重合体を含有する感熱記録材である。
Figure 2013237254

(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。mは、0〜2の整数である。nは、3以上の整数である。)
370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
【選択図】なし

Description

本発明は、ビニルアルコール系重合体を含有する感熱記録材、その製造方法及びこの感熱記録材を用いた印刷物の製造方法に関する。
ポリビニルアルコールに代表されるビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある。)は、水溶性の合成高分子として知られており、合成繊維であるビニロンの原料、紙加工剤、繊維加工剤、接着剤、乳化重合及び懸濁重合用の安定剤、無機物のバインダー、フィルムなどの用途に広く用いられている。特に、PVAは他の水溶性合成高分子と比べて強度特性及び造膜性に優れており、この特性を生かして、感熱記録材における、感熱発色層やオーバーコート層といった塗工層を形成する材料として重用されている。
このようなPVAの特性をさらに高めるために、各種変性がなされたPVAが開発されている。変性PVAの一つとして、シリル基含有PVAが挙げられる。このシリル基含有PVAは、耐水性及び無機物に対するバインダー力が高い。しかし、シリル基含有PVAは、(a)水溶液を調製する際に水酸化ナトリウム等のアルカリや酸を添加しなければ、十分に溶解しにくいこと、(b)調製された水溶液の粘度安定性が低下すること、(c)無機物を含有する皮膜を形成させた場合、得られる皮膜の耐水性と無機物に対するバインダー力とを同時に満足させることが困難であること等の不都合がある。従って、このようなPVAを塗工層に用いて製造された感熱記録材も、近年の感熱記録材への高い要求に十分対応できるほどの耐水性等を備えるものではない。また、感熱記録材の塗工層には、耐水性に加えて、可塑剤を含むフィルムと接触した状態で保存されても性能が低下しないといった耐可塑剤性も必要とされる。
そこで、粘度平均重合度(P)とシリル基を有する単量体単位の含有率(S:モル%)との積(P×S)を一定範囲内とすることなどにより、水溶性等が高められたシリル基含有PVA(特開2004−43644号公報参照)や、このようなシリル基含有PVAを含有するコーティング剤を用いて得られる感熱記録材(特開2005−194437号公報参照)が提案されている。しかし、これらのシリル基含有PVAにおいては、上記積(P×S)の上限が370とされており、シリル基を有する単量体単位の含有率を増やしてシリル基含有PVAとしての特性を高めることと、水溶性等を高めることとのトレードオフの関係が解消されてはいない。すなわち、上記特開2004−43644号公報の段落0009に記載のように、積(P×S)が370以上の場合には、シリル基含有PVAの水溶液を調製する際にアルカリや酸を添加しなければ溶解できない場合があるという取扱上の不都合を有している。つまり、上記シリル基含有PVAも、感熱記録材に対する上記要求に十分に対応したものであるとは言えない。
特開2004−43644号公報 特開2005−194437号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、耐水性及び耐可塑剤性に優れる感熱記録材、その製造方法、及びそれを用いた印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすPVAを含有する感熱記録材である。
Figure 2013237254
上記式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。mは、0〜2の整数である。nは、3以上の整数である。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。
370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
当該感熱記録材に含有されるPVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、シリル基が炭素原子数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有している。このため、例えば、当該感熱記録材の塗工層(感熱発色層やオーバーコート層等)を上記PVAを含むコーティング剤を用いて製造する際、このコーティング剤に含まれるPVAのシリル基の変性量を高めても、このPVAの中性領域における水溶性が高いためコーティング剤の取扱性がよく、粘度安定性の低下も抑えられる。従って、当該感熱記録材によれば、含まれるPVAのシリル基変性量を高めることができ、耐水性や耐可塑剤性等を高めることができる。
上記PVAが、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
このように上記PVAの粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、PVAの水溶性及び粘度安定性が高まり、当該感熱記録材において耐水性や耐可塑剤性を高めることができる。
上記式(1)中のnは、6以上20以下の整数であることが好ましい。nを上記範囲とすることで、上記PVAと併用して用いられる架橋剤の含有量を減らすことができ、架橋剤を用いない場合にも、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等を十分に発揮することができる。
上記単量体単位は下記式(2)で表されることが好ましい。
Figure 2013237254
上記式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、上記式(1)と同様である。Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。Rは、水素原子又はメチル基である。
上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、当該感熱記録材の諸性能をより高めることができる。
上記式(2)中のXは−CO−NR−*(Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表されることが好ましい。このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置にアミド構造を有することで上記PVAのシリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性及び粘度安定性等をより高めることができ、その結果、当該感熱記録材の諸機能をより高めることができる。
上記式(2)中のXは−CO−NH−*(*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表され、nが12以下の整数であるとよい。上記単量体単位をこのような構造とすることで、上記PVAの水溶性や粘度安定性等が高まり、当該感熱記録材の諸機能をより高めることができ、また、上記PVAの製造を容易に行うことができる。
上記式(2)で表される基を有する単量体単位を含む上記PVAは、下記式(3)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られたものであるとよい。このような方法で得られたPVAを用いることで、当該感熱記録材の諸特性をより好適に発揮することができる。
Figure 2013237254
上記式(3)中、R〜R、X、m及びnの定義は、上記式(2)と同様である。
当該感熱記録材が、基材、この基材の表面に形成される感熱発色層、及びこの感熱発色層の表面に形成されるオーバーコート層を備え、上記感熱発色層及びオーバーコート層の少なくともいずれかが、上記PVAを含むコーティング剤の塗工により形成されているとよい。このようにすることで、当該感熱記録材の上記層を上記PVA等から形成することができ、より効果的に耐水性や耐可塑剤性を高めることができる。
上記感熱記録材を製造するための本発明の製造方法は、上記PVAを含むコーティング剤を基材に塗工する工程を有する。当該製造方法によれば、上記感熱記録材を容易に得ることができる。
さらに、本発明は、上記感熱記録材に印字する工程を有する印刷物の製造方法を包含する。当該製造方法によれば、上記感熱記録材を用いるため、耐水性、耐可塑剤性に優れた印刷物が得られる。
以上説明したように、本発明の感熱記録材は、上記特定のPVAを含むことで、高い耐水性や耐可塑剤性を発揮することができる。また、当該製造方法によれば、上記感熱記録材を容易に得ることができる。さらに、本発明の印刷物の製造方法によれば、上記感熱記録材を用いるため、耐水性、耐可塑剤性に優れた印刷物が得られる。
以下、本発明の感熱記録材、その製造方法、及びそれを用いた印刷物の製造方法の実施の形態について詳説する。
本発明の感熱記録材は、以下に詳説する特定の単量体単位を含むPVAを含有する。当該感熱記録材は、例えば、基材、感熱発色層及びオーバーコート層がこの順に積層された層構造を有し、上記感熱発色層及びオーバーコート層の少なくともいずれかが、上記PVAを含むコーティング剤の塗工による塗工層として形成されている。ここで、上記オーバーコート層が上記PVAを含むコーティング剤の塗工により形成されていることが好ましい。このようにすることで、当該感熱記録材の上記層を上記PVA等から形成することができ、より効果的に耐水性や耐可塑剤性を高めることができる。
<基材>
当該感熱記録材の基材としては、従来公知の透明性及び不透明性の支持基体がいずれも使用できる。上記透明性支持基体としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどのフィルム、シート、透明性の高い紙等が挙げられる。上記不透明性支持基体としては、通常の紙、顔料コート紙、布、木材、金属板、合成紙、不透明化処理した合成樹脂系フィルム、シートなどが挙げられる。これらの中でも、コーティング剤を基紙内部にまで浸透させ、耐水性等を好適に高めることができる観点などから、紙が好ましい。
<コーティング剤>
上記コーティング剤は、通常、上記PVAの水溶液であり、他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、オーバーコート層を形成する場合は、架橋剤、水溶性高分子、高分子の分散体、滑剤及び充填材等、感熱発色層を形成する場合は、感熱染料、顕色剤、架橋剤、水溶性高分子、高分子の分散体、滑剤及び充填材等を挙げることができる。
<PVA>
上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含む。すなわち、上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位とビニルアルコール単位(−CH−CHOH−)とを含む共重合体であり、さらに他の単量体単位を有していてもよい。
上記式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等を挙げることができる。
は、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基(NH)である。上記アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。上記アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等を挙げることができる。上記アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。Rで表されるこれらの基の中でも、アルコキシル基又はOMで表される基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルコキシル基及びMが水素若しくはアルカリ金属であるOMで表される基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びMがナトリウム若しくはカリウムであるOMで表される基がさらに好ましい。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素原子数1〜5のアルキル基を挙げることができる。R及びRとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含有する置換基としては、アルコキシル基やアシロキシル基等を挙げることができる。また、窒素原子を含有する置換基としては、アミノ基やシアノ基等を挙げることができる。
なお、R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。
mは、0〜2の整数であるが、0が好ましい。mが0である、すなわち、上記単量体単位が、3つのR基を有することで、変性による効果をより高めることができる。
nは、3以上の整数である。nの上限としては、特に制限されないが、例えば20であり、12が好ましい。上記PVAは、上記式(1)中のnが3以上、すなわちシリル基が炭素原子数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有していることで、シリル基の変性量を高めても、水溶性及び粘度安定性の低下が抑えられる。このような効果が発現する理由は十分解明されてはいないが、例えば、疎水性を示す炭素原子数3以上のアルキレン基が、水溶液中において、Si−Rの加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるためであると推測される。さらにnは、6以上の整数であることがより好ましい。nをこのような範囲にすることで、通常、上記PVAと併用して用いられる架橋剤の含有量を減らすことができ、架橋剤を用いない場合にも、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等を十分に発揮することができる。
上記単量体単位の具体的構造は、上記式(1)で表される基を有する限り特に限定されないが、上記式(2)で表されることが好ましい。
上記式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、上記式(1)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、水溶性及び粘度安定性、得られる感熱記録材の耐水性及び耐可塑剤性等の諸性能をより高めることができる。
上記2価の炭化水素基としては、炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜10の2価の芳香族炭化水素基等を挙げることができる。上記炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等を挙げることができる。上記炭素原子数6〜10の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基等を挙げることができる。上記酸素原子を含む2価の有機基としては、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等を挙げることができる。上記窒素原子を含む2価の有機基としては、イミノ基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等を挙げることができる。
上記Xで表される基の中でも、酸素原子又は窒素原子を含む2価の有機基が好ましく、アミド基を含む基がより好ましく、−CO−NR−*(Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表される基であることがさらに好ましい。このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置に極性構造、好ましくはアミド構造を有することで、シリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性や粘度安定性等をより高めることができる。なお、上記Rとしては、上記機能をより高めたり、上記PVAの製造を容易に行うことができる点から、水素原子が好ましい。
は、水素原子又はメチル基である。
上記単量体単位としては、下記式(4)で表されるものがさらに好ましい。
Figure 2013237254
上記式(4)中、R、R、R、X及びmの定義は、上記式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
上記式(4)中、R’及びR’は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素原子数1〜5のアルキル基を挙げることができる。R’及びR’としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R’及びR’で表されるアルキル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含有する置換基としては、アルコキシル基やアシロキシル基等を挙げることができる。また、窒素原子を含有する置換基としては、アミノ基やシアノ基等を挙げることができる。なお、R’及びR’がそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R’及びR’は、独立して上記定義を満たす。
上記式(4)中、n’は、1以上の整数である。nの上限としては、特に制限されないが、例えば18であり、10が好ましい。
上記単量体単位が、上記式(4)で表される場合、当該感熱記録材の諸機能をより効果的に発現させることができる。この理由も定かではないが、上記PVAを含むコーティング剤(水溶液)中においてSi−Rの加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるという上述した機能がより効果的に発揮されるためと推測される。
上記PVAは、下記式(I)を満たす。
370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
上記粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、上記PVAをけん化度が99.5モル%未満の場合は、けん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
上記単量体単位の含有率(S:モル%)は、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求められる。ここで、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRを測定するに際しては、このビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を十分に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl溶媒に溶解して分析に供する。
粘度平均重合度(P)と上記単量体単位の含有率(S)との積(P×S)は、分子100個あたりの上記単量体単位の数(平均値)に相当する。この積(P×S)が上記下限未満の場合は、当該感熱記録材の皮膜強度や耐水性等のシリル基に由来する諸特性を十分に発揮することができない。逆に、この積(P×S)が上記上限を超えると、PVAの水溶性や水溶液の粘度安定性が低下し、得られる感熱記録材の諸性能が低下しやすくなる。積(P×S)は、下記式(I’)を満たすことが好ましく、下記式(I’’)を満たすことがより好ましい。
400≦P×S≦3,000 ・・・(I’)
500≦P×S≦2,000 ・・・(I’’)
上記PVAは、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
このように粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、水溶性及び粘度安定性等を高め、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等を高めることができる。
さらには、上記粘度平均重合度(P)において、下記式(II’)を満たすことがより好ましく、下記式(II’’)を満たすことがさらに好ましい。
500≦P≦3,000 ・・・(II’)
1,000≦P≦2,400 ・・・(II’’)
粘度平均重合度(P)が上記下限未満の場合は、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等が低下する場合がある。逆に、粘度平均重合度(P)が上記上限を超える場合は、水溶性や粘度安定性等が低下する場合がある。
また、上記単量体単位の含有率においては、下記式(III’)を満たすことがより好ましく、下記式(III’’)を満たすことがさらに好ましい。
0.25≦S≦6 ・・・(III’)
0.5≦S≦5 ・・・(III’’)
上記単量体単位の含有率(S)が上記下限未満の場合は、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等が低下する場合がある。逆に、単量体単位の含有率(S)が上記上限を超える場合は、水溶性や粘度安定性等が低下する場合がある。
上記PVAのけん化度としては、特に制限はないが、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、97モル%以上が特に好ましい。上記PVAのけん化度が上記下限未満の場合は、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等が低下する場合がある。なお、上記PVAのけん化度の上限としては、特に制限はないが、生産性等を考慮すると、例えば99.9モル%である。ここで、PVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法に準じて測定した値をいう。
<PVAの製造方法>
上記PVAの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体と、上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させ、得られる共重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化することにより得ることができる。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等を挙げることができ、これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
また、上記式(1)で表される基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、得られるPVAの重合度(P)を調節すること等を目的として、本発明の主旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエタンチオール、n−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類;テトラクロロメタン、ブロモトリクロロメタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン類が挙げられる。
上記式(1)で表される基を有する単量体としては、例えば上記式(3)で表される化合物を挙げることができる。上記式(3)で表される化合物を使用することにより、最終的に、上記式(2)で表される基を有する単量体単位を含むPVAが容易に得られる。
上記式(3)中、R〜R、X、m及びnの定義は、上記式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
上記式(3)で表される化合物としては、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミドブチルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリルアミドオクチルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリルアミドヘキシルトリメトキシシラン、12−(メタ)アクリルアミドドデシルトリメトキシシラン、18−(メタ)アクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−4−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリルアミド−5−メチルヘキシルトリメトキシシラン、4−ペンテニルトリメトキシシラン、5−へキセニルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記ビニルエステル系単量体と上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。特に、重合温度が30℃より低い場合には、乳化重合法が好ましく、重合温度が30℃以上の場合には、無溶媒で行う塊状重合法又はアルコール等の溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。
乳化重合法の場合、溶媒としては水が挙げられ、メタノール、エタノール等の低級アルコールを併用してもよい。また、乳化剤としては、公知の乳化剤を使用することができる。共重合の際の開始剤としては、鉄イオン−酸化剤−還元剤を併用したレドックス系開始剤が重合をコントロールする上で好適に用いられる。塊状重合法や溶液重合法の場合、共重合反応を行うにあたって、反応の方式は回分式及び連続式のいずれの方式にても実施可能である。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが挙げられる。この場合の共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5℃〜50℃の範囲が適当である。
この共重合反応の際には、本発明の趣旨が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸又はその誘導体;(メタ)アクリル酸又はその塩、若しくはエステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等のカチオン基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体の使用量は、その使用される目的や用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で20モル%以下、好ましくは10モル%以下である。
上記共重合により得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法に従って溶媒中でけん化され、PVAへと導かれる。
けん化反応の触媒としては、通常、アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、及びナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。上記アルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル系単量体単位を基準にしたモル比で、0.004〜0.5の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.05の範囲内であることがより好ましい。また、この触媒は、けん化反応の初期に一括して添加してもよいし、けん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加してもよい。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましい。また、メタノールの使用にあたり、メタノール中の含水率が好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、特に好ましくは0.005〜0.8質量%に調整されているのがよい。
けん化反応は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは20〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間としては、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応は、バッチ法及び連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和してもよく、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、及び酢酸メチル等のエステル化合物などを挙げることができる。
けん化反応により得られたPVAは、必要に応じて、洗浄することができる。この洗浄の際に用いられる洗浄液としては、メタノール等の低級アルコール、酢酸メチル等の低級脂肪酸エステル、及びそれらの混合物等を挙げることができる。これらの洗浄液には、少量の水やアルカリ又は酸等が添加されていてもよい。
上記コーティング剤における上記PVAの含有割合としては、特に限定されないが、4質量%以上20質量%以下が好ましい。このように上記コーティング剤における上記PVAの含有割合を比較的高濃度とすることにより、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等を効果的に高めることができる。
<他の成分>
上記架橋剤としては、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム化合物、乳酸チタン等のチタン化合物、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン等のエポキシ化合物、ポリオキサゾリンなどを挙げることができる。感熱発色層やオーバーコート層等を形成するためのコーティング剤がPVAとともに架橋剤を含むことで、得られる感熱記録材の耐水性や耐可塑剤性等をより高めることができる。
上記水溶性高分子又は高分子の分散体としては、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のアルカリ塩(ナトリウム塩等)、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩(ナトリウム塩等)、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩(ナトリウム塩等)、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウムソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル酸共重合体等のラテックス等を挙げることができる。
上記充填材としては、例えば、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成クレー、酸化チタン、ケイソウ土、沈降シリカ、ゲル状シリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、ポリスチレン微粒子、ポリ酢酸ビニル系微粒子、尿素−ホルマリン樹脂微粒子等を挙げることができる。
また、上記滑剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸金属塩、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等を挙げることができる。
上記感熱染料としては、特に限定されないが、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル・バイオレット・ラクトン)、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス−(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド等のトリアリールメタン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系化合物;ローダミンB−アニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシル−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(β−エトキシエチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(γ−クロロプロピル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等のキサンテン系化合物;ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等のチアジン系化合物;3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン等のスピロ系化合物などを挙げることができる。これらの感熱染料は、感熱記録材の用途等により適宜選択され、単独で又は2種以上の混合物として使用される。
上記顕色剤としては、特に限定されないが、フェノール誘導体及び芳香族カルボン酸誘導体が好ましく、特にビスフェノール類が好ましい。フェノール誘導体の具体例としては、p−オクチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ジヒドロキシジフェニルエーテル等を挙げることができる。芳香族カルボン酸誘導体の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、及び上記カルボン酸の多価金属塩等を挙げることができる。
上記コーティング剤の固形分濃度としては、特に限定されないが、塗工性等の点から、5質量%以上20質量%以下が好ましい。
上記コーティング剤のpHとしては、特に限定されないが、4以上8以下とすることが好ましい。上記コーティング剤は、用いる上記PVAが水への溶解性に優れるため、水に対して水酸化ナトリウムなどのアルカリや酸を特に添加しなくとも均一な水溶液を得ることができ、取扱性に優れる。また、上記コーティング剤によれば、中性領域においても、十分な粘度安定性を発揮することができる。従って、当該感熱記録材の諸性能を効果的に発揮することができる。
上記コーティング剤を基材に塗工して感熱記録材を製造する方法としては、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。具体的には、上記コーティング剤の塗工により感熱発色層を形成する場合には、上記コーティング剤を基材の表面に塗工する方法などが挙げられ、上記コーティング剤の塗工によりオーバーコート層を形成する場合には、上記コーティング剤を基材の表面に形成された感熱発色層の表面に塗工する方法などが挙げられる。塗工方法としては、エアーナイフ法、プレート法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、エクストルージョン法などの方法が利用可能である。
上記コーティング剤の塗工量としては、例えばオーバーコート層を形成する場合、感熱記録装置のサーマルヘッドから感熱記録材の感熱発色層への熱伝導が阻害されない程度で適宜選択されるが、通常、固形分換算で1〜10g/m、好ましくは2〜7g/mである。また、例えば感熱発色層を形成する場合、通常、固形分換算で3〜10g/m、好ましくは4〜8g/mである。
なお、当該感熱記録材においては、上記基材、感熱発色層及びオーバーコート層との他に、他の層を有していてもよい。上記他の層としては、基材と感熱発色層との間に配置されるアンダーコート層などを挙げることができる。また、当該感熱記録材は、上記PVAを基材中に含んでいてもよい。このような場合であっても、当該感熱記録材は、高い耐水性や耐可塑剤性を発揮することができる。
<印刷物の製造方法>
上記の感熱記録材に印字することにより、耐水性、耐可塑剤性に優れた印刷物が得られる。印字に使用される印刷装置に特に制限はなく、サーマルヘッドを備えた従来公知の感熱記録装置を用いることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
なお、実施例及び比較例で用いたシリル基を有する単量体(モノマーA)は、以下のとおりである。
MAmPTMS :3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシラン
MAmPTES :3−メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン
MAmBTMS :4−メタクリルアミドブチルトリメトキシシラン
MAmOTMS :8−メタクリルアミドオクチルトリメトキシシラン
MAmDDTMS:12−メタクリルアミドドデシルトリメトキシシラン
MAmODTMS:18−メタクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン
AMBTMS :3−アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン
4−PTMS :4−ペンテニルトリメトキシシラン
VMS :ビニルトリメトキシシラン
MAmMTMS :メタクリルアミドメチルトリメトキシシラン
AMPTMS :2−アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン
[シリル基含有PVAの合成]
下記の方法によりPVAを製造し、そのけん化度、上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)(一部の例では、シリル基を有する単量体単位の含有率)、粘度平均重合度(P)を求めた。また、以下の評価方法にしたがって、感熱記録材の性能を評価した。
[PVAの分析方法]
PVAの分析は、特に断らない限りJIS−K6726に記載の方法に従って行った。
[合成例1]PVA1の製造
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた6Lセパラブルフラスコに、酢酸ビニル1,500g、メタノール500g、上記式(1)で表される基を有する単量体(モノマーA)としてのMAmPTMS1.87gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてMAmPTMSをメタノールに溶解して濃度8%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.8gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとモノマーA(MAmPTMS)の比率)が一定となるようにしながら、60℃で2.7時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液(逐次添加液)の総量は99gであった。また、重合停止時の固形分濃度は29.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、上記式(1)で表される基を有するポリ酢酸ビニル(PVAc)を40%含有するメタノール溶液を得た。さらに、これにPVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.04、PVAcの固形分濃度が30質量%となるように、メタノール及び水酸化ナトリウムを10質量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。アルカリ溶液を添加後、約5分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノールを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置し、上記式(1)で表される基を有するPVA1を得た。PVA1の重合度(P)は1,700、けん化度は98.6モル%であった。
得られたPVA1の上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(シリル基を有する単量体単位の含有率)は、このPVAの前駆体であるPVAcのプロトンNMRから求めた。具体的には、得られたPVAcの再沈精製をn−ヘキサン/アセトンで3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPVAcを作製した。このPVAcをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定した。酢酸ビニル単位の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とモノマーA単位のメトキシ基のメチルに由来するピークβ(3.4〜3.8ppm)とから、下記式を用いて上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)を算出した。PVA1において、含有率(S)は0.5モル%であった。得られたPVAについて分析した結果を表1に示す。
式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率S(モル%)
={(βのピーク面積/9)/(αのピーク面積+(βのピーク面積/9))}×100
[合成例2〜21及び比較合成例1〜15]PVA2〜PVA36の製造
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、モノマーAの種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1及び表2に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にしてPVA2〜PVA36を得た。得られた各PVAについて分析した結果を表1及び表2に示す。
Figure 2013237254
Figure 2013237254
[実施例1]感熱記録材の製造
下記の方法により感熱記録紙(感熱記録材)を製造し、その耐水性及び耐可塑剤性を評価した。
(1)感熱染料、顕色剤及び顔料の各水性分散液の調製
[感熱染料の水性分散液Aの組成]
ロイコ染料(山本化成株式会社製、商品名:OBD−2) 20%
濃度10%のPVA(株式会社クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 60%
[顕色剤の水性分散液Bの組成]
顕色剤(日本曹達株式会社製:D−8) 20%
濃度10%のPVA(株式会社クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 60%
[顔料の水性分散液Cの組成]
ステアリン酸アミド 10%
焼成カオリン 20%
濃度5%のPVA(クラレ社製:PVA205)水溶液 30%
水 40%
上記組成の水性分散液A、水性分散液B及び水性分散液Cをそれぞれ別々に調製し、ビーカー中で15分間の予備撹拌を行った。
次に水性分散液Aをサンドグラインダー(関西ペイント株式会社製:バッチ式卓上サンドグラインダー)に移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2,170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。レーザー回折式粒度測定機(株式会社島津製作所製:SALD−1000)により測定した結果、得られた感熱染料の水性分散液Aの分散粒子径は0.46μmであった。また、色差計(日本電色工業株式会社製:Z−1001DP)により測定した結果、水性分散液Aの白色度は−8.1であった。なお、白色度は0が完全に白色であることを示し、マイナスの値が大きくなるほど着色していることを示す。
同様に、水性分散液Bをサンドグラインダーに移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2,170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。
また、水性分散液Cをホモジナイザーに移し、回転数10,000rpmの条件で2分間かけて分散質を分散させた。
(2)感熱発色層用コーティング剤の調製
上記の水性分散液Aを2部、水性分散液Bを4部、水性分散液Cを2部及びPVA117(株式会社クラレ製)の10%水溶液を2部混合して撹拌した後、必要量の水を加えて固形分濃度21%の感熱発色層用コーティング剤を調製した。
(3)オーバーコート層用コーティング剤の調製
エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体(日本油脂株式会社製:プロノン104)0.2部、及びシリカ(塩野義製薬株式会社製:カープレックスCS−5)50部に水72.5部を加えて十分に分散させながら、PVA1の10%水溶液828部をゆっくり室温で加えた後、さらにステアリン酸亜鉛分散液(中京油脂株式会社製、ハイドリンZ730;固形分濃度30%)を7.5部加えて、PVA1のシリカ分散水溶液を作製成した。得られたPVA1のシリカ分散水溶液に必要量の水を加えて固形分濃度12%のオーバーコート層用コーティング剤を調製した。
(4)感熱記録紙の製造
原紙(坪量:52g/mの上質紙)の表面に、上記(2)で調製した感熱発色層用コーティング剤を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で6g/m塗工し、50℃で5分間乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理し、その塗工紙表面に上記(3)で調製したオーバーコート層用コーティング剤を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で3g/m塗工した後、50℃で10分間乾燥した。さらに上記塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理して感熱記録紙を製造した。
上記感熱記録紙を製造した直後に、感熱ファクシミリ用プリンター(株式会社リコー製:リファックス300)を用いて上記感熱記録紙に印字し印刷物を得て、下記の方法にしたがってその耐水性及び耐可塑剤性を評価した。その結果を表3に示す。
[耐水性]
印字された感熱記録紙(印刷物)を30℃蒸留水中に24時間浸漬し、以下の方法によりその記録濃度及びウェットラブの評価を行った。
・記録濃度
蒸留水浸漬前及び蒸留水浸漬後において、それぞれ印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて測定した。蒸留水浸漬前における印字部分の発色濃度に対し、蒸留水浸漬後における印字部分の発色濃度の低下が少ないほど感熱記録紙の耐水性が優秀であるとして、最も耐水性が優秀な場合をA、最も耐水性が劣る場合をEとする5段階評価を行った。
・ウェットラブ試験
蒸留水浸漬後において、印字された部分の表面を指先で摩擦し、感熱記録紙のオーバーコート層の溶出状態を観察した。感熱記録紙のオーバーコート層の溶出が少ないほど感熱記録紙の耐水性が優秀であるとして、最も耐水性が優秀な場合をS、最も耐水性が劣る場合をEとする5段階評価を行った。
[耐可塑剤性]
印字された感熱記録紙(印刷物)に軟質ポリ塩化ビニルフィルム(可塑剤を含む)を重ね合わせ、30℃、300g/mの荷重下で24時間両者を接触させた。その接触前後において、それぞれ印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて測定した。両者を接触させる前における印字部分の発色濃度に対し、接触後における印字部分の発色濃度の低下が少ないほど感熱記録紙の耐可塑剤性が優秀であるとして、最も耐可塑剤性が優秀な場合をA、最も耐可塑剤性が劣る場合をEとする5段階評価を行った。
[実施例2〜21及び比較例1〜15]
実施例1において、オーバーコート層に用いたPVA1に代えて、表3に示したPVAを用いたこと以外は、実施例1と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性及び耐可塑剤性を評価した。その結果を表3に併せて示す。
Figure 2013237254
表3に示されるように、実施例1〜21のコーティング剤でオーバーコート層を形成し感熱記録紙を製造した場合、架橋剤を使用しないPVA単独系においても、感熱記録紙の耐水性及び耐可塑剤性が良好であることが分かる。ここで、各評価項目はC以上であり、かつ、3項目中2項目以上でB以上の評価であることが良好であるとする。さらに、PVAの粘度平均重合度(P)、けん化度、単量体単位の構造、含有率(S)、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)を特定した、実施例1、2、4〜6、9、10、13、15〜20の感熱記録紙は、耐水性及び耐可塑剤性に特に優れている(ウェットラブ試験、耐可塑剤性の評価がB以上、かつどちらか一方がA以上である)。なお、例えば実施例3、7、8、11、12、14、21の感熱記録紙は、耐水性や耐可塑剤性が若干低下することが分かる。これは粘度平均重合度(P)やけん化度の低下や、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)が小さく、または大きくなっていること、単量体単位の構造が違うことに起因する。特に実施例3、7、8は、詳細は明らかではないが、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)が大きいことにより、コーティング剤の粘度が高くなり、紙(基材)に浸透しにくくなることでウェットラブ性能が低下していると考えられる。
一方、PVAが規定の要件を満たさない場合(比較例1〜15)、感熱記録紙の耐水性や耐可塑剤性が悪化するか、PVA自体の水溶性が低下することが分かる。これは単量体単位の構造の違いや、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)が小さくなることによる耐水性の低下や、(P×S)が大きくなることによるコーティング剤の取扱性の低下などが要因だと考えられる。
以上説明したように、本発明の感熱記録材は、耐水性や耐可塑剤性に優れ、感熱記録紙等として好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される基を有する単量体単位を含み、下記式(I)を満たすビニルアルコール系重合体を含有する感熱記録材。
    Figure 2013237254
    (式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。Rは、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。R〜Rで表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含有する置換基で置換されていてもよい。mは、0〜2の整数である。nは、3以上の整数である。R〜Rがそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R〜Rは、独立して上記定義を満たす。)
    370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
    P:粘度平均重合度
    S:上記単量体単位の含有率(モル%)
  2. 上記ビニルアルコール系重合体が、下記式(II)及び(III)をさらに満たす請求項1に記載の感熱記録材。
    200≦P≦4,000 ・・・(II)
    0.1≦S≦10 ・・・(III)
    P:粘度平均重合度
    S:上記単量体単位の含有率(モル%)
  3. 上記式(1)中のnが6以上20以下の整数である請求項1又は請求項2に記載の感熱記録材。
  4. 上記単量体単位が下記式(2)で表される請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感熱記録材。
    Figure 2013237254
    (式(2)中、R〜R、m及びnの定義は、式(1)と同様である。Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。Rは、水素原子又はメチル基である。)
  5. 上記式(2)中のXが−CO−NR−*(Rは、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表される請求項4に記載の感熱記録材。
  6. 上記式(2)中のXが−CO−NH−*(*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表され、nが12以下の整数である請求項4に記載の感熱記録材。
  7. 上記ビニルアルコール系重合体が、下記式(3)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られたものである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の感熱記録材。
    Figure 2013237254
    (式(3)中、R〜R、X、m及びnの定義は、式(2)と同様である。)
  8. 基材、この基材の表面に形成される感熱発色層、及びこの感熱発色層の表面に形成されるオーバーコート層を備え、
    上記感熱発色層及びオーバーコート層の少なくともいずれかが、上記ビニルアルコール系重合体を含むコーティング剤の塗工により形成されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の感熱記録材。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の感熱記録材の製造方法であって、上記ビニルアルコール系重合体を含むコーティング剤を基材に塗工する工程を有する製造方法。
  10. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の感熱記録材に印字する工程を有する印刷物の製造方法。
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