JP2013227664A - 溶銑の予備処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法において、脱珪処理時の復燐反応を防止し、コスト面及び品質面から十分な脱燐処理を行うことを可能とする予備処理方法を提供する。
【解決手段】 転炉型精錬炉1内の溶銑5に上吹きランス2から酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグ6の少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排滓する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、前記脱珪処理工程における炉内スラグの組成がSiO2の飽和領域にならないように、炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を溶銑温度及びスラグ中鉄酸化物濃度に応じて調整する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法に関する。
温室効果ガスの排出量削減が強く求められる近年、鉄鋼業においては、転炉にて溶銑の脱燐処理及び脱炭精錬を行う際に、溶銑に熱的な余裕がある場合には、炉内の溶銑に鉄スクラップなどの冷鉄源を配合して鉄鋼製品生産に要するエネルギーを削減する方法が行われている。これは、高炉に装入される鉄鉱石のような酸化鉄と異なり、金属鉄である冷鉄源は還元する必要がなく、高炉から出銑される銑鉄を精錬して溶鋼を製造するよりも、少ないエネルギー消費量及び少ない温室効果ガス排出量で溶鋼を製造できるからである。また、高炉で製造された溶銑に冷鉄源を加えて溶鋼を溶製することで、高炉で製造される溶銑量以上の溶鋼を溶製でき、溶鋼の生産量増大も可能である。
また近年、コスト面及び品質面で有利であることから、転炉での脱炭精錬の前に溶銑に対して予備処理として脱燐処理(「予備脱燐処理」ともいう)を実施し、予め溶銑中の燐を除去する精錬方法が行われている。これは、脱燐反応は精錬温度が低いほど熱力学的に進行しやすく、つまり、溶鋼段階よりも溶銑段階の方が脱燐反応は進行しやすく、少ない精錬剤で脱燐精錬を行うことができることに基づいている。
一般に溶銑の予備処理では、先ず、酸化鉄などの固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行い、この脱珪処理で発生したスラグを除去し、更に、必要に応じて溶銑を別の精錬容器に移し替えた後に脱燐精錬剤(媒溶剤)及び脱燐剤(酸素ガスなどの酸素源)を添加して脱燐処理を実施する。通常、この脱燐処理の脱燐精錬剤としては生石灰などのCaO系媒溶剤を用い、脱燐剤である酸素源としては固体酸素源(酸化鉄など)や気体酸素源(酸素ガスなど)を用いている。また、予備処理を行う精錬容器としては、トーピードカー、取鍋(高炉鍋や装入鍋)、転炉型精錬炉などが用いられている。尚、脱珪処理を行わずに直ちに脱燐処理を施す場合もあるが、珪素(Si)は燐(P)よりも酸素(O)との親和力が強く、従って、溶銑中の燐よりも珪素の方が優先的に酸化されるので、この場合の脱燐処理の精錬初期は、脱珪反応(Si+2O→SiO2)が優勢であり(この時期を「脱珪期」ともいう)、溶銑中の珪素が或る程度低減した時点から脱燐反応(2P+5O→P25)が進行する。
上記の方法で脱燐処理を行った溶銑は、熱源である珪素が酸化されて殆どなくなっており、炭素(C)も酸化(C+O→CO)されて炭素濃度も出銑時に比べて1.5質量%程度低下し、鉄スクラップなどの冷鉄源を溶解するための熱的な余裕がないことから、脱燐処理の施された溶銑の転炉における脱炭精錬工程では冷鉄源を配合できないという問題が生じている。このため、溶鋼の増産が必要な場合には、予備処理としての脱燐処理を放棄して、転炉で脱燐精錬と脱炭精錬とを同時に行うという、従来の転炉吹錬に戻す操業を行う場合もある。
しかしながら、脱燐処理を施すことで、コスト低減及び鋼材の品質向上を達成できることのみならず、スラグ発生量を低減できることから、このような操業形態の変更を行わず、前述のように、溶銑の脱燐処理を行い、その上で、転炉では脱炭精錬のみを行うと同時に鉄スクラップなどの冷鉄源の配合比率を増加させ、高炉で製造された単位質量あたりの溶銑からより多くの溶鋼を製造することが望ましい。
多くの冷鉄源を溶銑に溶解するためには、溶銑中の炭素及び珪素の燃焼熱を冷鉄源の溶解用熱源として有効活用する必要がある。転炉型精錬炉は、炉の空塔部が大きく溶銑の強攪拌が可能であり、且つ、酸素ガス供給流量を多くすることができるので、溶銑中の炭素及び珪素の燃焼熱を利用して溶銑中に冷鉄源を溶解するための精錬容器として有利である。そこで、脱珪処理による溶銑中珪素の燃焼熱を有効に活用し、且つ、脱燐処理に必要な脱燐精錬剤の使用量を低減させて脱燐精錬剤の滓化に要する熱量を抑制し、更に、脱珪処理と脱燐処理とを連続することで溶銑からの熱放出を抑制することにより、溶銑の熱的余裕を高めることを目的として、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、炉の底部から粉体及び/またはガスを溶銑中にインジェクションする手段と、炉の上部から溶銑に酸素ガスを吹き付ける手段とを有する転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪、脱燐処理を行うに際し、先ず、脱珪処理終了時のスラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])が0.3〜1.3の範囲に入るようにCaO系媒溶剤の供給量を調節して脱珪処理を行った後、炉を傾動して炉内に生成したスラグを炉口から排出し、次いで、脱燐処理を行うことを特徴とする溶銑の精錬方法が提案されている。
特開平10−152714号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
溶銑中の珪素を酸化除去する脱珪処理においては、生成されるSiO2によってスラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])が低下する。このような塩基度の低いスラグは、熱力学的に脱燐能力が低く、仮にスラグ中に燐が存在する場合には、スラグ中の燐は溶銑に移行し、所謂「復燐反応」が発生する。つまり、溶銑の燐濃度が復燐反応によって上昇する。
特許文献1では、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを交互に行っており、脱珪処理を行う際、炉内には前チャージの脱燐処理で生成した脱燐スラグの一部が炉壁などに付着して残留していることが多い。この脱燐スラグが残留したまま、次チャージの脱珪処理を開始すると、残留した脱燐スラグは、脱珪反応の進行に伴って生成する低塩基度のスラグと反応して、つまり低塩基度のスラグに吸収されて塩基度が低下し、脱燐スラグに含有されていた燐(P25)が溶銑に移行する復燐反応が生じる。1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを交互に行う場合、熱回収及び鉄源回収を目的として、前チャージの脱燐スラグを積極的に炉内に残留させる場合には、復燐量が更に大きくなる。
脱珪処理時に復燐反応によって溶銑の燐濃度が上昇すれば、引き続いて行う脱燐処理における脱燐精錬剤(CaO系媒溶剤)の使用量を増加せざるを得ず、効率的な脱燐処理を行うことができなくなる。特許文献1は、この問題について何ら考慮していない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、1つの転炉型精錬炉を用いて溶銑の脱珪処理と脱燐処理とを、途中の排滓工程を挟んで連続して行う溶銑の予備処理方法において、脱珪処理時及び途中の排滓工程での復燐反応を防止し、コスト面及び品質面から十分な脱燐処理を行うことを可能とする、溶銑の予備処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグの少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排滓する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、前記脱珪処理工程における炉内スラグの組成がSiO2の飽和領域にならないように、炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を溶銑温度及びスラグ中鉄酸化物濃度に応じて調整することを特徴とする、溶銑の予備処理方法。
[2]前記脱燐処理工程の後に前記転炉型精錬炉から溶銑を排出し、その後、転炉型精錬炉内に脱燐処理工程で生成したスラグの全量または大半を残留させた状態で溶銑を装入し、転炉型精錬炉内に装入した溶銑に脱珪処理を施すことを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の予備処理方法。
[3]前記脱珪処理工程において、脱珪処理後の炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を0.8以上に調整することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の溶銑の予備処理方法。
[4]前記脱珪処理工程において、脱珪処理後の炉内スラグの温度を1280℃以上1380℃以下に調整することを特徴とする、上記[1]ないし上記[3]のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
[5]前記脱珪処理工程において、脱珪処理後の炉内スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和を10質量%以上30質量%以下に調整することを特徴とする上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
[6]前記脱珪処理工程において、脱珪処理中の炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を0.8以上に調整することを特徴とする、上記[1]ないし上記[5]のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
[7]前記脱燐処理工程で生成したスラグの50質量%以上の量のスラグを転炉型精錬炉内に残留させることを特徴とする、上記[2]ないし上記[6]のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
本発明によれば、同一の転炉型精錬炉を用いて途中の排滓工程を挟んで脱珪処理工程及び脱燐処理工程を交互に行う際に、脱珪処理工程において、炉内スラグの組成がSiO2の飽和領域にならないように、溶銑温度及びスラグ中鉄酸化物濃度に応じて、炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を調整するので、前チャージの脱燐スラグが炉内に残留しても、残留した脱燐スラグからの溶銑への復燐反応が防止され、次の脱燐処理工程では少ないCaO系媒溶剤の使用量で十分な脱燐処理を行うこと、つまり、コスト面及び品質面から十分な脱燐処理を行うことが実現される。
本発明に係る溶銑の予備処理方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略断面図である。 本発明に係る溶銑の予備処理方法を工程順に示す概略図である。 CaO、SiO2、FeOの3成分状態図の1300℃における等温断面図の一部を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明に係る溶銑の予備処理方法を実施する際に用いる転炉型精錬炉の概略断面図、図2は、本発明に係る溶銑の予備処理方法を工程順に示す概略図である。尚、図1は、図2−(B)の脱珪処理工程を示す図である。
本発明による溶銑の予備処理方法では、図1に示すような上底吹き可能な転炉型精錬炉1を用いる。上吹きは、転炉型精錬炉1の内部を昇降可能な上吹きランス2を介して、上吹きランス2の先端から酸素源として酸素含有ガスを溶銑5に向けて供給して行われる。酸素含有ガスとしては、酸素ガス、酸素富化空気、空気、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを使用することができる。図1では、酸素含有ガスとして酸素ガス8を使用した例を示している。ここで、酸素ガス8とは工業用純酸素である。底吹きは、転炉型精錬炉1の底部に設けられた底吹き羽口3を介して行われる。底吹きガス9としては、酸素ガスを含むガスでも、或いはArガスや窒素ガスなどの不活性ガスのみでもよいが、溶銑中に吹き込むことにより溶銑5の攪拌を強化して冷鉄源の溶解を促進する機能を有するほか、底吹き羽口3から搬送用ガスとともに造滓剤を溶銑中に吹き込む機能を有するものでもよい。
本発明においては、溶銑5の精錬に2基以上の転炉型精錬炉1を使用し、そのうちの少なくとも1基の転炉型精錬炉1を本発明に係る溶銑予備処理に使用し、残りの少なくとも1基を、本発明に係る溶銑予備処理の施された溶銑5の脱炭精錬に使用する。つまり、溶銑予備処理用の転炉型精錬炉1で予備処理を行い、次いで溶銑5を脱炭精錬用の転炉型精錬炉1に移し替えて脱炭処理を行う。
本発明に係る溶銑5の予備処理方法では、図2−(A)に示すように、予め鉄スクラップなどの冷鉄源7が装入された転炉型精錬炉1に、装入鍋10を介して溶銑5を装入する。
次いで、この転炉型精錬炉内の溶銑5に、酸素源として酸素ガス或いは酸化鉄を供給して、図2−(B)に示すように脱珪処理を実施する。溶銑5に含有される珪素と酸素源中の酸素とが反応(Si+2O→SiO2)して脱珪処理が進行する。この脱珪反応による珪素の酸化熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源7の溶解が促進される。この脱珪処理前及び/または脱珪処理中に、必要に応じてスラグ6の塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])(以下、単に「塩基度」とのみ表示することもある)を調整するために、CaO系媒溶剤を転炉型精錬炉1に添加する。脱珪処理において生成するスラグ6は「脱珪スラグ」とも呼ばれる。
脱珪処理のための酸素源としては、上吹きランス2からの酸素ガス8のみでもよく、また、酸素ガス8に酸化鉄(図示せず)を併用してもよい。短時間で行われる脱珪処理中に目標とする塩基度のスラグ6を形成させるためには、CaO系媒溶剤の滓化を促進させる機能を有する酸化鉄を使用することが効果的であるが、本発明の目的の1つである多量の冷鉄源7を溶解させる観点からは、昇熱時及び分解時に吸熱する酸化鉄を用いることは好ましくなく、従って、酸素源として酸化鉄を用ることは可能な限り避けることが好ましい。また、精錬容器として転炉型精錬炉1を使用するので、強攪拌が可能であり、酸素ガス8のみを用いて脱珪処理を行っても、十分に目標とする塩基度のスラグ6を形成させることができる。
この脱珪処理工程のあとに、図2−(C)に示すように、排滓工程を設け、脱珪処理で発生した、SiO2を大量に含む低塩基度のスラグ6を転炉型精錬炉1の炉口から排出する。
排滓工程後は、転炉型精錬炉内に残留させた溶銑5にCaO系媒溶剤及び酸素源を供給して、図2−(D)に示すように、溶銑5を脱燐処理する。脱燐処理工程において、炉内のスラグの塩基度は1.5〜3.5の範囲に調整する。この脱燐処理工程において使用する酸素源は、脱珪処理と同様に、上吹きランス2からの酸素ガス8を主体とするが、一部酸化鉄を使用しても構わない。本発明は多量の冷鉄源7の溶解を目的の1つとするものであり、昇熱時及び分解時に吸熱する酸化鉄を酸素源として使用することはできるだけ避けることが好ましい。
脱燐処理で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰や炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、CaOを50質量%以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナなどの他の成分を含有するものも、脱燐処理時のCaO系媒溶剤として使用することができる。このCaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状のものは炉上のホッパーから、粉状のものは上吹きランス2を介するなどして投入することができる。
溶銑中の燐は供給される酸素源中の酸素に酸化されて燐酸化物(P25)となり、この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって形成され、脱燐精錬剤として機能するスラグ中に3CaO・P25なる安定形態の化合物として取り込まれ、溶銑5の脱燐反応が進行する。
脱燐反応が進行し溶銑中燐濃度が所定の値に低下したなら、脱燐処理を終了し、図2−(E)に示すように、転炉型精錬炉1を出湯口4が設置された側に傾転させて転炉型精錬炉内の溶銑5を出湯口4を介して溶銑保持容器(図示せず)に出湯する(出湯工程)。脱燐処理において生成するスラグは「脱燐スラグ」とも呼ばれる。以下、脱燐処理において生成するスラグを脱燐スラグと記す。
この出湯工程後、炉内の脱燐スラグを排出せずに、転炉型精錬炉1に冷鉄源7及び溶銑5を装入し、次チャージの脱珪処理工程を開始してもよく、また、炉内の脱燐スラグを排出した後、冷鉄源7及び溶銑5を装入し、次チャージの脱珪処理工程を開始してもよい。炉内に形成された脱燐スラグの全量または大半を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を開始した場合には、前チャージの脱燐スラグの有する熱量及び鉄分を次チャージの脱珪処理において回収することができるとともに、前チャージの脱燐スラグ中のCaO分を次チャージの脱珪処理におけるCaO源として活用することができ、脱珪処理時のCaO系媒溶剤の使用量を削減することができる。
本発明では、このようにして溶銑5に脱珪処理及び脱燐処理を施す際に、炉内に残留している脱燐スラグから溶銑5への復燐反応が脱珪処理工程において生じないように、脱珪処理時に生成するスラグ6(以下、「脱珪スラグ6」と記す)の塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を適切に調整する。
脱燐スラグ中の燐は、多くの場合、2CaO・SiO2と3CaO・P25との固溶体として存在することが知られている。従って、復燐反応を防止するためには、この固溶体が、脱燐スラグと低塩基度の脱珪スラグ6とが反応した場合に、反応後の脱珪スラグ6に溶解することを防ぐようにすればよい。本発明者らは、鋭意研究の結果、脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度が、状態図上のSiO2飽和領域に到達しないように脱珪スラグ6の組成を調整することで、復燐反応を実質的に防止できることを見出した。
脱珪スラグ6の主成分はCaO、SiO2、FeOの3成分と見なすことができ、この3成分状態図の1300℃における等温断面図の一部を図3に示す。図3において、1300℃におけるSiO2飽和領域は、「斜線部」の範囲として表される。脱燐スラグの塩基度はSiO2飽和領域よりも高塩基度側、即ち、高CaO濃度側であるが、脱珪反応の進行に伴ってSiO2が生成し、このSiO2と脱燐スラグとが反応することから、炉内の脱珪スラグ6の組成は高SiO2側へ移動する。本発明では、脱珪スラグ6の組成が、高SiO2側に移動してもSiO2飽和領域に達しないように、脱珪スラグ6の組成を調整する。
SiO2飽和領域の境界線上の組成は、スラグ中のFeO濃度つまり鉄酸化物濃度に依存する。図3には、10質量%と20質量%との異なるFeO濃度での境界線上の組成を示した。スラグ中のFeO濃度が10質量%の場合は、脱珪スラグ6の塩基度が0.7以下になるとSiO2飽和領域に達し、スラグ中のFeO濃度が20質量%の場合は、脱珪スラグ6の塩基度が0.5以下になるとSiO2飽和領域に達する。スラグ中のFeO濃度は脱珪処理期間の吹錬条件(送酸流量、底吹きガス流量など)で決まるが、吹錬条件から予想されるスラグ中のFeO濃度に応じて、境界線上の組成を越えないように適切に脱珪スラグ6の目標塩基度を設定すればよい。
また、SiO2飽和領域は脱珪スラグ6の温度によって変化する。一般には温度が高くなるほどSiO2飽和領域は小さくなり、温度が低くなるほど大きくなる。従って、脱珪処理時に目標とする温度において、CaO、SiO2、FeOの3元状態図のSiO2飽和領域の境界線上の組成を確認し、脱珪スラグ6の目標塩基度を設定すればよい。
通常の脱珪処理条件においては、溶銑温度が1300℃程度で、脱珪スラグ中のFeO濃度が10〜20%程度であることを勘案すると、実用的には脱珪処理後の脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上とすることで復燐反応が抑制される。上記の考えをより確実に実行するには、脱珪処理の全期間を通じて、脱珪スラグ6の組成がSiO2飽和領域に到達しないように、つまり脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上に調整すればよい。尚、脱珪スラグ6の温度は溶銑5の温度と同等と考えればよい。
この考え方に基づけば、通常の高炉で出銑された燐濃度が0.10〜0.15質量%程度の脱珪処理前の溶銑が、前チャージに由来する燐を含有する脱珪スラグと接触しても、復燐反応を生じさせることなく、排滓後の脱燐処理工程を有利に行うことが実現される。
尚、本発明では、脱珪スラグ中の鉄酸化物をFeOと見なして状態図上の解釈を行っている。鉄酸化物にはFe23も存在するが、脱珪スラグ6を含めて製鋼スラグでは鉄酸化物の主成分はFeOであり、実質的にFeOとして取り扱っても問題はない。また、製鋼スラグにはMgOやAl23などの他のスラグ成分も存在するが、これらの影響は状態図計算ソフトなどを用いて考慮してもよい。
脱珪スラグ6の塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])は、下記の(1)式に基づいて計算することができる。
塩基度=[(炉内残留CaO量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での添加CaO量(kg/溶銑-t))]÷[(炉内残留SiO2量(kg/溶銑-t))+(脱珪処理での生成SiO2量(kg/溶銑-t))]…(1)
尚、脱珪処理での生成SiO2量は、脱珪処理前後の溶銑中Si濃度の変化から算出できる。
本発明においては、脱珪スラグ6の塩基度の調整のために、脱珪処理前及び/または脱珪処理中に、(1)式に則り、必要に応じてCaO系媒溶剤を炉内に添加する。このCaO系媒溶剤としては、生石灰、炭酸カルシウム、ドロマイト、転炉スラグ(転炉での脱炭精錬で生成するスラグ)、取鍋内スラグ(取鍋内の溶鋼上に存在するスラグであって、出鋼時に混入した転炉スラグとアルミナなどの脱酸生成物とに、生石灰などのスラグ改質剤を添加したもの)などが使用できる。
脱珪処理では炉内温度が1250〜1350℃程度と低く、数分間の短時間の処理で大量のSiO2が生成することから、少ないCaO系媒溶剤の添加量で効率的に復燐を抑制するためには、低融点で滓化しやすく、且つCaO含有量の高いCaO系媒溶剤を用いることが好ましい。具体的には1300℃での液相比率が25体積%以上となるCaO系媒溶剤が望ましく、このようなCaO系媒溶剤の例としては、塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])が2〜4.5であり、Fe23含有量とAl23含有量との和が10質量%以上の製鋼スラグが挙げられる。
CaO系媒溶剤の添加方法としては、粒状及び塊状のものは炉上のホッパーから、粉状のものは上吹きランス2を介するなどして投入することができる。CaO系媒溶剤の添加時期は脱珪処理を開始してからでもよいが、脱珪処理中に脱珪スラグ6を十分に滓化させるためには、CaO系媒溶剤を事前に炉内に投入しておいてもよい。前チャージの脱燐スラグを炉内に積極的に残留させた場合は、脱珪処理工程に供する溶銑5の珪素濃度が低い場合には、CaO系媒溶剤の添加が必要でないことがある。尚、CaO系媒溶剤の使用量削減のためには、炉内に残留させる脱燐スラグの量は50質量%以上であることが好ましい。
本発明に係る溶銑5の予備処理方法では、脱珪処理終了後、転炉型精錬炉1から炉内のSiO2を大量に含む低塩基度の脱珪スラグ6を排出する。排滓性の観点から、排出する脱珪スラグ6の塩基度は1.5以下とし、且つ、脱珪スラグ6の温度を1280℃以上とすることが好ましい。これは、脱珪スラグ6の流動性を確保して、良好な排滓性及び排滓率(排滓率(質量%)=(排出スラグ質量)×100/[(脱珪処理工程で生成したスラグ質量)+(前チャージの残留スラグ質量)])を得るためである。CaO系媒溶剤の添加量を削減する観点からは、脱珪スラグ6の組成がSiO2飽和領域に達しない範囲内で、更に塩基度を低下させることが望ましく、従って、塩基度を1.2以下、より望ましくは1.0以下とすることが好適である。
脱珪スラグ6の塩基度が1.5を超える場合、固相スラグが生じることでスラグ流動性が低くなり、また、脱珪スラグ6の温度が1280℃を下回っても、同様に固相スラグの増加によるスラグ流動性の低下、並びに、液相スラグ自体の粘性上昇が生じることから、脱珪スラグ6の流動性が低くなり排滓が困難になる。これを防止するために、使用する溶銑5の初期条件によっては、例えば脱珪処理が進んで溶銑中珪素濃度が0.05質量%を下回るような段階であっても、脱珪スラグ6の温度が1280℃を下回る場合が発生するが、この場合には、酸素ガスを更に供給して脱炭反応を進めてスラグ温度を高めて排滓工程を行う必要がある。排滓のための更に好ましい条件は、脱珪スラグ6の塩基度が1.0以下、脱珪スラグ6の温度が1320℃以上である。
一方、脱珪スラグ6の温度が高すぎると、脱珪スラグ6の塩基度を0.8以上に調整しても脱珪スラグからの復燐が起きることがあるので、脱珪処理終了後の溶銑温度は1380℃以下であることが好ましい。
脱珪処理後の脱珪スラグからの復燐反応を実用的に抑制する観点から、脱珪処理後の炉内スラグのトータル鉄(T.Fe)含有量とマンガン酸化物(MnO)含有量との和を10質量%以上30質量%以下に調整することが好ましい。ここで、トータル鉄含有量とは、スラグ中の鉄酸化物(FeO、Fe23)に含まれる鉄の濃度を意味するものである。スラグ中の鉄酸化物及びマンガン酸化物は、ともに溶銑中の燐を酸化する酸化源となり得るので、脱珪処理終了後のスラグ塩基度が0.8以上1.5以下の条件では、スラグ中のトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和を10質量%以上にすれば、復燐反応を実用的に抑制することができる。また、スラグ中のトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和が30質量%を超えると、スラグ中に移行した燐を安定化するのに必要なCaO濃度が減少してしまうとともに、有価金属成分(Mn、Fe)の損失が増大し、また、操業上もスラグのフォーミングやスロッピングの制御が困難となることから、望ましくない。
脱珪スラグ中のトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和(=[質量%T.Fe]+[質量%MnO])は、上吹き酸素ガスの供給速度、底吹きガスの供給速度、上吹きガスの浴面位置での動圧、酸化鉄及び酸化マンガンの供給速度のうちの少なくとも一つ以上を調節することにより制御される。
本発明において、排滓工程における脱珪スラグ6の排滓率は30質量%以上を確保する。これは、その後の脱燐処理工程においては脱燐反応を進める上で脱燐スラグの塩基度を1.5〜3.5に調整する必要があり、排滓率が30質量%を下回ると、脱燐処理工程で添加すべきCaO系媒溶剤の量が多くなってしまうだけでなく、脱燐処理におけるスラグ量が多くなり、脱燐処理中のスラグフォーミングが抑制できず、転炉型精錬炉1の炉口からのスラグ漏洩による操業支障が生じるからである。
また、従来の溶銑予備処理から転炉脱炭精錬までの平均的な生石灰の原単位に比較してコスト高を回避し、且つ、脱燐処理での最低限必要な残留スラグ量を確保するためには、排滓率を50質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。つまり、溶銑5の予備処理から脱炭精錬までで消費するCaO系媒溶剤の総使用量を抑制するためには、排滓率を50質量%以上に高めることが好ましい。一方、生成した脱珪スラグ6の80質量%を超えて排滓してしまうと、次工程の脱燐処理工程において新たに添加するCaO系媒溶剤の滓化が損なわれ、脱燐反応が阻害される虞があるので、排滓率は80質量%以下とすることが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、同一の転炉型精錬炉1を用いて途中の排滓工程を挟んで脱珪処理工程及び脱燐処理工程を交互に行う際に、脱珪処理工程において、脱珪スラグ6の組成がSiO2の飽和領域にならないように、脱珪スラグ6の塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を調整するので、前チャージの脱燐スラグが炉内に残留しても、残留した脱燐スラグからの溶銑5への復燐反応が防止され、次の脱燐処理工程では少ないCaO系媒溶剤の使用量で十分な脱燐処理を行うことが実現される。
また、本発明では、転炉型精錬炉1で溶銑5の脱珪処理を行うので、炉容積に余裕があり、酸化鉄を使用しなくても多量の気体酸素源を短時間で溶銑5に供給することが可能であり、珪素の燃焼熱は酸化鉄の分解熱に費やされることはなく、この燃焼熱を冷鉄源7の溶解に活用することが可能となり、更に、本発明では、脱珪処理後に連続的に脱燐処理を行うので、精錬容器の移し替えによる放熱分を冷鉄源溶解のための熱として活用することが可能となる。
尚、本発明は上記説明の範囲に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、脱珪処理及び脱燐処理においては、溶銑5への熱付与をより有利に行うために、熱付与機能を有するデバイス(二次燃焼促進型ランス、燃料供給型ランス)を使用するなどしてもよい。
図1に示すような容量300トン規模の転炉型精錬炉を用いて溶銑予備処理を実施した。転炉型精錬炉に収容された300トンの溶銑に対し、上吹きランスから精錬用の酸素ガスを溶銑に吹き付けるとともに、炉底に設けた底吹き羽口から撹拌用の窒素ガスを溶銑中に吹き込んで予備処理を実施した。CaO系媒溶剤としては、脱珪処理及び脱燐処理ともに生石灰(CaO)を使用した。
溶銑の予備処理は、図2に示すように、転炉型精錬炉に溶銑を装入し更に生石灰を添加し、上吹きランスから酸素ガスを供給して脱珪処理を行い、次いで、脱珪スラグの一部を排滓し、その後、生石灰を添加した後に引き続き上吹きランスから酸素ガスを供給して溶銑の脱燐処理を行った。脱燐処理後、脱燐スラグは炉内への付着分を除いて全て排出し、次チャージの脱珪処理工程を行った。脱珪処理工程に供する溶銑は、その温度が1300℃、燐濃度が0.10質量%に調整し、脱珪処理後の排滓工程での脱珪スラグの排滓率は50質量%に調整した。脱燐処理後の溶銑の燐濃度の目標値は0.030質量%以下とした。
この予備処理方法において、本発明例1及び本発明例2では、脱珪処理工程における脱珪スラグの塩基度が0.8以上になるように、(1)式に則って生石灰の添加量を調整し、また、脱燐処理工程では脱燐スラグの塩基度が2.0となるように生石灰を添加した。一方、比較例1及び比較例2では、脱珪処理工程における脱珪スラグの塩基度が0.8未満になるように、生石灰の添加量を調整した。但し、比較例1及び比較例2では、脱珪処理工程及び脱燐処理工程での生石灰の合計添加量がそれぞれ本発明例1及び本発明例2と同一になるように、脱燐処理工程での生石灰の添加量を増加させた。
脱珪処理工程に供した溶銑の珪素濃度、脱珪処理時の生石灰添加量、脱珪処理後に採取した脱珪スラグの塩基度、脱珪スラグ中のトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和(=[質量%T.Fe]+[質量%MnO])、脱珪スラグの温度を表1に示す。また、排滓工程後の脱燐処理工程での生石灰添加量、脱燐処理後の溶銑中燐濃度、脱珪処理工程と脱燐処理工程とでの生石灰合計添加量を併せて表1に示す。
Figure 2013227664
脱珪処理工程に供した溶銑の珪素濃度が同一である本発明例1と比較例1、及び、本発明例2と比較例2において、生石灰の合計添加量が同一になるように予備処理を行ったが、脱珪処理中及び処理後の脱珪スラグの塩基度が0.8以上である本発明例1、2では、脱燐処理後の溶銑の燐濃度が目標の0.030質量%以下となった。これに対して、脱珪処理中及び処理後の脱珪スラグの塩基度が0.8未満の比較例1、2では、脱燐処理後の溶銑の燐濃度が目標の0.030質量%を超えており、予備処理後の後工程で行われた転炉での脱炭精錬において、燐除去のために通常よりも過剰の生石灰を必要とした。
実施例1で使用した転炉型精錬炉を用いて溶銑予備処理を実施した。この溶銑予備処理では、前チャージの脱燐スラグを炉内に残留させたこと、及び、脱珪処理後の排滓工程での脱珪スラグの排滓率を60質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様の条件で溶銑の予備処理を実施した。前チャージの脱燐スラグの残留率(=100−排滓率)は、30〜100質量%の範囲で変更した。脱珪処理工程に供する溶銑は、その温度が1300℃、燐濃度が0.10質量%に調整し、脱燐処理後の溶銑の燐濃度の目標値は0.030質量%以下とした。
本発明例3では、脱珪処理工程に供する溶銑の珪素濃度が0.30質量%であり、残留させた前チャージの脱燐スラグだけで脱珪スラグの塩基度が0.8を確保できることから、生石灰を添加しないで脱珪処理を実施した。本発明例4〜8では、脱珪処理工程における脱珪スラグの塩基度が0.8以上になるように生石灰の添加量を調整した。一方、比較例3、4では、生石灰を添加せずに脱珪処理を行った結果、脱珪処理工程における脱珪スラグの塩基度は0.8未満になった。
また、本発明例9〜11では、生石灰を添加して脱珪処理を行ったが、本発明例9は、脱珪スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和(=[質量%T.Fe]+[質量%MnO])を10質量%以下、本発明例10は、脱珪スラグの温度を1380℃以上、本発明例11は、脱珪スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和を30質量%以上とした場合の結果である。
前チャージの脱燐スラグの炉内残留率、当該チャージの脱珪処理工程に供した溶銑の珪素濃度、脱珪処理時の生石灰添加量、及び、脱珪処理後に採取した脱珪スラグの塩基度、脱珪スラグ中のトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和、脱珪スラグの温度を表2に示す。また、当該チャージの排滓工程後の脱燐処理工程での生石灰添加量、脱燐処理後の溶銑中燐濃度、脱珪処理工程と脱燐処理工程とでの生石灰合計添加量を併せて表2に示す。
Figure 2013227664
脱珪処理工程に供した溶銑の珪素濃度が同じ0.40質量%で、脱燐スラグの全量を炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を行った本発明例4と比較例3とで比較すると、脱珪処理後の脱珪スラグの塩基度が0.8以上である本発明例4では、脱燐処理後の溶銑燐濃度が目標の0.030質量%以下となった。これに対して、脱珪処理後の脱珪スラグの塩基度が0.8未満の比較例3では、生石灰の合計添加量が本発明例4よりも多いにも拘わらず、脱燐処理後の溶銑の燐濃度が目標の0.030質量%を超えており、予備処理後の後工程で行われた転炉での脱炭精錬において、燐除去のために通常よりも過剰の生石灰を必要とした。
脱燐処理後、脱燐スラグを炉内に残留させて次チャージの脱珪処理を行った本発明例3〜8では、積極的に脱燐スラグを炉内に残さなかった、実施例1に示す本発明例1、2と比較して、生石灰の合計添加量が同等或いは少ない量で目標の燐濃度の溶銑を得ることができた。
また、本発明例9では、脱珪スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和が10質量%に達していないことから、途中の排滓を十分に行うことができず、一方、本発明例10では、脱珪スラグの温度が1380℃を超えており、本発明例9及び本発明例10では、脱珪処理において復燐を抑制するため生石灰の添加量が本発明例3〜8と比較して増大した。
本発明例11は、脱珪スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和が30質量%を超えており、脱珪処理中のスロッピングの制御が困難となった結果、吹錬の中断を強いられ、操業時間の延長による生産性の低下を余儀なくされた。また、脱珪スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和が高いことでスラグ中のCaO濃度が減少してしまい、脱燐処理での生石灰使用量も本発明例3〜8と比較すると増大した。
比較例4は、生石灰の合計添加量が12.5kg/溶銑−tと多いにも拘わらず脱燐処理後の溶銑燐濃度は目標値を大幅に超えていた。
1 転炉型精錬炉
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 出湯口
5 溶銑
6 スラグ
7 冷鉄源
8 酸素ガス
9 底吹きガス
10 装入鍋

Claims (7)

  1. 転炉型精錬炉内の溶銑に上吹きランスから酸素源を供給して溶銑を脱珪処理する脱珪処理工程と、該脱珪処理工程で生成したスラグの少なくとも一部を前記転炉型精錬炉から排滓する排滓工程と、該排滓工程後、前記転炉型精錬炉内にCaO系媒溶剤を添加し、前記上吹きランスから酸素源を供給して残留させた溶銑を脱燐処理する脱燐処理工程と、を有する溶銑の予備処理方法であって、
    前記脱珪処理工程における炉内スラグの組成がSiO2の飽和領域にならないように、炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を溶銑温度及びスラグ中鉄酸化物濃度に応じて調整することを特徴とする、溶銑の予備処理方法。
  2. 前記脱燐処理工程の後に前記転炉型精錬炉から溶銑を排出し、その後、転炉型精錬炉内に脱燐処理工程で生成したスラグの全量または大半を残留させた状態で溶銑を装入し、転炉型精錬炉内に装入した溶銑に脱珪処理を施すことを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の予備処理方法。
  3. 前記脱珪処理工程において、脱珪処理後の炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を0.8以上に調整することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の溶銑の予備処理方法。
  4. 前記脱珪処理工程において、脱珪処理後の炉内スラグの温度を1280℃以上1380℃以下に調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  5. 前記脱珪処理工程において、脱珪処理後の炉内スラグのトータル鉄含有量とマンガン酸化物含有量との和を10質量%以上30質量%以下に調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  6. 前記脱珪処理工程において、脱珪処理中の炉内スラグの塩基度([質量%CaO]/[質量%SiO2])を0.8以上に調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
  7. 前記脱燐処理工程で生成したスラグの50質量%以上の量のスラグを転炉型精錬炉内に残留させることを特徴とする、請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の溶銑の予備処理方法。
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