JP2013224230A - スラグ材の表面改質方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鉄鋼スラグ1を含むスラグ材にスラグ材の乾燥重量に対して1.0%以上の水分を付着させる第1工程と、第1工程の後にスラグ材に付着した水分の減少速度を制御しつつ、スラグ材にスラグ材の乾燥重量に対して付着水分量が0.5%以下のなるまで水分を減少させる第2工程とを有する湿乾処理を2回以上行ってスラグ材の表面を改質する。
【選択図】図1
Description
ものが多く、そのため、高濃度(例えば20%以上)の炭酸ガスを使用する必要があり、大気雰囲気では膨大な時間がかかっていた。
本発明に係る鉄鋼スラグを含むスラグ材に湿乾処理を行うスラグ材の表面改質方法において、前記湿乾処理は、前記スラグ材に水分を付着させる第1工程と、前記第1工程の後に前記スラグ材に付着した水分を減少させる第2工程とを有し、前記水分を付着させる第1工程では、スラグ材の乾燥重量に対して1.0%以上の水分を付着させ、前記スラグ材に付着した水分を減少させる第2工程では、式(1)を満たしつつスラグ材の乾燥重量に対して前記スラグ材に付着した水分量が0.5%以下になるまで減少させ、前記第1工程と第2工程とを繰り返す前記湿乾処理を2回以上行うことを特徴とする。
好ましくは、前記湿乾処理は、前記スラグ材の表面温度が5〜60℃となる範囲で行うとよい。
以下、本発明に係るスラグ材の表面改質方法について、図を基に説明する。
製鉄所では、一般的に、高炉で出銑した溶銑に対して脱硫処理及び脱珪処理などの溶銑予備処理を行い、溶銑予備処理の終了後には、転炉にて脱りん処理や脱炭処理を行っている。溶銑などを溶鋼に精錬する様々な精錬処理では、副生成物である鉄鋼スラグ1が生成される。鉄鋼スラグ1は、例えば、脱炭スラグ、溶銑脱燐スラグ、溶銑脱硫スラグ、溶銑脱珪スラグ、取鍋精錬スラグ、電気炉鉄鋼スラグなどである。
O)、二酸化珪素、酸化アルミニウム、鉄などが含まれている。この鉄鋼スラグ1は、精錬処理後に外部に排滓して様々な用途に用いられるが、精錬処理後の鉄鋼スラグ1中には、フリーライム(f−CaO)や水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が含まれている。
各精錬処理後に排滓した鉄鋼スラグ1に対して、何ら処理もせずに海洋環境修復材としてそのまま海水内に浸漬すると、鉄鋼スラグ1中に含まれるf−CaOやCa(OH)2が海水などの水分と反応[CaO+H2O→Ca2++2OH−、Ca(OH)2→Ca2++2OH−]により、海水がアルカリ化してしまい、海洋環境に影響を与える可能性がある。
なお、スラグ材とは、鉄鋼スラグ1を含むものであればよく、鉄鋼スラグ1のみで構成したもの(鉄鋼スラグ1が100%)であっても、鉄鋼スラグ1と他の骨材やバインダーとを合わせて塊成化した材料であっても、鉄鋼スラグ1を土砂等と混合した材料であってもよい。また、排滓後の鉄鋼スラグ1に対して蒸気エージング処理を行ってf−CaOをCa(OH)2に変質させたものをスラグ材としてもよい。
本発明のスラグ材の表面改質方法では、鉄鋼スラグ1に含まれているf−CaOやCaO(OH)2などに起因するCaと大気中のCO2とを利用して、スラグ材の表面を炭酸カルシウム(CaCO3)層で確実にコーティングし、このコーティングによって鉄鋼スラグ1からのアルカリ溶出を抑制することとしている。なお、鉄鋼スラグ1のみによってスラグ材を構成したものを例にとり説明する。
具体的には、図1の排滓処理工程に示すように、まず、スラグ材の元材料である鉄鋼スラグ1をスラグパンに排滓して冷却した後、鉄鋼スラグ1を、例えば、1〜100mmの径を有する小石状に粉砕する。
この第1工程では、粉砕した鉄鋼スラグ1の表面に対して十分な湿潤状態を保持するには、スラグ材の乾燥重量に対し1%以上となるように水分を付着させることが必要となる。例えば、乾燥重量が100kgの鉄鋼スラグ1に対して、1kg以上の水分を満遍なく付着させる。さらに、よい湿潤状態にするには、スラグ材の乾燥重量に対し2%以上(100kgの鉄鋼スラグ1に対して、2kg以上)となる水分を付着させる湿潤環境下が好ましい。また、鉄鋼スラグ1には、スラグの乾燥重量に対し、10%以上の水分は付着しないため、付着水分量の上限を10%未満とする。好ましくは、スラグの乾燥重量に対し、5%以下の付着水分量がよい。このように、スラグ材の乾燥重量に対し1%以上となる水分を付着させる湿潤環境下に鉄鋼スラグ1を設置すると、時間が経過するに伴い、鉄鋼スラグ1の表面全体が次第に濡れた状態になり、鉄鋼スラグ1の表面に水膜が形成され、
この水膜にCaイオンやCO3イオンを溶け込ませることができる。
第1工程では、鉄鋼スラグ1の表面全体が十分に濡れていることが目視で分かるまで鉄鋼スラグ1を湿潤環境で保持する。湿潤環境を保持するための時間は限定されないが、1時間以上、好ましくは2時間以上であるとよい。
第1工程を経て、表面に水膜が形成された鉄鋼スラグ1を、表面の水分量を減少させるために乾燥環境に移し、スラグ表面の乾燥を進める(第2工程)。
具体的には、第2工程では、鉄鋼スラグ1の付着水分量がスラグ材の乾燥重量に対し0.5%以下となるように、鉄鋼スラグ1を乾燥環境下にある雰囲気で保持する。例えば、乾燥重量が100kgの鉄鋼スラグ1に対して、付着している水分量が0.5kg以下となるまで、水分を蒸発させることが必要となる。
上述した乾燥条件の基で、鉄鋼スラグ1の表面改質方法の実験を行った。その結果、式(6)に示すように、本願発明者は、乾燥指数(RS/h)が、0.001〜0.015の範囲を満たしつつ付着水分量が0.5%以下となるまで、鉄鋼スラグ1の表面を乾燥させると、鉄鋼スラグ1の表面全体の炭酸化が促進され、アルカリ溶出が抑制されることを見出した。
さらに、本願発明者は、数々の鉄鋼スラグ1の表面改質方法の実験を行った。その結果、鉄鋼スラグ1の重量、すなわち、鉄鋼スラグ1の表面に水分が付着した状態の重量に対して、表面の水分量を0.1〜3.0(%/hr)の範囲で減少させつつ、鉄鋼スラグ1に付着した水分量がスラグ材の乾燥重量に対し0.5%以下となるまで乾燥させることで、鉄鋼スラグ1の表面全体に亘って炭酸化反応が促進され、アルカリ溶出が抑制されることを見出した。
このように、上記した条件で第2工程を行うと、鉄鋼スラグ1の表面全体が十分に乾きつつ、鉄鋼スラグ1表面に炭酸カルシウム(CaCO3)からなるより緻密な皮膜が形成される。
また、乾燥温度や乾燥湿度は、常に一定の温度、湿度に制御する必要はなく、第2工程を行っている際に、温度や湿度を上述した範囲内で変動させてもよい。
炭酸カルシウムによる表面コーティングを確実にするために、3回以上実施してもよい。好ましくは、5回以上がよい。サイズ、表面積、成分にばらつきの大きな鉄鋼スラグ1においても、上述した湿乾処理を繰り返すことで、鉄鋼スラグ1の表面全体に亘って、炭酸化反応が進行し、海水中でのアルカリ溶出を抑制することが可能である。
さらに、鉄鋼スラグ1の表面に確実に皮膜を形成させるため、第1工程と第2工程とからなる湿乾処理を2回以上行うこととしている。なお、上述したように、第1工程及び第2工程、即ち、湿乾処理は、鉄鋼スラグ1の表面温度が5〜60℃となる範囲で行うことが好ましい。
表1、表2は、本発明のスラグ材の表面改質方法を行った結果をまとめたものである。
スラグ材の表面改質を行うには、まず、CaO、Ca(OH)2、Ca2SiO4の合計が50%以上となる組成を有した鉄鋼スラグ1を用意して、この鉄鋼スラグ1を10〜60mmの粒度で分級する。すなわち、10mm未満の微細な鉄鋼スラグ1及び60mmより大きい鉄鋼スラグ1を排除し、小石状の鉄鋼スラグ1のみを抽出する。そして、分級した鉄鋼スラグ1を乾燥状態にするために、120℃で5時間の熱処理を行う。
着水分量を少なくする乾燥環境に相当する処理(第2工程、水分低減処理と呼ぶこともある)を行う。このとき、鉄鋼スラグ1の付着水分量を低減する方法としては、気温5〜80℃、湿度10〜90%の範囲で制御した乾燥状態の雰囲気を保持する乾燥法を用いている。水分低減処理後に、22個のサンプルスラグを取り出し、付着水分量を測定する(表1、表2に記載の乾燥後付着水分量(wt%)を参照)。水分付着量が最も多いのは、サンプルスラグ3及びサンプルスラグ14で鉄鋼スラグ1の乾燥重量に対して、0.5%を上回っている。サンプルスラグ2、サンプルスラグ4〜サンプルスラグ13及びサンプルスラグ15〜サンプルスラグ23は、鉄鋼スラグ1の乾燥重量に対して、0.5%を下回っている。
また、水分付着処理と水分低減処理とを連続して1回行った後に、鉄鋼スラグ1表面に付着した水分量を測定する。測定した結果、鉄鋼スラグ1表面に付着した水分量が所定の水分量に到達すると、再度、水分付着処理と水分低減処理とを繰り返し行う。その繰り返し回数を1回、2回、3回、5回の4パターンに分けて、水分付着処理と水分低減処理とを繰り返し行う炭酸化処理を実施し、鉄鋼スラグ1の評価を行った。
アルカリ溶出評価試験では、表1及び表2の条件で湿乾処理をした鉄鋼スラグ1をそれぞれ約300gに分け、それぞれ1.5kgの人工海水(大阪薬研株式会社製マリンアートSF−1を10%硫酸にてpH8.2に調整したもの)に沈める。そして、試験片を沈めた人工海水をそれぞれ3時間放置し、3時間後に人工海水を緩やかに攪拌し、各人工海水のpHを測定した。
サンプルスラグ3、サンプルスラグ14に示すように、水分付着処理にて、鉄鋼スラグ1の表面全体にスラグの乾燥重量に対して1.0%以上の水分を付着させた後、水分低減処理にて、鉄鋼スラグ1の表面全体を乾燥させる際に、スラグの乾燥重量に対して0.5%よりも多い水分量が残ると、アルカリ溶出評価試験でのpHは不良「×」となった。
た水分を、スラグの乾燥重量に対して0.5%以下の水分に低減させても、繰り返し回数が1回のみであると、アルカリ溶出評価試験でのpHはやや不良「△」となった。
これらから分かるように、水分付着処理(第1工程)では、鉄鋼スラグ1にスラグの乾燥重量に対して1.0%以上の水分量を付着させつつ当該鉄鋼スラグ1の表面に水膜を形成し、水分低減処理(第2工程)では、乾燥指数(RS/h)若しくは、水分減少速度(%/hr)の値を所定の範囲内にしておき、鉄鋼スラグ1の水分量をスラグの乾燥重量に対して0.5%以下に低減させつつ当該鉄鋼スラグ1の表面全体を乾かす。これら第1工程及び第2工程を湿乾処理として、この湿乾処理を2回以上行うと、鉄鋼スラグ1の表面全体に炭酸カルシウムの皮膜ができ、海洋環境修復材として用いても、海水へのアルカリ溶出を抑えることができる。
Claims (4)
- 鉄鋼スラグを含むスラグ材に湿乾処理を行うスラグ材の表面改質方法において、
前記湿乾処理は、前記スラグ材に水分を付着させる第1工程と、前記第1工程の後に前記スラグ材に付着した水分を減少させる第2工程とを有し、
前記水分を付着させる第1工程では、スラグ材の乾燥重量に対して1.0%以上の水分を付着させ、
前記スラグ材に付着した水分を減少させる第2工程では、式(1)を満たしつつスラグ材の乾燥重量に対して前記スラグ材に付着した水分量が0.5%以下になるまで減少させ、
前記第1工程と第2工程とを繰り返す前記湿乾処理を2回以上行うことを特徴とするスラグ材の表面改質方法。
- 鉄鋼スラグを含むスラグ材に湿乾処理を行うスラグ材の表面改質方法において、
前記湿乾処理は、前記スラグ材に水分を付着させる第1工程と、前記第1工程の後に前記スラグ材に付着した水分を減少させる第2工程とを有し、
前記水分を付着させる第1工程では、スラグ材の乾燥重量に対して1.0%以上の水分を付着させ、
前記スラグ材に付着した水分を減少させる第2工程では、スラグ材に付着した水分量をスラグ材の重量に対して1時間当たり0.1〜3.0(%/hr)の範囲で減少させつつスラグ材の乾燥重量に対して前記スラグ材に付着した水分量が0.5%以下になるまで減少させ、
前記第1工程と第2工程とを繰り返す前記湿乾処理を2回以上行うことを特徴とするスラグ材の表面改質方法。 - 前記第2工程では、前記スラグ材周辺の雰囲気を乾燥状態に保持することで、当該スラグ材に付着した水分量を減少させることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラグ材の表面改質方法。
- 前記湿乾処理は、前記スラグ材の表面温度が5〜60℃となる範囲で行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のスラグ材の表面改質方法。
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