JP6142760B2 - 改質土の強度予測方法 - Google Patents

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  • Consolidation Of Soil By Introduction Of Solidifying Substances Into Soil (AREA)

Description

本発明は、カルシウム化合物を含んだ改質材と浚渫土とを混合し、養生して強度を改善した改質土を得る際に、得られる改質土の強度を事前に予測する方法に関する。
航路、泊地、河川等の浚渫により生ずる浚渫土の強度を改良して、改質土として再利用することが行われている。浚渫土は、主に水と土粒子とからなり、水と土粒子との質量比率(水/土粒子)で表される含水比が70〜250%程度と極めて高いことから、ダンプトラック等に山積みして搬送するのは困難である。そのため、これまでに浚渫土の処理が問題とされてきた。
近年では、浚渫土の強度を向上させる改質材を加えて混合し、干潟や浅場の造成工事に使用したり、海底の深堀れ窪地を処理するための埋め戻し工事に使用するなど、改質土としての利用が進みつつある。そのひとつに、改質材として製鋼スラグのほか、高炉水砕スラグや高炉スラグ微粉末を用いて改質土を得る方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
これは、改質材に含まれる遊離石灰(フリーライム:f-CaO)が、浚渫土に含まれるシリカ分と水和固化して、カルシウムシリケート系水和物(C-S-H)やカルシウムアルミネート系水和物(C-A-H)等を形成する反応を利用して、強度が改良されると考えられる。そして、上記特許文献1には、改質土の一軸圧縮強度とフリーライム量との間に強い相関関係があることや、改質土の強度を発現させるためには少なくとも0.5質量%のフリーライム含有率が必要であることが記載されており、改質土の強度設計をする上で、改質材に含まれるフリーライム量がひとつの指標になると考えられる。
特開2009-121167号公報(段落0018、図1)
ところが、実際にフリーライム量に基づき浚渫土と改質材との配合設計を行っても、得られる改質土の一軸圧縮強度がばらつくことがあり、フリーライム量を指標として得られる改質土の強度を精度良く予測することは難しい。そのため、専ら、供試体を形成して所定の期間養生し、一軸圧縮強度を測定する強度試験に頼って、浚渫土と改質材の配合割合を決定することが行われている。
そのため、本発明は、浚渫土を利用して改質土を得る上で、従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、カルシウム化合物を含んだ改質材と浚渫土とを混合し、養生して強度を改善した改質土を製造するにあたり、浚渫土と改質材との配合割合から発現する一軸圧縮強度を把握することができ、しかも、実際に得られた改質土のそれと高い精度で一致させることができる改質土の強度予測方法を提供することを目的とする。
上述したように、フリーライム量に基づく一軸圧縮強度の予測精度が高くならない理由について、本発明者らは、その測定方法自体に原因があると考えた。すなわち、フリーライム量を測定するにあたり、一般には、セメント協会標準試験方法として定められるエチレングリコール法(JCAS I-01:1997)が使用されている。この方法では、指頭に感じない程度の細かさにすりつぶした細粉試料にエチレングリコールを加えて撹拌し、試料中の全ての遊離酸化カルシウム(f-CaO)を溶出させて、その含有率(%)を求めるようにする。
ところが、実際に改質土を得るにあたっては、強度を発現させるなどの理由から、浚渫土に混ぜる改質材は粒度分布を有した状態で使用される。すなわち、製鋼スラグ等の改質材はその有姿の状態で浚渫土と混合されるため、エチレングリコール法での測定試料のようにすりつぶして細粉化されることはない。そのため、改質材の表面に存在する遊離酸化カルシウムは、上述したような水和固化反応に利用されても、粒子内部には、水和反応に利用されない遊離酸化カルシウムがそのまま残されると考えられる。
そこで、本発明者らは、事前に異なる種類の改質材を用意し、それぞれ海水に入れて振とうする溶出試験を行ったところ、そのアルカリ溶出水から測定されたpHが、実際に得られる改質土の一軸圧縮強度を予測する指標として利用できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)カルシウム化合物を含んだ改質材と浚渫土とを混合し、養生して強度を改善した改質土を得る際に、得られる改質土の強度を予測する方法であって、
2種以上の試験用改質材を用意して、それぞれを海水に入れて少なくとも24時間振とうする溶出試験を行い、各試験用改質材から溶出されるアルカリ溶出水のpHを測定し、添加対象の浚渫土に対してそれぞれの試験用改質材を混合して得られた試験改質土の一軸圧縮強度と前記アルカリ溶出水のpHとの相関式を求めた上で、実際に浚渫土と混合する改質材の溶出試験に基づくアルカリ溶出水のpHをもとに、事前に得た相関式から改質土の一軸圧縮強度を予測することを特徴とする改質土の強度予測方法。
(2)前記溶出試験では、浚渫土と混合する利用有姿の改質材を用いてアルカリ溶出水のpHを測定する(1)に記載の改質土の強度予測方法。
(3)前記溶出試験で改質材を入れる海水は、pH=8.0に調整されたものである(1)又は(2)に記載の改質土の強度予測方法。
(4)カルシウム化合物を含んだ改質材が、製鋼スラグ又は高炉スラグ微粉末である(1)〜(3)のいずれかに記載の改質土の強度予測方法。
(5)得られる改質土は海域環境の修復に用いられるものである(1)〜(4)のいずれかに記載の改質土の強度推定方法。
本発明によれば、カルシウム化合物を含んだ改質材と浚渫土とを混合し、養生して強度を改善した改質土を製造するにあたり、実際に発現する改質土の一軸圧縮強度を高い精度で予測することができる。すなわち、浚渫土と改質材との配合割合から発現する一軸圧縮強度を把握することが可能になることから、供試体を作製して所定の期間養生し、一軸圧縮強度を調べる強度試験を行う場合に比べて、短時間でかつ簡便に改質土の強度を予測することができる。
図1は、本発明に係る溶出試験によって改質材から溶出されるアルカリ溶出量と溶出時間との関係を示すグラフである。 図2は、改質材のひとつであるCS-20の製鋼スラグを3種類の粒度範囲(上限側粒度、中間粒度、下限側粒度)に分けた場合の粒径加積曲線を示す。 図3は、図2に示す3種類の粒度範囲の製鋼スラグを用いて改質土を得た場合について、各製鋼スラグからのCa2+溶出量と改質土の一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。 図4は、溶出試験に用いた平行振とう装置を示す写真である。 図5は、試験改質土の平均一軸圧縮強度と試験用改質材のアルカリ溶出水pHとの関係を示すグラフである(試験液溶媒:海水の場合)。 図6は、試験改質土の平均一軸圧縮強度と試験用改質材のアルカリ溶出水pHとの関係を示すグラフである(試験液溶媒:純水の場合)。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、2種以上の試験用改質材を用意して、それぞれを海水に入れて振とうする溶出試験を行い、各試験用改質材から溶出されるアルカリ溶出水のpHを測定する。この溶出試験は、土壌の汚染に係る環境基準を定める環境庁告示46号に規定の溶出試験(以下、「告示46号試験」と言う)に準拠することができるが、少なくとも、試料液の溶媒として海水を用いる点、及び、24時間以上振とうする点で相違する。
先ず、海水を利用する点について、告示46号試験では、土壌中のカドミウムや全シアン等を検査する際に、純水に塩酸を加えて水素イオン濃度指数(pH)が5.8以上6.3以下となるようにした溶媒に対して、採取した土壌を入れて試料液とする。ところが、干潟・浅場の造成をはじめ、藻場の造成、深堀り窪地の埋戻し、潜堤の構築など、得られた改質土が海域環境の修復・再生に利用される場合を考慮すると、告示46号試験で用いる溶媒では、改質材による強度改善効果を正しく評価することができない。
すなわち、本発明に係る改質土は、カルシウム化合物を含んだ改質材と浚渫土とを混合して養生する際、改質材から供給されるカルシウムによって、間隙水のカルシウム濃度やpHが高くなり、カルシウム系水和物が生成して強度が発現すると考えられる。ここで、改質材が製鋼スラグの場合、そのカルシウム供給源はf-CaOやC2S(すなわちCaO・SiO2)等のスラグ鉱物相であり、仮に純水を用いて溶出試験を行うと、Caイオン量が800mg/l程度で飽和に至るため、f-CaOが優先して溶解してカルシウム濃度が高くなり、C2Sが十分に溶解できずに、製鋼スラグからのカルシウム供給能を適切に評価することができない。
それに対して、海水では、下記式Aや式Bで表されるようなマグネシウムイオンによるpH緩衝効果や、海水中に含まれる硫酸イオンや炭酸イオンが、製鋼スラグから溶出されるカルシウムイオンと反応して、下記式Cや式Dのように石膏や炭酸カルシウムとして沈殿することにより、製鋼スラグからのカルシウム溶出が促進されるため、f-CaOだけでなく、C2Sからのカルシウム供給能を評価することができる。これは、カルシウム化合物を含んだ他の改質材(例えば高炉スラグ微粉末等)の場合にも同様にして考えられる。このとき、マグネシウムイオンが不足しているとpH緩衝によるカルシウム溶出促進効果が十分に得られず、過剰であるとpH上昇が生じない。そのため、1.0〜1.5g/L程度のマグネシウムイオン量を保有する人工海水が適していると考えられる。
式A: Ca(OH)2 + Mg2+ → Ca2+ + Mg(OH)2
式B: 2(2CaO・SiO2) + 2H2O + Mg2+ → 4Ca2+ + 2HSiO4 3- + Mg(OH)2
式C: Ca2+ + SO4 2- + 2H2O → CaSO4・2H2O↓
式D: Ca2+ + CO3 2- → CaCO3
また、少なくとも24時間振とうした後のアルカリ溶出水のpHを測定する点については、改質材から溶出されるアルカリ溶出水のpHがほぼ飽和すると考えられるためである。すなわち、告示46号試験では、調整した試料液を常温(おおむね20℃)・常圧(おおむね1気圧)で振とう機にセットし、振とう回数を毎分約200回、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整して6時間連続して振とうすることを規定する。本発明においても、振とう回数及び振とう幅を同様にして、平行振とう装置を用いて改質材の溶出試験を行い(但し溶媒は海水を使用)、溶出時間とアルカリ溶出量との関係を調べたところ、図1に示した例のように、溶出時間1000分(16.7時間)でアルカリ溶出量(mol/L)がほぼ飽和することが分かった。そのため、海水に入れた改質材を少なくとも24時間連続振とうすることで、十分に改質材のカルシウム供給能を評価できると考えられる。
なお、図1は、改質材として製鋼スラグを用いた例であり、上記以外の溶出試験の条件は、後述する実施例の内容と同様にして行ったものである。また、図1におけるアルカリ溶出量(mol/L)は、pHの上昇分が全てスラグから溶出したOH基に起因するものとみなしてpHから換算したものである。
本発明における溶出試験で用いる海水については、試験の性質上、その再現性を考慮して人工海水を用いるのがよく、また、改質材のカルシウム供給能を客観的に評価しやすくするために、例えば酸やアルカリによってpH=8.0にするなど、pHを調整したうえで使用するのが望ましい。一方、溶出試験で海水に入れる改質材について、好ましくは、利用有姿のものを用いるようにするのがよい。すなわち、告示46号試験で土壌中のカドミウムや全シアン等を検査する際には、2mmの目のふるいを通過させて得た土壌を試料として試料液を調製するが、先に述べたように、改質土を得るにあたって、改質材は粒度分布を有した状態で使用されることから、本発明では、浚渫土と混合する利用有姿の改質材をそのまま海水に入れて溶出試験を行うようにするのが望ましい。
ここで、改質材の一例であるJIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」のCS-20の規格を満たす製鋼スラグについて、図2に示したように、上限側粒度(平均粒度4.5mm)、中間粒度(平均粒度7mm)、下限側粒度(平均粒度10mm)に分けたものを用いて、それぞれ浚渫土と混合し、養生して得られた改質土の一軸圧縮強度を測定する実験を行った。結果は図3に示したとおりであり、細粒分が多い改質材の方が、粗粒分が多いものに比べてカルシウム供給能(溶出能力)が優れ、得られる改質土の一軸圧縮強度が高まることが分かる。つまり、有姿の改質材を用いて溶出試験を行うことで、実態に即した強度予測を行うことができる。なお、図3では、各粒度を有した製鋼スラグのカルシウム供給能について、海水を用いて調整した試料液のpH上昇分の総和から単位質量あたりのカルシウムイオン溶出量〔Ca2+溶出量(mol/kg)〕を求めて示している。
また、本発明においては、添加対象の浚渫土に対して各試験用改質材を混合し、それぞれ得られた試験改質土の一軸圧縮強度を測定する。試験改質土を得るにあたっては、実際に目的の改質土を得る場合と同様にして養生すればよい。
そして、得られた試験改質土の一軸圧縮強度と前述の溶出試験により求めたアルカリ溶出水のpHとの関係から、「一軸圧縮強度−アルカリ溶出水pH」の相関式を求めるようにする。先に述べた溶出試験により、試験用改質材が有するカルシウム供給能をアルカリ溶出水のpHで区別(差別化)することができるようになったことから、この「一軸圧縮強度−アルカリ溶出水pH」では良好な相関性が認められる。そのため、目的の改質土を得る際には、実際に浚渫土に添加する改質材のアルカリ溶出水pHを前述の溶出試験で求めることで、この相関式から、得られる改質土の一軸圧縮強度を精度良く予測することが可能になる。また、アルカリ溶出水pHを把握した2種以上の改質材を組み合わせるなどして改質材からのカルシウム供給能を制御すれば、事前に求めた相関式に基づき、用途に応じて自由に一軸圧縮強度を設計しながら目的の改質土を製造することができる。
本発明で用いる浚渫土は、高い含水比(一般には含水比70〜250%程度)を有して、主に水と土粒子とからなるものであり、総じて浚渫により生じたものを用いることができ、例えば、港湾の航路や泊地を拡げる目的や、海底の汚泥・底質汚染を除去する目的等で発生した海底浚渫土を例示することができる。
また、改質材としては、カルシウム化合物を含み、浚渫土と混合して養生する際にカルシウムイオンを溶出するものであればよく、例えば、製鋼スラグや高炉スラグ微粉末等を例示することができる。これらは1種又は2種以上を混ぜて使用することができる。
ここで、製鋼スラグとは、鉄鋼製造プロセスで副産物として産出されるものであり、転炉や電気炉等の製鋼炉において、銑鉄やスクラップから不要な成分を除去して、靭性・加工性のある鋼にする製鋼工程で生じる石灰分を主体としたものである。具体的には、転炉スラグ、予備処理スラグ、脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ、二次精錬スラグ、造塊スラグ等を挙げることができる。また、高炉スラグ微粉末とは、銑鉄を製造する製銑過程で生成する溶融状態の高炉スラグに加圧水を噴射するなどして水砕し、急激に冷却した高炉水砕スラグを微粉砕したものである。
また、改質材と浚渫土とを混合する手段については特に制限されず、公知の方法を採用することができる。また、混合した後の養生方法については、気中養生、水中養生等の一般的な改質土を得るための方法を用いることができ、用途等に応じて養生日数を適宜選択すればよい。
本発明によって得られた改質土は、例えば、海域の潜堤を構築したり、干潟や浅場の造成工事に使用することができるほか、藻場の造成、深堀れ窪地を処理する埋め戻し工事、海面埋め立て工事等に利用することができ、なかでも、海域環境の修復・再生に好適に用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
浚渫土として、表1に示したように、海底から回収された浚渫土Iを用意した。ここで、表中の細粒分含有率とは、JIS A 1223の土の細粒分含有率試験方法から得られた値である。強熱減量はJIS A 1226に準拠する強熱減量試験から得られた値である。液性限界、塑性限界、及び塑性指数は、JIS A 1205の土の液性限界・塑性限界試験方法より求めたものである。
また、カルシウム化合物を含んだ改質材として、表2に示したように、製鐵所で回収した製鋼スラグA〜Gを用意した。これらについては、JIS A 1102の粒度試験に基づき篩い分けを行ったものであり、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」に基づくCS-20の規格を満たすように粒度分布が調合されている。なお、これらの製鋼スラグA〜Gにおけるフリーライム(f-CaO)の含有率(%)は、エチレングリコール法(JCAS I-01:1997)に基づき測定した値である。すなわち、それぞれの製鋼スラグをめのう乳鉢ですりつぶした後、80℃に加熱したエチレングリコールを加え、更にフェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌しながら遊離酸化カルシウムを5分間溶出させ、酢酸アンモニウム標準液で滴定して求めた。また、細粒分含有率(%)とは、5mmの篩いを通過する粒子の重量を全体の重量で除した比率である。
上記で用意した製鋼スラグA〜Gについて、次のようにして、それぞれを個別に海水に入れて溶出試験を行った。先ず、下記表3に示した成分を有する人工海水(マグネシウムイオン量=1.27g/L)をpH=8.0に調整した上で、4.0Lを10Lポリ瓶に入れた。そして、400gの製鋼スラグAを有姿のままポリ瓶に入れて、製鋼スラグAに係る試料液とした。その他の製鋼スラグについても同様にして、製鋼スラグA〜Gについて、それぞれ液固比10(海水4000g、スラグ400g)の試料液を作製した。
次いで、製鋼スラグA〜Gに係る各試料液について、図4に示したように、それぞれのポリ瓶を平行振とう装置に載せて、振幅4cm以上5cm以下、振とう回数を200rpmとして、連続24時間振とうする溶出試験を行った。終了後は、JIS K0102 12.1に準拠して溶媒層のpHを測定した。表2には、24時間の溶出試験で溶出される各製鋼スラグのアルカリ溶出水のpHを示している。また、比較参照用として、人工海水の代わりにpH=5.6〜6.3の純水を溶媒として用いた場合についても、上記と同様にして24時間の溶出試験を行い、各製鋼スラグから溶出されるアルカリ溶出水のpHを測定した。
また、上記で準備した浚渫土Iと製鋼スラグAとを容積比70:30にして(浚渫土Iを容積比率70%、製鋼スラグAを容積比率30%)、電動式ハンドミキサーを用いて撹拌混合した後、φ100mm×L200mmのモールドに詰めて成型し、20℃、湿度60%の恒温室で28日間気中養生して試験改質土I-Aを得た。このようにして得られた試験改質土I-Aについて一軸圧縮強度を測定し、サンプル数3(n=3)としてその平均を求めたところ、191kN/m2であった。また、製鋼スラグを変えた以外は同様にして、各製鋼スラグを用いて試験改質土I-B〜G得て、それぞれの一軸圧縮強度を測定した。サンプル数3での平均値を表4に示す。
そして、得られた試験改質土I-A〜Gの均一軸圧縮強度(kN/m2)と、海水を用いた溶出試験における製鋼スラグA〜Gのアルカリ溶出水pHとの関係をグラフにすると図5のようになる。一方、純水による溶出試験で得られた場合の製鋼スラグA〜Gのアルカリ溶出水pHを用いて、試験改質土I-A〜Gの平均一軸圧縮強度との関係をグラフにすると図6のようになる。両者を比較すると分かるように、試料液の溶媒として海水を用いた場合には(図5)、試験改質土の平均一軸圧縮強度と製鋼スラグのアルカリ溶出水pHとの間に正の相関を読み取ることができ、しかも、カルシウム供給能の低いスラグと高いスラグとの違いが、アルカリ溶出水のpHで区別することができる。
図5に示した関係について、y軸を平均一軸圧縮強度とし、x軸を製鋼スラグのアルカリ溶出水pHとすれば、y=133x−1129の相関式を得ることができる。そこで、新規に入荷された製鋼スラグY,Zを改質材として、浚渫土Iを用いて改質土を製造した場合の強度を予測した。この製鋼スラグY,Zは下記表5に示したような性状を有し、また、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」に基づくCS-20の規格を満たすものである。
この製鋼スラグY,Zを400g採取し、上記と同様にして人工海水(pH=8.0)を用いた溶出試験を行ったところ、24時間連続振とうした後のアルカリ溶出水のpHはそれぞれ9.92,9.72であった。先の図5から得られた相関式によれば、容積比30%の製鋼スラグY,Zに対して容積比70%の浚渫土Iを混合して養生すれば、それぞれ190,164kN/m2の一軸圧縮強度を備えた改質土が得られることが予想される。
そこで、図5の相関式に係る試験改質土を得た場合と同様にして、実際に、上記割合でこれらを撹拌混合した後、モールドに詰めて成型して、20℃、湿度60%の恒温室で28日間気中養生して改質土を得た。そして、得られた改質土の一軸圧縮強度をサンプル数3(n=3)で測定したところ、一軸圧縮強度の平均値はそれぞれ197,164kN/m2であり、相関式を用いて予測した値と極めて近い値であることが確認された。

Claims (5)

  1. カルシウム化合物を含んだ改質材と浚渫土とを混合し、養生して強度を改善した改質土を得る際に、得られる改質土の強度を予測する方法であって、
    2種以上の試験用改質材を用意して、それぞれを海水に入れて少なくとも24時間振とうする溶出試験を行い、各試験用改質材から溶出されるアルカリ溶出水のpHを測定し、添加対象の浚渫土に対してそれぞれの試験用改質材を混合して得られた試験改質土の一軸圧縮強度と前記アルカリ溶出水のpHとの相関式を求めた上で、実際に浚渫土と混合する改質材の溶出試験に基づくアルカリ溶出水のpHをもとに、事前に得た相関式から改質土の一軸圧縮強度を予測することを特徴とする改質土の強度予測方法。
  2. 前記溶出試験では、浚渫土と混合する利用有姿の改質材を用いてアルカリ溶出水のpHを測定する請求項1に記載の改質土の強度予測方法。
  3. 前記溶出試験で改質材を入れる海水は、pH=8.0に調整されたものである請求項1又は2に記載の改質土の強度予測方法。
  4. カルシウム化合物を含んだ改質材が、製鋼スラグ又は高炉スラグ微粉末である請求項1〜3のいずれかに記載の改質土の強度予測方法。
  5. 得られる改質土は海域環境の修復に用いられるものである請求項1〜4のいずれかに記載の改質土の強度推定方法。
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