JP2013222623A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池特性を高いレベルに維持しながら、過充電状態になったときに適切なタイミングでCIDを作動させることが可能な非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明により、電池ケースの内圧が上昇することによって作動する電流遮断機構を備える非水電解質二次電池が提供される。この非水電解質二次電池は、前記非水電解質二次電池に含まれる非水電解質がガス発生剤を含有し、前記非水電解質二次電池を構成する正極と負極の間には、異なる多孔度を有する少なくとも2つの多孔質層が配置されており、前記少なくとも2つの多孔質層のうち、前記正極に対向する位置に配置される多孔質層Aの多孔度は、前記負極側に配置される多孔質層Bの多孔度より大きい。
【選択図】図3

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。詳しくは車両搭載用電源に適用可能なリチウムイオン二次電池その他の非水電解質二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池は、電気を駆動源とする車両搭載用電源、あるいはパソコンおよび携帯端末その他の電気製品等に搭載される電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池その他の非水電解質二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられることが期待されている。かかる非水電解質二次電池では、充電処理を行う際に、例えば充電対象電池が不良電池であった場合や、充電装置が故障して誤作動を起こした場合に、電池に通常以上の電流が供給されて過充電状態に陥り、不具合が生じる虞がある。そこで、かかる不具合を未然に防止するため、過充電状態を電池温度、電池内圧等により検知し、過充電状態を検知した場合に電流を遮断する機構(電流遮断機構:CID:Current Interrupt Device)を設けた電池が採用されている。
上述のCIDを設けた二次電池では、電解液の非水溶媒よりも酸化電位の低いシクロヘキシルベンゼン(CHB)、ビフェニル(BP)等のガス発生剤を電解液中に含有させることが行われている。上記ガス発生剤は、電池が過充電状態になると電解液が分解する前に反応してガスを発生する。これを利用して、過充電状態になったときの電池内圧の上昇量や上昇速度を引き上げ、過充電に対してCIDを適切なタイミングで作動させることによって、過充電による不具合の発生を防止している。CIDを備え、非水電解質中にガス発生剤を含む二次電池を開示している文献として特許文献1が挙げられる。
また、上述の二次電池は、正極と負極とを備え、それらの間に多孔質層からなるセパレータが配置されていることを基本構成としている。この種の二次電池において、ポリオレフィン系多孔質層の両面に、所定の比表面積を有する無機粒子を主成分とする多孔質層を形成したセパレータが特許文献2に開示されている。また特許文献3には、正負の電極を構成する合材層の多孔度とセパレータの多孔度が開示されている。
特開2006−324235号公報 特開2011−65849号公報 特開2007−220454号公報
本発明は、CIDを備え、非水電解質中にガス発生剤を含む非水電解質二次電池の改良に関するものであり、その目的は、電池特性を高いレベルに維持しながら、過充電状態になったときに適切なタイミングでCIDを作動させることが可能な非水電解質二次電池を提供することである。
上記目的を実現するべく、本発明により、電池ケースの内圧が上昇することによって作動する電流遮断機構を備える非水電解質二次電池が提供される。この非水電解質二次電池は、前記非水電解質二次電池に含まれる非水電解質がガス発生剤を含有し、前記非水電解質二次電池を構成する正極と負極の間には、異なる多孔度を有する少なくとも2つの多孔質層が配置されており、前記少なくとも2つの多孔質層のうち、前記正極に対向する位置に配置される多孔質層Aの多孔度は、前記負極側に配置される多孔質層Bの多孔度より大きい。
CIDを搭載した二次電池内に存在するガス発生剤は、過充電状態になると正極側で電子を放出してラジカルカチオンとなる。このラジカルカチオンは、さらに反応(典型的にはラジカルカチオン同士が重合)し、その際に多量のHを発生する。発生したHは電極体内を移動し、負極の表面で還元されて水素ガス(H)が発生する。しかし、上記ラジカルカチオンは、正極側に留まらずに負極側に移動して還元される場合がある。この反応をガス発生剤のシャトル反応という。上記シャトル反応が起こると、正極側に留まるラジカルカチオンの量が減少するため、多量のHを発生する反応(典型的にはラジカルカチオンの重合)が充分に行われない虞がある。そこで、本発明では、正極と負極の間に配置される2層以上の多孔質層のうち、正極に対向する位置に配置される多孔質層として、多孔度が大きい多孔質層Aを採用する。これによって、非水電解質に含まれるガス発生剤を正極側により多く供給する。多孔質層Aの多孔空間は、ガス発生に必要なラジカルカチオンを正極側に留めておくスペースともなり得る。そのため、過充電状態になったときに正極側に存在するラジカルカチオンの量が増大する。さらに、負極側に配置される多孔質層Bは多孔度が相対的に小さいので、ラジカルカチオンが正極側から負極側に移動することを阻止する。すなわち上記シャトル反応を抑制する。その結果、ラジカルカチオンは正極側に留まる傾向が高まり、過充電状態になったときのガス発生量が増大する。上記のシャトル反応は、ラジカルカチオン等の拡散性が向上する高温環境下で促進されると考えられるため、例えば40℃以上(典型的には50℃以上)の高温環境下においても充分量のガス発生を実現できる。そのため、ガス発生剤の使用量(添加量)を必要最小限に留めることが可能となり、ガス発生剤が過剰に含まれることに起因する電池特性の低下(典型的には電池抵抗の増加)を抑制することができる。したがって、本発明によると、電池特性を高いレベルに維持しながら、過充電状態になったときに適切なタイミングでCIDを作動させることが可能な非水電解質二次電池が提供される。
ここで開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、前記少なくとも2つの多孔質層は、前記多孔質層Aおよび前記多孔質層Bから構成されている。多孔質層を多孔質層Aと多孔質層Bの2層とすることで、リチウムイオンのイオン通過性を阻害することなく、ガス発生量を増大させることができる。
ここで開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、前記多孔質層Aの多孔度は55%以上であり、前記多孔質層Bの多孔度は50%以下である。多孔質層Aの多孔度を55%以上とすることによって、ラジカルカチオンを正極側により多く留めておくことが可能となる。多孔質層Bの多孔度を50%以下とすることによって、ラジカルカチオンが正極側から負極側に移動するシャトル反応をより効果的に抑制することができる。
ここで開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、前記多孔質層Aおよび前記多孔質層Bの一方は樹脂層であり、他方はフィラー層である。あるいは、前記多孔質層Aおよび前記多孔質層Bがともに樹脂層であってもよい。
ここで開示される非水電解質二次電池の好適な一態様では、前記多孔質層Aの多孔度は、前記正極を構成する正極合材層の多孔度より大きい。これによって、正極表面で分解するガス発生剤量が増大し、ガス発生量が増加する。
また、本発明によると、ここで開示されるいずれかの非水電解質二次電池を備える車両が提供される。かかる非水電解質二次電池は、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用の電源として好適に使用され得る。
一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す図である。 図1の捲回電極体の構成を模式的に示す図である。 図2の正負極間の一構成例の断面の一部を拡大して示す図である。 図3に対応する図であって、他の構成例を示す模式断面図である。 図3に対応する図であって、他の構成例を示す模式断面図である。 図3に対応する図であって、他の構成例を示す模式断面図である。 図3に対応する図であって、他の構成例を示す模式断面図である。 一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による一実施形態を説明する。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、正極および負極を備えた電極体の構成および製法、セパレータや電解液の構成および製法、電池(ケース)の形状等、電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
ここで開示される非水電解質二次電池に係る好適な一実施形態として、リチウムイオン二次電池を例にして説明するが、本発明の適用対象をかかる電池に限定することを意図したものではない。例えば、リチウムイオン以外の金属イオン(例えばナトリウムイオン)を電荷担体とする非水電解質二次電池に本発明を適用することも可能である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な電池一般をいい、リチウムイオン二次電池等の蓄電池(すなわち化学電池)のほか、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(すなわち物理電池)を包含する。さらに、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、捲回電極体80が、非水電解液25とともに、扁平な直方体形状の電池ケース50に収容された構成を有する。電池ケース50は、上面に開口部を有する扁平箱形状のケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。捲回電極体80は、ケース本体52の開口部を蓋体54で塞ぐことによって封止されている。このように構成することで、リチウムイオン二次電池100は電池ケース50の内部が密閉された構造を有する、いわゆる密閉型電池として構築されている。
電池ケース50の上面(蓋体54)には、正極端子70および負極端子72が設けられている。正極端子70は正極(正極シート)10の幅方向の端部に付設された正極集電板74と電気的に接続されている。負極端子72は負極(負極シート)20の幅方向の端部に付設された負極集電板76と電気的に接続されている。
電池ケース50内には、電池ケース50の内圧上昇により作動するCID30が設けられている。CID30は、蓋体54に固定した正極端子70と捲回電極体80との間に設けられ、電池ケース50の内圧が上昇し、所定の圧力に達したときに正極端子70から正極10に至る導電経路を電気的に分断するように構成されている。
CID30は、変形金属板32と、変形金属板32に接合された接続金属板34とを備える。変形金属板32は、中央部分が下方へ湾曲したアーチ形状の湾曲部分33を有する。湾曲部分33の周縁部分は、集電リード端子35を介して正極端子70の下面に接続されている。また、変形金属板32の湾曲部分33の一部(先端)は、接続金属板34の上面と接合点36にて接合されている。接続金属板34の下面(裏面)には正極集電板74が接合されており、正極集電板74は捲回電極体80の正極10に接続されている。このようにして、正極端子70から正極10に至る導電経路が形成されている。
CID30は、プラスチックにより形成された絶縁ケース38を備えている。なお、絶縁ケースの材質はプラスチックに限定されるものではなく、絶縁性を有し、気密性を有するものであればよい。絶縁ケース38は、変形金属板32を囲むように設けられている。絶縁ケース38には、変形金属板32の湾曲部分33を嵌入する開口部が形成されており、変形金属板32の湾曲部分33は、該開口部に嵌入されることで該開口部を封止している。これによって、絶縁ケース38内は密閉状態に保持されるため、密閉された湾曲部分33の上面側には、電池ケース50の内圧は作用しない。これに対して、絶縁ケース38外の湾曲部分33の下面には、電池ケース50の内圧が作用する。かかる構成のCID30において、過充電電流に起因して電池ケース50の内圧が高まると、該内圧は、変形金属板32の下方へ湾曲した湾曲部分33を上方へ押し上げるように作用する。この作用(力)は、電池ケース50の内圧が上昇するにつれて増大する。そして、電池ケース50の内圧が設定圧力を超えると、湾曲部分33が上下反転し、上方へ湾曲するように変形する。かかる湾曲部分33の変形によって、変形金属板32と接続金属板34との接合点36が切断される。これによって導電経路は電気的に分断され、電流は遮断される。
この実施形態では、CID30は、上方に配置された変形金属板32が変形するものであったが、これに限定されない。電池ケースの内圧が上昇したときに、上方に配置された第一部材(本実施形態の変形金属板32の位置に配置された部材)ではなく下方に配置された第二部材(本実施形態の接続金属板34の位置に配置された部材)が変形して他方から離隔することにより上記導電経路を電気的に分断するように構成されていてもよく、第一部材および第二部材の両方が変形するものであってもよい。また、上記のようなCIDは、正極端子側に限らず、負極端子側に設けてもよい。またCIDは、電池ケースの内圧が上昇したときに、正負の電極の少なくとも一方と電池ケース外部に露出する外部端子(正極端子または負極端子)とを導通する導電経路を電気的に分断するように構成されていればよく、特定の形状、構造に限定されない。さらにCIDは、上述した第一部材および/または第二部材の変形を伴う機械的な切断を行うものに限定されない。例えば、電池ケースの内圧をセンサで検知し、該センサで検知した内圧が設定圧力を超えると充電電流を遮断するような外部回路を設けたCIDであってもよい。
図2は、図1の捲回電極体の構成を模式的に示す図であり、捲回電極体80を構築する前段階における長尺状のシート構造(電極シート)を示している。図2に示すように、捲回電極体80は、正極10と負極20とを備えている。正極10と負極20とは、2枚のセパレータ40A,40Bを介して扁平に捲回された構成を有する。これら正極10、負極20、セパレータ40A,40Bはそれぞれ長尺状のシート形状を有する。正極(正極シート)10と負極(負極シート)20とは、セパレータ40A,40Bを介して重ね合わせられており、これによって積層体が形成されている。言い換えると、上記積層体は正極シート10、セパレータ40B、負極シート20、セパレータ40Aの順に積層されている。捲回電極体80は、この積層体を長尺方向に捲回し、さらにこの捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平状に形成されている。なお、電極体は捲回電極体に限定されない。電池の形状や目的に応じて適切な形状、構成を適宜採用することができる。
正極シート10は、正極集電体12と、正極集電体12の少なくとも一方の表面(典型的には両面)に形成された正極合材層14とを備える。負極シート20も、正極の場合と同様に、負極集電体22と、負極集電体22の少なくとも一方の表面(典型的には両面)に形成された負極合材層24とを備える。
図3に示すように、セパレータ40Aは、多孔質の樹脂層41(多孔質層B)から構成されている。またセパレータ40Aの正極10側の表面には、多孔質のフィラー層42(多孔質層A)が形成されている。フィラー層42はセパレータ40Aの表面全体に、すなわちセパレータ40Aの長手方向(捲回方向)および幅方向の全体に亘って形成されている。このように、樹脂層41はフィラー層42との関係で負極20側に配置されており、フィラー層42は正極10(典型的には正極合材層)に対向する位置に配置されている。そして、フィラー層42の多孔度は、樹脂層41の多孔度より大きい。これによって、相対的に多孔度の小さい樹脂層41が、ガス発生剤のラジカルカチオンが正極10側から負極20側に移動することを抑制し、上記シャトル反応を抑制する。また相対的に多孔度の大きい正極10側のフィラー層42には、ラジカルカチオンが多く留まることができる。その結果、過充電状態になったときに正極10側で多量のHが発生し、ひいてはガス発生量が増大する。なお、セパレータは単層構造のものに限定されず、2層以上の多層構造からなるものであってもよい。その典型例としては、例えば図4に示すような樹脂層41A、樹脂層41B、樹脂層41Cが順に積層された3層構造のセパレータ40Aが挙げられる。セパレータ40Bの構成もセパレータ40Aと基本的に同じであるため、説明は繰り返さない。
なお、この実施形態では、セパレータ40A,40Bは、正極10に対向する位置に配置されるフィラー層42と、フィラー層42より負極20側に配置される樹脂層41とから構成されるものであったが、これに限定されない。正負極間に、少なくとも2つの多孔質層が配置されており、そのうち、正極に対向する位置に配置される多孔質層Aの多孔度が、負極側に配置される多孔質層Bの多孔度より大きいものであればよい。例えば図5に示すように、正極10に対向する位置に配置される樹脂層41(多孔質層A)からなるセパレータ40と、樹脂層41より負極20側に配置されるフィラー層43(多孔質層B)とが多孔質層として正負極間に配置されたものであってもよい。この構成では、樹脂層41の多孔度はフィラー層43の多孔度より大きい。あるいは、例えば図6に示すように、フィラー層等の耐熱層が形成されていない樹脂層41A(多孔質層A),41B(多孔質層B)からなるセパレータ40が多孔質層として正負極間に配置されている構成であってもよい。この場合、正極10に対向する位置に配置される樹脂層41Aの多孔度は、樹脂層41Aより負極20側に配置される樹脂層41Bの多孔度より大きい。またセパレータが3層以上の多層構造の樹脂層からなる場合、典型的には図7に示すような3層構造のセパレータ40が多孔質層として正負極間に配置されている構成の場合、正極10に対向する位置に配置される樹脂層41A(多孔質層A)の多孔度は、樹脂層41Aより負極20側に配置される樹脂層41B,41Cの少なくとも一方(多孔質層B)の多孔度より大きい。好ましくは、樹脂層41Aの多孔度は、樹脂層41B,41Cの多孔度の平均値(さらに好適には樹脂層41B,41Cの各々の多孔度)より大きい。
また、正極(典型的には正極合材層)の表面にフィラー層が形成されている場合には、該フィラー層が、正極に対向する位置に配置される多孔質層Aとなり得る。かかるフィラー層の多孔度は、該フィラー層より負極側に配置される多孔質層B(典型的にはセパレータを構成する樹脂層や、セパレータおよび/または負極の表面に形成されるフィラー層)の多孔度より大きい。さらに、負極(典型的には負極合材層)の表面にフィラー層が形成されている場合には、該フィラー層が、負極側に配置される多孔質層Bとなり得る。かかるフィラー層の多孔度は、正極に対向する位置に配置される多孔質層A(典型的にはセパレータを構成する樹脂層や、正極の表面に形成されるフィラー層)の多孔度より小さい。このような態様では、セパレータは単層構造の樹脂層からなるものであり得る。
次に、上述のリチウムイオン二次電池を構成する各構成要素について説明する。リチウムイオン二次電池の正極(典型的には正極シート)を構成する正極集電体としては、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。正極集電体の形状は、電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。正極集電体の厚さも特に限定されず、例えば5μm〜30μmとすることができる。正極合材層は、正極活物質の他、必要に応じて導電材、結着材(バインダ)等の添加材を含有し得る。
正極活物質としては、リチウム(Li)および少なくとも1種の遷移金属元素(好ましくはニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種)を含むリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。上記複合酸化物としては、例えば、上記遷移金属元素を1種含むいわゆる一元系リチウム遷移金属複合酸化物、上記遷移金属元素を2種含むいわゆる二元系リチウム遷移金属複合酸化物、遷移金属元素としてNi、CoおよびMnを構成元素として含む三元系リチウム遷移金属複合酸化物、固溶型のリチウム過剰遷移金属複合酸化物が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、正極活物質として、一般式がLiMAO(ここでMは、Fe,Co,NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、Aは、P,Si,SおよびVからなる群から選択される元素である。)で表されるポリアニオン型化合物も好ましく用いられる。なかでも、遷移金属元素としてNi、CoおよびMnを構成元素として含む三元系リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。かかる三元系リチウム遷移金属複合酸化物の典型例としては、一般式:
Li(LiNiCoMn)O
(前式中のa、x、y、zはa+x+y+z=1を満足する実数)で表される三元系リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
また、正極活物質は、アルミニウム(Al),クロム(Cr),バナジウム(V),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ニオブ(Nb),モリブデン(Mo),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga),インジウム(In),スズ(Sn),ランタン(La),タングステン(W)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される1種または2種以上の金属元素がさらに添加されたものであってもよい。これらの金属元素の添加量(配合量)は特に限定されないが、0.01質量%〜5質量%(例えば0.05質量%〜2質量%、典型的には0.1質量%〜0.8質量%)とするのが適当である。
正極合材層に占める正極活物質の割合は凡そ50質量%を超え、凡そ70質量%〜97質量%(例えば75質量%〜95質量%)であることが好ましい。
導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバー等の導電性粉末材料が好ましく用いられる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、グラファイト粉末が好ましい。また、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料等を、1種を単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。結着材としては各種のポリマー材料が挙げられる。例えば、水系の組成物(活物質粒子の分散媒として水または水を主成分とする混合溶媒を用いた組成物)を用いて正極合材層を形成する場合には、水溶性または水分散性のポリマー材料を結着材として好ましく採用し得る。水溶性または水分散性のポリマー材料としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等のゴム類;が例示される。あるいは、溶剤系の組成物(活物質粒子の分散媒が主として有機溶媒である組成物)を用いて正極合材層を形成する場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等のハロゲン化ビニル樹脂;ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイド;等のポリマー材料を用いることができる。このような結着材は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記で例示したポリマー材料は、結着材として用いられる他に、正極合材層形成用組成物の増粘材その他の添加材として使用されることもあり得る。
正極合材層に占めるこれら添加材の割合は特に限定されないが、導電材の割合は、正極活物質100質量部に対して凡そ1質量部〜20質量部(例えば2質量部〜10質量部、典型的には3質量部〜7質量部)とすることが好ましい。結着材の割合は、正極活物質100質量部に対して凡そ0.8質量部〜10質量部(例えば1質量部〜7質量部、典型的には2質量部〜5質量部)とすることが好ましい。
正極集電体上への正極合材層の単位面積当たりの目付量(正極合材層形成用組成物の固形分換算の塗付量)は特に限定されるものではないが、充分な導電経路(導電パス)を確保する観点から、正極集電体の片面当たり3mg/cm以上(例えば6mg/cm以上、典型的には12mg/cm以上)であり、45mg/cm以下(例えば28mg/cm以下、典型的には18mg/cm以下)とすることが好ましい。正極合材層の密度も特に限定されないが、1.0g/cm〜3.8g/cm(例えば1.5g/cm〜3.5g/cm、典型的には2.0g/cm〜3.0g/cm)とすることが好ましい。
正極合材層の多孔度は特に限定されないが、ガス発生剤の分解量増大の観点から20%以上(例えば25%以上、典型的には35%以上)であることが好ましい。また多孔度は、60%以下(例えば55%以下、典型的には50%以下)程度であることが好ましい。なお、正極合材層の多孔度は以下の方法により算出することができる。単位面積(表面積)の正極合材層が占める見かけの体積をV1[cm]とし、上記単位面積の正極合材層の質量をW[g]とする。このとき、正極シートを所定の面積に切り抜いて試料とし、その質量を測定し、その試料の質量から、上記所定面積の正極集電体の質量を減ずることにより、上記所定面積の正極合材層の質量を算出する。このようにして算出した正極合材層の質量を単位面積当たりに換算することにより、正極合材層の質量W[g]を算出することができる。この質量Wと正極合材層を構成する材料の真密度ρ[g/cm]との比、すなわちW/ρをV0とする。なお、V0は質量Wの正極合材層構成成分の緻密体が占める体積である。正極合材層の多孔度は、[(V1−V0)/V1]×100から算出することができる。正極合材層の多孔度は、構成成分やその配合比率、塗付方法、乾燥方法、圧縮方法等により調整し得る。
負極(典型的には負極シート)を構成する負極集電体としては、従来のリチウムイオン二次電池と同様に、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅または銅を主成分とする合金を用いることができる。負極集電体の形状は、電池の形状等に応じて異なり得るため特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。負極集電体の厚さは特に限定されず、例えば5μm〜30μmとすることができる。
負極合材層には、電荷担体となるリチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極活物質が含まれる。負極活物質の組成や形状に特に制限はなく、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の1種または2種以上を使用することができる。かかる負極活物質としては、リチウムイオン二次電池で一般的に用いられる炭素材料が挙げられる。かかる炭素材料の代表例としては、グラファイトカーボン(黒鉛)、アモルファスカーボン等が挙げられる。少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が好ましく用いられる。なかでも天然黒鉛を主成分とする炭素材料の使用が好ましい。かかる天然黒鉛は鱗片状の黒鉛を球形化したものであり得る。また、黒鉛の表面にアモルファスカーボンがコートされた炭素質粉末を用いてもよい。その他、負極活物質として、チタン酸リチウム等の酸化物、ケイ素材料、スズ材料等の単体、合金、化合物、上記材料を併用した複合材料を用いることも可能である。負極合材層に占める負極活物質の割合は、凡そ90質量%〜99質量%(例えば95質量%〜99質量%、典型的には97質量%〜99質量%)とするのが適当である。
負極合材層は、負極活物質の他に、一般的なリチウムイオン二次電池の負極合材層に配合され得る1種または2種以上の結着材や増粘材その他の添加材を必要に応じて含有することができる。結着材としては各種のポリマー材料が挙げられる。例えば、水系の組成物または溶剤系の組成物に対して、正極合材層に含有され得るものを好ましく用いることができる。かかる結着材は、結着材として用いられる他に、負極合材層形成用組成物の増粘材その他の添加材として使用されることもあり得る。負極合材層に占めるこれら添加材の割合は特に限定されないが、凡そ0.8質量%〜10質量%(例えば凡そ1質量%〜5質量%、典型的には1質量%〜3質量%)であり得る。
負極集電体上への負極合材層の単位面積当たりの目付量(負極合材層形成用組成物の固形分換算の塗付量)は特に限定されるものではないが、充分な導電経路(導電パス)を確保する観点から、負極集電体の片面当たり2mg/cm以上(例えば5mg/cm以上、典型的には8mg/cm以上)であり、40mg/cm以下(例えば22mg/cm以下、典型的には14mg/cm以下)とすることが好ましい。負極合材層の密度も特に限定されないが、1.0g/cm〜3.0g/cm(例えば1.2g/cm〜2.0g/cm、典型的には1.3g/cm〜1.5g/cm)とすることが好ましい。
正極と負極とを隔てるように配置されるセパレータ(セパレータシート)は、正極合材層と負極合材層とを絶縁するとともに、電解質の移動を許容する部材であればよい。セパレータの好適例としては、単層構造または2層以上の樹脂層からなる多層構造を有するものが挙げられる。樹脂層を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
セパレータを構成する樹脂層としては、例えば一軸延伸または二軸延伸された多孔性樹脂フィルムを好適に用いることができる。なかでも、長手方向に一軸延伸された多孔性樹脂フィルムは、適度な強度を備えつつ幅方向の熱収縮が少ないため特に好ましい。一軸延伸された多孔性樹脂フィルムを有するセパレータを用いると、長尺シート状の正極および負極とともに捲回された態様において、長手方向の熱収縮も抑制され得る。したがって、長手方向に一軸延伸された多孔性樹脂フィルムは、かかる捲回電極体を構成するセパレータの一要素として特に好適である。
セパレータの多孔度は特に限定されないが、非水電解質の保持性やイオン通過性向上の観点から、20%以上(例えば30%以上、典型的には35%以上)であることが好ましい。また多孔度は、セパレータの伸び率を好適な範囲に調整しやすく、破膜が生じない程度の強度を得る観点から、60%以下(例えば55%以下、典型的には50%以下)程度であることが好ましい。なお、セパレータの多孔度は以下の方法により算出することができる。単位面積(表面積)のセパレータが占める見かけの体積をV1[cm]とし、上記単位面積のセパレータの質量をW[g]とする。この質量Wと上記セパレータを構成する樹脂材料の真密度ρ[g/cm]との比、すなわちW/ρをV0とする。なお、V0は質量Wの樹脂材料の緻密体が占める体積である。セパレータの多孔度は、[(V1−V0)/V1]×100から算出することができる。セパレータの多孔度は樹脂層の材質、延伸強度等により調整し得る。
セパレータの厚さは特に限定されるものではないが、5μm〜30μm(例えば10μm〜30μm、典型的には15μm〜25μm)程度が好ましい。セパレータの厚さが上記の範囲内であることにより、セパレータのイオン通過性がより良好となり、破膜がより生じにくくなる。
また、上記のセパレータや、正極および負極の少なくとも一方には、フィラー層の少なくとも1層が設けられていることが好ましい。かかるフィラー層は、無機フィラー(例えば金属酸化物、金属水酸化物等のフィラー)や、有機フィラー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂粒子)を主成分とするものであり得る。
上記フィラー層の主成分となるフィラーは、有機フィラー、無機フィラーのいずれであってもよいが、分散性や安定性を考慮すると、無機フィラーを用いることが好ましい。無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えばベーマイト、アルミナ等のアルミニウム化合物、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄等の無機酸化物、窒化アルミニウム等の無機窒化物、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、塩化マグネシウム等の塩化物、フッ化バリウム等のフッ化物、シリコン等の共有結合性結晶、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト等の鉱物系材料あるいはこれらの人造物等であってもよい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。耐熱性、サイクル特性に優れるという理由から、アルミニウム化合物、マグネシア、シリカ、チタニア、ジルコニアが好ましく、ベーマイト、アルミナ、マグネシアが特に好ましい。
フィラーの形態は特に限定されず、例えば粒子状、繊維状、板状(フレーク状)等であり得る。フィラーの平均粒径は特に限定されないが、分散性等を考慮して0.1μm〜15μm(例えば0.1μm〜5μm、典型的には0.2μm〜1.5μm)とするのが適当である。フィラーの平均粒径としては、レーザー散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布から導き出せるメジアン径(平均粒径D50:50%体積平均粒径)を採用することができる。
フィラー層はまた、結着材を含有することが好ましい。フィラー層形成用組成物が水系の溶媒の場合には、水分散性または水溶性のポリマーを結着材として用いることができる。水分散性または水溶性のポリマーとしては、例えばアクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂としては、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有モノマー、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー等のモノマーを1種類で重合した単独重合体が好ましく用いられる。あるいは、上記モノマーの2種以上を重合した共重合体であってもよい。さらに、上記単独重合体および共重合体の2種類以上を混合したものであってもよい。上述したアクリル系樹脂の他に、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等のゴム類;ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂;カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系ポリマー;ポリビニルアルコール(PVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;酢酸ビニル重合体;ポリエチレンオキサイド(PEO)等のポリアルキレンオキサイド;等を用いることができる。これらのポリマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル系樹脂、SBR、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの水系結着材は、大気中の水分と反応・硬化しないので、フィラー層の伸展性を容易に(例えば製造時に水分管理を行うことなく)調整し得る点で好ましい。
また、フィラー層形成用組成物が溶剤系の溶媒の場合には、結着材は溶剤系の溶媒に分散または溶解するポリマーを用いることができる。溶剤系溶媒に分散または溶解するポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のハロゲン化ビニル樹脂が挙げられる。ポリフッ化ビニリデンとしては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。ポリフッ化ビニリデンは、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体であってもよい。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、三塩化フッ化エチレン等が例示される。あるいは、溶剤系溶媒に分散または溶解するポリマーとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等も好ましく用いられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤系結着材は、多孔質フィラー層の伸展性を好適に向上し得る点で好ましい。ただし、溶剤系結着材は大気中の水分と反応して硬化し得るので、製造時に水分管理を行う必要がある。
結着材の形態は特に制限されず、粒子状(粉末状)のものをそのまま用いてもよく、溶液状あるいはエマルション状に調製したものを用いてもよい。2種以上の結着材を、それぞれ異なる形態で用いてもよい。粒子状の結着材を用いる場合、その平均粒径(上述の平均粒径D50)は、例えば0.09μm〜0.15μm程度である。なお、上記結着材は、結着材としての機能の他に、フィラー層形成用組成物の増粘材その他の添加材としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。
フィラー層全体に占めるフィラー(好ましくは無機フィラー)の割合は特に限定されないが、凡そ90質量%以上(例えば92質量%〜99.5質量%、典型的には95質量%〜99質量%)であることが好ましい。また、フィラー層が結着材、増粘材等の添加材を含有する場合、多孔質フィラー層に占める添加材の割合は凡そ10質量%以下(例えば0.5質量%〜8質量%、典型的には1質量%〜5質量%)とすることが好ましい。フィラー、必要であれば結着材やその他の添加成分の割合が上記の範囲内であることにより、フィラー層の投錨性やフィラー層自体の強度(保形性)が向上する。また、フィラー層の多孔性を良好な範囲に調整しやすくなる傾向がある。さらに、フィラー層をセパレータ上に形成する場合には、セパレータの強度や伸び率を好適な範囲に調整しやすい。
フィラー層の多孔度は特に限定されないが、非水電解質の保持性やイオン通過性向上の観点から40%以上(例えば45%以上、典型的には50%以上)であることが好ましい。また多孔度は、熱収縮を抑制する観点、ヒビや剥落等の不具合が生じない程度の強度を得る観点から75%以下(例えば70%以下、典型的には65%以下)であることが好ましい。フィラー層の多孔度は、セパレータの多孔度の算出と同様の方法により算出することができる。その場合において、フィラー層の質量Wは以下のようにして測定することができる。すなわち、フィラー層を形成したセパレータ、正極または負極を所定の面積に切り抜いて試料とし、その質量を測定する。次に、その試料の質量から、上記所定面積のセパレータ、正極または負極の質量を減ずることにより、上記所定面積のフィラー層の質量を算出する。このようにして算出したフィラー層の質量を単位面積当たりに換算することにより、フィラー層の質量W[g]を算出することができる。フィラー層の多孔度は、構成成分やその配合比率、塗付方法、乾燥方法等により調整し得る。
フィラー層の厚さは特に限定されないが、凡そ1μm〜12μm(例えば2μm〜10μm、典型的には3μm〜8μm)であることがより好ましい。フィラー層の厚さが上記の範囲内であることにより、短絡防止効果や非水電解質の保持性が向上する。セパレータ上にフィラー層を設ける場合には、セパレータの強度や伸び率を好適な範囲に調整しやすい。フィラー層の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。
上述のセパレータおよびフィラー層はともに多孔質層であり、これらは正負極間に配置され得る。そして、これらの多孔質層のうち、正極に対向する位置に配置される多孔質層Aの多孔度は、負極側に配置される多孔質層Bの多孔度より大きい。上記のセパレータ(典型的にはセパレータを構成する各樹脂層)およびフィラー層は、その配置関係によって多孔質層Aおよび多孔質層Bのいずれかに当てはまり得る。フィラー層が形成されず、正負極間に多孔質層としてセパレータのみが存在する場合には、セパレータを構成する樹脂層の各層が多孔質層Aおよび多孔質層Bのいずれかに該当し得る。多孔質層Aおよび多孔質層Bのいずれか一方は樹脂層であることが好ましい。
正極に対向する位置に配置される多孔質層Aの多孔度は、多孔質層Aより負極側に配置される多孔質層Bの多孔度より5%以上大きいことが好ましく、10%以上(例えば15%以上)大きいことがさらに好ましい。これによって、ガス発生剤のラジカルカチオンが正極側に留まり、過充電状態になったときに正極側で多量のHが発生し、ガス発生量が増大する。かかる構成を好適に実現する観点から、多孔質層Aの多孔度は35%以上(例えば45%以上、典型的には55%以上)であることが好ましい。また、多孔質層Bの多孔度は50%以下(例えば45%以下、典型的には40%以下)であることが好ましい。
また、多孔質層Aの多孔度は、多孔質層Aと対面する正極合材層の多孔度より大きいことが好ましい。これによって、正極表面で分解するガス発生剤量が増大し、多量のHの発生が期待できる。したがって、多孔質層Aの多孔度は、上記正極合材層の多孔度より5%以上(典型的には10%以上)大きいことが好ましい。しかし、多孔質層Aの多孔度と正極合材層の多孔度との差異が大きくなりすぎると、正極合材層の多孔度が相対的に小さくなり、ガス発生剤の分解量が減少し、ガス発生量が減少する虞がある。したがって、多孔質層Aの多孔度と上記正極合材層の多孔度との差異は20%以下(典型的には15%以下)の範囲内であることが好ましい。
上記の材料を用いて構築される電極体は、正極と負極とが捲回されてなる捲回電極体であることが好ましい。捲回電極体は捲回により中心部の放熱性が低下する傾向があり、過充電状態になったときに捲回中心側で高温状態となりやすい。ガス発生剤のシャトル反応は高温環境下で発生しやすいため、捲回電極体の捲回中心側では、上記シャトル反応に起因するガス発生量の減少も起こりやすいと考えられ得る。このような傾向を有する捲回電極体に本発明の構成を適用することで、ガス発生量の減少を好適に抑制することができる。
リチウムイオン二次電池に注入される非水電解質を構成する非水溶媒と支持塩は、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解質は、典型的には適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する電解液である。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトンが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。なかでも、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒が好ましい。
また、上記支持塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等のリチウム化合物(リチウム塩)の1種または2種以上を用いることができる。なお、支持塩の濃度は特に限定されないが、凡そ0.1mol/L〜5mol/L(例えば0.5mol/L〜3mol/L、典型的には0.8mol/L〜1.5mol/L)の濃度とすることができる。
非水電解質はまた、ガス発生剤を含み得る。ここでガス発生剤とは、非水電解質中に溶解または分散し得る化合物であり、電池が過充電状態になったときに反応し、非水電解質に含まれる非水溶媒の分解より先にガスを発生する化合物をいう。なかでも水素ガスを発生するガス発生剤が好ましい。かかるガス発生剤は、電池の稼働電圧では酸化されないが、過充電状態になったときに非水電解質の非水溶媒の酸化分解よりも先に反応(酸化)する。したがって、ガス発生剤の酸化電位(酸化開始電位)は、稼働電圧の最大値に対応した正極の上限電位より高い。また、非水電解質の非水溶媒の酸化電位(酸化開始電位)より低い。上記の観点から、ガス発生剤の酸化電位(vsLi/Li)は、正極の上限電位(vsLi/Li)より0.1V以上(例えば0.2V以上、典型的には0.3V以上)高いことが好ましい。また、非水溶媒の酸化電位(vsLi/Li)より0.1V以上(例えば0.2V以上、典型的には0.3V以上)低いことが好ましい。例えば、正極の上限電位が4.2V以下(典型的には4.0V〜4.2V)の二次電池の場合、ガス発生剤の酸化電位の好適な範囲は、4.3V以上(例えば4.4V以上、典型的には4.5V以上)であり、また5.0V以下(例えば4.9V以下、典型的には4.8V以下)である。
ガス発生剤の好適例としては、例えば分岐鎖状アルキルベンゼン類、シクロアルキルベンゼン類、ビフェニル類、ターフェニル類、ジフェニルエーテル類、ジベンゾフラン類が挙げられる。分岐鎖状アルキルベンゼン類としては、例えば、炭素数3〜6の分岐鎖状のアルキル基を有する分岐鎖状アルキルベンゼンと、分岐鎖状アルキルベンゼンのハロゲン化物(典型的にはフッ化物)が挙げられる。分岐鎖状アルキルベンゼン類の具体例としては、例えばクメン、ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−ジブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、t−ジアミルベンゼン等の分岐鎖状アルキルベンゼンが挙げられる。シクロアルキルベンゼン類としては、例えば、炭素数3〜6のシクロアルキル基を有するシクロアルキルベンゼンや、該シクロアルキルベンゼンを構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基および/またはハロゲン原子(典型的にはフッ素原子)に置換したアルキル化シクロアルキルベンゼン、シクロアルキルベンゼンのハロゲン化物(典型的にはフッ化物)が挙げられる。直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜6個(例えば3個または4個)が好ましい。シクロアルキルベンゼン類の具体例としては、例えばシクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のシクロアルキルベンゼン、t−ブチルシクロヘキシルベンゼン等のアルキル化シクロアルキルベンゼン、シクロヘキシルフルオロベンゼン等のシクロアルキルベンゼンの部分フッ化物が挙げられる。ビフェニル類としては、ビフェニル(BP)や、BPを構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基および/またはハロゲン原子(典型的にはフッ素原子)に置換したアルキルビフェニル、ビフェニルのハロゲン化物(典型的にはフッ化物)が挙げられる。ビフェニル類の具体例としては、BPの他、プロピルビフェニル、t−ブチルビフェニル等のアルキルビフェニル、2−フルオロビフェニル、2,2’−ジフルオロビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル等のビフェニルの部分フッ化物が挙げられる。ターフェニル類、ジフェニルエーテル類、ジベンゾフラン類としては、ターフェニル、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランや、それらを構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基に置換した各アルキル化物(アルキル化ターフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジベンゾフラン)および/またはハロゲン原子(典型的にはフッ素原子)に置換したターフェニル、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランの各ハロゲン化物(典型的にはフッ化物)が挙げられる。ターフェニルは、その一部に水素原子が付加したターフェニルの部分水素化物であってもよい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、分岐鎖状アルキルベンゼン類、シクロアルキルベンゼン類、ビフェニル類、ジフェニルエーテル類が好ましく、シクロアルキルベンゼン類(典型的にはCHB)、ビフェニル類(典型的にはBP)がさらに好ましく、シクロアルキルベンゼン類(典型的にはCHB)、ビフェニル類(典型的にはBP)の併用が特に好ましい。
ガス発生剤の使用量(添加量)は、非水電解質中に凡そ0.1質量%〜10質量%(例えば0.5質量%〜7質量%、典型的には1質量%〜5質量%)とすることが好ましい。
このようにして構築されるリチウムイオン二次電池のサイズ(典型的には電池容量)は特に限定されない。しかし、電極体を捲回電極体として構成する場合、上述のように、過充電状態になったときに、捲回中心側はガス発生剤のシャトル反応が起こりやすい高温状態となる傾向が強い。定格容量(設計容量)が5Ah以上(例えば10Ah以上、典型的には20Ah以上)の比較的大型の二次電池に本発明の構成を適用することで、上記のシャトル反応をより効果的に抑制することが期待できる。
かかるリチウムイオン二次電池は各種用途に供され得るが、特に自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に使用され得る。したがって、本発明は、図8に模式的に示すように、リチウムイオン二次電池100(典型的には複数直列接続してなる組電池)を電源として備える車両1(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)を提供する。
次に、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
<例1>
[正極シートの作製]
正極活物質としてLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O粉末と、導電材としてアセチレンブラック(AB)と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、これらの材料の質量比が91:6:3となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で混合して、ペースト状の正極合材層形成用組成物を調製した。この組成物を、長尺シート状のアルミニウム箔(正極集電体:厚さ15μm)の両面に合計塗付量が30mg/cm(固形分基準)となるように均一に塗付し、乾燥後、圧縮することによってシート状の正極(正極シート)を作製した。正極合材層の密度は2.8g/cmであった。正極合材層の多孔度は35%であった。
[負極シートの作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末と、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)と、増粘材としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの材料の質量比が98:1:1となるようにイオン交換水で混合して、ペースト状の負極合材層形成用組成物を調製した。この組成物を、長尺シート状の銅箔(厚さ14μm)に塗付量が17mg/cm(固形分基準)となるように均一に塗付し、乾燥後、圧縮することによって、シート状の負極(負極シート)を作製した。負極合材層の密度は1.4g/cmであった。
[フィラー層付きセパレータの作製]
フィラー層を形成する基材として、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンからなる三層構造の長尺シート状セパレータ(厚さ:20μm、多孔度:40%)を用意した。フィラー層は以下のようにして形成した。フィラーとしてアルミナと、結着材としてアクリル系バインダと、増粘材としてCMCとを、これらの質量比が96.7:2.6:0.7となるようにイオン交換水で混合することによってペースト状の組成物を調製した。混合は、エム・テクニック(株)製の超音波分散機「クレアミックス」を用いて、予備分散を15000rpmで5分行い、本分散を20000rpmで15分行った。得られた組成物をセパレータの片面に塗付し、70℃で乾燥させた。このようにして、片面にフィラー層が形成されたセパレータを得た。フィラー層の厚さは5μmであり、多孔度は55%であった。
[リチウムイオン二次電池の構築]
上記のようにして作製した正極シートと負極シートとを、それぞれ3.5cm角となり、かつタブを有するように切断し、タブ部の合材層を剥がしとって、シール付きリードを取り付けた。正極シート1枚に対し、2枚の負極シートを重ね合わせた。正極シートと負極シートの間に上記フィラー層付きセパレータを挟み込んで電極体を作製した。このとき、セパレータのフィラー層が正極シートに対向するように配置した。この電極体をアルミラミネートフィルム製の袋に収容し、非水電解液を袋内に注入した。非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との3:4:3(体積比)混合溶媒に、支持塩として約1mol/LのLiPFを溶解し、さらにシクロヘキシルベンゼン(CHB)1%とビフェニル(BP)1%を含有させた電解液を用いた。袋内を真空にひきながらアルミラミネートフィルムとリードに取り付けられたシール部とを熱溶着した。さらに2枚のSUS(Steel Use Stainless)の拘束板とクリップを用いて挟み込み、合材層部分を拘束した状態のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
<例2〜例7>
フィラー層の多孔度、セパレータの多孔度、正極合材層の多孔度を表1に示すように異ならせた他は例1と同様にしてラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
[ガス発生量測定]
作製した各リチウムイオン二次電池に対し、25℃の環境下にて1Cレートで4.1Vまで充電し、4.1Vになった時点で電流が0.1Cになるまで定電圧(CV)充電を行った。そして1Cで3Vまで放電した。この充放電を3回繰り返した後、次に述べる過充電試験を行った。まずSOC(State of Charge)100%でSUSの拘束板を外し、水で満たしたビーカーに水没させ、その体積(A0)を測定した。このとき、電池がビーカーに触れないようにピンセットで調整した。電池をビーカーから取り出し、再度SUSの拘束板で挟み込んだ後、25℃の環境下と60℃の環境下で、それぞれ1CレートでSOCが140%になるまで過充電を行った。なお、SOC100%とは、1Cレートで4.1Vまで充電し、4.1Vになった時点で電流が0.1CになるまでCV充電を行った状態とし、SOC0%は1Cで3Vまで放電した状態と定義した。SOC140%でSUSの拘束板を外し、水を満たしたビーカーに水没させ、この体積(A1)を測定した。このとき、上記と同様、電池がビーカーに触れないようにピンセットで調整した。上記で得たA1−A0をガス発生量(体積)とし、これを電池容量で除すことで、過充電時のガス発生量(cc/Ah)(mL/Ah)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2013222623
表1に示されるように、フィラー層(多孔質層A)の多孔度がセパレータ(多孔質層B)の多孔度より大きい例1〜例4のリチウムイオン二次電池は、25℃でのガス発生量が60cc/Ah以上であり、60℃でのガス発生量が42cc/Ah以上であった。一方、フィラー層(多孔質層A)の多孔度がセパレータ(多孔質層B)の多孔度より小さい例5〜例7では、25℃でのガス発生量が55cc/Ah以下であり、60℃でのガス発生量が27cc/Ah以下であった。これらの結果から、正極に対向する位置に高多孔性の多孔質層Aを配置し、負極側に低多孔性の多孔質層Bを配置することで、ガス発生剤の含有量は同じであるにもかかわらずガス発生量を増大させ得ることがわかる。その理由として以下のようなことが推察される。すなわち、ガス発生剤のラジカルカチオンが負極側に移動する際に、多孔質層Bは低多孔性であるため、多孔質層Aと多孔質層Bの境界近傍で該負極側への移動量が急激に減衰する。この減衰がエネルギー損失を伴い、上記シャトル反応を効果的に抑制した結果、ガス発生に必要なラジカルカチオンが正極側に多く留まり、これがガス発生量増大に寄与したものと考えられる。また、ガス発生量増大効果は、特に60℃の高温環境下において顕著であった。これは、上記のシャトル反応が高温環境下で促進されやすいためと考えられる。
また、例1と例2とを比べると、正極合材層の多孔度が大きい例2の方が、ガス発生量が増大している。これは、正極合材層の多孔度が大きいことにより、過充電状態になったときに正極近傍でガス発生剤の分解量が増大し、ガス発生に必要なHが充分量発生したためと考えられる。さらに、例2と例3とを比べると、多孔質層Aと多孔質層Bの多孔度の差異がより大きい例3の方が、60℃でのガス発生量が増大している。この結果から、多孔質層Aと多孔質層Bの多孔度の差異が大きい方が上記シャトル反応をより効果的に抑制できると考えられる。
以上より、本発明によれば、過充電状態になったときにガス発生量を増大させることができる。そのため、ガス発生剤の添加量を必要最小限に留めることが可能となり、ガス発生剤が過剰に含まれることによる電池特性の低下(典型的には電池抵抗の増加)を抑制することができる。したがって、本発明によれば、電池特性を高いレベルに維持しながら、過充電状態になったときに適切なタイミングでCIDを作動させることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
1 自動車(車両)
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極合材層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極合材層
25 非水電解液
30 CID
32 変形金属板
33 湾曲部分
34 接続金属板
35 集電リード端子
36 接合点
38 絶縁ケース
40,40A,40B セパレータ
41 樹脂層
41A,41B,41C 樹脂層
42 フィラー層
43 フィラー層
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
74 正極集電板
76 負極集電板
100 リチウムイオン二次電池

Claims (7)

  1. 電池ケースの内圧が上昇することによって作動する電流遮断機構を備える非水電解質二次電池であって、
    前記非水電解質二次電池に含まれる非水電解質がガス発生剤を含有し、
    前記非水電解質二次電池を構成する正極と負極の間には、少なくとも2つの多孔質層が配置されており、
    前記少なくとも2つの多孔質層のうち、前記正極に対向する位置に配置される多孔質層Aの多孔度は、前記負極側に配置される多孔質層Bの多孔度より大きい、非水電解質二次電池。
  2. 前記少なくとも2つの多孔質層は、前記多孔質層Aおよび前記多孔質層Bから構成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記多孔質層Aの多孔度は55%以上であり、前記多孔質層Bの多孔度は50%以下である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記多孔質層Aおよび前記多孔質層Bの一方は樹脂層であり、他方はフィラー層である、請求項1から3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記多孔質層Aおよび前記多孔質層Bがともに樹脂層である、請求項1から3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記多孔質層Aの多孔度は、前記正極を構成する正極合材層の多孔度より大きい、請求項1から5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の非水電解質二次電池を備える車両。
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