JP2016025716A - 非水電解質二次電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】電解液が電極保護剤を含むラミネート電池の形態の非水電解質二次電池において、電動車両用電源として用いる場合に要求される数百サイクルのサイクル耐久性をよりいっそう向上させうる手段を提供する。
【解決手段】正極集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するためのセパレータと、を含む単電池層を有する発電要素が、外装体の内部に、電極保護剤を含む電解液とともに、前記外装体の内部に余剰空間が存在するように封入されてなる非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池に外部圧力を印加する加圧手段と、前記非水電解質二次電池のSOCを算出するSOC算出手段と、前記SOC算出手段が算出したSOCに基づいて、前記加圧手段を制御して、前記外部圧力を調整する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記非水電解質二次電池の放電時において、前記SOCが所定値以下となったときに前記外部圧力を減少させることを特徴とする、非水電解質二次電池システム。
【選択図】図5
【解決手段】正極集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するためのセパレータと、を含む単電池層を有する発電要素が、外装体の内部に、電極保護剤を含む電解液とともに、前記外装体の内部に余剰空間が存在するように封入されてなる非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池に外部圧力を印加する加圧手段と、前記非水電解質二次電池のSOCを算出するSOC算出手段と、前記SOC算出手段が算出したSOCに基づいて、前記加圧手段を制御して、前記外部圧力を調整する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記非水電解質二次電池の放電時において、前記SOCが所定値以下となったときに前記外部圧力を減少させることを特徴とする、非水電解質二次電池システム。
【選択図】図5
Description
本発明は、非水電解質二次電池システムに関する。
近年、環境保護運動の高まりを背景として、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、および燃料電池車(FCV)の開発が進められている。これらのモータ駆動用電源としては繰り返し充放電可能な二次電池が適しており、特に高容量、高出力が期待できるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池が注目を集めている。
非水電解質二次電池の発電要素は、集電体表面に形成された正極活物質(たとえば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2等)を含む正極活物質層を有する。また、非水電解質二次電池の発電要素は、集電体表面に形成された負極活物質(たとえば、金属リチウム、コークスおよび天然・人造黒鉛等の炭素質材料、Sn、Si等の金属およびその酸化物材料等)を含む負極活物質層を有する。そして、これらの正極活物質層および負極活物質層が、通常は液体電解質等の電解質を保持するためのセパレータを介して積層されることにより、非水電解質二次電池の発電要素が形成される。この発電要素は、通常は液体電解質とともにアルミニウムラミネートフィルム等の外装材の内部に封入され、真空に封止されることによって電池が完成する(例えば、特許文献1を参照)。
本発明者らの検討によれば、特許文献1等に記載されているようないわゆるラミネート電池では、電動車両用電源として用いる場合に要求される数百サイクルのサイクル耐久性が依然として十分ではないことが判明した。
ここで、従来、非水電解質二次電池のサイクル耐久性を向上させることを目的として、ビニレンカーボネート等の添加剤(電極保護剤)を電解液に添加する技術が知られている。かような電極保護剤は、電池の特に負極の表面にSEI被膜を形成することで、電池の耐久性の向上に寄与する。しかしながら、本発明者らの検討によると、このような電極保護剤を電解液に添加した場合であっても、やはり十分なサイクル耐久性は達成できない場合があることが見出された。
そこで本発明は、電解液が電極保護剤を含むラミネート電池の形態の非水電解質二次電池において、電動車両用電源として用いる場合に要求される数百サイクルのサイクル耐久性をよりいっそう向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その過程で、いわゆるラミネート電池におけるサイクル耐久性の低下の原因が、電池のSOCが数%と小さい領域(低SOC領域)における活物質層の劣化にあることを突き止めた。そして、この知見に基づき、特に低SOC領域において電極保護剤を有効利用して電極の劣化を抑制することで、ラミネート電池におけるサイクル耐久性の低下が抑制されうることを確認して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る非水電解質二次電池システムは、非水電解質二次電池と、非水電解質二次電池に外部圧力を印加する加圧手段と、非水電解質二次電池のSOCを算出するSOC算出手段と、SOC算出手段が算出したSOCに基づいて、加圧手段を制御して、上記外部圧力を調整する制御手段とを備えている。また、上記非水電解質二次電池は、正極集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するためのセパレータと、を含む単電池層を有する発電要素が、外装体の内部に、電極保護剤を含む電解液とともに、前記外装体の内部に余剰空間が存在するように封入されてなるものである。そして、本発明に係る非水電解質二次電池システムにおいては、上記制御手段が、上記非水電解質二次電池の放電時において、上記SOCが所定値以下となったときに上記外部圧力を減少させる点に特徴がある。
本発明に係る非水電解質二次電池システムによれば、非水電解質二次電池のSOCが所定値以下となったときに、非水電解質二次電池に印加される外部圧力が減少する。これにより、より多くの電極保護剤が電極間(正極活物質層と負極活物質層との間)に移動し、電極保護剤の作用によって活物質層の劣化が抑制される。その結果、ラミネート電池におけるサイクル耐久性の低下が抑制され、電動車両用電源として用いる場合に要求される数百サイクルのサイクル耐久性を向上させることも可能となる。
本発明の一形態は、正極集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するためのセパレータと、を含む単電池層を有する発電要素が、外装体の内部に、電極保護剤を含む電解液とともに、前記外装体の内部に余剰空間が存在するように封入されてなる非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」とも称する)と、前記非水電解質二次電池に外部圧力を印加する加圧手段と、前記非水電解質二次電池のSOCを算出するSOC算出手段と、前記SOC算出手段が算出したSOCに基づいて、前記加圧手段を制御して、前記外部圧力を調整する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記非水電解質二次電池の放電時において、前記SOCが所定値以下となったときに前記外部圧力を減少させることを特徴とする、非水電解質二次電池システム(以下、単に「二次電池システム」とも称する)である。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池システムの構成を説明するためのブロック図である。図2は、扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図3は、本発明を適用した二次電池システムの二次電池を含む加圧装置部分を説明するための斜視図であり、図4は同じく二次電池を含む加圧装置部分の側面図である。
本実施形態の二次電池システムは、二次電池10と、この二次電池10を挟み込んで二次電池10を加圧する加圧装置4(加圧手段)と、加圧装置4によって二次電池10に印加される外部圧力を調整するコントローラ3(制御手段)を備える。
ここでは、本実施形態に係る二次電池10の一例として、扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池について説明する。しかし本発明を実施する上で、二次電池10は非水電解質二次電池であれば特に限定されない。
図2に示すように、本実施形態の二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、セパレータ17と、負極とを積層した構成を有している。なお、セパレータ17は、非水電解質(例えば、液体電解質)を内蔵している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、セパレータ17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図2に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図2とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)25および負極集電板(タブ)27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
なお、図2では、扁平型(積層型)の双極型ではない積層型電池を示したが、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層と、を有する双極型電極を含む双極型電池であってもよい。この場合、一の集電体が正極集電体および負極集電体を兼ねることとなる。
以下、各部材について、さらに詳細に説明する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜30μmである。
負極活物質層がバインダーを含む場合には、水系バインダーを含むことが好ましい。水系バインダーは、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。
水系バインダーとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダーとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
水系バインダーとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
上記水系バインダーは、結着性の観点から、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダーはスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
水系バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダーとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロースとを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.3〜0.7であることが好ましい。
負極活物質層がバインダーを含む場合、負極活物質層に用いられるバインダーのうち、水系バインダーの含有量は80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。水系バインダー以外のバインダーとしては、下記正極活物質層に用いられるバインダーが挙げられる。
負極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層の全量100質量%に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜4質量%であり、最も好ましくは2.5〜3.5質量%である。水系バインダーは結着力が高いことから、有機溶媒系バインダーと比較して少量の添加で活物質層を形成できる。
負極活物質層は、必要に応じて、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)は、上述した電解液が負極活物質層へと浸透することで、負極活物質層中に含まれることになる。したがって、負極活物質層に含まれうるリチウム塩の具体的な形態は、上述した電解質を構成するリチウム塩と同様である。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
負極活物質層および後述の正極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
負極活物質層の密度は、1.4〜1.6g/cm3であることが好ましい。負極活物質層の密度が1.6g/cm3以下であれば、電池の充放電時に発生したガスが発電要素の内部から十分に抜けることができ、長期サイクル特性がより向上しうる。また、負極活物質層の密度が1.4g/cm3以上であれば、活物質の連通性が確保され、電子伝導性が十分に維持される結果、電池性能がより向上しうる。負極活物質層の密度は、1.42〜1.53g/cm3であることが好ましい。なお、負極活物質層の密度は、単位体積あたりの活物質層質量を表す。具体的には、電池から負極活物質層を取り出し、電解液中などに存在する溶媒等を除去後、電極体積を長辺、短辺、高さから求め、活物質層の重量を測定後、重量を体積で除することによって求めることができる。
また、負極活物質層のセパレータ側表面の表面中心線平均粗さ(Ra)は0.5〜1.0μmであることが好ましい。負極活物質層の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以上であれば、長期サイクル特性がより向上しうる。これは、表面粗さが0.5μm以上であれば、発電要素内に発生したガスが系外へ排出されやすいためであると考えられる。また、負極活物質層の中心線平均粗さ(Ra)が1.0μm以下であれば、電池要素内の電子伝導性が十分に確保され、電池特性がより向上しうる。
ここで、中心線平均粗さRaとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記の数式1によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものである(JIS−B0601−1994)。
Raの値は、例えばJIS−B0601−1994等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式あるいは非接触式表面粗さ計などを用いて測定される。装置のメーカーや型式には何ら制限は無い。本発明における検討では、粗さ解析装置(SLOAN社製、型番:Dektak3030)を用い、JIS−B0601に定められている方法に準拠してRaを求めた。接触法(ダイヤモンド針等による触針式)、非接触法(レーザー光等による非接触検出)のどちらでも測定可能であるが、本発明における検討では、接触法により測定した。
また、比較的簡単に計測できることから、本発明に規定する表面粗さRaは、製造過程で集電体上に活物質層が形成された段階で測定する。ただし、電池完成後であっても測定可能であり、製造段階とほぼ同じ結果であることから、電池完成後の表面粗さが、上記Raの範囲を満たすものであればよい。また、負極活物質層の表面粗さは、負極活物質層のセパレータ側のものである。
負極の表面粗さは、負極活物質層に含まれる活物質の形状、粒子径、活物質の配合量等を考慮して、例えば、活物質層形成時のプレス圧を調整するなどして、上記範囲となるように調整することができる。活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、また、粉砕等により形状を制御することができ、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられる。したがって、活物質層に用いられる形状を考慮して、表面粗さを調整するために、種々の形状の活物質を組み合わせてもよい。
[正極活物質層]
正極活物質層は正極活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質層は正極活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni−Mn−Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくは、Li(Ni−Mn−Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiaNibMncCodMxO2(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と耐久性とのバランスに優れる点で好ましい。
なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極活物質層に含まれる活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。
正極活物質層に用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
正極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
バインダー以外のその他の添加剤については、上記負極活物質層の欄と同様のものを用いることができる。
[セパレータ(電解質層)]
セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
ここで、電池の初回充電時に発生したガスの発電要素からの放出性をより向上させるためには、負極活物質層を抜けてセパレータに達したガスの放出性も考慮することが好ましい。かような観点から、セパレータの透気度および空孔率を適切な範囲とすることがより好ましい。
具体的には、セパレータの透気度(ガーレ値)は200(秒/100cc)以下であることが好ましい。セパレータの透気度が200(秒/100cc)以下であることによって発生するガスの抜けが向上し、サイクル後の容量維持率が良好な電池となり、また、セパレータとしての機能である短絡防止や機械的物性も十分なものとなる。透気度の下限は特に限定されるものではないが、通常300(秒/100cc)以上である。セパレータの透気度は、JIS P8117(2009)の測定法による値である。
また、セパレータの空孔率は40〜65%であることが好ましい。セパレータの空孔率が40〜65%であることによって、発生するガスの放出性が向上し、長期サイクル特性がより良好な電池となり、また、セパレータとしての機能である短絡防止や機械的物性も十分なものとなる。なお、空孔率は、セパレータの原料である樹脂の密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値を採用する。例えば、原料の樹脂の密度をρ、セパレータのかさ密度をρ’とすると、空孔率=100×(1−ρ’/ρ)で表される。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。
前記不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
ここで、セパレータは、樹脂多孔質基体の少なくとも一方の面に耐熱絶縁層が積層されたセパレータであってもよい。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダーを含むセラミック層である。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電気デバイスの製造工程でセパレータがカールしにくくなる。また、上記セラミック層は、発電要素からのガスの放出性を向上させるためのガス放出手段としても機能しうるため、好ましい。
また、本実施形態において、セパレータは、電解液を保持する。電解液としては、液体電解質またはゲルポリマー電解質が用いられる。これらの電解液は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。
液体電解質は、有機溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiCF3SO3等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
また、本実施形態において、電解液は、電極保護剤を含む。「電極保護剤」とは、電極を保護する(電極の劣化を防止する)機能を有する剤であり、従来公知の化合物が好適に用いられうる。好ましくは、電極保護剤は、負極活物質の表面にSEI被膜を形成して負極活物質の劣化を防止する機能を有するものである。電極保護剤の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、特に優れた電極保護作用を有し、サイクル耐久性の向上に寄与しうるものとして、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートがより好ましい。これらの電極保護剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、電極保護剤の他の好ましい形態として、環式スルホン酸エステルが挙げられる。電極保護剤として環式スルホン酸エステルを含むことで、さらに高い寿命性能を得ることができる。環式スルホン酸エステルとしては、下記式(1):
式中、
Oは酸素、およびSは硫黄を表し、
A、BおよびDは、それぞれ独立して、単結合、酸素、硫黄、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびNR5基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、この際、R5は、水素原子、一価の脂肪族炭化水素基、一価の脂環式炭化水素基および一価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、単結合または二価の脂肪族炭化水素基を表す、
で表される化合物であることが好ましい。
Oは酸素、およびSは硫黄を表し、
A、BおよびDは、それぞれ独立して、単結合、酸素、硫黄、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびNR5基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、この際、R5は、水素原子、一価の脂肪族炭化水素基、一価の脂環式炭化水素基および一価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、単結合または二価の脂肪族炭化水素基を表す、
で表される化合物であることが好ましい。
式(1)において、R5は、水素原子、一価の脂肪族炭化水素基、一価の脂環式炭化水素基および一価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基(アミル基)、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3のシクロアルキル基であり、たとえば、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基(C7)、アダマンチル基(C10)、シクロペンチルエチル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3のアリール基であり、たとえば、フェニル基、アルキルフェニル基、アルキルフェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、単結合または二価の脂肪族炭化水素基を表す。二価の脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキレン基のいずれでもよく、たとえば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基などが挙げられる。
また、環式スルホン酸エステルは、下記式(2):
式中、
Zは炭素数1〜5のアルキレン基またはスルホニルアルキレン基である、
で表される化合物であることがより好ましい。式(2)で表される環式スルホン酸エステルとしては、Zがスルホニルアルキレン基(−SO2−CnH2n−)であるジスルホン酸化合物も含む。ジスルホン酸化合物としては、アルキレン基としては、炭素数1〜3がより好ましい。
Zは炭素数1〜5のアルキレン基またはスルホニルアルキレン基である、
で表される化合物であることがより好ましい。式(2)で表される環式スルホン酸エステルとしては、Zがスルホニルアルキレン基(−SO2−CnH2n−)であるジスルホン酸化合物も含む。ジスルホン酸化合物としては、アルキレン基としては、炭素数1〜3がより好ましい。
式(1)または式(2)で表される環式スルホン酸エステルとしては、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち、式(1)または式(2)で表される環式スルホン酸エステルとして、スルホニル基を2つ有する環式ジスルホン酸エステルも好ましく用いられる。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解液としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
ゲル電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
[集電体]
集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。
集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[外装体]
外装体は、その内部に発電要素を封入する部材であり、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースなどが用いられうる。該ラミネートフィルムとしては、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
外装体は、その内部に発電要素を封入する部材であり、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースなどが用いられうる。該ラミネートフィルムとしては、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
本実施形態において、外装体であるラミネートフィルム29の内容積は発電要素21を封入できるように、発電要素21の容積よりも大きくなるように構成されている。言い換えれば、本実施形態において、発電要素21は、上述した電解液(電極保護剤を含む)とともに、外装体であるラミネートフィルム29の内部に余剰空間(図2に示す符号30)が存在するように封入されている。ここで、外装体の内容積とは、外装体で封止した後の真空引きを行う前の外装体内の容積を指す。また、発電要素の容積とは、発電要素が空間的に占める部分の容積であり、発電要素内の空孔部を含む。外装体の内容積が発電要素の容積よりも大きいことで、加圧装置4により二次電池10に印加される外部圧力が減少したときには、電解液に含まれる電極保護剤が発電要素21の内部(電極間)へと移動して、電極を保護する機能が発揮される傾向となる。逆に、加圧装置4により二次電池10に印加される外部圧力が増加したときには、電極保護剤が発電要素21の内部(電極間)から余剰空間30へと移動して、電極を保護する機能が発揮されない傾向となる。
自動車用途などにおいては、昨今、大型化された電池が求められている。そして、電極保護剤を有効に機能させることによって数百サイクルものサイクル耐久性を向上させるという本願発明の効果は、負極活物質の表面における被膜(SEI)の形成量の多い大面積電池の場合に、より効果的に発現しうる。したがって、本発明において、電池構造体が大型であることが本発明の効果がより発揮されるという意味で好ましい。具体的には、負極活物質層が長方形状であり、当該長方形の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、負極活物質層の短辺の長さとは、各電極の中で最も長さが短い辺を指す。電池構造体の短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常250mm以下である。
また、電極の物理的な大きさの観点とは異なる、大型化電池の観点として、電池面積や電池容量の関係から電池の大型化を規定することもできる。例えば、扁平積層型ラミネート電池の場合には、定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積の最大値)の比の値が5cm2/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である電池においては、数百サイクルものサイクル数の充放電を繰り返した際の放電容量の低下が顕在化しやすい。したがって、本形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述したような大型化された電池であることが、本願発明の作用効果の発現によるメリットがより大きいという点で、好ましい。さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、充放電時に発生したガスを面方向に均一に排出することが可能となり、当該ガスの発生に起因する種々の問題の発生を防止できるという利点がある。
再び図1を参照して、二次電池10は負荷50に接続されており、その回路途中には負荷50に供給する電流を直流から交流に変換するためのインバータ51が介在している。そして二次電池10から負荷50への回路上には、電流計31が直列に接続され、また、電圧計32が並列に接続されている。電流計31および電圧計32はコントローラ3に接続されており、それぞれの測定値がコントローラ3に入力される。二次電池10からの出力端には、コントローラ3からの指令により開閉するリレースイッチ33が設けられている。このリレースイッチ33は二次電池10の開路電圧、閉路電圧を計測するために回路の開閉を行う。開路電圧は負荷50が接続されていない状態の電圧であり(開放電圧ともいう)、閉路電圧は負荷50が接続された状態の電圧である。また、二次電池10の外部(下部)には外部圧力センサ34が配置されている。外部圧力センサ34は、加圧装置4によって二次電池10に印加される外部圧力Pを検出する装置(外部圧力検出手段)である。この外部圧力センサ34もコントローラ3に接続されており、検出した外部圧力Pの信号をコントローラ3に出力する。なお、外部圧力センサ34としては、例えば、tekscan社製フィルム式圧力分布計測システムなどを用いることができるが、これに限定されることはない。このように、外部圧力センサ34を用いて外部圧力を検出し、この検出値に基づいて制御手段による制御を行うことで、より適した外部圧力を二次電池10に印加することが可能となる。ただし、外部圧力センサ34のような外部圧力検出手段の使用は必須ではない。
さらに、この回路には補助電源35が設けられている。この補助電源35は、たとえば、回路全体が単独で動作しているときには二次電池(蓄電池)でもよいし、一次電池でもよい。また、この回路が外部電源に接続された際、たとえば二次電池10を充電するために外部電源に接続された際には、その外部電源が補助電源35となる。
この補助電源35は、二次電池10の残存容量が低下した際に、コントローラ3および加圧装置4を動作させるための電源となる。なお、通常時、二次電池10の残存容量がコントローラ3および加圧装置4を動作させるために必要な量以上あるときには、二次電池10がコントローラ3および加圧装置4を動作させるための電源となる。
一方、加圧装置4は、図3および図4に示すように、下板42および上板43の間に、可動する規制板41を備えている。そして、下板42および規制板41は、二次電池10を挟み込んで当該二次電池10に外部圧力Pを印加している。下板42および上板43はボルトナット44によって接続され、固定されている。一方、規制板41の四隅にはボールねじ45が設けられている。なお、図3および図4において、二次電池10の正極集電板25および負極集電板27(図2参照)については図示を省略した。
ボールねじ45のねじ軸46は、下板42および上板43に対して回転自在に取り付けられている。上板43からは、ねじ軸46の一部が突出している。この突出部分に、ギア(不図示)が噛み合されてモータ48に接続されている。一方、規制板41には、ボールねじ45のナット部47が固定されている。規制板41は、この4つのボールねじ45のねじ軸46がモータ48によって回転させられることにより上板43と下板42との間でその位置が移動する。これにより、二次電池10に印加される外部圧力Pが変わる。
ここで、モータ48は4つのボールねじ45を同期して動作するように、エンコーダ付きのサーボモータやステッピングモータなどを使用することが好ましい。コントローラ3はエンコーダからの信号により規制板41の位置を把握するとともに、4つのボールねじ45を同期させて、規制板41が傾いたりせずに移動させるようにしている。そして、このように設けられた規制板41の位置がコントローラ3からの指令により動くことで、下板42と規制板41との間隔が変わり、外部圧力Pを間接的に調整している。
なお、加圧装置4の機構(ここでは、上板43と下板42を固定するボルトナット44や、ボールねじ45、モータ48、ギアなどの機械的機構)は、上記で説明した構成に限定されるものではない。このような機構は二次電池10を挟んでこれに印加される外部圧力Pを制御(調整)できるものであればどのような構成であってもよい。例えば、ボールねじ45に代えて、単純な送りねじを採用してもよい。また、ボールねじ45や送りねじなどのねじ機構以外にも、空気圧シリンダや油圧シリンダを用いて規制板41を移動するようにしてもよい。さらに、上板43および下板42を固定するボルトナット44も、これに代えて、上板43と下板42を側壁面で固定するようにしてもよいし、内部に可動する規制板41を備えた缶体構造とすることもできる。さらには、二次電池をステンレス鋼等から構成されるモジュール缶の内部に配置し、当該モジュール缶に接続された加圧装置を用いて缶の内部圧力を調整することによって二次電池10に外部圧力を印加する加圧手段を採用してもよい。
コントローラ3は、入力された電流値、電圧値、および時間から得られる二次電池10の残存容量、開路電圧、閉路電圧の少なくともいずれかから規制板41の位置を制御するための二次電池10のSOCを算出するSOC算出手段としても機能する。このようなコントローラ3は、例えばCPU(Central Processing Unit)から構成されうる。
次に、以上のように構成された二次電池システムの制御について説明する。
本実施形態における二次電池システムの制御の基本は、充放電時における二次電池10のSOCに応じて、加圧装置4が印加する外部圧力Pを調整するものである。
「SOC(State Of Charge)」とは、満充電状態における容量と現在時点における容量との比をいう。このSOCの算出(推定)方法は様々である。例えば、開路電圧と電池の内部抵抗から推定する方法、電流値を時間積分する方法などである。二次電池システムに負荷50が接続された状態でもSOCを求めることができるようにするためには、電流値を時間積分する方法を採用する必要がある。具体的には、満充電から取り出すことのできる電流量(電流×時間)をあらかじめ求めておいて、そこから、放電および充電を行った電流値と放電時間とを積算したものを減じる(または加える)ことにより簡単に残存容量を求めることができる。つまり、電池残存容量(SOC)=初期容量±電流値×時間となる。ここで、±の符号は、充電時は+、放電時は−となる。なお、SOCについては、満充電時が100%となるように満充電が行われるたびに補正することが好ましい。なお、SOCの算出(推定)は、このような方法に限らず、その他の方法を使用してもよい。
次に、図5に示す二次電池システムの制御手順を示すフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係る二次電池システムの制御手順を説明する。
まず、ステップS101において、コントローラ3は、二次電池10のSOCを算出する。
続いて、コントローラ3は、算出した二次電池10のSOCに基づき、必要に応じて、加圧装置4の下板42と規制板41との間隔を制御することにより、加圧装置4が印加する外部圧力Pを調整する。この点について、以下に詳細に説明する。
ステップS102において、コントローラ3は、算出した二次電池10のSOCが、予め定められた所定値(SOC1)以上の値であるか否かを判断する。この所定値(SOC1)は、二次電池の構造や材料等の種類に応じて適宜設定されうるが、例えば3〜5%である。本発明者らは、このように極めて小さいSOCの閾値を下回ったときに、電極の劣化が進行しやすいことを見出したのである。そして、この条件を満たす(すなわち、SOC≧SOC1である)場合(例えば、満充電状態から放電がなされ、放電容量がある程度残存している場合など)には、このステップにおいてYESと判断され、ステップS103に進む。一方、この条件を満たさない(すなわち、SOC<SOC1である)場合(例えば、放電時において、SOCが徐々に低下し、SOC1を下回った場合など)には、このステップにおいてNOと判断され、ステップS104に進む。
ステップS102においてYESと判断されると、ステップS103において、コントローラ3は、外部圧力センサ34が検出した外部圧力Pが、予め定められた所定範囲(第1所定範囲)内の値であるか否かを判断する。ここで、この第1所定範囲は、SOC≧SOC1である場合に適した比較的大きめの外部圧力の範囲であり、二次電池10の発電要素の積層方向の圧力として、好ましくは0.4〜1.5kgf/cm2に設定することができる。ステップS103において、この条件を満たす(すなわち、外部圧力Pが第1所定範囲内の値である)場合、このステップにおいてYESと判断され、ステップS101に戻る。一方、この条件を満たさない(すなわち、外部圧力Pが第1所定範囲を外れる)場合、このステップにおいてNOと判断され、ステップS105に進む。
ステップS103においてNOと判断されると、ステップS105において、コントローラ3は、加圧装置4を制御して、加圧装置4が印加する外部圧力Pを調整する。具体的には、加圧装置4の下板42と規制板41との間隔を制御することにより、外部圧力Pが第1所定範囲内の値となるように調整する。ステップS105において、外部圧力Pの調整が終了すると、ステップS106に進む。
一方、ステップS102においてNOと判断されると、ステップS104において、コントローラ3は、外部圧力センサ34が検出した外部圧力Pが、予め定められた所定範囲(第2所定範囲)内の値であるか否かを判断する。ここで、この第2所定範囲は、SOC<SOC1である場合に適した比較的小さめの外部圧力の範囲であり、二次電池10の発電要素の積層方向の圧力として、好ましくは0.1kgf/cm2以上0.4kgf/cm2未満に設定することができる。ステップS104において、この条件を満たす(すなわち、外部圧力Pが第2所定範囲内の値である)場合、このステップにおいてYESと判断され、ステップS101に戻る。一方、この条件を満たさない(すなわち、外部圧力Pが第2所定範囲を外れる)場合、このステップにおいてNOと判断され、ステップS105に進む。
ステップS104においてNOと判断されると、ステップS105において、コントローラ3は、加圧装置4を制御して、加圧装置4が印加する外部圧力Pを調整する。具体的には、加圧装置4の下板42と規制板41との間隔を制御することにより、外部圧力Pが第2所定範囲内の値となるように調整する。ステップS105において、外部圧力Pの調整が終了すると、ステップS106に進む。
ステップS106において、コントローラ3は、二次電池10の充放電が終了したか否か(二次電池10が充電状態または放電状態にあるか否か)を判断する。この条件を満たす(すなわち、二次電池10が充電状態にも放電状態にもない)場合、本実施形態に係る二次電池システムの制御は終了する。一方、この条件を満たさない(すなわち、二次電池10が充電状態または放電状態にある)場合、本実施形態に係る二次電池システムの制御を継続するため、ステップS101に戻る。なお、二次電池10の充放電が終了したか否かは、任意の手法により判断することができる。例えば、放電時においては、電流計31からコントローラ3に入力される電流の測定値がゼロとなったときに、放電が終了したと判断することができる。ただし、かような形態のみに限定されるわけではない。
上述したように、本発明者らの検討によれば、いわゆるラミネート電池におけるサイクル耐久性の低下の原因が、電池のSOCが数%と小さい領域(低SOC領域)における活物質層の劣化にあることが見出された。この知見に基づき、本実施形態に係る非水電解質二次電池システムでは、二次電池10のSOCが所定値以上である(SOC≧SOC1である)ときには、外部圧力Pが比較的大きめの範囲(例えば、0.4〜1.5kgf/cm2)に調整される。これにより、電解液に含まれる電極保護剤が発電要素21の内部(電極間)から余剰空間30へと移動して、電極を保護する機能が発揮されない傾向となる。その結果、SOC≧SOC1のとき(活物質層はそれほど劣化しないため、電極保護剤の機能が発揮される必要はない)には、電極保護剤の無駄な消費が抑えられ、電極保護剤の有効活用が可能となる。
一方、本実施形態に係る非水電解質二次電池システムにおいて、二次電池10のSOCが所定値未満である(SOC<SOC1である)ときには、外部圧力Pが比較的小さめの範囲(例えば、0.1kgf/cm2以上0.4kgf/cm2)に調整される。これにより、電解液に含まれる電極保護剤が発電要素21の内部(電極間)へと移動して、電極を保護する機能が発揮される傾向となる。その結果、SOC<SOC1のとき(活物質層の劣化が進行しうるため、電極保護剤の機能が発揮される必要がある)には、電極保護剤の作用によって活物質層の劣化が抑制される。その結果、ラミネート電池におけるサイクル耐久性の低下が抑制され、電動車両用電源として用いる場合に要求される数百サイクルのサイクル耐久性を向上させることも可能となる。
以下、実際にリチウムイオン二次電池を作製し、これに印加される外部圧力を本発明に係る二次電池システムを用いて調整しながら充放電サイクル試験を行った結果(実施例)を説明する。
[1.電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:30:40(体積比))を溶媒とした。また1.0MのLiPF6をリチウム塩とした。なお、「1.0MのLiPF6」とは、当該混合溶媒およびリチウム塩の混合物におけるリチウム塩(LiPF6)濃度が1.0Mであるという意味である。
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:30:40(体積比))を溶媒とした。また1.0MのLiPF6をリチウム塩とした。なお、「1.0MのLiPF6」とは、当該混合溶媒およびリチウム塩の混合物におけるリチウム塩(LiPF6)濃度が1.0Mであるという意味である。
[2.正極の作製]
正極活物質としてLiMn2O4(平均粒子径:15μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%、およびバインダーとしてPVdF10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。次に、正極スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(20μm)の両面に塗布し,乾燥・プレスを行い、片面塗工量20.0mg/cm2,両面厚み172μm(箔込み)の正極を作成した。
正極活物質としてLiMn2O4(平均粒子径:15μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック5質量%、およびバインダーとしてPVdF10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。次に、正極スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(20μm)の両面に塗布し,乾燥・プレスを行い、片面塗工量20.0mg/cm2,両面厚み172μm(箔込み)の正極を作成した。
[3.負極の作製]
負極活物質として人造黒鉛(平均粒子径:20μm)95質量%、導電助剤としてアセチレンブラック2質量%およびバインダーとしてSBR(日本ゼオン社製)2質量%、CMC(日本製紙ケミカル社製、商品名:サンローズ)1質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるイオン交換水を適量添加して、負極スラリーを作製した。次に、負極スラリーを、集電体である銅箔(15μm)の両面に塗布し、乾燥・プレスを行い、片面塗工量5.64mg/cm2,両面厚み92μm(箔込み)負極を作製した。
負極活物質として人造黒鉛(平均粒子径:20μm)95質量%、導電助剤としてアセチレンブラック2質量%およびバインダーとしてSBR(日本ゼオン社製)2質量%、CMC(日本製紙ケミカル社製、商品名:サンローズ)1質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるイオン交換水を適量添加して、負極スラリーを作製した。次に、負極スラリーを、集電体である銅箔(15μm)の両面に塗布し、乾燥・プレスを行い、片面塗工量5.64mg/cm2,両面厚み92μm(箔込み)負極を作製した。
[4.単電池の完成工程]
上記で作製した正極を210×184mmの長方形状に切断し、負極層を215×188mmの長方形状に切断した(正極15枚、負極16枚)。この正極と負極とを219×191mmのセパレータ(ポリオレフィン微多孔膜、厚さ25μm、空隙率55%)を介して交互に積層した。
上記で作製した正極を210×184mmの長方形状に切断し、負極層を215×188mmの長方形状に切断した(正極15枚、負極16枚)。この正極と負極とを219×191mmのセパレータ(ポリオレフィン微多孔膜、厚さ25μm、空隙率55%)を介して交互に積層した。
これらの正極と負極それぞれにタブを溶接し、アルミラミネートフィルムからなる外装中に、下記の表1に記載の量の電解液とともに密封して電池を完成させ、電極面積よりも大きいウレタンゴムシート(厚み3mm)で挟持して積層体とした後、アルミニウム板(厚み5mm)で当該積層体をさらに挟み込み、非水電解質リチウムイオン二次電池(単電池)を完成させた。なお、上記ウレタンゴムシートおよび上記アルミニウム板は電池の積層方向に外部圧力を印加する加圧手段として機能することができ、印加される外部圧力は可変である。このように作製された電池の定格容量は17.7Ahであり、定格容量に対する電池面積の比は28.8cm2/Ahであった。
[5.単電池の初回充放電工程]
上記のようにして作製した非水電解質リチウムイオン二次電池(単電池)について、まず、25℃に保持した恒温槽において24時間保持した後に初回充放電工程を実施した。初回充電は、0.05CAの電流値で4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、合わせて25時間充電した。次いで、40℃に保持した恒温槽において96時間保持した。その後、25℃に保持した恒温槽において、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。
上記のようにして作製した非水電解質リチウムイオン二次電池(単電池)について、まず、25℃に保持した恒温槽において24時間保持した後に初回充放電工程を実施した。初回充電は、0.05CAの電流値で4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、合わせて25時間充電した。次いで、40℃に保持した恒温槽において96時間保持した。その後、25℃に保持した恒温槽において、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。
[6.電池の評価]
上記のようにして作製した非水電解質リチウムイオン二次電池(単電池)を、45℃に保持した恒温槽において電池温度を45℃とした後、充放電性能試験により評価した。この充放電性能試験において、充電は1Cの電流レートで4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、合わせて2.5時間充電した。その後、10分間休止時間を設けた後、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。これらを1サイクルとし、充放電試験を実施した。初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率とした。
上記のようにして作製した非水電解質リチウムイオン二次電池(単電池)を、45℃に保持した恒温槽において電池温度を45℃とした後、充放電性能試験により評価した。この充放電性能試験において、充電は1Cの電流レートで4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、合わせて2.5時間充電した。その後、10分間休止時間を設けた後、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。これらを1サイクルとし、充放電試験を実施した。初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率とした。
なお、上記「5.単電池の初回充電工程」および「6.電池の評価」における充放電の際には、電池の電圧からSOCを随時算出するとともに、tekscan社製フィルム式圧力分布計測システムを用いて電池の積層方向に印加される外部圧力をモニタリングした。そして、電池のSOCが0〜3%のときと、3〜100%のときとで、電池に印加される外部圧力を下記の表1に示すように変化させた。なお、比較例3および比較例4では、加圧手段(ウレタンゴムシートおよびアルミニウム板)を用いずに(つまり、電池の積層方向に外部圧力を印加せずに)、同様の充放電試験を実施した。
表1に示す結果から、すべてのSOCにおいて一定の外部圧力を印加した場合には、外部圧力を印加しない場合と比較するとサイクル耐久性が一応向上した。ただし、このサイクル耐久性は十分ではない。一方、SOCが3%以下のときには外部圧力を減少させて充放電を実施することで、電池のサイクル耐久性が著しく向上することがわかる。
以上のことから、本発明に係る二次電池システムによれば、ラミネート電池におけるサイクル耐久性の低下が抑制され、電動車両用電源として用いる場合に要求される数百サイクルのサイクル耐久性を向上させることも可能となることが示される。
3 コントローラ(SOC算出手段、制御手段)、
4 加圧装置(加圧手段)、
10 非水電解質二次電池、
11 正極集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 セパレータ、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 電池外装体、
30 電池外装体の内部における余剰空間、
31 電流計、
32 電圧計、
33 リレースイッチ、
34 外部圧力センサ(外部圧力検出手段)
35 補助電源、
41 規制板、
42 下板、
43 上板、
44 ボルトナット、
45 ボールねじ、
46 ねじ軸、
47 ナット部、
48 モータ、
50 負荷、
51 インバータ。
4 加圧装置(加圧手段)、
10 非水電解質二次電池、
11 正極集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 セパレータ、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 電池外装体、
30 電池外装体の内部における余剰空間、
31 電流計、
32 電圧計、
33 リレースイッチ、
34 外部圧力センサ(外部圧力検出手段)
35 補助電源、
41 規制板、
42 下板、
43 上板、
44 ボルトナット、
45 ボールねじ、
46 ねじ軸、
47 ナット部、
48 モータ、
50 負荷、
51 インバータ。
Claims (11)
- 正極集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するためのセパレータと、を含む単電池層を有する発電要素が、外装体の内部に、電極保護剤を含む電解液とともに、前記外装体の内部に余剰空間が存在するように封入されてなる非水電解質二次電池と、
前記非水電解質二次電池に外部圧力を印加する加圧手段と、
前記非水電解質二次電池のSOCを算出するSOC算出手段と、
前記SOC算出手段が算出したSOCに基づいて、前記加圧手段を制御して、前記外部圧力を調整する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記非水電解質二次電池の放電時において、前記SOCが所定値以下となったときに前記外部圧力を減少させることを特徴とする、非水電解質二次電池システム。 - 前記外部圧力を検出する外部圧力検出手段を備え、
前記制御手段は、前記外部圧力検出手段が検出した前記外部圧力が所定の範囲内となるように、前記加圧手段を制御する、請求項1に記載の非水電解質二次電池システム。 - 減少後の前記外部圧力が、前記発電要素の積層方向の圧力として0.1kgf/cm2以上0.4kgf/cm2未満である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池システム。
- 前記所定値が、3〜5%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
- 前記制御手段はさらに、前記SOCが前記所定値よりも大きくなったときに前記外部圧力を増加させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
- 増加後の前記外部圧力が、前記発電要素の積層方向の圧力として0.4〜1.5kgf/cm2である、請求項5に記載の非水電解質二次電池システム。
- 前記電極保護剤が、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートおよびジフルオロエチレンカーボネートからなる群より選択される1種または2種以上の化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
- 前記電極保護剤が、下記式(1):
Oは酸素、およびSは硫黄を表し、
A、BおよびDは、それぞれ独立して、単結合、酸素、硫黄、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびNR5基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、この際、R5は、水素原子、一価の脂肪族炭化水素基、一価の脂環式炭化水素基および一価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、単結合または二価の脂肪族炭化水素基を表す、
で表される1種または2種以上の環式スルホン酸エステルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。 - 前記発電要素は、複数の前記単電池層が積層されてなる構成を有し、
前記加圧手段は、前記非水電解質二次電池の前記発電要素の積層方向に前記外部圧力を印加する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。 - 定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積)の比の値が5cm2/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
- 前記活物質層が矩形状であり、当該活物質層の縦横比として定義される電極のアスペクト比が1〜3である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池システム。
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-
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