JP2013211114A - リチウム二次電池用正極活物質の前駆体とその製造方法および該前駆体を用いたリチウム二次電池用正極活物質とその製造方法、並びに該正極活物質を用いたリチウム二次電池 - Google Patents
リチウム二次電池用正極活物質の前駆体とその製造方法および該前駆体を用いたリチウム二次電池用正極活物質とその製造方法、並びに該正極活物質を用いたリチウム二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】2価のMイオンとリン酸化物イオンとの混合溶液を調製する混合溶液調製工程と、アンモニアを添加して、該混合溶液のpHを7〜9の範囲に調整して、共沈殿させ、リン酸アンモニウムM塩を得る晶析工程とを、備えることを特徴とする、一般式:NH4MPO4・nH2O(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上、0≦n≦1)で表されるリン酸アンモニウム遷移金属からなるリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造法、前駆体、正極活物質の製造方法、正極活物質、およびリチウムイオン二次電池など。
【選択図】なし
Description
そして、IT機器の発展、普及に伴い、現在もその需要が世界的な規模で伸びている。これらの小型電池に加えて、産業用の大型電池においても、ハイブリッド自動車(HEV)用、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(EV)用、電力平準化用、電力貯蔵用など、さらに多方面にその需要の拡大が期待され、研究開発も盛んに行われている。
代表的な上記オリビン型正極活物質として、リチウム鉄燐酸塩(LiFePO4)が挙げられる。LiFePO4は、構成元素がLiを除き全てクラーク数の上位にあるので、資源的制約が少なく、低価格な原料から合成し得る材料であり、かつ理論容量に近い容量を高効率で実現している。また、全ての酸素がリンと共有結合して、リン酸の強固な骨格を有し、構造が安定なため、安全性が高く、サイクル寿命も長いという性質から、リチウム二次電池の正極活物質として、工業的に生産され実用化されている。
一方で、LiMnPO4は、LiFePO4よりもさらに電子伝導性が低いため、電気化学特性を引き出すためには、更なる工夫が必要になるという課題がある。また、現在一般的に用いられている非水溶液電解質では、LiCoPO4の作動電圧である4.8Vで分解してしまうので、LiCoPO4を正極活物質として、使用できないという問題があり実用化に至っていない。
しかし、一般的に固相法では、反応に必要な温度が高いために、1次粒子の粗大化や凝集成長しやすく、粒子径が大きくなる。上記のように導電率が低いLiMnPO4またはLiCoPO4では、強力な微細化処理が必要となる。極度の微粒子化処理には、湿式ミルでアルミナやジルコニア球等を媒体として処理することが一般的であるが、粉砕時に不純物が混入しやすく、処理後の乾燥処理も必要である。以上のように固相反応法に関しては、焼成工程での効率は非常に良好であるが、高温処理による粒子の粗大化が避けられず、非常に時間とコストがかかるという問題がある。
また、黒鉛などによる導電性の付与は、導電性の改善のために必要であり、LiMnPO4またはLiCoPO4粒子の表面を、均一に被覆することが望ましい。そのためには、これらの粒子を微細化した後に炭素源を添加し、再度熱処理を行う必要があり、工程が長くなり、コストが増加する。固相反応法において、前駆体段階で炭素源を添加すると、合成反応を阻害してしまうので、一段の熱処理で導電性炭素複合化を行うのは極めて困難である。
しかし、水熱法は、溶媒に対するLi、M、P原料濃度が低く、また、反応には高圧容器を用いるため、効率的な大量合成には向かないという欠点があり、やはり価格的に大型電池用に適さない。
以上のように、これまでの製造方法では、上述のような問題があり、微細で高性能なLiMnPO4またはLiCoPO4のようなオリビン型正極活物質を、工業的で安価に製造する方法は、開発されていないのが現状である。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記混合溶液調製工程において、2価のMイオンの供給原料として、硫酸塩および塩化物塩からなる群から選択される1種以上の水溶性金属塩を用いることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明において、前記混合溶液調製工程において、リン酸化物イオンの供給原料として、リン酸およびリン酸二水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上の水溶性塩を用いることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記晶析工程で得られたリン酸アンモニウムM塩(NH4MPO4・nH2O)を洗浄する洗浄工程を、さらに、備えることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第8の発明において、前記200〜500℃での焼成により得られたリチウム遷移金属複合リン酸塩と、炭素源との混合物を、不活性または還元雰囲気下において、600〜800℃で熱処理することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第10の発明において、前記熱処理前に、予め、前記リチウム遷移金属複合リン酸塩の粉砕を行うことを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第15の発明によれば、第13又は14の発明において、C2023型コイン電池の正極活物質とした場合、初期充放電における効率が65%以上であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質が提供される。
また、本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、毒性のある化合物を用いることなく、容易に高収率で工業的規模の生産にも適したものであり、その工業的価値は、極めて大きい。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法は、一般式:NH4MPO4・nH2O(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上、0≦n≦1)で表されるリン酸アンモニウム遷移金属からなるリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造法であって、
2価のMイオンとリン酸化物イオンとの混合溶液を調製する混合溶液調製工程と、アンモニアを添加して該混合溶液のpHを7〜9の範囲に調整して共沈殿させ、リン酸アンモニウムM塩(NH4MPO4・nH2O)を得る晶析工程とを、備えることを特徴とする。
ここで、Mとリン酸化物のモル比は、化学量論では1:1であるが、晶析時の収率を考慮して、リン酸化物に対するMのモル比を0.9〜1.1までの範囲とすることができる。モル比が0.90以下では、リン酸化物イオンの収率が悪化し、一方、1.1以上では、Co3O4やMnO2といった不純物が生成しやすくなる。好ましくは0.95〜1.05となるように溶解する。Mとしての遷移金属のモル比は、得ようとするリン酸アンモニウムM塩におけるモル比とすればよい。
一般式(1):NH4MPO4・nH2O
(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上、0≦n≦1)
また、リン酸化物としては、水溶性のものを用いることができ、具体的には、リン酸化物イオンの供給原料として、リン酸またはリン酸二水素アンモニウムから選択される1種以上の水溶性金属塩を用いることが好ましい。
リン酸アニオンと金属イオンは、溶液中での共存状態では、完全に均一に混合された状態となっており、これを共沈殿させることで、Mとリン酸が厳密に混合され、均一な組成の共沈物を得ることができる。
pHを高pH側に制御して、共沈殿させる目的のみであれば、アルカリ金属水酸化物等を用いることができるが、アルカリ金属水酸化物を用いると、アルカリ金属が共沈殿物に残留して不純物となる。特に、水酸化ナトリウムを用いると、残留する不純物としてナトリウムが多くなり、最終的に得られるリチウム二次電池用正極活物質中のナトリウムが高くなり、正極活物質の特性を悪化させる。
pHを7〜9に制御することで、組成ずれがなく、不純物を含まないリチウム二次電池用正極活物質の前駆体として適したリン酸アンモニウムマンガン鉄を得ることができる。このとき原料溶液に金属イオンのみを溶解し、そこにリン酸とアンモニアの混合溶液を滴下しても、リン酸アンモニウムM塩を得ることができるが、硫酸根が多く残留してしまい洗浄で除去することは困難である。
また、晶析中は、混合溶液の液温を25〜60℃に保持することが好ましい。該液温が25℃未満では、混合溶液中での金属イオンの溶解度が低く、Mとリン酸の析出速度に差が生じて、組成ずれを起こすことがある。また、液温の上限は、60℃とすることが好ましい。液温が60℃を超えると、混合溶液中での金属イオンの溶解度が高くなり、析出速度が低下して、得られるリン酸アンモニウムM塩の結晶性が高くなり過ぎ、最終的に得られる正極活物質が粗粒化する場合がある。
晶析反応終了後、ろ過、遠心分離などにより固液分離し、不純物を除去するため、上記晶析工程で得られたリン酸アンモニウムM塩を十分に水洗した後、乾燥させる。ここで、上記リン酸アンモニウムM塩は、微細な粒子構造を持っているため、水洗により、ナトリウム等の不純物が容易に除去可能である。
また、乾燥温度は、酸化が抑制可能な範囲であればよく、250℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましい。一方、乾燥温度の下限は、60℃以上とすることが好ましく、90℃以上とすることがより好ましい。60℃未満では、乾燥に時間がかかるとともに付着水や必要以上の結晶水残るため、好ましくない。無水化できる程度に乾燥することがより好ましい。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体は、上記製造方法によって得られるものであり、上記一般式(1)で表され、ナトリウム含有量が0.01質量%以下であることを特徴とする。
また、ナトリウム含有量が0.01質量%以下であり、得られる正極活物質で十分な特性が得られる。ナトリウム含有量が0.01質量%を超えると、オリビン構造中のLiイオンの移動がNaで阻害されるために、得られた正極活物質を用いた正極性能が低下する。
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウム二次電池用正極活物質(以下、単に正極活物質ということがある)の前駆体である上記リン酸アンモニウムM塩とリチウム塩を混合後、不活性または還元雰囲気下において、200〜500℃で焼成して、リチウム遷移金属複合リン酸塩、すなわち、リチウム二次電池用正極活物質を得ることを特徴とする。
焼成工程においては、先ず、上記リン酸アンモニウムM塩とリチウム塩を混合する。リン酸アンモニウムM塩とリチウム塩との混合は、リン酸アンモニウムM塩とリチウム塩を、下記一般式(2)で表されるリチウム遷移金属複合リン酸塩が得られるように、混合するものである。
一般式(2):LiMPO4
(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上)
本発明のリン酸アンモニウムM塩は、原子レベルでMとリン酸が均一に混合された状態となっていることから、上記温度範囲による焼成でも、均質化され、良好な結晶性を有するリチウム遷移金属複合リン酸塩(LiMPO4)、すなわち、リチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。焼成温度が200℃未満では、反応原料である炭酸リチウムなどが残存することがあり、また、500℃を超えると、粒子の焼結が進行して、粗大粒子が生成され、最終的に得られる正極活物質の導電性が低下する。
焼成温度が600℃未満では、炭素の黒鉛化が進行せず、正極活物質に十分な導電性が得られない。また、焼成温度が800℃を超えると、粒子の焼結が進行して粗大化し、正極活物質の導電性が低下する。
上記還元雰囲気としては、不純物の混入を抑制するため、不活性ガスと水素ガスの混合ガスが好ましく、混合ガス中の水素ガス含有量としては、1〜20容量%とすることが好ましい。また、焼成温度での保持時間は、良好な結晶性を得るため、1〜10時間とすることが好ましい。
炭素源混合工程は、リチウム遷移金属複合リン酸塩に導電性を付与するために、炭素源を、最終的な正極活物質において、炭素含有率が1〜5質量%になるように混合する工程である。
炭素源としては、焼成によって、黒鉛化して導電性炭素質材料となるものであれば、特に限定されるものではなく、天然黒鉛、人工黒鉛等の黒鉛、アセチレンブラックやケッチェンブラックなど等のカーボンブラック類、炭素繊維、ショ糖などの一般的な炭化水素類、アスコルビン酸その他、分解によって炭素質を生じる有機化合物等を幅広く用いることができる。
また、炭素源に含まれる炭素原子の量は、焼成により、炭素源より減少する傾向がある。このため、炭素源の配合量は、焼成後に含有される炭素量に対して、質量比で40〜120%多くすることが好ましく、50〜120%多くすることがより好ましい。
炭素源混合工程においても、リン酸アンモニウムM塩もしくは焼成によって得られたリチウム遷移金属複合リン酸塩を、粉砕することで、最終的に得られる正極活物質を微粒化するとともに、均一に粒子を導電性炭素質材料で被覆することができるため、混合と同時に粉砕しておくことが好ましい。このため、ボールミル、遊星ミル、振動ミル、ビーズミル等などのミルを用いることが好ましい。なお、リン酸アンモニウムM塩と混合する場合は、上述のようにリチウム塩との混合と同時に行うことが好ましい。
炭素源混合工程で、炭素源を混合したリチウム遷移金属複合リン酸塩を、焼成工程で炭素源を混合した場合と同様に、不活性または還元雰囲気下で、600〜800℃、好ましくは600〜700℃で熱処理することにより、炭素質材料と複合化され導電性が良好なリチウム遷移金属複合リン酸塩、すなわち、リチウム二次電池用正極活物質を得ることができる。
上記、正極活物質は、均一微細な一次粒子で構成されているが、電池の電極作製工程において、必要に応じて、これを粉砕、分級して用いることができる。
本発明の正極活物質は、均一微細な一次粒子で構成された上記一般式(2)で表されるオリビン型リチウム遷移金属複合リン酸塩からなるものであり、一次粒子の平均粒径が50〜1000nmであり、BET比表面積が5〜50m2/gである。これにより、正極活物質として用いたときに十分な電池容量が得られる。
なお、一次粒子径は、走査型電子顕微鏡観察により測定することができ、二次粒子径は、レーザー散乱回折法で測定することができる。
一次粒子の平均粒径が50nm未満になると、正極活物質のかさ密度が低くなり、電池の正極活物質として用いた場合に、容積あたりの電池容量が低くなりすぎる。一方、一次粒子の平均粒径が1000nmを超えると、電池反応の際のリチウムイオン及び電子伝導率が低く、高抵抗なLiMPO4粒子内部をリチウムイオン、電子が移動する距離が大きくなり、電池の反応速度が極めて遅くなり、電池抵抗が上昇するとともに、十分な電池容量が得られない。一次粒子の平均粒径は、100〜800nmであることが好ましい。
また、BET比表面積が5m2/g未満では、電池の正極を構成したときに、十分な電解液との接触が得られず、電池抵抗の上昇や導電性の低下が生じる。また、50m2/gを超えると、正極活物質のかさ密度が低くなりすぎる。
本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極、非水電解質など、一般のリチウム二次電池と同様の構成要素から構成される。
以下、本発明のリチウム二次電池の実施形態について、その構成要素、用途などの項目に分けて詳しく説明するが、以下の実施形態は、例示にすぎず、本発明のリチウム二次電池は、本明細書に記載の実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
正極は、本発明の正極活物質、導電材および結着剤を含んだ正極合材から形成される。
詳しくは、粉末状の正極活物質、導電材を混合し、それに結着剤を加え、必要に応じて、粘度調整などのための溶剤を、さらに添加して、正極合材ペーストを調整し、その正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布、乾燥、必要に応じて加圧することにより、シート状の正極を作製する。
導電材は、正極の電気伝導性を確保するためのものであり、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などの炭素物質粉状体の1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子を繋ぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、その他の適切な材料を用いることができる。
また、活性炭を、電気二重層容量を増加させるために、添加することができる。
このような正極活物質、導電材、および結着剤を混合し、必要に応じて、活性炭、溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを調製する。
たとえば、アルミニウムなどの金属箔集電体の表面に、充分に混練した上記の正極合材ペーストを塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させ、必要に応じて、その後に、電極密度を高めるべくロールプレスなどにより圧縮することにより、正極をシート状に形成することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などを行い、電池の作製に供することができる。
負極には、金属リチウム、リチウム合金など、また、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に、塗布、乾燥し、必要に応じて、電極密度を高めるべく圧縮して、形成したものを使用する。このとき、負極活物質として、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂などの有機化合物焼成体、コークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極と同様に、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素樹脂などを、これら負極活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
正極と負極の間には、セパレータを挟み装填する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの薄い微多孔膜を用いることができる。
非水系電解質は、支持塩としてのリチウム塩を、有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
本発明のリチウム二次電池においては、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を正極材料として用いた正極を備えており、4.0〜4.8Vという高電位で充放電を行なうことが可能で、従来のリチウム金属複合酸化物よりも、高いエネルギー密度で、かつ安全性が高いリチウム二次電池を工業的に実現できる。
ICP発光分析装置(VARIAN社、725ES)を用いて、ICP発光分析法により分析した。
(2)X線回折:
粉末X線回折装置(PANALYTICAL社製、X‘Pert PRO)を用いて、得られた正極活物質について、Cu−Kα線による粉末X線回折で測定した。
(3)比表面積:
BET法測定機(ユアサアイオニックス株式会社製 カンタソーブQS−10)を用いて、窒素ガス吸着によるBET法で測定した。
(4)電池容量の評価:
得られた正極活物質について、以下の手順でコイン型電池を作製し、電池の充放電容量を測定して評価した。
正極活物質に、導電材としてアセチレンブラック33質量%、結着材としてポリビニリデンフルオライド(PVDF)17質量%、N−メチルピロリドン(NMP)溶液を添加混合し、上記正極活物質50質量%−導電材33質量%−PVDF17質量%の混合物を得た。
この混合物をアルミ箔上に塗布し、80℃で乾燥後、電極寸法の直径11mmφに打ち抜き、プレス圧98MPa(1.0tonf/cm2)でプレスして電極を作製した。
この電極を正極とし、グローブボックス内で負極として金属Li、電解液として、LiMnPO4には、電解質LiClO41モル/Lを含んだエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の等量混合液(容積比でEC/DMC=1/1)、また、LiCoPO4には、電解質LiPF61モル/Lを含有するエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)の等量混合液(容積比でEC/EMC/DMC=1/1/1)を、それぞれ用いて、C2023型コイン電池を作製した。
電池の充放電を、充電0.2mA/cm2、5.2V、休止60分、放電0.2mA/cm2、2.0V、25℃の条件で実施し、2サイクル目の放電容量を、評価値として用いた。
硫酸マンガンn水和物(中央電工製:99.9質量%)174g(Mnとして1モル)とリン酸(和光社製:純度85.0質量%以上)1モル(115g)を蒸留水1Lに入れ、攪拌機で1hよく攪拌し、原料溶液とした。
原料溶液を2Lのセパラブルフラスコに入れ、内部を窒素で置換しながら、攪拌機で攪拌した。30分後、原料溶液に25質量%アンモニア水(和光社製)をpHが8.0〜8.2になるまで滴下した。滴下終了後、セパラブルフラスコを窒素で置換しながら30分撹拌を継続して反応を完全に進行させた。この反応液を吸引濾過で濾過し、水で洗浄して生成した固形物を回収した。回収した固形物を真空下100℃で一昼夜乾燥して前駆体を得た。
得られた前駆体は、X線回折分析により、リン酸アンモニウムマンガン(NH4MnPO4)と同定された。図3に得られた前駆体(リン酸アンモニウムマンガン)のX線回折チャートを示す。得られた前駆体のナトリウム含有量は、分析下限(20質量ppm)以下であった。
得られた混合物を電気炉で、窒素−2容量%水素混合ガスを1L/分で炉内をパージしながら、昇温速度10℃/分で昇温後、500℃で5時間焼成して、リチウム遷移金属複合リン酸塩を得た。
複合リン酸塩は、X線回折分析により、リチウムマンガン複合リン酸塩(LiMnPO4)と同定された。図4に得られた複合リン酸塩(リチウムマンガン複合リン酸塩)のX線回折チャートを示す。
この正極活物質のリチウム:マンガン:リンの組成は、原子比で1.03:1.00:1.00であり、炭素含有量は、3.0wt%であった。走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、一次粒子の粒径範囲は100〜500nmにあり、平均粒径は300nmであった。また、比表面積は27.2m2/gであった。電池評価を実施すると、初期充電容量は61mAh/g、初期放電容量は55mAh/g、初期効率は90%であり、充放電容量が低いものであった。
硫酸マンガンn水和物に替えて、硫酸コバルト七水和物(工業用)1モルを用いたこと、焼成温度を600℃としたこと、スクロースと混合して熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得るとともに評価した。
得られた前駆体は、X線回折分析により、リン酸アンモニウムコバルト(NH4CoPO4)と同定された。図1に得られた前駆体(リン酸アンモニウムコバルト)のX線回折チャートを示す。得られた前駆体のナトリウム含有量は、分析下限(20質量ppm)以下であった。
また、得られた複合リン酸塩は、X線回折分析により、リチウムコバルト複合リン酸塩(LiCoPO4)と同定された。図2に得られた複合リン酸塩(リチウムコバルト複合リン酸塩)のX線回折チャートを示す。
この正極活物質のリチウム:コバルト:リンの組成は、原子比で0.97:1.00:1.00であった。走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、一次粒子の粒径範囲は500〜1000nmにあり、平均粒径は750nmであった。また、比表面積は7.18m2/gであった。電池評価を実施すると、初期充電容量は160mAh/g、初期放電容量は114mAh/g、初期効率は71%であった。
硫酸コバルト七水和物(工業用)0.500モル(140.6g)と硫酸マンガンn水和物(中央電工製:99.9質量%)0.500モル(85.27g))とリン酸(和光社製:純度85.0質量%以上)1モル(115.3g)を、蒸留水で2Lにメスアップし、攪拌機で1時間攪拌し、原料溶液とした。また、25質量%アンモニア水溶液をpH調整溶液とした。
撹拌機付5Lのセパラブルフラスコに1Lの純水を入れ、内部を窒素で置換しながら、30分攪拌した。pH調整溶液をpHコントローラにつなぎ、pHを8.0〜8.2に制御しながら、原料溶液を毎分10mLの速度で添加した。滴下終了後、セパラブルフラスコを窒素で置換しながら30分撹拌を継続して共沈殿反応を完全に進行させた。反応後のスラリーを吸引濾過で固液分離した後、純水で2回レパルプ水洗浄を行った。
水洗後、120℃真空下で24時間乾燥して、リン酸アンモニウムマンガンコバルトを得た。
上記リン酸アンモニウムマンガンコバルト30g、炭酸リチウム(関東化学社製鹿特級:99.0質量%)5.94gおよびエタノール60mlを、φ1.0mmジルコニアボール650gの入った内容積500mlジルコニア製ポットに入れ、遊星ボールミル(フリッチュジャパン製)により350rpmで10分間混合するとともに粉砕した。処理後、スラリーとジルコニアボールを篩い分けし、常温、真空下で24時間乾燥してエタノールを除去した。
電気炉を用いて得られた混合物を、98容量%窒素と2容量%水素の混合ガスを1L/分の流量で炉内にパージしながら10℃/分で昇温した後、350℃5時間焼成した。
焼成物をX線回折で分析すると、オリビン型リチウムマンガンコバルト複合リン酸塩単相と同定され、リチウムマンガンコバルト複合リン酸塩が得られたことが確認された。得られた前駆体のナトリウム含有量は、分析下限(20質量ppm)以下であった。
この正極活物質のLi:Mn:Co:Pの組成は、モル比で1.00:0.50:0.50:1.00であり、炭素量は2.2質量%であった。
X線回折分析から、オリビン型リチウムマンガンコバルト複合リン酸塩単相であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行うと、一次粒子の粒径範囲は100〜200nmにあり、平均粒径は150nmであった。また、BET法により求めた正極活物質の比表面積は、26.5m2/gであった。
正極活物質の電池評価を実施したところ、初期充電容量は130mAh/g、初期放電容量は90mAh/g、初期効率は69%であった。
硫酸コバルト七水和物(工業用)0.700モル(190.8g)と硫酸鉄7水和物(工業用)0.300モル(83.4g)とリン酸(和光社製:純度85.0質量%以上)1モル(115.3g)を、蒸留水で2Lにメスアップし、攪拌機で1時間攪拌し、原料溶液とした以外は、実施例2と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
この正極活物質のLi:Fe:Co:Pの組成は、モル比で1.00:0.30:0.70:1.00であり、炭素量は2.3質量%であった。
X線回折分析から、オリビン型リチウム鉄コバルト複合リン酸塩単相であることが確認された。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行うと、一次粒子の粒径範囲は、150〜300nmにあり、平均粒径は250nmであった。また、BET法により求めた正極活物質の比表面積は、25.5m2/gであった。
正極活物質の電池評価を実施したところ、初期充電容量は140mAh/g、初期放電容量は97mAh/g、初期効率は69%であった。
晶析工程において、アンモニア水により、pHを6.0〜6.2の範囲に制御した以外は、実施例1と同様にして、前駆体を得た。
得られた前駆体は、X線回折分析によると、NH4CoPO4とCoO(OH)とCo3O4の混合物であったため、以後の実験を中止した。
晶析工程において、アンモニア水により、pHを9.5〜9.7の範囲に制御した以外は、実施例1と同様にして、前駆体を得た。
晶析後の固液分離時に回収した液は、紫色を呈していた。化学分析の結果、原料収率がコバルト98%、リン97%と低い値を示した。コバルトがアンミン錯体化したためと、考えられる。回収率が低く、実用上に問題があるため、以後の実験を中止した。
Claims (16)
- 一般式:NH4MPO4・nH2O(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上、0≦n≦1)で表されるリン酸アンモニウム遷移金属からなるリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造法であって、
2価のMイオンとリン酸化物イオンとの混合溶液を調製する混合溶液調製工程と、
アンモニアを添加して、該混合溶液のpHを7〜9の範囲に調整して、共沈殿させ、リン酸アンモニウムM塩(NH4MPO4・nH2O)を得る晶析工程とを、
備えることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。 - 前記晶析工程において、前記混合溶液を25〜60℃に保持すること特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記混合溶液調製工程において、2価のMイオンの供給原料として、硫酸塩および塩化物塩からなる群から選択される1種以上の水溶性金属塩を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記混合溶液調製工程において、リン酸化物イオンの供給原料として、リン酸およびリン酸二水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上の水溶性塩を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記晶析工程が非酸化性雰囲気下で行われること特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 前記晶析工程で得られたリン酸アンモニウムM塩(NH4MPO4・nH2O)を洗浄する洗浄工程を、さらに、備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られ、リン酸アンモニウム遷移金属からなるリチウム二次電池用正極活物質の前駆体であって、
一般式:NH4MPO4・nH2O(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上、0≦n≦1)で表され、ナトリウム含有量が0.01質量%以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の前駆体。 - 請求項7に記載のリチウム二次電池用正極活物質の前駆体とリチウム塩との混合後、不活性または還元雰囲気下において、200〜500℃で焼成して、一般式:LiMPO4(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上)で表されるリチウム遷移金属複合リン酸塩を得ることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記前駆体とリチウム塩との混合時に、さらに、炭素源を混合した後、600〜800℃で焼成することを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記200〜500℃での焼成により得られたリチウム遷移金属複合リン酸塩と、炭素源との混合物を、不活性または還元雰囲気下において、600〜800℃で熱処理することを特徴とする請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記焼成前に、予め、前記前駆体の粉砕を行うことを特徴とする請求項8又は9にリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記熱処理前に、予め、前記リチウム遷移金属複合リン酸塩の粉砕を行うことを特徴とする請求項10に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 一般式:LiMPO4(Mは、Fe、Mn、NiおよびCoからなる群から選択される少なくともCoを含む1種以上)で表されるオリビン型リチウム遷移金属複合リン酸塩からなるリチウム二次電池用正極活物質であって、
走査型電子顕微鏡観察における一次粒子の平均粒径が50〜1000nmであり、BET比表面積が5〜50m2/gであることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。 - 炭素含有率が1〜5質量%であることを特徴とする請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
- C2023型コイン電池の正極活物質とした場合、初期充放電における効率が65%以上であることを特徴とする請求項13又は14に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
- 請求項13〜15のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質から構成される正極を具備することを特徴とするリチウム二次電池。
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