以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
赤外線検知素子2の平面図を図3に、また図3のB−Bで切断した断面図を図4に示す。赤外線検知素子2は、基板11、絶縁膜12、赤外線検知膜14、下部電極である取り出し電極15、パッド電極16および保護膜17を備える。
赤外線検知装置1において、赤外線検知素子2は、基板11の一部を取り除いたメンブレン構造19を有すること、が好ましい。赤外線検知素子2は、基板11上に積層した後、基板を除去して薄肉化した、すなわち、薄膜積層方向全体として、厚みを薄くした状態にしたメンブレン構造19としている。これにより、赤外線検知素子2の熱容量を小さくすることが可能になる。このため視野角を制限し、局所的な温度の変化を検知する際に、メンブレン構造19により、精度よく赤外線10の検知を行うことができる。
赤外線検知装置1では、赤外線検知膜14が薄膜サーミスタであること、が好ましい。薄膜サーミスタにより、微少な赤外線量の変化を精度よく、電気信号に変換することができる。
基板11としては、適度な機械的強度を有し、且つエッチングなどの微細加工に適した材質であれば、特に限定されるものではない。例えば、Si単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板などが好適である。基板の表面および裏面には、Si酸化膜、又は、Si窒化膜などの絶縁膜12が形成される。
基板11には、赤外線10を感知する赤外線検知膜14の熱容量を小さくするために、赤外線検知膜14の位置に対応して、基板裏面にキャビティ13を有している。このキャビティ13により基板の一部が取り除かれた部分はメンブレン構造19と呼ばれる。
赤外線検知膜14は、キャビティ13上部に形成され、その上には外気からの影響を遮断する保護膜17が形成される。この場合、赤外線検知膜14は、一対の取り出し電極15に跨るように設けられている。保護膜17の上には、赤外線10の吸収効率を向上させるために赤外線吸収膜18を設けている。また、外部との接続部にはワイヤーボンドなどで電気信号を良好に取り出すためのパッド電極16が形成される。
赤外線検知膜14としては、ボロメータ、サーモパイル、サーミスタなどが用いられるが、本実施形態では、サーミスタを使用する。サーミスタとしては、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウムなども負の温度抵抗係数を持つ材料をスパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの薄膜プロセスを用いて形成する。
また、取り出し電極15の材質としては、赤外線検知膜14の成膜工程および熱処理工程などのプロセスに耐えうる導電性物質で比較的高融点の材料、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、又は、これら何れか2種以上を含む合金などが好適である。この取り出し電極15は、パッド電極16に接続されている。
パッド電極16としては、ワイヤーボンドやフリップチップボンディングなどの、電気的接続が行いやすい材料、例えば、アルミニウム(Al)やAuなどが好適であり必要に応じて積層してもよい。また赤外線吸収膜14には、CuやAuなどの金属膜を、多孔質化した黒化膜等、赤外線吸収効果を有する膜を用いるとよい。
赤外線検知素子2は、ウエハ状態から個片へと切断された後、図1および図2に示すように、ダイペースト6を用いてパッケージ3に固定される。ダイペースト6は、エポキシやアクリルなどの接着に用いる樹脂が好適である。硬化の際などの加熱時に、ダイペーストに含まれる物質がガスとなって大気中に放出されるが、後述するように赤外線検知素子2は接着剤5を介して、パッケージ3と光学フィルタ4が、お互いに固定された際に、気密封止された空間に存在するため、放出されるガス量が少ない方がよい。また放出されるガスが赤外線検知素子2ないし、パッケージ3や光学フィルタ4、および、接着剤5に腐食等の悪影響を及ぼさないように、ダイペースト6を選択する必要がある。
図1および図2に示すように、赤外線検知素子2を、ダイペースト6を用いてパッケージ3に固定した後、赤外線検知素子2のパッド電極16と、パッケージ3の端子電極8を、ワイヤボンディング装置を用いて、ワイヤ7で接続する。ワイヤ7はAu、Al、Cuなど、抵抗の低い金属ワイヤが好適である。
この後、パッケージ3と光学フィルタ4を、接着剤5を用いて固定する。この際、パッケージ3の第1の開口部31、すなわち、中空部分は、光学フィルタ4と接着剤5により、外気と遮断された気密空間となる。赤外線検知素子2は、パッケージ3内に実装されており、パッケージ3は、第1の開口部31を有している。
図5に、光学フィルタ4の断面図を示す。光学フィルタ4は、Si等の基板21上に、例えば、ZnSとGeの多層膜22を成膜し、その膜厚を調整することで、ある波長の光のみ透過するフィルタとして機能する。多層膜22は、基板21の片面または両面に存在する。
図6に、シート形状の接着剤5の断面図を示す。例えば、基材23の両側に、接着層51が付着している構造を持つ。基材23としては、ポリエチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイドなどの、シート状の接着剤が用いられる。接着層51としては、エポキシやアクリルなどの接着力のある樹脂が好適である。なお、シート形状の接着剤5には、必ずしも基材23は必要でなく、接着層51のみを用いることもできる。またシート形状の接着剤5を用いることにより、基材23の両側にある接着層51の種類を変えることができる。これにより、パッケージ3と密着性のよい接着層51と、光学フィルタ4と密着性のよい接着層51、の2種類を備えることにより、パッケージ3と光学フィルタ4の接着強度を向上することが可能となる。
図1と図2に示すように、接着剤5は、光学フィルタ4を透過する赤外線10を遮断する効果を持つ。このため、接着剤5の中央部には孔、すなわち、第2の開口部9が開いていて、この部分のみ、光学フィルタ4を透過した赤外線10が通過する。この通過した赤外線10が赤外線検知素子2に達し、赤外線検知装置1がその赤外線10の量に対応した応答を出力する。第2の開口部9の開口の大きさは、第1の開口部の開口の大きさよりも小さくなっている。
接着剤5は、赤外線検知装置1において、パッケージ3と光学フィルタ4を接着することにより、お互いを固定する役割とともに、第2の開口部9を用いた視野角を制限する役割も果たす。このように、パッケージ3と光学フィルタ4を接着して固定するために用いる接着剤5に、第2の開口部9を設けて視野角の制限に用いれば、視野角制限のために、特別な部材やプロセスを必要としないため、極めて容易に製造でき、素子の高さが高くなることなく、容易に、且つ、低コストで視野角制限を実行することが可能となる。
すなわち、赤外線検知装置1において、視野角を変更する最も簡便な手段が第2の開口部9の直径、すなわち、開口の大きさの変更である。視野角を変更するには、他に赤外線検知装置1の高さを変更しても可能であるが、赤外線検知装置1の高さは主としてパッケージ3の高さに起因するため、パッケージ3の形状変更は容易でないことから、簡単には達成はできない。
また、本実施形態の接着剤5は、パッケージ3と光学フィルタ4を、固定するのに十分な強度を有する。接着のみが目的であれば、接着剤5は、パッケージ3と光学フィルタ4に挟まれる部分にのみ存在すればよい。接着剤5は、光学フィルタ4を透過する赤外線10を遮断する効果を持つ。接着剤5に、視野角制限の機能を持たせるために、接着剤5の一部に孔、すなわち、第2の開口部9を開け、赤外線10が第2の開口部9のみを通過するようにした。赤外線検知装置1を光学フィルタ4側から見た際、第2の開口部9の中心と赤外線検知素子2の中心が、同じ位置になるように、第2の開口部9の位置を定めた。この場合、光学フィルタ4のパッケージ3側の空間部分、すなわち、第1の開口部31に、接着には使用しない接着剤5が存在する。
なお、この接着剤5は、硬化処理により十分硬化されており、光学フィルタ4から剥がれることはない。通常視野角制限を行うためには、パッケージ3の形状を工夫したり、赤外線検知装置1の先端に、筒状の部材を用いるなどの方法を採る。しかしながら本実施形態では、接着剤5の形状を工夫することにより、余計なプロセスや部材を用いることなく視野角制限が可能である。このため、赤外線検知装置1全体の高さが高くなるといった問題も発生しない。
つまり、赤外線検知素子2を収めた、第1の開口部31を有するパッケージ3と、光学フィルタ4を、お互いに固定する接着剤5について、赤外線10を透過する第2の開口部9を設けることにより、外部から入射する赤外線10を制限させることができて、結果的に、容易に製造でき、素子の高さが高くなることなく、低コスト化が可能な、赤外線検知装置11を得ることができる。
(実施例)
実施形態に基づく実施例の、赤外線検知装置1を作製し、評価を行った。実施例の具体的な製造方法について説明する。
(赤外線検知素子の製造方法)
基板11として、例えば、面方位が(100)であるSi基板を用意し、基板の表面に熱酸化法によりSiO2膜からなる絶縁膜12を形成する。次に、絶縁膜12の上に、高周波マグネトロンスパッタ法などを用いて、取り出し電極15用に、Ti金属薄膜15AおよびPt金属薄膜15Bを堆積する。取り出し電極15の材質としては、耐酸化性に優れたPtなどが好適である。また絶縁膜3との密着性を向上させるためには、Ptの下部にはTiなどの密着層を形成するのが好ましい。
形成された取り出し電極15について、フォトリソグラフィおよびエッチングにて取り出し電極15を所望の形に形成する。次に、形成した取り出し電極15の表面に、スパッタ法により、赤外線検知膜14として、サーミスタ材料である複合金属酸化物材料を堆積する。赤外線検知膜14の膜厚は、目標とするサーミスタ抵抗値に応じて調整すればよく、例えば、MnNiCo系酸化物を用いて、抵抗値を室温での抵抗値(R25)を140kΩ程度に設定するのであれば、素子の電極間の距離にもよるが、0.2〜1μm程度の膜厚に設定すればよい。
赤外線検知膜14を成膜後、BOX焼成炉を使用し、熱処理を大気雰囲気中で650℃、1時間の条件下で実施した。続いてフォトリソグラフィおよびエッチングにより、検知部位にのみ赤外線検知膜14を形成した。
続いて、赤外線検知膜14の表面に、素子全面を被覆するように、保護膜17として、テトラエトキシシラン(Tetraethlorthosilicate:TEOS)という有機金属を用いたCVD(TEOS−CVD)法により、SiO2膜を成膜する。
続いて、赤外線検知素子2の所望の場所に、Ti金属薄膜20および赤外線吸収膜18を成膜する。Ti金属薄膜20および赤外線吸収膜18はリフトオフ法により所望の大きさに形成した。すなわち、フォトリソグラフィによりあらかじめフォトレジストパターンを形成した後、蒸着法にてTi金属薄膜20および赤外線吸収膜18として多孔質のAu薄膜であるAu黒膜を成膜した後、フォトレジストを剥離することにより、所望の大きさに形成した。なお、Ti金属薄膜20は、赤外線吸収膜18と保護層17とを密着させるための密着層である。
次に、Au黒膜により赤外線吸収膜18を形成した後、パッド電極16を配置する部位を除く、保護膜17上にフォトリソグラフィおよびエッチングにより、パッド電極を配置する部位のSiO2膜を除去することで、開口を形成した。続いて、リフトオフ法により、開口を充填するようにAlを形成し、パッド電極16とした。
さらに、基板11の裏面、すなわち、絶縁膜12や取り出し電極15などを形成していない側の面に、フッ化物系ガスを用いた反応性イオンエッチングによって基板11の一部を除去し、一辺が500μm程度のキャビティ13を形成した。この結果、赤外線検知領域にメンブレン構造19を得た。
この後、基板11を切断し、赤外線検知素子2を個片化した。切断には、ダイシングブレードやレーザを用いたダイシング装置を用いた。メンブレン構造19の作製後、赤外線検知素子2が集積している状態で、紫外線照射により、粘着力が低下するタイプのダイシングテープに貼付した。ダイシング装置で切断した後、エクスパンド装置を用いて、ダイシングテープごとエクスパンドを施し、赤外線検知素子2同士の間隔を広めた。エクスパンド後、ダイシングテープの赤外線検知素子2が付着していない面から紫外線を照射することにより、ダイシングテープの粘着力を低下させ、赤外線検知素子2の剥離を容易にした後、剥離を行った。この結果、図3および図4に示す赤外線検知素子2を得た。
(赤外線検知装置の製造方法)
まず、上記の工程で得られた、赤外線検知素子2を、ダイペースト6を用いてパッケージ3に固定する。ダイペースト6を、ディスペンサ等を用いて、パッケージ3に数箇所塗布を行う。ディスペンサとは、一定量の液体を吐出する装置であり、例えば注射器の注射筒部分に樹脂を詰め、注射筒の先に装着した針先から空気圧等を用いて樹脂を押し出す装置のことである。この後、赤外線検知素子2をダイペースト上に設置する。そしてダイペーストを硬化するために、所定時間と所定温度でオーブン等で加熱する。
具体的には、図7aに示すように、端子電極8を備えたパッケージ3に対して、ディスペンサを用いてダイペースト6を滴下する。ダイペーストは熱硬化性のエポキシ樹脂を使用した。滴下箇所は赤外線検知素子2の四隅に位置する4点とした。
そして、図7bに示すように、ダイペースト6上に赤外線検知素子2を配置した。その後、ダイペースト6を硬化させるため、オーブンで120℃、10分間加熱した。赤外線検知素子2は、パッケージ3内に実装されており、パッケージ3は、第1の開口部31を有している。
次いで、図7bに示すように、パッケージ3に固定された赤外線検知素子2と、パッケージ3の中空部分、すなわち、第1の開口部31にある端子電極8とを電気的に接続する、ワイヤボンディングを実施した。これにより赤外線検知素子2とパッケージ3が、ワイヤ7で接続される。ワイヤ7は直系25μmの金線を用いた。ワイヤの固定は超音波を付加することにより行った。
続いて、接着剤5が塗布された光学フィルタ4を、接着剤5を用いてパッケージ3に接着により固定する。図7cに示すように、印刷法により接着剤5を光学フィルタ4に塗布した。すなわち、接着剤5を光学フィルタ4上に塗布しない部分は赤外線が通過せず、接着剤5を光学フィルタ4上に塗布する部分では接着剤5が通過するような、印刷用のスクリーンを作製した。スクリーンとは、スクリーン上に乗せた塗料や樹脂などの液体を特定の場所にのみ塗布することを可能にする、印刷版である。
図示しないスクリーンと光学フィルタ4の位置合わせを行った後、スクリーン上に接着剤5を適量乗せ、スキージで接着剤5をスクリーンに押し付けることにより、接着剤5の光学フィルタ4上への印刷を行った。ここでスキージとは、スクリーン上に乗せた塗料や樹脂などの液体をスクリーンに押し付け、スクリーン上で液体が透過する部分から、液体を押し出すことにより印刷を行う、ゴムなどでできた道具である。なお、スクリーンにおいて接着剤5が通過する部分の目の粗さや、スキージを押し付ける圧力を調節することにより、光学フィルタ4上に塗布する接着剤5の厚みをコントロールすることができる。
接着剤5はエポキシ系樹脂を用い、塗布後の接着剤5の厚みは約20μmであった。光学フィルタ4は、図5に示す構造を持ち、5〜10μmの波長の赤外線10を透過するフィルタとなっている。光学フィルタ上の接着剤5は、第2の開口部9、すなわち、接着剤5が塗布されず孔となっている部分が中央部に存在する。接着剤5は波長5〜10μmの赤外線10を透過しないが、第2の開口部9では透過する。このため赤外線検知装置1の視野角を制限することができる。視野角を制限するために、第2の開口部9の開口の大きさは、第1の開口部の開口の大きさよりも小さくなっている。
円形の第2の開口部9の中心は、赤外線検知装置1を俯瞰した場合、赤外線検知素子2におけるメンブレン構造19の中心と、一致する位置に作製した。第2の開口部9とメンブレン構造19の中心が赤外線検知装置1を俯瞰した場合に一致しているため、図2において、赤外線10が赤外線検知装置1に入射する際、赤外線検知素子2の直上左右に均等に視野角θが形成される。なお、視野角θは、第2の開口9が円形であるため、どのような断面で赤外線検知装置1を切断した場合でも同一の値となる。また、赤外線検知素子2はパッケージ3を俯瞰した場合に正方形の中心、すなわち対角線の交点に固定した。したがって、赤外線検知装置1を俯瞰した場合、赤外線検知素子2、第1の開口31における正方形の対角線の交点、および第2の開口9の円形の中心は同一地点に存在する。
なお、接着剤5を光学フィルタ4に塗布する方法は、印刷法に限らない。例えば、ディスペンサを用いても塗布することが可能である。具体的には、光学フィルタ4上にディスペンサの針先を近づけて、接着剤5を吐出しながら所望の図形を描くことにより、接着剤5を所望の領域に塗布することができる。この場合、ディスペンサの針先の内径を0.1mm程度と非常に小さくし、接着剤5が吐出する量を非常に少なくすれば、微細な図形を描くことが可能となる。また、印刷法の場合、接着剤5を塗布する図形を変更する際にはスクリーンの変更が必要となるため、スクリーンのコストと作製時間が必要となるが、ディスペンサの場合、コンピュータの入力を変更することで、ディスペンサの針先の動きを変えることが可能なため、コストや時間をかけずに図形の変更が可能である。
この後、光学フィルタ4は、所定の圧力でパッケージ3に対して押し当てられる。その後、接着剤5を硬化するために、オーブン等で熱処理を行う。このようにして接着剤5を介して、パッケージ3と光学フィルタ4が固定される。具体的には、図2に示すように、接着剤5が塗布された光学フィルタ4を、パッケージ3に接着した。この際、光学フィルタ4を約1MPaの圧力で加圧した。その後、接着剤5を硬化するため、オーブンで150度1時間の熱処理を施した。このようにして、接着剤5を介して、パッケージ3と光学フィルタ4が固定された。
図8aは、図2において、光学フィルタ4とパッケージ3の間の接着剤5による接合部25の様子を拡大して示した図である。接合部25において、光学フィルタ4を所定の圧力でパッケージ3に押し当てる際、光学フィルタ4とパッケージ3に挟まれる部分の接着剤5は押しのけられる。これにより、光学フィルタ4とパッケージ3に挟まれる部分の接着剤5の厚みは、塗布時の厚みより薄くなる。一方、押しのけられた接着剤5は、図8aに示すように、パッケージ3の周囲に、はみ出し部52、および、はみ出し部53を形成する。
接合部25において、パッケージ3の内側、すなわち、第1の開口部31側に形成される接着剤5のはみ出し部52に関しては、パッケージ3の周囲に幅約50μmにわたり、元の接着剤5の平均的な厚み20μmに対して、厚みが最大50μmとなっている部分が確認された。ただし、第2の開口部9を形成する、はみ出し部52以外の接着剤5に関しては、全ての領域で、18μm〜21μmの厚みを維持していた。今回使用した接着剤5に関しては、10μmの厚みがあれば波長5〜10μmの赤外線10を透過しないことは確認済みである。よって、はみ出し部52では、接着剤5の厚みが厚くなることはあっても薄くなることはないため、接着剤5で赤外線10を遮断することに関して、はみ出し部52が視野角θに悪影響を及ぼすことはなかった。
一方、接合部25において、パッケージ3の外側に形成された接着剤5のはみ出し部53については、視野角θの制限には関係がない。しかし、はみ出し部53は、赤外線検知装置1の外形寸法に影響を与える。すなわち、はみ出し部53が、パッケージ3および光学フィルタ4の接合部よりはみ出すことにより、赤外線検知装置1の外形寸法が大きくなる。はみ出し部53が、パッケージ3および光学フィルタ4の接合部よりはみ出す量をコントロールできなければ、赤外線検知装置1の外形寸法を精度良く収めることが難しくなる。
図8bは、光学フィルタ4とパッケージ3の間の接着剤5による接合部25の様子を拡大して示した図であって、パッケージ3の接合部25の先端形状を、凸形状とした。このようにすることで、接着後に、パッケージ3の外側の接着剤5のはみ出し部53が、接合部25先端の凸形状の切欠き部26の中に収まるため、余分なはみ出しがなくなるため、製品としての規定の縦横高さなどの外形寸法値に影響を与えることがなくなる。
一方、図8bで、パッケージ3の接合部25の形状に関して、接着後の、パッケージ3の内側の接着剤5のはみ出し部52も、接合部25先端の凸形状の切欠き部26の中に収まる。これにより、例えば、接着剤5の厚みが厚く、はみ出し部52が大きくなり、パッケージ3の内部に垂れ下がり、ワイヤ7や赤外線検知素子2に接触する可能性がある場合でも、接着剤5のはみ出し部52が、接合部25先端の凸形状の切欠き部26の中に収まるために、パッケージ3の内部に接着剤5が垂れ下がる心配がない。なお、図8bのようにパッケージ3の接合部25の形状を変更しても、第2の開口部9の形状に変更がないため、視野角θの大きさは変化しない。
(比較例1)
比較例1として、実施例と同じ構成の赤外線検知装置1において、接着剤5の形状を変更した。具体的には、図9に示すように、パッケージ3と光学フィルタ4の間にのみ接着剤5が存在するようにした。すなわち、第2の開口部9は、パッケージ3において光学フィルタ4を接着する部分の内周と同じ形状をしている。つまり、第2の開口部9の開口は、パッケージ3の第1の開口部31の開口と同じ大きさである。
(評価1)
上記実施例、および比較例1で作製した素子において、赤外線検知装置1の視野角を測定した。測定には波長5〜10μmの光を発生する赤外線光源30を用いた。赤外線光源30では、波長5〜10μmの光のみ発生するように、波長5〜10μmの光のみ透過するフィルタを装着した。このフィルタは、光学フィルタ4と同様、図5に示すようなSi等の基板21上に多層膜22を成膜した構造を持つ。
実施例における接着剤5にある第2の開口部9の直径、すなわち、開口の大きさと視野角の関係を表1に示す。なお、表1で、視野角は以下の方法で測定した。図10に示すように、赤外線検知装置1と赤外線光源30を距離を置いて設置する。赤外線光源30のすぐ近くに、赤外線光源30から発する赤外線10の光量を制限するためのアパーチャー32を挿入する。アパーチャー32と赤外線検知装置1との距離を2mとする。次に、赤外線検知素子1の位置を変えず、その場で回転し角度27を変えて赤外線10の強度を測定する。
図11は、視野角を測定する際に用いる図であり、横軸を図10において赤外線検知素子1を回転する際の角度27、縦軸にセンサ出力をとってある。図11は、概略図であり、赤外線強度を検出した結果、電圧値で得られたセンサ出力を規格化し、最高の場合を100%とし、赤外線強度が50%になる場合の角度を視野角T、図2においては視野角θとした。
比較例1に対して、実施例では、図2に示す視野角θが制限できることが確認された。赤外線検知装置1において、視野角θを変更する最も簡便な手段が第2の開口部9の開口の直径、すなわち、開口の大きさの変更である。視野角θを変更するには、他に赤外線検知装置1の高さを変更しても可能であるが、赤外線検知装置1の高さは主としてパッケージ3の高さに起因するため、パッケージ3の形状変更は容易でないことから、簡単には達成はできない。
表1には、図9に示した比較例1の視野角θも示している。比較例1では、接着剤5による第2の開口部9は有していないが、接着剤5の開口部分は、パッケージ3の第1の開口部31の開口の大きさと同じと考えられる。また、第1の開口部31によって、ある程度の視野角θの制限が生じると考えられる。
視野角とは、赤外線検知素子2において、赤外線が反射などせずに直接到達可能な空間をある平面で表示した際の角度であるが、実施例で、図2に示すように、視野角θを小さくするということは、赤外線検知素子2に入射する赤外線10の範囲を狭めるということであり、このように、視野角θを小さくできれば、局所範囲で赤外線10を検知できるため、例えば、次のような利点がある。すなわち、例えば図10に示すように、赤外線検知装置1の取り付け位置を変更せず、その角度を動かし、視野を上下左右に走査することにより、赤外線10の発生源がどこにあるかという位置情報を得ることができる。これは、視野角θが大きいと得られない情報であり、視野角θを小さくすることにより入手可能となる。
表1によって、第2の開口部9の直径、すなわち、開口の大きさが小さくなると、視野角θが小さくなることも確認された。これにより、接着剤5に設けた第2の開口部9の直径を小さく制御することにより、視野角θを小さくすることができて、赤外線検知素子2に入射する赤外線の範囲を狭めることができ、局所的な範囲で赤外線10を検知できるという利点が生ずる。
(変形例)
図12、および、図13を参照しながら、変形例による赤外線検知装置1の構造について説明する。上記実施例と同様の方法で、赤外線検知装置1を作製したが、図12に示すように、実施例の赤外線検知素子2をパッケージ3内に2つ搭載した。本変形例では、2つの赤外線検知素子2、すなわち、第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202によって、簡易な構造で、人体検知と火災検知を行う。
光学フィルタ4を透過した赤外線10は、第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202に対して入射する。第1の赤外線検知素子201に対しては、第2の開口部9を有し、第2の赤外線検知素子202に対しては開口部は設けていない。第1の赤外線検知素子201に対しては、人体および火災検知用として使用したいため、5〜10μmの波長の赤外線10が必要であり、第2の赤外線検知素子202に対しては、火災検知用として使用したいために、5〜6μmの波長の赤外線10がある程度必要となる。第2の赤外線検知素子202に対して、5〜6μmの波長の赤外線10が届くようにするために、接着剤5は、5〜6μmの波長の赤外線10を透過する機能をもたせた。本変形例では、2つの赤外線検知素子2によって、簡易な構造で、人体検知と火災検知を行う。この際、人体検知はある特定の場所に人がいるかいないかを検知し、一方火災は広範囲で発生しているか否かを検知する。
実施例、および、比較例1では、接着剤5は波長5〜10μmの赤外線10を全く透過しなかったが、接着剤5に関して、今回の変形例では5〜6μmの波長の赤外線10を約70%透過するものを使用した。波長6〜10μmの赤外線10は全く透過しない。すなわち接着剤5は、赤外線波長領域において、特定の波長のみ透過する、波長選択機能を有することが好ましい。これにより、第2の開口部9により透過した赤外線10が到達しない方の赤外線検知素子2、すなわち、第2の赤外線検知素子202でも、波長5〜6μmの赤外線10の一部が到達し、その変化を検出することが可能となる。
なお、実施例、および、比較例1の接着剤5については、光学フィルタ4を透過する赤外線10の波長領域である5〜10μmにおいて、ある一部分の赤外線10を透過すればよく、その波長範囲が5〜6μmである必要はなく、透過率が70%に限定されるものではない。本変形例では透過率がおよそ60%から100%の間で、赤外線検知素子202に比較的明確なレベルで応答が可能であったため、本変形例ではおよそ60%から100%の間の透過率に設定することが好ましい。これは赤外線検知素子202の感度に依存するためである。しかしながら、この透過率は、素子によっては適切な透過率が決まるため、必ずしも変形例のように、60%から100%となるとは限らず、変わってくる。このようにある波長範囲、本変形例では例えば5〜6μmで、一定の透過率、本変形例では例えば70%を示すように、本変形例において、接着剤5は波長選択機能を有するように設定した。
このように、赤外線検知装置1が、図12、および、図13の構成をとることにより、第1の赤外線検知素子201で人の存在を検知し、第1の赤外線検知素子201、および、第2の赤外線検知素子202で火災の存在を検知できる。人体から発せられる赤外線10の波長は8〜12μmが多いため、第1の赤外線検知素子201で検知可能であるが、第2の赤外線検知素子202では検知できない。一方火災は人体より温度が高いため、発生する赤外線10の波長は短くなる。このため、第2の赤外線検知素子202でも検知できる。
具体的には、人体は第1の赤外線検知素子201が感応し、火災は第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202の両方が感応する。したがって、赤外線検知素子201と202の両方をモニタすることにより、人体か火災かが判断できる。
なお、人体検知の際、ある一方向の空間のみ検知したい場合、図13に示す、視野角θの制限が必要となる。このような場合、接着剤5の第2の開口部9の位置や大きさを調整することにより、所望の視野角θおよび検知を行う空間が設定できる。
第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202は、赤外線吸収膜18を有することが好ましい。赤外線10を効率的に電気信号に変換することができる。また、第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202はメンブレン構造であることが好ましい。これにより、赤外線検知素子201、202の熱容量を小さくすることが可能になる。このため微小な温度の変化を検知する際に、メンブレン構造19により精度よく赤外線10の検知を行うことができる。
このような赤外線検知装置1は、実施例の製造方法とほぼ同じであるが、以下の点で異なる。まずパッケージ3に赤外線検知素子2を2つ固定する。さらに2つ存在する赤外線検知素子2のうちの一方、すなわち、第1の赤外線検知素子201に対して、光学フィルタ4を透過した赤外線10が到達するように、接着剤5の第2の開口部9を設けた。具体的には、円形の第2の開口部9の中心は、赤外線検知装置1を俯瞰した場合、第1の赤外線検知素子201におけるメンブレン構造19の中心と、一致する位置に作製した。
第2の開口部9とメンブレン構造19の中心が赤外線検知装置1を俯瞰した場合に一致しているため、図13において、赤外線10が第2の開口9を通過して第1の赤外線検知素子201に入射する際、第1の赤外線検知素子201の直上左右に均等に視野角θが形成される。なお視野角θは、第2の開口9が円形であるため、どのような断面で赤外線検知装置1を切断した場合でも同一の値となる。さらに、第2の開口部9で透過した赤外線10が、第2の赤外線検知素子202に到達しないように、且つ、接着剤5によって、一部の赤外線10が透過して第2の赤外線検知素子202に到達するように、第2の開口部9の位置を設定した。ここで接着剤5に関して、5〜6μmの波長の赤外線10を約70%透過するものを使用した。
このようにして作製した赤外線検知装置1は、簡易な構造で、ある視野角θで制限したある空間における人体の有無を検知し、さらに火災も検知も可能である。
図12、および、図13を用いて、変形例の赤外線検知装置1の製造方法について説明する。上記実施例と同様の方法で、赤外線検知装置1を作製したが、図12と図13に示すように、パッケージ3に赤外線検知素子2を2つ固定した。なお、変形例の第1の赤外線検知素子201および第2の赤外線検知素子202は、実施例で作製した赤外線検知素子2と全く同じであり、使用する第1の赤外線検知素子201、および、第2の赤外線検知素子202はともに同一である。
さらに、接着剤5に関して、実施例では、接着剤5は波長5〜10μmの赤外線10を透過しなかったが、変形例では、5〜6μmの波長の赤外線10を約70%透過するものを使用した。また接着剤5に関して、2つ存在する赤外線検知素子2のうちの一方、すなわち、第1の赤外線検知素子201に対して、第2の開口部9により赤外線10が透過するように、すなわち、第1の赤外線検知素子201の中心が、第2の開口部9の中心と、同じ位置になるように、接着剤5の第2の開口部9の位置を設定した。
このため、赤外線検知装置1のパッケージ3に固定されている2つの赤外線検知素子2のうち、第1の赤外線検知素子201には、5〜10μmの赤外線10が照射される一方、第2の赤外線検知素子202では、5〜6μmの赤外線10の一部が照射されることになる。これにより、人体検知の際には、主として8〜12μmの赤外線10が変化するため、第1の赤外線検知素子201で検知される。また火災の際には、人体より温度が高く、発生する赤外線10の波長が短いため、第1の赤外線検知素子201および第2の赤外線検知素子202の両方で検知される。したがって、第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202の両方をモニタすることにより、人体検知と火災検知を区別しつつ両方検知することが可能となる。
以上のことから、図12、および、図13に示す変形例としての、赤外線検知装置1では、簡易な構造で、人体検知と火災検知の両方を行うことが可能である。さらに、人体検知においては視野角θを制限することができる。
(比較例2)
比較例2として、変形例と同じ構成の赤外線検知装置1において、接着剤5が5〜6μmの波長の赤外線10を約70%透過するという機能を有さず、実施例と比較例1と同様に波長5〜10μmの赤外線10を全く透過しないものとした。第2の開口部9の形状や位置は変更がなく、変形例と同じである。
(評価2)
評価2として、変形例と比較例2について、赤外線検知装置1の電極を用いて、赤外線照射による出力変化を測定した。出力変化とは、赤外線検知装置1の電気的出力、すなわち赤外線検知膜14の抵抗値が、赤外線光源30の点灯/消灯で変化するか、ということである。赤外線検知素子2で感応する赤外線10が入射した場合、赤外線検知装置1の出力は変化する。なお本評価において、赤外線検知装置1およびその外気の温度は20℃一定とした。また、赤外線検知膜14から生ずる初期の抵抗値、すなわち赤外線10を照射していないときの抵抗値は140kΩであった。
本来であれば、赤外線検知膜14そのものの抵抗値を示すことが望ましいのであるが、ここでいう抵抗値は、赤外線検知装置1の電極を用いて測定した赤外線検知装置1の抵抗値で代用をした。すなわち、本実施形態、実施例、変形例、比較例についての抵抗値は、すべて赤外線検知装置1の抵抗値で代用したものである。前述の140kΩも赤外線検知装置1の抵抗値である。
図13に示すように測定には、変形例である図13に、点線で図示した第1の赤外線検知素子201の視野角θ内に赤外線光源30を置き、ある特定の波長領域の赤外線10を発生させた。その際、第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202で出力の変化を測定した。出力の変化とは、赤外線10を照射していない場合に対して、赤外線10を照射した場合の赤外線検知素子201および202の出力の違いを調べたものである。
赤外線光源30からは、2種類の赤外線10を発生した。一方では、人体を想定した波長8〜12μmの赤外線10を発生した。他方、赤外線光源30より火災を想定した波長2〜6μmの赤外線10を発生した。それぞれの場合について、変形例および比較例2における第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202における出力の変化の有無を表2に示す。
表2に示したように、変形例の場合、赤外線光源30が波長8〜12μmの赤外線10を発生した場合、第2の開口部9を通過して赤外線10が到達する第1の赤外線検知素子201では、赤外線検知装置1の出力に明らかに変化が生じた。具体的には赤外線検知膜14から生じる初期の抵抗値140kΩから700Ω程度抵抗値が下がった。今回の測定では赤外線検知膜14の抵抗値の変化が140Ω以上であれば、測定ノイズに埋もれない明確な変化として確認することができた。
このような場合に、赤外線検知装置1に出力変化が生じたと考え、表2に出力変化あり、と定義した。なお、本変形例では抵抗値変化が140Ω以上あれば出力の変化として確認できたが、これは赤外線検知素子2の感度や測定回路で生じるノイズなどに依存する。これらは赤外線検知素子2や測定回路が変われば、変化すると考えられるが、いずれの場合にも出力変化として認識できる下限値は存在する。一方、第2の赤外線検知素子202では、接着剤5により赤外線10が遮断されるため、出力の変化が0であり、表2では、出力変化なし、と定義した。
変形例において、赤外線光源30が波長2〜6μmの赤外線10を発生した場合、表2に示したように、第2の開口部9を通過して、赤外線10が到達する第1の赤外線検知素子201では、赤外線検知装置1の出力に変化が生じた。一方、第2の赤外線検知素子202では、接着剤5において、波長5〜6μmの赤外線10を約70%透過するため、出力の変化が生じた。
このように、変形例においては、人体を想定した波長8〜12μmの赤外線10に対して、第1の赤外線検知素子201のみが出力変化を示し、火災を想定した波長2〜6μmの赤外線10に対しては第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202の両方が出力変化を示した。したがって、常に第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202の両方の出力をモニタしていれば、第1の赤外線検知素子201のみの出力が変化した際は人体が検知されたことが、また第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202の両方の出力が変化した際は火災が検知されたことがわかる。これにより、変形例の赤外線検知装置1では人体と火災を区別して検知することが可能となる。
比較例2について、変形例と同様の測定を行った。表2に示したように、赤外線光源30が波長8〜12μmの赤外線10を発生した場合、第2の開口部9を通過して赤外線10が到達する第1の赤外線検知素子201では、赤外線検知装置1の電気出力に変化が生じた。一方、第2の赤外線検知素子202では、接着剤5により赤外線10が遮断されるため、出力の変化がなかった。
比較例2において、赤外線光源30が、波長2〜6μmの赤外線10を発生した場合、表2に示したように、第2の開口部9を通過して赤外線10が到達する第1の赤外線検知素子201では、赤外線検知装置1の電気出力に変化が生じた。一方、第2の赤外線検知素子202では、接着剤5において波長5〜10μmの赤外線10が遮断されるため、出力の変化が生じなかった。
このように、比較例2においては、人体を想定した波長8〜12μmの赤外線10に対して、第1の赤外線検知素子201のみが出力変化を示し、火災を想定した波長2〜6μmの赤外線10に対しても第1の赤外線検知素子201のみが出力変化を示した。したがって、常に第1の赤外線検知素子201と第2の赤外線検知素子202の両方の出力をモニタしていたとしても、火災が起きても人体検知をしても、いずれの場合にも第1の赤外線検知素子201のみしか出力変化しない。よって比較例2の赤外線検知装置1では、火災と人体の区別を行うことができない。
なお、変形例および比較例2において、第2の開口部9の直下にある第1の赤外線検知素子201の視野角θを確認したところ、実施例と同様に、第2の開口部9の直径、すなわち、開口の大きさが変化すると視野角θが変化するという同様の傾向となった。これにより、変形例の赤外線検知装置1において、人体検知は一定の視野角内の限られた領域で行い、火災検知については視野角θが広く、広範囲で検知可能であることがわかった。
以上のように、変形例および比較例2においても、パッケージ3と光学フィルタ4の接着に用いる接着剤5によって、赤外線検知素子2の視野角θが制限できることがわかった。さらに、接着剤5に、光学フィルタ4において透過する赤外線10の波長範囲で、透過領域をもつ波長選択機能を持たせることにより、簡易な構造で人体検知と火災検知の両方の機能を持つ赤外線検知装置1が作製できることを確認した。
このように、実施例、変形例および比較例2による検証から、パッケージ3と光学フィルタ4を固定するための接着剤5に、視野角θを限定するための第2の開口部9を設けることにより、特別なプロセスを用いず容易に製造でき、赤外線検知装置1の高さが高くなることなく、低コストで視野角制限が可能な、赤外線検知装置1を提供できることが証明された。
また変形例で示した赤外線検知装置1においては、接着剤5に赤外線透過の波長依存性を持たせることにより、複数の赤外線検知部2に人体検知と火災検知という複数の機能を持たせることができることを示した。