JP2013185285A - 耐炎化繊維ストランド、その製造方法、及び炭素繊維ストランド - Google Patents

耐炎化繊維ストランド、その製造方法、及び炭素繊維ストランド Download PDF

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Abstract

【課題】 高ストランド強度の炭素繊維を製造するのに適した、ストランドを構成する単繊維間物性のバラツキの少ない耐炎化繊維ストランドの製造方法を提供すること。
【解決手段】 ストランドを構成する単繊維が1000〜30000本であり、必要により溝ローラーを介し、次いで平ローラーを介した後のストランドの扁平率が0.5〜0.95であるポリアクリロニトリル系(PAN系)前駆体繊維ストランドを、必要により溝ローラーを介した後、平ローラーを介して耐炎化処理炉に導入し、耐炎化処理炉では、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向から風速が0.1m/s以上且つ1.0m/s未満で、200〜300℃の酸化性ガスを供給しながら、1.0〜1.15倍の延伸を行う。この製造方法で得られる耐炎化繊維ストランドは、ストランドを構成する単繊維の強度バラツキが7.0%以下であり、且つ単繊維の引張強度測定により得られる各単繊維の荷伸曲線の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mm以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高ストランド強度の炭素繊維を製造するのに適した耐炎化繊維ストランド、その製造方法、及びそれを炭素化してなる炭素繊維ストランドに関する。
今日、航空機を始め、従来金属材料が使用されてきた箇所への複合材料の使用が増して来ている。中でも炭素繊維は、高い強度、弾性率など良好な特性を有しており、且つ金属材料よりも大幅な質量軽減が可能な為、金属代替品としての用途が広がりつつある。炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる複合材料の用途は、近年、工業的使用を始め、多目的に広がりつつあり、特に航空宇宙分野、スポーツ・レジャー分野、自動車分野においては、より高性能化(高強度化、高弾性率化)、より軽量化(繊維軽量化及び繊維含有量低減化)など、マトリックス樹脂と複合化した際のより高いコンポジット物性の発現に向けた要求が強まると共に、低価格化を目的とする生産性向上への要求も高まっている。
一般的な炭素繊維の製造方法としては、原料繊維にポリアクリロニトリル等の前駆体繊維(プリカーサー)を使用し、耐炎化処理(酸化処理)及び炭素化処理を経て炭素繊維を得る方法が広く知られている。ポリアクリロニトリル系(PAN系)前駆体繊維を用いて炭素繊維を製造する方法としては、前駆体繊維を200〜280℃の酸化性雰囲気下で延伸又は収縮を行いながら耐炎化処理を行った後、300℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化する方法が知られている。とりわけ耐炎化処理工程における前駆体繊維の処理方法は、炭素繊維の強度及びこれを用いて製造するコンポジット物性に大きく影響を及ぼすので、古くから多くの検討が行われている。
通常、前記耐炎化工程において前駆体繊維を耐炎化処理する反応は発熱を伴う。この発熱は、耐炎化処理中の単繊維同士の融着を生じ易い。融着した単繊維同士は、その後の炭素化工程で膠着を起こし、炭素繊維の最終欠点となるばかりでなく、糸切れや毛羽発生を生じ、この場合は工程の安定性に影響を与える。これら問題を効果的に解決する為に、特許文献1は、前駆体繊維に各種変性シリコーン系化合物を付与し、繊維間の接着を防止することを提案している。しかしながら、シリコーン系化合物の付与は、シリコーン系化合物がストランドを構成する単繊維間に介在、堆積し、耐炎化反応に必須となる酸素の供給の妨げとなり、その結果、焼成むらの発生を誘起していることが明らかとなっている。
一方、炭素繊維とマトリックス樹脂との複合化において、高性能化を追求するためには、炭素繊維そのもの自体の強度、弾性率等を向上させることが必要不可欠である。しかし、前記したような焼成むらの発生を防止すること、即ちストランドを構成する単繊維の物性を均質にすることが最終的な複合材料の物性発現には重要である。特に、この単繊維の物性の均質化に高い影響を及ぼす耐炎化処理工程における繊維の処理方法は、従来から色々と検討がなされている。
しかし、前駆体繊維の不融化を目的とする耐炎化処理工程時の発熱反応の為に、ストランド内部に蓄熱を生じ、ストランドの内部と表層部との間において温度差が生ずる結果、ストランドを構成する各単繊維間の物性のバラツキは大きくなっている。また蓄熱過剰時にはストランドの切断が生じ、工程的にも安定して生産することが難しくなる。
ストランド内部の発熱の蓄積を解決する方法として、特許文献2には単位繊度当たりのストランド幅を規制し、風速を1.0m/s以上かつ4.0m/s以下になるようにすることで、炉内温度を低下させること無く、ストランド接合部の蓄熱による切断を防止する方法が開示されている。
しかし、本発明者の検討によれば、風速が1.0m/s以上になると、耐炎化処理工程によって単繊維の不融化を行っているにも拘らず、単繊維への酸素の供給が過剰になり、ストランドを構成する単繊維においては、その表層の反応ばかりが進む。そのため、単繊維の表層と内部との構造差が広がることになるばかりか、得られる耐炎化繊維はストランドを構成する単繊維同士間物性のバラツキも大きくなる。更には、過剰に酸化された単繊維の表層構造が炭素化時の欠陥となる。その結果、最終的に得られる炭素繊維は、強度等の物性が低いものになる。
特開平11−12855号公報 (特許請求の範囲) 特開2008−150733号公報 (特許請求の範囲)
本発明の課題は、高ストランド強度の炭素繊維を製造するのに適した、ストランドを構成する単繊維間物性のバラツキの少ない耐炎化繊維ストランド、その耐炎化繊維の製造方法、及びその耐炎化繊維を用いて製造される高強度の炭素繊維ストランドを提供することにある。
本発明者らは、高強度の炭素繊維を製造するために、ポリアクリロニトリル系(PAN系)前駆体繊維ストランドを耐炎化処理して耐炎化繊維を得、この耐炎化繊維を炭素化処理して炭素繊維を製造する方法において、耐炎化繊維のストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキに着目し、この単繊維物性間のバラツキを抑制することで高強度の炭素繊維を得ることを試みた。
本発明の単繊維の物性間のバラツキが抑制された耐炎化繊維は、所定の扁平率のPAN系前駆体繊維ストランドを、所定の条件で耐炎化処理することによって得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明の一態様である耐炎化繊維は、PAN系前駆体繊維ストランドが耐炎化処理されてなる耐炎化繊維であって、耐炎化繊維のストランドを構成する単繊維が1000〜30000本であり、各単繊維間の強度のバラツキがCV値で7.0%以下であり、且つ単繊維の引張強度測定により得られる各単繊維の荷伸曲線の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mm以下であることを特徴とする耐炎化繊維である。
耐炎化繊維のストランドを構成する各単繊維の強度のバラツキを示すCV値は、各単繊維の引張強度の値から算出される標準偏差値を各引張強度の平均値で除して得られるバラツキの評価値として示すものである。
耐炎化繊維のストランドを構成する単繊維の引張強度測定時における横軸に伸びを、縦軸に荷重を取った場合の荷伸曲線の傾き(単繊維S−S傾き)は、荷伸曲線の降伏点(変曲点)に至った時点の伸びに対する伸びの比率が80%に達した時点の傾きとして示す。傾きは、同時点における伸びと荷重との傾きから算出される。この傾きの最大値と最小値との差は、耐炎化繊維ストランドの構造を反映した値である。すなわち単繊維引張強度測定時におけるこの傾き値の差は、耐炎化繊維のストランドを構成する単繊維間の構造の差を表すものである。
本発明の他の態様である耐炎化繊維ストランドの製造方法は、ストランドを構成する単繊維が1000〜30000本であり、ストランドの扁平率が0.5〜0.95であるPAN系前駆体繊維ストランドに、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向から風速が0.1m/秒以上且つ1.0m/秒未満で、200〜300℃の酸化性ガスを供給しながら、1.0〜1.15倍の延伸を行うことを特徴とする。
上記PAN系前駆体繊維ストランドは、不融化を目的とする処理を耐炎化処理炉において行う際、炉の入り側に配置された平ローラー等の開繊処理用ローラーを介して開繊させ、炉内を折り返し、複数回走行させる。これにより、前駆体繊維ストランドは耐炎化処理される。尚、耐炎化の際には複数本のストランドが同時に処理される。この耐炎化処理に際し、隣り合って走行しているストランド相互の接触を避けるには、ストランドは、平ローラー等を介する前に必要に応じ溝付きのローラー(以下、溝ローラーと称す)を介することが好ましい。
このようにストランドを耐炎化処理炉に投入する前に、平ローラー等を用いてストランドを開繊処理することにより、耐炎化時のストランドの扁平率を0.5〜0.95とする。ストランドを構成する単繊維は、平ローラー等を用いる場合、1000〜30000本であることが好ましい。更には、3000〜25000本であることがより好ましく、5000〜20000本であることが特に好ましい。
扁平率とは、炭素繊維製造の一連の工程中、特に耐炎化工程中のストランドの形態の指標として用いられる値であり、ストランド厚さとストランドの幅との関係から次の式にて計算される。
扁平率 = 1 − (ストランドの厚み)/(ストランドの幅)
本発明の更に他の態様は、前記耐炎化繊維を公知の方法で炭素化して得られる高強度の炭素繊維である。
本発明の耐炎化繊維ストランドは、ストランドを構成する単繊維間の物性が均質である為、これを炭素化することにより本発明の高ストランド強度の炭素繊維を安定して製造することができる。
所定の扁平率のPAN系前駆体繊維ストランドを、酸化性雰囲気中、所定の風速、温度、延伸率、静電気量で耐炎化処理することを特徴とする本発明の製造方法により、上記本発明の耐炎化繊維ストランドは製造することができる。
本発明の耐炎化繊維ストランドは、PAN系前駆体繊維を耐炎化処理してなる耐炎化繊維ストランドであって、耐炎化繊維ストランドを構成する各単繊維間の強度のバラツキがCV値で7.0%以下、好ましくは5.0〜6.7%である。CV値が7.0%を超える場合、この耐炎化繊維から得られる炭素繊維のストランド強度が低下するので好ましくない。CV値は低いほど好ましいが、CV値を低くするためには、工程条件の管理を厳密にせねばならず、工程条件の制御が難しくなると共に、結果として生産性に劣ることにつながる場合もある。
単繊維の強度は、後述するテンシロン万能試験機で測定した引張強度を示す。
また、本発明の耐炎化繊維ストランドは、単繊維の引張強度測定により得られるストランドを構成する各単繊維の荷伸曲線の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mm以下、好ましくは0.004〜0.01N/mmである。各単繊維の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mmを超える場合、この耐炎化繊維を炭素化処理して得られる炭素繊維のストランド強度が低下するので好ましくない。各単繊維の傾きの値の最大値と最小値との差は小さい方が好ましいが、0.004N/mm未満の場合、工程条件を管理するのが非常に厳密になり、その分生産性に劣る場合がある。
本発明の耐炎化繊維及び炭素繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。
<前駆体繊維>
耐炎化繊維及び炭素繊維の製造方法に用いる前駆体繊維は、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸して製造する、PAN系前駆体繊維が好ましい。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。
紡糸後の原料繊維を、公知の方法で、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5〜15倍になるようスチーム延伸することが好ましい。前駆体繊維は、耐炎化工程における蓄熱、冷却効率の面から、1000〜30000本のフィラメント(単繊維)が束ねられたストランドとすることが好ましく、10000〜25000本のフィラメントが束ねられたストランドとすることが特に好ましい。
<耐炎化処理>
得られた前駆体繊維ストランドは、開繊処理してストランドの扁平率を0.5〜0.95にした後、耐炎化処理炉に投入し、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向から風速が0.1m/秒以上且つ1.0m/s未満、好ましくは0.2〜0.9m/秒で、200〜300℃、好ましくは220〜280℃の酸化性ガスを供給しながら、1.0〜1.15倍の延伸を行う。
耐炎化処理炉としては、上記酸化性雰囲気、風速、温度、延伸率に設定できる炉であれば、特に限定されるものではないが、酸化性雰囲気中で熱風を循環させ、この中を前駆体繊維ストランドを通過させる熱風循環炉が、一般に用いられる。
上記条件で耐炎化処理を行うことで、ストランド中の反応熱が雰囲気中に拡散し、ストランド内に反応熱が蓄積することを抑制できる。さらに、ストランドを構成する単繊維の表層と内部との間では、不融化反応速度が相違し、この相違に基いて構造差を生じ易いが、この構造差は、上記条件で耐炎化処理を行うことで低減できる。また、ストランドの蓄熱が少ないことから単繊維間の温度差も少なくなり、得られる耐炎化繊維ストランドにおいては、単繊維間物性のバラツキも低減できる。
前駆体繊維ストランドの扁平率を0.5〜0.95、好ましくは0.5〜0.9にするには、前駆体繊維ストランドを耐炎化処理炉に投入する前に、平ローラー等を用いてストランドを開繊処理することが好ましい。
ストランドの開繊状態は、ストランドの縒り状態等の形態により影響を受けることもあり、必ずしも単繊維−単繊維間(フィラメント−フィラメント間)の摩擦係数のみにより影響を受けるものではないが、開繊原理に関しては、フィラメント−フィラメント間の摩擦力を上回る外力をローラー部分で掛けることで、フィラメント−フィラメント間で滑りが発生し、ストランドは収束状態から扁平状態に移行する。
この際、平ローラーの回転速度とストランドの走行速度とに速度差があると、フィラメント−ローラー間の摩擦力に影響し、ストランドは容易に開繊し得る。しかし、ローラーとストランドとの速度差があるが為に、フィラメント−ローラー間若しくはフィラメント−フィラメント間での擦過が顕著になり、フィラメントに欠陥を生じ、最終の炭素繊維物性に影響を及ぼす。その為、平ローラーはストランド走行と同じ速度±5%で回転させるのが好ましい。
平ローラー以外の装置、例えば、荷電装置等で静電気を加えること等でも開繊処理することはできるが、平ローラー以外では切断単糸が浮遊し、巻付きが発生したり、ストランドの厚みを抑制することが難しく、扁平率を上記範囲にし難いので好ましくない。また、溝幅を拡幅したローラーを用いることも可能であるが、十分な扁平率を確保するに当たり、投入するストランドのフィラメント数に合わせて、その都度設備変更をすることになり、費用面等で劣る為、随時設置したまま使用できる平ローラーを用いることが好ましい。
平ローラーを用いる場合、平ローラーのローラー径を変更することで扁平率を調節できる。即ち、ローラー径の小さい平ローラーを使用することで扁平率を大きくすることができる。また、処理するストランドのフィラメント数やローラー間に掛かる張力に応じて、ストランドとローラーとの接触角を調節することによっても、扁平率を調節することができる。
ストランドとローラーとの接触角とは、ストランドとローラーとの接触開始点、ローラー断面円の中心点、及び、ストランドとローラーとの接触終了点の3点において、ローラー断面円の中心点を頂点としてなす角度を言う。つまり、ローラー断面円においてストランドが接触している円周部を円弧とし、軸を中心点とする扇形の中心角がなす角度を、ストランドとローラーとの接触角と言う。
ストランドとローラーとの接触角が大きいと、ローラーへの接触面積が増えるため扁平率が大きくなる傾向がある。ストランドとローラーとの接触角は30〜180°であることが好ましく、45〜135°であることがより好ましい。ストランドとローラーとの接触角は、ローラー径又はローラーの配置を変更することにより調節できる。
この開繊処理に際しては、平ローラー等を用いて開繊処理を行う前にローラー表面に所定間隔で、ローラーの周方向に沿って複数の溝を形成している溝ローラーを介して隣あっているストランドが重なり合うことなく、個々に分割されている状態にすることが好ましい。このようにストランドを個々に分割されている状態にすることにより、開繊処理におけるストランド同士の重なりをより確実に防止することができる。
この溝ローラーによるストランド同士の重なり防止は、ストランドを構成する単繊維が10000本を超える場合、より好ましくは20000本以上の場合など、耐炎化繊維、炭素繊維の生産性を高める場合に特に有効である。
扁平率が0.5未満の場合は、ストランドが収束し、反応熱の拡散が十分に行われないために蓄熱が発生し、繊維物性が落ちるばかりでなく、過剰反応による工程での繊維の切断が発生する為に、好ましくない。扁平率が0.95を超える場合は、耐炎化工程中でのストランドとストランドとが接触し、絡み合いやすくなり、分割不良を起こし、生産性が悪化する為、好ましくない。
前駆体繊維の扁平率は耐炎化炉内においても維持される。扁平率を積極的に維持するため、耐炎化炉の折り返しローラーに、例えば平ローラーなどの開繊装置を備えていても良い。
本発明の製造方法における耐炎化処理によれば、前駆体繊維に対して1.0〜1.15倍の延伸を行っているので、ニトリル基がナフチリジン環への環化反応を伴う耐炎化時の分子の配向を高めることができ、得られる耐炎化繊維は、炭素化時における縮合反応を進めるのに適した構造となる。
本発明における耐炎化処理の更なる条件は、酸化性雰囲気下で、200〜300℃、好ましくは220〜280℃で10〜150分間熱処理することである。
この耐炎化処理は、前駆体繊維のポリアクリロニトリルが酸化及び環化反応された、繊維密度1.34〜1.38g/cm3の範囲の耐炎化繊維とするものである。耐炎化繊維密度が1.34g/cm3未満の場合は、繊維の不融化反応が十分でなく、続く炭素化工程にて断糸若しくは品位低下及び低強度化する。繊維密度が1.38g/cm3を超える場合は、表層の過剰酸化が始まってしまい、続く炭素化で、表面に脆弱な構造が形成され、ひいては最終炭素繊維が脆弱なものとなるため、好ましくない。
耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無いが、耐炎化時の前駆体繊維の延伸率を上記範囲内に制御するには、1texの前駆体繊維に対して9〜60mN(1〜6gf)であることが好ましい。
<第一炭素化処理>
上記耐炎化繊維は、従来の公知の方法を採用して炭素化することができる。例えば、耐炎化繊維を、不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、300〜900℃、好ましくは、300〜550℃の温度範囲内で、1.03〜1.07の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理して、繊維密度1.4〜1.7g/cm3の第一炭素化処理繊維を得る。第一炭素化工程において、一次延伸処理では、耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲、同繊維の密度が1.5g/cm3に達するまでの範囲で、1.03〜1.06の延伸倍率で延伸処理を行うのが好ましい。二次延伸処理においては、一次延伸処理後の繊維の密度が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲で、0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行うのが好ましい。かかる条件を採用すると、結晶が成長することなく、緻密化され、ボイドの生成も抑制でき、最終的に高い緻密性を有した高強度炭素繊維を得ることができる。上記第一炭素化工程は、一つの炉若しくは二つ以上の炉で、連続的若しくは別々に処理することができる。
<第二炭素化処理>
上記第一炭素化処理繊維を、不活性雰囲気中で、第二炭素化工程において800〜2100℃、好ましくは、1000〜1450℃の温度範囲内で、同工程を一次処理と二次処理とに分けて延伸処理して、第二炭素化処理繊維を得る。
なお、各炭素化炉において、炉の入り口付近からに急激な温度変化を与えること、例えば最高温度領域に急激に繊維を導入することは、得られる炭素繊維の表面欠陥、内部欠陥を多く発生させるため好ましくない。また、炉内の高温部で必要以上に滞留時間が長くなると、グラファイト化が進み過ぎ、脆性化した炭素繊維が得られるので好ましくない。上記第一炭素化処理〜第二炭素化工程は、張力をコントロールすると共に、必要に応じて、複数の炉で所定の物性となるように処理を行っても良い。
炭素繊維に、より高い弾性率が求められる場合は、更に2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
<表面酸化処理>
上記第二炭素化処理を行って得られる炭素繊維ストランドは、電解液中で表面酸化処理が施される。表面処理で炭素繊維に掛かる電気量は、目的の表面官能基量になるように適時調整を行えば良いが、炭素繊維1gに対して10〜500クーロンになる範囲とすることが好ましい。炭素繊維1gに与える電気量をこの範囲で調節すると、繊維としての力学的特性に優れ、且つ、樹脂との接着性の向上した繊維を得やすい。一方、炭素繊維1gに与える電気量が10クーロン未満では、樹脂と充分接着するために必要な官能基が充分生成し難いため、樹脂との接着力が低下する。また500クーロンを超えると、表面に酸化過剰による脆弱層が形成され、繊維強度が低下する為、好ましくない。
電解液としては、無機酸又は無機塩基及び無機塩類、有機酸等の水溶液を用いることが出来、特に限定するものではない。例えば、無機酸としては硫酸、硝酸などの強酸を用いると表面処理の効率がよく好ましい。また、電解質として、例えば、硫酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどの無機塩類を用いる場合は、他の無機酸、無機塩基を用いる場合と比較して、電解薬液としての危険性が低い為、安全面から好ましい。
電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜2規定がより好ましい。電解液濃度が0.1規定未満であると、電気伝導度が低い為に酸化処理効率が落ちるばかりか、必要な電気量を供給する為に高い電圧が必要になり、安全面から好ましくない。一方で、電解質の濃度が高すぎる場合は、電解液として用いる薬液の危険性が増す。更に、電解質の析出等が発生し、濃度を安定させることが難しくなり、工程的な安定性が損なわれる為に好ましくない。
電解液の温度が高いほど電気伝導性は高くなるため、酸化処理は促進される。しかしながら、電解液の温度が50℃を超えると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動の無い均一な条件を提供するのが難しくなる。また、電解液を含むミストが発生する為、10〜50℃の範囲が好ましい。
<サイジング処理>
上記表面酸化処理後の炭素繊維ストランドは、サイジング液に通され、サイズ剤が付与される。サイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25質量%が好ましい。炭素繊維ストランドに付着させるサイズ剤の付着量は、0.4〜1.7質量%が好ましい。炭素繊維ストランドに付与させるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイジング処理は、通常、乳化剤等を用いて得られるサイズ剤の水系エマルジョン中に炭素繊維ストランドを浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
<乾燥処理>
上記サイジング処理後の繊維ストランドは、サイジング処理時の分散媒である水等を蒸散させるために、乾燥処理が施されて、複合材料製造用炭素繊維ストランドが得られる。乾燥方式は特に限定するものではなく、一般的な乾燥方式、例えばエアドライヤー方式、ヒートローラー方式、遠赤外乾燥方式等を用いることが出来きる。乾燥温度は特に限定されるものではないが、汎用的な水系エマルジョンの場合は通常100〜180℃に設定される。また、本発明においては、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を経ることも可能である。
このようにして得られた炭素繊維ストランドを用い、マトリックス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成型、プレス成型、樹脂トランスファー成型、フィラメントワインディング成型など、公知の手段・方法により複合材料が得られる。
炭素繊維ストランドは、通常、シート状の強化繊維材料として用いられる。シート状の強化繊維材料としては、炭素繊維を一方向にシート状に引き揃えたもの、炭素繊維を織編物や不織布等の布帛に成型したもの、多軸織物等が挙げられる。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性マトリックス樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
複合材料中に占めるマトリックス樹脂の含有率は、10〜90質量%、好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜45質量%である。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における各繊維の物性の評価方法は以下の方法によった。
<単繊維引張強度>
オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1150Aを使用した。単繊維の試験長10mm、速度1mm/minにて引張試験を行い、破断最大荷重と単繊維直径から、単繊維引張強度を算出した。
ストランドを構成する単繊維の総数の0.2%の単繊維(例えば、単繊維の総数が24000本の場合は、48本)について算出した単繊維引張強度を用いて、引張強度の平均値及び標準偏差値を求めた。次いで、標準偏差値を平均値で除し、CV値(%)を求めた。このCV値(%)を、単繊維間の物性のバラツキの尺度とした。
同様に、ストランドを構成する単繊維の総数の0.2%の単繊維について、引張強度測定時における横軸に伸びを、縦軸に荷重を取った場合の荷伸曲線の傾き(単繊維S−S傾き)を、荷伸曲線の降伏点(変曲点)に至った時点の伸びに対する伸びの比率が80%に達した時点の荷重と伸びとの傾きから計算された値として求めた。この傾きの値の最大値と最小値との差も、単繊維間の物性のバラツキの尺度とした。
<ストランド引張強度>
JIS R−7608に準じてエポキシ樹脂含浸ストランドの引張強度を測定した。
[実施例1]
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を、常法により湿式紡糸し、水洗・オイリング・乾燥後、トータル延伸倍率が14倍になるようにスチーム延伸を行い、0.7dtexの繊度を有するフィラメント数24000の前駆体繊維(総繊度16800dtex)を得た。前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維を、溝ローラーを介した後、ストランドとローラーとの接触角が90°になる様にφ50mmの平ローラーを設置し、表1に示した耐炎化条件と同じ張力を保持するように、この平ローラーを介して耐炎化処理炉に導入した。
耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率は0.83であった。空気中240℃、延伸倍率1.07の条件で、28.1mN/tex(2.86gf/tex)の張力を付与しながら、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を施した。その際の炉内における前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速は0.45m/秒であった。以上の条件で得られた耐炎化繊維の物性(OPF物性)を表1に示す。
表1に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが少なく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものであった。
この耐炎化繊維について、窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で低温炭素化処理(第一炭素化処理)を施した。その後、窒素雰囲気下1500℃で高温炭素化処理(第二炭素化処理)を施して製造した第二炭素化処理繊維に、常法により表面処理及びサイジング処理を行い、炭素繊維を得た。得られた炭素繊維についてストランド引張強度を炭素繊維物性(CF物性)として表1に示す。
表1に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものであった。
[比較例1]
平ローラーを用いず、溝ローラーのみを配置し、表1に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.05(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)とし、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速を0.57m/秒(本発明の構成範囲内)とした以外は、実施例1と同様に耐炎化処理を施し、表1に示す耐炎化繊維を得た。
表1に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが大きく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものではなかった(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表1に示す炭素繊維を得た。
表1に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものではなかった。
[実施例2]
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を、常法により湿式紡糸し、水洗・オイリング・乾燥後、トータル延伸倍率が14倍になるようにスチーム延伸を行い、0.7dtexの繊度を有するフィラメント数12000の前駆体繊維(総繊度8400dtex)を得た。前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維を、溝ローラーを介さずに、ストランドとローラーとの接触角が180°になる様にφ200mmの平ローラーのみを介して耐炎化処理炉に導入し、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.71とし、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速を0.34m/秒(本発明の構成範囲内)とした以外は、実施例1と同様に耐炎化処理を施し、表1に示す耐炎化繊維を得た。
表1に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが少なく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものであった。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表1に示す炭素繊維を得た。
表1に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものであった。
[実施例3]
ストランドとローラーとの接触角が180°になる様にφ250mmの平ローラーのみを介して表1に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.58とした以外は、実施例2と同様に耐炎化処理を施し、表1に示す耐炎化繊維を得た。
表1に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが少なく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものであった。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表1に示す炭素繊維を得た。
表1に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものであった。
[比較例2]
ストランドとローラーとの接触角が180°になる様にφ250mmの平ローラーのみを介して表1に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.55(本発明の構成範囲内)とし、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速を1.10m/秒(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)とした以外は、実施例2と同様に耐炎化処理を施し、表1に示す耐炎化繊維を得た。
表1に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが大きく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものではなかった(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表1に示す炭素繊維を得た。
表1に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものではなかった。
[比較例3]
ストランドとローラーとの接触角が180°になる様にφ200mmの平ローラーのみを介して表1に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.75(本発明の構成範囲内)とし、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速を0.05m/秒(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)とした以外は、実施例2と同様に耐炎化処理を施し、表1に示す耐炎化繊維を得た。
表1に示すように、得られた耐炎化繊維は、耐炎化反応が不十分で、続く炭素化工程で毛羽が発生し、製品の採取が出来なかった(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)。
Figure 2013185285
[実施例4]
ストランドとローラーとの接触角が90°になる様にφ200mmの平ローラーを設置し、表2に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.58とした以外は、実施例1と同様に耐炎化処理を施し、表2に示す耐炎化繊維を得た。
表2に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが少なく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものであった。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表2に示す炭素繊維を得た。
表2に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものであった。
[比較例4]
表2に示すように、前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維を、溝ローラーを介さずに、平ローラーのみを介して耐炎化処理炉に導入した以外は、実施例4と同様に耐炎化処理を施した。しかし、溝ローラーによってストランド同士が分割された状態にはなってなかった為、工程途中で隣のストランドと単繊維同士が絡み合い、分割不良になり耐炎化繊維を得ることが出来なかった(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)。
[比較例5]
溝ローラーのみを介し、表2に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.4(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)とし、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速を0.8m/秒(本発明の構成範囲内)とした以外は、実施例2と同様に耐炎化処理を施し、表2に示す耐炎化繊維を得た。
表2に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが大きく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものではなかった(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表2に示す炭素繊維を得た。
表2に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものではなかった。
[比較例6]
溝ローラーのみを介し、表2に示すように、耐炎化処理炉の入り口での前駆体繊維ストランドの扁平率を0.4(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)とし、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向の風速を1.10m/秒(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)とした以外は、実施例2と同様に耐炎化処理を施し、表2に示す耐炎化繊維を得た。
表2に示すように、得られた耐炎化繊維は、ストランドを構成する単繊維間の物性のバラツキが大きく、高強度炭素繊維製造用耐炎化繊維として良好なものではなかった(本発明の構成範囲から逸脱。よって『×』を付与)。
この耐炎化繊維について、実施例1と同様に炭素化処理を施し、表2に示す炭素繊維を得た。
表2に示すように、得られた炭素繊維はストランド引張強度が高いものではなかった。
Figure 2013185285

Claims (4)

  1. ポリアクリロニトリル系前駆体繊維ストランドが耐炎化処理されてなる耐炎化繊維ストランドであって、耐炎化繊維ストランドを構成する単繊維が1000〜30000本であり、各単繊維間の強度のバラツキがCV値で7.0%以下であり、且つ単繊維の引張強度測定により得られる各単繊維の荷伸曲線の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mm以下である耐炎化繊維ストランド。
  2. ストランドを構成する単繊維が1000〜20000本であり、開繊処理用の平ローラーを介した後のストランドの扁平率が0.5〜0.95であるポリアクリロニトリル系前駆体繊維ストランドを耐炎化処理炉に導入し、耐炎化処理炉では、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向から風速が0.1m/秒以上且つ1.0m/秒未満で、200〜300℃の酸化性ガスを供給しながら、1.0〜1.15倍の延伸を行うことを特徴とする、各単繊維間の強度のバラツキがCV値で7.0%以下であり、且つ単繊維の引張強度測定により得られる各単繊維の荷伸曲線の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mm以下である耐炎化繊維ストランドの製造方法。
  3. ストランドを構成する単繊維が1000〜30000本であり、ストランド同士の重なり合い防止用の溝ローラーを介し、次いで開繊処理用の平ローラーを介した後のストランドの扁平率が0.5〜0.95であるポリアクリロニトリル系前駆体繊維ストランドを耐炎化処理炉に導入し、耐炎化処理炉では、前駆体繊維ストランドの扁平面に垂直方向から風速が0.1m/秒以上且つ1.0m/秒未満で、200〜300℃の酸化性ガスを供給しながら、1.0〜1.15倍の延伸を行うことを特徴とする、各単繊維間の強度のバラツキがCV値で7.0%以下であり、且つ単繊維の引張強度測定により得られる各単繊維の荷伸曲線の傾きの値の最大値と最小値との差が0.01N/mm以下である耐炎化繊維ストランドの製造方法。
  4. 請求項1に記載の耐炎化繊維ストランドが炭素化されてなる炭素繊維ストランド。
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