JP2013177332A - ハロゲン化アルキルからのアルデヒドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハロゲン化アルキルを原料に、ハロゲンを配位子に有する第9族金属の錯体触媒の存在下に脂肪族アミン、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩、水素化アルカリ金属化合物、水素化アルカリ土類金属化合物のいずれか一種以上を共存させ、一酸化炭素及び水素を反応させて原料のアルキル構造に由来するアルデヒドを得ることを特徴とする、アルデヒドの製造方法。
【選択図】なし
Description
例えば、触媒となるロジウム錯体のトリフェニルホスフィン配位子を改良し、プロピレンのヒドロホルミル化により分岐鎖型アルデヒドであるイソブチルアルデヒドの選択性を向上させる方法が報告されている(非特許文献2)。しかし、生成するアルデヒドの中でイソブチルアルデヒドの割合は、最大でも、ビス(o−トリル)フェニルホスフィンを配位子に用いた53%であり、効率的に分岐鎖型アルデヒドを製造することはできない。
また、モルホリンやヘキサメチルホスホラストリアミドなどの少なくとも一つの窒素原子を有する配位子をロジウムへ配位させた錯体を用いたヒドロホルミル化により分岐鎖型アルデヒドを得ることができる(特許文献2)。しかし、ヒドロホルミル化では、分岐鎖型アルデヒドを優先的に取得しようとした場合、反応活性が低下してしまう。最も分岐鎖型アルデヒドの選択性が高いモルホリンを配位させてヒドロホルミル化を試みた場合、原料転化率は3%に満たず、実用的な活性とはならなかった。
ピリジン環を有するポリマーへロジウムなどの第9族金属を担持させた固定化触媒を用いることにより、ヒドロホルミル化で分岐鎖型アルデヒドを多く生成させる方法も報告されている(特許文献3)。4−ビニルピリジンメチル化4級塩樹脂のREILLEX HPQへヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウムロジウムを固定化した場合が最も分岐鎖アルデヒドの生成選択性が高いと評価された。しかし、転化率80%で反応は進行したが、生成したアルデヒドの分岐鎖型/直鎖型の比は3.2が限界であった。したがって、直鎖型アルデヒドの生成を減らし、分岐鎖型アルデヒドを主生成物として製造させる課題を満足に解決する手法ではなかった。
一方、ハロゲン化アルキルを原料に用い、化学量論量のトリカルボニルトリブチルホスフィンコバルトナトリウム[NaCo(CO)3(PBu3)]を作用させて、ヒドロホルミル化と同様の条件で反応を行い、分岐鎖アルデヒドを生成させる報告もある(非特許文献4)。
しかし、化学量論的に高価なロジウ錯体を用いた反応であるため、経済的な製造方法ではないし、そもそもハロゲン化アルキルの転化率記載がない。したがって、経済的に分岐鎖型アルデヒドを製造する触媒反応の技術は、確立されていない。
本発明は、一つ以上のハロゲン原子が配位した第9族金属の錯体を触媒として特定の塩基の共存下にて、原料のハロゲン化アルキルを、水素および一酸化炭素と接触させてヒドロホルミル化を行い、アルデヒドを製造するものである。
また、塩基は脂肪族アミン、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩、水素化アルカリ金属化合物、水素化アルカリ土類金属化合物のいずれかから選ばれる一種以上である。
(1)
ハロゲン化アルキルを原料に、ハロゲンを配位子に有する第9族金属の錯体触媒の存在下に脂肪族アミン、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩、水素化アルカリ金属化合物、水素化アルカリ土類金属化合物のいずれかの一種以上を共存させ、一酸化炭素及び水素を反応させて原料のアルキル構造に由来するアルデヒドを得ることを特徴とする、アルデヒドの製造方法。
(2)
錯体触媒がクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム[RhCl(PPh3)3]またはクロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム[IrCl(CO)(PPh3)2]である(1)に記載のアルデヒドの製造方法。
(3)
錯体触媒へ共存させる塩基が、(i)脂肪族アミン(ii)ナトリウム、カリウムおよびカルシウムから選ばれる金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩または水素化物のいずれか一種以上とする(1)または(2)に記載のアルデヒドの製造方法。
(4)
原料のハロゲン化アルキルのアルキル基が、C1〜C8の炭化水素基である(1)〜(3)のいずれかに記載のアルデヒドの製造方法。
(5)
原料のハロゲン化アルキルが2−ハロゲン化プロパンである(1)〜(3)のいずれかに記載のアルデヒドの製造方法。
本発明では、原料となるハロゲン化アルキルのアルキル部位の構造を保持したままヒドロホルミル化が進行するため、目的とするアルデヒドの構造に応じたハロゲン化アルキルを適宜選択する。ハロゲン化アルキル中のハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が用いられる。ヨウ素が最も反応性が高く好適であり、ついで臭素が好適である。ハロゲン化アルキルのアルキル基は、C1〜C8の炭化水素基であるが、生成するアルデヒドの構造選択性が高くなる脂肪族炭化水素がより好ましい。さらには、アルキル部位が飽和構造の脂肪族炭化水素が好ましく、特に1−ハロゲノプロパン、2−ハロゲノプロパン、1−ハロゲノブタン、2−ハロゲノブタン、1−ハロゲノ−2−メチルプロパン、2−ハロゲノ−2−メチルプロパンが好適である。
例えば、イソブチルアルデヒドを得たい場合には、2−ヨードプロパンや2−ブロモプロパンを原料に用いることが望ましい。また、n−ブチルアルデヒドを得たい場合には、1−ヨードプロパンや1−ブロモプロパンを原料に用いればよい。
触媒には、一つ以上のハロゲン原子が配位した第9族金属を中心金属とした錯体を用いる。第9族金属としては、コバルト、ロジウムまたはイリジウムが挙げられるが、反応活性の高さからロジウムが最も好適である。第9族金属に配位するハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。生成物選択性の点から、塩素、次いで臭素が好適である。また、反応活性の向上のため、ハロゲン原子以外にトリフェニルホスフィン誘導体や一酸化炭素などが配位していても良い。トリフェニルホスフィン誘導体としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、ビス(o−トリル)フェニルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(1−ナフチル)ホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、およびシクロヘキシルジフェニルホスフィンが挙げられる。なお、トリフェニルホスフィン誘導体は2種以上のものが配位していてもよい。
例えば、ウィルキンソン触媒と呼ばれるクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム[RhCl(PPh3)3]やバスカ錯体と呼ばれるクロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム[IrCl(CO)(PPh3)2]などを触媒として、好ましく用いることができる。触媒は、原料ハロゲン化アルキルに対し触媒の金属種が0.01〜20モル%となる範囲で用いることが好ましく、さらには0.1〜10モル%の範囲がより好適である。触媒の使用量が0.01以上であれば、反応性が著しく低下することがない。
一方、触媒が10モル%以下であれば反応性は向上し、触媒の除去が困難になることがなく、得られるアルデヒド中へ触媒由来不純物が残存することもない。また、触媒にかかるコスト面からも、経済的には不利とならない。
触媒へ共存させる塩基は、脂肪族アミン、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩、水素化アルカリ金属化合物、水素化アルカリ土類金属化合物のいずれかから選ばれる。好ましくは、(i)脂肪族アミン(ii)ナトリウム、カリウムおよびカルシウムから選ばれる金属の弱酸塩または水素化物が用いられる。脂肪族アミンと同等以上の塩基性を有することによって、ヒドロホルミル化が進行する。
一方、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの弱酸塩または水素化物を用いることにより、強塩基に起因する目的のアルデヒドのさらなる縮合反応が抑制されるため、目的のアルデヒドの収率が下がることはない。脂肪族アミンは炭素数が1〜6のアミンが好ましく、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、またはトリエチルアミンが挙げられる。また、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの弱酸塩として、好ましくは炭酸塩、酢酸塩、またはリン酸塩などが挙げられるが、反応後の精製が容易な炭酸塩がさらに好ましい。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムがある。また、水素化物も水素化ナトリウム、水素化カリウム、または水素化カルシウムがあるが、取り扱いの容易な水素化カルシウムが望ましい。なお、塩基は2種類以上を用いてもよい
塩基の添加量範囲は、原料のハロゲン化アルキルに対して0.1〜10モル倍量が好ましく、特に0.5〜2モル倍量が好適である。ただし、炭酸カルシウムなど2価の塩基では、価数に応じて添加量範囲は除する必要がある。塩基の添加量が0.1モル倍量以上であれば、アルデヒドの収率が著しく低下することがない。一方、10モル倍量以下であれば、アルデヒドの収率は増加し、アルデヒドの縮合による不純物生成が抑制され、アルデヒドの生成選択性を低下させることもない。
原料のハロゲン化アルキルや触媒、塩基は、回分式の耐圧反応器などへ仕込み、水素、一酸化炭素を反応器内の内容物へ接触させることによりヒドロホルミル化を実施する。その際、原料のハロゲン化アルキルや水素ガス、一酸化炭素の仕込み量の増加を目的として、または原料のハロゲン化アルキルや触媒、塩基、水素ガス、一酸化炭素の接触効率の向上を目的として溶媒を用いてもよい。ただし、原料のハロゲン化アルキルや得られる分岐鎖型アルデヒドの蒸気圧が低く回収が容易である場合には、溶媒を加えなくても良い。また、溶媒に由来する副反応が進行する可能性があるため、原料のハロゲン化アルキルや触媒、塩基、水素ガス、一酸化炭素に対する反応活性が低いものが好ましい。さらに、溶媒の極性も反応速度を向上させるために、低極性であることが望ましく、例えば、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテルなどのエーテルやトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。用いられる溶媒の量はハロゲン化アルキルの溶解性に応じて適宜決定すればよいが、原料のハロゲン化アルキルに対して20重量倍以下とすることにより、アルデヒドの生成速度の低下が抑えられるため、アルデヒドの生成量も低下することがない。
ヒドロホルミル化は、前記耐圧反応器の内溶液へ水素ガスと一酸化炭素ガスを80〜200℃に加熱した状態で接触させ、実施する。水素ガスと一酸化炭素ガスは個別に供給しても良いし、混合ガスとして供給しても良い。
水素ガスおよび一酸化炭素ガスの圧力は、それぞれ0.5〜10MPaが望ましい。0.5MPa以上であれば、アルデヒドの生成速度を著しく低下させることはない。一方、10MPa以下であれば、水素ガスに由来する副反応の水素化が抑制され、一酸化炭素ガスに由来する触媒の活性低下も起こらない。反応の進行は、耐圧反応器に設置した圧力計で、圧力の経時変化から確認することができる。例えば、圧力が平衡に達した時点を反応終点と判断することができる。
反応終了後は、生成するアルデヒドの沸点未満に反応器を冷却した後、残留ガスを反応器外へ排出することによりアルデヒドを含む反応液を取得することができる。反応液からは、蒸留などの公知の方法により未反応のハロゲン化アルキルを分離し、アルデヒドの回収が可能である。残留ガスに含まれる水素ガス、一酸化炭素ガスおよび蒸留で分離される未反応原料のハロゲン化アルキルは、回収後に再び反応に使用することによって、原料にかかるコストを削減することができる。また、アルデヒドを回収した後に残留する触媒も副生塩の除去および精製後に、反応へ再利用することができる。
なお、原料のハロゲン化アルキルと反応生成物であるアルデヒドは以下のGC条件で定量分析を実施した。実施例および比較例に記すI/Nは、生成する分岐鎖型アルデヒドと直鎖型アルデヒドの生成モル比(分岐鎖型アルデヒド/直鎖型アルデヒド)を表す。
<アルデヒドの定量分析>
カラム:HP−1(30m×0.32mm,膜厚0.25μm)
試料注入口温度および試料注入法:200℃,反応液をテトラヒドロフランで5倍に希釈し、スプリット法で注入(スプリット比100:1)
検出器および検出器温度:TCD,250℃
キャリアーガス及び流速:ヘリウム,流速制御で2.0mL/min
カラム温度:40℃5分間保持後、250℃まで10℃/分で昇温。250℃で5分間保持。
定量:ヘプタンを内部標準とした内部標準法。
クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(以下で触媒Iと称すことがある)0.046g(0.050mmol)とトリエチルアミン0.51g(5.0mmol)、テトラヒドロフラン1.4mLを窒素下にて20mLのジルコニウム製オートクレーブへ仕込み、2−ヨードプロパン0.85g(5.0mmol)を供給した。さらに、水素/一酸化炭素の1/1混合ガスをオートクレーブへ4MPaまで張り込んだ。電磁撹拌機にて撹拌を行いながらオートクレーブを120℃に5時間加熱した。加熱後、0℃に冷却して反応器内のガスの排出およびGC分析を実施し、アルデヒドを含む反応液を取得した。前記分析条件にて反応液中の2−ヨードプロパンとアルデヒドを定量したところ、26%の2−ヨードプロパンが転化し、イソブチルアルデヒド0.087g(1.2mmol)とn−ブチルアルデヒド0.0092g(0.13mmol)が存在した。n−ブチルアルデヒドに対するイソブチルアルデヒドの生成比(I/N)は9.5であり、優先的にイソブチルアルデヒドが生成した。また、未反応の原料として2−ヨードプロパン0.63g(3.7mmol)が回収された。
触媒I 0.046g(0.050mmol)と表1に示す塩基、テトラヒドロフラン1.4mLを窒素下にて20mLのジルコニウム製オートクレーブへ仕込み、2−ヨードプロパン0.85g(5.0mmol)を供給した。実施例1と同様に反応を行い、アルデヒドを含む反応液を取得した。前記分析条件にて反応液中の2−ヨードプロパンとアルデヒドを定量したところ、イソブチルアルデヒドが優先的に生成した(表1)。また、未反応の原料として2−ヨードプロパンも回収された。
触媒にハロゲンを含まないロジウム錯体、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヒドリド[RhH(CO)(PPh3)3](以下で触媒IIと称すことがある)0.046g(0.050mmol)とテトラヒドロフラン1.4mLを窒素下にて20mLのジルコニウム製オートクレーブへ仕込み、2−ヨードプロパン0.85g(5.0mmol)を供給した。実施例1と同様に反応を行い、反応液を取得した。前記分析条件にて反応液中の2−ヨードプロパンとアルデヒドを定量したが、2−ヨードプロパンは転化せず、アルデヒドの生成も認められなかった。ハロゲンを含まないロジウム錯体を触媒に用い、塩基を添加しない場合には、アルデヒドは生成しなかった。結果を表1に示す。
トリエチルアミンを添加しない以外は実施例1と同様に反応を行った。反応液中の2−ヨードプロパンとアルデヒドを定量したところ、2−ヨードプロパンは転化せず、アルデヒドの生成も認められなかった。塩基が共存しない場合には、アルデヒドは生成しなかった。結果を表1に示す。
添加する塩基をピリジンまたはナトリウムメトキシドとする以外は実施例1と同様に反応を行った。反応液中のアルデヒドの定量値を表1に示す。ピリジンのように共存する塩基が芳香族塩基のように弱い場合は、2−ヨードプロパンは転化せず、アルデヒドの生成も認められなかった。また、ナトリウムメトキシドのようにアルカリ金属のアルキレート塩の場合には、2−ヨードプロパンは72%の転化率であったが、アルデヒドの生成量は低下した。
Claims (5)
- ハロゲン化アルキルを原料に、ハロゲンを配位子に有する第9族金属の錯体触媒の存在下に脂肪族アミン、炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩、水素化アルカリ金属化合物、水素化アルカリ土類金属化合物のいずれか一種以上を共存させ、一酸化炭素及び水素を反応させて原料のアルキル構造に由来するアルデヒドを得ることを特徴とする、アルデヒドの製造方法。
- 錯体触媒がクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム[RhCl(PPh3)3]またはクロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム[IrCl(CO)(PPh3)2]である請求項1に記載のアルデヒドの製造方法。
- 錯体触媒へ共存させる塩基が、(i)脂肪族アミン(ii)ナトリウム、カリウムおよびカルシウムから選ばれる金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩または水素化物のいずれか一種以上とする請求項1または2に記載のアルデヒドの製造方法。
- 原料のハロゲン化アルキルのアルキル基が、C1〜C8の炭化水素基である請求項1〜3のいずれかに記載のアルデヒドの製造方法。
- 原料のハロゲン化アルキルが2−ハロゲン化プロパンである請求項1〜3のいずれかに記載のアルデヒドの製造方法。
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