JP2013166817A - ガラス微粒子中空球粉体含有ポリプロピレン系樹脂組成物及びその射出成形体 - Google Patents

ガラス微粒子中空球粉体含有ポリプロピレン系樹脂組成物及びその射出成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量化が望まれる成形体において、脆化温度が低く、低温耐衝撃性に優れた成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】プロピレン系重合体(成分A)又はプロピレン系重合体の混合物(成分A’)を35〜70重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)を10〜25重量%、タルク(成分C)を4〜15重量%、変性ポリオレフィン樹脂(成分D)を0.5〜5重量%、及び、ガラス微粒子中空球粉体(成分E)を5〜20重量%含有するポリプロピレン系樹脂組成物(但し、前記(成分A)又は(成分A’)と、(成分B)と、(成分C)と、(成分D)と、(成分E)との合計量を100重量%とする。)、及び、これからなる射出成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス微粒子中空球粉体含有ポリプロピレン系樹脂組成物及びその射出成形体に関する。
従来から、プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体と無機充填剤とを含むポリプロピレン樹脂組成物は、これを成形して成形体とし、自動車用部品や家電製品用部品として利用されている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性オレフィン、無水マレイン酸、及びガラス微粒子中空球粉体(グラスバブル)を含んでなる充填熱可塑性樹脂複合材が開示されている。
また特許文献2には、(A)ポリプロピレン系重合体と、(B)エチレン(共)重合体またはゴムと、(C)無機微小中空体とを含む無機微小中空体含有樹脂組成物が開示されている。
特表2007−517128号公報 特開平6−340782号公報
特許文献1又は2に記載されている樹脂組成物は、ガラス微粒子中空球粉体を含有することで軽量化が望まれる場合において、成形体の低温耐衝撃性、及び脆化温度にはさらなる改良が求められていた。
以上の課題に鑑み、本発明は、軽量化が望まれる成形体において、脆化温度が低く、低温耐衝撃性に優れた成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
すなわち本発明は、メルトフローレートが30g/10分以上であるプロピレン系重合体(成分A)又は異なる少なくとも2種の前記プロピレン系重合体の混合物(成分A’)を35〜70重量%、エチレンと、炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、メルトフローレートが0.4〜80g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)を10〜25重量%、タルク(成分C)を4〜15重量%、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂(成分D)を0.5〜5重量%、及び、耐圧強度が100MPa以上、真密度が0.3〜0.7g/cm3、50%粒子径が25μm以下であり、シランカップリング剤で表面処理されたガラス微粒子中空球粉体(成分E)を5〜20重量%含有するポリプロピレン系樹脂組成物、及び、これからなる射出成形体(但し、前記(成分A)又は(成分A’)と、(成分B)と、(成分C)と、(成分D)と、(成分E)との合計量を100重量%とする。)を提供するものである。
本発明によれば、軽量化が望まれる成形体において、脆化温度が低く、低温耐衝撃性に優れた成形体を製造することができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することが可能となる。
実施例で使用したウエルド発生状況の評価用平板成形体の概略上面図である。
〔ポリプロピレン系樹脂組成物〕
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう。)は、メルトフローレート(230℃、2.16kgf荷重下、JIS−K−7210に準拠)が30g/10分以上であるプロピレン系重合体(成分A)又は異なる少なくとも2種の前記プロピレン系重合体の混合物(成分A’)と、エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、メルトフローレートが0.4〜80g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)と、タルク(成分C)と、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体で変性して得られる変性ポリオレフィン樹脂(成分D)と、耐圧強度が100MPa以上、真密度が0.3〜0.7g/cm3、50%粒子径が25μm以下であり、シランカップリング剤で表面処理されたガラス微粒子中空球粉体(成分E)を所定量含有するポリプロピレン系樹脂組成物である。
上記の構成とすることにより、従来のポリプロピレン系樹脂組成物と同等以上の軽量効果を有しながら、脆化温度が低く、低温耐衝撃性に優れた成形体を製造できるポリプロピレン系樹脂組成物が提供できる。
なお、以下、前記(成分A)等で示される各成分をそれぞれ、単に「成分A」等ともいう。また、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
以下、各成分について説明する。
[プロピレン系重合体(成分A)]
本発明におけるプロピレン系重合体(成分A)とは、プロピレン単独重合体又はプロピレンと他のモノマーとの共重合体をいう。前記共重合体はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。剛性と耐衝撃性のバランスの観点からブロック共重合体が好ましい。
ランダム共重合体としては、プロピレン由来の単量体単位とエチレンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の単量体単位と炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の単量体単位とエチレンに由来する単量体単位と、炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体が挙げられる。
ブロック共重合体としては、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の単量体単位からなる重合体成分(以下、重合体成分(I)と称する。)と、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する。)とからなる重合体が挙げられる。
(成分A)プロピレン系重合体は樹脂組成物の剛性と耐衝撃性のバランスの観点から、13C−NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm]分率と表記されることもある。)が0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましい。なお、アイソタクチック・ペンタッド分率は、プロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、プロピレン系重合体(成分A)のアイソタクチック・ペンタッド分率が1に近いほどそのプロピレン系重合体(成分A)は高い立体規則性を示す分子構造を有する高結晶性の重合体であることを表す指標である。ペンタッド分率の測定は、A.ZambelliらによってMacromolecules,第6巻,第925頁(1973年)に記載されている方法、すなわち13C−NMRを使用する方法によって行い、NMR吸収ピークの帰属は、Macromolecules,第8巻,第687頁(1975年)に基づいて行う。
また、プロピレン系重合体(成分A)が上記ランダム共重合体の場合には、共重合体中のプロピレン単位の連鎖について測定される値を用い、上記ブロック共重合体の場合には、重合体成分(I)について測定される値を用いる。
プロピレン系重合体(成分A)は、成形加工性と耐衝撃性の観点から、好ましくは230℃、2.16kgf荷重下で、JIS−K−7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、30g/10分以上である。プロピレン系重合体(成分A)のメルトフローレート(MFR)が30g/10分未満であると、成形加工性に劣る。
得られる成形体の剛性と耐衝撃性のバランスの観点から、好ましくは60〜500g/10分である。プロピレン単独重合体又はランダム共重合体の場合は100〜400g/10分であることがより好ましく、ブロック共重合体の場合は80〜150g/10分であることがより好ましく、90〜150g/10分であることがさらに好ましい。
プロピレン系重合体(成分A)は、重合触媒を用いて下記の方法により製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報に記載の触媒系が挙げられる。
重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
これらの重合方法は、バッチ式、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系重合体(成分A)に応じて、適宜決定すればよい。
プロピレン系重合体(成分A)の製造において、プロピレン系重合体(成分A)中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じてプロピレン系重合体(成分A)をそのプロピレン系重合体(成分A)が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
<ランダム共重合体>
上述のように、本発明におけるランダム共重合体はプロピレン由来の単量体単位とエチレンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の単量体単位と炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体;プロピレン由来の単量体単位とエチレンに由来する単量体単位と炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体である。
上記ランダム共重合体を構成する炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
プロピレン由来の単量体単位と炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。
プロピレン由来の単量体単位とエチレンに由来する単量体単位と炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位とからなるランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。
ランダム共重合体中のエチレン及び/又は炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.1〜40重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましく、2〜15重量%であることがさらに好ましい。そして、プロピレンに由来する単量体単位の含有量は99.9〜60重量%であることが好ましく、99.9〜70重量%であることがより好ましく、98〜85重量%であることがさらに好ましい。
<ブロック共重合体>
上述のように、本発明におけるブロック共重合体は、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の単量体単位からなる重合体成分(以下、重合体成分(I)と称する。)と、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体成分(以下、重合体成分(II)と称する。)からなる重合体をいう。
重合体成分(I)は、プロピレン単独重合体成分又はプロピレン由来の単量体単位を含有する重合体成分である。プロピレン由来の単量体単位を含有する重合体成分とは、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のオレフィンに由来する単位と、プロピレン由来の単位とからなるプロピレン共重合体成分が挙げられる。
重合体成分(I)が、プロピレン由来の単量体単位を含有する重合体成分である場合、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のオレフィンに由来する単位の含有量は、合計して、0.01重量%以上20重量%未満である(但し、重合体成分(I)の重量を100重量%とする)ことが好ましい。
炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、さらに好ましくは1−ブテンである。
プロピレン由来の単量体単位を含有する重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
重合体成分(I)としては、好ましくは、プロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分が挙げられ、剛性の観点から特に好ましくはプロピレン単独重合体成分である。
重合体成分(II)は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のオレフィンに由来する単量体単位と、プロピレンに由来する単量体単位とを有する共重合体成分である。
重合体成分(II)に含有されるエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは20〜80重量%であり、より好ましくは20〜60重量%である(但し、重合体成分(II)の重量を100重量%とする。)。
重合体成分(II)を構成する炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、前記重合体成分(I)を構成するα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−デセン共重合体成分等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体成分である。
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる重合体の重合体成分(II)の含有量は1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、5〜30重量%であることがさらに好ましく、8〜25重量%であることが最も好ましい(但し、重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなるブロック共重合体の重量を100重量%とする。)。
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体の重合体成分(I)がプロピレン単独重合体成分の場合、該プロピレン共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−デセン)ブロック共重合体等が挙げられる。
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなる重合体の重合体成分(I)がプロピレン由来の単量体単位からなるプロピレン共重合体成分の場合、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体としては、例えば、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−デセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−デセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−デセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ヘキセン)−(プロピレン−1−デセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−オクテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−オクテン)−(プロピレン−1−デセン)ブロック共重合体等が挙げられる。
重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体として、好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体であり、より好ましくは、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体である。
重合体成分(I)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度数([η]I)は、0.1〜2dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5dl/gであり、さらに好ましくは0.7〜1.1dl/gである。
重合体成分(II)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度数([η]II)は1〜10dl/gであることが好ましく、より好ましくは2〜10dl/gであり、さらに好ましくは2〜8dl/gである。
また、重合体成分(I)の極限粘度数([η]I)に対する重合体成分(II)の極限粘度数([η]II)の比([η]II/[η]I)は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜9である。
なお、本発明における極限粘度数(単位:dl/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1dl/g、0.2dl/g及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度数は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
プロピレン系重合体(成分A)が重合体成分(I)と重合体成分(II)とを多段重合させて得られる重合体である場合、前段の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーから重合体成分(I)又は重合体成分(II)の極限粘度数を求め、この極限粘度数の値と各成分の含有量を用いて残りの成分の極限粘度数を算出する。
また、重合体成分(I)と重合体成分(II)からなるプロピレン共重合体が、重合体成分(I)が前段の重合工程で得られ、重合体成分(II)が後段の工程で得られる方法によって製造される共重合体である場合、重合体成分(I)及び重合体成分(II)の含有量、極限粘度数([η]Total、[η]I、[η]II)の測定及び算出の手順は、以下のとおりである。なお、極限粘度数([η]Total)は、重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなるブロック共重合体の全体の極限粘度数を示す。
前段の重合工程で得た重合体成分(I)の極限粘度数([η]I)、後段の重合工程後の最終重合体(成分(I)と成分(II))の前記の方法で測定した極限粘度数([η]Total)、最終重合体に含有される重合体成分(II)の含有量から、重合体成分(II)の極限粘度数([η]II)を、下記式から計算する。
[η]II=([η]Total−[η]I×XI)/XII
[η]Total:後段重合工程後の最終重合体の極限粘度数(dl/g)
[η]I:前段重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーの極限粘度数(dl/g)
XI:重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなるブロック共重合体全体に対する重合体成分(I)の重量比
XII:重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなるブロック共重合体全体に対する重合体成分(II)の重量比
なお、XI、XIIは重合時の物質収支から求める。
前記XII:重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなるブロック共重合体全体に対する重合体成分(II)の重量比は、重合体成分(I)と最終重合体(重合体成分(I)と重合体成分(II))の各々の結晶融解熱量を測定することによって、次式から算出してもよい。
XII=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:最終重合体(重合体成分(I)と重合体成分(II))の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:重合体成分(I)の融解熱量(cal/g)
ブロック共重合体は、重合体成分(I)を第1工程で製造し、重合体成分(II)を第2工程で製造することにより得られる。重合は上述の重合触媒を用いて行われる。
[プロピレン系重合体の混合物(成分A’)]
本発明においては、(成分A’)は、異なる少なくとも2種の前記プロピレン系重合体の混合物である。
成分A’に含まれる各前記プロピレン系重合体の好ましい態様は、前述した好ましい態様と同様である。
[エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)]
本発明におけるエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)は、エチレンと、炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体である。好ましくはエチレンと、炭素数が4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、230℃、2.16kgf荷重下で、JIS−K−7210に準拠して測定されたメルトフローレートが0.4〜80g/10分である。成形加工性と成形体の耐衝撃性の向上という観点から、メルトフローレートは1.5〜30g/10分であることがより好ましく、2.0〜15g/10分であることがさらに好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)に用いられるα−オレフィンは、好ましくは炭素数4〜10のα−オレフィンであり、プロピレン系重合体(成分A)で用いられるα−オレフィンと同様の炭素原子数4〜10個のα−オレフィンが挙げられる。具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、環状構造を有するα−オレフィン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)として具体的には、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、エチレン−(3−メチル−1−ブテン)共重合体、エチレンと環状構造を有するα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)に含有されるα−オレフィンの含有量は、合計して好ましくは1〜49重量%であり、より好ましくは5〜49重量%であり、さらに好ましくは24〜49重量%である(エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)の重量を100重量%とする。)。
また、成形体の耐衝撃性向上という観点からエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)の密度は0.85〜0.89g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.85〜0.88g/cm3、さらに好ましくは0.855〜0.867g/cm3である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)は、重合触媒を用いて製造することができる。重合触媒としては、例えば、メタロセン触媒に代表される均一系触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系等が挙げられる。
均一系触媒系としては、例えば、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒系が挙げられる。
チーグラー・ナッタ型触媒系としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)は、市販品を用いてもよい。例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社製エンゲージ(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、エスプレンSPO(登録商標)等が挙げられる。
[タルク(成分C)]
本発明におけるタルク(成分C)とは、含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶構造は、パイロフィライト型三層構造であり、タルクはこの構造が積み重なったものである。タルクとして、特に好ましくは、含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものである。
本発明におけるタルク(成分C)は平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、剛性と耐衝撃性の観点から4.5〜3.0μmであることがより好ましい。
ここで本発明における「平均粒子径」とは、レーザー回析法により測定された粒度分布測定データにおける微粒子側からの微粒子数の累積が50%に達したときの粒子の粒径を意味する(50%粒子径、D50)。
タルク(成分C)は、無処理のまま使用してもよいが、プロピレン系重合体(成分A)との界面接着性を向上させ、かつ、プロピレン系重合体(成分A)に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤、又はチタンカップリング剤、若しくは界面活性剤で表面を処理して使用してもよい。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
[変性ポリオレフィン樹脂(成分D)]
本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂(成分D)は、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体で変性した樹脂である。この変性ポリオレフィン樹脂(成分D)の原料となるポリオレフィン樹脂は、1種類のオレフィンの単独重合体又は2種類以上のオレフィンの共重合体からなる樹脂である。変性ポリオレフィン樹脂(成分D)は、換言すれば、1種類のオレフィンの単独重合体又は2種類以上のオレフィンの共重合体に不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体を反応させて生成した樹脂であって、分子中に不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する部分構造を有している樹脂である。具体的には、次の(D−a)〜(D−c)の変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
(D−a):オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合した変性ポリオレフィン樹脂。
(D−b):2種以上のオレフィンを共重合した共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合した変性ポリオレフィン樹脂。
(D−c):オレフィンを単独重合した後に2種以上のオレフィンを共重合したブロック共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体をグラフト重合して変性ポリオレフィン樹脂。
上記不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
また、不飽和カルボン酸誘導体としては、不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
これらのうち、不飽和カルボン酸としてはマレイン酸、アクリル酸を用いることが好ましく、不飽和カルボン酸誘導体としては、無水マレイン酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることが好ましい。
上記変性ポリオレフィン樹脂(成分D)として、好ましくは、(D−c)である。さらに好ましくは、(D−c)のうち、エチレン及びプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンに由来する単位を主な単量体単位として含有するポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸をグラフト重合した変性ポリオレフィン樹脂である。
変性ポリオレフィン樹脂(成分D)に含有される不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量は、剛性、硬度等の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは0.1重量%〜20重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。なお、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に由来する単量体単位の含有量は、赤外吸収スペクトル又はNMRスペクトルによって、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量して算出した値を用いる。
変性ポリオレフィン樹脂(成分D)の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体のグラフト効率は、得られる樹脂組成物の剛性及び衝撃強度のような機械物性の観点から0.51以上であることが好ましい。不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体のグラフト重合におけるグラフト効率は、以下の手順(1)〜(9)によって求めることができる。
(1)変性ポリオレフィン樹脂1.0gをキシレン100mlに溶解する;
(2)キシレン溶液をメタノール1,000mlに撹拌しながら滴下して変性ポリオレフィン樹脂を再沈殿させる;
(3)再沈殿された変性ポリオレフィン樹脂を回収する;
(4)回収された変性ポリオレフィン樹脂を80℃にて8時間真空乾燥し、精製された変性ポリオレフィン樹脂を得る;
(5)精製された変性ポリオレフィン樹脂を熱プレスし、厚さ100μmのフィルムを作成する;
(6)フィルムの赤外吸収スペクトルを測定する;
(7)赤外吸収スペクトルから、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体に基づく吸収を定量し、変性ポリオレフィン樹脂中のポリオレフィン樹脂と反応した不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体の含有量(X1)を算出する。
(8)別途、精製処理しない変性ポリオレフィン樹脂について、上記の手順(5)〜(6)を行い、その赤外吸収スペクトルから、精製処理しない変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体の含有量(X2)を算出する(X2は、ポリオレフィン樹脂と反応した不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体の含有量(X1)と、ポリオレフィン樹脂と反応していない(つまり、遊離の)不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体の含有量との合計である。);
(9)グラフト効率=X1/X2を算出する。
変性ポリオレフィン樹脂(成分D)のメルトフローレート(MFR)は機械的強度や生産安定性の観点から、好ましくは5〜400g/10分であり、より好ましくは10〜200g/10分であり、特に好ましくは20〜150g/10分である。なお、成分DにおけるMFRは、JIS−K−7210に従って、230℃、21.2N荷重(2.16kg荷重)で測定した値である。
[ガラス微粒子中空球粉体(成分E)]
本発明におけるガラス微粒子中空球粉体(成分E)とは、中空球状のガラス粉体であり、耐圧強度が100MPa以上、真密度が0.3〜0.7g/cm3、50%粒子径が25μm以下であり、シランカップリング剤で表面処理されたものである。シランカップリング剤は、樹脂と反応する有機官能基を有することが好ましい。有機官能基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、ビニル基、メルカプト基等が挙げられ、好ましくは、アミノ基、エポキシ基であり、さらに好ましくは、樹脂組成物の衝撃強度等が優れるということから、アミノ基である。
ガラス微粒子中空球粉体(成分E)の耐圧強度は100MPa以上であり、好ましくは150MPa以上である。耐圧強度が100MPa未満であると、本発明の樹脂組成物を溶融混錬機を用いて作製する工程又は本発明の樹脂組成物を成形する工程でガラス微粒子中空球粉体が破壊される場合があり、樹脂組成物全体の比重が高くなってしまい軽量化の観点で好ましくない。
ガラス微粒子中空球粉体(成分E)の耐圧強度は、ASTM D3102−72;「中空グラス微細粒子の静圧崩壊強度(Hydrostatic Collapse Strength of Hollow Glass Microspheres)」により測定することができる。
ガラス微粒子中空球粉体(成分E)の50%粒子径は25μm以下であり、好ましくは20μm以下である。50%粒子径が25μmを超えると、成形体の低温耐衝撃性が低下する場合がある。また、上記50%粒子径は、10μm以上であることが好ましい。
ガラス微粒子中空球粉体(成分E)は、アミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものであることが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤で表面処理されていると、成形体の低温耐衝撃性に優れ、また、ウエルド外観が良好である。
ガラス微粒子中空球粉体(成分E)は、市販品を用いてもよい。例えば、住友スリーエム株式会社製グラスバルブズ(登録商標)等が挙げられる。
[樹脂組成物]
本発明に係る樹脂組成物は、上記成分A又は成分A’と、成分Bと、成分Cと、成分Dと、成分Eとを含有する。各成分の含有量は、成分A又は成分A’が35〜70重量%であり、好ましくは38〜60重量%である。成分Bの含有量は10〜25重量%であり、好ましくは17〜25重量%である。成分Cの含有量は4〜15重量%であり、好ましくは5〜12重量%であり、成分Dの含有量は0.5〜5重量%であり、好ましくは1〜3重量%であり、成分Eの含有量は5〜20重量%であり、好ましくは5〜17重量%である(但し、前記成分A又は成分A’と、成分Bと、成分Cと、成分Dと、成分Eとの合計量を100重量%とする。)。
成分A又は成分A’の含有量が35重量%未満であると、成形加工性に劣る場合があり、70重量%を超えると、成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。
また、成分Bの含有量が10重量%未満であると、成形体の耐衝撃性が低下する場合があり、特に脆化温度が高くなってしまう場合がある。成分Bの含有量が25重量%を超えると成形体の剛性及び成形加工性が低下したり、ウエルドが発生する場合がある。
また、成分Cの含有量が4重量%未満であると、成形体の剛性が低下する場合があり、15重量%を超えると比重が高くなって、成形体の重量が重くなる場合がある。
また、成分Dの含有量が0.5重量%未満であると、成形体の剛性や耐衝撃性が低下したり、脆化温度が高くなってしまう場合があり、5重量%を超えると耐衝撃性が低下する場合がある。
さらに、成分Eの含有量が5重量%未満であると、比重が高くなって、成形体の重量が重くなる場合があり、20重量%を超えると、成形体の耐衝撃性が低下する場合があり、特に脆化温度が高くなってしまう場合がある。
本発明に係る樹脂組成物の比重は、射出成形体にした場合の製品重量を軽くする観点から、好ましくは0.97以下であり、より好ましくは、0.80〜0.95である。
本発明に係る樹脂組成物を射出成形体にした場合の23℃における曲げ弾性率は、製品剛性を高くする観点から、好ましくは1,000MPa以上であり、より好ましくは1,000〜2,500MPaである。
本発明に係る樹脂組成物全体のメルトフローレート(230℃、2.16kgf荷重、JIS−K−7210に準拠)は、成形加工性を改良する観点から、好ましくは5g/10分以上であり、より好ましくは8g/10分以上であり、成形体の耐衝撃性を改良する観点から、8〜45g/10分であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、各原料成分を好ましくは180℃以上、より好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは180〜250℃で溶融混練することにより得られる。溶融混練には、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等が使用できる。
樹脂組成物の形状は、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等が挙げられる。本発明の樹脂組成物を成形加工するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、形状として好ましくは、長さが1〜50mmのペレット状である。
各原料成分の混練順序は適宜決めればよいが、以下のような方法で配合し、混練することが好ましい。
方法1:プロピレン系重合体(成分A、成分A’)とエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)とタルク(成分C)と、変性ポリオレフィン樹脂(成分D)と、ガラス微粒子中空球粉体(成分E)を一括に混練する方法。
方法2:プロピレン系重合体(成分A、成分A’)とエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)とタルク(成分C)を混練した後、変性ポリオレフィン樹脂(成分D)と、ガラス微粒子中空球粉体(成分E)を添加し、混練する方法。
方法3:プロピレン系重合体(成分A、成分A’)の一部とエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)とタルク(成分C)を事前に混練してペレット化し(マスターバッチ−1)、プロピレン系重合体(成分A、成分A’)の一部と変性ポリオレフィン樹脂(成分D)と、ガラス微粒子中空球粉体(成分E)を事前に混練してペレット化し(マスターバッチ−2)、前記マスターバッチ−1とマスターバッチ−2とを一括に混練する方法。
本発明に係る樹脂組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、光拡散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る樹脂組成物を成形して得られる成形体は、射出成形法により製造した射出成形体であることが好ましい。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
この成形体は、例えば、自動車用部材、家電用部材、コンテナー等に用いられる。なかでも自動車外装用部材として好適である。
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。実施例及び比較例で使用したプロピレン系重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、タルク、変性ポリオレフィン樹脂、ガラス微粒子中空球粉体、及び添加剤を下記に示す。
(1)プロピレン系重合体(成分A、成分A’)
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、下記物性のプロピレン系重合体が得られるような条件で液相−気相重合法によって製造した。
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体のMFR(230℃、2.16kgf荷重):90g/10分
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の極限粘度数([η]Ttotal):1.46dl/g
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度数([η]I):0.80dl/g
重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.985
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:11.0重量%
重合体成分(II)の極限粘度数([η]II):6.8dl/g
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−2)
特開2004−182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、下記物性のプロピレン系重合体が得られるような条件で液相−気相重合法によって製造した。
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体のMFR(230℃、2.16kgf荷重):32g/10分
(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の極限粘度数([η]Ttotal):1.42dl/g
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の極限粘度数([η]I):1.06dl/g
重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.983
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:21重量%
重合体成分(II)の極限粘度数([η]II):2.8dl/g
プロピレン単独重合体(A−3)
MFR(230℃、2.16kg荷重):6g/10分
極限粘度数([η]):1.65dl/g
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)
エチレン−ブテンランダム共重合体(B−1)
密度:0.862(g/cm3
MFR(230℃、2.16kg荷重):2.5g/10分
α−オレフィン:1−ブテン
エチレン−オクテンランダム共重合体(B−2)
密度:0.857(g/cm3
MFR(230℃、2.16kg荷重):2.7g/10分
α−オレフィン:1−オクテン
(3)タルク(C)
平均粒子径(レーザー回析法、50%相当粒子径D50):4.4μm
(4)変性ポリオレフィン樹脂(D)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂
MFR(230℃、21.2N荷重で測定):100g/10分、
無水マレイン酸グラフト量=0.43重量%
なお、上記変性ポリオレフィン樹脂(D)は、特開2004−197068号公報の実施例1に記載された方法に従って作製した。このとき、未反応の無水マレイン酸の量は変性ポリオレフィン樹脂(D)に対して、0.2重量%であり、グラフト効率は0.68であった。
(5)ガラス微粒子中空球粉体(成分E)
ガラス微粒子中空球粉体(E−1)
耐圧強度:193MPa、真密度:0.6g/cm3、50%粒子径:16μmである住友スリーエム株式会社製グラスバブルズiM30Kとアミノプロピルトリエトキシシランを混合撹拌することでシランカップリング処理ガラス微粒子中空球粉体(E−1)を得た。
ガラス微粒子中空球粉体(E−2)
耐圧強度:193MPa、真密度:0.6g/cm3、50%粒子径:16μmである住友スリーエム株式会社製グラスバブルズiM30K
ガラス微粒子中空球粉体(E−3)
耐圧強度:124MPa、真密度:0.6g/cm3、50%粒子径:30μmである住友スリーエム株式会社製グラスバブルズS60HSとアミノプロピルトリエトキシシランを混合撹拌することでシランカップリング処理ガラス微粒子中空球粉体(E−3)を得た。
原料成分及び樹脂組成物の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−7210に規定された方法に従って測定した。
測定温度は230℃で、荷重は2.16kgとした。
(2)比重
JIS−K−7112に規定された方法に従って測定した。
(3)極限粘度数([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度数は還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。
重合体成分(I)及び(II)の割合、極限粘度数([η]Total、[η]I、[η]II)の測定及び算出
前段の重合工程で得た重合体成分(I)の極限粘度数([η]I)、後段の重合工程後の最終重合体(重合体成分(I)と重合体成分(II)の合計)の前記の方法で測定した極限粘度数([η]Total)、最終重合体に含有される重合体成分(II)の含有量(重量比)から、後段の工程で重合された重合体成分(II)の極限粘度数[η]IIを、下記式から計算して求めた。
[η]II=([η]Total−[η]I×XI)/XII
[η]Total:後段重合工程後の最終重合体の極限粘度数(dl/g)
[η]I:前段重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーの極限粘度数(dl/g)
XI:前段の工程で重合された成分の重量比
XII:後段の工程で重合された成分の重量比
前記XII:重合体成分(I)及び重合体成分(II)からなるブロック共重合体全体に対する重合体成分(II)の重量比は、重合体成分(I)と最終重合体(成分(I)と成分(II))の各々の結晶融解熱量を測定することによって、次式から算出した。結晶融解熱量は示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
XII=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:最終重合体(重合体成分(I)と重合体成分(II))の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:重合体成分(I)の融解熱量(cal/g)
XI=1−XII
(4)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
JIS−K−7203に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、スパン長さが100mmである試験片を用いて、荷重速度は2.0mm/分で、測定温度は23℃で測定した。
(5)耐衝撃性(アイゾット衝撃強度、Izod、単位:kJ/m2
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いて、測定温度は23℃(室温)又は−30℃(低温)でそれぞれ測定した。
(6)脆化温度(BP、単位:℃)
JIS−K−7216に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された25×150×2mmの平板から所定の6.3×38×2mmの試験片を打ち抜き、測定を行った。
(7)ウエルド外観評価用射出成形体の製造
ウエルドの外観評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作製した。
射出成形機として、住友重機械工業株式会社製 SE180D 型締力180トン、金型として、100mm×400mm×3.0mmt、平行2点ゲートを用いて、成形温度220℃で成形を実施し、図1に示した平板成形体4を得た。図1において、1及び2は2点ゲート、3はウエルド、Lはウエルドライン長さを表す。
(8)ウエルド外観
前記(7)の方法で作製した平板成形体を用いて、目視により図1に示したウエルドライン長さを観察した。この場合、ウエルドライン長さが短いほど外観性能が良好であることを示す。
〔実施例1〕
プロピレン系重合体(A−1)と、プロピレン系重合体(A−2)と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B−1)と、エチレン−α−オレフィン共重合体(B−2)と、タルク(C)と、変性ポリオレフィン樹脂(D)と、ガラス微粒子中空球粉体(E−1)とを、下記の表1の重量割合(重量%)(但し、(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)、(C)、(D)、(E−1)の合計量を100重量%とする。)で配合し、さらに、(A−1)、(A−2)、(A−3)、(B−1)、(B−2)、(C)、(D)、(E−1)の合計量100重量部に対し、着色顔料マスターバッチ2.0重量部、添加剤としてステアリン酸カルシウムを0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学株式会社製)を0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ社製)を0.05重量部の組成割合で配合し、二軸混練押出機を用いて、ベント吸引下で混練押出して、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
〔実施例2、3〕
実施例1の各成分の重量割合を表1のように変更して、実施例1と同様に樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
〔比較例1〕
実施例2にプロピレン重合体(A−3)を加え、変性ポリオレフィン樹脂(D)を使用せず、各成分の重量割合を表1のように変更して、実施例2と同様に樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
〔比較例2〕
比較例1のガラス微粒子中空球粉体(E−1)をガラス微粒子中空球粉体(E−2)に変更し、比較例1と同様に樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
〔比較例3〕
実施例2のガラス微粒子中空球粉体(E−1)をガラス微粒子中空球粉体(E−3)に変更し、実施例2と同様に樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
〔比較例4〕
実施例3のガラス微粒子中空球粉体(E−1)をガラス微粒子中空球粉体(E−3)に変更し、実施例3と同様に樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
Figure 2013166817
なお、実施例2及び3、並びに、比較例3及び4のウエルドライン長さは、未測定である。
1:ゲート1、2:ゲート2、3:ウエルド、4:平板成形体、L:ウエルドライン長さ

Claims (4)

  1. メルトフローレートが30g/10分以上であるプロピレン系重合体(成分A)又は異なる少なくとも2種の前記プロピレン系重合体の混合物(成分A’)を35〜70重量%、
    エチレンと、炭素数が3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体であり、メルトフローレートが0.4〜80g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体(成分B)を10〜25重量%、
    タルク(成分C)を4〜15重量%、
    ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂(成分D)を0.5〜5重量%、及び、
    耐圧強度が100MPa以上、真密度が0.3〜0.7g/cm3、50%粒子径が25μm以下であり、シランカップリング剤で表面処理されたガラス微粒子中空球粉体(成分E)を5〜20重量%含有する
    ポリプロピレン系樹脂組成物(但し、前記(成分A)又は(成分A’)と、(成分B)と、(成分C)と、(成分D)と、(成分E)との合計量を100重量%とする。)。
  2. プロピレン系重合体(成分A)が、プロピレン単独重合体成分と、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体成分とからなり、かつ、メルトフローレートが80g/10分以上であるブロック共重合体である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 変性ポリオレフィン樹脂(成分D)のメルトフローレートが、5〜400g/10分である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体。
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