JP2018024752A - 樹脂組成物、及びこれから得られる成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】寸法精度と衝撃強度とのバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】JISK7210に準拠し、230℃試験荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分の範囲にあるプロピレン系重合体(A)と、エチレン系ワックス(B)と、無機充填材(C)と、を含有し、プロピレン系重合体(A)および無機充填材(C)の含有量の合計を100質量部としたときに、プロピレン系重合体(A)を1〜70質量部、無機充填材(C)を10〜99質量部、エチレン系ワックス(B)を0.1〜50質量部含み、エチレン系ワックス(B)が、下記(i)および(ii)を満たす樹脂組成物。(i)GPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300〜20000の範囲にある(ii)酸価が1〜100mgKOH/gの範囲にある【選択図】図1

Description

本発明は、特定の組成を有する樹脂組成物、および当該樹脂組成物から得られる成形体に関する。
ポリプロピレン等のプロピレン系樹脂は、機械物性や成形性に優れる。したがって、プロピレン系樹脂は、自動車部品や家電部品など、様々な用途に利用されている。従来、プロピレン系樹脂に、タルク、マイカ、ガラス繊維等の無機充填材を添加することで、その剛性が向上することが知られている。また、特許文献1には、特定のアスペクト比を有し、かつ平均粒径が所定の範囲であるタルクをプロピレン系樹脂に添加することで、成形体の寸法安定性が高まることが記載されている。
特開2016−84386号公報
プロピレン系樹脂組成物において、タルク等の無機充填材の含有割合が大きくなると、寸法精度が向上するものの、衝撃強度が低下する傾向があった。そのため、無機充填材の含有量が比較的高い組成物は、自動車用途等、衝撃強度の要求が高い用途には、適用できない等の課題があった。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、無機充填材の含有割合が比較的高いにも関わらず、寸法精度と衝撃強度とのバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の組成を有する樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の樹脂組成物、およびこれから得られる成形体に関する。
[1]JIS K7210に準拠し、230℃ 試験荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分の範囲にあるプロピレン系重合体(A)と、エチレン系ワックス(B)と、無機充填材(C)と、を含有し、前記プロピレン系重合体(A)および前記無機充填材(C)の含有量の合計を100質量部としたときに、前記プロピレン系重合体(A)を1〜70質量部、前記無機充填材(C)を30〜99質量部、前記エチレン系ワックス(B)を0.1〜50質量部含み、前記エチレン系ワックス(B)が、下記(i)および(ii)を満たす、樹脂組成物。
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300〜20000の範囲にある
(ii)酸価が1〜100mgKOH/gの範囲にある
[2]前記エチレン系ワックス(B)が、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体のうち、少なくとも一方の不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物または空気酸化物である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記プロピレン系重合体(A)がプロピレン・エチレンブロック共重合体である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記無機充填材(C)がタルクである、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる、成形体。
本発明によれば、寸法精度および衝撃強度のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供できる。
図1は、実施例および比較例の樹脂組成物から得られた成形体の線膨張係数とアイゾッド衝撃強度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の樹脂組成物およびそれから得られる成形体について詳説する。
本発明の樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)と、エチレン系ワックス(B)と、無機充填材(C)とを含有する。
プロピレン系重合体(A)および無機充填材(C)の含有量の合計を100質量部としたときの、プロピレン系重合体(A)の量は、1〜70質量部であり、好ましくは40〜70質量部であり、さらに好ましくは50〜65質量部であり、特に好ましくは55〜60質量部である。一方、無機充填材(C)の量は、30〜99質量部であり、好ましくは30〜60質量部であり、より好ましくは35〜50質量部であり、さらに好ましくは40〜45質量部である。
また、プロピレン系重合体(A)および無機充填材(C)の含有量の合計を100質量部としたときの、エチレン系ワックス(B)の量は、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.2〜9質量部であり、さらに好ましくは0.3〜7質量部であり、特に好ましくは0.4〜5質量部であり、最も好ましくは、1〜3質量部である。エチレン系ワックス(B)の量が、当該範囲であると、樹脂組成物の加工性や、当該樹脂組成物から得られる成形体の寸法安定性、および衝撃強度が高まる。
以下、各成分および各要件について説明する。
1.プロピレン系重合体(A)
本発明の樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)は1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
プロピレン系重合体(A)のJIS K7210に準拠し、230℃ 試験荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)は、0.01〜100g/10分であり、好ましくは0.1〜50g/10分である。プロピレン系重合体(A)のMFRが上記の範囲にあると、樹脂組成物を射出成形しやすく、さらに寸法安定性および衝撃強度のバランスに優れる成形体が得られる。
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)であってもよく、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体であってもよい。エチレン・α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。プロピレンと共重合するα−オレフィンの例には、エチレンや、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが含まれる。プロピレン系重合体をプロピレンとエチレンとの共重合体とする場合、プロピレン由来の構成単位の量は、60〜99.5モル%であることが好ましい。プロピレン由来の構成単位の量は、より好ましくは80〜99モル%であり、さらに好ましくは90〜98.5モル%であり、特に好ましくは95〜98モル%である。ここで、プロピレン由来の構成単位の量とエチレン由来の構成単位の量との合計は100モル%である。樹脂組成物が、プロピレン由来の構成単位量が多いエチレン・プロピレン共重合体を含むと、得られる成形体の外観が良好となり、機械強度および耐熱性のバランスが良好になる。
プロピレン系重合体を、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとの共重合体とする場合、炭素原子数4〜12のα−オレフィンの例には、例えば1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどの直鎖状または分岐状のα−オレフィンが含まれる。その中でも、1−ブテンが特に好ましい。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体は、炭素原子数が4〜12以外のオレフィンを含んでいてもよく、例えばエチレンなどから導かれる構成単位を少量(例えばプロピレン系共重合体の全構成単位に対して10モル%以下)含んでいてもよい。一方で、エチレンから誘導される構成単位が含まれないことも、樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性と機械強度とのバランスを高めるとの観点では好ましい。当該エチレン・α−オレフィン共重合体は、1種のα−オレフィンをのみを含んでいてもよく、2種以上のα−オレフィンを含んでいてもよい。
プロピレン系重合体(A)は特に、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましく、プロピレン単独重合体ブロックと、エチレン・プロピレンランダム共重合体ブロックとを有する重合体であることが特に好ましい。プロピレン単独重合体ブロックは、n−デカンに不溶な成分であり、エチレン・プロピレンランダム共重合体ブロックは、n−デカンに可溶な成分である。したがって、プロピレン・エチレンブロック共重合体において、これらを明確に区別したり、分離したりすることができる。
ここで、プロピレン・エチレンブロック共重合体は、(a)135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が0.2〜2.0dl/gであるプロピレン単独重合体成分80〜97質量%と、(b)135℃、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が2.5〜9.0dl/gであるエチレン・プロピレンランダム共重合体成分3〜20質量%(ただし(a)成分と(b)成分の合計は100質量%である)とを共重合した成分であることが好ましい。以下、本明細書において極限粘度[η]は、特に断りのない限り、135℃、デカリン溶液中で測定した値を意味する。
前記(a)プロピレン単独重合体成分と(b)エチレン・プロピレンランダム共重合体成分との重合割合は、(a)成分:(b)成分が80〜95質量%:5〜20質量%であることが好ましく、82〜92質量%:8〜18質量%であることがより好ましい。ここで、(a)成分および(b)成分の合計は、100質量%である。
このようなプロピレン・エチレンブロック共重合体は、公知の方法により適宜製造することができる。
また、プロピレン系重合体(A)は、二重結合を含み、かつ極性基を有する極性化合物でグラフト変性されていてもよい。極性化合物の例には、後述のエチレン系ワックスをグラフト変性するための不飽和カルボン酸またはその誘導体等が含まれる。
プロピレン系重合体(A)は、好ましくは示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が250℃以下または観測されないことが好ましい。融点が観測される場合、融点の上限は、より好ましくは230℃であり、さらに好ましくは200℃であり、特に好ましくは170℃である。また、融点の下限は、好ましくは50℃であり、より好ましくは70℃であり、さらに好ましくは90℃であり、特に好ましくは130℃、最も好ましくは150℃である。融点が上記上限と下限の範囲であると、樹脂組成物の調製時や、成形体の作製時に、発煙や臭気等が生じ難く、作業環境に対する影響が小さくなる。また、得られる成形体にベタつきが生じ難く、耐熱性、機械強度、衝撃強度、および衝撃吸収性のバランスに優れる成形体が得られやすい。
また、プロピレン系重合体(A)は好ましくは示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が、−140℃〜50℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは−120℃〜40℃の範囲にあり、さらに好ましくは−50℃〜−10℃の範囲にある。ガラス転移温度が上記範囲にあると、樹脂組成物の長期安定性や、成形体の耐熱性、衝撃性、および機械強度のバランスが優れる傾向にある。
さらに、プロピレン系重合体(A)のJIS K7171:94に準拠して測定した曲げ弾性率は、1〜10000MPaであることが好ましい。
ここで、樹脂組成物から得られる成形体に耐傷付き性や機械強度等が要求される場合、曲げ弾性率は好ましくは500〜7000MPaであり、より好ましくは700〜5000MPaであり、特に好ましくは900〜3000MPaであり、さらに好ましくは1000〜2000MPaである。曲げ弾性率が上記範囲であると、樹脂組成物の加工性が優れるだけでなく、成形体の耐傷付き性、耐熱性、および機械強度のバランスが優れる。
一方、樹脂組成物から得られる成形体に柔軟性等が要求される場合、上記曲げ弾性率は、好ましくは300MPa未満であり、より好ましくは100MPa未満であり、さらに好ましくは50MPa未満である。曲げ弾性率が上記範囲であると、得られる成形体の柔軟性が優れるだけでなく、衝撃吸収性、軽量性、防振性、制振性、制音性が優れる。さらには、成形体の金型転写性、シボ転写性等の意匠性や表面グリップ性も良好となる。
プロピレン系重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、20000超であり、上限は300000であることが好ましい。上限はより好ましくは200000であり、さらに好ましくは100000であり、特に好ましくは90000である。プロピレン系重合体(A)のGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40000〜3000000であり、より好ましくは40000〜2000000であり、さらに好ましくは40000〜1000000、特に好ましくは40000〜900000である。上記の範囲にあると、樹脂組成物を射出成形すること等ににより剛性および衝撃強度のバランスに優れる成形体が得られやすい。
2.エチレン系ワックス(B)
本明細書において、エチレン系ワックス(B)は、エチレン由来の構成単位を50モル%以上含む化合物とする。当該エチレン系ワックスは、下記要件(i)および(ii)を満たす。さらに、要件(iii)または(iv)のうち、いずれか一方を少なくとも満たすことが好ましい。
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は300〜20000の範囲にある
(ii)酸価が1〜100mgKOH/gの範囲にある
(iii)JISK 2207に従って測定した軟化点は70〜170℃の範囲にある
(iv)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は7.0以下である
エチレン系ワックス(B)の上記数平均分子量(要件(i))は、好ましくは500〜18000であり、より好ましくは1000〜12000であり、さらに好ましくは1500〜12000であり、特に好ましくは3700〜12000である。エチレン系ワックス(B)の数平均分子量が上記範囲内にあると、樹脂組成物中の無機充填材(C)の分散性が高まり、得られる成形体の外観が良好となり、耐熱性や機械強度が高まる。また、樹脂組成物の加工性や混練性も良好になる傾向がある。
一方、エチレン系ワックス(B)の酸価(要件(ii))は、好ましくは通常、20〜90mgKOH/gであり、さらに好ましくは30〜87mgKOH/gである。酸価が上範囲であると、前述のように、本発明の樹脂組成物から得られる成形体において、寸法安定性、耐衝撃性、加工性および分散性が両立する。酸価とは、試料1g当たりの中和に要する水酸化カリウムのmg数を指す。エチレン系ワックス(B)の酸価は、JIS K5902に準拠して測定することができる。
なお、得られる成形体に耐熱性が求められる場合、エチレン系ワックス(B)の酸価は、40〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは50〜100mgKOH/gであり、さらに好ましくは53〜100mgKOH/gであり、特に好ましくは56〜95mgKOH/gであり、さらに好ましくは58〜90mgKOH/gであり、とりわけ好ましくは80〜90mgKOH/gである。
従来のプロピレン系樹脂組成物では、無機充填材(C)の含有割合が大きくなると、得られる成形体の寸法安定性が向上するものの、衝撃強度が低下する傾向にあった。衝撃改良のために、酸変性した熱可塑性樹脂を添加することがあるが、衝撃強度が向上するものの、混練し難く、外観不良になりやすかった。これに対し、本発明では、無機充填材(C)を比較的多量に含めたとしても、得られる樹脂組成物の加工性が良好であり、かつ成形体の寸法安定性、外観、衝撃強度が低下し難い。つまり、本発明の樹脂組成物は加工性に優れ、さらに当該樹脂組成物によれば、寸法安定性、外観、および耐衝撃性のバランスに優れた成形体が得られる。その詳細な機構は明らかではないが、酸価が上述範囲であるエチレン系ワックス(B)は、極性を有する無機充填材(C)の表面と親和し、表面を覆うことで、無機充填材(C)同士の凝集を防止すると考えられる。また、数平均分子量が上記範囲であるエチレン系ワックス(B)は比較的低い分子量のため、結果として、プロピレン系樹脂組成物の加工時、すなわち溶融時には、樹脂組成物全体の流動性を向上させるとともに、効果的に無機充填材(C)の分散性を高めることができると考えられる。さらに、プロピレン系樹脂組成物の固化時には、エチレン系ワックス(B)が分子骨格の異なるプロピレン系重合体(A)と相容しにくいため、無機充填材(C)表面に局在化する。エチレン系ワックス(B)はプロピレン系重合体(A)の分子鎖と絡み合いがないため、衝撃が加わった際に、効果的に応力緩和することで、成形体の耐衝撃性を向上させると考えられる。また、エチレン系ワックス(B)により無機充填材(C)の分散性が向上し、プロピレン系重合体(A)と無機充填材(C)が均一に混ざった状態で固化し、プロピレン系重合体(A)の偏りがないことで、熱収縮の影響を受けにくくなり、寸法安定性が向上すると考えられる。その結果、プロピレン系重合体(A)由来の耐衝撃性と無機充填材(C)由来の寸法安定性とが両立すると考えられる。以上より、当該樹脂組成物は加工性が優れ、さらに当該樹脂組成物によれば、寸法安定性、外観、および耐衝撃性のバランスに優れた成形体が得られると考えられる。
また、エチレン系ワックス(B)の上記軟化点(要件(iii))の上限は、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは150℃であり、特に好ましくは145℃である。また、下限は、より好ましくは80℃であり、更に好ましくは90℃であり、特に好ましくは95℃であり、最も好ましくは105℃である。エチレン系ワックス(B)の軟化点が上記範囲にあると、樹脂組成物から得られる成形体の外観が良好になり、樹脂組成物の加工性が高まる。またさらに、成形体の耐熱性や機械強度も高まる。
さらに、エチレン系ワックス(B)の重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)(要件(iv))は、より好ましくは5.0以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。Mw/Mnが上記範囲であると、物性低下を引き起こす低分子量成分が少ないため、得られる成形体の外観が良好になり、耐熱性や機械強度が高まる。
また、エチレン系ワックス(B)のJIS K7112で測定された密度は、890〜950kg/mであることが好ましい。密度が当該範囲であると、無機充填材(C)の分散性が良好になる。また、得られる成形体からエチレン系ワックス(B)のブリードアウト(白化)が抑制される。
エチレン系ワックス(B)は、上述の要件(i)および(ii)を満たし、かつエチレン由来の構造を構成単位に、全構成単位のうち50モル%以上含む化合物であれば特に制限されない。エチレン系ワックス(B)の具体例には、エチレン単独重合体、またはエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体の、不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(例えば無水マレイン酸変性物)または空気酸化物が含まれる。エチレン系ワックス(B)がエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体の、不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物(例えば無水マレイン酸変性物)または空気酸化物である場合、エチレン由来の構成単位と、炭素原子数3〜12のα−オレフィン由来の構成単位の合計に対して、エチレン由来の構成単位の割合が60〜99.5モル%であることが好ましく、より好ましくは80〜99モル%であり、さらに好ましくは90〜98.5モル%であり、特に好ましくは95〜98モル%である。
当該エチレン系ワックス(B)は、エチレン単独重合体や、エチレン・α−オレフィン共重合体等の未変性エチレン系ワックス(B’)を調製し、これを不飽和カルボン酸モノマーで変性したり、空気酸化したりすることで得られる。
以下、未変性エチレン系ワックス(B’)及びその製造方法について先に説明し、その後、これらを変性したエチレン系ワックス(B)について説明する。
(未変性エチレン系ワックス(B’)について)
未変性のエチレン系ワックス(B’)は、立体特異性触媒の存在下、エチレンと必要に応じて他の単量体とを共重合させて得られた重合体とすることができる。未変性エチレン系ワックス(B’)は、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンを主体とする共重合体であってもよい。また、未変性エチレン系ワックス(B’)は、高分子量のポリエチレンを熱分解して得られるものであってもよい。また、未変性エチレン系ワックス(B’)を含む組成物から、溶媒に対する溶解度の差で未変性エチレン系ワックス(B’)のみを分別(溶媒分別)したり、沸点の差で分取(分子蒸留)したりしたものであってもよい。
未変性エチレン系ワックス(B’)は、エチレン単独重合体、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
未変性エチレン系ワックス(B’)が、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である場合、当該共重合体中のエチレン由来の構成単位は、60〜99.5モル%であることが好ましく、より好ましくは80〜99モル%であり、さらに好ましくは90〜98.5モル%であり、特に好ましくは95〜98モル%である。ただし、エチレン由来の構成単位と、α−オレフィン由来の構成単位との合計量を100モル%とする。
未変性エチレン系ワックス(B’)が、エチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体である場合、炭素原子数3〜12のα−オレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどの直鎖状または分岐状のα−オレフィンが含まれる。その中でも、プロピレンが特に好ましい。
上述した未変性エチレン系ワックス(B’)は、前述のとおりエチレン等を直接重合して得られるものであってもよく、高分子量のエチレン系重合体を熱分解して得られるものであってもよい。高分子量のエチレン系重合体(例えばポリエチレン)を熱分解する場合、300〜450℃で5分〜10時間熱分解することが好ましい。この場合、未変性ワックス(B’)には、不飽和末端(ビニリデン基)が存在する。当該不飽和末端は、H−NMR測定により確認することができるが、H−NMRにより測定した、1000個の炭素原子あたりのビニリデン基の個数が0.5〜5個であることが好ましい。ビニリデン基の個数が当該範囲であると、エチレン系ワックス(B)の無機充填材(C)に対する相容化効果が高まりやすい。また未変性エチレン系ワックス(B’)は、未変性エチレン系ワックス(B’)を含む組成物から、未変性エチレン系ワックス(B’)のみを溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別したり、蒸留などの方法で精製したものであってもよい。
また、未変性エチレン系ワックス(B’)を直接重合する場合、種々公知の製造方法、例えば、エチレン単量体と、α−オレフィン単量体とをチーグラー/ナッタ触媒またはメタロセン系触媒により重合する方法等を適用することができる。特に直接重合して得られたものが望ましい。
未変性エチレン系ワックス(B’)の重合は、重合されるモノマーおよび重合された未変性エチレン系ワックス(B’)がヘキサン等の不活性炭化水素媒体中に粒子として存在する状態で重合する懸濁重合法、溶媒を用いないで重合する気相重合法、または重合されるモノマーおよび重合された未変性エチレン系ワックス(B’)が不活性炭化水素媒体と共存または単独で溶融した状態で重合する溶液重合法等が可能であり、その中でも溶液重合が経済性と品質の両面で好ましい。重合反応は、バッチ法あるいは連続法いずれの方法で行ってもよい。重合は、反応条件の異なる二段以上に分けて行うこともできる。
前記懸濁重合法および溶液重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合に供給されうる液化したα−オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を用いることもできる。
また、重合温度は通常10〜200℃の範囲であるが、上述した好適なの構成単位量を有する未変性エチレン系ワックス(B’)を製造する観点から、重合温度は、好ましくは60〜180℃の範囲、より好ましくは75〜170℃の範囲である。重合圧力は、常圧〜7.8MPa−G(Gはゲージ圧)以下、好ましくは常圧〜4.9MPa−G(Gはゲージ圧)以下とすることができる。
重合に際して、エチレンやα−オレフィンは、前記した特定組成の未変性エチレン系ワックス(B’)が得られるような量割合で重合系に供給される。また重合に際しては、水素などの分子量調節剤を添加することもできる。また、エチレンや各α−オレフィンから誘導される構成単位の量は、重合時に配合量を調整するほか、触媒種や重合温度などによっても制御できる。
このようにして重合させると、生成した重合体は通常これを含む重合液として得られるので、常法により処理すると未変性エチレン系ワックス(B’)が得られる。
また、前記方法で得られた重合体を、融点以上の温度で真空下に脱気する方法、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等溶媒にいったん溶解させた後にメタノールやアセトン等極性溶媒を投入して濾過し低分子量部を除く方法、あるいは溶媒に全量溶解させた後特定の温度で析出させて高分子量部または低分子量部を取り除く方法等によって、さらに精製してもよい。
未変性エチレン系ワックス(B’)の数平均分子量(Mn)は、重合時の重合温度を上げるか、水素濃度を上げると低くなる傾向となり、上記範囲内に制御できる。または共触媒として用いる有機アルミニウムオキシ化合物および/またはイオン化イオン性化合物の使用量により調節することができる。さらに、重合後の精製により調節することもできる。
未変性エチレン系ワックス(B’)のMw/Mnは、触媒種や重合温度などにより制御できる。一般に重合にはチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒が用いられる。また溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、または蒸留などの方法で精製することもできる。
未変性エチレン系ワックス(B’)の軟化点は、エチレンやα−オレフィンの組成により調整することができ、たとえばエチレンとα−オレフィンとの共重合体であればα−オレフィンの含有量を多くすることで、軟化点が下がる傾向が得られる。また、触媒種や重合温度などによって制御することもできる。さらに、重合後の精製により調節することもできる。
未変性エチレン系ワックス(B’)の密度はエチレンやα−オレフィンの組成および重合時の重合温度、水素濃度によって調節することができる。
(エチレン系ワックス(B)について)
本発明の樹脂組成物が含むエチレン系ワックス(B)は、上述の未変性エチレン系ワックス(B’)の酸変性物(例えば、不飽和カルボン酸誘導体モノマーによる変性物や空気酸化物)である。
エチレン系ワックス(B)が上述の未変性エチレン系ワックス(B’)の空気酸化物である場合、エチレン系ワックス(B)は、原料となる未変性エチレン系ワックス(B’)を溶融状態とし、攪拌しながら酸素または酸素含有ガスと接触させることで得られる。未変性エチレン系ワックス(B’)は、通常130〜200℃、好ましくは140〜170℃に加熱することで、溶融状態となる。なお、本明細書における「酸素または酸素含有ガス」との記載には、純酸素(通常の液体空気分留や水の電解によって得られる酸素であって、他成分を不純物程度含んでいても差し支えない)だけでなく、純酸素と他のガスとの混合ガス、例えば空気やオゾン等も含まれる。
未変性エチレン系ワックス(B’)と酸素または酸素含有ガスとを接触させる方法としては、酸素含有ガスを反応器下部より連続的に供給して、未変性エチレン系ワックス(B’)と接触させる方法であることが好ましい。またこの場合、酸素含有ガスは、エチレン系ワックス(B’)1kgに対して1分間当たり1.0〜8.0NL相当の酸素量となるように供給することが好ましい。
また、エチレン系ワックス(B)は、未変性エチレン系ワックス(B’)の不飽和カルボン酸誘導体モノマーによるグラフト変性物であってもよい。上記グラフト変性物は、従来公知の方法で調製することができる。例えば(1)原料となる未変性エチレン系ワックス(B’)と、(2)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体とを、(3)有機過酸化物などの重合開始剤の存在下で溶融混練する方法であってもよい。また、(1)未変性エチレン系ワックス(B’)と、(2)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体と、を有機溶媒に溶解させ、得られた組成物を(3)有機過酸化物などの重合開始剤の存在下、混練することにより得られる。
エチレン系ワックス(B)調製時の混練方法は特に制限されず、混練装置としては、例えば、オートクレーブ、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いることができる。これらの中でも、オートクレーブ等、バッチ式の装置を使用すると、各成分をより均一に分散・反応させることができる。また、連続式の装置と比べ、バッチ式の装置によれば、組成物の滞留時間を調整しやすい。さらに、滞留時間を長く取れるため、変性率及び変性効率を高めることが比較的容易であり、特に好ましい。
ここで、未変性エチレン系ワックス(B’)を変性するための、不飽和カルボン酸またはその誘導体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−2−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸イソヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−クロロフェニル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−2−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−クロロヘキシル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ヘキシルエチル、メタクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類;フマル酸エチル、フマル酸ブチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ナジック酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水ナジック酸などの無水物等が含まれる。
これらの中でも好ましくは無水マレイン酸である。無水マレイン酸は、原料である未変性エチレン系ワックス(B’)との反応性が比較的高い。さらに、無水マレイン酸自身が重合によって構造変化し難く、安定である。そのため、エチレン系ワックス(B)が無水マレイン酸変性されたエチレン系ンワックスである場合、樹脂組成物を成形する際の高温環境下でも、エチレン系ワックス(B)が安定であり、無機充填材(C)表面に効率よく作用しやすい。その結果、樹脂組成物から得られる成型体の外観が良好となり、耐熱性や加工性、機械強度のバランスが良好になると考えられる。
なお、上述のエチレン系ワックス(B)は市販品であってもよい。
また、エチレン系ワックス(B)は、粉体、タブレット、ブロック等の固形物であってもよく、水、または溶媒中に分散したものや、溶解したものであってもよい。
3.無機充填材(C)
無機充填材(C)としては、特に限定されることなく公知の無機充填材を用いることができるが、たとえば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、ワラストナイト、ゾノトライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、酸化鉄、アルミナ、さらには亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、チタン等の金属粉末、あるいは金属繊維等が挙げられる。さらに、軽石粉、軽石バルン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、チタン酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、アスベスト、モンモリロナイト、ベントナイト、硫化モリブデン等が挙げられる。これらは単独でまたは混合して用いることができる。中でもタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等が好ましく、特にタルクが好ましい。
無機充填材(C)は、粒状、板状、棒状、繊維状、ウィスカー状など、いずれの形状を有していてもよい。また、無機充填材(C)は、ポリマー用フィラーとして市販されているものであってもよい。例えば、粉末状やロービング状、チョップドストランド状、圧縮魂状、ペレット(造粒)状、顆粒状等、いずれの形態で市販されているものであってもよい。無機充填材(C)がタルクである場合、粉末状、圧縮魂状、または顆粒状に加工されているものが好ましい。本発明の樹脂組成物は、無機充填材(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
無機充填材(C)の平均粒径は、好ましくは1〜15μmであり、より好ましくは3〜14μmである。上記平均粒径は、レーザー回析法により測定される値である。
無機充填材(C)は公知の各種製造方法等にて製造される。たとえば、タルクは、その原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、さらにジェットミルなどで粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレータ等で分級調整する等の方法で製造することができる。
また、無機充填材(C)は、未処理であってもよく、少なくとも一部を表面処理したものであってもよい。表面処理剤の例には、有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等が含まれる。また、これらの表面処理剤は、1種単独で使用されていてもよく、2種以上を組み合わせて使用されていてもよい。
4.その他の樹脂
本発明の樹脂組成物は、他の樹脂を、本発明の目的を損なわない範囲でさらに含んでいても良い。他の樹脂の含有量には特に制限されないが、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部程度であることが好ましい。
5.その他の充填材
本発明の樹脂組成物は、無機充填材以外の充填材、すなわち有機物からなる充填材(以下、「有機充填材」とも称する)を含んでいてもよい。有機充填材の例には、リグニン、スターチ、木粉、木質繊維、竹、綿花、セルロース、ナノセルロース系繊維などの天然繊維、及びその含有製品等が含まれる。
樹脂組成物は、これらの有機充填材を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これら有機充填材の含有量は特に限定されないが、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系ワックス(B)の総質量100質量%に対して、合計で70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
6.その他の添加剤
本発明の樹脂組成物は、充填材以外の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、ポリオレフィンの分野において公知の添加剤が挙げられる。添加剤の例には、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、滑剤、発泡剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤等が含まれる。
樹脂組成物は、添加剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これら添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内であれば特に限定されないが、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系ワックス(B)の総質量100質量%に対して、それぞれ0.05〜70質量%程度であることが好ましい。上限は、より好ましくは30質量%である。
7.樹脂組成物の製法
本発明の樹脂組成物は、任意の種々の方法を利用して、ドライブレンド、あるいは溶融ブレンドして製造することができる。具体的な方法としては、例えば、プロピレン系重合体(A)、エチレン系ワックス(B)、無機充填材(C)および他の任意成分を、同時にまたは任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸或いは二軸の押出機などでブレンドする方法とすることができる。あるいは、プロピレン系重合体(A)、エチレン系ワックス(B)、無機充填材(C)および他の任意成分を、一度、任意の溶媒に分散、あるいは溶解させた後に、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜乾燥させることにより、ブレンドしてもよい。
一般的には、ドライブレンドより溶融ブレンドが得られる成型体の外観性、耐衝撃性の観点から好ましい。また特に、溶融ブレンドにて混練を十分に行うことで、得られる成形体の外観性および耐衝撃性が高まる傾向がある。特にエチレン系ワックス(B)として2種類以上の化合物を併用する場合は、2種以上のエチレン系ワックス(B)を予めドライブレンド、あるいは溶融ブレンドすることがハンドリング上好ましい。溶融ブレンドの方法としては、上記方法やバッチ釜を使用する方法などが適宜用いられる。
本発明の樹脂組成物のJIS K7210に準拠して測定したMFR(230℃ 試験荷重2.16kgf)は、0.01〜100g/10minであることが好ましく、より好ましくは0.1〜50g/10minであり、さらに好ましくは0.5〜30g/10min、特に好ましくは1〜20g/10minであり、さらに好ましくは3〜15g/10minである。樹脂組成物のMFRが上記範囲にあると、樹脂組成物の加工性と、成形体の耐熱性および機械強度のバランスが優れる。
B.成形体
本発明の成形体は、上記樹脂組成物を従来公知の方法、例えば射出成形、コーティング、押出成形、圧縮成形等により、所望の形状に成形することにより製造することができる。成形体の形状は、特に限定されず、例えばフィルム状、板状、角柱状、円柱状等である。本発明の成形体は、従来公知のプロピレン系樹脂と同様の用途に用いることができる。具体的には、自動車部品や家電部品等に使用することができる。
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.プロピレン系重合体(A)
プロピレン系重合体(A)として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(株式会社プライムポリマー製ブロックポリプロピレン、商品名:プライムポリプロJ707G(JIS K2170に準拠して、230℃、試験荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート:30g/10分)を用いた。
2.エチレン系ワックス(W1)およびプロピレン系ワックス(W2)
エチレン系ワックスとして、表1に示すW1を使用した。なお、W1は、未変性エチレン系ワックス(エチレン・プロピレン共重合体)の無水マレイン酸変性物である。W2は、プロピレン系ワックス(プロピレン・エチレン共重合体)である。詳しくは、未変性プロピレン系ワックスの無水マレイン酸変性物である。各エチレン系ワックスの組成および物性値を表1に示す。また、組成および各物性値の測定方法は、以下の通りである。
<重合体の組成>
エチレン由来の構成単位、及びプロピレン由来の構成単位の含有割合は、13C−NMRスペクトルの解析により求めた。
<Mn、およびMw/Mn>
数平均分子量Mn、および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。また、数平均分子量Mn、および重量平均分子量Mwは、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成して求めた。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤:o−ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6−HT×2、TSKgel GMH6−HTLカラム×2(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:0.15mg/mL o−ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
<軟化点>
JIS K2207に従って測定した。
<密度>
JIS K7112の密度勾配管法で測定した。
<酸価>
JIS K5902に従って測定した。
Figure 2018024752
[実施例1、比較例1〜4]
プロピレン系重合体(A)、無機充填材(C)、エチレン系ワックス、プロピレン系ワックス、およびステアリン酸カルシウムを、表2に示す配合量で混合した。当該混合物を、東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混繊装置)を用い、設定温度210℃で、樹脂仕込み量50g(装置バッチ容積=60cm)、50rpm、10分間の条件で溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、プロピレン系重合体(A)および無機充填材(C)の合計100質量部に対する、エチレン系ワックスの量、プロピレン系ワックスおよびステアリン酸カルシウムの量を表2に示す。また、当該樹脂組成物のMFRは、以下の方法で測定した。
<MFR>
得られた樹脂組成物のMFRをJIS K7210に従い、230℃、2.16kgfの条件で測定した。
(樹脂組成物の評価)
得られた樹脂組成物から成形体を作製し、引張強度や引張伸び、引張弾性率、アイゾッド衝撃強度、および線膨張係数を確認した。結果を表2に示す。
[試験片の作成]
得られた樹脂組成物を、予熱210℃で5分間、加圧200℃で2分間、冷却20℃で4分間の条件でプレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。
[試験片の評価]
得られた試験片について、以下の評価を行った。
<引張試験(引張強度、引張伸び、引張弾性率)>
ダンベル試験片(全長50mm、つかみ部の幅10mm、平行部の幅5mm、厚さ2mm)を作製し、チャック間距離30mm、試験速度50mm/minの条件で引張強度、引張伸び、引張弾性率を測定した。
<アイゾット衝撃試験>
ASTM D256−10に基づき、室温におけるアイゾット衝撃試験を行った。ノッチは機械加工とし、試験片は63.5mm(長さ)×12.7mm(幅)×2mm(厚さ)、ノッチ高さ10.16mmとした。
<線膨張係数>
線膨張係数の測定に際しては、シリンダー温度200℃、金型温度40℃で、ISO294−1に従いダンベル試験片を成形した。ダンベル試験片の中心部を、射出平板のMD方向(成形時の流れ報告)およびTD方向(MD方向の垂直方向)について、10mm×5mm×厚さ4mmの測定サンプルを切り出した。ISO 11359−2に従い、TMA法(測定範囲−30℃〜100℃)にて、MD方向およびTD方向の線膨張係数を測定した。
Figure 2018024752
図1は、実施例および比較例の樹脂組成物から得られた成形体の線膨張係数とアイゾッド衝撃強度との関係を示すグラフである。図1に示すように、エチレン系ワックス(B)を含まない比較例1〜3では、無機充填材(C)の含有量が多くなるほど、線膨張係数が小さくなり、寸法安定性が高まる。ただし、これと共に衝撃強度が低下する傾向にある。これに対し、実施例1の樹脂組成物の成形体では、線膨張係数が低く、寸法安定性が高いにも関わらず、衝撃強度が高い。つまり、これらのバランスが優れている。一方でプロピレン系ワックス(W2)を含む比較例4では、寸法安定性と衝撃強度のバランスが比較例1〜3に比べると改善が認められるものの、実施例1(つまり、エチレン系ワックス(W1))と同等までは、優れた効果が得られなかった。
本発明の樹脂組成物は、得られる成型体の寸法安定性および衝撃強度のバランスが高い。したがって、家電部品等だけでなく、例えば自動車用途等、高い衝撃強度が要求される用途ににも適用できる。

Claims (5)

  1. JIS K7210に準拠し、230℃ 試験荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分の範囲にあるプロピレン系重合体(A)と、エチレン系ワックス(B)と、無機充填材(C)と、を含有し、
    前記プロピレン系重合体(A)および前記無機充填材(C)の含有量の合計を100質量部としたときに、前記プロピレン系重合体(A)を1〜70質量部、前記無機充填材(C)を30〜99質量部、前記エチレン系ワックス(B)を0.1〜50質量部含み、
    前記エチレン系ワックス(B)が、下記(i)および(ii)を満たす、
    樹脂組成物。
    (i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300〜20000の範囲にある
    (ii)酸価が1〜100mgKOH/gの範囲にある
  2. 前記エチレン系ワックス(B)が、エチレン単独重合体、またはエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィンとの共重合体のうち、少なくとも一方の不飽和カルボン酸誘導体モノマー変性物または空気酸化物である、
    請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記プロピレン系重合体(A)がプロピレン・エチレンブロック共重合体である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記無機充填材(C)がタルクである、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物から得られる、
    成形体。
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