JP2017222850A - プロピレン系樹脂組成物およびその製造方法、ならびに該プロピレン系樹脂組成物を用いた成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】剛性と耐衝撃性と低線膨張係数とのバランスに優れるプロピレン系樹脂組成物を提供する。【解決手段】ASTM D1238Eに準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10分であるプロピレン系重合体(α)55質量部以上75質量部未満と、前記プロピレン系重合体(α)以外の特定の要件を満たすオレフィン系樹脂(β)25質量部超え45質量部以下(ただし、前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である)と、無機フィラー(F)1〜50質量部とを含有し、JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率が600〜4000MPaの範囲内であるプロピレン系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系樹脂組成物およびその製造方法、ならびに該プロピレン系樹脂組成物を用いた成形体に関する。
ポリプロピレン樹脂は、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されており、要求される性能に応じて種々の改質材や添加剤が配合されたプロピレン系樹脂組成物が使用されている。また、循環型社会を形成するための3R(Reduce、Reuse、Recycle)への取り組みとして、最近、各産業分野で薄肉成形品による軽量化が試みられている。そのため、成形品を軽量化または薄肉化しても充分な剛性と耐衝撃性が得られるように、プロピレン系樹脂組成物の改良が進められている。
近年では、主に金属材料の代替品として使用することを目的として、高い機械物性(主に剛性)を維持しつつ、寸法安定性に優れた(低線膨張率を有する)材料の開発ニーズが高まりつつあり、それを達成するための材料開発が行われるようになってきた。しかし、ポリプロピレン成形品は、一般に温度に対する寸法変化(線膨張係数)が大きいので、寒暖の差が大きな環境下で、例えば自動車外板用途に適用する場合は、部品の合わせ目に隙間ができる、あるいは部品組み立て時の建てつけ性が悪化するなどの、いわゆる隙間品質不良問題を抱えていた。そのため、当該分野では、ポリプロピレン成形品の高い意匠性や優れたコスト効果を未だ充分に享受できていない。
ポリプロピレン成形品の寸法安定性を改良するため、従来、ポリプロピレンに、タルクに代表される無機充填剤やエラストマー成分等をブレンドした様々なプロピレン樹脂組成物が提案されている。例えば、メルトフローレートが500g/10分以上の結晶性ポリプロピレンを含んでなるプロピレンブロック共重合体と低分子量ポリオレフィンとを併用した低線膨張率を有する樹脂組成物(特許文献1)、プロピレンブロック共重合体に特定のエチレン・ブテン−1共重合体がブレンドされた樹脂組成物(特許文献2)、プロピレンブロック共重合体の非晶部と結晶部の配合比および粘度を規定した樹脂組成物(特許文献3)、平均粒径が3μm以下であるタルクを含有し、射出成形後の塗装外観に優れる樹脂組成物(特許文献4)、チーグラー触媒を用いて製造したプロピレン系樹脂と特定形状のタルクを含んでなる樹脂組成物(特許文献5)、メルトフローレートの異なる二種類のプロピレンブロック共重合体と特定形状のタルクを用いた樹脂組成物(特許文献6)等である。また、さらなる性能向上を図るため、結晶性のポリエチレンセグメントと非晶性または低結晶性のエチレン・α−オレフィン系共重合体セグメントとが化学的に結合した、オレフィン系ブロックポリマーの改質材としての応用に期待が持たれている。
このようなオレフィン系ブロックポリマーに関する技術として、特許文献7〜9には、特定のメタロセン触媒を用いて生成した末端ビニルポリエチレンをエチレンと共重合させてグラフト型オレフィンポリマーを得る方法が開示されている。さらに特許文献10〜12では、特定の非メタロセン系錯体を触媒として用いることによって高い生成率にて側鎖用の末端ビニルポリエチレンを合成し、それを共重合してグラフト型オレフィンポリマーを得る技術が開示されている。
特開2010−077396号公報 特開平5−051498号公報 特開2000−095919号公報 特開2007−91789号公報 特開2013−159709号公報 特開2014−58614号公報 特表1996−502303号公報 特表2001−527589号公報 特開2009−144148号公報 特開2002−105132号公報 特開2007−39540号公報 特開2007−39541号公報
しかしながら、これらに開示されている触媒技術では、末端ビニル生成効率が低い、あるいは、末端ビニルポリエチレンの共重合効率が十分でないため、このようにして得られるオレフィン系ブロックポリマーをポリプロピレンの改質樹脂として活用しようとしても、低温下における耐衝撃性と寸法安定性を高次にバランスすることは困難である。現実的に自動車材料として使用するには、低温下における耐衝撃性に優れ、かつ寸法安定性がより改善された成形体を、汎用性があり入手容易な原材料から、より単純化された製造方法を用いて経済的に製造できることが望ましい。このような視点から、汎用性があり入手容易なプロピレン系樹脂組成物について、さらなる改良が産業界から強く求められている。
本発明は、剛性と耐衝撃性と低線膨張係数とのバランスに優れるプロピレン系樹脂組成物および該プロピレン系樹脂組成物を用いた成形体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]に関する。
[1]ASTM D1238Eに準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10分であるプロピレン系重合体(α)55質量部以上75質量部未満と、前記プロピレン系重合体(α)以外の下記要件(I)、(IV)および(V)を満たすオレフィン系樹脂(β)25質量部超え45質量部以下(ただし、前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である)と、無機フィラー(F)1〜50質量部とを含有し、JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率が600〜4000MPaの範囲内であるプロピレン系樹脂組成物。
(I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12dl/gの範囲内である。
[2]前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(II)および(III)をさらに満たす[1]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
(II)示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内である。
(III)クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eが60質量%以下である。
[3]前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成する前記エチレン重合体の重量平均分子量が、500〜10000の範囲内である[1]または[2]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[4]前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり、側鎖が0.1〜20の平均頻度で存在する[1]〜[3]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[5]前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(VI)をさらに満たす[1]〜[4]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
(VI)ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重でのオレフィン系樹脂(β)のMFRをM(g/10分)とし、135℃のデカリン中で測定されたオレフィン系樹脂(β)の極限粘度[η]をH(g/dl)とするとき、下記式(Eq−1)で表される値Aが30〜280の範囲内である。
A=M/exp(−3.3H) ・・・(Eq−1)
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記オレフィン系樹脂(β)が、下記(A)〜(C)の成分を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程を含む方法により製造されることを特徴とする、プロピレン系樹脂組成物の製造方法。
(A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
(B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
(C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C−3)前記架橋メタロセン化合物(A)または前記遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
Figure 2017222850
(式(I)中、
、R、R、R、R、R、RおよびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、RおよびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、RおよびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく、ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
は炭素原子またはケイ素原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合は複数のQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2017222850
(式[B]中、
Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
mは1〜4の整数を示す。
は、一般式Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素原子数1〜8の炭化水素基を示す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。
〜Rは炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の整数である場合は、式[B]の構造単位相互間においてR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成していてもよい。)
[7]前記共重合する工程が、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法により共重合する工程である、[6]に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
[8][1]〜[5]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を用いた成形体。
[9]自動車外装部材に用いられる[8]に記載の成形体。
本発明によれば、剛性と耐衝撃性と低線膨張係数とのバランスに優れるプロピレン系樹脂組成物および該プロピレン系樹脂組成物を用いた成形体を提供することができる。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、ASTM D1238Eに準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10分であるプロピレン系重合体(α)55質量部以上75質量部未満と、前記プロピレン系重合体(α)以外の下記要件(I)、(IV)および(V)を満たすオレフィン系樹脂(β)25質量部超え45質量部以下(ただし、前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である)と、無機フィラー(F)1〜50質量部とを含有し、JIS K7117に準拠して測定した曲げ弾性率が600〜4000MPaの範囲内であることを特徴とする。以下、本発明のプロピレン系樹脂組成物に含有されるプロピレン系重合体(α)、オレフィン系樹脂(β)および無機フィラー(F)について説明する。
<プロピレン系重合体(α)>
プロピレン系重合体(α)は、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレンおよびα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種とのランダム共重合体、または、プロピレンと、エチレンおよびα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種とのブロック共重合体のいずれであってもよい。前記α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
プロピレン系重合体(α)のASTM D1238に準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、0.1〜500g/10分であり、好ましくは0.2〜400g/10分、より好ましくは0.3〜300g/10分である。プロピレン系重合体(α)のMFRが0.1g/10分よりも低い場合、プロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系重合体(α)とオレフィン系樹脂(β)との分散性が悪化し、機械強度が低下する場合がある。また、プロピレン系重合体(α)のMFRが500g/10分よりも高い場合、プロピレン系重合体(α)自体の強度が低下し、得られるプロピレン系樹脂組成物の機械的強度が低くなる場合がある。
プロピレン系重合体(α)のペンタド分率(mmmm(%))は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。ペンタド分率が前記範囲内である場合、得られるプロピレン系樹脂組成物の剛性に優れる。
<オレフィン系樹脂(β)>
オレフィン系樹脂(β)は、前記プロピレン系重合体(α)以外のオレフィン系樹脂であり、下記要件(I)、(IV)および(V)を全て満たす。また、オレフィン系樹脂(β)は、下記要件(I)〜(V)を全て満たすことが好ましい。なお、オレフィン系樹脂(β)は、一種のオレフィン系樹脂から構成されていてもよく、二種以上のオレフィン系樹脂から構成されていてもよい。
(I)オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内である。
(III)クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eが60質量%以下である。
(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12dl/gの範囲内である。
以下、これらの要件(I)〜(V)について具体的に説明する。
〔要件(I)〕
オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1](以下、「オレフィン系重合体[R1]」という)を含む。オレフィン系樹脂(β)は、例えば後述する重合方法を用いて製造されることにより、オレフィン系重合体[R1]を必須の構成成分として含有する。該オレフィン系重合体[R1]は、主鎖および側鎖を有するグラフト共重合体である。なお、本発明において「グラフト共重合体」という語は、主鎖に対して側鎖が1本以上結合したT型ポリマーまたは櫛形ポリマーを意味する。ただし、側鎖には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、エチレン以外のモノマー単位を含むことができる。
このように、オレフィン系重合体[R1]は、主鎖構造が非晶性または低結晶性のエチレン系共重合体であるにも関わらず、結晶性側鎖構造を有しているため、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、一般的なエチレン系エラストマー、例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体やエチレン/オクテン共重合体などに比べ、べたつきが小さく、製品ペレットのハンドリング性が良好である。
オレフィン系重合体[R1]の主鎖および側鎖は、下記要件(i)〜(v)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を満たすことが好ましい。
(i)主鎖が、エチレン由来の単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種以上のα−オレフィン由来の単位とのエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、前記エチレン由来の単位を60〜97mol%、前記α−オレフィン由来の単位を3〜40mol%含む。
(ii)主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が20000〜400000の範囲内である。
(iii)側鎖が、実質的にエチレン由来の単位からなる。
(iv)側鎖を構成するエチレン重合体の重量平均分子量が500〜10000の範囲内である。
(v)主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり、側鎖が0.1〜20の平均頻度で存在する。
以下、これらの要件(i)〜(v)について具体的に説明する。
(要件(i))
オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなり、柔軟性や改質材としての低温特性などの特性を担う部位である。そのため、オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、エチレン由来の単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィン由来の単位とからなるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。
ここで、エチレンと共重合する前記炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
前記炭素原子数3〜20のα−オレフィンは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであることが好ましく、炭素原子数3〜8のα−オレフィンであることがより好ましい。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンが好ましく、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンがより好ましい。
オレフィン系重合体[R1]の主鎖中のエチレン由来の単位の全モノマー由来の単位に対するモル比は、好ましくは60〜97mol%、より好ましくは60〜95mol%、さらに好ましくは65〜90mol%、特に好ましくは65〜85mol%である。また、主鎖中のα−オレフィン由来の単位の全モノマー由来の単位に対するモル比(α−オレフィン組成)は、好ましくは3〜40mol%、より好ましくは5〜40mol%、さらに好ましくは10〜35mol%、特に好ましくは15〜35mol%である。
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィン由来の単位のモル比が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)は柔軟性に富み、低温特性に優れた性質となる。そのため、該オレフィン系樹脂(β)を含む本発明のプロピレン系樹脂組成物は低温耐衝撃性に優れる。一方、α−オレフィン由来の単位が3mol%を下回ると、得られるオレフィン系樹脂(β)が柔軟性や低温特性に劣る樹脂となるため、該樹脂を含むプロピレン系樹脂組成物は低温耐衝撃性に劣る傾向がある。また、α−オレフィン由来の単位のモル比が40mol%を上回ると、後述する側鎖を形成するマクロモノマーを共重合するうえで不利に働くため、後述するグラフトポリマーによる効果が発揮されず、耐衝撃性、剛性の物性バランスに劣るプロピレン系樹脂組成物となる傾向がある。なお、主鎖中のエチレンおよびα−オレフィン由来の単位のモル比は、主鎖を製造する工程で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度の割合を制御することにより調整できる。
主鎖に含まれるα−オレフィン由来の単位のモル比(mol%)、すなわち主鎖中のα−オレフィン組成は、以下の方法(1)または(2)により算出または定義することができる。
(1)オレフィン系樹脂(β)の製造過程において副生するエチレン・α−オレフィン共重合体のみからなる成分のα−オレフィン組成を、主鎖のα−オレフィン由来の単位と定義する。副生するエチレン・α−オレフィン共重合体は、オレフィン系樹脂(β)をオルトジクロロベンゼン中に装入したときの、20℃以下の温度での可溶成分に相当するため、当該可溶成分中のα−オレフィン組成を、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を用いた公知の方法により算出することで求めることができる。
(2)オレフィン系樹脂(β)の製造条件に照らし合理的な条件で、主鎖部位のみとなる重合体を別途合成し、得られたエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン組成を分析することにより、間接的にオレフィン系重合体[R1]の主鎖のα−オレフィン組成と定義する。合理的な条件とは、重合系中のエチレンおよびα−オレフィンの濃度、エチレンと水素の分子存在比など、原理的にオレフィン系重合体[R1]の主鎖部位と同等の重合体が生成する条件である。特にオレフィン系樹脂(β)を製造する方法として、予め側鎖に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)を合成し、該マクロモノマーとエチレンとα−オレフィンとを共重合して製造する方法を採用する場合は、マクロモノマーを添加しないこと以外は同一の条件とした重合を別途実施し、得られたエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン組成を分析することにより、間接的にオレフィン系重合体[R1]の主鎖のα−オレフィン組成と定義する。
(要件(ii))
オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、20000〜400000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは30000〜300000、さらに好ましくは50000〜200000の範囲内である。
主鎖の重量平均分子量が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)を含む本発明のプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性、靭性のバランスをより良好に発揮する。一方、主鎖の重量平均分子量が20000を下回ると、耐衝撃性や靭性が低下する場合がある。また、主鎖の重量平均分子量が400000を上回ると、プロピレン系樹脂への分散不良がおこり、所望の物性バランスを得ることが困難になる傾向がある。主鎖の重量平均分子量は、後述する製造工程において、重合系中のエチレン濃度を制御することにより調整できる。エチレン濃度の制御方法としては、エチレン分圧調整や重合温度の調整が挙げられる。また、主鎖の重量平均分子量は、重合系中に水素を供給することによっても調整可能である。
なお、主鎖の重量平均分子量は、上述した「要件(i)」におけるα−オレフィン由来の単位のモル比(mol%)を算出または定義する方法に従ってエチレン・α−オレフィン共重合体を得て、当該共重合体の重量平均分子量を常法にて測定することにより求めることができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリエチレン換算の重量平均分子量から、主鎖の重量平均分子量を求めることができる。
(要件(iii))
オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、実質的にエチレン由来の単位からなるエチレン重合体であり、結晶性のエチレン重合体鎖からなる。
実質的にエチレン由来の単位からなるエチレン重合体とは、エチレン由来の単位のモル比が、該エチレン重合体に含まれる全モノマー由来の単位に対して、好ましくは95.0〜100mol%、より好ましくは98.0〜100mol%、さらに好ましくは99.5〜100mol%である重合体を意味する。すなわち、その役割と特徴を損なわない範囲でエチレン以外のα−オレフィンを含んでいてもよい。
オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、オレフィン系樹脂(β)において物理架橋点として作用し、プロピレン系樹脂組成物において、表面硬度向上や高剛性化の役割を担う。側鎖が結晶性のエチレン重合体鎖であることは、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)の示差走査熱量分析(DSC)において60〜130℃の範囲内に融解ピークが観測されること、すなわち60〜130℃の範囲内に融解温度(Tm)を有することにより確認できる。
(要件(iv))
オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するエチレン重合体の重量平均分子量は、500〜10000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは500〜5000、さらに好ましくは500〜3000の範囲内である。
側鎖の重量平均分子量が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、高剛性かつ高い表面硬度でありながら、高耐衝撃性を発現することができる。側鎖の重量平均分子量が500を下回ると、側鎖成分の物理架橋点としての役割が低下し、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、表面硬度および剛性が低下する傾向がある。一方、側鎖の重量平均分子量が10000を上回ると、主鎖に対する側鎖本数の低下により、プロピレン系樹脂組成物の剛性や表面硬度、靱性などの機械物性が低下するか、あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体部位の相対量が低下するので、耐衝撃性が低下する場合がある。
オレフィン系重合体[R1]は、エチレン重合体鎖であるマクロモノマーと、エチレンおよびα−オレフィンを共重合することにより得ることができる。すなわち、マクロモノマーの重量平均分子量が、オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量に相当する。したがって、側鎖の重量平均分子量は、オレフィン系樹脂(β)のGPC測定により低分子量側の可溶成分として分離されるエチレン系重合体部位(マクロモノマー)の分子量を解析するか、または予め合成されたエチレン系重合体部位(マクロモノマー)のGPC測定を行うことにより算出できる。側鎖の重量平均分子量の調整方法としては、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒として用いる遷移金属化合物の種類を変更する方法や、重合条件を調整する方法が挙げられる。
(要件(v))
オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、主鎖に含まれる(主鎖重合体分子鎖中の)炭素原子1000個あたり0.1〜20の平均頻度(グラフト本数)で存在することが好ましく、より好ましくは0.1〜10の平均頻度で存在し、さらに好ましくは0.2〜5の平均頻度で存在する。
側鎖が前記範囲内の平均頻度で主鎖に導入されていることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、表面硬度が高く、かつ剛性を保持しながら高耐衝撃性を発現することができる。一方で、側鎖が0.1を下回る平均頻度で主鎖に導入されている場合、側鎖による物理架橋点の効果が少なくなるので、該樹脂を含んだプロピレン系樹脂組成物は、剛性が低下する場合がある。また、側鎖が20を上回る平均頻度で主鎖に導入されている場合、エチレン重合体部位からなる結晶成分の相対量が大きくなるため、該樹脂を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性が低下する場合がある。
前記側鎖の平均頻度は、例えば、[a]後述する同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を用いる方法、または[b]GPCによる方法を用いて算出することができる。以下、方法[a]、[b]について説明する。
[a]オレフィン系重合体[R1]は、主鎖がエチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィン由来の単位からなり、同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)による測定において、37.8〜38.1ppmの範囲内に、前記α−オレフィンに由来するメチン炭素とは別に、側鎖と主鎖の接合部分のメチン炭素に帰属できるシグナルが観測されることが好ましい。
該シグナルが観測される場合、次式にて側鎖平均頻度を求めることができる。
[側鎖平均頻度]=1000×[IPE−methine]/{[Iall−C]×(100−[R2’]−[M])/100}
[IPE−methine]:側鎖と主鎖の接合部分のメチン炭素の積分値
[Iall−C]:全炭素積分値、
[R2’]:[R1]製造時に生成する[R1]以外の重合体[R2]のオレフィン系樹脂(β)に占める質量比(質量%)
[M]:[R1]製造時に添加あるいは生成するマクロモノマーのオレフィン系樹脂(β)に占める質量比(質量%)
[b]前述の通り、オレフィン系樹脂(β)をGPCにより分析した場合に得られる低分子量側のピークは、共重合反応時に共重合せずに残存したエチレン系重合体部位(マクロモノマー)に由来する。したがって、その面積比からオレフィン系樹脂(β)中に含まれる残存したマクロモノマーの質量比を求めることができる。オレフィン系重合体[R1]製造時に添加あるいは生成するマクロモノマーの質量組成が明らかな場合、その質量組成と残存したマクロモノマーの質量比の差から側鎖平均頻度を求めることができる。具体的には、次式より求めることができる。
[側鎖平均頻度]=([M]−[M’])/(100−[M’])×(1/[Mn−M])×14/{1−([M]−[M’])/(100−[M’])}×(1/1000)
[M]:[R1]製造時に添加あるいは生成するマクロモノマーの[R1]製造時に得られる樹脂全量[R’]に占める質量比(質量%)
[M’]:GPCから求められる残存したマクロモノマーの[R1]製造時に得られる樹脂全量[R’]に占める質量比(質量%)
[Mn−M]:マクロモノマーの数平均分子量
なお、前記方法[a]、[b]により求められる平均頻度は、副生するエチレン・α−オレフィン共重合体が存在する場合、該重合体を側鎖本数0本としてカウントしたときの値である。
側鎖の本数は、重合系中のマクロモノマーのモル濃度を制御することにより調整可能である。例えば、一定の重合条件下で、側鎖分子量を一定とした場合、マクロモノマーの仕込み質量あるいは生成質量を多くすると、マクロモノマーのモル濃度が高くなり、生成するグラフトポリマーの側鎖本数が多くなる。また、マクロモノマーの仕込み質量あるいは生成質量を一定とした場合、側鎖分子量を小さくすることで、マクロモノマーのモル濃度が高くなり、生成するグラフトポリマーの側鎖本数を多くすることができる。また、後述する架橋メタロセン化合物(A)の種類を選択することによっても、側鎖の本数を調整することができ、例えば高温で高共重合性を示し、高分子量の重合体を生成する遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒を選択することで、側鎖本数を多くすることができる。
オレフィン系樹脂(β)に含まれるオレフィン系重合体[R1]が、前記(i)〜(v)からなる群より選択される少なくとも1つの要件を満たすことにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物が剛性、耐衝撃性、低線膨張係数の全ての要件を高度な水準で満たすという特徴をより顕著に発現させることができる。オレフィン系重合体[R1]は、さらに下記(vi)の要件を満たすことがより好ましい。
(要件(vi))
オレフィン系重合体[R1]の側鎖のメチル分岐数は、側鎖に含まれる炭素1000個あたり0.1未満である。
側鎖のメチル分岐数が前記範囲内であることにより、側鎖のエチレン重合体部位の結晶性がより高まり、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、表面硬度や剛性が高くなる。なお、メチル分岐数は、前記「要件(iii)」において記載した方法により、GPCにおける低分子量側の可溶成分として分離された側鎖に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)、または予め合成された側鎖に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)について、同位体炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を用いた公知の方法、例えば特開2006−233207号公報に記載されている方法によって測定することができる。前記要件を満たす側鎖エチレン系重合体部位は、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒として、特定の種類の遷移金属化合物を用いることにより得ることができる。
〔要件(II)〕
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に吸熱ピークすなわち融解ピーク(Tm)を示すことが好ましく、該融解ピーク面積から算出される融解熱量ΔHは3〜100J/gの範囲内であることが好ましい。融解ピーク(Tm)は、より好ましくは80〜125℃、さらに好ましくは90〜120℃の範囲内に存在する。また、前記融解熱量ΔHは、より好ましくは4〜80J/g、さらに好ましくは5〜70J/g、特に好ましくは8〜60J/gの範囲内である。
TmおよびΔHは、DSCにより一度昇温工程を経て試料が融解した後、30℃までの冷却工程により結晶化させ、2度目の昇温工程(昇温速度10℃/分)で現れる吸熱ピークを解析したものである。
前記範囲内に観測される融解温度(Tm)および融解熱量ΔHは、主にオレフィン系樹脂(β)を構成するオレフィン系重合体[R1]の側鎖エチレン重合体に由来しており、融解温度(Tm)および融解熱量ΔHが前記範囲内であることにより、本発明のプロピレン系樹脂組成物の剛性、耐熱性、靭性のバランスが良好となる。一方、融解温度(Tm)または融解熱量ΔHが前記範囲を下回る場合、プロピレン系樹脂組成物の剛性、耐熱性、靭性が低下する。また、融解熱量ΔHが前記範囲を上回る場合、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が低下するため好ましくない。
融解温度(Tm)を前記範囲内に調整する方法として、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒に用いる遷移金属化合物の種類を適切に選択する方法が挙げられる。また、融解熱量ΔHを前記範囲内に調整する方法として、後述する製造工程においてビニル末端マクロモノマーの存在比を制御する方法が挙げられる。具体的には、ビニル末端マクロモノマーのフィード量を制御する、あるいは後述する架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)のフィード比を制御する方法である。
〔要件(III)〕
オレフィン系樹脂(β)は、クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合E(E値)が60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。
通常、市販のエチレン・α−オレフィン共重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体は、プロピレン、1−ブテンまたは1−オクテン等のα−オレフィンの組成が10〜50mol%程度となるよう調整されたポリマーであり、非晶性あるいは低結晶性を示し、室温以下の温度でも特定の有機溶剤に対して良好に溶解する。例えば、市販のエチレン/ブテン共重合体樹脂であるタフマー(登録商標)A−5055S(商品名)は、20℃以下のオルトジクロロベンゼンに対して大半が可溶であり、E値は通常93質量%以上である。
一方、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を構成するオレフィン系重合体[R1]は、主鎖が上述のようなエチレン・α−オレフィン共重合体でありながら、側鎖が結晶性エチレン重合体であるため、室温以下のオルトジクロロベンゼンに対して難溶となる。そのため、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)はE値が小さいという特徴を有する。オレフィン系樹脂(β)が小さいE値を有することは、オレフィン系重合体[R1]の主鎖構造と側鎖構造とが化学的に結合していることの間接的な証拠であり、さらに、オレフィン系樹脂(β)にオレフィン系重合体[R1]が相当量含まれていることを示している。
本発明のプロピレン系樹脂組成物において、オレフィン系樹脂(β)は、一般に改質材として用いられている市販のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂と同様に、ポリプロピレン樹脂中に分散し、耐衝撃性を付与する役割を担う。ここで、市販のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂を用いた場合、添加量に応じて耐衝撃性が向上する反面、ポリプロピレン本来の剛性や機械強度が低下する。一方、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を用いた場合は、エチレン・α−オレフィン共重合体が形成するドメインの中で、オレフィン系重合体[R1]の側鎖であるポリエチレン部位が物理架橋点を形成し、該ドメイン自身に高い剛性、硬度、機械強度が生まれる。その結果、本発明のプロピレン系樹脂組成物は表面硬度に優れ、剛性と耐衝撃性とのバランスが著しく向上したと推察される。したがって、オレフィン系樹脂(β)にオレフィン系重合体[R1]が相当量含まれていることは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の良好な物性バランスを発現するうえで重要な要素となる。
既に説明したように、オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体に結晶性のエチレン重合体部位が化学的に結合している成分を相当量含んでおり、そのため上述した要件(II)と要件(III)を同時に満たすことができる。このようなオレフィン系樹脂(β)を得るには、エチレンとα−オレフィンおよび末端ビニルエチレン重合体とを共重合させる工程で用いる触媒の選択が重要であり、例えば、後述する架橋メタロセン化合物(A)を用いることにより達成できる。
〔要件(IV)〕
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が、−80〜−30℃の範囲内であり、好ましくは−80〜−40℃、より好ましくは−80〜−50℃の範囲内である。
ガラス転移温度(Tg)は、オレフィン系重合体[R1]の主鎖のエチレン・α−オレフィン共重合体に由来する。ガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性を良好に発現する。前記範囲内のガラス転移温度(Tg)は、コモノマーであるα−オレフィンの種類や組成を制御することにより得ることができる。
オレフィン系樹脂(β)に含有されるオレフィン系共重合体[R1]は、ガラス転移温度(Tg)が低い主鎖と、結晶性ポリエチレンを含む側鎖とを有する。そのため、オレフィン系樹脂(β)をプロピレン系重合体(α)に添加した場合、低Tgを有する主鎖により低温衝撃性が発現されると同時に、物理架橋点として作用する側鎖ポリエチレン成分により剛性や硬度が良好に発現される。その結果、プロピレン系樹脂組成物は、剛性を維持しつつ、低温衝撃性と低線膨張係数とのバランスが著しく向上するものと推察される。
〔要件(V)〕
オレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12dl/gの範囲内であり、好ましくは0.2〜10dl/g、より好ましくは0.5〜5dl/gである。極限粘度が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性に加え、良好な剛性や機械強度を示し、さらに良好な成形加工性も両立する。
オレフィン系樹脂(β)は、前記要件(I)〜(V)に加え、下記要件(VI)をさらに満たすことが好ましい。
〔要件(VI)〕
ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)をM(g/10分)とし、135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]をH(g/dl)とするとき、下記式(Eq−1)で表される値A(A値)が30〜280の範囲内である。値Aは、より好ましくは60〜250の範囲、さらに好ましくは70〜200の範囲内である。
A=M/exp(−3.3H) ・・・(Eq−1)
オレフィン系樹脂(β)が前記範囲内のA値を有するということは、マクロモノマー導入率が高いことを示しており、要件(VI)を満たすオレフィン系樹脂(β)は、プロピレン系樹脂の改質用に応用した場合であっても、残存するマクロモノマーや非グラフト型ポリマーが原因となる剛性等の物性低下を引き起こすことがないため好ましい。
〔オレフィン系樹脂(β)のその他物性〕
(弾性率)
オレフィン系樹脂(β)は、弾性率が2〜120MPaの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜100MPa、さらに好ましくは5〜90MPaである。弾性率が前記範囲内であることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、剛性と耐衝撃性とのバランスにより優れる。オレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系重合体[R1]の主鎖構造がエチレン・α−オレフィン共重合体から構成されるため柔軟性に富む。すなわち、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性を良好に発現する。なお、前記弾性率は、ASTM D638に準拠した引張弾性率であることが好ましい。
(相分離構造)
オレフィン系樹脂(β)は、透過型電子顕微鏡で観測される結晶性成分を示す相がマイクロメートルオーダーの非連続相であることが好ましい。なお、そのような相構造を有しているかどうかの観察は、例えば以下のようにして実施する。
まず、プロピレン系樹脂組成物を、170℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間余熱し、10MPa加圧下、1分間で成形した後、20℃で10MPaの加圧下で3分間冷却して、所定の厚みのシートを作製することにより試験片を得る。前記のプレスシートである試験片を0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO)によって染色する。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで、得られた小片を約100nmの膜厚の超薄切片とする。この超薄切片にカーボンを蒸着させて透過型電子顕微鏡(加速電圧100kV)で観察する。
この観察方法によると、オレフィン系重合体[R1]の側鎖エチレン重合体成分は、該成分が形成するラメラ構造の結晶間非晶部位が選択的にルテニウム酸に染色にされるので、より高いコントラストとして観察される。オレフィン系樹脂(β)は、このようにして観察されるオレフィン系重合体[R1]の側鎖エチレン重合体からなる結晶性成分を示す相がマイクロメートルオーダーの非連続相であることが好ましい。前述の通りオレフィン系樹脂(β)は、非晶性または低結晶性の主鎖と結晶性側鎖が共有結合で繋がったオレフィン系重合体[R1]を主成分とするので、非晶成分と結晶成分との相溶効果が大きく、そのため前記のようなミクロ相分離構造が形成されると考えられる。
オレフィン系樹脂(β)において観測される前記非連続相は、側鎖エチレン重合体からなる物理架橋点であり、オレフィン系樹脂(β)を用いた本発明のプロピレン系樹脂組成物の中に形成されるエチレン・α−オレフィン共重合体ドメインにおいても該物理架橋点が形成されているものと考えられる。そのため、前述の通り本発明のプロピレン系樹脂組成物は剛性と耐衝撃性とのバランスに優れていると考えられる。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体とエチレン重合体とのポリマーブレンドを用いた場合、前記ミクロ相分離構造は形成されず、粗大な結晶相が観測される。そのため、該ポリマーブレンドを用いたプロピレン系樹脂組成物においては、オレフィン共重合体ドメインにおいて物理架橋点は形成されず、良好な物性バランスを示すプロピレン系樹脂組成物を得ることはできない。
前述の通り、オレフィン系樹脂(β)をGPCにより分析した場合に得られる低分子量側のピークは、共重合反応時に共重合せずに残存したエチレン系重合体部位(マクロモノマー)に由来し、全ピーク面積に対するその低分子量側のピークの面積比から、オレフィン系樹脂(β)中に含まれる残存したマクロモノマーの組成比(質量比)を求めることができる。残存したマクロモノマーの質量比は、0〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜25質量%、さらに好ましくは0〜20質量%、特に好ましくは2〜15質量%である。残存したマクロモノマーの質量比が前記範囲内であることは、主鎖に組込まれなかったエチレン重合体単独の成分が十分に少ないことを意味し、そのことによりオレフィン系樹脂(β)は効果的に改質性能を発現できる。一方、残存したマクロモノマーの質量比が30質量%を上回ると、耐衝撃性に対する改質効果が劣るだけでなく、剛性の著しい低下も招く場合がある。
〔オレフィン系樹脂(β)の製造方法〕
オレフィン系樹脂(β)の製造は、エチレンを重合して前記マクロモノマーを製造する工程と、エチレンとα−オレフィンと該マクロモノマーとを共重合する工程を含み、これらの工程を順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。本発明のオレフィン系樹脂(β)の製造方法としては、例えば、下記(A)〜(C)の成分を組み合わせて用いられるオレフィン重合用触媒の存在下、特定のオレフィンを重合する方法を挙げることができる。以下、(A)〜(C)の各成分について説明した後、具体的な製造方法、製造条件等について説明する。
(架橋メタロセン化合物(A))
本発明で用いられる架橋メタロセン化合物(A)は、下記式(I)で表され、後述する化合物(C)の存在下でオレフィン重合用触媒として機能する。
Figure 2017222850
(式(I)中、
、R、R、R、R、R、RおよびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、RおよびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、RおよびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく、ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
は炭素原子またはケイ素原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合は複数のQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンと、さらに、後述する遷移金属化合物(B)および化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒によって合成されるビニル末端マクロモノマーとを共重合し、オレフィン系重合体[R1]の主鎖を成す部位を生成する役割を果たす。
すなわち、架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンとα−オレフィンとビニル末端マクロモノマーとを共重合することができ、特にα−オレフィンおよびビニル末端マクロモノマーに対して、高い共重合性を示す特徴を有する。さらに架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレン重合体鎖であるマクロモノマーが溶解するような比較的高温条件下においても十分に高いオレフィン重合活性を示し、実用上十分に高い分子量の重合体を生成する特徴を有する。
架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒が、前記特徴を有していることにより、オレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系重合体[R1]を多く含有し、前述の要件(I)、(IV)および(V)、好ましくは(I)〜(V)を満たすことができる。これにより、本発明のプロピレン系樹脂組成物は表面硬度が高く、耐衝撃性と剛性と低線膨張係数との物性バランスの優れたものとなる。以下、本発明で用いられる架橋メタロセン化合物(A)の化学構造上の特徴について説明する。
架橋メタロセン化合物(A)は、構造上、次の特徴[m1]〜[m3]を備える。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下、「置換フルオレニル基」ともいう)である。
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下、「架橋部」ともいう)によって結合されている。
[m3]メタロセン化合物を構成する遷移金属(M)が、周期表第4族の原子、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
以下、架橋メタロセン化合物(A)が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他の特徴について、順次説明する。
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましい。R、R、RおよびRのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
例えば、R、R、RおよびRは全て水素原子であるか、または、R、R、RおよびRのいずれか一つ以上が、炭化水素基(以下、「炭化水素基(f1)」として参照することがある)もしくはケイ素含有基(以下、「ケイ素含有基(f2)」として参照することがある)であることができる。前記ケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基としては、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などを挙げることができる。
炭化水素基(f1)としては、炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましく、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの直鎖状または分岐状の炭化水素基、;例えばシクロアルキル基などの環状飽和炭化水素基;例えばアリール基などの環状不飽和炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基(f1)は、前記例示した基のうち、互いに隣接する炭素原子に結合した任意の二つの水素原子が同時に置換されて脂環または芳香環を形成している基も含む。
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などのアリール基およびシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの環状不飽和炭化水素基ならびにこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。
ケイ素含有基(f2)としては、炭素原子数1〜20のケイ素含有基が好ましく、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられる。具体的には、例えばトリメチルシリル基などのアルキルシリル基、例えばトリフェニルシリル基などのアリールシリル基等が挙げられる。
ケイ素含有基(f2)以外のヘテロ原子含有基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
、R、RおよびRのうちの二つ以上が水素原子以外の置換基である場合は、該置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。また、R、R、RおよびRのうちの隣接する二つの基同士は、互いに結合して脂環または芳香環を形成していてもよい。
(置換フルオレニル基)
式(I)中、R、R、RおよびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましい。RおよびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましい。RおよびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましい。RおよびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
重合活性の観点からは、RおよびR11がいずれも水素原子でないことが好ましく、R、R、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことがより好ましく、RおよびR11が炭化水素基およびケイ素含有基からなる群より選択される同一の基であり、かつRとR10が炭化水素基およびケイ素含有基からなる群より選択される同一の基であることがさらに好ましい。また、RおよびRが互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
〜R12における炭化水素基、ケイ素含有基およびヘテロ原子含有基の例示ならびに好ましい基としては、それぞれ、前記置換シクロペンタジエニル基における炭化水素基(f1)、ケイ素含有基(f2)およびヘテロ原子含有基に関して例示したものと同様の基を挙げることができる。
およびR、ならびにR10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
(架橋部)
式(I)中、R13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示し、Yは炭素原子またはケイ素原子を示す。オレフィン重合体の製造方法において重要な点は、架橋部の架橋原子Yが、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基であるR13およびR14を有することである。製造上の容易性から、R13およびR14は互いに同一であることが好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびこれらが有する芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基が挙げられる。該置換基としては、前記置換シクロペンタジエニル基に関して例示した炭化水素基(f1)およびケイ素含有基(f2)や、ハロゲン原子およびハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの炭素原子数6〜14、好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;シクロヘキシルフェニル基などのシクロアルキル基置換アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基;(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのハロゲン化アルキル基置換アリール基が挙げられる。置換基の位置は、メタ位および/またはパラ位が好ましい。これらの中でも、置換基がメタ位および/またはパラ位に位置する置換フェニル基がより好ましい。
(架橋メタロセン化合物(A)のその他の特徴)
前記式(I)中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合は複数のQは互いに同一でも異なっていてもよい。
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子挙げられる。炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける前記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
炭素原子数4〜10の中性の共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
前記式(I)中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。これらの中でも、ハフニウム原子がマクロモノマーを高効率で共重合し、また高分子量に制御できる点でも好ましい。特に、高い生産性を確保するため高圧高温の条件下で重合が実施される工業プロセスにおいては、前記のような特性からMがハフニウム原子であることが好ましい。これは、高圧条件下においてはエチレンおよびα−オレフィンの存在比がマクロモノマーに対し高くなり、高温条件下では一般に分子量の低下が起こるため、前記のようにマクロモノマーを効率よく共重合し、重合体を高い分子量に制御できる性能を備えた触媒を用いることが重要となるからである。
このようなMがハフニウム原子であることによる特性は、(1)ジルコニウム原子やチタニウム原子と比べて、ハフニウム原子のルイス酸性度が小さく、反応性が低いこと、および(2)ジルコニウム原子やチタニウム原子と比べて、ハフニウム原子−炭素原子間の結合エネルギーが大きいことが、分子量決定因子の一つである生成ポリマー鎖と結合している重合活性種のβ−水素脱離反応を含めた連鎖移動反応を抑制していることに起因していると考えられる。
下記式[II]〜[VI]に、架橋メタロセン化合物(A)を構成する置換フルオレニル基の具体例を示す。なお、後述する架橋メタロセン化合物(A)の例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは、下記式[II]で示される構造の化合物に由来する基を示し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは、下記式[III]で示される構造の化合物に由来する基を示し、ジベンゾフルオレニルとは、下記式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を示し、1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは、下記式[V]で示される構造の化合物に由来する基を示し、1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは、下記式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を示す。
Figure 2017222850
(好ましい架橋メタロセン化合物(A)の例示)
架橋メタロセン化合物(A)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド。
また、架橋メタロセン化合物(A)としては、前記例示化合物中の「ジルコニウム」を「ハフニウム」または「チタニウム」に変えた化合物、「ジクロリド」を「ジフルオライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」、「メチルエチル」または「ジベンジル」などに変えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに変えた化合物を挙げることもできる。
前記架橋メタロセン化合物(A)は、公知の方法によって製造可能である。公知の方法としては、例えば、国際公開第01/27124号、国際公開第04/029062号に記載の方法が挙げられる。また、前記架橋メタロセン化合物(A)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(遷移金属化合物(B))
本発明で用いられる遷移金属化合物(B)は、下記式[B]で表される構造を有する化合物であり、後述する化合物(C)の存在下でオレフィン重合用触媒として機能する。
Figure 2017222850
(式[B]中、
Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
mは1〜4の整数を示す。
は、一般式Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素原子数1〜8の炭化水素基を示す。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。
〜Rは炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の整数である場合は、式[B]の構造単位相互間においてR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成していてもよい。)
遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレン重合体であるビニル末端マクロモノマーを生成し、オレフィン系重合体[R1]の側鎖を成す部位を生成する役割を果たす。すなわち、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、主にエチレンを重合し、高選択率で片末端ビニル基となるエチレン重合体を生成する特徴を有する。さらに遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、比較的低分子量のエチレン重合体(重量平均分子量が200〜10000の範囲)を生成する特徴を有している。遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒が、前記特徴を有していることにより、オレフィン系重合体[R1]に側鎖が効率よく導入されて、本発明のプロピレン系樹脂組成物は表面硬度が高く、耐衝撃性と剛性と低線膨張係数との物性バランスの優れたものになる。
さらに遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンがα−オレフィンやビニル末端マクロモノマーと共存する条件下においてもエチレンを高選択的に重合する特徴を有しており、該特徴により、オレフィン系重合体[R1]の側鎖はエチレン重合体としての機械的特性、熱的特性を良好に保持し、本発明のプロピレン系樹脂組成物は表面硬度が高く、耐衝撃性と剛性と低線膨張係数との物性バランスの優れたものになる。また前記特徴は、後述する製造方法のうち重合方法[b]を採用するうえでも好ましい特徴である。また、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、重合体鎖内部にオレフィン構造、いわゆる内部オレフィンを実質的に生成しない性能を有するため、耐光性や耐着色性などの観点から好ましい。以下、本発明で用いられる遷移金属化合物(B)の化学構造上の特徴について説明する。
前記式[B]中、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
前記式[B]において、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどである。好ましくは周期表第4族の金属原子、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。
mは1〜4の整数を示し、好ましくは1〜2であり、より好ましくは2である。
は、一般式Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素原子数1〜8の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの非環式炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環式炭化水素基が挙げられる。好ましくは、直鎖炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。前記炭化水素基を選択することで、比較的低分子量、例えば重量平均分子量が200〜10000の範囲内であるのエチレン重合体を生成することができ、前述の通り、物性バランスに優れる本発明のプロピレン系樹脂組成物を得ることが容易になる。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。R〜Rは、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに結合して、脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環等の環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
前記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、前記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、例えば、ベンジル基、クミル基などのアリール置換アルキル基などが挙げられる。
また、前記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基等の置換基をさらに有していてもよい。
これらの中でも、前記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状および分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;該アリール基に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基およびアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、前記例示したものと同様のものが挙げられる。
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基がより好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
次に前述したR〜Rとしての前記炭化水素基が有していてもよい置換基について、より具体的に説明する。アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基などが挙げられる。エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。アミド基として具体的には、アセトアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などが挙げられる。イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N−メチル−p−トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の整数である場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよい。またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭化水素基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素原子をハロゲン原子で置換した基であってもよい。これらの中でも、炭素原子数が1〜20である炭化水素基が好ましい。
酸素含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イオウ含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、フェニルスルホネート基、ベンジルスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、トリメチルベンゼンスルホネート基、トリイソブチルベンゼンスルホネート基、p−クロルベンゼンスルホネート基、ペンタフルオロベンゼンスルホネート基などのスルホネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p−トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
窒素含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ホウ素含有基として具体的には、BR(Rは水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。アルミニウム含有基として具体的には、AlR(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ハロゲン含有基として具体的には、PF、BFなどのフッ素含有基、ClO、SbClなどの塩素含有基、IOなどのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヘテロ環式化合物残基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられる。
ケイ素含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。スズ含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
〜Rは炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基である。該炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状および分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
前記炭化水素基は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、そのような炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、前記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、例えば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
前記芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。前記芳香族炭化水素基は、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、他の炭化水素基で置換されていてもよい。
〜Rの炭化水素基のうち少なくとも一つが芳香族炭化水素基であることによって、遷移金属化合物(B)を含む重合用触媒は、高温の重合条件下でも良好な活性を与えるため、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)の製造に適しており、本発明のプロピレン系樹脂組成物は良好な性能を発揮する。
mが2以上の整数である場合は、式[B]の構造単位相互間においてR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上の整数である場合は、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
以上のような、前記式[B]で表される遷移金属化合物(B)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(化合物(C))
本発明で用いられる化合物(C)は、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C−3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される。このような、(C−1)〜(C−3)の化合物については、国際公開第2015/147186号に記載された化合物(C−1)〜(C−3)をそのまま制限なく使用できる。後述する実施例においては、トリイソブチルアルミニウムとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いているが、本願発明はこれら化合物に何ら限定されるものではない。
以下、化合物(A)、(B)、(C)を含むオレフィン重合用触媒存在下でオレフィンを重合し、オレフィン系樹脂(β)を製造する方法について説明する。
重合は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合などの液相重合法や気相重合法のいずれにおいても実施できるが、後述する重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]は、液相重合法により実施される。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。また、重合するオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
オレフィン系樹脂(β)の製造に当たり、化合物(A)、(B)、(C)を含むオレフィン重合用触媒を用いる場合、架橋メタロセン化合物(A)は、反応容積1リットル当たり、通常10−8〜1モル、好ましくは10−7〜0.5モルになる量で用いられ、遷移金属化合物(B)は、反応容積1リットル当たり、通常10−12〜10−2モル、好ましくは10−10〜10−3モルになる量で用いられる。また、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)は、遷移金属化合物(B)と架橋メタロセン化合物(A)とのモル比(B/A)が、通常0.00001〜100、好ましくは0.00005〜10、より好ましくは0.0001〜5となる量で用いられる。
有機金属化合物(C−1)は、有機金属化合物(C−1)と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−1/M)が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となる量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(C−2)は、有機アルミニウムオキシ化合物(C−2)中のアルミニウム原子の、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)に対するモル比(C−2/M)が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となる量で用いられる。
イオン化イオン性化合物(C−3)は、イオン化イオン性化合物(C−3)の、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)に対するモル比(C−3/M)が、通常1〜10、好ましくは1〜5となる量で用いられる。
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+300℃、好ましくは0〜170℃の範囲内である。重合圧力は、通常常圧〜9.8MPa(100kg/cm)、好ましくは常圧〜4.9MPa(50kg/cm)であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する化合物(A)、(B)および(C)のいずれかの化合物の選択、あるいは組み合わせの選択により調節することもできる。
重合に用いられるオレフィンとしては、エチレンおよび上述した炭素原子数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらのオレフィンは、エチレンを必須のモノマーとして、その他のモノマーを1種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、オレフィン系樹脂(β)は、次の重合方法[a]または重合方法[b]のいずれかの方法によって製造することができる。
・重合方法[a]
遷移金属化合物(B)と化合物(C)の存在下でエチレンを重合してビニル末端マクロモノマーを得る前工程[a−1]と、次いで、前工程[a−1]の反応生成物存在下、架橋メタロセン化合物(A)と化合物(C)存在下で、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する後工程[a−2]を含む方法。
・重合方法[b]
架橋メタロセン化合物(A)、遷移金属化合物(B)、化合物(C)の存在下で、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する方法。
以下、重合方法[a]および重合方法[b]について、好ましい形態を説明する。
・重合方法[a]
(前工程[a−1])
遷移金属化合物(B)および化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒により、主にエチレンを重合し、実質的にエチレン重合体であるビニル末端マクロモノマーを得る工程であり、重合方法は前述の範囲で特に制限はない。液相重合の場合、得られる反応液をそのまま後工程に導入してもよいし、ビニル末端マクロモノマーを取り出した後、該ビニル末端マクロモノマーを塊のままあるいは紛体で後工程に導入してもよいし、スラリーとして、または再溶解して後工程に導入してもよい。
(後工程[a−2])
架橋メタロセン化合物(A)および化合物(C)の存在下で、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンと、前工程[a−1]で得たビニル末端マクロモノマーとを共重合する後工程を含む方法である。重合方法は前述の範囲で特に制限は無いが、非晶または低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体部位を生成させる工程であることから、液相重合法が好ましく、特に各モノマー濃度を制御して所望の構造を有するオレフィン系樹脂(β)を得るうえでは、溶液重合法が好ましい。
重合反応は、前工程[a−1]と後工程[a−2]を共に回分式で行ってもよく、前工程[a−1]を回分式で行い、取り出したビニル末端マクロモノマーを導入することで後工程[a−2]を連続式で行ってもよい。さらに前工程[a−1]を連続式で行い、生成物をそのまま導入することで後工程[a−2]も連続式で行うこともできる。また、前工程[a−1]を連続式で行い、後工程[a−2]を回分式で行うこともできる。
・重合方法[b]
架橋メタロセン化合物(A)、遷移金属化合物(B)、化合物(C)の存在下で、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを単段で重合する方法であり、一つの重合器で行うことができる。遷移金属化合物(B)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒は、重合系中にエチレン以外のα−オレフィンが存在していても、エチレンを高選択的に重合する傾向がある。さらに、当該触媒は比較的分子量の小さな重合体を製造する傾向にあり、得られる重合体はビニル末端を有する。したがって、遷移金属化合物(B)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒は、実質的にエチレン重合体であるビニル末端マクロモノマーを生成することができる。
一方、架橋メタロセン化合物(A)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒は、分子量の大きな重合体を製造することができ、エチレン、α−オレフィン、さらに、遷移金属化合物(B)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒を用いて得られたビニル末端マクロモノマーを共重合することができる。このようにして、一つの重合反応条件下で、オレフィン系樹脂(β)中にオレフィン系重合体[R1]を含ませることができる。
オレフィン系樹脂(β)の製造方法において、重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程は、80〜300℃の温度範囲において溶液重合法により実施されることが好ましい。
なお、「溶液重合法」とは、前記不活性炭化水素を重合溶媒とし、重合体が溶解した状態で重合を行う方法の総称である。重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程で用いる重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、これらを1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、工業的観点からはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素が好ましく、さらにオレフィン系樹脂(β)との分離、精製の観点から、ヘキサンがより好ましい。
また、重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程の重合温度は、80〜200℃の範囲が好ましく、90〜200℃の範囲がより好ましい。このような温度が好ましいのは、前記重合溶媒として工業的に好ましく用いられるヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素中で、ビニル末端マクロモノマーが良好に溶解する温度が90℃以上であるためである。重合温度はより高温であることがポリエチレン側鎖の導入効率を向上させるうえで好ましい。さらに生産性向上の観点からも、重合温度はより高温であることが好ましい。
重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程の重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧、より好ましくは常圧〜3MPaゲージ圧の条件下である。さらに生産性向上の観点からは、0.5〜3MPaゲージ圧であることが好ましい。
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程の反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]における、ポリマー濃度は、定常運転時は、通常5〜50質量%であり、好ましくは、10〜40質量%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)負荷及び生産性の観点から、ポリマー濃度は15〜35質量%であることが好ましい。
得られるオレフィン重合体の分子量は、範囲内において、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(C)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成するオレフィン重合体1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当である。
<無機フィラー(F)>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、前記プロピレン系重合体(α)およびオレフィン系樹脂(β)に加えて、無機フィラー(F)を含むことを特徴とする。本発明に係る無機フィラー(F)としては、特に限定されることなく公知の無機充填剤を用いることができるが、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、さらには亜鉛、銅、鉄、アルミニウム等の金属粉末、あるいは金属繊維等が挙げられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。これらの中でもタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等が好ましく、特にタルクが好ましい。タルクとしては、平均粒径が1〜15μm、好ましくは1〜6μmのものが好適に使用できる。
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(α)とオレフィン系樹脂(β)と無機フィラー(F)とを含有する。本発明のプロピレン系樹脂組成物において、プロピレン系重合体(α)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部として、プロピレン系重合体(α)は55質量部以上75質量部未満、好ましくは55質量部以上73質量部以下、より好ましくは57質量部以上73質量部以下であり、オレフィン系樹脂(β)は25質量部超え45質量部以下、好ましくは27質量部以上45質量部以下、より好ましくは27質量部以上43質量部以下である。プロピレン系重合体(α)とオレフィン系樹脂(β)が前記範囲内の含有量であると、プロピレン系樹脂組成物の剛性を低下させることなく、低温耐衝撃性と硬度とのバランスが良好になり、各種成形品に好適に使用することができる。
また、無機フィラー(F)の含有量は、プロピレン系重合体(α)とオレフィン系樹脂(β)の合計100質量部に対して、1〜50質量部であり、好ましくは3〜45質量部、より好ましくは5〜40質量部である。無機フィラー(F)の含有量が1質量部未満である場合は、線膨張係数を十分に低くできない場合がある。また、無機フィラー(F)の含有量が50質量部を超える場合は、プロピレン系樹脂組成物の比重が大きくなり、軽量化が期待されている自動車外板に適用できない場合がある。
さらに、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記プロピレン系重合体(α)、前記オレフィン系樹脂(β)および前記無機フィラー(F)の必須成分以外の他の樹脂、他のゴム、有機充填剤などを配合することができ、また耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。本発明に係るプロピレン系樹脂組成物においては、前記他の樹脂、他のゴム、添加剤等の添加量は本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物の、JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率(FM)は、600〜4000MPaの範囲内であり、好ましくは700〜3500MPa、より好ましくは800〜3000MPaの範囲内である。曲げ弾性率が600MPaに満たない低剛性のプロピレン系樹脂組成物を用いた成形体は、自動車外板用途に適さない場合がある。また、曲げ弾性率が4000MPaを超える場合、汎用の成形機では成形できない、あるいは成形体が脆くなる場合がある。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物の調製方法は、溶融法、溶液法等、特に限定されないが、実用的には溶融混練方法が好ましい。溶融混練方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練方法が適用できる。例えば、粉状または粒状の各成分を、必要に応じて前記添加物等の任意成分と共に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、一軸または多軸混練押出機、混練ロール、バッチ混練機、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練することにより調製することができる。
各成分の溶融混練温度(例えば、押出機の場合はシリンダー温度)は、通常170〜250℃、好ましくは180〜230℃である。また、各成分の混練順序および方法は、特に限定されるものではない。
<成形体>
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、剛性を保持したまま耐衝撃性の向上を図ることができ、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れることから、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができる。該成形体は、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途の包材など公知の多様な用途に適用することができる。また、本発明に係るプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ線膨張係数が低く、軽量であることから、各種自動車外装部材や家電製品として好ましく用いられる。
<自動車外装部材>
本発明の自動車外装部材は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形またはプレス成形して得られる成形体である。本発明の自動車外装部材(及びその他の用途の成形体)は、流動方向(MD)及びその直交方向(TD)の線膨張係数が共に、2.0×10−5/℃以上、5.0×10−5/℃以下であることが好ましい。なお、線膨張係数は、測定範囲−30〜80℃で、TMA法により求めた値である。
また、本発明の自動車外装部材は、JIS K7111に準拠して測定される−30℃のシャルピー衝撃値が、好ましくは10kJ/m以上、より好ましくは15kJ/m以上、さらに好ましくは20kJ/m以上である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、極寒環境から灼熱環境までの広範な気温範囲で低い線膨張係数を示し、極寒下でこれまで弱いとされてきたプロピレン樹脂組成物の耐衝撃性(衝撃性)も同時に発現する。したがって、自動車内外装用部材、特に自動車外装部材などの温度変化の大きな環境で用いる成形の用途に好適である。自動車外装部材の具体例としては、バンパー、サイドモール、バックドア、フェンダー、バックパネル等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、以下の実施例において、オレフィン系樹脂(β)、プロピレン系重合体(α)およびプロピレン系樹脂組成物の物性は、下記の方法によって測定した。
<オレフィン系樹脂(β)の物性測定方法>
(1)融解温度(Tm)および融解熱量ΔH
融解温度(Tm)および融解熱量ΔHは、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
示差走査熱量計(商品名:RDC220、セイコーインスツル(株)製)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その融解ピークが現れる温度を融解温度(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは、前記融解ピークの面積を算出して求めた。なお、融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出して求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
示差走査熱量計(商品名:RDC220、セイコーインスツル(株)製)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で−100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(3)オルトジクロロベンゼン可溶成分の割合E
20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合E(質量%)は、次の条件でCFC測定を行い求めた。
装置:クロス分別クロマトグラフ CFC2(Polymer ChAR)
検出器(内蔵):赤外分光光度計 IR(Polymer ChAR)
検出波長:3.42μm(2,920cm−1);固定
試料濃度:120mg/30mL
注入量:0.5mL
降温時間:1.0℃/分
溶出区分:4.0℃間隔(−20〜140℃)
GPCカラム:Shodex HT−806M×3本(商品名、昭和電工(株)製)
GPCカラム温度:140℃
GPCカラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー(株)製)
分子量較正法:汎用較正法(ポリスチレン換算)
移動相:オルトジクロロベンゼン(BHT添加)
流量:1.0mL/分
(4)弾性率(引張試験)
弾性率は、オレフィン系樹脂(β)を200℃で5分間プレス成形して得られた試験片を、ASTM D638に準拠して測定することにより算出した。
(5)13C−NMR
ポリマーのα−オレフィンの組成分析、マクロモノマーのメチル分岐数およびグラフト構造を確認するため、次の条件で13C−NMR測定を実施した。
装置:AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置(商品名、ブルカーバイオスピン(株)製)
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:512回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d(4/1 v/v)
試料濃度:ca.60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)
ケミカルシフト基準:ベンゼン−d(128.0ppm)
(6)GPC分析
ポリマーの重量平均分子量の分析および残存マクロモノマー量の見積もりを行うために、次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Alliance GPC 2000型(商品名、Waters社製)
カラム:TSKgel GMH6−HT 2本、TSKgel GMH6−HTL 2本(商品名、いずれも東ソー(株)製、内径7.5mm、長さ30cm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)
検出器:示差屈折計
流量:1.0mL/分
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.5mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー(株)製)
(7)極限粘度([η])
極限粘度は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。
(8)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度は190℃とした。
(9)オレフィン系重合体[R1]の組成比
オレフィン系重合体[R1]の組成比(質量%)は、GPC分析から算出される残存したマクロモノマー組成比(質量%)と、20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合E(質量%)とから概算される側鎖を持たないエチレン・α−オレフィン共重合体の組成比(質量%)を、全量100質量%から減じることによって概算した。
<プロピレン系重合体(α)の物性測定方法>
極限粘度は、前記(7)と同様の方法で測定した。
(11)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度は230℃とした。
(12)ペンタド分率(mmmm)
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率(mmmm(%))は、プロピレン系重合体(α)において、Macromolecules、8,687(1975)に基づいて帰属した13C−NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C−NMRスペクトルは、EX−400(商品名、日本電子製)の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、オルトジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
(13)23℃におけるn−デカン可溶成分(Dsol)量およびn−デカン不溶成分(Dinsol)量
ガラス製の測定容器にプロピレン系重合体(α)約3g、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間かけて150℃に昇温してプロピレン系重合体(α)を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得た。この操作の後、デカン可溶成分(Dsol)量および不溶成分(Dinsol)量を下式によって決定した。なお、前記プロピレン系重合体(α)は10−4gの単位まで測定し、この質量を下式においてb(g)と表した。また、前記デカン可溶成分の一部の質量を10−4gの単位まで測定し、この質量を下式においてa(g)と表した。
23℃におけるn−デカン可溶成分(Dsol)量(質量%)=100×(500×a)/(100×b)
23℃におけるn−デカン不溶成分(Dinsol)量(質量%)=100−100×(500×a)/(100×b)
(14)プロピレンおよびエチレンに由来する骨格の含量
前記Dsol中のエチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(質量比:2/1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を行った。プロピレン、エチレンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
プロピレン(mol%)=(PP+1/2EP)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)]
エチレン(mol%)=(1/2EP+EE)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)]
<プロピレン系樹脂組成物1〜4およびC1〜C5の物性測定方法>
メルトフローレート(MFR)は、前記(11)と同様の方法で測定した。
(15)比重
比重は、ISO 1183に準拠し、水中置換法で密度を測定した。
(16)曲げ弾性率
曲げ弾性率FM(MPa)は、JIS K7171に従って、下記の条件で測定した。
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm
(17)シャルピー衝撃値
シャルピー衝撃値(kJ/m)は、JIS K7111に従って、下記の条件で測定した。
温度:−30℃、23℃
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である。
(18)熱変形温度(HDT)
熱変形温度は、JIS K7191−1に準拠して測定した。すなわち、試験片の両端を加熱浴槽中で支え、下で中央の荷重棒によって試験片に所定の曲げ応力(0.45MPaの一定荷重)を加えつつ、加熱媒体の温度を2℃/分の速度で上昇させ、試験片のたわみが所定の量に達したときの加熱媒体の温度をもって、熱変形温度とした。
(19)引張特性(引張試験)
引張特性(引張強度および引張弾性率)は、JIS K7202に従って下記の条件で測定した。
試験片:JIS K7162BA ダンベル、5mm(幅)×2mm(厚さ)×75mm(長さ)
引張速度:20mm/分
(20)線膨張係数
線膨張係数(10−5/℃)は、ASTM D 696に準拠し、TMA法(測定範囲:−30〜80℃)にて評価した。具体的には、長さ240mm、幅80mm、厚み3mmの金型キャビティーを用いて、樹脂温度210℃、金型温度40℃の条件で射出成形して平板を得て、これを10×5×3mm厚の形状に切り出し、試験片として用いた。
<プロピレン系樹脂組成物5、6、C6およびC7の物性測定方法>
メルトフローレート(MFR)は、前記(11)と同様の方法で測定した。
(21)曲げ弾性率
曲げ弾性率(MPa)は、JIS K7171に従って、下記の条件で測定した。
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm
(22)シャルピー衝撃値
シャルピー衝撃値(kJ/m)は、ISO179に従って、下記の条件で測定した。
温度:−30℃
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
ノッチは機械加工である。
(23)ロックウェル硬度
ロックウェル硬度(Rスケール)は、ISO2039−2に従って、下記の条件で測定した。
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
(24)熱変形温度(HDT)
熱変形温度は、ISO75−1、2に準拠して測定した。
(24)引張特性(引張試験)
引張特性(引張強度および引張弾性率)は、ISO0527−2に従って下記の条件で測定した。
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
引張速度:1mm/分
曲げスパン:64mm
(25)線膨張係数
線膨張係数(10−5/℃)は、JIS Z7197に準拠し、TMA法(測定範囲:−30〜80℃)にて評価した。具体的には、後述する条件により射出成形にて、120mm(幅)×3mm(厚さ)×140mm(長さ)の鏡面仕上げの角板を得て、この中央部付近からMD方向およびTD方向にそれぞれ約10mm×5mm×暑さ3mm厚の形状の試験片を切り出した。切り出した試験片に対して120℃、2時間のアニール操作を実施した後、MD方向に切り出した試験片及びTD方向に切り出した試験片のそれぞれについて線膨張係数を測定し、両者の平均値を求めた。
<オレフィン系樹脂(β)の製造>
以下、オレフィン系樹脂(β)の製造例について説明する。なお、評価に必要なサンプル量を確保するため、製造工程を複数回実施していることがある。
[製造例1]オレフィン系樹脂(β−1)の製造
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数:250rpm、内温:110℃、重合圧力:1.0MPa・G)に、脱水生成したヘキサンを23L/時間、触媒として、下記化合物(1)を0.0130mmol/時間、下記化合物(2)を0.00136mmol/時間、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.057mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを2.0mmol/時間の速度で連続的に供給し、気相重合器内のガス組成が、1−ブテン/エチレンとして0.32(モル比)、水素/エチレンとして0.042(モル比)になるように、1−ブテン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、生成する重合液を重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量28Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られた重合溶液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、メタノールを80mL/時間で添加し、重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、オレフィン系樹脂(β−1)を5.6kg/時間の生産速度で得た。なお、触媒として使用した下記化合物(1)および(2)は、公知の方法によって合成した。得られたオレフィン系樹脂(β−1)の分析結果を表1に示す。
Figure 2017222850
Figure 2017222850
[製造例2]オレフィン系樹脂(β−2)の製造
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数:250rpm、内温:110℃、重合圧力:1.0MPa・G)に、脱水生成したヘキサンを23L/時間、触媒として前記化合物(1)を0.01mmol/時間、前記化合物(2)を0.00076mmol/時間、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.079mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを2mmol/時間の速度で連続的に供給し、気相重合器内のガス組成が、1−ブテン/エチレンとして0.33(モル比)、水素/エチレンとして0.056(モル比)になるように1−ブテン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、生成する重合液を重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量28Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られた重合溶液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、メタノールを80mL/時間で添加し、重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、オレフィン系樹脂(β−2)を8.5kg/時間の生産速度で得た。得られたオレフィン系樹脂(β−2)の分析結果を表1に示す。
[製造例3]オレフィン系樹脂(β’−1)の製造
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数:250rpm、内温:110℃、重合圧力:1.0MPa・G)に、脱水生成したヘキサンを23L/時間、触媒として前記化合物(1)を0.01mmol/時間、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.04mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを2.4mmol/時間の速度で連続的に供給し、気相重合器内のガス組成が、1−ブテン/エチレンとして0.23(モル比)、水素/エチレンとして0.08(モル比)になるように1−ブテン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、生成する重合液を重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量28Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られた重合溶液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、メタノールを80mL/時間で添加し、重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、オレフィン系樹脂(β’−1)を4.0kg/時間の生産速度で得た。得られたオレフィン系樹脂(β’−1)の分析結果を表1に示す。
Figure 2017222850
<プロピレン系重合体(α)の製造>
[製造例4]プロピレン系重合体(α−1)の製造
(1)固体状チタン触媒成分(A)の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを、130℃で2時間加熱反応させて均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間かけて滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間、同温度にて攪拌保持した。
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
ここで、この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに、前記固体触媒成分の上澄み液10mlを注射器で採取して装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを装入し30分間攪拌した。この水溶液を、ろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃リン酸水溶液1mlと、チタンの発色試薬として3%過酸化水素水5mlを加え、さらにイオン交換水で100mlにメスアップした後、このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測し、この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
以上のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン:2.3質量%、塩素:61質量%、マグネシウム:19質量%、DIBP:12.5質量%であった。
(2)前重合触媒の製造
固体状チタン触媒成分(A)100g、トリエチルアルミニウム131mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン37.3mlおよびヘプタン14.3Lを、内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに装入し、内温15〜20℃に保ちプロピレンを1000g装入し、120分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1.0g/Lとなるように、ヘプタンにより調整し、触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付き循環式管状重合器に、プロピレンを43kg/時間、水素を256NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.49g/時間、トリエチルアルミニウムを4.5ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシランを1.8ml/時間、連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.57MPa/Gであった。
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.8mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力3.36MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。なお、該パウダーの一部を共重合前にサンプリングして、MFRとmmmmの測定を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)として0.20(モル比)、水素/エチレンとして0.0063(モル比)となるようにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.40MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(α−1)は、80℃で真空乾燥を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(α−1)の物性を表2に示す。なお表中、ホモPP部とは、n−デカン不溶成分(Dinsol)である。
Figure 2017222850
[製造例5]プロピレン系重合体(α−2)の製造
(1)固体状チタン触媒成分(A)の調製
製造例3と同様の方法で固体状チタン触媒成分(A)を得た。
(2)前重合触媒の製造
固体状チタン触媒成分(A)100g、トリエチルアルミニウム39.3mLおよびヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに装入し、内温15〜20℃に保ちプロピレンを600g装入し、60分間攪拌しながら反応させて、触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付き循環式管状重合器に、プロピレンを43kg/時間、水素を177NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.58g/時間、トリエチルアルミニウムを3.1ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを3.3ml/時間、連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.53MPa/Gであった。
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.2mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.28MPa/Gで重合を行った。得られたプロピレン系単独重合体(α−2)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系単独重合体(α−2)の物性を表3に示す。
[製造例6]プロピレン系重合体(α−3)の製造
(1)固体状チタン触媒成分(B)の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420mlおよび2−エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
前記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分(B)は、チタンを2質量%、塩素を57質量%、マグネシウムを21質量%およびDIBPを20質量%の量で含有していた。
(2)前重合触媒の製造
内容量14Lの攪拌機付き反応槽にあらかじめヘプタン2Lを装入し、トリエチルアルミニウム62.0mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン17.6mL、前記(1)で調製した固体状チタン触媒成分(B)64gを装入し、ヘプタン量が9.1Lとなるようにヘプタンを追加した。内温10℃以下に保ち、10分攪拌した後、プロピレンを640gを約50分かけて装入した後、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を3回行った。得られた前重合触媒を内容量200L攪拌機付き反応槽に移液した後、固体状チタン触媒成分(B)濃度で0.8g/Lとなるよう、ヘプタンにより調製を行った。この前重合触媒(触媒スラリー)は固体状チタン触媒成分(B)1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を186NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体状チタン触媒成分(B)として0.33g/時間、トリエチルアルミニウム2.2ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン0.88ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は69℃であり、圧力は3.4MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が6.0mol%になるように供給した。重合温度69℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系重合体(α−3)を得た。プロピレン系重合体(α−3)は、11kg/hで得られた。得られたプロピレン系重合体(α−3)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系重合体(α−3)の物性を表2に示す。
Figure 2017222850
[実施例1]
製造例1で調製したオレフィン系樹脂(β−1)30質量部、製造例4で調製したプロピレン系ブロック共重合体(α−1)30質量部、製造例5で調製したプロピレン系単独重合体(α−2)30質量部、無機フィラー(F)として、タルク(商品名:JM209、浅田製粉社製、平均粒子径:5μm)10質量部、耐熱安定剤IRGANOX(登録商標)1010(商品名、BASF製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS(登録商標)168(商品名、BASF製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物1を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物1を用いて、射出成形機にて下記の条件で試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物1の物性を表4に示す。
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:KZW−15(商品名、(株)テクノベル社製)
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒
スクリュー回転数:80rpm
保圧:60MPa
背圧:3MPa
[実施例2]〜[実施例4]および[比較例1]〜[比較例5]
オレフィン系樹脂(β−1)またはオレフィン系樹脂(β−1’)、プロピレン系重合体(α−1)、プロピレン系重合体(α−2)およびタルク(JM209)の組成を、表4に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にペレット状のプロピレン系樹脂組成物2〜4(実施例2〜4)およびプロピレン系樹脂組成物C1〜C5(比較例1〜5)を調製し、射出成形機にて試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物2〜4およびプロピレン系樹脂組成物C1〜C5の物性を表4に示す。
[実施例5]
製造例2で調製したオレフィン系樹脂(β−2)25.5質量部、製造例4で調製したプロピレン系ブロック共重合体(α−1)30質量部、製造例5で調製したプロピレン系単独重合体(α−2)16質量部、製造例6で調製したプロピレン系重合体(α−3)10.5質量部、無機フィラー(F)として、タルク(商品名:JM209、浅田製粉社製、平均粒子径:5μm)35質量部、耐熱安定剤IRGANOX(登録商標)1010(商品名、BASF製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS(登録商標)168(商品名、BASF製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物5を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物5を用いて、射出成形機にて下記の条件で試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物5の物性を表4に示す。
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:NR−2−36(商品名、ナカタニ機械(株)製)
混練温度:190℃
スクリュー回転数:200rpm
フィーダー回転数:500rpm
<ISO試験片/射出成形条件>
射出成形機:NEX110(日精樹脂工業(株)製)
シリンダー温度:195℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:42秒
冷却時間:10秒
スクリュー回転数:100rpm
保圧:50MPa
背圧:5MPa
<角板(鏡面)/射出成形条件>
射出成形機:J100EII−P((株)日本製鋼所製)
シリンダー温度:220℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:18秒
冷却時間:25秒
スクリュー回転数:65rpm
保圧:8MPa(1段目)、25〜29MPa(2段目)
背圧:5MPa
[実施例6]、[比較例6]および[比較例7]
オレフィン系樹脂(β−2)またはオレフィン系樹脂(β−1’)、プロピレン系重合体(α−1)、プロピレン系重合体(α−2)、プロピレン系重合体(α−2)およびタルク(JM209)の組成を、表4に示すとおりに変更した以外は、実施例5と同様にペレット状のプロピレン系樹脂組成物6(実施例6)およびプロピレン系樹脂組成物C6〜C7(比較例6〜7)を調製し、射出成形機にて試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物6およびプロピレン系樹脂組成物C6〜C7の物性を表4に示す。
Figure 2017222850
本発明に規定する要件を満たさないオレフィン系樹脂(β’−1)と、プロピレン系重合体(α−1)および(α−2)又はプロピレン系重合体(α−1)、(α−2)および(α―3)とを含むプロピレン系樹脂組成物から得られる比較例1〜比較例4、比較例6および7に係る成形体の低温衝撃性(−30℃シャルピー衝撃値)と線膨張係数のバランスは、オレフィン系樹脂(β’−1)に替えて、要件(I)、(IV)および(V)を全て満たすオレフィン系樹脂(β−1)を用いることにより改善されることが分かる(実施例1〜実施例6)。比較例5の成形体は、オレフィン系樹脂(β−1)を含むため低温衝撃性と線膨張係数のバランスには優れるものの、曲げ弾性率が低く、自動車外装部材用の成形体としては不適当である。

Claims (9)

  1. ASTM D1238Eに準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10分であるプロピレン系重合体(α)55質量部以上75質量部未満と、前記プロピレン系重合体(α)以外の下記要件(I)、(IV)および(V)を満たすオレフィン系樹脂(β)25質量部超え45質量部以下(ただし、前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である)と、無機フィラー(F)1〜50質量部とを含有し、JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率が600〜4000MPaの範囲内であるプロピレン系樹脂組成物。
    (I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
    (IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
    (V)135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12dl/gの範囲内である。
  2. 前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(II)および(III)をさらに満たす請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
    (II)示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内である。
    (III)クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eが60質量%以下である。
  3. 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成する前記エチレン重合体の重量平均分子量が、500〜10000の範囲内である請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり、側鎖が0.1〜20の平均頻度で存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. 前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(VI)をさらに満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
    (VI)ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重でのオレフィン系樹脂(β)のMFRをM(g/10分)とし、135℃のデカリン中で測定されたオレフィン系樹脂(β)の極限粘度[η]をH(g/dl)とするとき、下記式(Eq−1)で表される値Aが30〜280の範囲内である。
    A=M/exp(−3.3H) ・・・(Eq−1)
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、
    前記オレフィン系樹脂(β)が、下記(A)〜(C)の成分を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程を含む方法により製造されることを特徴とする、プロピレン系樹脂組成物の製造方法。
    (A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
    (B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
    (C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(C−3)前記架橋メタロセン化合物(A)または前記遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
    Figure 2017222850
    (式(I)中、
    、R、R、R、R、R、RおよびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
    およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、RおよびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群より選択される同一の原子または同一の基であり、RおよびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく、ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
    13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
    Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
    は炭素原子またはケイ素原子を示す。
    Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合は複数のQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
    Figure 2017222850
    (式[B]中、
    Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
    mは1〜4の整数を示す。
    は、一般式Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素原子数1〜8の炭化水素基を示す。
    〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。
    〜Rは炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であり、また、mが2以上の整数である場合は、式[B]の構造単位相互間においてR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
    nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合は、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成していてもよい。)
  7. 前記共重合する工程が、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法により共重合する工程である、請求項6に記載のプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物を用いた成形体。
  9. 自動車外装部材に用いられる請求項8に記載の成形体。
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