現在、コンデンサ及び抵抗等の電子部品を内蔵した部品内蔵基板(エンベデッド基板とも言われる)の普及が始まりつつあり、部品内蔵基板内に内蔵された電子部品に対する検査方法の確立が早急に求められている。部品内蔵基板自体が新しいものであるため、その検査方法についても従来技術と呼べるような既存の技術が存在しないのが実状である。そこで、ここでは、本発明が想起される前に本願発明者らによって提案されていた検査方法とその問題点を記載する。
先に提案された検査方法について、図1に模式的に示された部品内蔵基板1に対して検査を行う場合を例に説明する。この部品内蔵基板1は、複数層(ここでは、3層)の基板1a−1cを積層して構成され、その内部にインピーダンスを有する複数の電子部品(ここでは、3個のコンデンサC1−C3及び2個の抵抗R1,R2)が内蔵されている。また、部品内蔵基板1の上側及び下側表面には、10個の検査点D1−D10が設けられており、検査の際は各検査点D1−D10に検査装置のプローブP1−P10が一括して接触される。ここで、検査点D1−D10及びプローブP1−P10を総称する場合は、それぞれ符号「D」、「P」を用いる。また、内蔵された電子部品であるコンデンサC1−C3及び抵抗R1,R2を総称する場合は、電子部品ということとする。なお、ここでは、コンデンサC1−C3及び抵抗R1,R2を1個ずつ独立して検査対象部として設定した場合について説明する。
図2は、部品内蔵基板1に設けられた電子部品、配線パターン及び検査点の電気的な接続関係を模式的に示す配線図である。図2に示すように、部品内蔵基板1には独立した3個のネットN1−N3が存在しており、コンデンサC1,C2、抵抗1及び検査点D1,D2,D4−D7がネットN1に属し、抵抗R2及び検査点D8,D9がネットN2に属し、検査点D3,D10がネットN3に属している。
このような部品内蔵基板1に内蔵された電子部品(コンデンサC1−C3、抵抗R1,R2)に対して、先に提案された検査方法では、例えばコンデンサC1、コンデンサC2、コンデンサC3、抵抗R1、抵抗R2の順番で検査を行う。コンデンサC1に対する検査ステップでは、検査点D1,D4及びそれらに接触されたプローブP1,P4を介してコンデンサC1に検査電力(例えば、交流電流、直流変動電流、交流電圧又は直流変動電圧)を供給し、検査点D1,D4及びそれらに接触されたプローブP1,P4を介してコンデンサC1の電気特性を検出し、その検出結果に基づいてコンデンサC1の良否判定等を行う。コンデンサC1の電気特性の検出として、例えば検査点D1,D4間の電位差及び検査点D1,D4間に流れる電流を検出し、それらの検出値に基づいてコンデンサC1のインピーダンスを検出すること等が行われる。このコンデンサC1に対する検査の間、検査点D1,D4以外の検査点D(すなわち、査点点D2,D3,D5−D10)に接触されるプローブP(すなわち、プローブP2,P3,P5−P10)は電気的に開放された状態とされる。
それに続く、コンデンサC2の検査では、検査点D1,D5及びそれらに接触されるプローブP1,P5を介してコンデンサC2に検査電力が供給されるとともに、検査点D1,D5及びそれらに接触されるプローブP1,P5を介してコンデンサC2の電気特性(例えば、インピーダンス)が検出され、その検出結果に基づいてコンデンサC2の良否判定が行われる。このとき、検査点D1,D5以外の検査点Dに接触されるプローブPは電気的に開放状態とされる。
以下同様に、コンデンサC3の検査では、コンデンサC3に対する検査電力の供給及び電気特性の検出が検査点D1,D7及びそれらに接触されるプローブP1,P7を介して行われる。このとき、検査点D1,D7以外の検査点Dに接触されるプローブPは電気的に開放状態とされる。また、抵抗R1の検査では、抵抗R1に対する検査電力の供給及び電気特性の検出が検査点D2,D6及びそれらに接触されるプローブP2,P6を介して行われる。このとき、検査点D2,D6以外の検査点Dに接触されるプローブPは電気的に開放状態とされる。また、抵抗R2の検査では、抵抗R2に対する検査電力の供給及び電気特性の検出が検査点D8,D9及びそれらに接触されるプローブP8,P9を介して行われる。このとき、検査点D8,D9以外の検査点Dに接触されるプローブPは電気的に開放状態とされる。
しかし、このような先に提案された検査方法には、次の2つの問題点があることが分かった。
(a) 検査時には部品内蔵基板1の全ての検査点DにプローブPが一括して接触され、プローブP及び検査点Dを介して検査治具内の配線が部品内蔵基板1内の回路に接続されることとなる。しかし、上記の先に提案された検査方法では、部品内蔵基板1の検査点DにプローブPを接触させた際に生じる部品内蔵基板1内の回路に対する影響(例えば、検査治具内の配線間の寄生容量等の影響)が考慮されておらず、部品内蔵基板1に内蔵された電子部品の電気特性を検出する際に、検査治具内の配線間の静電容量等の影響を除去できないという問題がある。
(b) 部品内蔵基板1内の配線間に発生する静電容量の影響についても考慮されておらず、部品内蔵基板1に内蔵された電子部品の電気特性を検出する際に、部品内蔵基板1内の配線間の静電容量等の影響を除去できないという問題がある。
なお、部品内蔵基板の検査方法に関する先行技術文献としては、例えば特許文献1がある。
図1ないし図10を参照して、本発明の一実施形態に係る部品内蔵基板(以下、単に「基板」という)の検査方法(以下、単に「検査方法」という)について説明する。なお、図1及び図2に示す基板1の構成のうち、先の[背景技術]で既に説明した部分については説明を省略する。
本実施形態に係る検査方法では、基板1内に設けられた電子部品又は電子部品を含む回路が検査対象部として設定され、その検査対象部に対して検査が行われる。但し、図1に示す基板1内の回路構成の場合、基板1内に内蔵された各電子部品(コンデンサC1−C2及び抵抗R1,R2)を1個ずつ独立して検査を行うことが可能であるため、各電子部品が単体で検査対象部として設定されている。なお、複数の電子部品を一まとめした回路全体を検査対象とした例については、図10に基づいて後述する。
まず図3を参照して、本実施形態に係る検査方法に用いられる基板検査装置2の構成について説明する。この基板検査装置2は、図3に示すように、プローブP1−P10を有する図示しない検査治具と、接続切替部3と、電源部4と、電位差検出部5と、電流検出部6と、制御部7とを備えている。なお、本発明に係る電気特性検出部には、電位差検出部5及び電流検出部6が対応している。また、本実施形態では、電位差検出部5及び電流検出部6を用いて基板1に内蔵された電子部品の電気特性を検出するようにしたが、電源部4の出力電圧値又は出力電流値が予め分かっており、電位差検出又は電流検出の一方の検出が不要である場合などには、電位差検出部5又は電流検出部6の一方を省略してもよい。
検査治具は、図1の基板1の上側表面の検査点D1−D3に接触されるプローブP1−P3を備えた上側検査治具と、基板1の下側表面の検査点D4−D10に接触されるプローブP4−P10を備えた下側検査治具とを備えている。検査の際は、上側検査治具のプローブP1−P3及び下側検査治具のプローブP4−P10が、基板1の対応する検査点D1−D10に一括して接触される。
接続切替部3は、プローブPごとに設けられたスイッチ群SWG1−SWG10を備えて構成され、制御部7の制御により各プローブPと、電源部4の第1及び第2出力端子4a,4b、所定の基準電位としてのグランド電位、電位差検出部5及び電流検出部6との間の電気接続関係を切り替える。各スイッチ群SWG1−SWG10には、制御部7によってオン、オフ制御される3つのスイッチング素子(例えば、半導体スイッチング素子)SW1−SW3が備えられている。スイッチング素子SW1がオンされた場合は、対応するプローブPがスイッチング素子SW1を介して電源部4の第1出力端子4aに接続される。スイッチング素子SW2がオンされた場合は、対応するプローブPがスイッチング素子SW2を介して電源部4の第2出力端子4bに接続される。スイッチング素子SW3がオンされた場合は、対応するプローブPがスイッチング素子SW3を介してグランド電位に接続される。
電源部4は、制御部7の制御により検査用の検査電力を出力するようになっており、検査電力を出力する対をなす第1及び第2出力端子4a,4bを有している。電源部4が出力する検査電力としては、交流電流(例えば、交流定電流)、交流電圧(例えば、交流定電圧)、出力電流値が周期的に変動する直流変動電流、又は出力電圧値が周期的に変動する直流変動電圧が用いられる。本実施形態では、例えば検査電力として交流定電流が出力されるようになっている。なお、第2出力端子4bの出力電位については、所定電位、例えばグランド電位に固定してもよい。この場合、第1出力端子4aの出力電位が第2出力端子4bの所定電位に対して変動されることとなる。また、図3及び後述する図4−図10中の「+」、「−」の記号は、第1及び第2出力端子4a,4bとの接続関係を分かりやすく示すためのものであり、第1及び第2出力端子4a,4bの極性とは関係ない。
電源部4に対する変形例として、電源部4が、検査電力の出力レベル等を検査対象の電子部品に応じて制御部7の制御により切り替えるようにしてもよい。
電位差検出部5は、電源部6によって検査対象の電子部品に与えられて電位差をプローブPを介して検出し、検出結果を制御部7に与える。なお、本実施形態では、電位差検出部5による電位差検出に用いられるプローブPと、電源部6の検査電力を基板1内の検査対象部に供給するためのプローブPとが共用されているが、所謂4端子計測法を採用する場合には、各検査点Dごとに検査電力供給用のプローブPの他に、電位差検出用のプローブPを追加的に接触させるようにしてもよい。この場合、接続切替部3には、追加された電位差検出用のプローブPと電位差検出部5との間に介挿され、いずれの電位差検出用のプローブPを電位差検出部5に接続するかを切り替えるスイッチング素子が追加される。また、この場合、電位差検出部5は、プローブPを介して接続されたいずれかの検査点Dと所定の基準電位(例えば、グランド電位)との間の電位差を検出することとなる。
電流検出部6は、電源部6の第1出力端子4a又は第2出力端子4b(本実施形態では、第2出力端子4b)から接続切替部3を介してプローブPに向かう配線に介挿されており、電源部6によって検査対象の電子部品に供給される電流をプローブPを介して検出し、検出結果を制御部7に与える。
制御部7は、この基板検査装置2の制御、及び基板1の各電子部品に対する検査処理を行う。この制御部7による検査処理の具体的な内容については、図4ないし図8に基づいて以下に詳述する。
まず、基板1内に設けられた複数の電子部品(検査対象部)に対する検査の順番に関しては、複数の電子部品のうちからいずれか1つの電子部品を順番に注目検査対象部として選出し、各検査ステップにて1つずつ順番に検査が行われていくようになっている。注目検査対象部に選出されている電子部品に対する検査が終了すると、次の電子部品が注目検査対象部に選出される。このとき、検査が終了した注目検査対象部と同一のネットに属する検査対象部が優先して次の注目検査対象部として選出される。そして、原則として全ての電子部品について順番に検査が行われる。本実施形態では、図1及び図2に示す基板1の構成において、コンデンサC1、コンデンサC2、抵抗R2、コンデンサC3、抵抗R2の順に検査が行われる。
各検査ステップにおいて注目検査対象部が選出されると、基板1に設けられた複数の検査点Dのうちの注目検査対象部に設定された電子部品と同一のネットに属する検査点Dを関連検査点とされ、それ以外の検査点を非関連検査点とされる。
例えば、コンデンサC1が注目検査対象部に選出されている場合、コンデンサC1と同一のネットN1に属する検査点D1,D2,D4−D7が関連検査点とされ、ネットN1と異なるネットN2,N3に属する検査点D3,D8−D10が非関連検査点とされる。
続いて、関連検査点のうちの、注目検査対象部が介挿された配線部分の両側のうちのいずれか一方側と他の電子部品を介することなく接続される関連検査点が第1選択検査点とされ、いずれか他方側と他の電子部品を介することなく接続される関連検査点が第2選択検査点とされる。これとともに、残りの関連検査点のうち、第1選択検査点と注目検査対象部以外の電子部品を介して接続された関連検査点が第1電位調整検査点とされ、第2選択検査点と注目検査対象部以外の電子部品を介して接続された関連検査点が第2電位調整検査点とされる。
例えば、コンデンサC1が注目検査対象部に選出され、検査点D1,D2,D4−D7が関連検査点とされている場合、関連検査点(検査点D1,D2,D4−D7)のうちの、コンデンサC1が介挿された配線部分L1(図4参照)の両側のうちのいずれか一方側と他の電子部品を介することなく接続される関連検査点(例えば、検査点D1,D2)が第1選択検査点とされ、いずれか他方側と他の電子部品を介することなく接続される関連検査点(例えば、検査点D4)が第2選択検査点とされる。さらに、残りの関連検査点(検査点D5−D7)のうち、第1選択検査点(検査点D1,D2)と注目検査対象部(コンデンサC1)以外の電子部品(ここでは、コンデンサC2,C3及び抵抗R1)を介して接続された関連検査点(検査点D5−D7)が第1電位調整検査点とされる。図1及び図2の回路構成において、注目検査対象部にコンデンサC1が選出された場合には、第2電位調整検査点は該当する検査点Dがない。この点は、他のコンデンサC2,C3及び抵抗R1,R2が注目検査対象部に選出された場合も同様である。第2電位調整検査点に該当する検査点Dが存在する回路構成例については、図9に基づいて後述する。
続いて、図2の構成に戻り、接続切替部3の各スイッチ群SWG1−SWG10の各スイッチング素子SW1−SW3の状態が切り替えられ、関連検査点のうちの第1選択検査点及び第1電位調整検査点に接触されたプローブPが、接続切替部3を介して電源部4の第1の出力端子4aと電気接続される。また、第2選択検査点及び第2電位調整検査点に接触されたプローブPが、接続切替部3を介して電源部4の第2の出力端子4bと電気接続される。また、非関連検査点に接触されたプローブPが接続切替部3を介してグランド電位に電気接続される。
例えば、コンデンサC1が注目検査対象部に選出されている場合において、図4中の記号「+」、「−」、「GND」で示すように、第1選択検査点とされた検査点D1,D2、及び第1電位調整検査点とされた検査点D5−D7に接触されたプローブP1,P2,P5−P7が接続切替部3を介して電源部4の第1出力端子4aに電気接続される。また、第2選択検査点とされた検査点D4に接触されたプローブP4が接続切替部3を介して電源部4の第2出力端子4bと電気接続される。また、非関連検査点とされた検査点D3,D8−D10と接触されたプローブP3,P8−P10が接続切替部3を介してグランド電位に電気接続される。
続いて、第1選択検査点及び第2選択検査点に接触されたプローブPを介して、電源部4により検査電力が注目検査対象部に対して供給されるとともに、電位差検出部5による注目検査対象部に与えられた電位差の値の検出、及び電流検出部6による注目検査対象部に供給されている電流の値の検出が行われる。例えば、コンデンサC1が注目検査対象部に選出されている場合は、プローブP1,P2とプローブP4を介して、コンデンサC1に対する検査電力の供給、電位差検出部5による付与電位差値の検出、及び電流検出部6による供給電流値の検出が行われる。
続いて、電位差検出部5及び電流検出部6の検出結果に基づいて、制御部7による注目検査対象部に対する良否判定が行われる。このとき、例えば、電位差検出部5によって検出された注目検査対象部に付与された電位差値と、電流検出部6により検出された注目検査対象部に供給される電流値とに基づいて、検査対象部のインピーダンスが導出され、導出したインピーダンスと評価基準値とを比較すること等により、注目検査対象部の良否判定が行われる。注目検査対象部がコンデンサ又はコンデンサを含む回路である場合、検出された電位差値及び電流値等に基づいて注目検査対象部の静電容量を導出し、その静電容量に基づいて良否判定を行うようにしてもよい。
そして、注目検査対象部に対する検査が終了すると、次の検査対象部が注目検査対象部として選出され、次の注目検査対象部に対する検査が行われる。
次に、図5ないし図8を参照して、コンデンサC1以外の電子部品(コンデンサC2,C3及び抵抗R1,R2)が注目検査対象部に選出された場合の検査点D及びプローブPの電気接続について説明する。
コンデンサC2が注目検査対象部とされた場合は、図5に示すように、ネットN1に属する検査点D1,D2,D4−D7が関連検査点とれ、それ以外の検査点D3,D8−D10が非関連検査点とされる。関連検査点(検査点D1,D2,D4−D7)のうち、例えば検査点D1,D2が第1選択検査点とされ、検査点D5が第2選択検査点とされ、検査点D4,D6,D7が第1電位調整検査点とされる。これに対応して、プローブP1,P2,P4,P6,P7が電源部4の第1出力端子4aに電気接続され、プローブP5が電源部4の第2出力端子4bに電気接続され、プローブD3,P8−P10がグランド電位に電気接続される。そして、プローブP1,P2とプローブP5を介して、コンデンサC2に対する検査電力の供給、電位差検出部5による付与電位差値の検出、及び電流検出部6による供給電流値の検出が行われる。
抵抗R1が注目検査対象部とされた場合は、図6に示すように、ネットN1に属する検査点D1,D2,D4−D7が関連検査点とれ、それ以外の検査点D3,D8−D10が非関連検査点とされる。関連検査点(検査点D1,D2,D4−D7)のうち、例えば検査点D1,D2が第1選択検査点とされ、検査点D6が第2選択検査点とされ、検査点D4,D5,D7が第1電位調整検査点とされる。これに対応して、プローブP1,P2,P4,P5,P7が電源部4の第1出力端子4aに電気接続され、プローブP6が電源部4の第2出力端子4bに電気接続され、プローブD3,P8−P10がグランド電位に電気接続される。そして、プローブP1,P2とプローブP6を介して、抵抗R1に対する検査電力の供給、電位差検出部5による付与電位差値の検出、及び電流検出部6による供給電流値の検出が行われる。
コンデンサC3が注目検査対象部とされた場合は、図7に示すように、ネットN1に属する検査点D1,D2,D4−D7が関連検査点とれ、それ以外の検査点D3,D8−D10が非関連検査点とされる。関連検査点(検査点D1,D2,D4−D7)のうち、例えば検査点D1,D2が第1選択検査点とされ、検査点D7が第2選択検査点とされ、検査点D4−D6が第1電位調整検査点とされる。これに対応して、プローブP1,P2,P4−P6が電源部4の第1出力端子4aに電気接続され、プローブP7が電源部4の第2出力端子4bに電気接続され、プローブD3,P8−P10がグランド電位に電気接続される。そして、プローブP1,P2とプローブP7を介して、コンデンサC3に対する検査電力の供給、電位差検出部5による付与電位差値の検出、及び電流検出部6による供給電流値の検出が行われる。
最後の検査対象である抵抗R2が注目検査対象部とされた場合は、図8に示すように、ネット2に属する検査点D9,D9が関連検査点とされ、それ以外の検査点D1−D7,D10が非関連検査点とされる。関連検査点(検査点D8,D9)のうち、例えば検査点D8が第1選択検査点とされ、検査点D9が第2選択検査点とされる。これに対応して、プローブP8が電源部4の第1出力端子4aに電気接続され、プローブP9が電源部4の第2出力端子4bに電気接続され、プローブD1−D7,D10がグランド電位に電気接続される。そして、プローブP8とプローブP9を介して、抵抗R2に対する検査電力の供給、電位差検出部5による付与電位差値の検出、及び電流検出部6による供給電流値の検出が行われる。
以上のように、各検査ステップにおいて注目検査対象部に対する検査が行われる際に、注目検査対象部に対する検査電力の供給に関与するプローブP及び基板1内の配線部分以外のすべてのプローブP及び基板1内の配線部分には、電源部4の第1又は第2出力端子4a,4bから与えられる電位、又は所定の基準電位(本実施形態では、グランド電位)が付与される。このため、基板1の検査点DにプローブPを介して接続された検査治具内の配線間の寄生容量等の影響、及び基板1内の配線間の静電容量の影響を効果的に除去して、各検査ステップにおける注目検査対象部の検査を正確に行うことができる。
また、各検査ステップにおける注目検査対象部に対する検査の際、注目検査対象部と同一のネットN1−N3内に属する他の検査対象部又は電子部品については、その検査対象部又は電子部品が介挿される配線部分の両側の電位が等しくなるように、プローブPを介して電源部4の第1又は第2出力端子4a,4bの電位が付与される。また、注目検査対象部と異なるネットN1−N3については、そのネットN1−N3に属する全ての検査点Dに所定の基準電位(本実施形態では、グランド電位)が付与される。このため、各検査ステップにおける注目検査対象部に対する検査の際、基板1内の注目検査対象部及び注目検査対象部に検査電力を供給するための配線部分以外の電子部品及び配線部分については、電流が流れないようになっている。その結果、例えば注目検査対象部以外の電子部品等に流れる電流の影響がクロストーク等の形で注目検査対象部の検査に及ぶのを防止でき、注目検査対象部の検査をさらに正確に行うことができる。
また、各検査ステップにおいて注目検査対象部に供給される検査電力の好ましい出力レベル等は検査対象部の種類等に応じて異なる場合があるとともに、基板1内に設けられた電子部品が許容できる付与電位差又は供給電流も電子部品ごとに異なる場合がある。この点に関し、本実施形態に係る検査方法では、注目検査対象部に対する検査の際、注目検査対象部以外の電子部品については電流が流れないようになっているため、各検査ステップにおいて設定された注目検査対象部以外の他の電子部品が検査電力の付与により劣化するのを防止しつつ、注目検査対象部に応じた検査電力の出力レベル等を設定できる。
また、上述の如く、各検査ステップにおいて注目検査対象部に選出されている電子部品に対する検査が終了し、次の注目検査対象部を選出する際に、検査が終了した注目検査対象部と同一のネットに属する検査対象部が優先して次の注目検査対象部として選出される。それ故、各検査ステップにおける注目検査対象部の切り替えに伴う接続切替部3によるプローブPと、電源部3等との間の切り替え動作等を効率化でき、検査の効率化及び高速化を図れる。
以下では、図1及び図2に示す基板1の回路構成が一部変更された図9及び図10の回路構成を例に、本実施形態に係る検査方法について補足説明を行う。
上述の図1及び図2に示す回路構成では、いずれの検査対象部に対する検査でも第2選択検査点が1つしか設定されず、第2電位調整検査点の該当がなかった。この点に関する補足として、図9を参照して、第2選択検査点が複数設定されるとともに、第2電位調整検査点の該当がある例について説明する。
図9に示す回路構成において、コンデンサC1が注目検査対象部に選出されている場合について説明する。この場合において、関連検査点(検査点D1,D2,D4−D7,D11,D12)のうちの検査点D1,D2が第1選択検査点とされた場合、検査点D4,D12が第2選択検査点とされる。そして、残りの関連検査点(検査点D5−D7,D11)のうち、検査点D5−D7が第1電位調整検査点とされ、検査点D11が第2電位調整検査点とされる。
また、図9に示す回路構成において、コンデンサC11が注目検査対象部に選出された場合は、関連検査点(検査点D1,D2,D4−D7,D11,D12)のうちの検査点D11が第1選択検査点とされた場合、検査点D11,D12が第2選択検査点とされる。そして、残りの関連検査点(検査点D1,D2,D5−D7)が第2電位調整検査点とされる。この場合、第1電位調整検査点の該当はない。
また、他の回路構成として図10に示す例のように、図1のコンデンサC1の代わりに直列接続された2つのコンデンサC5,C6が備えられている場合には、コンデンサC5,C6を単体で検査することはできない。この場合は、直列接続されたコンデンサ5,C6を一まとめにした回路を検査対象部として、検査を行うこととなる。