以下、回路基板検査装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、回路基板検査装置1の構成について説明する。図1に示す回路基板検査装置1は、フィクスチャ(ピンボード)2、スキャナ3、第1検査部4、第2検査部5、制御部6、記憶部7、電源部8、フローティング電源部9およびアイソレータ10を備えて、回路基板51に対して所定の電気的検査を実行可能に構成されている。
検査対象である回路基板51は、内部に電子部品が内蔵された部品内蔵型の回路基板であり、図1に示すように、一例として、複数の導体パターンP1〜P16(以下、特に区別しないときには、「導体パターンP」ともいう)が形成されていると共に、電子部品としての抵抗R1,R2,R3,R4、コンデンサC1,C2,C3、および集積回路IC1,IC2が内部に内蔵されている。なお、内蔵されている電子部品に接続されている導体パターンP1〜P15は、不図示のビア(またはスルーホール)などを介して回路基板51の表面(本例では一例として上面)と電子部品が配設されている回路基板51の内部との間に亘って形成されている。また、導体パターンP16は、一例として、回路基板51の表面に形成されている。また、集積回路IC1は、所定の周波数特性を有するフィルタ素子であり、集積回路IC2は、一例として、入力ピン(例えば、導体パターンP11,P12,P9に接続されているピン)に入力される論理で示される値に応じた電圧を出力ピン(例えば、導体パターンP8に接続されているピン)から出力するD/A変換器であるものとする。
また、この回路基板51には、複数の電子部品が表面に後付けで実装される。この例では一例として、図1において破線で示すように、導体パターンP15と導体パターンP16との間にコンデンサC11が実装されると共に、導体パターンP13と導体パターンP16との間に抵抗R11が実装される。したがって、回路基板検査装置1による回路基板51の検査時には、導体パターン16は、いずれの電子部品とも接続されていない状態にある。
フィクスチャ2は、複数(m本)のプローブピン21を備えて構成されている。フィクスチャ2は、不図示の載置台の上面に載置されている回路基板51の上方において、不図示の支持機構によって回路基板51に対して接離動自在な状態に支持されている。また、複数のプローブピン21は、フィクスチャ2の載置台側の面(本例では下面)における接触する導体パターンの接触部位(接触ポイント)に対応する位置に立設されている。本例では、接触部位は、各導体パターンに対して1つずつ規定されている。このため、プローブピン21は、一例としてm(=16)本立設されている。この構成により、フィクスチャ2は、各プローブピン21が対応する接触部位に接触する状態(プロ−ビング状態)まで移動されたときには、載置台との間で回路基板51を挟み込んで保持する。
スキャナ3は、複数の切替スイッチを有して構成されて、図1に示すように、フィクスチャ2と第1検査部4との間に配設されている。また、スキャナ3は、複数(m本)のプローブピン21と配線(本数はm本)を介して接続されると共に、第1検査部4の後述する一対の接続端子4a,4bと配線(2本の配線)を介して接続されている。また、スキャナ3は、制御部6によって複数の切替スイッチのオン・オフ状態が制御されることにより、複数のプローブピン21のすべてを第1検査部4の一対の接続端子4a,4bから切り離す分離状態、および複数のプローブピン21のうちの任意のプローブピン21を第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちの任意の一方の接続端子に接続すると共に、この一方の接続端子に接続されたプローブピン21を除く他のプローブピン21のうちの任意のプローブピン21を一対の接続端子4a,4bのうちの他方の接続端子に接続する接続状態のいずれかの状態に移行することが可能になっている。
第1検査部4は、一対の接続端子4a,4bを有し、この一対の接続端子4a,4bに接続された検査対象部位間の絶縁状態を検査する。一例として、第1検査部4は、一対の接続端子4a,4bと共に、絶縁抵抗計および処理部(いずれも図示せず)を備えている。この構成により、処理部が制御部6によって制御されることで絶縁抵抗計を作動させて、一対の接続端子4a,4bに接続された検査対象部位間の絶縁抵抗を測定し、この測定した絶縁抵抗の抵抗値と予め規定された基準抵抗値とを比較することにより、検査対象部位間の絶縁状態を検査して(例えば、算出した抵抗値が基準抵抗値以上のときには絶縁状態は良好であり、基準抵抗値未満のときには絶縁状態は不良であるというようにして検査して)、この検査結果を示す結果データD1を制御部6に出力する。
第2検査部5は、内蔵されている電子部品(本例では、抵抗R1,R2,R3,R4、コンデンサC1,C2,C3、および集積回路IC1,IC2)のうちの部品検査を実行する電子部品に接続されている導体パターンに接触する各プローブピン21にn本の配線を介して接続されて、これらの電子部品に対する部品検査を実行する。本例では、部品検査を実行する電子部品は一例として集積回路IC1,IC2の2つであるため、この部品検査を実行する電子部品の個数に対応して、第2検査部5は、フィルタ素子である集積回路IC1の周波数特性を測定して検査するための検査装置A(例えば、周波数特性測定器)と、D/A変換器である集積回路IC2を動作させて検査するための検査装置B(例えば、集積回路IC2を作動させるためのデジタルデータを複数ビット出力可能な信号出力装置、および集積回路IC2の出力電圧を測定する電圧測定器)の2つの検査装置を備え、各集積回路IC1,IC2に接続されている導体パターン(この例では、9本の導体パターンP1,P2,P3,P8〜P13)に接触する9本のプローブピン21に9本の配線(n=9)を介して接続されている。
この場合、検査装置Aは、検査対象とする集積回路IC1に接続されている導体パターンP1,P2,P3に接触する3本のプローブピン21に、n(本例では9)本の配線のうちの3本の配線を介して接続されている。また、検査装置Bは、検査対象とする集積回路IC2に接続されている導体パターンP8〜P13に接触する6本のプローブピン21に、n本の配線のうちの他の6本の配線を介して接続されている。また、各検査装置A,Bは互いに電気的に分離されている。
また、第2検査部5は、電源部8から出力される電圧(第1作動用電圧)V1に基づいて作動するスキャナ3、第1検査部4、制御部6および記憶部7とは異なり、フローティング電源部9から供給される電圧(電圧V1側から電気的に絶縁された電圧)を作動用電圧として作動する。具体的には、第2検査部5の検査装置Aは、フローティング電源部9から電源端子5aに供給される電圧V2(電圧V1側の後述の基準電位G1および電圧V1から電気的に絶縁された後述の基準電位G2を基準として生成される第2作動用電圧)を作動用電圧として作動する。一方、第2検査部5の他の1つの検査装置Bは、フローティング電源部9から電源端子5bに供給される電圧V3(電圧V1側の基準電位G1および電圧V1から電気的に絶縁され、かつ基準電位G2および電圧V2からも電気的に絶縁された後述の基準電位G3を基準として生成される電圧)を作動用電圧として作動する。
また、第2検査部5の検査装置Aは、制御部6によって制御されて作動して(制御部6から出力される制御信号Saに基づいて動作して)、集積回路IC1を検査するための検査信号を生成して集積回路IC1に出力することにより、集積回路IC1に対する検査を実行する。また、検査装置Aは、制御部6によって制御されて作動して、集積回路IC1に対する検査の結果を示す結果データDaを制御部6に出力する。同様にして、第2検査部5の他の1つの検査装置Bも、制御部6によって制御されて作動して(制御部6から出力される制御信号Sbに基づいて動作して)、集積回路IC2を検査するための検査信号を生成して集積回路IC2に出力することにより、集積回路IC2に対する検査を実行する。また、検査装置Bは、制御部6によって制御されて作動して、集積回路IC2に対する検査の結果を示す結果データDbを制御部6に出力する。なお、検査装置Aと制御部6との間の制御信号Saおよび結果データDaのやり取り、および検査装置Bと制御部6との間の制御信号Sbおよび結果データDbのやり取りは、アイソレータ10を介して行われる。
さらに、第2検査部5の検査装置A,Bが検査する集積回路IC1,IC2は、後述するように、互いに電気的に絶縁されている異なる導体パターン群GP1,GP2(以下、区別しないときには、「導体パターン群GP」ともいう。)にそれぞれ含まれている。
このようにして、各検査装置A,Bが第2検査部5の内部において互いに電気的に分離され、かつ検査装置Aにフローティング電源部9から供給される電圧V2およびその基準電位G2と、検査装置Bにフローティング電源部9から供給される電圧V3およびその基準電位G3とが互いに電気的に絶縁(分離)され、検査装置A,Bが共にアイソレータ10を介して制御部6と電気的に絶縁され、かつ検査装置A,Bが配線を介して直接接続されている集積回路IC1,IC2に接続されている各導体パターン群GP1,GP2同士が電気的に絶縁されている構成のため、第2検査部5(本例では各検査装置A,B)は、常にフローティング状態になっている。
制御部6は、コンピュータなどを備えて構成されて、上記したように、第1検査部4、スキャナ3および第2検査部5に対する制御を実行して、絶縁検査処理および部品検査処理を実行する。
記憶部7は、ROMやRAMなどの半導体メモリや、HDD(Hard Disk Drive )などを備えて構成されて、制御部6のための動作プログラムを記憶すると共に、制御部6が第1検査部4および第2検査部5から取得した結果データD1,Da,Dbを記憶する。また、記憶部7には、回路基板51に関するデータ、すなわち、各導体パターンP1〜P16に接触するプローブピン21を特定可能なデータ、各導体パターンP1〜P16に接続される各電子部品(抵抗R1,R2,R3,R4、コンデンサC1,C2,C3、および集積回路IC1,IC2)を特定可能なデータ、および部品検査を実行する電子部品(抵抗R1,R2、コンデンサC2および集積回路IC1,IC2)を特定可能なデータが予め記憶されている。
電源部8は、スキャナ3、第1検査部4、制御部6および記憶部7を作動させるための電圧V1(基準電位G1を基準とする電圧)を生成して出力する。フローティング電源部9は、一例として、独立した2つの2次巻線を有するトランスを用いて構成された絶縁型DC/DCコンバータで構成されて、各2次巻線に誘起される交流電圧を電気的に分離された2つの整流平滑回路で直流電圧としての電圧V2,V3にそれぞれ変換して出力する。この構成により、フローティング電源部9は、電圧V1およびこの電圧V1の基準電位G1から電気的に絶縁された基準電位G2を基準とする電圧V2を生成して出力すると共に、電圧V1および基準電位G1、並びに電圧V2および基準電位G2の双方から電気的に絶縁された基準電位G3を基準とする電圧V3を生成して出力する。アイソレータ10は、制御部6と第2検査部5との間に配設されて、制御部6から出力される制御信号Sa,Sbを入力すると共に電気的に絶縁して第2検査部5に出力する。また、アイソレータ10は、第2検査部5から出力される結果データDa,Dbを入力すると共に電気的に絶縁して制御部6に出力する。
次に、回路基板検査装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、回路基板51は、不図示の載置台上に載置されて、この載置台とフィクスチャ2との間で挟み込まれている(保持されている)ものとする。
この状態において、回路基板検査装置1では、制御部6が、まず、回路基板51に対する絶縁検査処理を実行する。この絶縁検査処理では、制御部6は、最初に、アイソレータ10を介して第2検査部5に制御信号Sa,Sbを出力することによって第2検査部5を制御して、第2検査部5の各検査装置A,Bを停止状態(部品検査のための信号がプローブピン21に出力されない状態)に移行させる。
次いで、制御部6は、記憶部7に記憶されている回路基板51に関するデータに基づいて、回路基板51に内蔵されている上記の電子部品を介して連鎖的に接続されている全ての導体パターンPを1つの導体パターン群GPとして特定する。回路基板51では、図1に示すように、導体パターンP1〜P4が、電子部品としての抵抗R1、コンデンサC1および集積回路IC1を介して連鎖的に接続されている。また、導体パターンP5〜P15が、電子部品としての抵抗R2,R3,R4、コンデンサC2,C3および集積回路IC2を介して連鎖的に接続されている。このため、制御部6は、導体パターンP1〜P4を1つの導体パターン群GP1として特定し、導体パターンP5〜P15を他の1つの導体パターン群GP2として特定する。なお、導体パターンP16には電子部品(回路基板51に予め内蔵されている電子部品)が接続されていない。このため、導体パターンP16は、導体パターン群GPを構成しない導体パターンとして存在している。
続いて、制御部6は、1つの導体パターン群GPにおけるいずれかの導体パターンP、他の1つの導体パターン群GPにおけるいずれかの導体パターンP、および導体パターン群GPを構成しない導体パターンPのうちのいずれか2つを検査対象部位として、各検査対象部位間の絶縁状態を検査する(本例では、1つの導体パターン群GP1と他の導体パターン群GP2との間の絶縁状態、導体パターン群GP1と導体パターン群を構成しない導体パターンP16との間の絶縁状態、および導体パターン群GP2と導体パターンP16との間の絶縁状態を検査する)。
具体的には、制御部6は、導体パターン群GP1と導体パターン群GP2との間の絶縁状態の検査に際しては、スキャナ3に対する制御を実行して、導体パターン群GP1におけるいずれかの導体パターンPに接触するプローブピン21(本例では、導体パターン群GP1におけるすべての導体パターンP1〜P4に接触するすべてのプローブピン21)をスキャナ3を介して第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちのいずれか一方(例えば、接続端子4a)に検査対象部位として接続し(つまり、導体パターン群GP1におけるすべての導体パターンP1〜P4を同電位にし)、かつ他の導体パターン群GP2におけるいずれかの導体パターンPに接触するプローブピン21(本例では、導体パターン群GP2におけるすべての導体パターンP5〜P15に接触するすべてのプローブピン21)をスキャナ3を介して第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちの他方(例えば、接続端子4b)に検査対象部位として接続する(つまり、導体パターン群GP2におけるすべての導体パターンP5〜P15を同電位にする)。次いで、制御部6は、第1検査部4に対する制御を実行して、検査対象部位間の絶縁状態を検査させる。
また、制御部6は、導体パターン群GP1と導体パターンP16との間の絶縁状態の検査に際しては、スキャナ3に対する制御を実行して、導体パターン群GP1におけるいずれかの導体パターンPに接触するプローブピン21(本例では、導体パターン群GP1におけるすべての導体パターンP1〜P4に接触するすべてのプローブピン21)をスキャナ3を介して第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちのいずれか一方(例えば、接続端子4a)に検査対象部位として接続し(導体パターンP1〜P4を同電位にし)、かつ導体パターンP16に接触するプローブピン21をスキャナ3を介して第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちの他方(例えば、接続端子4b)に検査対象部位として接続する。次いで、制御部6は、第1検査部4に対する制御を実行して、検査対象部位間の絶縁状態を検査させる。
また、制御部6は、導体パターン群GP2と導体パターンP16との間の絶縁状態の検査に際しては、スキャナ3に対する制御を実行して、導体パターン群GP2におけるいずれかの導体パターンPに接触するプローブピン21(本例では、導体パターン群GP2におけるすべての導体パターンP5〜P15に接触するすべてのプローブピン21)をスキャナ3を介して第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちのいずれか一方(例えば、接続端子4a)に検査対象部位として接続し(導体パターンP5〜P15を同電位にし)、かつ導体パターンP16に接触するプローブピン21をスキャナ3を介して第1検査部4の一対の接続端子4a,4bのうちの他方(例えば、接続端子4b)に検査対象部位として接続する。次いで、制御部6は、第1検査部4に対する制御を実行して、検査対象部位間の絶縁状態を検査させる。
この第1検査部4による絶縁状態の検査中において、第1検査部4の一対の接続端子4a,4bから出力される絶縁抵抗計の検査用電圧(一般的に、数百ボルトのような高電圧)が、スキャナ3およびフィクスチャ2のプローブピン21を介して、導体パターン群GP1と他の導体パターン群GP2との間、導体パターン群GP1と導体パターン群を構成しない導体パターンP16との間、および導体パターン群GP2と導体パターンP16との間に、第2検査部5がn本の配線を介してフィクスチャ2のプローブピン21に接続されている状態のままで順次印加される。
これにより、導体パターン群GP1と他の導体パターン群GP2との間への検査用電圧の印加の際には、このn本の配線のうちの3本の配線を介して導体パターン群GP1を構成する導体パターンP1〜P3に接触しているプローブピン21に接続されている検査装置Aと、このn本の配線のうちの他の6本の配線を介して導体パターン群GP2を構成する導体パターンP8〜P13に接触しているプローブピン21に接続されている検査装置Bとの間にも、高電圧の検査用電圧が印加される。しかしながら、上記したように、検査装置A,Bは、それぞれの基準電位G2,G3が互いに電気的に分離され、かつそれぞれの作動用電圧である電圧V2,V3も互いに電気的に分離され、さらに制御部6との間もアイソレータ10によって電気的に分離されているため、検査用電圧の印加時における検査装置Aから検査装置B(または、検査装置Bから検査装置A)への電流の回り込み、検査装置Aから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置A)への電流の回り込み、および検査装置Bから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置B)への電流の回り込みが防止されている。これにより、検査装置Aおよび検査装置Bの損傷が回避されている。
また、導体パターン群GP1と導体パターンP16との間への検査用電圧の印加の際には、3本の配線を介して導体パターン群GP1を構成する導体パターンP1〜P3に接触しているプローブピン21に接続されている検査装置Aと、導体パターンP16との間に、高電圧の検査用電圧が印加される。しかしながら、上記したように、検査装置Aは、基準電位G2が電源部8側の基準電位G1と電気的に分離され、かつ作動用電圧である電圧V2も電源部8側の電圧V1と電気的に分離され、さらに制御部6との間もアイソレータ10によって電気的に分離されているため、検査用電圧の印加時における検査装置Aから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置A)への電流の回り込みが防止されている。これにより、検査装置Aの損傷が回避されている。
また、導体パターン群GP2と導体パターンP16との間への検査用電圧の印加の際においても、6本の配線を介して導体パターン群GP2を構成する導体パターンP8〜P13に接触しているプローブピン21に接続されている検査装置Bと、導体パターンP16との間に、高電圧の検査用電圧が印加されるが、基準電位G3が基準電位G1と電気的に分離され、かつ電圧V3も電圧V1と電気的に分離され、さらに制御部6との間もアイソレータ10によって電気的に分離されているため、上記した検査装置Aを使用した検査のときと同様にして、検査装置Bの損傷が回避されている。
最後に、制御部6は、第1検査部4に対する制御を実行して、検査対象部位間の絶縁状態についての検査結果を示す結果データD1を出力させると共に、この結果データD1を取得して記憶部7に記憶させる。これにより、絶縁検査処理が完了する。
次に、制御部6は、回路基板51に内蔵されている電子部品(本例では、集積回路IC1,IC2)を検査する部品検査処理を実行する。この部品検査処理では、制御部6は、まず、スキャナ3に対する制御を実行して、複数のプローブピン21に接続されているm(本例では16)本の配線のすべてを第1検査部4の一対の接続端子4a,4bの双方から切り離すことで、スキャナ3を分離状態に移行させる。
次いで、制御部6は、アイソレータ10を介して第2検査部5の検査装置Aに制御信号Saを出力することによって検査装置Aを制御して、集積回路IC1(フィルタ素子)に対する部品検査を実行させる。この場合、検査装置Aは、3本の配線およびこれらの配線に接続されているプローブピン21を介して直接的(切替スイッチが介在しないことを意味する)に接続されている集積回路IC1に対して周波数特性を測定するための信号を供給すると共に、そのときに集積回路IC1から出力される信号を測定することにより、集積回路IC1の周波数特性を測定する。また、第2検査部5は、測定した周波数特性が予め規定された基準範囲内に含まれているか否かに基づいて集積回路IC1を検査する(例えば、測定した周波数特性が基準範囲内に含まれているときには良品であり、基準範囲から外れているときには不良品であるというように検査する)。
続いて、制御部6は、アイソレータ10を介して第2検査部5の検査装置Bに制御信号Sbを出力することによって検査装置Bを制御して、集積回路IC2(D/A変換器)に対する部品検査を実行させる。この場合、検査装置Bは、6本の配線およびこれらの配線に接続されているプローブピン21を介して直接的(切替スイッチが介在しないことを意味する)に接続されている集積回路IC2に対して、信号出力装置が集積回路IC2の入力ピンにデジタルデータを複数パターン出力し、電圧測定器が各パターン時に集積回路IC2の出力ピンから出力される出力電圧を測定すると共に、各パターンに対応して予め規定された基準範囲内にこの出力電圧が含まれているか否かに基づいて集積回路IC2を検査する(例えば、出力電圧の電圧値が基準範囲内に含まれているときには良品であり、基準範囲から外れているときには不良品であるというように検査する)。
最後に、制御部6は、第2検査部5に対する制御を実行して、検査装置Aによる集積回路IC1の検査結果を示す結果データDaと、検査装置Bによる集積回路IC2の検査結果を示す結果データDbとを出力させると共に、これらの結果データDa,Dbを取得して記憶部7に記憶させる。これにより、部品検査処理が完了し、回路基板51に対するすべての検査処理が完了する。なお、制御部6は、回路基板検査装置1が不図示の出力部を備えているときには、記憶部7から各結果データD1,Da,Dbを読み出して、出力部に出力する。これにより、出力部が表示装置で構成されているときには、各結果データD1,Da,Dbが表示装置の画面上に表示される。また、出力部が外部インターフェース回路で構成されているときには、外部インターフェース回路を介して回路基板検査装置1と接続されている外部装置に各結果データD1,Da,Dbが出力される。
このように、この回路基板検査装置1では、1つの導体パターン群GP1を構成させる集積回路IC1に接続されている導体パターンP1〜P3に接触するプローブピン21に配線を介して直接的に接続されて、この集積回路IC1に対する部品検査を実行する検査装置A、および他の1つの導体パターン群GP2を構成させる集積回路IC2に接続されている導体パターンP8〜P13に接触するプローブピン21に配線を介して直接的に接続されて、この集積回路IC2に対する部品検査を実行する検査装置Bを有する第2検査部5と、制御部6側の電源部8に対して電気的に絶縁された状態に構成されて第2検査部5の検査装置A,Bに作動用の電圧V2,V3を供給するフローティング電源部9とを備え、制御部6が、スキャナ3および第1検査部4に対する制御を実行して、導体パターン群GP1と他の導体パターン群GP2との間、導体パターン群GP1と導体パターン群を構成しない導体パターンP16との間、および導体パターン群GP2と導体パターンP16との間の絶縁状態の検査を第1検査部4に実行させる絶縁検査処理と、スキャナ3に対する制御を実行してスキャナ3を分離状態に移行させると共に第2検査部5に対する制御を実行して回路基板51に内蔵されている集積回路IC1,IC2について部品検査を実行させる部品検査処理とを実行する。
したがって、この回路基板検査装置1によれば、第2検査部5の各検査装置A,Bが配線を介してプローブピン21に接続されている状態で、制御部6が絶縁検査処理を実行したとしても、導体パターン群GP1に配線を介して接続されている検査装置Aの基準電位G2および電圧V2、導体パターン群GP2に配線を介して接続されている検査装置Bの基準電位G3および電圧V3、並びに制御部6側の電源部8の基準電位G1および電圧V1が相互に電気的に分離されているため、検査装置Aから検査装置B(または、検査装置Bから検査装置A)への電流の回り込み、検査装置Aから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置A)への電流の回り込み、および検査装置Bから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置B)への電流の回り込みを防止することができ、これにより、第2検査部5(本例では、検査装置Aおよび検査装置B)の損傷を回避することができる。
また、第2検査部5(本例では、検査装置Aおよび検査装置B)とフィクスチャ2のプローブピン21との間は配線を介して直接的に接続したままの状態でよいため、絶縁検査の際に第2検査部5とフィクスチャ2のプローブピン21との間を分離するためのスイッチを不要にでき、これによって装置構成の複雑化を回避することができると共に、第2検査部5から回路基板51に内蔵されている電子部品(この例では集積回路IC1,IC2)への検査信号についてもその劣化を回避して供給することができる。
また、この回路基板検査装置1では、制御部6が、絶縁検査処理の実行時において、検査対象部位としての1つの導体パターン群GPを構成する各導体パターンPが互いに同電位になるように、本例では、導体パターン群GP1を構成する導体パターンP1〜P4が互いに同電位になり、また導体パターン群GP2を構成する導体パターンP5〜P15が互いに同電位になるように スキャナ3を制御する。したがって、この回路基板検査装置1によれば、同じ導体パターン群GP内における各導体パターンPの間の電位差によって同じ導体パターン群GP内において漏れ電流(電流の回り込み)が生じて、それによって電子部品が損傷するという事態の発生を確実に防止することができる。
なお、導体パターンPを連鎖的に接続させる電子部品によっては、同じ導体パターン群GP内における各導体パターンPの間に殆ど電位差が生じない場合がある。このため、このような導体パターン群GPにおいては、導体パターン群GPを構成するすべての導体パターンPを同電位にする必要が無いことから、1つの導体パターン群GPを構成するいずれかの導体パターンPを検査対象部位として第1検査部4に接続する構成を採用することもできる。
また、上記した回路基板検査装置1では、フローティング電源部9およびアイソレータ10を使用することにより、絶縁検査の際に電流の回り込みが第2検査部5において発生しない構成を採用しているが、図2に示す回路基板検査装置1Aのように、フローティング電源部9およびアイソレータ10を使用することなくこの電流の回り込みの発生を防止する構成を採用することもできる。以下、回路基板検査装置1Aについて説明する。
最初に、回路基板検査装置1Aの構成について説明する。なお、回路基板検査装置1の構成と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。図2に示す回路基板検査装置1Aは、フィクスチャ2、スキャナ3、第1検査部4、第2検査部5、制御部6、記憶部7、電源部8、第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12を備えて、回路基板51に対して回路基板検査装置1と同一の電気的検査を実行可能に構成されている。
この回路基板検査装置1Aでは、第2検査部5は、電源部8から供給される電圧V1を作動用電圧として作動する。また、第2検査部5の検査装置Aと電源部8との間に形成されている電圧V1の供給ライン、および第2検査部5の検査装置Bと電源部8との間に形成されている電圧V1の供給ラインには、制御部6によってそのオン・オフ状態が制御される第1オン・オフスイッチ11がそれぞれ設けられている。また、第2検査部5の検査装置Aと制御部6との間に形成されている信号ライン(制御信号Saおよび結果データDaが通過する信号ライン)、および第2検査部5の検査装置Bと制御部6との間に形成されている信号ライン(制御信号Sbおよび結果データDbが通過する信号ライン)には、制御部6によってそのオン・オフ状態が制御される第2オン・オフスイッチ12が設けられている。また、第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12は、例えば、リレーで構成されている。
以上の構成により、この回路基板検査装置1Aでは、制御部6による制御によって第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12がそれぞれオン状態に移行したときには、第2検査部5の各検査装置A,Bに電圧V1が供給されると共に、制御部6からの制御信号Sa,Sbを各検査装置A,Bが受信し、かつ各検査装置A,Bからの結果データDa,Dbを制御部6が受信し得る状態に移行する。一方、制御部6による制御によって第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12がそれぞれオフ状態に移行したときには、第2検査部5と電源部8との間の電圧V1の供給ライン(基準電位G1のラインも含む)が切断(分断)されると共に、第2検査部5と制御部6との間の信号ラインが切断(分断)されて、第2検査部5(具体的には検査装置A,B)はフィクスチャ2のプローブピン21と配線で接続された状態で、制御部6および電源部8から電気的に分離されたフローティング状態に移行する。
次に、回路基板検査装置1Aの動作について、図面を参照して説明する。なお、制御部6による第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12に対する制御動作が加わる点を除き、他の動作は回路基板検査装置1の動作と同一であるため、回路基板検査装置1の動作と相違する点についてのみ説明する。
、回路基板検査装置1Aでは、制御部6が、回路基板51に対する絶縁検査処理を実行する際に、まず、第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12に対するオフ制御を実行して、第2検査部5と電源部8との間の電圧V1の供給ラインと、第2検査部5と制御部6との間の信号ラインとを切断(分断)することにより、第2検査部5を制御部6および電源部8から電気的に分離されたフローティング状態に移行させて、その後に、導体パターン群GP1と他の導体パターン群GP2との間の絶縁状態、導体パターン群GP1と導体パターン群を構成しない導体パターンP16との間の絶縁状態、および導体パターン群GP2と導体パターンP16との間の絶縁状態を検査する。
また、制御部6が部品検査処理を実行する際には、まず、スキャナ3に対する制御を実行してスキャナ3を分離状態に移行させると共に、第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12に対するオン制御を実行して、第2検査部5と電源部8との間の電圧V1の供給ラインの切断(分断)と、第2検査部5と制御部6との間の信号ラインの切断(分断)とを停止させて(つまり供給ラインおよび信号ラインを接続状態に移行させて)、その後に部品検査処理を実行する。
したがって、この回路基板検査装置1Aにおいても、第2検査部5の各検査装置A,Bが配線を介してプローブピン21に接続されている状態で、制御部6が絶縁検査処理を実行したとしても、導体パターン群GP1に配線を介して接続されている検査装置A、および導体パターン群GP2に配線を介して接続されている検査装置Bがオフ状態の第1オン・オフスイッチ11および第2オン・オフスイッチ12によって制御部6および電源部8から電気的に分離されているため、検査装置Aから検査装置B(または、検査装置Bから検査装置A)への電流の回り込み、検査装置Aから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置A)への電流の回り込み、および検査装置Bから制御部6などの電源部8側の回路(または、制御部6などの電源部8側の回路から検査装置B)への電流の回り込みを防止することができ、これにより、第2検査部5(本例では、検査装置Aおよび検査装置B)の損傷を回避することができる。
また、第2検査部5(本例では、検査装置Aおよび検査装置B)とフィクスチャ2のプローブピン21との間は配線を介して直接的に接続したままの状態でよいため、絶縁検査の際に第2検査部5とフィクスチャ2のプローブピン21との間を分離するためのスイッチを不要できるため、装置構成の複雑化を回避することができると共に、第2検査部5から回路基板51に内蔵されている電子部品(この例では集積回路IC1,IC2)への検査信号についてもその劣化を回避して供給することができる。