JP2013163860A - 陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽 - Google Patents

陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽 Download PDF

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Abstract

【課題】電気分解中における各層間の剥離を抑制する効果が高い陽イオン交換膜を得る。
【解決手段】カルボン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第一層11と、含フッ素系重合体からなり、カルボン酸基とスルホン酸基とを有する第二層12と、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第三層13とを有し、第一層11の含水率をWI、第二層12の含水率をWII、第三層13の含水率をWIIIとしたとき、WI<WII、WII<WIIIであり、WII−WI≦9.5(%)、WIII−WII≦18(%)であり、第一層11の弾性率をEIとし、第二層12の弾性率をEIIとし、第三層13の弾性率をEIIIとしたとき、EI>EII、EII>EIIIであり、EI−EII≦30Mpa、EII−EIII≦40Mpaである陽イオン交換膜1。
【選択図】図1

Description

本発明は、陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽に関する。
含フッ素系重合体を用いた陽イオン交換膜は、耐熱性及び耐薬品性等が優れていることから、塩化アルカリ等の電気分解(以下、電解と記載する場合もある。)により塩素とアルカリを製造するための電解用陽イオン交換膜として用いられている。その他にも、オゾン発生用隔膜、燃料電池、水電解及び塩酸電解等の種々の電解用隔膜等として用いられている。
これらの中で、特に塩水等を電気分解して苛性ソーダと塩素と水素を製造する塩化アルカリの電解においては、陽イオン交換膜に種々の特性が要求されている。
例えば、高い電流効率及び低い電解電圧で電解を行えること、製造した水酸化アルカリ中に含まれる不純物(特に塩化アルカリ等)の濃度が低いこと、又は、膜の取扱い時や電解時に損傷しない等の膜強度が高いこと等の性能が要求されている。このような要求を満たすため、アニオン排除性が高く、電気抵抗は高いが高い電流効率を示すカルボン酸基を持つ含フッ素樹脂からなる層と、電気抵抗が低いスルホン酸基を持つ含フッ素樹脂からなる層とを含む、複層構造の含フッ素系イオン交換膜が、現在の主流となっている。
また、上記のように膜強度に関する要求に鑑みて、従来から各種提案がなされている。
例えば、下記特許文献1及び特許文献2では、膜の構成を多層化し、それぞれの層の含水率を規定し、電解電圧の低減と膜強度の改善を図る技術が提案されている。
すなわち、特許文献1には、イオン交換基を有する含フッ素重合体から構成され、陰極に面するカルボン酸基を有する第一の層と、該第一の層よりも比抵抗が小さく、かつ膜全体の厚みの50%以上を有する第二の層と、膨潤度が第二の層よりも5%以上大きく、かつ比抵抗が第二の層よりも30Ω・cm以上小さい第三の層とを積層したイオン交換膜の発明が記載されている。特許文献1においては、電気化学的性質や、陰極室において生成した水酸化アルカリ水溶液中の純度に優れ、さらに機械的強度及び寸法安定性に優れているイオン交換膜が得られることが記載されている。
また、特許文献2には、陰極に面するカルボン酸基を有するフルオロカーボンポリマーの第一の層と、イオン交換容量0.9〜1.4ミリ当量/g乾燥樹脂のスルホン酸基を有するフルオロポリマーの第二の層と、陽極に面し、膨潤度が上記第二の層よりも5%以上大きく、かつイオン交換基を有するフルオロカーボンポリマーの第三の層とを積層したイオン交換膜が記載されている。特許文献2においては、強靱なポリマーを用いながら、低い電解電圧を発揮することが記載されている。
特開昭63−113029号公報 特開昭63−8425号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載のイオン交換膜では、未だ膜強度は十分ではなく、特に、電解中における各層間の剥がれを防止する強度である剥離耐性が十分ではない。
電解中に各層間に剥がれが生じると、層間に溶液が滞留する。これにより膜の抵抗が増加することによる電解電圧の上昇が発生する。
また、層間に滞留した溶液により、膜の陽極側と接する層が陽極側に圧迫されると、膜と陽極部とが密に接触しすぎることにより、塩水が膜へ十分に供給されなくなって、イオン交換基(特に、カルボン酸基)のH+化が起こる。H+化されたカルボン酸基を有する層は、高抵抗となるため、発熱・損傷し、電流効率が低下するという問題や、膜の強度が低下するといった問題を生じる。
さらに剥離部に溶液が滞留することにより、電極が変形するといった電解装置が損傷する弊害も誘発する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電解中における各層間の剥がれを防止でき、剥離耐性が高く、安定して電解を行うことが可能な陽イオン交換膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、陽イオン交換膜を構成する各層間の含水率の関係、及び弾性率の関係を特定することにより、剥離耐性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
〔1〕
カルボン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第一層と、
含フッ素系重合体からなり、カルボン酸基とスルホン酸基とを有する第二層と、
スルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第三層と、
を有し、
前記第一層の含水率をWIとし、
前記第二層の含水率をWIIとし、
前記第三層の含水率をWIIIとしたとき、
I<WII
II<WIII
であり、
II−WI≦9.5(%)
III−WII≦18(%)
であり、
前記第一層の弾性率をEIとし、
前記第二層の弾性率をEIIとし、
前記第三層の弾性率をEIIIとしたとき、
I>EII
II>EIII
であり、
I−EII≦30Mpa
II−EIII≦40Mpa
である陽イオン交換膜。
〔2〕
前記第一層の含水率WIが3〜11%、
前記第二層の含水率WIIが11〜13%、
前記第三層の含水率WIIIが25〜32%である、前記〔1〕に記載の陽イオン交換膜。
〔3〕
前記第一層の弾性率EIが100〜130Mpa、
前記第二層の弾性率EIIが90〜110Mpa、
前記第三層の弾性率EIIIが50〜70Mpaである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の陽イオン交換膜。
〔4〕
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置された、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の陽イオン交換膜を、少なくとも備える電解槽。
本発明によれば、電気分解中における各層間の剥離を抑制する効果が高い陽イオン交換膜が得られる。
本実施形態の陽イオン交換膜の一例の概略断面図を示す。 本実施形態の陽イオン交換膜の開口率を説明するための概念図である。 (a)、(b)本実施形態における陽イオン交換膜の連通孔を形成する方法を説明するための模式図である。 本実施形態に係る電解槽の一実施形態の模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
また、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
なお、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
〔陽イオン交換膜〕
本実施形態の陽イオン交換膜は、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第一層と、含フッ素系重合体からなり、カルボン酸基とスルホン酸基とを有する第二層と、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第三層を有し、各層の含水率及び弾性率の関係が特定の関係を有する陽イオン交換膜である。
以下、第一層、第二層、及び第三層を合わせて膜本体と称することがある。
図1は、本実施形態の陽イオン交換膜の一例の概略断面図を示す。
本実施形態の陽イオン交換膜1は、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第一層11と、含フッ素系重合体からなり、カルボン酸基とスルホン酸基とを有する第二層12と、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第三層13とを有し、
前記第一層11の含水率をWIとし、
前記第二層12の含水率をWIIとし、
前記第三層13の含水率をWIIIとしたとき、
I<WII
II<WIII
であり、
II−WI≦9.5(%)
III−WII≦18(%)
であり、
前記第一層11の弾性率をEIとし、
前記第二層12の弾性率をEIIとし、
前記第三層13の弾性率をEIIIとしたとき、
I>EII
II>EIII
であり、
I−EII≦30Mpa
II−EIII≦40Mpa
である。
膜本体は陽イオンを選択的に透過する機能を有し、膜本体を構成する第一層11〜第三層13が、それぞれ所定のイオン交換基を有する含フッ素系重合体を含むものである。
ここでいうイオン交換基を有する含フッ素系重合体とは、イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体、を有する含フッ素系重合体をいう。例えば、フッ素化炭化水素の主鎖からなり、加水分解等によりイオン交換基に変換可能な官能基をペンダント側鎖として有し、かつ溶融加工が可能な重合体等が挙げられる。
このような含フッ素系重合体の製造方法について、以下に説明する。
第一層11を構成するカルボン酸基を有する含フッ素系重合体については、以下の第1群の単量体、及び第2群の単量体を共重合する、又は第2群の単量体を単独重合することによって、製造することができる。
第三層13を構成するスルホン酸基を有する含フッ素重合体については、以下の第1群の単量体、及び第3群の単量体を共重合する、又は第3群の単量体を単独重合することによって、製造することができる。
第二層12を構成する、含フッ素系重合体であってカルボン酸基とスルホン酸基を有するものについては、カルボン酸基を有する含フッ素重合体と、スルホン酸基を有する含フッ素重合体との混合物でもよく、カルボン酸基とスルホン酸基を有する含フッ素系共重合体でもよい。
前者については、上述のようにして製造したカルボン酸基を有する含フッ素系重合体とスルホン酸基を有する含フッ素系重合体とを混合することによって、製造することができる。
後者については、以下の第1群、第2群、及び第3群の単量体を共重合させるか、第二群及び第三群の単量体を共重合させることによって、製造することができる。
第1群の単量体としては、例えば、フッ化ビニル化合物が挙げられる。
フッ化ビニル化合物としては、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
CF2=CX12 ・・・(1)
(ここで、一般式(1)中、X1、X2=−F、−Cl、−H、又は−CF3である。)
上記一般式(1)で表わされるフッ化ビニル化合物としては、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。
特に、本実施形態に係る陽イオン交換膜をアルカリ電解用膜として用いる場合、フッ化ビニル化合物は、パーフルオロ単量体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選ばれるパーフルオロ単量体がより好ましい。さらに好ましくは、テトラフルオロエチレン(TFE)である。
第2群の単量体としては、例えば、カルボン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
カルボン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
CF2=CF(OCF2CYF)s−O(CZF)t−X ・・・(2)
(ここで、一般式(2)中、sは0〜2の整数を表し、tは1〜12の整数を表し、Y及びZは、各々独立して、F又はCF3を表し、Xはアルカリ性媒体中にて加水分解されカルボン酸基となる前駆体であり、カルボン酸エステル基−COOR(R:炭素数1〜4のアルキル基)、シアノ基−CN、酸ハライド−COZ(Z:ハロゲン原子)の中から選ばれる。)
より好ましくは、下記一般式(2−1)で表わされる、カルボン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物である。
CF2=CF(OCF2CYF)n−O(CF2m−COOR ・・・(2−1)
(ここで、一般式(2−1)中、nは0〜2の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、YはF又はCF3を表し、RはCH3、C25又はC37を表す。)。
上記一般式(2−1)において、YがCF3であり、RがCH3であることが好ましい。
特に、本実施形態に係る陽イオン交換膜をアルカリ電解用陽イオン交換膜として用いる場合、第2群の単量体としてパーフルオロ単量体を少なくとも用いることが好ましいが、エステル基のアルキル基(上記R参照)は加水分解される時点で重合体から失われるため、アルキル基(R)は全ての水素原子がフッ素原子に置換されているパーフルオロアルキル基でなくてもよい。これらの中でも、例えば、下記に表す単量体がより好ましい;
CF2=CFOCF2−CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF2)O(CF22COOCH3
CF2=CF[OCF2−CF(CF3)]2O(CF22COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23COOCH3
CF2=CFO(CF22COOCH3
CF2=CFO(CF23COOCH3
第3群の単量体としては、例えば、スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、下記一般式(3)で表わされるものが好ましい。
CF2=CF(OCF2CFX3)On(CF2mW ・・・(3)
(ここで、上記一般式(3)において、X3=−F又は−CF3、m=1〜3の整数、n=0、1又は2、Wはアルカリ性媒体中にて加水分解されスルホン酸基となる前駆体であり、ハロゲン化スルフォニル基−SO24(X4は−F,−Cl,−Brから選ばれる。)、或いはアルキルスルフォン基−SO2R(Rは炭素数1〜4の低級アルキル基)から選ばれる。)
より好ましくは、下記一般式(3−1)で表わされる、スルホン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物である。
CF2=CFO−X−CF2−SO2F ・・・(3−1)
(ここで、一般式(3−1)において、Xはパーフルオロ基を表す。)。
これらの具体例としては、下記に表す単量体等が挙げられる;
CF2=CFOCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CF(CF22SO2F、
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F。
これらの中でも、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fがより好ましい。
これら単量体から得られる重合体又は共重合体は、フッ化エチレンの単独重合及び共重合に対して開発された重合法、特にテトラフルオロエチレンに対して用いられる一般的な重合方法によって製造することができる。
例えば、非水性法においては、パーフルオロ炭化水素、クロロフルオロカーボン等の不活性溶媒を用い、パーフルオロカーボンパーオキサイドやアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、温度0〜200℃、圧力0.1〜20MPaの条件下で、重合反応を行うことができる。
上記共重合において、上記単量体の組み合わせの種類及びその割合は、特に限定されず、得られる含フッ素系重合体に付与したい官能基の種類及び量等によって選択決定される。
含フッ素系重合体の総イオン交換容量は、乾燥樹脂として0.5〜2.0mg当量/gであることが好ましく、0.6〜1.5mg当量/gであることがより好ましい。ここでいう総イオン交換容量とは、乾燥樹脂の単位重量あたりの交換基の当量のことをいい、中和滴定等によって測定することができる。
(層構成)
<第一層>
本実施形態の陽イオン交換膜1において、第一層11は、上述したようにカルボン酸基を有する含フッ素系重合体からなる。
第一層11の厚みとしては、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜30μmであり、さらに好ましくは、10〜20μmである。
<第二層>
本実施形態の陽イオン交換膜1において、第二層12は、上述したように、含フッ素系重合体からなり、カルボン酸基とスルホン酸基とを有する。
第二層12は、陽イオン交換膜の強度を支配する層であるため、厚みが30〜120μmであることが好ましく、より好ましくは40〜100μmであり、さらに好ましくは50〜70μmである。
<第三層>
本実施形態の陽イオン交換膜1において、第三層13は、上述したようにスルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる。
第三層13の厚みは、15〜70μmが好ましく、より好ましくは30〜60μmである。
(第一層〜第三層の含水率の関係)
本実施形態の陽イオン交換膜は、含水率が、第一層11より第二層12が大きく、第二層12より第三層13が大きい。
「含水率」とは、各層が含有する水分の質量を、各層の乾燥重量で除した割合をいい、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本実施形態の陽イオン交換膜は、第一層11と第二層12の含水率の差が9.5%以下であり、第二層12と第三層13の含水率の差が18.0%以下である。
すなわち、前記第一層11の含水率をWIとし、
前記第二層12の含水率をWIIとし、
前記第三層13の含水率をWIIIとしたとき、
I<WII
II<WIII
であり、
II−WI≦9.5(%)
III−WII≦18(%)
である。
II−WIが9.5(%)以下であり、WIII−WIIが18(%)以下であることによって、層間の化学的な親和性が向上し、電解中において層間に歪みが生じにくい。そのため、剥離耐性が向上する。
II−WIは、好ましくは7(%)以下であり、より好ましくは4(%)以下である。
III−WIIは、好ましくは15(%)以下であり、より好ましくは12(%)以下である。
各層間の含水率の差、すなわち第一層と第二層の含水率差、第二層と第三層の含水率差が小さいほど、陽イオン交換膜の剥離耐性はより向上するが、陽イオン交換膜の電解性能の観点から、0.1%以上であることが好ましい。より好ましくは1%以上である。
第一層11の含水率WIが3〜11%、第二層12の含水率WIIが11〜13%、第三層13の含水率WIIIが25〜32%であることが好ましい。この範囲であることにより、より剥離耐性が向上し、さらに、生成する水酸化アルカリ中の不純物濃度も減少させることができる。
(第一層〜第三層の弾性率の関係)
本実施形態の陽イオン交換膜は、弾性率が第一層11より第二層12が小さく、第二層12より第三層13が小さい。
本実施形態の陽イオン交換膜は、第一層11と第二層12の弾性率の差が30Mpa以下であり、第二層12と第三層13の弾性率の差が40Mpa以下である。
すなわち、前記第一層11の弾性率をEIとし、
前記第二層12の弾性率をEIIとし、
前記第三層13の弾性率をEIIIとしたとき、
I>EII
II>EIII
であり、
I−EII≦30Mpa
II−EIII≦40Mpa
である。
I−EIIが30Mpa以下であり、EII−EIIIが40Mpa以下であることによって、層間の物理的な密着性が向上し、電解中の各層の歪み度合いの差が小さくなり、各層の密着性が向上する。
I−EIIは、好ましくは20MPa以下であり、より好ましくは10MPa以下である。
II−EIIIは、好ましくは30MPa以下であり、より好ましくは20MPa以下である。
「弾性率」は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
各層間の弾性率の差、すなわち第一層と第二層の弾性率差、第二層と第三層の弾性率差が小さいほど、陽イオン交換膜の剥離耐性はより向上するが、陽イオン交換膜の電解性能の観点から、0.1MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、1MPa以上である。
第一層11の弾性率EIが100〜130Mpa、第二層12の弾性率EIIが90〜110Mpa、第三層13の弾性率EIIIが50〜70Mpaであることが好ましい。
本実施形態の陽イオン交換膜は、各層間の含水率の差及び各層間の弾性率の差を特定の数値以下に限定したことにより、優れた剥離耐性を発揮することができる。
各層の含水率の差が小さいだけでは、層間の物理的な密着性が不十分であり、電解中の各層の歪み度合いの差が大きく、各層の密着性が低い。一方、各層の弾性率の差が小さいだけでは、層間の化学的な親和性が不十分であり、電解中において層間に歪みが生じやすい。本実施形態の陽イオン交換膜は、各層の含水率の差と弾性率の差をいずれも特定の値以下にすることにより、各層の物理的な密着性と化学的な親和性が共に高いものとすることができる。そのため、電解中において、各層が剥離することがなく、安定して電解を行うことができる。
(強化芯材)
本実施形態の陽イオン交換膜は、膜本体の内部に配置された強化芯材を有することが好ましい。
強化芯材は、陽イオン交換膜の強度や寸法安定性を強化する部材である。強化芯材を膜本体の内部に配置させることで、特に、陽イオン交換膜の伸縮を所望の範囲に制御することができる。かかる陽イオン交換膜は、電解時等において、必要以上に伸縮せず、長期に優れた寸法安定性を維持することができる。
強化芯材の構成は、特に限定されず、例えば、強化糸と呼ばれる糸を紡糸して形成させてもよい。ここでいう強化糸とは、強化芯材を構成する部材であって、陽イオン交換膜に所望の寸法安定性及び機械的強度を付与できるものであり、かつ、陽イオン交換膜中で安定に存在できる糸のことをいう。かかる強化糸を紡糸した強化芯材を用いることにより、一層優れた寸法安定性及び機械的強度を陽イオン交換膜に付与することができる。
強化芯材及びこれに用いる強化糸の材料は、特に限定されないが、酸やアルカリ等に耐性を有する材料であることが好ましく、長期にわたる耐熱性、耐薬品性が必要であることから、フッ素系重合体から成る繊維が好ましい。
例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、トリフルオロクロルエチレン−エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン重合体(PVDF)等が挙げられる。特に耐熱性及び耐薬品性の観点から、ポリテトラフルオロエチレンからなる繊維を用いることが好ましい。
強化芯材に用いられる強化糸の糸径は、特に限定されないが、好ましくは20〜300デニール、より好ましくは50〜250デニールである。織り密度(単位長さあたりの打ち込み本数)は、好ましくは5〜50本/インチである。強化芯材の形態としては、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編布等が用いられるが、織布の形態であることが好ましい。また、織布の厚みは、好ましくは30〜250μm、より好ましくは30〜150μmのものが使用される。
織布又は編布は、モノフィラメント、マルチフィラメント又はこれらのヤーン、スリットヤーン等が使用でき、織り方は平織り、絡み織り、編織り、コード織り、シャーサッカ等の種々の織り方が使用できる。
膜本体における強化芯材の織り方及び配置は、特に限定されず、陽イオン交換膜の大きさや形状、陽イオン交換膜に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。
例えば、膜本体の所定の一方向に沿って強化芯材を配置してもよいが、寸法安定性の観点から、所定の第一の方向に沿って強化芯材を配置し、かつ第一の方向に対して略垂直である第二の方向に沿って別の強化芯材を配置することが好ましい。膜本体の縦方向膜本体の内部において、略直行するように複数の強化芯材を配置することで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。例えば、膜本体の表面において縦方向に沿って配置された強化芯材(縦糸)と横方向に沿って配置された強化芯材(横糸)を織り込む配置が好ましい。縦糸と横糸を交互に浮き沈みさせて打ち込んで織った平織りや、2本の経糸を捩りながら横糸と織り込んだ絡み織り、2本又は数本ずつ引き揃えて配置した縦糸に同数の横糸を打ち込んで織った斜子織り(ななこおり)等とすることが、寸法安定性、機械的強度及び製造容易性の観点からより好ましい。
特に、陽イオン交換膜のMD方向(Machine Direction方向)及びTD方向(Transverse Direction方向)の両方向に沿って強化芯材が配置されていることが好ましい。すなわち、MD方向とTD方向に平織りされていることが好ましい。ここで、MD方向とは、後述する陽イオン交換膜の製造工程において、膜本体や各種芯材(例えば、強化芯材、強化糸、後述する犠牲糸等)が搬送される方向(流れ方向)をいい、TD方向とは、MD方向と略垂直の方向をいう。そして、MD方向に沿って織られた糸をMD糸といい、TD方向に沿って織られた糸をTD糸という。通常、電解に用いる陽イオン交換膜は、矩形状であり、長手方向がMD方向となり、幅方向がTD方向となることが多い。MD糸である強化芯材とTD糸である強化芯材を織り込むことで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。
強化芯材の配置間隔は、特に限定されず、陽イオン交換膜に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。
強化芯材の開口率は、特に限定されず、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上90%以下である。開口率は、陽イオン交換膜1の電気化学的性質の観点から30%以上が好ましく、陽イオン交換膜の機械的強度の観点から、90%以下が好ましい。
強化芯材の開口率とは、膜本体のいずれか一方の表面の面積(A)におけるイオン等の物質(電解液及びそれに含有される陽イオン(例えば、ナトリウムイオン))が通過できる表面の総面積(B)の割合(B/A)をいう。イオン等の物質が通過できる表面の総面積(B)とは、陽イオン交換膜において、陽イオンや電解液等が、陽イオン交換膜に含まれる強化芯材等によって遮断されない領域の総面積ということができる。
図2は、陽イオン交換膜を構成する強化芯材の開口率を説明するための概略図である。
図2は陽イオン交換膜1の一部を拡大し、その領域内に強化芯材2、22の配置のみを図示しているものであり、他の部材については図示を省略している。
縦方向に沿って配置された強化芯材2と横方向に配置された強化芯材22によって囲まれた領域であって、強化芯材の面積も含めた領域の面積(A)から強化芯材の総面積(C)を減じることにより、上述した領域の面積(A)におけるイオン等の物質が通過できる領域の総面積(B)を求めることができる。
すなわち、開口率は、下記式(I)により求めることができる。
開口率=(B)/(A)=((A)−(C))/(A)・・・(I)
これら強化芯材の中でも、特に好ましい形態は、耐薬品性及び耐熱性の観点から、PTFEを含むテープヤーン又は高配向モノフィラメントである。具体的には、PTFEからなる高強度多孔質シートをテープ状にスリットしたテープヤーン、又はPTFEからなる高度に配向したモノフィラメントの50〜300デニールを使用し、かつ、織り密度が10〜50本/インチである平織りであり、その厚みが50〜100μmの範囲である強化芯材であることがより好ましい。かかる強化芯材を含む陽イオン交換膜の開口率は60%以上であることが更に好ましい。
強化糸の形状としては、丸糸、テープ状糸等が挙げられる。好ましくは、テープ状糸である。
(連通孔)
本実施形態のイオン交換膜は、膜本体の内部に連通孔を有することが好ましい。
連通孔とは、電解の際に発生する陽イオンや電解液の流路となり得る孔をいう。
また、連通孔とは、膜本体内部に形成されている管状の孔であり、後述する犠牲芯材(又は犠牲糸)が溶出することで形成される。連通孔の形状や径等は、犠牲芯材(犠牲糸)の形状や径を選択することによって制御することができる。
陽イオン交換膜に連通孔を形成することで、電解の際に発生するアルカリイオンや電解液の移動性を確保できる。連通孔の形状は特に限定されないが、後述する製法によれば、連通孔の形成に用いられる犠牲芯材の形状とすることができる。
本実施形態において、連通孔は、強化芯材の陽極側(スルホン酸層側)と陰極側(カルボン酸層側)を交互に通過するように形成されることが好ましい。かかる構造とすることで、強化芯材の陰極側に連通孔が形成されている部分では、連通孔に満たされている電解液を通して輸送された陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)が、強化芯材の陰極側にも流れることができる。その結果、陽イオンの流れが遮蔽されることがないため、陽イオン交換膜の電気抵抗を更に低くすることができる。
連通孔は、本実施形態の陽イオン交換膜を構成する膜本体の所定の一方向のみに沿って形成されていてもよいが、より安定した電解性能を発揮するという観点から、膜本体の縦方向と横方向との両方向に形成されていることが好ましい。
(コーティング層)
本実施形態のイオン交換膜は、電解によって発生するガスが付着することを防止する目的で、膜本体のいずれか一方の表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層を有していることが好ましい。
コーティング層を構成する材料としては、特に限定されないが、ガス付着防止の観点から、無機物を含むことが好ましい。無機物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。コーティング層を膜本体の表面に形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、無機酸化物の微細粒子をバインダーポリマー溶液に分散させた液を、スプレー等により塗布する方法(スプレー法)が挙げられる。バインダーポリマーとしては、例えば、スルホン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物等が挙げられる。塗布条件については、特に限定されず、例えば、60℃でスプレーを用いることとすることができる。スプレー法以外の方法としては、例えば、ロールコート等が挙げられる。
具体的には、コーティング層は、スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素系重合体の5質量%エタノール溶液に、1次粒径0.6μmの酸化ジルコニウムを20質量%の割合となるように加えて分散させた懸濁液をスプレー法で上記の複合膜の両面に噴霧し、乾燥させることにより、0.5mg/cm2の厚みで塗布することができる。
コーティング層は、膜本体の表面の一部を被覆するものであればよいが、ガス付着防止の観点から、膜本体の表面全てを被覆することが好ましい。
コーティング層の平均厚みは、ガス付着防止と厚みによる電気抵抗増加の観点から、1〜10μmであることが好ましい。
(凸部)
図示はしないが、本実施形態の陽イオン交換膜は、膜本体の表面に、断面視において、高さが20μm以上である凸部が形成されていることが好ましい。当該凸部は、含フッ素系重合体からなることが好ましい。
特に、図1に示す第三層(スルホン酸層)13が、凸部を有することによって、電解の際に電解液が十分に膜本体に供給されることから、不純物による影響をより低減することができる。
通常、電解電圧を下げる目的で、陽イオン交換膜は陽極と密着した状態で使用される。一方、陽イオン交換膜と陽極とが密着すると、電解液(塩水等)の供給がされづらくなる傾向にある。そこで、陽イオン交換膜の表面に凸部を形成することにより、陽イオン交換膜と陽極との密着を抑制することができるため、電解液の供給をスムーズに行うことができる。その結果、陽イオン交換膜中に金属イオンやその他の不純物等が蓄積されることを防止できる。
凸部の配置密度は、特に限定されないが、電解液を膜に十分に供給する観点から、20〜1500個/cm2であることが好ましく、50〜1200個/cm2であることがより好ましい。
凸部の形状は、特に限定されないが、円錐状、多角錐状、円錐台状、多角錐台状、半球状、ドーム状からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。なおここで言う半球状とは、ドーム状等とよばれる形状も包含する。
上述した凸部の高さ、形状及び配置密度は、以下の方法によりそれぞれ測定・確認することができる。
まず、陽イオン交換膜の1000μm四方の範囲の膜表面において、高さが一番低い点を基準とする。そして、その基準点から高さが20μm以上である部分を凸部とする。
高さの測定方法としては、KEYENCE社製「カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9710)」を用いて行う。具体的には、乾燥状態の陽イオン交換膜から、任意に10cm×10cmの箇所を切り出し、平滑な板と陽イオン交換膜の陽極側を両面テープで固定し、陽イオン交換膜の陰極側を測定レンズに向けるよう測定ステージにセットする。各10cm×10cmの膜において、1000μm四方の測定範囲で、陽イオン交換膜表面における形状を観測し、高さが一番低い点を基準とし、そこからの高さを測定することで凸部を観測することができる。
また、凸部の配置密度については、任意に10cm×10cmの膜を3箇所切り出して、その各10cm×10cmの膜において、1000μm四方の測定範囲で9箇所測定した値を平均した値である。
〔陽イオン交換膜の製造方法〕
以下、本実施形態の陽イオン交換膜の製造方法について説明するが、本実施形態の陽イオン交換膜は、各層の含水率と弾性率を制御し、これらが所定の関係を有するようにする必要がある。
含水率に対しては、含フッ素系重合体のイオン交換容量、及び陽イオン交換膜の製造時における加水分解の条件を調整することにより制御することができる。弾性率に対しては含フッ素系重合体のイオン交換容量を調整することにより制御することができる。
以下、詳細に説明する。
本実施形態に係る陽イオン交換膜の好適な製造方法としては、以下の(1)工程〜(5)工程を有する方法が挙げられる。
(1)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を製造する工程。
(2)工程:必要に応じて、複数の強化芯材と、酸又はアルカリに溶解する性質を有し、連通孔を形成する犠牲糸と、を少なくとも織り込むことにより、隣接する強化芯材同士の間に犠牲糸が配置された補強材を得る工程。
(3)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する前記含フッ素系重合体をフィルム化する工程。
(4)工程:前記フィルムに必要に応じて前記補強材を埋め込んで、前記補強材が内部に配置された膜本体を得る工程。
(5)工程:(4)工程で得られた膜本体を加水分解する工程(加水分解工程)。
上記方法によれば、(1)工程で、含フッ素系重合体のイオン交換容量を制御し、(5)工程で、加水分解の条件を制御することにより、本実施形態の陽イオン交換膜を構成する各層の含水率と弾性率を制御できる。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
(1)工程:含フッ素系重合体の製造工程
本実施形態において、含フッ素系重合体のイオン交換容量を制御するためには、各層を形成する含フッ素系重合体の製造において、原料の単量体の混合比を調整する必要がある。それによって、各層の含水率及び弾性率を制御することができる。
第一層を形成するカルボン酸基を有する含フッ素系重合体は、前記第1群の単量体と、前記第2群の単量体とを、以下の質量比で共重合して製造することが好ましい。
第1群の単量体:第2群の単量体=6:1〜11:1とすることが好ましく、より好ましくは、7:1〜11:1である。第1群の単量体の含有量が少ないとイオン交換容量が高くなり、第1層の含水率が高くなり、弾性率が低くなる。
第三層を形成するスルホン酸基を有する含フッ素重合体は、第3群の単量体を重合して製造するか、又は第1群の単量体と、第3群の単量体とを、以下の質量比で共重合して製造することが好ましい。
第1群の単量体:第3群の単量体=4:1〜6:1とすることが好ましく、より好ましくは、第1群の単量体:第3群の単量体=5:1〜6:1である。
第1群の単量体の含有量が少ないと、イオン交換容量が高くなり、第三層の含水率が高くなり、弾性率が低くなる。
第二層を形成する含フッ素系重合体であってカルボン酸基とスルホン酸基を有するものは、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体とスルホン酸基を有する含フッ素系重合体とを混合することによって製造するか、第1群、第2群、及び第3群の単量体を共重合させるか、第2群及び第3群の単量体を共重合させることによって、製造することができる。
このとき、いずれの場合においても、第1群の単量体:第2群の単量体の質量比を6:1〜7:1とし、かつ、第1群の単量体:第3群の単量体の質量比を5:1〜6:1として、製造することが好ましい。
第二層を形成する含フッ素系重合体において、第1群の単量体の含有量が少ないとイオン交換容量が高くなり、第二層の含水率が高くなり、弾性率が低くなる。
この(1)工程において、各層を構成する含フッ素系重合体を製造する際に、上記質量比となるように重合又は混合して、後述する条件で加水分解することにより、第一層と第二層、第二層と第三層の含水率の差が小さく、かつ、弾性率差が小さいイオン交換膜が得られる。
(2)工程:補強材の製造工程
補強材とは、強化糸を織った織布等である。補強材が膜内に埋め込まれることで、強化芯材を形成する。連通孔を有する陽イオン交換膜とするときには、犠牲糸も一緒に補強材へ織り込む。この場合の犠牲糸の混織量は、好ましくは補強材全体の10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。あるいは、20〜50デニールの太さを有し、モノフィラメント又はマルチフィラメントからなるポリビニルアルコール等も好ましい。
前記犠牲糸を織り込むことにより、強化芯材の目ズレを防止できる。
犠牲糸は、膜の製造工程もしくは電解環境下において溶解性を有するものであり、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース及びポリアミド等が用いられる。この場合の混織量は、好ましくは織布又は編布全体の10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
なお、(2)工程において、強化芯材や犠牲糸の配置を調整することにより、開口率や連通孔の配置等を制御することができる。
(3)工程:フィルム化工程
(3)工程では、前記(1)工程で得られた含フッ素系重合体を、押出し機を用いてフィルム化する。
フィルム化する方法としては以下のものが挙げられる。
図1に示す第一層11を形成するカルボン酸基を有する含フッ素系重合体、第二層12を形成する含フッ素系重合体、第三層13を形成するスルホン酸基を有する含フッ素系重合体をそれぞれ別々にフィルム化する方法。
第一層11を形成する含フッ素系重合体と、第二層12を形成する含フッ素系重合体とを共押出しにより、複合フィルムとし、第三層13を形成する含フッ素系重合体を単独でフィルム化する方法。
第一層11を形成する含フッ素系重合体を単独でフィルム化し、第二層12を形成する含フッ素系重合体と、第三層13を形成する含フッ素系重合体とを共押出しにより、複合フィルムとする方法。
なお、第一層11のフィルム、第二層12のフィルム、第三層13のフィルム、及びこれらの複合フィルムは、複数枚であってもよい。
第一層11と第二層12とを共押出しすることは、界面の接着強度を高めることに寄与するため好ましい。
(4)工程:膜本体を得る工程
(4)工程では、前記(3)工程で得られたフィルムに、及び前記(2)工程で得られた補強材を埋め込むことで、補強材が内在する膜本体を得る。
具体的には、ドラムの上に、透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、補強材及びフィルムを積層し、各ポリマーが溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら埋め込んで一体化することで、複合膜が得られる。
ドラムとしては、加熱源及び真空源を有し、その表面に多数の細孔を有するものが挙げられる。
補強材及びフィルムを積層する際の順番としては、前記(3)工程に合わせて以下の順が挙げられる。
ドラムの上に、離型紙、第三層13のフィルム、補強材、第二層12のフィルム、第一層11のフィルムの順に積層する順。
ドラムの上に、離型紙、第三層13のフィルム、補強材、第二層12と第一層11の複合フィルムの順に積層する順。
ドラムの上に、離型紙、第三層13と第二層12の複合フィルム、補強材、第一層11のフィルムの順に積層する順。
また、減圧下で一体化する方法は、加圧プレスにより一体化する方法に比べて、補強材上の第三層13の厚みが大きくなる特徴を有している。更に、補強材が膜の内面に強固に固定されるため、膜の機械的強度が十分に保持できる性能を有している。
また、本実施形態の陽イオン交換膜において、膜本体の表面に凸部を形成する方法としては、特に限定されず、樹脂表面に凸部を形成する公知の方法を採用することができる。
具体的には、膜本体の表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。例えば、前記した各種複合フィルムと補強材等とを一体化する際に、予めエンボス加工した離型紙を用いることによって、上記の凸部を形成させることができる。
(5)工程:加水分解する工程
(5)工程では、前記(4)工程で得られた膜本体を、酸又はアルカリによって加水分解を行う。
この加水分解の工程において、加水分解条件、すなわち、溶液組成や加水分解温度、時間を変えることによって含水率を制御することができる。
具体的には、以下の通りである。
本実施形態に係る陽イオン交換膜を製造するための加水分解は、6.3〜7.5規定(N)のKOHと4.5〜5.5質量%のDMSOの水溶液中で90〜95℃で、25〜35分間行うことが好ましい。その後、85〜95℃の条件下、0.5〜0.7規定(N)NaOH溶液を用いて平衡処理を行うことが好ましい。
含水率を変化させる場合、加水分解溶液の組成や温度、時間を変えることにより制御できる。例えば、含水率を上昇させる場合、加水分解溶液中のKOH濃度を低下、DMSO(Dimethyl sulfoxide)濃度を上昇、加水分解温度を上昇、加水分解時間を長くすることにより達成できる。
上述した(1)工程に加えて、この(5)工程において、加水分解の条件を上述した条件で行うことによって、含水率差に加えて、弾性率差も小さい陽イオン交換膜が得られる。
なお、この(5)工程でイオン交換膜前駆体にイオン交換基を導入することもできる。
また、この加水分解により、膜本体に犠牲糸が含まれている場合、酸又はアルカリで溶解除去することで、膜本体に連通孔を形成させることができる。
なお、犠牲糸は、完全に溶解除去されずに、連通孔に残っていてもよい。また、電解を行うと、連通孔に残っていた犠牲糸は、電解液により溶解除去されてもよい。
ここで、犠牲糸を溶出させることで連通孔を形成する工程についてより詳細に説明する。
図3(a)、(b)は、本実施形態における陽イオン交換膜の連通孔を形成する方法を説明するための模式図である。
図3(a)では、強化芯材52と犠牲糸504a(これにより形成される連通孔504)のみを図示しており、膜本体等の他の部材については、図示を省略している。まず、強化芯材52と犠牲糸504aを編みこみ補強材とする。そして、前記(5)工程において犠牲糸504aが溶出することで図3(b)に示すように連通孔504が形成される。
上記方法によれば、陽イオン交換膜の膜本体内部において強化芯材、連通孔を如何なる配置とするのかに応じて、強化芯材52と犠牲糸504aの編み込み方を調整すればよいため、簡便である。図3(a)では、紙面において縦方向と横方向の両方向に沿って強化芯材と犠牲糸504aを編り込んだ平織りの補強材を例示しているが、必要に応じて補強材における強化芯材52と犠牲糸504aの配置を変更することができる。
上述した(1)工程〜(5)工程を経た後、得られた陽イオン交換膜の表面に、コーティング層を形成してもよい。
コーティング層は、特に限定されず、公知の方法により形成できる。
例えば、無機酸化物の微細粒子をバインダーポリマー溶液に分散させた液を、スプレー等により塗布する方法(スプレー法)が挙げられる。
無機酸化物としては酸化ジルコニウムが挙げられ、バインダーポリマーとしては、例えば、スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物等が挙げられる。
塗布条件については、特に限定されず、例えば、60℃でスプレーを用いることとすることができる。スプレー法以外の方法としては、例えば、ロールコート等が挙げられる。
〔電解槽〕
本実施形態の陽イオン交換膜は、これを用いて電解槽として使用することができる。図4は、本実施形態に係る電解槽の一実施形態の模式図である。
本実施形態の電解槽100は、陽極200と、陰極300と、陽極200と陰極300との間に配置された、本実施形態の陽イオン交換膜1と、を少なくとも備える。ここでは、上記した陽イオン交換膜1を備えた電解槽100を一例として説明しているが、これに限定されるものではなく、本実施形態の効果の範囲内で種々構成を変形して実施することができる。
かかる電解槽100は、種々の電解に使用できるが、以下、代表例として、塩化アルカリ水溶液の電解に使用する場合について説明する。
電解条件は、特に限定されず、公知の条件で行うことができる。例えば、陽極室に2.5〜5.5規定(N)の塩化アルカリ水溶液を供給し、陰極室は水又は希釈した水酸化アルカリ水溶液を供給し、電解温度が50〜120℃、電流密度が5〜100A/dm2の条件で電解することができる。
本実施形態に係る電解槽100の構成は、特に限定されず、例えば、単極式でも複極式でもよい。電解槽100を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、陽極室の材料としては、塩化アルカリ及び塩素に耐性があるチタン等が好ましく、陰極室の材料としては、水酸化アルカリ及び水素に耐性があるニッケル等が好ましい。電極の配置は、陽イオン交換膜1と陽極200との間に適当な間隔を設けて配置してもよいが、陽極200と陽イオン交換膜1が接触して配置されていても、何ら問題なく使用できる。また、陰極は一般的には陽イオン交換膜と適当な間隔を設けて配置されているが、この間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であっても、何ら問題なく使用できる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の単位において、特に断りがない限り、質量基準に基づくものとする。
〔含水率測定方法〕
後述する実施例、比較例における陽イオン交換膜を構成する各層の含有率について、各層の構成材料を用いてフィルムを作製し、これを用いて測定、算出した。
先ず、各層を構成する含フッ素系重合体を単層でフィルム化し、当該フィルムに対し、実施例、比較例における条件で加水分解及び平衡処理を行った。
その後、90℃の32質量%のNaOHに8時間浸漬した後、室温に冷却して水洗を行い、膜重量W1を測定した。
その後、この膜を水分がなくなるまで真空乾燥機にて8時間以上乾燥し、その重量をW2とした。
更に、乾燥した膜を水洗して膜内に残留しているアルカリ(ドナンアルカリ)を除き、上記と同様の方法で引き続き水分がなくなるまで乾燥し、その重量をW3とした。
含水率ΔWは、W1〜W3を用いて、以下の式で算出した。
ΔW=(W1−W2)/W3×100 (%)
〔弾性率測定方法〕
後述する実施例、比較例における陽イオン交換膜を構成する各層の弾性率について、各層の構成材料を用いてフィルムを作製し、これを用いて測定、算出した。
先ず、各層を構成する含フッ素重合体を単層でフィルム化し、当該フィルムに対し、実施例、比較例における条件で加水分解及び平衡処理を行った。
その後、MD方向(Machine Direction)に対して45度方向に10mm、その直角方向に110mmで切断したサンプルを用意した。
引張り試験機(装置名:TENSILONオリエンテックRTC−1210)を用いて、幅が短い方を両端として長方形のサンプルを両側から引張り、サンプルの歪みがX(=10)(%)となった時の応力をY(kgf/cm2)とした時、弾性率Eは以下の式で表わされる。
E=Y×1.0×105/(X/100) (Pa)
〔剥離耐性評価〕
後述する実施例、比較例における陽イオン交換膜の剥離耐性を下記のようにして評価した。
剥離耐性は、電解を行った後の陽イオン交換膜を観測し、層間の剥離が生じている部分の面積率を測定し、評価した。
先ず、電解に用いる電解槽としては、陽極と陰極との間に陽イオン交換膜を配置した構造であり、電解液を強制的に循環させる型(強制循環型)の電解セルを4個直列に並べたものを用いた。
電解セルにおける陽極と陰極との間の距離は、1.5mmとした。
陰極として、ニッケルのエキスパンドメタルに、触媒として酸化ニッケルが塗布された電極を用いた。
陽極としては、チタンのエキスパンドメタルに、触媒としてルテニウム、イリジウム及びチタンが塗布された電極を用いた。
陽極側には、23g/Lの濃度を維持するように塩水を供給し、陰極側には、25質量%濃度の苛性ソーダを供給した。
なお、電解中は、陰極側に水の供給は行わなかった。
塩水の温度を90℃に設定して、4kA/m2の電流密度で、電解槽の陰極側の液圧が陽極側の液圧よりも5.3kPa高い条件で電解を40時間行った。
電解を行った後の陽イオン交換膜の通電部分の面積をx(cm2)、剥離が生じた部分の面積をy(cm2)とした時、剥離部分の面積率Aは以下の式で表わされる。
面積yは、画像解析ソフト(SCALAR CORPORATION製 UMO2−SUZ−01)を用いて測定した。
A=y/x×100(%)
剥離耐性評価は、剥離部分の面積率Aが25%未満のときを良好:○、25%以上のときを不良:×とした。
実施例、比較例により具体的に陽イオン交換膜を作製した。
以下の実施例、比較例では、
モノマーA:第1群の単量体に該当する下記単量体
CF2=CF2 ・・・(1)
モノマーB:第2群の単量体に該当する下記単量体
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2CO2CH3 ・・・(2)
モノマーC:第3群の単量体に該当する下記単量体
CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F ・・・(3)
とする。
〔実施例1〕
カルボン酸エステル基を含むフッ素重合体(第一層)の材料は、モノマーA:モノマーBを11:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基及びハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第二層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を6.5:1の比で共重合体した含フッ素系重合体、及び、モノマーA:モノマーCの質量比を5.8:1の比で共重合体した含フッ素系重合体を合成した後、これらを混合し、この混合物を用いた。
ハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第三層)の材料は、モノマーA:モノマーCの質量比を5.5:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)とカルボン酸エステル基及びハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第二層)を準備し、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み70μmの2層フィルム(a)を得た。
当該フィルムの断面を観察した結果、第一層の厚みが16.5μm、第二層の厚みが53.5μmであった。
更に、単層Tダイにより、厚み50μmのハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第三層)フィルム(b)を得た。
また、補強材として、ポリテオラフルオロエチレン(PTFE)製100デニールのテープヤーンに900回/mの撚りをかけ糸状とした強化糸と、犠牲糸の経糸として30デニール、6フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りをかけたもの、緯糸として35デニール、8フィラメントのPET製の糸に10回/mの撚りをかけたものを準備し、これらの糸をPTFE糸が24本/インチ、犠牲糸がPTFEに対して4倍の64本/インチとなるよう交互配列で平織りして厚み100μmの織布を得た。得られた織布を加熱された金属ロールで圧着し織布の厚みを70μmに調製した。このとき、PTFE糸のみの開口率は75%であった。
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、フィルム(b)、織布、第二層が織布側に面するようにフィルム(a)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で、各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。
この複合膜をジメチルスルフォキシド(DMSO)5.0質量%、6.5規定(N)のKOHを含む水溶液中で95℃の温度で30分加水分解し、その後、90℃の条件下、0.5規定(N)のNaOH溶液を用いて平衡処理を行った。水洗後0.1N苛性ソーダ水溶液中で90℃の温度で平衡処理を行った。
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、等量重量が910のCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fとの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を10質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径0.02μmの酸化ジルコニウム40質量%加えボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解後の膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させることにより、コーティング層を形成した。
上述のようにして得られた陽イオン交換膜の剥離耐性試験を行ったところ、通電面積に対する剥離部の割合は18%であった。
〔実施例2〕
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を8:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基及びハロゲン化スルフォニル基を有する含フッ素系重合体(第二層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を6.5:1の比で共重合体した含フッ素系重合体、及び、モノマーA:モノマーCの質量比を5.8:1の比で共重合体した含フッ素系重合体を合成した後、これらを混合し、この混合物を用いた。
ハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第三層)の材料は、モノマーA:モノマーCの質量比を5.5:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)とカルボン酸エステル基及びハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第二層)とを準備し、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、厚み83.8μmの2層フィルム(a)を得た。
当該フィルムの断面を観察した結果、第一層の厚みが16.5μm、第二層の厚みが67.3μmであった。
更に単層Tダイにより、厚み37μmのハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第三層)フィルム(b)を得た。
実施例1と同様の条件で、複合膜を得、加水分解を行い、コーティング層を膜表面に形成させた。
上述のようにして得られた陽イオン交換膜の剥離耐性試験を行ったところ、通電面積に対する剥離部の割合は14%であった。
〔比較例1〕
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を12:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基及びハロゲン化スルフォニル基を有する含フッ素系重合体(第二層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を6.5:1の比で共重合体した含フッ素系重合体、及び、モノマーA:モノマーCの質量比を5.8:1の比で共重合体した含フッ素系重合体を合成した後、これらを混合し、この混合物を用いた。
ハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第三層)の材料は、モノマーA:モノマーCの質量比を5.5:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)とカルボン酸エステル基及びハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第二層)とを準備し、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、厚み70μmの2層フィルム(a)を得た。
当該フィルムの断面を観察した結果、第一層の厚みが16.5μm、第二層の厚みが53.5μmであった。
更に単層Tダイにより、厚み37μmのハロゲン化スルホン酸基を含むフッ素重合体(第三層)フィルム(b)を得た。
実施例1と同様の条件で、複合膜を得、加水分解を行い、コーティング層を膜表面に形成させた。
上述のようにして得られた陽イオン交換膜の剥離耐性試験を行ったところ、通電面積に対する剥離部の割合は30%であった。
〔比較例2〕
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を11:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基及びハロゲン化スルフォニル基を有する含フッ素系重合体(第二層)の材料は、モノマーA:モノマーBの質量比を6.5:1の比で共重合体した含フッ素系重合体、及び、モノマーA:モノマーCの質量比を5.8:1の比で共重合体した含フッ素系重合体を合成した後、これらを混合し、この混合物を用いた。
ハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第三層)の材料は、モノマーA:モノマーCの質量比を4.5:1の比で共重合した共重合体を用いた。
カルボン酸エステル基を有する含フッ素系重合体(第一層)とカルボン酸エステル基及びハロゲン化スルホン酸基を有する含フッ素系重合体(第二層)とを準備し、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、厚み83.8μmの2層フィルム(a)を得た。
当該フィルムの断面を観察した結果、第一層の厚みが16.5μm、第二層の厚みが67.3μmであった。
更に単層Tダイにより、厚み37μmのハロゲン化スルホン酸基を含むフッ素重合体(第三層)フィルム(b)を得た。
実施例1と同様の条件で、複合膜を得、加水分解を行い、コーティング層を膜表面に形成させた。
上述のようにして得られた陽イオン交換膜の剥離耐性試験を行ったところ、通電面積に対する剥離部の割合は30%であった。
Figure 2013163860
表1に示すように、実施例1、2の陽イオン交換膜は、電気分解工程における剥離耐性が高いことが分かった。
本発明の陽イオン交換膜は、塩化アルカリ電解等の分野で好適に用いることができる。
1 陽イオン交換膜
2,22 強化芯材
11 第一層
12 第二層
13 第三層
52 強化芯材
100 電解槽
200 陽極
300 陰極
504 連通孔
504a 犠牲糸

Claims (4)

  1. カルボン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第一層と、
    含フッ素系重合体からなり、カルボン酸基とスルホン酸基とを有する第二層と、
    スルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる第三層と、
    を有し、
    前記第一層の含水率をWIとし、
    前記第二層の含水率をWIIとし、
    前記第三層の含水率をWIIIとしたとき、
    I<WII
    II<WIII
    であり、
    II−WI≦9.5(%)
    III−WII≦18(%)
    であり、
    前記第一層の弾性率をEIとし、
    前記第二層の弾性率をEIIとし、
    前記第三層の弾性率をEIIIとしたとき、
    I>EII
    II>EIII
    であり、
    I−EII≦30Mpa
    II−EIII≦40Mpa
    である陽イオン交換膜。
  2. 前記第一層の含水率WIが3〜11%、
    前記第二層の含水率WIIが11〜13%、
    前記第三層の含水率WIIIが25〜32%である、請求項1に記載の陽イオン交換膜。
  3. 前記第一層の弾性率EIが100〜130Mpa、
    前記第二層の弾性率EIIが90〜110Mpa、
    前記第三層の弾性率EIIIが50〜70Mpaである、請求項1又は2に記載の陽イオン交換膜。
  4. 陽極と、
    陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に配置された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の陽イオン交換膜を、少なくとも備える電解槽。
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