JP2013163791A - 陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽 - Google Patents

陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽 Download PDF

Info

Publication number
JP2013163791A
JP2013163791A JP2012028800A JP2012028800A JP2013163791A JP 2013163791 A JP2013163791 A JP 2013163791A JP 2012028800 A JP2012028800 A JP 2012028800A JP 2012028800 A JP2012028800 A JP 2012028800A JP 2013163791 A JP2013163791 A JP 2013163791A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cation exchange
exchange membrane
thickness
membrane
reinforcing core
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012028800A
Other languages
English (en)
Inventor
Manabu Sugimoto
学 杉本
Yoshinori Sumi
佳典 角
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Chemicals Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Chemicals Corp filed Critical Asahi Kasei Chemicals Corp
Priority to JP2012028800A priority Critical patent/JP2013163791A/ja
Priority to CN201210311111.5A priority patent/CN103243346B/zh
Publication of JP2013163791A publication Critical patent/JP2013163791A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)

Abstract

【課題】折り曲げ等に対する機械的強度に優れ、長期に安定した電解性能を発揮するイオン交換膜を提供する。
【解決手段】イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体10と、当該膜本体10の内部に配置された強化芯材4とを有する陽イオン交換膜1であって、当該陽イオン交換膜1は、厚み方向の断面において、屈曲形状となっており、当該陽イオン交換膜1自体の膜厚のうち、最も厚い部分の膜厚を、実質厚みLとし、当該陽イオン交換膜1の、厚み方向の断面における、前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wと、当該屈曲部における陽イオン交換膜の膜厚Tとの和を、見かけ厚みHとしたとき、前記陽イオン交換膜1の実質厚みLに対する前記見かけ厚みHの比(H/L)が、1.30〜3である陽イオン交換膜。
【選択図】図1

Description

本発明は、陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽に関する。
含フッ素系陽イオン交換膜は、耐熱性及び耐薬品性等が優れていることから、塩化アルカリの電気分解(以下、電解)において、塩素とアルカリを製造するための電解用陽イオン交換膜として用いられている。その他にも、オゾン発生用隔膜、燃料電池、水電解及び塩酸電解等の種々の電解用隔膜等として用いられている。その中で、塩水等を電気分解して苛性ソーダと塩素と水素を製造する塩化アルカリの電解では、アニオン排除性の高いカルボン酸基をイオン交換基とするカルボン酸層と、低抵抗のスルホン酸基をイオン交換基とするスルホン酸層との少なくとも2層から構成されている陽イオン交換膜が一般的に用いられている。
この陽イオン交換膜を用いた電解における性能としては、生産性の観点から流した電流に対する生産効率(電流効率)が高いこと、経済性の観点から電解電圧が低いこと、製品の品質の観点からアルカリ(苛性ソーダ等)中の不純物(食塩等)濃度が低いこと等が要望されている。
また、陽イオン交換膜は、電解運転時に、80〜90℃の塩素及び苛性ソーダと直接接触することから、化学的耐久性が非常に高い含フッ素系ポリマーが陽イオン交換膜の材料として用いられる。
しかし、かかる含フッ素系ポリマーのみでは、陽イオン交換膜として十分な機械的強度を有さないため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる織布等を強化芯材として膜内に埋め込んで補強すること等が行われている。
さらに機械的強度を向上させるために、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、多孔性基材を含む電解用含フッ素系陽イオン交換膜であって、多孔性基材の表面形状に応じた凹凸を形成した電解用含フッ素系陽イオン交換膜が提案されており、膜の折れ曲がりに対する強度が向上することが記載されている。
また、特許文献2には、特定の単位構造を有するポリマーを含むイオン交換膜が提案されており、機械的強度が向上することが記載されている。
特開平04−308096号公報 国際公開第2008/093570号パンフレット
しかしながら、特許文献1に開示されている含フッ素系陽イオン交換膜は、多孔性基材が陽イオン交換膜から突出しているため、電解運転時等に電解槽内の振動等により陽イオン交換膜が電極等と擦れることがあり、それによって、多孔性基材を被覆していた樹脂が削れ、そこから多孔性基材が突き出してしまい、膜本体の補強部材としての機能を果たさなくなるという問題を有しており、また、膜の折れ曲がり等に対する機械的強度も十分に得られていない。
さらに、特許文献2に開示されたイオン交換膜も、折れ曲がり等に対する機械的強度が十分ではなない。
特に、陽イオン交換膜を電解槽に装着するときや、陽イオン交換膜を持ち運ぶとき等に、陽イオン交換膜が折れ曲がると、膜に裂け目が生じたり、穴が空きピンホールが発生したりするという問題がある。
そのため、膜の折れ曲がりに対する強度を向上させた陽イオン交換膜の開発は、安定して電解を行う観点から産業界からも広く望まれているところである。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、折り曲げ等に対する機械的強度に優れた陽イオン交換膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、実質厚みに対する見かけ厚みの比が、1.30倍〜3倍であるイオン交換膜とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕
イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、当該膜本体の内部に配置された強化芯材と、を有する陽イオン交換膜であって、
当該陽イオン交換膜は、厚み方向の断面において、屈曲形状となっており、
当該陽イオン交換膜自体の膜厚のうち、最も厚い部分の膜厚を、実質厚みLとし、
当該陽イオン交換膜の、厚み方向の断面における、前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wと、当該屈曲部における陽イオン交換膜の膜厚Tとの和を、見かけ厚みHとしたとき、
前記陽イオン交換膜の実質厚みLに対する前記見かけ厚みHの比(H/L)が、1.30〜3である陽イオン交換膜。
〔2〕
前記膜本体の内部で、複数本の前記強化芯材が、交差するように配置されており、
前記実質厚みLは、前記強化芯材が交差する位置を含む陽イオン交換膜の断面において、露出する前記強化芯材の断面の、それぞれの前記強化芯材の中心点を結ぶ直線上における、陽イオン交換膜の膜厚である、前記〔1〕に記載の陽イオン交換膜。
〔3〕
前記膜本体の内部に、管状の連通孔をさらに有し、
前記連通孔と前記強化芯材とは、前記膜本体の内部で、交差するように配置されており、
前記実質厚みLは、前記連通孔と前記強化芯材とが交差する位置を含む陽イオン交換膜の断面において、露出する前記連通孔及び前記強化芯材の断面の、前記連通孔と前記強化芯材の中心点を結ぶ直線上における、陽イオン交換膜の膜厚である、前記〔1〕に記載の陽イオン交換膜。
〔4〕
前記膜本体の内部に、管状の連通孔をさらに有し、
複数本の前記連通孔が、前記膜本体の内部で、交差するように配置されており、
前記実質厚みLは、前記連通孔が交差する位置を含む陽イオン交換膜の断面において、露出する前記連通孔の断面の、それぞれの前記連通孔の中心点を結ぶ直線上における、陽イオン交換膜の膜厚である、前記〔1〕に記載の陽イオン交換膜。
〔5〕
陽イオン交換膜が、厚み方向の断面における前記屈曲部を複数有し、全体として波形状である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の陽イオン交換膜。
〔6〕
前記波形状の一周期の距離が、前記膜本体の内部で同一方向に配置されている隣接する強化芯材間の距離である前記〔5〕に記載の陽イオン交換膜。
〔7〕
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置された、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の陽イオン交換膜を、少なくとも備える電解槽。
本発明によれば、折り曲げ等に対する機械的強度に優れ、長期に安定した電解性能を発揮するイオン交換膜を提供することができる。
本実施形態の陽イオン交換膜の概略断面図を示す。 本実施形態の陽イオン交換膜の一例の要部の概略断面図を示す。 本実施形態の陽イオン交換膜の開口率を説明するための概念図である。 本実施形態の陽イオン交換膜1の他の一例の概略断面図である。 本実施形態の陽イオン交換膜1の他の一例の概略断面図である。 本実施形態の陽イオン交換膜1の他の一例の概略断面図である。 (a)、(b)本実施形態における陽イオン交換膜の連通孔を形成する方法を説明するための模式図である。 本実施形態に係る電解槽の一実施形態の模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
また、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
〔陽イオン交換膜〕
本実施形態の陽イオン交換膜はイオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、当該膜本体の内部に配置された強化芯材とを有する陽イオン交換膜である。
当該陽イオン交換膜は、厚み方向の断面において、屈曲形状となっており、
当該陽イオン交換膜自体の膜厚のうち、最も厚い部分の膜厚を、実質厚みLとし、
当該陽イオン交換膜の、厚み方向の断面における、前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wと、当該屈曲部における陽イオン交換膜の膜厚Tとの和を、見かけ厚みHとしたとき、
前記陽イオン交換膜の実質厚みLに対する前記見かけ厚みHの比(H/L)が、1.30〜3である。
(概略)
図1に、本実施形態の陽イオン交換膜の厚み方向の概略断面図を示す。
陽イオン交換膜1は、図1に示すように、厚み方向の断面において、突出した部分と窪んだ部分とにより構成される、複数の屈曲部よりなる、屈曲形状を有している。
図1に示すように、陽イオン交換膜1の断面において、陽イオン交換膜1自体の膜厚のうち、最も厚い部分の膜厚を、実質厚みLとする。また、図1に示すように、陽イオン交換膜1の厚み方向の断面における前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wと、当該屈曲部における陽イオン交換膜の膜厚Tとの和を見かけ厚みHとする。前記実質厚みLに対する前記見かけ厚みHの比(H/L)は、1.30〜3であるものとする。
本実施形態の陽イオン交換膜は、前記実質厚みLと前記見かけ厚みHとの比(H/L)を上記数値範囲に特定したことにより、折り曲げ耐性等の機械的強度の向上効果が得られる。
なお、図1の断面図においては、膜本体10内の強化芯材4の配置状態を限定するものではなく、強化芯材4は、断面において単数であっても、複数が積層した状態であってもよい。
(膜本体)
先ず、本実施形態の陽イオン交換膜1を構成する膜本体10について説明する。
膜本体10は、陽イオンを選択的に透過する機能を有し、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含むものであればよく、その構成や材料は特に限定されず、適宜好適なものを選択することができる。
ここでいうイオン交換基を有する含フッ素系重合体とは、イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体、を有する含フッ素系重合体をいう。例えば、フッ素化炭化水素の主鎖からなり、加水分解等によりイオン交換基に変換可能な官能基をペンダント側鎖として有し、かつ溶融加工が可能な重合体等が挙げられる。このような含フッ素系重合体について、以下に説明する。
含フッ素系重合体は、例えば、下記第1群より選ばれる少なくとも1種の単量体と、下記第2群及び/又は下記第3群より選ばれる少なくとも1種の単量体と、を共重合することにより製造することができる。また、下記第1群、下記第2群、及び下記第3群のいずれかより選ばれる1種の単量体の単独重合により製造することもできる。
第1群の単量体としては、例えば、フッ化ビニル化合物が挙げられる。フッ化ビニル化合物としては、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。特に、本実施形態に係る陽イオン交換膜をアルカリ電解用膜として用いる場合、フッ化ビニル化合物は、パーフルオロ単量体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選ばれるパーフルオロ単量体が好ましい。
第2群の単量体としては、例えば、カルボン酸型イオン交換基(カルボン酸基)に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。カルボン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、例えば、CF2=CF(OCF2CYF)s−O(CZF)t−COORで表される単量体等が挙げられる(ここで、sは0〜2の整数を表し、tは1〜12の整数を表し、Y及びZは、各々独立して、F又はCF3を表し、Rは低級アルキル基を表す。)。
これらの中でも、CF2=CF(OCF2CYF)n−O(CF2m−COORで表される化合物が好ましい。ここで、nは0〜2の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、YはF又はCF3を表し、RはCH3、C25、又はC37を表す。
特に、本実施形態に係る陽イオン交換膜をアルカリ電解用陽イオン交換膜として用いる場合、単量体としてパーフルオロ化合物を少なくとも用いることが好ましいが、エステル基のアルキル基(上記R参照)は加水分解される時点で重合体から失われるため、アルキル基(R)は全ての水素原子がフッ素原子に置換されているパーフルオロアルキル基でなくてもよい。これらの中でも、例えば、下記に表す単量体がより好ましい;
CF2=CFOCF2−CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22COOCH3
CF2=CF[OCF2−CF(CF3)]2O(CF22COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23COOCH3
CF2=CFO(CF22COOCH3
CF2=CFO(CF23COOCH3
第3群の単量体としては、例えば、スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基(スルホン酸基)を有するビニル化合物が挙げられる。スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基(スルホン酸基)を有するビニル化合物としては、例えば、CF2=CFO−X−CF2−SO2Fで表される単量体が好ましい(ここで、Xはパーフルオロ基を表す。)。これらの具体例としては、下記に表す単量体等が挙げられる;
CF2=CFOCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CF(CF22SO2F、
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F。
これらの中でも、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fがより好ましい。
これら単量体から得られる共重合体は、フッ化エチレンの単独重合及び共重合に対して開発された重合法、特にテトラフルオロエチレンに対して用いられる一般的な重合方法によって製造することができる。例えば、非水性法においては、パーフルオロ炭化水素、クロロフルオロカーボン等の不活性溶媒を用い、パーフルオロカーボンパーオキサイドやアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、温度0〜200℃、圧力0.1〜20MPaの条件下で、重合反応を行うことができる。
上記共重合において、上記単量体の組み合わせの種類及びその割合は、特に限定されず、得られる含フッ素系重合体に付与したい官能基の種類及び量によって選択決定される。例えば、カルボン酸エステル官能基のみを含有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群及び第2群から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。また、スルホニルフルオライド官能基のみを含有する重合体とする場合、上記第1群及び第3群の単量体から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。さらに、カルボン酸エステル官能基とスルホニルフルオライド官能基を有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群、第2群及び第3群の単量体から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。この場合、上記第1群及び第2群よりなる共重合体と、上記第1群及び第3群よりなる共重合体とを、別々に重合し、後に混合することによっても目的の含フッ素系重合体を得ることができる。また、各単量体の混合割合は、特に限定されないが、単位重合体当たりの官能基の量を増やす場合、上記第2群及び第3群より選ばれる単量体の割合を増加させればよい。
含フッ素系共重合体の総イオン交換容量は特に限定されないが、0.5〜2.0mg当量/gである乾燥樹脂であることが好ましく、0.6〜1.5mg当量/gである乾燥樹脂がより好ましい。ここで、総イオン交換容量とは、乾燥樹脂の単位重量あたりの交換基の当量のことをいい、中和滴定等によって測定することができる。
本実施形態の陽イオン交換膜1を構成する膜本体10は、図2の本実施形態の陽イオン交換膜1の一例の要部の断面図に示すように、スルホン酸基をイオン交換基として有するスルホン酸層3と、当該スルホン酸層3に積層された、カルボン酸基をイオン交換基として有するカルボン酸層2とを備えることが好ましい。なお、本実施形態の陽イオン交換膜1の膜本体における強化芯材4の配置状態は、図2の例に限定されるものではない。
通常、陽イオン交換膜1は、スルホン酸層3が電解槽の陽極側に、カルボン酸層2が電解槽の陰極側に位置するように配置される。
スルホン酸層3は、電気抵抗が低い材料から構成され、膜強度の観点から膜厚が厚いことが好ましい。
カルボン酸層2は、膜厚が薄くても高いアニオン排除性を有するものが好ましい。ここでいうアニオン排除性とは、陽イオン交換膜1へのアニオンの浸入や透過を妨げようとする性質をいう。かかる層構造の膜本体10とすることで、ナトリウムイオン等の陽イオンの選択的透過性を一層向上させることができる。
スルホン酸層3に用いる重合体としては、例えば、上記した含フッ素系重合体のうち、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体が挙げられる。特に、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fが好ましい。
カルボン酸層2に用いる重合体としては、例えば、上記した含フッ素系重合体のうち、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体が挙げられる。特に、CF2=CFOCF2CF(CF2)O(CF22COOCH3が好ましい。
(強化芯材)
次に、本実施形態の陽イオン交換膜1を構成する強化芯材4について説明する。
本実施形態の陽イオン交換膜1においては、膜本体10の内部に、複数本の強化芯材4を具備していることが好ましく、これら複数本の強化芯材4は、膜本体10の内部で、交差するように配置されていることが好ましい。
強化芯材4とは、陽イオン交換膜1の機械的強度や寸法安定性を強化する部材である。ここで、寸法安定性とは、イオン交換膜の伸び縮みを所望の範囲に抑制できる性質をいう。寸法安定性に優れたイオン交換膜は、加水分解や電気分解等によって、必要以上に伸縮せず、長期に亘り優れた寸法安定性を維持することができる。
強化芯材4の構成は、特に限定されず、例えば、強化糸と呼ばれる糸を紡糸したものであってもよい。
ここでいう強化糸とは、強化芯材4を構成する部材であって、陽イオン交換膜1に所望の寸法安定性及び機械的強度を付与できるものであり、かつ、陽イオン交換膜1中で安定に存在できる糸のことを言う。かかる強化糸を紡糸した強化芯材4を用いることにより、一層優れた寸法安定性及び機械的強度を陽イオン交換膜1に付与することができる。
強化芯材4及びこれに用いる強化糸の材料は、特に限定されないが、酸やアルカリ等に耐性を有する材料であることが好ましく、長期にわたる耐熱性及び耐薬品性の観点から、含フッ素系重合体を含むものがより好ましい。含フッ素系重合体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、トリフルオロクロルエチレン−エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン重合体(PVDF)等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐薬品性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
強化芯材4の形態としては、上記強化糸を用いた織布、編布を用いることができる。これらの中でも、製造の容易性の観点から、織布であることが好ましい。織布の織り方としては、平織りの織り方であることが好ましい。織布の厚みは、特に限定されないが、30〜250μmであることが好ましく、30〜150μmであることがより好ましい。
また、強化糸の織り密度(単位長さあたりの打ち込み本数)は、5〜50本/インチが好ましい。50本/インチ以下であれば、膜の見かけ厚みを高くすることができる。5本/インチ以上であれば、膜の機械的強度を高く維持できる。より好ましくは、15〜30本/インチである。
強化芯材4に用いられる強化糸の糸径は、20〜300デニールであることが好ましく、50〜250デニールであることがより好ましい。強化糸は、モノフィラメントでもよいし、マルチフィラメントでもよい。また、これらのヤーン、スリットヤーン等も使用できる。
膜本体10における強化芯材4の織り方及び配置は、特に限定されず、陽イオン交換膜1の大きさや形状、陽イオン交換膜1に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。例えば、寸法安定性の観点から、所定の第一の方向に沿って強化芯材4を配置し、かつ第一の方向に対して略垂直である第二の方向に沿って別の強化芯材4を配置することが好ましい。膜本体10の内部において、略直行するように複数の強化芯材を配置することで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。例えば、膜本体10の表面において縦方向に沿って配置された強化芯材4(縦糸)と横方向に沿って配置された強化芯材4(横糸)を織り込む配置が好ましい。縦糸と横糸を交互に浮き沈みさせて打ち込んで織った平織りや、2本の経糸を捩りながら横糸と織り込んだ絡み織り、2本又は数本ずつ引き揃えて配置した縦糸に同数の横糸を打ち込んで織った斜子織り(ななこおり)等とすることが、寸法安定性、機械的強度及び製造容易性の観点からより好ましい。
特に、陽イオン交換膜1のMD方向(Machine Direction方向)及びTD方向(Transverse Direction方向)の両方向に沿って強化芯材4が配置されていることが好ましい。すなわち、強化芯材4はMD方向とTD方向に平織りされていることが好ましい。ここで、MD方向とは、後述する陽イオン交換膜の製造工程において、膜本体10や各種芯材(例えば、強化芯材4、強化糸、後述する犠牲糸等)が搬送される方向(流れ方向)をいい、TD方向とは、MD方向と略垂直の方向をいう。そして、MD方向に沿って織られた糸をMD糸といい、TD方向に沿って織られた糸をTD糸という。通常、電解に用いる陽イオン交換膜1は、矩形状であり、長手方向がMD方向となり、幅方向がTD方向となることが多い。MD糸である強化芯材4とTD糸である強化芯材4を織り込むことで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。
本実施形態の陽イオン交換膜における強化芯材4の開口率は、特に限定されず、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上90%以下である。開口率は、陽イオン交換膜1の電気化学的性質の観点から、30%以上が好ましく、開口率が50%以上であれば、後述する陽イオン交換膜1の見かけ厚みHを高くすることができる。開口率は陽イオン交換膜の機械的強度の観点から90%以下であることが好ましい。より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。
ここで、開口率とは、膜本体10のいずれか一方の表面の面積(A)におけるイオン等の物質(電解液及びそれに含有される陽イオン(例えば、ナトリウムイオン))が通過できる表面の総面積(B)の割合(B/A)をいう。イオン等の物質が通過できる表面の総面積(B)とは、陽イオン交換膜1において、陽イオンや電解液等が、陽イオン交換膜1に含まれる強化芯材や強化糸等によって遮断されない領域の総面積である。
図3は、本実施形態の陽イオン交換膜1の開口率を説明するための概念図である。
図3は、陽イオン交換膜1の一部を拡大し、その領域内の強化芯材4の配置のみを図示しているものであり、他の部材については図示を省略している。ここで、縦方向に沿って配置された強化芯材4と横方向に配置された強化芯材4を含む陽イオン交換膜の投影面積(A)から、強化芯材4の総面積(C)を減じることで、上記した領域の面積(A)におけるイオン等の物質が通過できる領域の総面積(B)を求めることができる。
すなわち、開口率は、下記式(I)により求めることができる。
開口率=(B)/(A)=((A)−(C))/(A) ・・・(I)
強化芯材4として、特に好ましい形態は、耐薬品性及び耐熱性の観点から、PTFEを含む強化芯材であり、強度の観点から、テープヤーン糸又は高配向モノフィラメントである。
具体的には、PTFEからなる高強度多孔質シートをテープ状にスリットしたテープヤーン、又はPTFEからなる高度に配向したモノフィラメントの50〜300デニールを使用し、かつ、織り密度が10〜50本/インチである平織りであり、その厚みが50〜100μmの範囲である強化芯材であることがより好ましい。かかる強化芯材を含む陽イオン交換膜の開口率は、60%以上であることが更に好ましい。
開口率の具体的な測定方法を説明する。
陽イオン交換膜(コーティング等を塗る前の陽イオン交換膜)の表面画像を撮影し、強化芯材が存在しない部分の面積から、上記(B)が求められる。そして、陽イオン交換膜の表面画像の面積から上記(A)を求め、上記(B)を上記(A)で除することによって、開口率が求められる。
(連通孔)
本実施形態の陽イオン交換膜1は、連通孔を有することが好ましい。
連通孔とは、電解の際に発生する陽イオンや電解液の流路となりうる孔をいう。
陽イオン交換膜1に連通孔を形成することで、電解の際に発生するアルカリイオンや電解液の移動性を確保できる。
なお、連通孔とは、膜本体10の内部に形成されている管状の孔であり、後述する犠牲芯材(又は犠牲糸)が溶出することにより形成できる。連通孔の形状や径等は、犠牲芯材(犠牲糸)の形状や径を選択することによって制御することができる。
陽イオン交換膜の積層方向の断面において、断面に対して垂直方向に形成された連通孔と、水平方向に形成された連通孔とを備えていることが好ましい。すなわち、水平方向に形成された連通孔は、強化芯材に対して略垂直方向に沿って形成されていることが好ましい。連通孔は、強化芯材の陽極側(スルホン酸層側)と陰極側(カルボン酸層側)を交互に通過するように形成されることが好ましい。かかる構造とすることで、連通孔の空間を流れる電解液及びそれに含有される陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)を、膜本体の陽極側と陰極側との間で移送させることができる。その結果、陽イオンの流れが遮蔽されることがないため、陽イオン交換膜の電気抵抗を更に低くすることができる。
連通孔は、本実施形態の陽イオン交換膜を構成する膜本体の所定の一方向のみに沿って形成されていてもよいが、より安定した電解性能を発揮するという観点から、膜本体の縦方向と横方向との両方向に形成されていることが好ましい。
(実質厚み及び見かけ厚み)
本実施形態の陽イオン交換膜1は、実質厚みLに対する見かけ厚みHの比(H/L)が1.30〜3である。
「実質厚みL」、「見かけ厚みH」について、図を参照して説明する。
<実質厚みの定義>
上述したように、本実施形態の陽イオン交換膜1において、「実質厚みL」とは、陽イオン交換膜1の断面において、陽イオン交換膜1自体の膜厚のうち、最も厚い部分の膜厚である。
この、最も厚い部分について、説明する。
図2は、本実施形態の陽イオン交換膜1の一例の要部の概略断面図である。
図2に示す例においては、膜本体10の内部において強化芯材4が交差した状態で配置されており、当該強化芯材の交差部において切った断面において露出している強化芯材4は2本積層した状態となっている。例えば、強化糸が平織りされたものを使用する場合が該当する。
なお、図2においては、強化芯材4の断面形状は楕円であるが、本実施形態の陽イオン交換膜はこの例に限定されるものではない。
図2の例においては、強化芯材4の断面形状(図2においては楕円形)の中心点をOとし、2つの中心点Oを結んだ直線(図2中の破線)を延長し、陽イオン交換膜1の両表面との交点をそれぞれA、Bとしたとき、距離ABが陽イオン交換膜1の「実質厚みL」となる。
図4は、本実施形態の陽イオン交換膜1の他の一例の概略断面図である。
図4に示す例においては、膜本体10の内部において強化芯材4が交差した状態で配置されており、当該強化芯材の交差部において切った断面において露出している強化芯材4は、3本積層した状態となっている。例えば、強化糸が絡み織りされた補強材を使用する場合が該当する。
図4の例においては、強化芯材4の断面形状(図4においては楕円形)の中心点をOとし、最も上部の強化芯材4の中心点Oと最も下部の強化芯材4の中心点Oとを結んだ直線(図4中の破線)を延長し、陽イオン交換膜1の両表面との交点をそれぞれA、Bとしたとき、距離ABが陽イオン交換膜の「実質厚みL」となる。
図5は、本実施形態の陽イオン交換膜1の他の一例の概略断面図である。
図5に示す例においては、膜本体10の内部において、強化芯材4と、管状の連通孔504が交差した状態で配置されており、当該強化芯材4と連通孔504の交差部において切った断面に露出している強化芯材4と連通孔504とは、互いに積層した状態となっている。例えば、強化糸と犠牲糸とが平織りされた補強材を使用する場合が該当する。
図5の例においては、強化芯材4の断面形状(図5においては楕円形)の中心点をOとし、連通孔504の断面形状(図5においては楕円形)の中心点をO´としたとき、これらを結んだ直線(図5中の破線)を延長し、陽イオン交換膜1の両表面との交点をそれぞれA、Bとしたとき、距離ABが陽イオン交換膜の「実質厚みL」となる。
図6は、本実施形態の陽イオン交換膜1の他の一例の概略断面図である。
図6に示す例においては、膜本体10の内部において、管状の連通孔504が交差した状態で配置されており、当該連通孔504の交差部において切った断面に露出している連通孔504は、2本積層した状態となっている。例えば、犠牲糸が平織りされた補強材を使用する場合が該当する。
図6の例においては、連通孔504の断面形状(図6においては楕円形)の中心点をO´としたとき、これらを結んだ直線(図6中の破線)を延長し、陽イオン交換膜1の両表面との交点をそれぞれA、Bとしたとき、距離ABが陽イオン交換膜の「実質厚みL」となる。
以上から、陽イオン交換膜1の膜厚のうち、厚みが一番厚くなるのは、強化芯材同士の交点で切った断面の膜厚か、強化芯材と連通孔との交点で切った断面の膜厚か、連通孔同士の交点で切った断面の膜厚である。
なお、陽イオン交換膜1が強化芯材に加えて連通孔を有する場合であって、強化芯材同士が積層する部分、強化芯材と連通孔とが積層する部分、連通孔同士が積層する部分を、任意に組み合わせて具備している場合には、いずれか最も厚い部分で切った断面の膜厚を、「実質厚みL」とする。
<見かけ厚みの定義>
上述したように、本実施形態の陽イオン交換膜1において、「見かけ厚みH」とは、図2に示すように、陽イオン交換膜の、厚み方向の断面における、前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wと陽イオン交換膜1の膜厚Tとの和である。
すなわち、「見かけ厚みH」とは、陽イオン交換膜1の立体的な高さを加味し、陽イオン交換膜1が空間に占める厚みを意味している。
見かけ厚みHは、所定の厚み計を用い、膜を挟んで測定することができる。
具体的には、陽イオン交換膜面上の1か所について3回の測定を行い、ランダムに選択した3ヶ所について同様の測定を行ったときの、3回×3ヶ所の全9個の測定値の平均値をとることにより算出できる。本実施形態の陽イオン交換膜が膜断面において屈曲形状、すなわち波形状、凹凸状、矩形状等の形状を取っているため、見かけ厚みHは、上述した実質厚みLに比べて厚くなる。
<実質厚みと見かけ厚みとの比>
本実施形態の陽イオン交換膜は、上述した実質厚みLに対する見かけ厚みH(H/L)が、1.30倍〜3倍である。より好ましくは、1.40倍〜2倍である。さらに好ましくは、1.50倍〜2倍である。
前記実質厚みLと前記見かけ厚みHとの比(H/L)を上記数値範囲に特定したことの意義を以下に示す。
陽イオン交換膜に折り曲げる力がかかった際に、陽イオン交換膜は、膜の厚みが薄い部分で折れ曲がることが多い。具体的には、図1中、強化芯材4と、それに隣接する強化芯材4とに挟まれた樹脂のみの箇所においては、膜厚が上述した実質厚みLに対して薄いため、折れ曲がりの起点となることが多い。これは、膜の厚みが薄い部分は強度が弱いため、折れ曲がりの力がかかりやすいためである。
本実施形態の陽イオン交換膜では、前記実質厚みLと前記見かけ厚みHとの比(H/L)を、上記数値範囲に特定した、屈曲形状を有しており、折れ曲がる力がかかった際に、折れ曲がりの起点となるのは、図1中の谷部(窪んだ部分)である。そして、一定以上屈曲すると、折れ曲がりの起点となった窪み部分に近接する、図1中の山部(突出した部分)同士がぶつかり、折れ曲がりの立体障壁になる。このため、陽イオン交換膜はそれ以上屈曲するのを阻まれる。したがって、本実施形態の陽イオン交換膜は、一定以上屈曲しにくく、折り曲げ耐性に優れたものとなる。
さらに、連通孔を有する陽イオン交換膜の場合、折り曲げる力がかかった際に、連通孔と連通孔とに挟まれた樹脂のみの箇所は、厚みが実質厚みLに比べて薄いため、折れ曲がりの起点となることが多い。しかし、本実施形態の陽イオン交換膜では、屈曲形状を有していることによって、折れ曲がりの立体障壁を形成して、一定以上の折れ曲がりを防ぐことができる。
以上から、特に、連通孔を有する陽イオン交換膜においては、折り曲げ耐性を飛躍的に向上させることになる。
本実施形態の陽イオン交換膜は、陽イオン交換膜の厚み方向の断面における、前記屈曲部を複数有し、全体として波形状であることが好ましい。
ここで「波形状」とは、図1に示すように、陽イオン交換膜の断面形状において、膜表面が山(凸部)と谷(凹部)とを連続して形成していることを意味する。なお、連続する波形は、各々の波長及び振幅が厳密に一致していなくてもよく、前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wは、略波高に相当するが、各波ごとに均一でなくてもよい。
これにより、折り曲げにより発生する樹脂への応力が緩和されやすくなるため、折り曲げ耐性がより向上する。
また、前記波形状の一周期の距離は、隣接する強化芯材間の距離であることが好ましい。
すなわち、図1に示すように、陽イオン交換膜1の断面における波の一周期の長さMが、隣接する強化芯材4〜4との距離に等しいことが好ましい。
〔陽イオン交換膜の製造方法〕
本実施形態の陽イオン交換膜の好適な製造方法としては、以下の(1)〜(5)の工程を有する方法が挙げられる。
(1)イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を製造する工程。
(2)複数の強化芯材と、酸又はアルカリに溶解する性質を有し、連通孔を形成する犠牲糸と、を少なくとも織り込むことにより、隣接する強化芯材同士の間に犠牲糸が配置された補強材を得る工程。
(3)イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する前記含フッ素系重合体をフィルム化してフィルムを得る工程。
(4)前記フィルムに前記補強材を埋め込んで、前記補強材が内部に配置された膜本体を得る工程。
(5)前記(4)工程で得られた膜本体を加水分解して、イオン交換基前駆体にイオン交換基を導入する工程(加水分解工程)。
上述したように、本実施形態の陽イオン交換膜は、見かけ厚み(H)/実質厚み(L)=1.30〜3である。このような数値範囲に制御するためには、前記(2)の補強材を得る工程において、強化糸の織密度又は犠牲糸の織り密度を低く調整し、強化糸の太さ又は犠牲糸の太さを細く調整し、かつ前記(5)の加水分解工程において、加水分解温度を高く、時間を長く調整し、特定の溶媒を用いて行うこと、が有効である。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
(1)工程:含フッ素系重合体を製造する工程
上記第1群〜第3群に記載した原料の単量体を用いて含フッ素系重合体を製造する。
含フッ素系重合体のイオン交換容量を制御するためには、各層を形成する含フッ素系重合体の製造において、原料の単量体の混合比を調整すればよい。
(2)工程:補強材を得る工程
補強材とは、強化糸を織った織布等である。補強材が膜本体内に埋め込まれることで、強化芯材4を形成する。
陽イオン交換膜1中に連通孔を形成する場合には、犠牲糸も一緒に織り込む。この犠牲糸が、後述する加水分解工程において、溶出することにより、陽イオン交換膜内部に連通孔が形成されることとなる。
犠牲糸の形態としては、モノフィラメント又はマルチフィラメントからなるポリビニルアルコールであることが好ましい。
強化糸と犠牲糸を一緒に織り込んで補強材を製造する場合、強化糸又は犠牲糸の織り密度を低くし、強化糸又は犠牲糸の太さを細くすることで、陽イオン交換膜の実質厚みLに対する見かけ厚みHの比(H/L)が向上する。
具体的には以下の通りである。
強化糸の織り密度(単位長さあたりの打ち込み本数)は、5〜50本/インチであることが好ましい。50本/インチ以下であれば、膜の見かけ厚みをより高くすることができる。5本/インチ以上であれば、膜の機械的強度を高く維持できる。より好ましくは、15〜30本/インチである。
また、強化糸の糸径は、20〜300デニールであることが好ましく、50〜250デニールであることがより好ましい。300デニール以下であれば、膜の見かけ厚みをより高くすることができる。20デニール以上であれば、膜の機械的強度を高く維持できる。
また、犠牲糸の混織量は、好ましくは補強材全体の10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
犠牲糸の細さとしては、20〜50デニールであることが好ましい。50デニール以下であれば、膜の見かけ厚みをより高くすることができる。20デニール以上であれば、膜の機械的強度を高く維持できる。
(3)工程:フィルム化工程
(3)工程では、前記(1)工程で得られた含フッ素系重合体を、押出し機を用いてフィルム化する。
フィルムは単層構造でもよいし、上述したように、スルホン酸層とカルボン酸層との2層構造でもよいし、3層以上の多層構造であってもよい。
フィルム化する方法としては以下のものが挙げられる。
カルボン酸基を有する含フッ素重合体、スルホン酸基を有する含フッ素重合体をそれぞれ別々にフィルム化する方法。
カルボン酸基を有する含フッ素重合体と、スルホン酸基を有する含フッ素重合体とを共押出しにより、複合フィルムとする方法。
なお、フィルムはそれぞれ複数枚であってもよい。また、異種のフィルムを共押出しすることは、界面の接着強度を高めることに寄与するため、好ましい。
(4)工程:膜本体を得る工程
(4)工程では、(2)工程で得た補強材を、(3)工程で得たフィルムの内部に埋め込むことで、 補強材が内在する膜本体を得る。
膜本体の好ましい形成方法としては、(1)陰極側に位置するカルボン酸エステル官能基を含有する含フッ素系重合体(以下、この層を第一層という)と、スルホニルフルオライド官能基を有する含フッ素系重合体(以下、この層を第二層という)を共押出し法によってフィルム化し、必要に応じて加熱源及び真空源を用いて、表面上に多数の細孔を有する平板またはドラム上に、透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、補強材、第二層/第一層複合フィルムの順に積層して、各重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら一体化する方法;(2)第二層/第一層複合フィルムとは別に、スルホニルフルオライド官能基を有する含フッ素系重合体(第三層)を予め単独でフィルム化し、必要に応じて加熱源及び真空源を用いて、表面上に多数の細孔を有する平板又はドラム上に透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、第三層フィルム、強化芯材、第二層/第一層からなる複合フィルムの順に積層して、各重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら一体化する方法が挙げられる。
ここで、第一層と第二層とを共押出しすることは、界面の接着強度を高めることに寄与している。
また、減圧下で一体化する方法は、加圧プレス法に比べて、補強材上の第三層の厚みが大きくなる特徴を有している。更に、補強材が膜本体の内面に固定されているため、陽イオン交換膜の機械的強度が十分に保持できる性能を有している。
なお、ここで説明した積層のバリエーションは一例であり、所望する膜本体の層構成や物性等を考慮して、適宜好適な積層パターン(例えば、各層の組合せ等)を選択した上で、共押出しすることができる。
なお、陽イオン交換膜の電気的性能をさらに高める目的で、第一層と第二層との間に、カルボン酸エステル官能基とスルホニルフルオライド官能基の両方を含有する第四層をさらに介在させることや、第二層の代わりにカルボン酸エステル官能基とスルホニルフルオライド官能基の両方を含有する層を用いることも可能である。この場合、カルボン酸エステル官能基を含有する重合体と、スルホニルフルオライド官能基を含有する重合体と、を別々に製造した後に混合する方法でもよく、カルボン酸エステル官能基を含有する単量体とスルホニルフルオライド官能基を含有する単量体とを共重合したものを使用する方法でもよい。
第四層を陽イオン交換膜の構成とする場合には、第一層と第四層との共押出しフィルムを成形し、第三層と第四層はこれとは別に単独でフィルム化し、前述の方法で積層してもよいし、第一層/第四層/第二層の3層を一度に共押し出しでフィルム化してもよい。この場合、押出しされたフィルムが流れていく方向が、MD方向である。このようにして、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体を、補強材上に形成することができる。
また、本実施形態に係る陽イオン交換膜は、スルホン酸基を有する表面側にイオン交換基を有する重合体のみからなる突出した部分、すなわち凸部を有することが好ましい。凸部を形成する方法としては、特に限定されず、樹脂表面に凸部を形成する公知の方法を採用することもできる。具体的には、膜本体の表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。例えば、前記した複合フィルムと補強材等とを一体化する際に、予めエンボス加工した離型紙を用いることによって、上記の凸部を形成させることができる。エンボス加工により凸部を形成する場合、凸部の高さや配置密度の制御は、転写するエンボス形状(離型紙の形状)を制御することで行うことができる。
(5)加水分解工程
(5)工程では、前記(4)工程で得られた膜本体を加水分解して、イオン交換基前駆体にイオン交換基を導入する工程(加水分解工程)を行う。
また、(5)工程では、膜本体に含まれている犠牲糸を酸又はアルカリで溶解除去することで、膜本体に溶出孔を形成させることができる。
なお、犠牲糸は、完全に溶解除去されずに、連通孔に残っていてもよい。また、電解を行う際に連通孔に残っていた犠牲糸が電解液により溶解除去されてもよい。
犠牲糸は、陽イオン交換膜の製造工程や電解環境下において、酸又はアルカリに対して溶解性を有するものであり、犠牲糸が溶出することで当該部位に連通孔が形成される。
この(5)加水分解工程において、温度と時間を制御して、特定の溶媒を用いて行うことで、陽イオン交換膜の実質厚み(L)に対する見かけ厚み(H)の比(H/L)を向上させることができる。加えて、加水分解温度を上げ、加水分解時間を長くすることで、陽イオン交換膜が膨潤して、陽イオン交換膜の実質厚み(L)に対する見かけ厚み(H)の比(H/L)を向上させることができる。
具体的には、以下の通りである。
前記特定の溶媒としては、KOHとDMSO(Dimethyl sulfoxide)とを含む混合溶媒を用いることができる。
混合溶媒は、KOHを2.5〜4.0N含み、DMSOを25〜35質量%含むことが好ましい。
加水分解の温度としては、70〜100℃であることが好ましい。温度が高いほど、見かけ厚みをより厚くすることができる。より好ましくは、85〜100℃である。
加水分解の時間としては、10〜120分であることが好ましい。時間が長いほど、見かけ厚みをより厚くすることができる。より好ましくは、20〜120分である。
ここで、犠牲糸を溶出させることで連通孔形成する工程についてより詳細に説明する。
図7(a)、(b)は、本実施形態における陽イオン交換膜の連通孔を形成する方法を説明するための模式図である。
図7(a)では、強化糸52と犠牲糸504a(これにより形成される連通孔504)のみを図示しており、膜本体等の他の部材については、図示を省略している。
まず、陽イオン交換膜1中で強化芯材4を構成することとなる強化糸52と、陽イオン交換膜1中で連通孔504を形成するための犠牲糸504aとを、編み込み補強材とする。そして、前記(5)工程において犠牲糸504aが溶出することで連通孔504が形成される。
上記方法によれば、陽イオン交換膜の膜本体内において強化芯材、連通孔を如何なる配置とするのかに応じて、強化糸52と犠牲糸504aの編み込み方を調整すればよいため簡便である。
図7(a)では、紙面において縦方向と横方向の両方向に沿って強化糸52と犠牲糸504aを織り込んだ平織りの補強材を例示しているが、必要に応じて補強材における強化糸52と犠牲糸504aの配置を変更することができる。
上述した(1)工程〜(5)工程を経た後、得られた陽イオン交換膜の表面に、コーティング層を形成してもよい。
コーティング層は、特に限定されず、公知の方法により形成できる。
例えば、無機酸化物の微細粒子をバインダーポリマー溶液に分散させた液を、スプレー等により塗布する方法(スプレー法)が挙げられる。
無機酸化物としては酸化ジルコニウムが挙げられ、バインダーポリマーとしては、例えば、スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物等が挙げられる。
塗布条件については、特に限定されず、例えば、60℃でスプレーを用いることとすることができる。スプレー法以外の方法としては、例えば、ロールコート等が挙げられる。
〔電解槽〕
本実施形態の陽イオン交換膜は、これを用いて電解槽として使用することができる。
図8は、本実施形態に係る電解槽の一実施形態の模式図である。
本実施形態の電解槽100は、陽極200と、陰極300と、陽極200と陰極300の間に配置された陽イオン交換膜1を少なくとも備える。
ここでは、上記した陽イオン交換膜1を備えた電解槽100を一例として説明しているが、これに限定されるものではなく、本実施形態の効果の範囲内で種々構成を変形して実施することができる。かかる電解槽100は、種々の電解に使用できるが、以下、代表例として、塩化アルカリ水溶液の電解に使用する場合について説明する。
電解条件は、特に限定されず、公知の条件で行うことができる。
例えば、陽極室に2.5〜5.5規定(N)の塩化アルカリ水溶液を供給し、陰極室は水又は希釈した水酸化アルカリ水溶液を供給し、電解温度が50〜120℃、電流密度が5〜100A/dm2の条件で電解することができる。
本実施形態に係る電解槽100の構成は、特に限定されず、例えば、単極式でも複極式でもよい。電解槽100を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、陽極室の材料としては、塩化アルカリ及び塩素に耐性があるチタン等が好ましく、陰極室の材料としては、水酸化アルカリ及び水素に耐性があるニッケル等が好ましい。電極の配置は、陽イオン交換膜1と陽極200との間に適当な間隔を設けて配置してもよいが、陽極200と陽イオン交換膜1が接触して配置されていても、何ら問題なく使用できる。また、陰極は一般的には陽イオン交換膜と適当な間隔を設けて配置されているが、この間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であっても、何ら問題なく使用できる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の単位において、特に断りがない限り、質量基準に基づくものとする。
〔測定方法〕
(実質厚みの測定方法)
陽イオン交換膜中に埋め込まれた強化芯材が形成するウィンドウ(強化糸で囲まれた領域)を含む膜サンプルを任意に10箇所切り出した。
各膜サンプルにおいて、強化芯材同士の交差点を通る直線、強化芯材と連通孔の交差点を通る直線、及び連通孔同士の交差点を通る直線で、それぞれ切断した。強化芯材同士の交差点を通る直線で切断した断面においては下記(1)の距離ABを測定し、強化芯材と連通孔の交差点を通る直線で切断した断面においては下記(2)の距離ABを測定し、連通孔同士の交差点を通る直線で切断した断面においては下記(3)の距離ABを測定した。そして、各膜サンプルにおいて、下記(1)〜(3)の距離ABのうち、最も厚い距離ABを求めた。
陽イオン交換膜の実質厚みとしては、各膜サンプルにおいて求めた距離ABを全膜サンプルで平均した値とした。
(1)陽イオン交換膜中の強化芯材が交差する点を含む断面において現れる、厚み方向に並列した2つの強化芯材の中心(図2中の点O)を通る直線を仮定し、該直線と、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(スルホン酸層)3の膜表面との交点をAとし、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(カルボン酸層)2の膜表面との交点をBとしたときの距離AB。
(2)陽イオン交換膜中の強化芯材と連通孔が交差する点を含む断面において現れる、厚み方向に並列した強化芯材の中心と連通孔の中心(図5中の点O、点O´)を通る直線を仮定し、該直線と、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(スルホン酸層)3の膜表面との交点をAとし、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(カルボン酸層)2の膜表面との交点をBとしたときの、距離AB。
(3)陽イオン交換膜中の連通孔が交差する点を含む断面において現れる、厚み方向に並列した2つの連通孔の中心(図6中の点O´)を通る直線を仮定し、該直線と、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(スルホン酸層)3の膜表面との交点をAとし、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(カルボン酸層)2の膜表面との交点をBとしたときの、距離AB。
(見かけ厚みの測定方法)
見かけ厚み(図1中のH)は、厚み計(TECLOCK製 SM−124)を用いて、陽イオン交換膜を挟み、厚みを3回測定し、ランダムに選択した膜面上の3ヶ所について同様の測定を行って、3回×3ヶ所の全9個の測定値の平均値を算出した。
〔折り曲げ耐性の評価方法〕
陽イオン交換膜の折り曲げによる強度低下の度合い(折り曲げ耐性)は、以下の方法により評価した。
なお、折り曲げ耐性は、折り曲げる前の陽イオン交換膜の引張伸度に対する折り曲げた後の陽イオン交換膜の引張伸度の割合(引張伸度割合)として評価した。
引張伸度は、次の方法で測定した。
陽イオン交換膜に埋め込まれた強化糸に対して45度となる方向に沿って幅1cmのサンプルを切り出した。すなわち、強化糸が正方形の格子状に編みこまれた繊維になっており、当該格子の対角線を結ぶ線分で切り、サンプルを切り出した。
そして、チャック間距離50mm、引張速度100mm/分の条件で、JIS K6732に準じて、サンプルの引張伸度を測定した。
陽イオン交換膜の折り曲げは、次の方法で行った。
陽イオン交換膜のカルボン酸層2側の表面を内側にして、すなわち谷折にして400g/cmの荷重を掛けて折り曲げた。陽イオン交換膜のMD糸に対して垂直方向に折り線が入るように、陽イオン交換膜を折り曲げて評価した。
折り曲げを行った後の陽イオン交換膜の引張伸度を測定し、折り曲げ前の引張伸度に対する割合を求め、折り曲げ耐性とした。
〔実施例1〕
強化芯材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であり、90デニールのモノフィラメントを用いた(以下、「PTFE糸」という。)。
犠牲糸として、30デニール、6フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた(以下、「PET糸」という。)。
まず、MD糸については、連続する3羽の筬(おさ)を用いて、PTFE糸とPET糸の2本の糸の束を1番目の筬に通し、PET糸とPTFE糸の2本の糸の束を2番目の筬に通し、PET糸とPET糸の2本の糸の束を3番目の筬に通した。そして、この組合せで順に繰り返すように筬に糸の束を順次通した。なお、PTFE糸は、24本/インチで等間隔に並ぶように配置した。
TD糸については、PTFE糸、PET糸、PET糸の順を繰り返すように平織りした。
このようにして、織布(補強材)を得た。
次に、テトラフロエチレン(CF2=CF2)とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3との共重合体であり、イオン交換容量が0.85mg当量/gである、乾燥樹脂のポリマーA、及びCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体であり、イオン交換容量が1.05mg当量/gである、乾燥樹脂のポリマーBを準備した。
ポリマーA及びポリマーBを使用し、共押出しTダイ法にて、厚さ13μmのポリマーA層、及び厚さ84μmのポリマーB層からなる2層フィルムXを得た。
また、単層Tダイ法にて、ポリマーBからなる厚さ20μmのフィルムYを得た。
次に、加熱源及び真空源を内部に有し、その表面に微細孔を有するドラムの上に、離型紙、フィルムY、補強材、フィルムXの順に積層し、加熱減圧した。このときの加工温度は219℃、減圧度は0.022MPaであった。
その後、離型紙を取り除き、複合膜を得た。
得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を30質量%、水酸化カリウム(KOH)を15質量%含む水溶液に、90℃で1時間浸漬することにより加水分解させた後、水洗し、乾燥させた。これにより犠牲糸(PET糸)が溶解して、連通孔が形成され、内部に強化芯材を有する膜本体を得た。
更に、ポリマーBの酸型ポリマーの5質量%エタノール溶液に、1次粒径1μmの酸化ジルコニウムを20質量%の割合となるように加えて分散させ、懸濁液を調合した。
この懸濁液をスプレー法で上記の複合膜の両面に噴霧し、乾燥させることにより、0.5mg/cm2のコーティング層を複合膜の表面に形成させて、陽イオン交換膜を得た。
得られた陽イオン交換膜は、実質厚み(L)が241μm、見かけ厚み(H)が440μmであり、実質厚みに対する見かけ厚みの比(H/L)が1.83であった。
得られた陽イオン交換膜の物性を下記表1に示す。
実施例1の陽イオン交換膜は、折り曲げた後も引張伸度が高く維持され、下記表1に示す通り、折り曲げ耐性が高いことが確認された。
〔実施例2〕
加水分解工程において、得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を30質量%、水酸化カリウム(KOH)を15質量%含む水溶液に、90℃で30分間浸漬した。
その他の条件は、実施例1と同様にして陽イオン交換膜を得た。
得られた陽イオン交換膜は、実質厚み(L)が235μm、見かけ厚み(H)が345μmであり、実質厚みに対する見かけ厚みの比(H/L)が1.47であった。
得られた陽イオン交換膜の物性を下記表1に示す。
実施例2の陽イオン交換膜は、折り曲げた後も引張伸度が高く維持され、下記表1に示す通り、折り曲げ耐性が高いことが確認された。
〔比較例1〕
犠牲糸として、40デニール、6フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた。
その他の条件は、実施例と同様にして陽イオン交換膜を得た。
得られた陽イオン交換膜は、実質厚み(L)が255μm、見かけ厚み(H)が320μmであり、実質厚みに対する見かけ厚みの比(H/L)が1.25倍であった。
得られた陽イオン交換膜の物性を下記表1に示す。
比較例1の陽イオン交換膜は、折り曲げた後は、引張伸度が著しく低下し、下記表1に示す通り、折り曲げ耐性が低いことが確認された。
〔比較例2〕
加水分解工程において、得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を30質量%、水酸化カリウム(KOH)を15質量%含む水溶液に、60℃で1時間浸漬した。
その他の条件は、実施例1と同様にして陽イオン交換膜を得た。
得られた陽イオン交換膜は、実質厚み(L)が233μm、見かけ厚み(H)が300μmであり、実質厚みに対する見かけ厚みの比(H/L)が1.29倍である。
得られた陽イオン交換膜の物性を下記表1に示す。
比較例2の陽イオン交換膜は、折り曲げた後は、引張伸度が著しく低下し、下記表1に示す通り、折り曲げ耐性が低いことが確認された。
〔比較例3〕
加水分解工程において、得られた複合膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)を30質量%、水酸化カリウム(KOH)を15質量%含む水溶液に、90℃で1分間浸漬した。
その他の条件は、実施例1と同様にして陽イオン交換膜を得た。
得られた陽イオン交換膜は、実質厚みが173μm、見かけ厚みが220μmであり、実質厚みに対する見かけ厚みの比が1.27倍である。
得られた陽イオン交換膜の物性を表1に示す。
比較例3の陽イオン交換膜は、折り曲げた後は、引張伸度が著しく低下し、下記表1に示す通り、折り曲げ耐性が低いことが確認された。
表1に示すように、実施例1、2の陽イオン交換膜は、折り曲げ耐性に優れ、機械的強度が高いことが分かった。
本発明の陽イオン交換膜は、塩化アルカリ電解等の陽イオン交換膜として好適に用いることができる。
1 陽イオン交換膜
2 カルボン酸層
3 スルホン酸層
4 強化芯材
10 膜本体
52 強化糸
100 電解槽
200 陽極
300 陰極
504 連通孔
504a 犠牲糸

Claims (7)

  1. イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、当該膜本体の内部に配置された強化芯材と、を有する陽イオン交換膜であって、
    当該陽イオン交換膜は、厚み方向の断面において、屈曲形状となっており、
    当該陽イオン交換膜自体の膜厚のうち、最も厚い部分の膜厚を、実質厚みLとし、
    当該陽イオン交換膜の、厚み方向の断面における、前記屈曲形状の屈曲部の最大幅Wと、当該屈曲部における陽イオン交換膜の膜厚Tとの和を、見かけ厚みHとしたとき、
    前記陽イオン交換膜の実質厚みLに対する前記見かけ厚みHの比(H/L)が、1.30〜3である陽イオン交換膜。
  2. 前記膜本体の内部で、複数本の前記強化芯材が、交差するように配置されており、
    前記実質厚みLは、前記強化芯材が交差する位置を含む陽イオン交換膜の断面において、露出する前記強化芯材の断面の、それぞれの前記強化芯材の中心点を結ぶ直線上における、陽イオン交換膜の膜厚である、請求項1に記載の陽イオン交換膜。
  3. 前記膜本体の内部に、管状の連通孔をさらに有し、
    前記連通孔と前記強化芯材とは、前記膜本体の内部で、交差するように配置されており、
    前記実質厚みLは、前記連通孔と前記強化芯材とが交差する位置を含む陽イオン交換膜の断面において、露出する前記連通孔及び前記強化芯材の断面の、前記連通孔と前記強化芯材の中心点を結ぶ直線上における、陽イオン交換膜の膜厚である、請求項1に記載の陽イオン交換膜。
  4. 前記膜本体の内部に、管状の連通孔をさらに有し、
    複数本の前記連通孔が、前記膜本体の内部で、交差するように配置されており、
    前記実質厚みLは、前記連通孔が交差する位置を含む陽イオン交換膜の断面において、露出する前記連通孔の断面の、それぞれの前記連通孔の中心点を結ぶ直線上における、陽イオン交換膜の膜厚である、請求項1に記載の陽イオン交換膜。
  5. 陽イオン交換膜が、厚み方向の断面における前記屈曲部を複数有し、全体として波形状である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の陽イオン交換膜。
  6. 前記波形状の一周期の距離が、前記膜本体の内部で同一方向に配置されている隣接する強化芯材間の距離である請求項5に記載の陽イオン交換膜。
  7. 陽極と、
    陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に配置された、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の陽イオン交換膜を、少なくとも備える電解槽。
JP2012028800A 2012-02-13 2012-02-13 陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽 Pending JP2013163791A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012028800A JP2013163791A (ja) 2012-02-13 2012-02-13 陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽
CN201210311111.5A CN103243346B (zh) 2012-02-13 2012-08-28 阳离子交换膜和使用了该阳离子交换膜的电解槽

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012028800A JP2013163791A (ja) 2012-02-13 2012-02-13 陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013163791A true JP2013163791A (ja) 2013-08-22

Family

ID=48923218

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012028800A Pending JP2013163791A (ja) 2012-02-13 2012-02-13 陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2013163791A (ja)
CN (1) CN103243346B (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2016167220A1 (ja) * 2015-04-13 2018-02-08 旭硝子株式会社 電解用イオン交換膜の製造方法および電解用イオン交換膜
WO2018139028A1 (ja) * 2017-01-27 2018-08-02 旭化成株式会社 イオン交換膜及び電解槽
JP2019108607A (ja) * 2017-12-18 2019-07-04 旭化成株式会社 イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽
WO2020067175A1 (ja) * 2018-09-26 2020-04-02 Agc株式会社 イオン交換膜及び電解装置

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7058070B2 (ja) * 2016-10-06 2022-04-21 旭化成株式会社 陽イオン交換膜及び電解槽
JP7062396B2 (ja) * 2016-10-06 2022-05-06 旭化成株式会社 イオン交換膜

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011052538A1 (ja) * 2009-10-26 2011-05-05 旭化成ケミカルズ株式会社 陽イオン交換膜、それを用いた電解槽及び陽イオン交換膜の製造方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4021327A (en) * 1975-04-29 1977-05-03 E. I. Du Pont De Nemours And Company Reinforced cation permeable separator
JPS52156790A (en) * 1976-06-23 1977-12-27 Asahi Chem Ind Co Ltd Ion exchange membrane contg. halogen element and production thereof
JP2688902B2 (ja) * 1987-08-26 1997-12-10 旭化成工業株式会社 強化されたイオン交換膜及びその製造法
JP3075580B2 (ja) * 1991-04-05 2000-08-14 旭硝子株式会社 電解用含フッ素陽イオン交換膜
JP4368509B2 (ja) * 2000-09-11 2009-11-18 旭化成ケミカルズ株式会社 補強された陽イオン交換膜の製造方法
US7959780B2 (en) * 2004-07-26 2011-06-14 Emporia Capital Funding Llc Textured ion exchange membranes
JP2008093570A (ja) * 2006-10-12 2008-04-24 Seiko Epson Corp 重量測定方法、液状体の吐出方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011052538A1 (ja) * 2009-10-26 2011-05-05 旭化成ケミカルズ株式会社 陽イオン交換膜、それを用いた電解槽及び陽イオン交換膜の製造方法

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2016167220A1 (ja) * 2015-04-13 2018-02-08 旭硝子株式会社 電解用イオン交換膜の製造方法および電解用イオン交換膜
EP3575443A4 (en) * 2017-01-27 2020-02-26 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha ION EXCHANGER MEMBRANE AND ELECTROLYSIS TANK
JP6369844B1 (ja) * 2017-01-27 2018-08-08 旭化成株式会社 イオン交換膜及び電解槽
JP2018145530A (ja) * 2017-01-27 2018-09-20 旭化成株式会社 イオン交換膜及び電解槽
KR20180118713A (ko) * 2017-01-27 2018-10-31 아사히 가세이 가부시키가이샤 이온교환막 및 전해조
WO2018139028A1 (ja) * 2017-01-27 2018-08-02 旭化成株式会社 イオン交換膜及び電解槽
RU2723552C1 (ru) * 2017-01-27 2020-06-16 Асахи Касеи Кабусики Кайся Ионообменная мембрана и электролизер
KR102168932B1 (ko) * 2017-01-27 2020-10-23 아사히 가세이 가부시키가이샤 이온교환막 및 전해조
US11047056B2 (en) 2017-01-27 2021-06-29 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha Ion exchange membrane and electrolyzer
JP2019108607A (ja) * 2017-12-18 2019-07-04 旭化成株式会社 イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽
JP7174597B2 (ja) 2017-12-18 2022-11-17 旭化成株式会社 イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽
WO2020067175A1 (ja) * 2018-09-26 2020-04-02 Agc株式会社 イオン交換膜及び電解装置
JPWO2020067175A1 (ja) * 2018-09-26 2021-01-07 Agc株式会社 イオン交換膜及び電解装置

Also Published As

Publication number Publication date
CN103243346B (zh) 2015-08-19
CN103243346A (zh) 2013-08-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5833187B2 (ja) 陽イオン交換膜の製造方法
JP5793444B2 (ja) 陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽
JP5774514B2 (ja) 陽イオン交換膜、及びこれを用いた電解槽
JP5844653B2 (ja) 陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽
JP5868300B2 (ja) イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽
JP2013163791A (ja) 陽イオン交換膜及びそれを用いた電解槽
JP5773906B2 (ja) 陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽
JP6369844B1 (ja) イオン交換膜及び電解槽
JP2019108607A (ja) イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽
JP2015158017A (ja) 陽イオン交換膜及びこれを用いた電解槽
KR101950130B1 (ko) 이온 교환막
US10982341B2 (en) Cation exchange membrane and electrolyzer
CN106166502B (zh) 阳离子交换膜用加强芯材以及使用该加强芯材制造的阳离子交换膜及电解槽

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141029

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150310

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20150715