JP2015117417A - アルカリ水電解用隔膜及びこれを用いたアルカリ水電解槽 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]多孔性支持体と、多孔性支持体の第1の主面上に積層された第1の多孔質膜と、第1の多孔質膜における多孔性支持体と接触していない主面上に積層された、無機微粒子及びイオン交換樹脂を含有する第1の混合層と、を有し、第1の混合層が、無機微粒子を10重量%以上97重量%以下、及び、イオン交換樹脂を3重量%以上90重量%以下含む、アルカリ水電解用隔膜。
[2]第1の多孔質膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]のアルカリ水電解用隔膜。
[3]第1の多孔質膜が、無機微粒子を含有する、[1]又は[2]のアルカリ水電解用隔膜。
[4]第1の多孔質膜の平均孔径は、0.05μm以上6μm以下である、[1]〜[3]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[5]第1の混合層の単位面積あたりの重量が、0.01mg/cm2以上5mg/cm2以下である、[1]〜[4]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[6]多孔性支持体の第1の主面に対向する第2の主面上に積層された第2の多孔質膜と、第2の多孔質膜における多孔性支持体と接触していない主面上に積層された、無機微粒子及びイオン交換樹脂を含有する第2の混合層と、をさらに有する、[1]〜[5]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[7]第2の混合層が、無機微粒子を10重量%以上97重量%以下、及び、イオン交換樹脂を3重量%以上90重量%以下含む、[6]のアルカリ水電解用隔膜。
[8]第1の多孔質膜及び/又は前記第2の多孔質膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[6]又は[7]のアルカリ水電解用隔膜。
[9]第1の多孔質膜及び/又は第2の多孔質膜が、無機微粒子を含有する、[6]〜[8]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[10]第1の多孔質膜及び/又は第2の多孔質膜の平均孔径は、0.05μm以上6μm以下である、[6]〜[9]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[11]第1の混合層及び/又は第2の混合層の単位面積当たりの重量が、0.01mg/cm2以上5mg/cm2以下である、[6]〜[10]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[12]イオン交換樹脂は、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含有する、[1]〜[11]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[13]イオン交換樹脂がパーフルオロイオン交換樹脂である、[1]〜[12]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[14]多孔性支持体が不織布又は織布である、[1]〜[13]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[15]多孔性支持体は、ポリフェニレンサルファイド繊維を含有する、[1]〜[14]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[16]無機微粒子が酸化ジルコニウムである、[1]〜[15]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[17]無機微粒子の平均粒子径が、0.3μm以上5μm以下である、[1]〜[16]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜。
[18][1]〜[17]のいずれかのアルカリ水電解用隔膜と、アルカリ水電解用隔膜の第1の主面上に配置された陽極と、アルカリ水電解用隔膜の第2の主面上に配置された陰極と、を備える、アルカリ水電解槽。
無機微粒子としては、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物又は水酸化物、周期律表第IV族元素の酸化物、周期律表第IV族元素の窒化物、及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物を含むことが好ましい。より好ましくは、耐久性の観点から、酸化ジルコニウムの粒子である。
イオン交換樹脂は、無機微粒子を多孔質膜表面に保持して、混合層を成す成分である。イオン交換樹脂は、電解液や電解による生成物への耐性の観点から、含フッ素系重合体を含むことが好ましく、パーフルオロイオン交換樹脂が好ましい。
・CF2=CFOCF2CF2SO2F
・CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F
・CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F
・CF2=CF(CF2)SO2F
・CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F
・CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F
混合層中の無機微粒子の含有量は、第1の混合層では10重量%〜97重量%であり、好ましくは30重量%〜97重量%である。無機微粒子の含有量が10重量%以上である場合、アルカリ水電解用隔膜表面への泡付着を抑制できる。また、無機微粒子の含有量が97重量%以下である場合、結着剤であるイオン交換樹脂が少なくなることで無機微粒子間の結着性が不十分となることを抑制できるため、電解中に無機微粒子が多孔質膜上から欠落するのを抑制できる。また、第2の混合層では、無機微粒子の含有量が10重量%〜97重量%であることが好ましく、30重量%〜97重量%であることがより好ましい。
混合層中のイオン交換樹脂の含有量は、3重量%〜90重量%が好ましく、より好ましくは3重量%〜70重量%である。
本実施形態において、多孔質膜は有機高分子樹脂を含むことが好ましい。有機高分子樹脂としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等を挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種類以上を同時に使用してもよい。
本実施形態の多孔質膜の平均孔径は、混合層に接する多孔質膜表面(例えば図3における第1の多孔質膜1aの主面B、第2の多孔質膜1bの主面C)に形成された孔の孔径を平均したものである。多孔質膜の平均孔径は、0.05μm〜6μmが好ましい。多孔質膜の平均孔径が0.05μm以上であれば、アルカリ水電解用隔膜内における電圧損失を低減しやすい傾向にある。また、多孔質膜の構造が過度に緻密になり、アルカリ水との接触表面積が大きく成り過ぎて、材質劣化を起こすような問題を低減しやすい傾向にある。また、多孔質膜の平均孔径が6μm以下であれば、十分なガス遮断性を維持しやすい傾向にある。
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、多孔性支持体を有することで、アルカリ水電解用隔膜の強度が向上する。つまり、多孔性支持体は、主としてアルカリ水電解用隔膜における芯材の役割を担うものである。
本実施形態に係るアルカリ水電解用隔膜において、多孔質膜は、混合層に含まれる無機微粒子として挙げた中から少なくとも1種類を含有することが好ましい。無機微粒子が多孔質膜内に含有されることによって、多孔質膜が親水性に保たれ、電解液が孔内に導かれ易くなる。その結果、多孔質膜内でイオンが移動できる部分が大きくなる為、アルカリ水電解用隔膜による電圧損失を低減することができる。多孔質膜内に無機微粒子を含有させる方法は、特に限定するものではないが、有機高分子樹脂とその溶媒を含有する溶液に親水性無機材料を添加し、非溶媒誘起相分離法で多孔質膜を作成して、多孔質膜内に親水化無機材料を含有させる方法などが挙げられる。
アルカリ水電解用隔膜のイオン透過性の評価は、アルカリ水電解用隔膜の電圧損失を評価指標として行うことができる。イオン透過性の良いアルカリ水電解用隔膜ほど電気抵抗が小さくなり、これに伴ってアルカリ水電解用隔膜における電圧損失も小さいものとなる。本評価方法における電圧損失は、自作の電解槽を用い、以下の方法で行ってもよい。すなわち、電解槽において、電解面積30cm2の陽極と陰極との間に配置されたアルカリ水電解用隔膜が、それぞれの電極と接しているゼロギャップ電解槽とすればよい。電解液は、30wt%のNaOH水溶液を用い、これを90℃に加温した状態で、両電極間に6000A/m2の直流電流を印加すればよい。アルカリ水電解用隔膜の電圧損失の値は、電解槽にかかるセル電圧から陽極及び陰極の過電圧を差し引いた値とすることができる。陽極及び陰極の過電圧は、それぞれの電極に近接して配置されている白金線により測定することができる。
アルカリ水電解用隔膜のガス遮断性の評価は、アルカリ水電解用隔膜のバブルポイントを評価指標として行うことができる。本評価方法におけるバブルポイントは圧力で示され、アルカリ水電解用隔膜を水で十分に濡らし、孔内を水で満たした後、アルカリ水電解用隔膜の片側面を窒素で加圧し、アルカリ水電解用隔膜の反対側面から、50ml/minの割合で気泡が連続して発生してくる時の圧力とすることができる。アルカリ水電解用隔膜のガス遮断性が大きいほど、ガスが通過しにくい為、バブルポイントの値は大きくなる。アルカリ水電解用隔膜のガス遮断性が小さいほど、ガスが通過し易い為、バブルポイントの値は小さくなる。
本実施形態に係るアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、下記の(1)〜(8)の工程をこの順で備える。
(1)有機高分子樹脂と、有機高分子樹脂の溶媒と、無機微粒子と、を含有する溶液を調製する工程
(2)溶液を基材に塗工する工程
(3)溶液が塗工された基材を蒸気に晒す工程
(4)溶液が塗工された基材を有機高分子樹脂の非溶媒を含む凝固浴に浸漬させる工程
(5)有機高分子樹脂を凝固させて多孔質膜を形成させる工程
(6)多孔質膜をシート状の多孔性支持体の片面又は両面に積層する工程
(7)無機微粒子とイオン交換樹脂との混合溶液を調整する工程
(8)多孔質膜に混合溶液を塗布し、多孔質膜上に混合層を形成する工程
図4は、本実施形態に係るアルカリ水電解用隔膜を備えるアルカリ水電解槽の断面図である。図4に示すように、本実施形態に係るアルカリ水電解槽30は、アルカリ水電解用隔膜10d、陽極11及び陰極12を有し、陽極11を有する陽極室21と、陰極12を有する陰極室22に仕切られている。陽極11は、アルカリ水電解用隔膜10dの第1の主面P上に配置されており、陰極12は、アルカリ水電解用隔膜10dの第2の主面Q上に配置されている。アルカリ水電解槽30は、それぞれの陽極11及び陰極12で発生した酸素ガス及び水素ガスがアルカリ水電解用隔膜10dに遮断されて混合しないように構成されている。
アルカリ水電解槽を使用して行うアルカリ水電解の方法は、アルカリ水電解槽の内部をアルカリ溶液で満たし、陽極と陰極との間に直流電流を印加して行えばよい。アルカリ溶液としては、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液が用いられる。アルカリ溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、15wt%〜40wt%が好ましく、20wt%〜35wt%がより好ましい。アルカリ溶液の濃度が15wt%〜40wt%の範囲であれば、溶液のイオン伝導性が十分発現され、溶液による電圧の損失を軽減しやすい傾向にある。
アルカリ水電解用隔膜の孔径の評価は、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ Miniscope TM3000)を使用して行った。まず、サンプルを所定の大きさに切り出し、マグネトロンスパッタ装置((株)真空デバイス MSP−1S型)で1分間メタルコーティングを行った。次に、このサンプルをSEMの観察用試料台にセットして測定を開始した。この時、SEMによる観察が膜の垂直方向から行えるようにサンプルをセットした。測定を開始する際に、測定画面内に、観察対象の多孔質膜面に存在する孔が100個以上150個以下写るようにSEMの倍率を調節した。これらの写った孔のそれぞれに対し、孔の最大長と最小長の平均長を相加平均で算出した。それぞれの平均長からさらに下記式(1)で示される加重平均Dを算出し、これを対象膜の孔径とした。この評価における孔は、周囲を途切れなく樹脂で囲まれたものとし、また測定画面内で孔の一部が見切れているものは孔とみなさないものとした。
アルカリ水電解用隔膜の電圧損失の評価は、自作の電解槽を用い、以下の方法で行った。電解槽の構造は、電解面積30cm2の陽極と陰極との間に配置されたアルカリ水電解用隔膜が、それぞれの電極と接しているゼロギャップ構造(ゼロギャップ電解槽)とした。電解液は30wt%のNaOH水溶液を用い、これを90℃に加温した状態で、両電極間に6000A/m2の直流電流を印加した。
ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社、ユーデル(登録商標))、ポリビニルピロリドン Mw(重量平均分子量)900000(和光純薬工業株式会社)、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社)、EP 酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業株式会社)をそれぞれ以下の割合で混合し、60℃の温度下で十分攪拌して塗工液を得た。
ポリスルホン :10wt%
ポリビニルピロリドン : 5wt%
N−メチル−2−ピロリドン:55wt%
EP 酸化ジルコニウム :30wt%
得られた多孔質膜の平均孔径をSEMで評価した結果、2.3μmであった。得られたこの多孔質膜を用いて、ゼロギャップ構造で電解を行った結果、多孔質膜における電圧の損失は283mVであった。
上記参照例1の多孔質膜を用い、以下のように混合層を積層した。
まず、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体で乾燥時のイオン交換容量が1.05mg当量/gであるポリマー(A)を加水分解した後、塩酸で酸型にした。この酸型のポリマー(A)を、水及びエタノールの50/50(質量比)混合液に5質量%の割合で混合させ、ポリマー溶液を得た。さらに、平均粒子径が1.15μmの酸化ジルコニウム粒子を、乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比が20/80となるように、ポリマー溶液に加えた。その後、ボールミルでポリマー溶液中の酸化ジルコニウム粒子の平均粒子径が0.94μmになるまで分散させて懸濁液を得た。なお酸化ジルコニウム粒子としては、原石を粉砕したものを用いた。
乾燥後の混合層を蛍光X線測定で測定したところ、混合層の単位面積当たりの重量は1cm2当り0.5mgであった。蛍光X線測定は、蛍光X線分析装置(ZSX mini、理学電気工業株式会社)を用いて行った。まずあらかじめ塗布量のわかっているサンプルを用いて検量線を作成した後、実際に測りたいサンプルを測定して、検量線から混合層の単位面積あたりの重量から算出した。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽にて電解を行った結果、電圧損失は201mVであった。
多孔質膜に塗布する懸濁液の酸化ジルコニウム粒子として、平均粒子径が3.48μmの酸化ジルコニウム粒子を、乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比が20/80となるように、ポリマー溶液に加え、その後、ボールミルでポリマー溶液中の酸化ジルコニウム粒子の平均粒子径を3.21μmになるまで分散させて懸濁液を得た以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は205mVであった。
なお、本発明者らは、実施例1に比べて電圧損失が大きくなった理由は、酸化ジルコニウム粒子の平均粒子径が大きくなり、膜表面内において酸化ジルコニウムが存在する面積が小さくなったためと推察している。
乾燥後の混合層の単位面積当たりの重量を1cm2当り0.3mgにした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は198mVであった。
なお、本発明者らは、実施例1に比べて電圧損失が小さくなった理由は、単位面積当たりの重量を1cm2当り0.3mgにし、膜表面に存在するポリマー(A)が少なくなり、ポリマー(A)による電気抵抗が減少したためと推察している。
乾燥後の混合層の単位面積当たりの重量を1cm2当り0.1mgにした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は197mVであった。
なお、本発明者らは、実施例1に比べて電圧損失が小さくなった理由は、単位面積当たりの重量を1cm2当り0.1mgにし、膜表面に存在するポリマー(A)が少なくなり、ポリマー(A)による電気抵抗が減少したためと推察している。
乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を10/90にした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は206mVであった。
なお、本発明者らは、実施例1に比べて電圧損失が大きくなった理由は、混合層のポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を10/90にし、膜表面内において酸化ジルコニウムが存在する面積が小さくなったためと推察している。
乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を40/60にした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は199mVであった。
なお、本発明者らは、実施例1に比べて電圧損失が小さくなった理由は、混合層のポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を40/60にし、膜表面内において酸化ジルコニウムが存在する面積が大きくなったためと推察している。
ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社、ユーデル(登録商標))、ポリビニルピロリドン Mw(重量平均分子量)900000(和光純薬工業株式会社)、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社)、EP 酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業株式会社)を以下の割合で混合し、60℃の温度下で十分攪拌して塗工液を得た。
ポリスルホン :10wt%
ポリエチレンオキサイド : 5wt%
N−メチル−2−ピロリドン:55wt%
EP 酸化ジルコニウム :30wt%
得られた多孔質膜の平均孔径をSEMで評価した結果、1.2μmであった。
また、得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は305mVとなった。
上記参照例7の多孔質膜を用い、以下のように混合層を積層した。
まず、実施例1と同様にして懸濁液を得た。この懸濁液をスプレー法により得られた多孔質膜の基材表面と接触していない主面上に塗布し、これを乾燥させることにより、ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
乾燥後の混合層を蛍光X線測定で測定したところ単位面積当たりの重量は1cm2当り0.5mgであった。
得られた膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は203mVであった。
これにより、多孔質膜の孔への泡の浸入、泡の付着が抑制され、電圧損失が低減できることが分かった。
ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社、ユーデル(登録商標))、ポリビニルピロリドン Mw(重量平均分子量)900000(和光純薬工業株式会社)、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業株式会社)、EP 酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業株式会社)を以下の割合で混合し、60℃の温度下で十分攪拌して塗工液を得た。
ポリスルホン :10wt%
ポリエチレンオキサイド : 5wt%
N−メチル−2−ピロリドン:55wt%
EP 酸化ジルコニウム :30wt%
得られた多孔質膜の平均孔径をSEMで評価した結果、0.01μmであった。
また、得られた膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は367mVとなった
上記参照例8の多孔質膜を用い、以下のように混合層を積層した。
まず、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体で乾燥時のイオン交換容量が1.05mg当量/gであるポリマー(A)を加水分解した後、塩酸で酸型にした。この酸型のポリマー(A)を、水及びエタノールの50/50(質量比)混合液に5質量%の割合で混合させたポリマー溶液を得た。このポリマー溶液に、平均粒子径が1.15μmの酸化ジルコニウム粒子を、乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比が20/80となるように加えた。その後、ボールミルでポリマー溶液中の酸化ジルコニウム粒子の平均粒子径が0.94μmになるまで分散させて懸濁液を得た。なお酸化ジルコニウム粒子としては、原石粉砕したものを用いた。
乾燥後の混合層を蛍光X線測定で測定したところ単位面積当たりの重量は1cm2当り0.5mgであった。
得られた膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は273mVであった。
この結果から、多孔質膜の孔への泡の浸入、泡の付着が抑制され、電圧損失は低減できているが、多孔質膜の孔径が小さくアルカリ水電解用隔膜の電圧損失は実施例1と比較すると高くなることが分かった。
なお、本発明者らは、膜表面の孔径が小さいと、その部分のイオンの透過性が悪くなり、その結果、電圧損失の上昇に繋がるためと推察している。
乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を80/20にした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は240mVであった。
多孔質膜への泡の付着の抑制が不十分なため、実施例1と比較すると電圧損失の低下が小さいことが分かった。
なお、本発明者らは、泡付着の抑制が不十分な理由は、混合層のポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を80/20にし、膜表面内において酸化ジルコニウムが存在する面積が小さくなったためと推察している。
乾燥ポリマー(A)と酸化ジルコニウム粒子との質量比を2/98にした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた膜表面から酸化ジルコニウムの粒子が欠落する為、電解評価を行うことが出来なかった。
なお、本発明者らは、粒子が欠落した理由は、酸化ジルコニウムを結着する役割のポリマー(A)が酸化ジルコニウムに比べ著しく少な過ぎたためと推察している。
乾燥後の混合層の単位面積当たりの重量を1cm2当り0.008mgにした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は261mVであった。
多孔質膜の孔への泡の浸入、泡の付着の抑制が不十分な為、実施例1と比較すると電圧の損失の低下は小さいことが分かった。
なお、本発明者らは、電圧損失の低下が低くなった理由は、単位面積当たりの重量を1cm2当り0.008mgにし、膜表面に存在する酸化ジルコニウムが少なくなくなったためと推察している。
乾燥後の混合層の単位面積当たりの重量を1cm2当り5mgにした以外は、実施例1と同様にして、酸化ジルコニウム粒子を含む混合層を有する多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜を用いて、ゼロギャップ電解槽で電解を行った結果、電圧損失は241mVであった。
多孔質膜の孔への泡の浸入、泡の付着が抑制されたが、塗布した混合層のポリマーによる抵抗が上がった為、実施例1と比較すると電圧の損失の低下は小さいことが分かった。
Claims (18)
- 多孔性支持体と、
前記多孔性支持体の第1の主面上に積層された第1の多孔質膜と、
前記第1の多孔質膜における前記多孔性支持体と接触していない主面上に積層された、無機微粒子及びイオン交換樹脂を含有する第1の混合層と、
を有し、
前記第1の混合層が、前記無機微粒子を10重量%以上97重量%以下、及び、前記イオン交換樹脂を3重量%以上90重量%以下含む、アルカリ水電解用隔膜。 - 前記第1の多孔質膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の多孔質膜が、前記無機微粒子を含有する、請求項1又は2に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の多孔質膜の平均孔径は、0.05μm以上6μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の混合層の単位面積あたりの重量が、0.01mg/cm2以上5mg/cm2以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記多孔性支持体の前記第1の主面に対向する第2の主面上に積層された第2の多孔質膜と、
前記第2の多孔質膜における前記多孔性支持体と接触していない主面上に積層された、無機微粒子及びイオン交換樹脂を含有する第2の混合層と、
をさらに有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。 - 前記第2の混合層が、前記無機微粒子を10重量%以上97重量%以下、及び、前記イオン交換樹脂を3重量%以上90重量%以下含む、請求項6に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の多孔質膜及び/又は前記第2の多孔質膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項6又は7記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の多孔質膜及び/又は前記第2の多孔質膜が、前記無機微粒子を含有する、請求項6〜8のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の多孔質膜及び/又は前記第2の多孔質膜の平均孔径は、0.05μm以上6μm以下である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記第1の混合層及び/又は前記第2の混合層の単位面積あたりの重量が、0.01mg/cm2以上5mg/cm2以下である、請求項6〜10のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記イオン交換樹脂は、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記イオン交換樹脂がパーフルオロイオン交換樹脂である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記多孔性支持体が不織布又は織布である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記多孔性支持体は、ポリフェニレンサルファイド繊維を含有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記無機微粒子が酸化ジルコニウムである、請求項1〜15のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 前記無機微粒子の平均粒子径が、0.3μm以上5μm以下である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜。
- 請求項1〜17のいずれか一項に記載のアルカリ水電解用隔膜と、
前記アルカリ水電解用隔膜の第1の主面上に配置された陽極と、
前記アルカリ水電解用隔膜の第2の主面上に配置された陰極と、を備える、アルカリ水電解槽。
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