JP2022145529A - 陽イオン交換膜及び電解槽 - Google Patents

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Abstract

【課題】低電解電圧を維持したまま、膜交換時の表面損傷を低減することが可能な陽イオン交換膜及び電解槽を提供する。【解決手段】カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体(I)を含む層(A)を備える陽イオン交換膜であって、前記含フッ素共重合体(I)が、テトラフルオロエチレンに由来する単位(U1)を含み、前記単位U1の含有量が、前記含フッ素共重合体(I)の全構成単位100質量%に対して、70.0質量%以上80.0質量%以下であり、前記層(A)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である、陽イオン交換膜。【選択図】なし

Description

本発明は、陽イオン交換膜及び電解槽に関する。
イオン交換膜を電解質とする各種電気化学装置としては、アルカリ金属塩電解槽、水電解槽、塩酸電解槽、あるいは、燃料電池などがある。そのうち工業プロセスとして成熟し、幅広く利用されているものとして、アルカリ金属塩電解槽が挙げられる。従来より、アルカリ金属ハロゲン塩、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの水溶液を電解し、塩素等のハロゲンガスとアルカリ金属水酸化物及び水素を製造する工業的方法はよく知られている。そのうちでイオン交換膜を隔膜として使用するイオン交換膜法電解技術が、電力消費量を最も少なくし、省エネルギー化のために最も有利なプロセスとして、世界的に工業化がなされている。
しかしながら、上記のイオン交換膜法電解技術においても尚、現在更なる電力消費量の低減が要求されている。イオン交換膜法において電力消費量の大きな部分を占めるのは隔膜であるイオン交換膜であり、イオン交換膜の電力消費量低減が必須となる。イオン交換膜法における電力消費量は、電解電圧と電流効率から決定される。そして、電力消費量の低減は、低電解電圧、且つ高電流効率により達成される。
イオン交換膜の電流効率を向上させるとともに、電解電圧を低下させる方法として、一般的に、電流効率を発現する層を薄層化し、上記層より電流効率発現の寄与は小さいものの、電気抵抗が小さく強度の大きい層と積層化する手法が用いられる。
一般的に、電流効率を発現する層にはカルボン酸型基を側鎖末端として有するフッ素化物イオン交換重合体が用いられ、低電気抵抗の層にはスルホン酸型基を側鎖末端として含有するフッ素化イオン交換重合体が用いられる。上記手法により、膜全体の強度を維持しつつ、電力消費量低減の目標を達成できる。例えば、特許文献1及び特許文献2には、カルボン酸型基を側鎖末端として有するフッ素化物イオン交換重合体の薄層と、スルホン酸型基を側鎖末端として含有するフッ素化イオン交換重合体の層を積層したイオン交換膜が開示されている。
特許第2504135号公報 特公昭58-033249号公報
電流効率を発現する層を薄層化した場合、厚膜と比較すると、膜表面に傷が入ることに起因する電流効率の低下が顕在化しやすく、結果として電力消費増加の原因となりやすい。とりわけ、電解槽においてイオン交換膜を交換する際には、イオン交換膜の表面と他部材との接触機会が多いため、薄膜化させたイオン交換膜の交換作業には困難が伴う。ここで、特許文献1及び特許文献2においては、高電流効率と低電解電圧の両立のための積層構造について言及されているが、上記のような課題認識はなく、電解電圧を低減させるとともに、膜強度を高めて、膜交換時の表面損傷を低減させる観点から、依然として改善の余地がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低電解電圧を維持したまま、膜交換時の表面損傷を低減することが可能な陽イオン交換膜及び電解槽を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、陽イオン交換膜における所定の含フッ素共重合体の組成ないし物性を調整することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体Aを含む層(A)を備える陽イオン交換膜であって、
前記含フッ素共重合体(I)が、テトラフルオロエチレンに由来する単位(U1)を含み、
前記単位U1の含有量が、前記含フッ素共重合体Aの全構成単位100質量%に対して、70.0質量%以上80.0質量%以下であり、
前記層(A)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である、陽イオン交換膜。
[2]
前記含フッ素共重合体Aが、前記カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(i)に由来する単位(U2)を含む、[1]に記載の陽イオン交換膜。
[3]
前記含フッ素モノマー(i)が、下記式(X)で表される化合物である、[2]に記載の陽イオン交換膜。
CF=CF-(O-CF-CF(CF))-O-(CF-COOZ (X)
(上記式(X)中、nは0~2の整数を表し、mは1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)
[4]
前記単位U1の含有量が、72.0質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の陽イオン交換膜。
[5]
下記式(Y)で表される化合物に由来する単位(U2’)を含む含フッ素共重合体A’を含む層(A’)を備える陽イオン交換膜であって、
前記層(A’)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である、陽イオン交換膜。
CF=CFO-(CF-COOZ (Y)
(上記式(Y)中、mは1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)
[6]
前記含フッ素共重合体A’のイオン交換容量が0.6~1.4ミリ等量/gの範囲にある、[5]に記載の陽イオン交換膜。
[7]
前記層(A)又は前記層(A’)の厚さが5μm以上35μm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の陽イオン交換膜。
[8]
スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)に由来する単位(U3)とフルオロオレフィンに由来する単位(U4)とを含む含フッ素共重合体Bを含む層(B)を更に備える、[1]~[7]のいずれかに記載の陽イオン交換膜。
[9]
層(B)の厚さが30μm以上150μm以下である、[8]に記載の陽イオン交換膜。
[10]
前記層(A)又は層(A’)と前記層(B)の二層構造である、[8]又は[9]に記載の陽イオン交換膜。
[11]
陽極と陰極との間に配置され、食塩電解用として用いられる、[1]~[10]のいずれかに記載の陽イオン交換膜。
[12]
陽極と、
前記陽極に対向する陰極と、
前記陽極と陰極との間に配置された、[1]~[11]のいずれかに記載の陽イオン交換膜と、
を備える、電解槽。
[13]
前記層(A)又は層(A’)が、前記陰極側に配置される、[12]に記載の電解槽。
本発明の陽イオン交換膜を用いることで、低い電解電圧を維持したまま電解槽への装着時の表面損傷を低減できるため、効率よく膜交換を実施できる。
本実施形態の陽イオン交換膜の一例の概略断面図である。 本実施形態の電解槽の一例の模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<陽イオン交換膜>
本実施形態の第1の様態に係る陽イオン交換膜(以下、単に「第1の陽イオン交換膜」とも記載する。)は、カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体(I)を含む層(A)を備える陽イオン交換膜であって、前記含フッ素共重合体(I)が、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)に由来する単位(U1)を含み、前記単位U1の含有量(以下、「TFE比率」ともいう。)が、前記含フッ素共重合体(I)の全構成単位100質量%に対して、70.0質量%以上80.0質量%以下であり、前記層(A)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である。第1の陽イオン交換膜は、上記構成を備えることにより、低電解電圧、及び膜表面損傷の低減の両立を可能とする。
また、本実施形態の第2の様態に係る陽イオン交換膜(以下、単に「第2の陽イオン交換膜」とも記載する。)は、下記式(Y)で表される化合物に由来する単位(U2’)を含む含フッ素共重合体A’を含む層(A’)を備える陽イオン交換膜であって、前記層(A’)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である。
CF=CFO-(CF-COOZ (Y)
(上記式(Y)中、mは1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)
第2の陽イオン交換膜は、上記構成を備えることにより、第1の陽イオン交換膜と同様に、低電解電圧、及び膜表面損傷の低減の両立を可能とする。
以下、「本実施形態の陽イオン交換膜」と称するときは、特に断りがない限り、「第1の陽イオン交換膜」と「第2の陽イオン交換膜」を包含するものとして本実施形態を説明する。本実施形態の陽イオン交換膜は、電解槽において、陽極と陰極との間に配置され、食塩電解用として用いられることが好ましい。
本実施形態において「カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体A」及び「カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体A’」とは、カルボン酸基、又は、加水分解によりカルボン酸基となりうる前駆体基を有する含フッ素共重合体をいう。含フッ素共重合体が、加水分解によりカルボン酸基となり得る前駆体を有する場合は、後述の方法で成膜後にカルボン酸基に変換される。
第1の陽イオン交換膜における含フッ素共重合体Aは、TFEに由来する単位(U1)を含み、その含有量であるTFE比率が70.0質量%以上80.0質量%以下である。TFE比率は、72.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましく、72.0質量%以上75.0質量%以下であることがより好ましい。TFEが70.0質量%以上の範囲であれば、膜表面の損傷を抑制するのに十分な強度の含フッ素共重合体を得ることができる。TFE比率が高いほど、共重合体の結晶化を阻害する側鎖の含有率が低下し、強度が向上する。TFE比率が80.0質量%以下の範囲であれば、好適に低い電圧で電解することができる。TFE比率が72.0質量%以上の範囲であれば、後述する埋込工程において、離型紙からの膜の剥離が容易となる傾向にあり、また、TFE比率が75.0質量%以下の範囲であれば、後述する多層膜として用いる際に、他の層との密着性が向上する傾向にある。
また、第2の陽イオン交換膜における含フッ素共重合体A’も、TFEに由来する単位(U1)を含み、その含有量であるTFE比率が上述した範囲を満たすことが好ましい。
TFE比率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
[含水率]
本実施形態の陽イオン交換膜において、層(A)及び層(A’)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は6.5%以上10.5%以下であり、好ましくは7.0%以上10.5%以下であり、より好ましくは7.0%以上9.5%以下である。含水率が6.5%以上の範囲であれば、膜内でのNaイオンの拡散係数が増大し、低い電解電圧を発現することができ、含水率が10.5%以下の範囲であれば、膜の膨潤による表面強度の低下を抑制できる。含水率が7.0%以上の範囲であれば、多層膜として用いる際に、他の層との含水率差が低減され、膨潤率の差を原因とする剥離を抑制できる傾向にあり、含水率が9.5%以下の範囲であれば、OHイオンの陰極から陽極への移動が抑制され、高い電流効率を発現できる傾向にある。
含水率は以下の方法で測定することができる。
25質量%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中での含水率の測定方法の一例を示す。
陽イオン交換膜から層(A)又は層(A’)を分離し、さらに層(A)又は層(A’)から厚み500μm以下かつ質量0.5g以下の小片を切り出して測定サンプルとする。この測定サンプルを90℃の25質量%NaOH水溶液に6時間浸漬させた後、測定サンプルの質量W(NaOH)を測定する。次に、純水で測定サンプルを洗浄した後、90℃の純水中に、6時間浸漬させる。その後、真空乾燥機により、-0.1MPa、110℃で6時間乾燥させ、測定サンプルの質量W(dry)を測定する。含水率は、次の式で示される。
含水率=(W(NaOH)- W(dry))/ W(dry)
なお、本実施形態における「純水」とは、25℃で測定した際の導電率が100μS/cm以下の水を示す。
本実施形態の陽イオン交換膜において、層(A)又は層(A’)に対して測定される含水率を上述した範囲に調整するための制御方法は、以下に限定されないが、例えば、ポリマー内のイオン交換基数とTFE比率を所望の値に調節することが挙げられる。すなわち、含水率はポリマーの弾性エネルギーと親水性のバランスで決定される為、弾性エネルギーの発現に影響するTFE比率と、親水性の発現に影響するイオン交換基数の調節で可能となる。
続いて、本実施形態の陽イオン交換膜のポリマー組成、及びポリマー組成比について詳細に説明する。
[ポリマー組成]
含フッ素共重合体A及び含フッ素共重合体A’としては、以下に限定されないが、例えば、フッ素化炭化水素の主鎖からなり、加水分解等によりカルボン酸基に変換可能な官能基を側鎖として有し、且つ溶融成型が可能な重合体等が挙げられる。このような含フッ素重合体について、以下に説明する。
含フッ素共重合体Aは、TFEに由来する単位(U1)を含むものであり、カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(i)に由来する単位(U2)をさらに含むことが好ましい。この場合、含フッ素系重合体Aは、TFEと、2種類以上の含フッ素モノマー(i)とを共重合させることにより得られる共重合体の形態であってもよい。また、含フッ素系重合体Aは、TFEと1種類以上の含フッ素モノマー(i)とを共重合させることにより得られる共重合体(1)と、共重合体(1)に用いたものとは異なる1種類以上の含フッ素モノマー(i)とTFEとを共重合させることにより得られる共重合体(2)と、を含むポリマーブレンドの形態であってもよい。
なお、第2の陽イオン交換膜において、含フッ素共重合体A’が上述した構成を満たすものであってもよい。
本実施形態において、「カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(i)」とは、カルボン酸基、又は、加水分解によりカルボン酸基となりうる前駆体基、を有するフッ化ビニル化合物をいう。このような含フッ素モノマー(i)としては、以下に限定されないが、例えば、式(a)で表される化合物(単量体)が挙げられる。
CF=CF-(O-CFCYF)-O-(CYF)-COOZ 式(a)
(上記式(a)中、nは、0~2の整数を表し、mは、1~12の整数を表し、Yは、各々独立して、F又はCFを表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)。
なお、第2の陽イオン交換膜において、含フッ素共重合体A’が上述した含フッ素モノマー(i)に由来する単位を有していてもよい。
本実施形態において、式(a)で表される化合物は、式(X)で表される化合物が好ましい。
CF=CF-(O-CF-CF(CF))-O-(CF-COOZ (X)
(上記式(X)中、nは、0~2の整数を表し、mは、1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す)。
特に、本実施形態の陽イオン交換膜をアルカリ金属塩用イオン交換膜として用いる場合、モノマー成分としてフッ素化炭素化合物を少なくとも含むことが好ましいが、上記式(a)及び式(X)におけるZ(とりわけ、エステル部位におけるアルキル基)は、加水分解される時点で重合体から失われるため、Zがアルキル基である場合は、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基でなくてもよい。上記を踏まえ、式(X)で表される化合物は、下記に示すモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CF=CFO-CF-CF(CF)-O-CF-COOCH
CF=CFO-CF-CF(CF)-O-CF-CF-COOCH
CF=CFO-CF-CF(CF)-O-(CF-COOCH
CF=CF-[O-CF-CF(CF)]-O-(CF-COOCH
CF=CFO-CF-COOCH
CF=CFO-(CF-COOCH
CF=CFO-(CF-COOCH
なお、第2の陽イオン交換膜において、式(Y)で表される化合物に由来する単位(U2’)の他にも、含フッ素共重合体A’が上述した式(X)で表される化合物に由来する単位(単位(U2’)に該当するものを除く。)を適宜含むものであってもよい。
本実施形態において、ある程度の結晶化度を確保し、強度を確保する観点から、過度に長い側鎖や過度な分岐構造を有しないことが好ましい。また、短い側鎖を含む場合、TFE比率を高くしても共重合体のイオン交換基濃度を高くすることができ、高い含水率を発現できる傾向にあるため好ましい。そのため、含フッ素モノマー(i)は下記式(Y)で表される化合物であることが好ましい。
CF=CFO-(CF-COOZ (Y)
(上記式(Y)中、mは1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)
上記式(Y)で表される化合物は、下記に示すモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
CF=CFO-CF-COOCH
CF=CFO-(CF-COOCH
CF=CFO-(CF-COOCH
なお、第2の陽イオン交換膜における含フッ素共重合体A’は、上記式(Y)で表される化合物に由来する単位(U2’)を含むことを必須構成とする。さらに、含フッ素共重合体A’は、前述のとおり含水率が所定範囲とされている。したがって、第2の陽イオン交換膜も、低電解電圧、及び膜表面損傷の低減の両立を可能とする。
含フッ素共重合体A’を構成する上記式(Y)で表される化合物としても、下記に示すモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
CF=CFO-CF-COOCH
CF=CFO-(CF-COOCH
CF=CFO-(CF-COOCH
[含フッ素共重合体A又は含フッ素共重合体A’のイオン交換容量]
本実施形態において、含フッ素共重合体A又は含フッ素共重合体A’のイオン交換容量は特に限定されないが、0.5~1.4ミリ当量/gの範囲にあることが好ましく、0.6~1.4ミリ等量/gの範囲にあることがより好ましく、0.90~1.4ミリ当量/gの範囲にあることがさらに好ましい。0.5~1.4ミリ当量/gの範囲にあれば、陽イオン交換膜の低電解電圧と高電流効率を両立できる傾向にある。0.6~1.4ミリ等量/gの範囲にあれば、イオンの通り道であるクラスターの内径が充分な大きさとなる傾向にあり、ナトリウムイオン以外の陽イオンが膜内に滞留、蓄積することによる性能低下を抑制できる傾向にある。0.90~1.4ミリ当量/gの範囲にあれば、イオン以外の物質が膜内に滞留、蓄積することによる性能低下をより抑制できる傾向にある。上記イオン交換容量は、乾燥状態のポリマー重量当たりのイオン性官能基の数を表し、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
[MI(メルトインデックス)]
本実施形態において、含フッ素共重合体A又は含フッ素共重合体A’のMIは特に限定されないが、押出成形時の膜表面に擦れや荒れを防止し、また、生産性を向上させる観点から、0.1g/10分以上、150g/10分以下(換算値)の範囲内にあることが好ましい。上記MIは、例えば、オリフィスの内径2.09mm、長さ8mmの装置を用いて、温度250~290℃、荷重21.2Nの条件で測定することができる。
[層(A)又は層(A’)の膜厚]
本実施形態の層(A)又は層(A’)の厚さは、5μm以上35μm以下が好ましい。上記厚さが5μm以上の場合、溶融押出による製膜時に欠陥が生じにくくなり、上記厚さが35μm以下の場合、膜の電気抵抗が低く、低い電解電圧となる傾向にある。
上記厚さは、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
[膜構成]
上記にて説明した本実施形態の陽イオン交換膜は、層(A)又は層(A’)の単層構造としてもよいし、他の層と組み合わせた積層構造を有していてもよい。すなわち、本実施形態の陽イオン交換膜は、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。電解性能をより高める観点から、本実施形態の陽イオン交換膜は、多層膜であることが好ましい。
[多層膜]
以下、本実施形態の陽イオン交換膜が多層膜である場合について説明する。本実施形態の陽イオン交換膜は、上述した層(A)及び層(A’)を有する多層膜であってもよいし、少なくとも1層の層(A)及び/又は層(A’)と、少なくとも1層の後述する層(B)とを有するものであってもよい。本実施形態の陽イオン交換膜は、1層の層(A)と1層の層(B)との二層構造であることがとりわけ好ましい。
[層(B)]
本実施形態の陽イオン交換膜は、スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)に由来する単位(U3)とフルオロオレフィンに由来する単位(U4)とを含む含フッ素共重合体Bを含む層(B)を更に備えることが好ましい。本実施形態の陽イオン交換膜における少なくとも1層が、上記の層(B)であれば、多層膜として好適な強度と低い電解電圧を発現できる傾向にある。
スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)は、スルホン酸基、又は、加水分解によりスルホン酸基となりうる前駆体基、を有するフッ化ビニル化合物をいう。含フッ素モノマー(ii)としては、例えば、下記式(b)で表される化合物が好ましい。
CF=CF-(O-CFCYF)-O-(CYF)-SOF 式(b)
(上記式(b)中、nは、0~2の整数を表し、mは、1~12の整数を表し、Yは、各々独立して、F又はCFを表す)。
特に、式(b)で表される化合物は下記化合物であることがより好ましい。
CF=CF-(O-CFCF(CF))-O-(CF-SO
(ここで、nは0又は1を表し、mは1~3の整数を表す。)
含フッ素共重合体Bを構成するフルオロオレフィンは、含フッ素モノマー(ii)とは相違するものであり、特に限定されないが、例えば、下記式(c)で表される化合物が挙げられる。
CX1X2=CX3X4 式(c)
(上記式(c)中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、H、F又はCF3を表し、
少なくとも1つのFを含む。)
上記式(c)で表される化合物は、テトラフルオロエチレンであることが好ましい。
[含フッ素共重合体Bのイオン交換容量]
本実施形態において、含フッ素共重合体Bのイオン交換容量は特に限定されないが、陽イオン交換膜の高強度と低電解電圧の両立の観点から、0.5~2.0ミリ当量/gの範囲にあることが好ましい。上記イオン交換容量は、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
[層(B)の膜厚]
層(B)の膜厚は、特に限定されないが、30μm以上150μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上150μm以下である。上記膜厚が30μm以上であれば、溶融押出による製膜時に欠陥の発生を抑制できる傾向にあり、上記膜厚が150μm以下であれば、より低い電圧で電解することができる傾向にある。上記膜厚が50μm以上であれば、膜全体として十分な強度が得られる傾向にある。
上記厚さは、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
[強化芯材]
本実施形態の陽イオン交換膜は、層(A)の内部、層(A’)の内部、層(B)の内部、及び各層の間からなる群より選択される少なくとも1か所において、強化芯材を含むことが好ましい。強化芯材は、陽イオン交換膜の強度及び寸法安定性を強化することができ、膜の内部に存在することが好ましい。強化芯材とは、強化糸を織った織布であることが好ましい。強化芯材の材料は、長期耐熱性、長期耐薬品性が必要であることから、フッ素系重合体からなる繊維が好ましい。強化芯材の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、トリフルオロクロルエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。強度及び耐薬品性の観点から、PTFEからなる繊維を用いることが特に好ましい。
強化芯材の糸径としては、好ましくは20~300デニール、より好ましくは50~250デニール、織密度(単位長さ辺りの打ち込み本数)としては、好ましくは5~50本/インチである。強化芯材の形状としては、織布、不織布又は編布などが挙げられるが、織布であることが好ましい。また、織布の厚さは、30~250μmであることが好ましく、30~150μmであることがより好ましい。
織布または編布は、特に限定されないが、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメントまたは、これらのヤーン、スリットヤーンなどが使用され、織り方は平織り、絡み織り、編織り、コード織り、シャーサッカなど種々の織り方が使用される。
また、強化芯材の開口率は、特に限定されないが、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、90%以下である。開口率は、陽イオン交換膜としての電気化学的性質の観点から30%以上、また、膜の機械的強度の観点から90%以下が好ましい。開口率とは、陽イオン交換膜の表面積の合計(S1)に対し、イオン等の物質が通過できる面積の合計(S2)の割合であり、(S2)/(S1)で表される。(S2)は、陽イオン交換膜において、イオンや電解液等が、陽イオン交換膜に含まれる強化芯材や強化糸等によって遮断されない領域の面積の合計である。
開口率の測定方法は、以下のとおりである。イオン交換膜(透過画像を取得するのを妨害するコーティング等は除去する)の膜表面方向からの透過画像を撮影し、芯材(後述する犠牲芯材及び連通孔は含まない)が存在しない部分の面積から、上記(S2)を求めることができる。そして、陽イオン交換膜の表面画像の面積から上記(S1)を求め、上記(S2)を上記(S1)で除することによって、開口率を求める。
これら種々の強化芯材の中でも、特に好ましい形態としては、例えば、PTFEから成る高強度多孔質シートをテープ状にスリットしたテープヤーンである。又は、強化芯材としては、PTFEから成る高度に配向したモノフィラメントの50~300デニールを使用し、織り密度が10~50本/インチの平織り構成からなり、更に、その厚さが50~100μmの範囲で、且つその開口率が60%以上であることが好ましい。
更に、織布には膜の製造工程において、強化芯材の目ズレを防止する目的で、通常、犠牲芯材と呼ばれる補助繊維を含んでもよい。この犠牲芯材を含むことで、陽イオン交換膜内に連通孔を形成することができる。
犠牲芯材は、膜の製造工程もしくは電解環境下において溶解性を有するものであり、特に限定されないが、例えば、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース及びポリアミドなどが用いられる。この場合の混織量は、好ましくは織布または編布全体の10~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。
[連通孔]
本実施形態の陽イオン交換膜は、層(A)、層(A’)及び層(B)からなる群より選択される少なくとも1か所において、膜内に連通孔を有していてもよい。本実施形態において、連通孔とは、電解の際に発生する陽イオンや電解液の流路となり得る孔をいう。連通孔を形成することで、電解の際に発生するアルカリイオンや電解液の移動性がより向上する傾向にある。連通孔の形状は特に限定されないが、後述する製法によれば、連通孔の形成に用いられる犠牲芯材の形状とすることができる。
本実施形態において、連通孔は、強化芯材の陽極側と陰極側を交互に通過するように形成されることが好ましい。このような構造とすることで、強化芯材の陰極側に連通孔が形成されている部分では、連通孔に満たされている電解液を通して輸送された陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)が、強化芯材の陰極側にも流れることができる。その結果、陽イオンの流れが遮蔽されることがないため、陽イオン交換膜の電気抵抗を更に低減できる傾向にある。図1に、陽イオン交換膜1の断面模式図を示す。この例において、陽イオン交換膜1における層(B)4側に、連通孔2a,2bが形成されており、強化芯材3が配されている。また、層(B)4には層(A)5が積層されており、各層の表面に後述のコーティング6、7がそれぞれ形成されている。さらに、図示しない陽極が(α)方向に配されており、当該陽極は層(B)の陽極側表面8に面している。強化芯材は、例えば、PTFEモノフィラメントの織布であり、そのモノフィラメント間に、例えば、PETの繊維がモノフィラメントと同様に編まれている。縦糸も横糸も同様である。そして、図1の例において、連通孔2a、abは、強化芯材の陽極側(α)と強化芯材の陰極側(β)を交互に通過するように形成されている。
[コーティング]
本実施形態の陽イオン交換膜は、コーティングを含むことが好ましい。コーティングを有することで、電解時に陰極側表面、及び陽極側表面へのガスの付着を防止することができる。なお、本実施形態においては、コーティングの有無にかかわらず、1つの層Aと1つの層Bで構成される陽イオン交換膜であれば、二層構造と扱うものとする。
コーティングの材料としては、特に限定されるものではないが、ガスの付着防止の観点から、無機物を含むことが好ましい。無機物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。コーティングを膜本体に形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、無機酸化物の微細粒子をバインダーポリマー溶液に分散した液を、スプレー等により塗布する方法が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、例えば、スルホン型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物等が挙げられる。塗布条件については、特に限定されず、例えば、30~90℃にてスプレーを用いることができる。スプレー法以外の方法としては、例えば、ロールコート等が挙げられる。
コーティングの平均厚さは、ガス付着防止と厚みによる電気抵抗増加の観点から、1~10μmであることが好ましい。
<陽イオン交換膜の製造方法>
本実施形態の陽イオン交換膜の製造方法は、特に限定されないが、以下の1)から5)の工程を有することが好ましい。
1) カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体A又はA’と、必要に応じて、スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)に由来する単位(U3)とフルオロオレフィンに由来する単位(U4)とを含む含フッ素共重合体Bとを製造する工程(重合体の製造工程)と、
2) 犠牲糸を織り込んだ強化芯材を得る工程(強化芯材の製造工程)と、
3) 各種の含フッ素共重合体(含フッ素共重合体A又はA’と、必要に応じて、含フッ素共重合体B)を製膜する工程(製膜工程)と、
4) 前記強化芯材と、前記膜とを埋め込んで複合膜を形成する工程(埋込工程)と、
5) 酸又はアルカリで、複合膜を加水分解する工程(加水分解工程)と、を含む製造方法が好ましい。
1) 工程(重合体の製造工程)
含フッ素共重合体Aは、特に限定されないが、TFEと、カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(i)と、を共重合することにより製造することができる。なお、含フッ素モノマー(i)については、2種類以上を併用して共重合することもできる。
含フッ素共重合体Bについても特に限定されないが、スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)とフルオロオレフィンとを共重合することにより製造することができる。なお、フルオロオレフィン及び含フッ素モノマー(ii)については、各々2種類以上を併用して共重合することもできる。
重合方法は、特に限定されないが、例えば、TFEの重合に一般的に用いられる重合方法を用いることができる。例えば、非水法により重合する場合は、パーフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン等のラジカル不活性溶媒を用いる。そして、パーフルオロカーボンパーオキサイドやアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、温度0~200℃、圧力0.1~20MPaの条件下で、反応を行うことができる。
含フッ素モノマー(i)を2種類以上併用する場合の組み合わせの種類及びその割合は、特に限定されず、得られる含フッ素重合体に付与したい官能基の種類及び量等によって適宜決定できる。
2) 工程(強化芯材の製造工程)
本実施形態の陽イオン交換膜は、膜の強度をより向上させる観点から、強化芯材が膜内に埋め込まれていることが好ましい。連通孔を有する陽イオン交換膜とするときには、犠牲糸も一緒に強化芯材へ織り込む。この場合の犠牲糸の混織量は、好ましくは強化芯材全体の10~80質量%、より好ましくは30~70質量%である。犠牲糸としては、2~50デニールの太さを有し、モノフィラメント又はマルチフィラメントからなるポリエチレンテレフタレート等であることが好ましい。
3) 工程(製膜工程)
上記1)工程で得られた各種の含フッ素共重合体を製膜する方法は、特に限定されないが、溶融押出法を用いるのが好ましい。製膜方法としては以下の方法が挙げられる。
本実施形態の陽イオン交換膜が、例えば、層(A)と層(B)の2層構造を有する多層膜である場合、層(A)と層(B)をそれぞれ別々に製膜する方法が挙げられる。
本実施形態の陽イオン交換膜が、例えば、層(A)と2種類の層(B)の3層構造を有する多層膜である場合、例えば、共押出しにより層(A)と第1の層(B)の複合膜を押出す。その後、前記複合膜と、別途単独で製膜した第2の層(B)を後述の方法で積層する。或いは、共押出しにより第1の層(B)と第2の層(B)の複合膜を押出す。その後、前記複合膜と、別途単独で製膜した層(A)を後述の方法で積層する。これらのうち、前者の方法にて共押出しすると、層界面の接着強度を高めることができ好ましい。
4) 工程(埋込工程)
前記2)工程で得られた強化芯材、及び、前記3)工程で得られた複合膜を、昇温したドラムの上で埋め込むのが好ましい。ドラム上では、透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、各層を構成する含フッ素重合体が溶融する温度下にて減圧し、各層間の空気を除去しながら埋め込み一体化する。これにより、強化芯材が埋め込まれた複合膜を得ることができる。ドラムとしては、特に限定されないが、例えば、加熱源及び真空源を有し、その表面に多数の細孔を有するものが挙げられる。
強化芯材及び複合膜を積層する際の順番としては、前記3)工程で得た複合膜に合わせて以下の方法が挙げられる。
層(A)と層(B)をそれぞれ別々に製膜する場合は、ドラムの上に、離型紙、層(A)、強化芯材、及び、層(B)の順に積層する方法が挙げられる。
また、層(A)と2種類の層(B)の3層構造を有する多層膜である場合は、ドラムの上に、離型紙、第1の層(B)、強化芯材、層(A)と第2の層(B)の複合膜の順に積層する。或いは、ドラムの上に、離型紙、第1の層(B)と第2の層(B)の複合膜、強化芯材、層(A)の順に積層する。
また、本実施形態の陽イオン交換膜の膜表面に凸部を設けるには、予めエンボス加工した離型紙を用いることによって、埋め込みの際に、溶融したポリマーからなる凸部を形成することもできる。
5) 工程(加水分解工程)
前記4)工程で得られた複合膜を、酸又はアルカリによって加水分解を行う。加水分解は、特に限定されるものではないが、例えば、2.5規定の水酸化カリウム(KOH)と20~40質量%のジメチルスルホキシド(DMSO)の水溶液中、40~90℃で、10分~24時間行うことが好ましい。その後、80~95℃の条件下、0.5~0.7規定のNaOH水溶液を用いて塩交換処理を行うことが好ましい。上記塩交換処理の処理時間としては、電解電圧の上昇を防止する観点から、2時間未満であることが好ましい。
<電解槽>
本実施形態の電解槽は、本実施形態の陽イオン交換膜を備える。図2に、本実施形態の電解槽の一例の模式図を示す。図2に示す電解槽13は、陽極11と、陰極12と、陽極と陰極との間に配置された2層構造の陽イオン交換膜1(以下、2層膜1ともいう。)を備える。但し、本実施形態の電解槽は、図2の電解槽13に限定されず、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に配置された、本実施形態の陽イオン交換膜を備えていればよい。
図2の例において、2層膜1は、層(A)又は層(A’)と、層(B)で構成される。層(A)又は層(A’)は、陰極側に向けて配置される。
図2に示す電解槽を用いた食塩電解にあっては、陽極室側から陰極室側にNaイオンを通過させることができ、一方、陽極室側から陰極室側にOHイオンが移動するのを阻害することができる。また、2層膜1では、層(B)を陽極側に配置することで、膜全体の強度が向上するとともにより低電解電圧を達成できる傾向にある。かかる観点から、本実施形態の電解槽においては、層(A)又は層(A’)が、前記陰極側に配置され、層(B)が、陽極側に配置されることが好ましい。
電解条件は、特に限定されず、公知の条件で行うことができる。例えば、陽極室に2.5~5.5規定の塩化アルカリ水溶液を供給し、陰極室は水又は希釈した水酸化アルカリ水溶液を供給し、電解温度が50~120℃、電流密度が0.5~10kA/mの条件で電解することができる。
本実施形態の電解槽の構成は、特に限定されず、例えば、単極式でも複極式でもよい。電解槽を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、陽極室の材料としては、塩化アルカリ及び塩素に耐性があるチタン等が好ましく、陰極室の材料としては、水酸化アルカリ及び水素に耐性があるニッケル等が好ましい。電極の配置は、陽イオン交換膜と陽極との間に適当な間隔を設けて配置してもよいが、陽極と陽イオン交換膜が接触して配置されていてもよい。また、陰極は、一般的にはイオン交換膜と適当な間隔を設けて配置されているが、この間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であってもよい。
また、食塩電解プロセス条件としては、特に限定されるものではないが、陽極室の塩水濃度を180~215g/L、好ましくは185~205g/Lとする。また、陰極液の濃度を28~35%、好ましくは30~33%とする。更に、電流密度を、1~6kA/mとし、温度を、70~90℃の条件とする。電解槽の型式、給電方式、或いは電極の型式は、公知の型式及び方式全てに適用することができるが、特に本実施形態の陽イオン交換膜は、ファイナイトギャップからゼロギャップの電極配置まで幅広く適用することができる。
以下、実施例及び比較例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれらの例によって何ら限定されるものでない。
実施例及び比較例において、TFE比率、含水率、電気抵抗を測定し、引張試験、電解評価、表面耐久試験を実施した。
[膜厚測定]
まず、陽イオン交換膜の最表層におけるコーティングを拭き取って除去した。次いで、コーティング除去後の陽イオン交換膜全体を対象とし、定圧厚さ測定器(テクロック社 PG―02J)を用いて、膜厚を1cm間隔で測定し、平均膜厚tを算出した。次いで、陽イオン交換膜から剥離して測定対象となる層(A)(層(A’))を分離し、層(A)(層(A’))を分離した後の膜を同様に測定し、平均膜厚t’を算出した。これらの値に基づき、下記式より算出される膜厚t’’を層(A)(層(A’))の厚みとした。また、平均膜厚t’を層(B)の厚みとした。
t’’=t-t’
[含水率の測定]
各例で得られた陽イオン交換膜から層(A)を分離し、さらに層(A)から厚み500μm以下かつ質量0.5g以下の小片を切り出して測定サンプルとした。この測定サンプルを90℃の25質量%NaOH水溶液に6時間浸漬させた後、測定サンプルの質量W(NaOH)を測定した。
次に、純水で測定サンプルを洗浄した後、90℃の純水中に、6時間浸漬させた。その後、真空乾燥機により、-0.1MPa、110℃で6時間乾燥させ、測定サンプルの質量W(dry)を測定した。
得られた値から、次の式により含水率を算出した。
含水率=(W(NaOH)- W(dry))/ W(dry)
なお、上記の純水としては、25℃で測定した際の導電率が100μS/cm以下の水を用いた。
[イオン交換容量及びTFE比率の測定]
各例で得られた層(A)単層と層(B)単層の各々に対して透過型赤外分光分析装置(日本分光社製FT/IR-4200)にて測定を行った。
層(A)の場合は、得られた赤外線ピークのCF由来のピーク波数2363±5cm-1、COO由来のピーク波数2968±5cm-1、COOCH由来のピーク波数1445±5cm-1の各赤外吸収ピークの高さから、カルボン酸型官能基を有する構造単位の比率を算出した。
層(B)の場合は、得られた赤外線ピークのCF由来のピーク波数2363±5cm-1、SOF由来のピーク波数2710±5cm-1の各赤外吸収ピークの高さから、スルホン酸型官能基を有する構造単位の比率を算出した。
後述するイオン交換容量(共重合体の単位質量当たりのイオン交換基のモル数)の値に基づき、下記式よりテトラフルオロエチレン(TFE)の含有量(TFE比率)を算出した。
TFE比率[wt%]=100-(イオン交換容量)[当量/g]×(カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(i)又はスルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)の分子量)[g/mol]×100
滴定法で算出したイオン交換容量が既知のサンプルを用いて、赤外分光法で得たカルボン酸型及びスルホン酸型官能基率とイオン交換容量の検量線を作成した。この検量線を用いて、各含フッ素共重合体のイオン交換容量を算出し、さらに層(A)のTFE比率を求めた。なお、層(A)のイオン交換容量は、それを構成する含フッ素共重合体のイオン交換容量で特定した。
[電気抵抗の測定]
陽イオン交換膜の最表層におけるコーティングを拭き取って除去した。次いで、0.1規定NaOH水溶液に室温で16時間陽イオン交換膜を浸漬した。その後、陽イオン交換膜の厚さt[cm]を測定した。
陽イオン交換膜を、1cmの有効面積を有する抵抗測定用セルに入れ、2つの白金黒電極の間に組み込み、セル内に0.1規定NaOH水溶液を静かに注ぎ入れ、セル内を25℃にコントロールした。電極に接続してある白金端子に、低抵抗計(鶴賀電機社製 MODEL3566)を接続し、1kHzの交流電流を流した。
陽イオン交換膜について、コーティングを拭き取って除去した後、液抵抗を含んだ膜抵抗値Rm1[Ω]と液抵抗Re1[Ω]を測定した。その後、陽イオン交換膜から測定対象の層を剥がして除去した。測定対象の層を剥がした膜について、膜厚t’を測定し、同様に液抵抗を含んだ膜抵抗値Rm2[Ω]及び液抵抗Re2[Ω]を測定した。
陽イオン交換膜の単位面積当たりの膜厚方向抵抗R[Ω・cm]は下記式より求めた。
R=(Rm1-Re1)-(Rm2-Re2)
陽イオン交換膜の体積抵抗率ρ[Ω・cm]は下記式より求めた。
ρ={(Rm1-Re1)-(Rm2-Re2)}/(t-t’)
なお、好適に低い電圧で電解するために求められる膜厚方向抵抗は、好ましくは0.90Ω・cm以下、より好ましくは0.85Ω・cm以下の範囲であり、これらを評価基準とした。
[引張試験]
陽イオン交換膜を純水に16時間浸漬した。取り出した膜を純水で十分に濡らした状態で、層(A)部分から幅10mm、長さ150mmの短冊状のサンプルをアートナイフで切り出した。得られた短冊のサンプルの膜厚tを測定し、オートグラフ(島津製作所製 AGS-X)を用いて、一定速度100mm/minで引張試験を行った。伸び率45%の時の強度が表面強度とよく相関するため、伸度45%時の膜応力[MPa]を測定した。
[表面耐久試験]
陽イオン交換膜の最表層におけるコーティングを拭き取って除去した。次いで、コーテイング層を有しない二層膜を室温の純水に16時間浸漬した。層(A)側を水につけたサンドペーパー(番手:#2000)で10回擦り付け、純水で洗った。その後、真空乾燥機により、-0.1MPa、110℃で6時間乾燥させた。上記研磨後の膜断面を走査電子顕微鏡(日立ハイテク社 TM4000)で観察して、層(A)の膜厚を測定した。押出し直後の層(A)の膜厚を100%とした際の、研磨後の膜厚比率を算出した。
なお、好適に高い電流効率で電解するために求められる残存膜厚比率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の範囲であり、これらを評価基準とした。
[電解電圧の測定]
電解に用いる電解槽としては、陽極と陰極との間にイオン交換膜を配置した構造であり、自然循環型のゼロギャップ電解セルを4個直列に並べたものを用いた。なお、各電解セルにおいて、層(A)が陰極側に、層(B)が陽極側に配されるようにした。
陰極としては、触媒として酸化セリウム、酸化ルテニウムが塗布された直径0.15mmのニッケルの細線を50メッシュの目開きで編んだウーブンメッシュを用いた。陰極と陽イオン交換膜を密着させるため、ニッケル製のエキスパンドメタルからなる集電体と陰極との間に、ニッケル細線で編んだマットを配置した。
陽極としては、触媒としてルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物が塗布されたチタン製のエキスパンドメタルを用いた。
上記電解槽を用いて、陽極側に205g/Lの濃度になるように調整しつつ塩水を供給し、陰極側の苛性ソーダ濃度を32質量%に保ちつつ水を供給した。電解槽の温度を85℃に設定して、6kA/mの電流密度で、電解槽の陰極側の液圧が陽極側の液圧よりも5.3kPa高い条件で電解を行った。電解槽の陽陰極間の対間電圧を、KEYENCE社製電圧計TR-V1000で毎日測定し、7日間の平均値を電解電圧として求めた。
電解電圧は3.00V以下が性能として好ましく、2.95V以下がさらに好ましく、これらを評価基準とした。
[実施例1]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-(CF-COOCHとをモル比6.7:1.0で共重合し、イオン交換容量1.08ミリ当量/g、TFE比率72.3%のポリマーを得た。
層(B)を構成する含フッ素共重合体Bとして、TFEと、CF=CFO-CFCF(CF)-O-(CF-SOFをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05ミリ当量/gのポリマーを得た。
なお、含フッ素共重合体Aは、より詳細には、以下に示す溶液重合により作製した。
まず、ステンレス製の1LオートクレーブにCF=CFO-(CF-COOCHとCFCHFCHFCFCF (HFC4310mee)溶液を仕込み、容器内を十分に窒素置換した。その後、さらにTFEで置換し、容器内の温度が35℃で安定になるまで加温して、TFEで加圧した。
次いで、重合開始剤として、(CFCFCFCOO)の5%HFC4310mee溶液を入れて、反応を開始した。35℃で攪拌しながらTFEを断続的に供給しつつ、途中で、(CFCFCFCOO)の5%HFC4310mee溶液を入れ、TFE圧力を降下させて、TFEを所定量供給したところでメタノールを入れて重合を停止した。
未反応のTFEを系外に放出したのち、得られた重合液を減圧乾燥して未反応モノマーとHFC4310meeを留去して含フッ素重合体Aを得た。得られた含フッ素重合体Aは2軸脱気押出し機にてペレット化した。
また、含フッ素共重合体Bは、CF=CFO-(CF-COOCHの替わりにCF=CF-O-CFCF(CF)-O-(CF-SOFを仕込んだ以外は共重合体Aと同様の方法で得た。
得られた含フッ素共重合体Aと含フッ素共重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚さが93μmの2層膜を得た。該膜の断面を走査電子顕微鏡で観察した結果、層(A)の厚さが13μm、層(B)の厚さが80μmであった。また、層(A)単体の含水率及び電気抵抗測定、引張試験のために、含フッ素共重合体Aを単独で押出し、13μmの膜を得た。
上記の膜を、DMSO30質量%、KOH15質量%を含む70℃の水溶液に40分浸漬して、加水分解した。その後、0.5規定のNaOHを含む60℃の水溶液に45分浸漬して、イオン交換基の対イオンをNaへと置換し、水洗した。
電解評価のために、水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、総イオン交換容量が1.0m当量/gのCF=CFと、CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOFの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に平均一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を上記の2層膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させることにより、コーティングを形成させた。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は8.5質量%、体積抵抗率は125Ω・cm、45%伸度応力は14.6MPaであった。二層膜の膜厚方向抵抗は0.77Ω・cmであり、より好適に低い電圧で電解するために必要な0.85Ω・cm以下の基準を満たしていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は95%であり、より好適に高い電流効率で電解するために必要な95%以上を満たしていた。電解電圧は2.91Vであり、より好ましい電解電圧である2.95V以下の基準を満たしていた。
[実施例2]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-(CF-COOCHとをモル比6.0:1.0で共重合し、イオン交換容量1.17ミリ当量/g、TFE比率70.0%のポリマーを得た以外は実施例1と同様にした。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は10.2質量%、体積抵抗率は95Ω・cm、45%伸度応力は13.8MPaであった。また二層膜の膜厚方向抵抗は0.73Ω・cmであり、より好適に低い電圧で電解するために必要な0.85Ω・cm以下の基準を満たしていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は92%であり、好適に高い電流効率で電解するために必要な90%以上を満たしていた。電解電圧は2.89Vであり、より好ましい電解電圧である2.95V以下の基準を満たしていた。
[実施例3]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-(CF-COOCHとをモル比7.4:1.0で共重合し、イオン交換容量0.97ミリ当量/g、TFE比率75.2%のポリマーを得た以外は実施例1と同様にした。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は6.5質量%、体積抵抗率は181Ω・cm、45%伸度応力は15.8MPaであった。また二層膜の膜厚方向抵抗は0.85Ω・cmであり、より好適に低い電圧で電解するために必要な0.85Ω・cm以下の基準を満たしていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は97%であり、より好適に高い電流効率で電解するために必要な95%以上を満たしていた。電解電圧は2.95Vであり、より好ましい電解電圧である2.95V以下の基準を満たしていた。
[実施例4]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-(CF-COOCHとをモル比6.1:1.0で共重合し、イオン交換容量1.15ミリ当量/g、TFE比率70.6%のポリマーを得た。単層膜および多層膜は実施例1と同様の条件で作製した。
上記の膜を、DMSO30質量%、KOH15質量%を含む55℃の水溶液に40分浸漬して、加水分解した。その後、0.5既定のNaOHを含む60℃の水溶液に45分浸漬して、イオン交換基の対イオンをNaへと置換し、水洗した。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は7.1質量%、体積抵抗率は130Ω・cm、45%伸度応力は14.4MPaであった。また二層膜の膜厚方向抵抗は0.81Ω・cmであり、より好適に低い電圧で電解するために必要な0.85Ω・cm以下の基準を満たしていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は94%であり、好適に高い電流効率で電解するために必要な90%以上を満たしていた。電解電圧は2.93Vであり、より好ましい電解電圧である2.95V以下の基準を満たしていた。
[比較例1]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-CFCF(CF)-O-(CF-COOCHとをモル比7.0:1.0で共重合し、イオン交換容量0.89ミリ当量/g、TFE比率62.3%のポリマーを得た以外は実施例1と同様にした。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は7.2質量%、体積抵抗率は158Ω・cm、45%伸度応力は11.9MPaであった。また二層膜の膜厚方向抵抗は0.82Ω・cmであり、より好適に低い電圧で電解するために必要な0.85Ω・cm以下の基準を満たしていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は83%であり、好適に高い電流効率で電解するために必要な90%以上を下回った。電解電圧は2.94Vであり、より好ましい電解電圧である2.95V以下の基準を満たしていた。
[比較例2]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-CFCF(CF)-O-(CF-COOCHとをモル比7.3:1.0で共重合し、イオン交換容量0.87ミリ当量/g、TFE比率63.3%のポリマーを得た以外は実施例1と同様にした。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は6.7質量%、体積抵抗率は172Ω・cm、45%伸度応力は12.3MPaであった。また二層膜の膜厚方向抵抗は0.84Ω・cmであり、より好適に低い電圧で電解するために必要な0.85Ω・cm以下の基準を満たしていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は86%であり、好適に高い電流効率で電解するために必要な90%以上を下回った。電解電圧は2.95Vであり、より好ましい電解電圧である2.95V以下の基準を満たしていた。
[比較例3]
層(A)を構成する含フッ素共重合体Aとして、TFEと、CF=CFO-(CF-COOCHとをモル比8.7:1.0で共重合し、イオン交換容量0.89ミリ当量/g、TFE比率77.2%のポリマーを得た以外は実施例1と同様にした。
この陽イオン交換膜の含フッ素共重合体Aの90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率は5.0質量%、体積抵抗率は240Ω・cm、45%伸度応力は16.7MPaであった。また二層膜の膜厚方向抵抗は0.92Ω・cmであり、好適に低い電圧で電解するために必要な0.9Ω・cm以下の基準を上回っていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は98%であり、より好適に高い電流効率で電解するために必要な95%以上を満たしていた。電解電圧は3.01Vであり、好ましい電解電圧である3.00V以下の基準を上回っていた。
[比較例4]
層(A)の厚さを40μmとし、厚さが120μmの二層膜を得たこと以外は比較例1と同様にした。
二層膜の膜厚方向抵抗は1.32Ω・cmであり、好適に低い電圧で電解するために必要な0.9Ω・cm以下の基準を上回っていた。研磨試験後の層(A)の残存膜厚比率は94%であり、好適に高い電流効率で電解するために必要な90%以上を満たしていた。電解電圧は3.18Vであり、好ましい電解電圧である3.00V以下の基準を上回っていた。
各実施例及び比較例で製造したイオン交換膜の組成、特性等を表1に示す。
Figure 2022145529000001
表1に示したように、実施例では、低い電解電圧と、膜表面損傷の低減の双方を両立することができる。このように、低い電解電圧と、膜表面損傷の低減の双方を両立させるには、TFE質量比と、含水率を制御することが好ましいとわかった。
表1に示したように、本実施例では、TFE比率が70.0質量%以上、80.0質量%以下の範囲であり、90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が6.5%以上、10.5%以下の範囲であることがわかった。一方、比較例では、本実施例のTFE質量比及び含水率の少なくともいずれか1つが、これらの数値範囲外にあることがわかった。
実施例では、層(A)の45%伸度応力が13.5MPa以上であり、好適に高い電流効率で電解するために必要な残存膜厚比率90%以上を満たしていた。一方で、TFE比が70質量%未満である比較例1,2では、45%伸度応力は13MPa未満であり、残存膜厚比率は90%以下であった。実施例では、TFE比率の向上で膜強度が向上したため、膜表面損傷を低減させた結果となった。また、TFE比が72質量%以上である実施例1,3では45%伸度応力が14.5MPa以上であり、より好適に高い電流効率で電解するために必要な残存膜厚比率95%以上を満たしていた。
また、実施例では膜厚方向の電気抵抗は好適に低い電圧で電解するために必要な0.9Ω・cm以下の基準を満たし、好ましい電解電圧である3.00V以下の基準を満たしていた。高いTFE比率を維持したまま、含水率を6.5%以上に制御することで、膜表面損傷の低減と低い電解電圧の双方を両立させた結果となった。
比較例3では、TFE比率が70質量%以上で層(A)の45%伸度応力が13.5MPa以上を満たし、より好適に高い電流効率で電解するために必要な残存膜厚比率95%以上を満たしていた。しかし、含水率が6.5%未満であり、膜厚方向の電気抵抗は0.9Ω・cm以上で、好ましい電解電圧である3.00V以下の基準を上回った。
また、比較例4では、層(A)を厚膜にすることで残存膜厚比率90%以上を満たしたが、好適に低い電圧で電解するために必要な0.9Ω・cm以下の基準を上回り、好ましい電解電圧である3.00V以下の基準を上回った。
本発明における陽イオン交換膜及び電解槽は、例えば、燃料電池、水電解、水蒸気電解、或いは食塩電解用に用いられ、特に、食塩電解用に好ましく用いられる。
1 陽イオン交換膜
2a、2b 連通孔
3 強化芯材
4 層(B)
5 層(A)
6、7 コーティング
8 層(B)の陽極側表面に面している箇所
11 陽極
12 陰極
13 電解槽

Claims (13)

  1. カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素共重合体Aを含む層(A)を備える陽イオン交換膜であって、
    前記含フッ素共重合体(I)が、テトラフルオロエチレンに由来する単位(U1)を含み、
    前記単位U1の含有量が、前記含フッ素共重合体Aの全構成単位100質量%に対して、70.0質量%以上80.0質量%以下であり、
    前記層(A)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である、陽イオン交換膜。
  2. 前記含フッ素共重合体Aが、前記カルボン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(i)に由来する単位(U2)を含む、請求項1に記載の陽イオン交換膜。
  3. 前記含フッ素モノマー(i)が、下記式(X)で表される化合物である、請求項2に記載の陽イオン交換膜。
    CF=CF-(O-CF-CF(CF))-O-(CF-COOZ (X)
    (上記式(X)中、nは0~2の整数を表し、mは1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)
  4. 前記単位U1の含有量が、72.0質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の陽イオン交換膜。
  5. 下記式(Y)で表される化合物に由来する単位(U2’)を含む含フッ素共重合体A’を含む層(A’)を備える陽イオン交換膜であって、
    前記層(A’)の90℃25質量%NaOH水溶液中での含水率が、6.5%以上10.5%以下である、陽イオン交換膜。
    CF=CFO-(CF-COOZ (Y)
    (上記式(Y)中、mは1~4の整数を表し、Zは水素、アルカリ金属元素、NH、CH、C又はCを表す。)
  6. 前記含フッ素共重合体A’のイオン交換容量が0.6~1.4ミリ等量/gの範囲にある、請求項5に記載の陽イオン交換膜。
  7. 前記層(A)又は前記層(A’)の厚さが5μm以上35μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の陽イオン交換膜。
  8. スルホン酸型イオン交換基を有する含フッ素モノマー(ii)に由来する単位(U3)とフルオロオレフィンに由来する単位(U4)とを含む含フッ素共重合体Bを含む層(B)を更に備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の陽イオン交換膜。
  9. 層(B)の厚さが30μm以上150μm以下である、請求項8に記載の陽イオン交換膜。
  10. 前記層(A)又は層(A’)と前記層(B)の二層構造である、請求項8又は9に記載の陽イオン交換膜。
  11. 陽極と陰極との間に配置され、食塩電解用として用いられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の陽イオン交換膜。
  12. 陽極と、
    前記陽極に対向する陰極と、
    前記陽極と陰極との間に配置された、請求項1~11のいずれか1項に記載の陽イオン交換膜と、
    を備える、電解槽。
  13. 前記層(A)又は層(A’)が、前記陰極側に配置される、請求項12に記載の電解槽。
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