JP2013158294A - 植物の乾燥耐性付与方法及びそれに用いられる植物乾燥耐性付与剤 - Google Patents

植物の乾燥耐性付与方法及びそれに用いられる植物乾燥耐性付与剤 Download PDF

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Abstract

【課題】簡易に使用することができ、灌水において気孔の開放を十分に行わせることのできる植物の乾燥耐性付与の方法を提供すること、更にはこれに用いられる植物乾燥耐性付与剤を提供する。
【解決手段】下記式で示される化合物及びその誘導体並びにそれらの塩の少なくともいずれかを散布する植物の乾燥耐性付与方法とする。

【選択図】なし

Description

本発明は、植物の乾燥耐性付与方法及びそれに用いられる植物乾燥耐性付与剤に関する。
最近の不安定な気象変動に伴い、従来から乾燥気候に分布する国々では緑地の減少、砂漠化の進行が進んでいる。
植物の乾燥耐性を付与する技術として、植物体内で乾燥耐性に関わる遺伝子の植物への導入が提案されている。例えば、下記非特許文献1には、シロイヌナズナにおいて、気孔の開閉に関与する植物ホルモンであるアブシシン酸(以下「ABA」ともいう。)を合成する鍵酵素であるネオキサンチン酸化開裂酵素(以下「NCED」ともいう。)の遺伝子発現の促進により乾燥耐性を向上させた技術が開示されている。
しかしながら、上記植物への遺伝子導入は極めて専門的な技術であり、またその遺伝子を導入したことによる他遺伝子への影響及び生理反応の解析など実用まで多くの時間を要し、誰もが使用できる簡易な技術ではない。また、ABAは気孔の開閉を調節する役割をもち、乾燥及び湿潤の状況に応じて増減するが、遺伝子導入作物での環境条件に応じた反応は一般に一元的であり、例えば遺伝子導入によりNCEDを過剰発現するよう調節された植物では、乾燥耐性は向上するものの気孔の開放に難を示し、降雨或いは灌水が行われても気孔開放がうまく行われず、水分吸収が十分に行われないと考えられる。
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、簡易に使用することができ、灌水において気孔の開放を十分に行わせることのできる植物の乾燥耐性付与の方法を提供すること、更にはこれに用いられる植物乾燥耐性付与剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第一の観点に係る植物の乾燥耐性付与方法は、下記式で示される化合物及びその誘導体の少なくともいずれかを散布する方法である。
以上、本発明により、簡易に使用することができ、灌水において気孔の開放を十分に行わせることのできる植物の乾燥耐性付与の方法を提供すること、更にはこれに用いられる植物乾燥耐性付与剤を提供することができる。
ウニコナゾール及びAbz−E2Bの伸長に及ぼす影響を示す図である。 ウニコナゾール処理区、Abz−E2B処理区、及び、無処理区の内生ABA濃度の変化を示す図である。 ウニコナゾール処理区、Abz−E2B処理区、及び、無処理区の気孔開度の変化を示す図である。 ウニコナゾール、Abz−E2B処理区、無処理区の芝の状態を示す写真図である。 ウニコナゾール処理区、Abz−E2B処理区、及び、無処理区の葉の水ポテンシャルの変化を示す図である。 ウニコナゾール処理区、Abz−E2B処理区、及び、無処理区の気孔開度の変化を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の記載、実施の例にのみ限定されるものではない。
本実施形態に係る植物の乾燥耐性付与方法(以下「本方法」ともいう。)は、下記式で示される化合物及びその誘導体並びにその塩の少なくともいずれかを散布することを特徴の一つとする。
本方法は、特に限定されることなく種々の植物に適用可能であるが、イネ科の植物により好適でありその中でも芝であることは更に好ましい。
本法は、極めて簡単で、植物上部から上記化合物又はこれを含む溶液を散布するだけで実現できる。具体的には、乾燥耐性を付与したい時期に上記化合物又はこれを含む溶液を散布し、一定期間後再び散布するだけでよい。特に、水に上記化合物を溶解させたものを用いることで、灌水処理と同時に行うことができ、別途乾燥耐性付与のための処理を行う必要がなくなるといった効果がある。本法を用いると、灌水の間隔を大幅に伸ばすことが可能となる。
上記の記載から明らかなように、本方法は、上記式で示される化合物を用いており、上記化合物及びこの誘導体並びにそれらの塩は、植物乾燥耐性付与剤(以下「本植物乾燥耐性付与剤」という。)である。
なお上記化合物は、様々な方法によって合成することができ、合成できる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、ウニコナゾールのフェニル基の4位塩素をアジド基に改変した4’−アジドウニコナゾールを合成し、別にアルキン化合物2−(2−プロプ−2−イニルオキシ)エチル)4−メチルベンゼンスルホネートとクリック反応で結合してAbz−E1を得て、更にナトリウムブトキシドを作用させることで合成することができる。なお、4’−アジドウニコナゾールの合成については、例えばDavid,L,H.et al.,Plant Physiol.,1988,88,1425−1429を参照することができ、Abz−E1については、Okazaki,M.et al.,Bioorg.Med.Chem.,2011,1,406−413に記載がある。
またここで、「誘導体」とは、上記化合物の一部を変化させることによって得られる化合物であって、上記化合物と同様の効果を奏することのできるものをいう。例えばエチレングリコール鎖末端のブトキシ基をメトキシ基、エトキシ基、プロボキシ基、ベントキシ基、ヘキソキシ基などのアルコキシ基に置換した誘導体を例示することができるがこれに限定されない。
また上記化合物及び誘導体は、その水酸基とアルカリとを作用させて塩とすることも可能である。
また本方法では、上記化合物及びその誘導体並びにこれらの塩の少なくともいずれか(以下「化合物等」という。)を合計量で1m当たり5μモル以上50μモル以下の範囲で散布することが好ましい。5μモル以上とすることで乾燥耐性の効果を得ることができ、50μモル以下とすることで薬害を生じないといった効果を得ることができる。
本方法では、溶媒に上記化合物等を溶解させて散布することが好ましい。ここで「溶媒」とは、化合物を溶解することができる限りにおいて限定されるわけではないが例えば水、アルコールが好ましく、特に好ましくは水である。もちろん、少量アルコールで溶解した後水で希釈することも好ましい。上記化合物を溶解させる濃度としては、上記望ましい範囲で上記化合物等を分散させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、10mM以上20mM以下の範囲で含ませておくことが好ましい。この範囲とすることで化合物が効率的に水に溶解されるといった効果がある。
また本法では、上記化合物及びその誘導体並びにこれらの塩の少なくともいずれかを、5日以上10日以下の間隔をおいて散布することが好ましい。5日以上とすることで必要以上に散布することを防止し、灌水間隔を長く確保することができる一方で、15日以下とすることで細胞障害を防止することができるといった効果があり、10日以下とすることでこの効果がより顕著となる。
本乾燥耐性付与剤は、ABA8’−ヒドロキシラーゼを特異的に抑制して内生アブシシン酸濃度を高めることができる一方、植物の発育を抑制するおそれが極めて低い。この結果、簡易に使用することができ、灌水において気孔の開放を十分に行わせることのできる植物の乾燥耐性付与の方法を提供すること、更にはこれに用いられる植物乾燥耐性付与剤を提供することができる。
ここで、上記実施形態に係る化合物について実際に作成を行い、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
(Abz−E2Bの合成)
まず、下記式で示される化合物(Abz−E2B)を合成した。Abz−E2Bの合成はウニコナゾールのフェニル基4位塩素をアジド基に改変した4’−アジドウニコナゾールを合成し、別に合成したアルキン化合物2−(2−プロプ−2−イニルオキシ)エチル4−メチルベンゼンスルホネートとクリック反応で結合してAbz−E1を得て、このAbz−E1にナトリウムブトキシドを作用させてAbz−E2Bを得た。以下具体的に説明する。なお下記に、本合成の概略について示しておく。
<4’−アジドウニコナゾールの合成>
“David,L,H.et al.、Plant Physiol.、1988,、88, 1425−1429.”を参照して4’−アジドウニコナゾールを合成した。
<3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−l−イル)ブタン−2−オンの合成>
炭酸カリウム(19.5g)にアセトン(ca.80ml)を加え、室温で攪拌した。この溶液に1,2,4−1H−トリアゾール(9.57g)添加し、30分撹拌した。氷冷し、滴下ロートにて1−ブロモ−3,3−ジメチル−2−ブタノン(18.9ml)を加えた。室温にて2.5時間撹拌後,水(40 ml)を加えて反応を停止し、さらに水(300ml)を加えて炭酸カリウムを溶解させた。エバポレーターにてアセトンを溜去した後,酢酸エチル(250ml×3)にて抽出し,有機層を飽和食塩水(60ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを綿ろ過し、減圧濃縮することによって得た生成物をヘキサン−酢酸エチル(7:3)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物1(18.1g,107mmol,収率77%)を無色結晶として得た。
<ジメチル−1−(4−ニトロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オンの合成>
化合物1(1.80g,10.8mmol)に無水酢酸(10ml)を滴下して100℃に昇温し、炭酸カリウム(2.14g,15.5mmol)および4−ニトロベンズアルデヒド(1.73g,9.35mmol)を加えて3.5時間攪拌した。反応液を室温に戻し,水(50ml)を加えて反応を停止し、酢酸エチル(30ml)を加えて生成物を溶解させた。酢酸エチル(30ml×3)にて抽出し,有機層を水(30ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。これを綿ろ過し、減圧濃縮して得た黄色油状物質を、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し,(Z)−2(1.33g,4.43mmol)を黄色油状物質として得た。化合物(Z)−2を酢酸エチル(10ml)に溶解し、365nmの紫外線を5.5時間照射した。反応液を減圧濃縮し,化合物2の2Z/2E混合物(1.24g,4.13mmol、2Z:2E=1:1)を淡黄色粒状物質として得た。これをヘキサン−酢酸エチル(8:2)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(E)−2(546 mg,1.82mmol,収率41%)を無色針状物質として得た。
<ジメチル−1−(4−ニトロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オールの合成>
化合物(E)−2(546mg,1.82mmol)をメタノール(11ml)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(89.5g,2.37mmol)を加えた後,0℃に冷却して1時間攪拌した。室温に戻し、1M 塩酸(5ml)を加えて反応を停止し、エバポレーターにてメタノールを溜去した。酢酸エチル(20ml×3)で抽出した後、有機層を水(15ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。綿ろ過して減圧濃縮後、ヘキサン−酢酸エチル(7:3)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物3の2Z/2E混合物(316mg,1.05mmol,2Z:2E=10:3,収率58%)を無色粉状物質として得た。
<1−(4−アミノフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オールの合成>
パラジウム炭素(144mg)に水(15ml)を加え、アルゴンガス気流下で化合物3のメタノール(14ml)溶液を加えた。水素化ホウ素ナトリウム(84mg,2.2 mmol)を加え、30分攪拌した。ろ紙ろ過後、減圧濃縮して得られた物質を酢酸エチル(40ml)を加えて溶解し、さらに酢酸エチル(30ml×3)にて抽出した。有機層を水(5ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。綿ろ過後、減圧濃縮して得た残渣をヘキサン−酢酸エチル(6:4)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物4の2Z/2E混合物(94mg,0.35mmol,2Z:2E=10:3,収率37%)を無色油状物質として得た。
<(E)−1−(4−アジドフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール(4'−アジドウニコナゾール)の合成>
化合物4(39.6mg,0.145mmol)に0.15mM 塩酸(2ml)を滴下し、亜硝酸ナトリウム(10.9mg,0.158 mmol)、尿素(5.0mg,83μmol)、アジ化ナトリウム(10.5mg,0.162mmol)を加え、5℃で暗所下30分間攪拌した。攪拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を数滴加えて反応を停止した。有機層を水(2ml×3)で洗浄し,無水硫酸ナトリウムで脱水した。綿ろ過後、減圧濃縮することで得た淡黄色粉状物質をヘキサン−酢酸エチル(11:9)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物5(17.9mg,0.0600 mmol,収率41%)を無色粉状物質として得た。
<Abz−E1の合成>
“Okazaki,M.et al.Bioorg.Med.Chem.2011,1, 406−413.”に記載の方法を用いてAbz−E1を合成した。
<2−(2−(プロプ−2−イニロキシ)エトキシ)エチル 4−メチルベンゼンスルホネートの合成>
プロパルギルアルコール(100 mg,1.8mmol)を30mlのジメチルホルムアミドに溶解させた。アルゴンガス気流下0℃で水素化ナトリウム(60% in oil,900mg,22.4mmol)を加えた。室温まで昇温後に30分撹拌した。再び0℃まで冷却し、ジエチレングリコール ビス(p−トルエンスルホネート)(2.8g,6.7mmol)を加えた後、室温まで昇温した。1時間撹拌後0℃に冷却してから200mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、1M塩酸によって中和した後、酢酸エチル(250ml×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(20ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。綿ろ過後に減圧濃縮し、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物6(410mg,収率77.5R%)を無色オイル状物質として得た。
<(E)−2−(2−((1−(4−(3−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−1−イル)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メトキシ)エトキシ)エチル 4−メチルベンゼンスルホネート (Abz−E1)の合成>
4’−アジドウニコナゾール(5)(1.4g,4.6mmol)と化合物6(2.5g,8.5mmol)をテトラヒドロフラン(280ml)に溶解し、硫酸銅水溶液(10mg/ml,380ml,14mmol)とアスコルビン酸ナトリウム水溶液(10mg/ml,340ml,17mmol)を添加した。室温で1時間撹拌し,ジクロロメタン(600ml×3)で抽出後、有機層を飽和食塩水(80ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。綿ろ過後に減圧濃縮し、ヘキサン−酢酸エチル(1:4)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、Abz−E1(7)(2.6g,収率95.5%)を淡黄色オイル状物質として得た。
<Abz−E2Bの合成>
<(E)−1−(4−(4−((2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール (Abz−E2B)の合成>
1−ブタノール(4ml)をアルゴンガス気流下0℃に冷却し、水素化ナトリウム(60% in oil,170.5mg,4.3mmol)を添加した。室温に昇温して20分撹拌後、1−ブタノール(6ml)に溶解した化合物7(200mg,335μmol)を添加した。室温で36時間撹拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。酢酸エチル(30ml×3)で抽出後、有機層を飽和食塩水(5ml×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。綿ろ過後に減圧濃縮し、ジクロロメタン−メタノール(97:3)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、Abz−E2B(8)(135.2mg,収率80.9%)を無色オイル状物質として得た。なお、このNMRデータについて下記に示しておく。
1H−NMR (270MHz,CDCl3):δ 0.68(9H,s,t−butyl), 0.90(3H,t,J=7.3Hz,−CH−CH−CH−CH),1.35(2H, m,−CH−CH−CH−CH),1.56(2H,m,−CH−CH−CH−CH),3.46(2H,t,J=6.6Hz,−CH−CH−CH−CH),3.60−3.78(8H,m,−O−(CH−CH−O)−),4.35(1H,d,J=8.9Hz,HO−3),4.60(1H,d,J=8.9Hz,H−3),4.80(2H,s,H−12’),7.00(1H,s,H−1),7.56(2H,d,J=8.2 Hz,H−2’andH−6’),7.82(2H,d,J=8.2Hz,H−3’and H−5’),8.08(2H,m,H−11’ and H−3’’),8.54(1H,s,H−5’’);
UV λmax(MeOH)nm(ε):269.2(21000);
HRMS (ESI−TOF,positive mode): calcd for C2536Na [M+Na]+ 507.2696, found 507.2698.
(イネ第2葉梢の伸長に及ぼす影響の確認)
上記合成したAbz−E2Bとウニコナゾールを用い、それぞれ水に溶かし、その濃度を異ならせたものを散布しイネの成長に対する影響を確認した。この結果を図1に示す。
この結果、ウニコナゾールにおいては、濃度の増加に伴い、成長が抑えられている傾向が確認されたが、Abz−E2Bにおいては、100μM程度にしても大きな成長阻害は確認できなかった。すなわち、Abz−E2Bは植物の発育を抑制するおそれが極めて少ないものであるということを確認した。
(内生ABA濃度の測定)
次に、芝生における植物中の内生ABA濃度について測定を行った。以下説明する。
まず、Abz−E2Bを少量のエタノールに溶解させた後、水で希釈することで50μMのAbz−E2B溶液を作製した。一方、比較例として、ウニコナゾールを少量のエタノールに溶解させた後、水で希釈して50μMのウニコナゾール溶液を作製した。
そして、芝生(品種:ベントグラス、播種後60日)の区分けされた範囲(処理区)の茎葉に対し、それぞれ上記溶液を1平方メートル当たり1リットル散布し、9日間乾燥させ、10日目に潅水処理を行い、各日における芝の内生ABA濃度について測定を行った。この結果を図2に示しておく。なお、更に比較のため、水以外何も散布しなかった処理区(無処理区)についても内生ABA濃度の測定を行っている。
この結果、散布後9日には、いずれも内生ABAの増加がみられたが、無処理区における内生ABA濃度の値は他の2種に比べ低く、Abz−E2Bを散布した処理区が最も高いことが確認できた。この結果は、Abz−E2B及びウニコナゾール両処理区におけるABA8’水酸化酵素活性の抑制効果を示すものであり、更に、Abz−E2Bがより優れていることを示す。
また、本実施例では10日に潅水を行っており、この灌水によりいずれも内生ABA濃度の値が急速に低下したことを確認した。これは気孔が開口し、植物体内に水が吸収されたことを示していると考えられる。
(気孔開度の測定(1))
次に、上記と同様の散布処理を行い、その際の気孔開度の変化について測定を行った。この結果を図3に示しておく。
まず、無処理区では、散布後1日は気孔開度の低下は見られなかったが、3日から9日にかけて気孔開度の低下が確認できた。なお、本処理区では、10日目に潅水処理を行ったが、気孔開度の上昇はほとんど見られなかった。
一方、ウニコナゾール処理区では、散布後1日及び2日において気孔開度が有意に低下し、3日から7日までは大きく変化しなかったが、7日以降において再び気孔開度が低下していた。また本処理区でも10日目に潅水処理を行ったが、気孔開度の上昇は見られなかった。
またAbz−E2処理区では、散布後1日において有意に気孔開度が低下していることが確認できたが、その後9日まで気孔開度の大きな低下は見られなかった。一方、本処理区でも10日目に潅水処理を行ったところ、12日目において気孔開度の上昇がみられた。
以上の結果を踏まえると、無処理区及びウニコナゾール処理区では、10日目に灌水したにもかかわらず気孔開度の上昇がみられなかったのは、芝が枯死してしまったためと考えられる。図4は、灌水後2日目(散布処理後12日目)の芝の状態を示す写真図である。この図からわかるように、無処理区及びウニコナゾール処理区の芝は枯死していることが確認できた。一方、Abz−E2B処理区では、灌水後気孔開度が上昇しており、芝が長期の乾燥処理に耐え、成育維持できていることが確認できた。これは、乾燥初期での迅速な気孔閉鎖が乾燥による細胞障害の軽減に大きな要因となることを示唆し、Abz−E2B処理区以外では、迅速な気孔閉鎖がなされなかったため細胞障害が起こり、その後の潅水処理にもかかわらず気孔が開放しなかったものと考えられる。
(水ポテンシャルの測定)
ここでも、上記と同様の散布処理を行い、その際の気孔開度の変化について測定を行った。この結果を図5に示しておく。なお本処理では、Abz−E2Bの濃度、ウニコナゾールの濃度については上記測定と同じとし、散布後120時間乾燥処理を行い、その後灌水を行った点のみが異なる。
この結果によると、乾燥後24時間以降はAbz−E2B処理区において水ポテンシャル値が最も高くなり、次いでウニコナゾール処理区、無処理区の順となった。また散布後120時間後に潅水処理を行ったところ、Abz−E2B処理区での水ポテンシャル値の増加が最も大きかった。これは、Abz−E2B処理の芝生では、散布後5日以降、灌水により速やかに水分が吸収されたことを示す。このようにAbz−E2B処理による芝生は、芝生内の水ポテンシャルが高く維持されたのみならず、処理5日後の潅水によって速やかに給水がなされ、可逆性に優れていることを意味する。
(気孔開度の測定(2))
なお、上記水ポテンシャルの測定と同様の処理で、気孔開度の変化について、再び測定を行った。この結果を図6に示しておく。
この結果においても、上記図3の場合と同様、無処理区では散布処理直後における気孔開度の低下は見られなかった一方、ウニコナゾール処理区及びAbz−E2B処理区では速やかな低下がみられ、特にAbz−E2B処理区の低下が優れていることを確認した。
以上、本実施例により、本発明の効果を確認することができた。

Claims (6)

  1. 下記式で示される化合物及びその誘導体並びにそれらの塩の少なくともいずれかを散布する植物の乾燥耐性付与方法。
  2. ABA8’−ヒドロキシラーゼを特異的に抑制して内生アブシシン酸濃度を高める請求項1記載の植物の乾燥耐性付与方法。
  3. 植物の発育を抑制することなく内生アブシシン酸濃度を高める請求項1記載の植物の乾燥耐性付与方法。
  4. 前記植物はイネ科植物である請求項1記載の乾燥耐性付与方法。
  5. 前記化合物を、1m当たり5μモル以上50μモル以下の範囲で散布する請求項1記載の植物の乾燥耐性付与方法。
  6. 前記化合物を、5日以上15日以下の間隔をおいて散布する請求項1記載の植物の乾燥耐性付与方法。


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