JP2013156616A - 磁性トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結着樹脂、磁性体及び離型剤を含有する磁性トナー粒子と、磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子とを含有する磁性トナーであって、磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子が、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物微粒子を含有し、金属酸化物微粒子中の85質量%以上がシリカ微粒子であり、磁性トナーは、無機微粒子による磁性トナー粒子表面の被覆率A及び磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子による被覆率Bが特定の数値範囲であり、結着樹脂が、スチレン系樹脂であり、離型剤はモノエステル化合物又はジエステル化合物であり、磁性トナーの軟化温度及び軟化点が特定の温度範囲であることを特徴とする磁性トナー。
【選択図】なし
Description
省エネルギー化と小型化を両立するためには、定着器と現像装置(カートリッジ)の簡易化が有効である。定着器としては、熱源及び構成の簡易化が容易となるフィルム定着が挙げられる。この定着方法では、定着フィルムを介して発熱体に記録媒体を密着させながら定着するために、トナーを記録媒体上に融着する際の熱効率が良好である。
しかしながら、更に一層の省エネルギー化を達成する為には、発熱体の熱量を下げ、低温で定着するシステムや材料の開発が重要である。フィルム定着法では、定着時は当接する加圧部材によりフィルムと記録媒体が密着するが、強い圧力がかけられない為、特にトナーの定着特性を大幅に改善することが必須である。即ち、トナーの低温定着性の向上である。
一般的に、低温定着性の向上を試みると、高温環境下でのトナーの保存安定性が低下する場合が多い。例えば、より低温でも軟化する樹脂組成にすると、高温環境下においてはトナーがブロッキングし、安定した画像濃度が得られない場合がある。このように、低温定着性は保存安定性と両立することが困難であった。
低温定着性を向上する手法としては、トナー粒子母体の結着樹脂の物性を制御することが知られている。特許文献1では、トナーの高分子量成分と低分子量成分の比率を制御し、かつフローテスターによるトナーの軟化温度と、結着樹脂の軟化温度を制御している。しかしながら、高分子量成分の量が15%以上50質量%以下と広い範囲で制御し、トナーの軟化温度は150℃以下と、制御する温度範囲が高温領域であるため、低温・軽圧下での定着については厳しいと考えられる。また、特許文献2では、結着樹脂の分子量を制御し、トナーの軟化温度と1/2法における溶融温度(以下「軟化点」という)、さらにはトナーのガラス転移温度を制御している。しかしながら、離型剤として高融点の炭化水素ワックスを用いており、迅速な定着には懸念が残るほか、軟化温度が低いためにトナーの保存安定性との両立の観点では改良の余地がある。
一方、保存安定性の向上のための手法として、外添剤によるブロッキングの抑制が知られている。外添剤をトナー粒子に被覆させることで、トナー粒子母体の露出を抑制し、耐ブロッキング性を向上させることができる。しかしながら、外添剤はトナー粒子への熱伝導を阻害して定着を妨げるため、単に外添剤を被覆させるだけでは、低温定着性と保存安定性を高度に両立することが困難である。
特許文献3では、外添剤として粒径の異なる2種のシリカ微粒子(個数平均一次粒子径が25nm以上と45nm以上)を使用することで、シリカ微粒子によるトナー粒子の被覆率が低くても保存安定性が維持され、かつ定着阻害も抑制されるとある。しかしながら、具体的な定着性評価については言及されておらず定着性への効果が不明である他、被覆率が低いために軟化しやすいトナー粒子母体を用いた場合に保存安定性が維持できるか懸念が残る。
即ち、本発明は以下の通りである。
結着樹脂、磁性体及び離型剤を含有する磁性トナー粒子と、該磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子とを含有する磁性トナーであって、
該磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子が、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物微粒子を含有し、該金属酸化物微粒子中の85質量%以上がシリカ微粒子であり、
該磁性トナーは、無機微粒子による磁性トナー粒子表面の被覆率を被覆率A(%)とし、該磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子による被覆率を被覆率B(%)としたときに、該被覆率Aが45.0%以上、70.0%以下であり、該被覆率Bの被覆率Aに対する比[被覆率B/被覆率A]が0.50以上、0.85以下であり、
該結着樹脂が、スチレン系樹脂であり、該離型剤はモノエステル化合物又はジエステル化合物であり、該磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度(Ts)が60.0℃以上、75.0℃以下であり、軟化点(Tm)が120.0℃以上、150.0℃以下であることを特徴とする磁性トナー。
該磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子が、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及び
アルミナ微粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物微粒子を含有し、該金属酸化物微粒子中の85質量%以上がシリカ微粒子であり、
該磁性トナーは、無機微粒子による磁性トナー粒子表面の被覆率を被覆率A(%)とし、該磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子による被覆率を被覆率B(%)としたときに、該被覆率Aが45.0%以上、70.0%以下であり、該被覆率Bの被覆率Aに対する比[被覆率B/被覆率A]が0.50以上、0.85以下であり、
該結着樹脂が、スチレン系樹脂であり、該離型剤はモノエステル化合物又はジエステル化合物であり、該磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度(Ts)が60.0℃以上、75.0℃以下であり、軟化点(Tm)が120.0℃以上、150.0℃以下であることを特徴とする。
まず、図1に本発明に係わる定着器の概念図を示す。なお、本発明の磁性トナーは図1の定着器構成での使用に限定されるものではない。
定着工程では、発熱体(53)から発生する熱が耐熱フィルム(55)を介してトナーに伝わり、トナーの溶融・変形を促進する。さらに、支持ローラー(58)による圧力が加わり、溶融したトナーが紙などの記録媒体に定着する。省エネルギー化を目指して発熱体の熱量を低減させた場合、トナーを記録媒体に安定して定着させるためには、熱を効率的に下層(記録媒体側)のトナーまで伝え、さらにトナーとしては素早く溶融して記録媒体との接着性を高める必要がある。
本発明の磁性トナーは、結着樹脂がスチレン系樹脂であり、離型剤がモノエステル化合物又はジエステル化合物である。モノエステル化合物又はジエステル化合物は、スチレン系樹脂に適度に相溶して結着樹脂を軟らかくするほか、自身のシャープメルト性も高い為、相溶せずに存在しているものは定着領域で迅速に溶融する。このとき、溶融した離型剤は結着樹脂を可塑し、トナー粒子間の密着性を上げ、粒子間の間隙(空気層)を無くすことができる。その結果、熱伝導性が良好になり、低温定着に非常に有利である。好適な離型剤の具体例については後述するが、例えば、炭化水素系の離型剤ではシャープメルト性が劣るために、低温定着性が良化しない。
また、磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度(Ts)は60.0℃以上、75.0℃以下であり、軟化点(Tm)は120℃以上、150℃以下であることが重要である。好ましくは、軟化温度(Ts)が65.0℃以上、75.0℃以下、軟化点(Tm)が125.0℃以上、140.0℃以下である。軟化温度(Ts)と軟化点(Tm)はどちらも磁性トナーの溶融し易さの指標であるが、定着器の昇温に不利な低温環境において発熱体の熱量も低いような場合には、特に磁性トナーの軟化温度(Ts)を上記範囲内に制御することが重要である。低い定着温度の時、耐熱フィルムと支持ローラーで形成される定着領域における記録媒体の温度は、紙の場合100℃以下になることがある。このような温度でも磁性トナーが軟化し、圧力により迅速に粒子が密着するよう制御することで、トナー粒子間の空隙が無くなり、熱伝導が効率的に行われるようになることから、定着に有利である。
軟化温度(Ts)は、このような低温における磁性トナーの軟化のしやすさを高度に制御することができる。軟化温度(Ts)が75.0℃以下であると、上記のような定着に厳しい条件下でも磁性トナーが溶融しやすく、定着が良好に行われる。しかしながら、軟化温度(Ts)が60.0℃を下回ると低温定着には好ましいが、保存安定性の観点では適さない。
軟化温度(Ts)は離型剤の組成と、結着樹脂中における低分子量体の含有量によって、上記範囲に調整することができる。例えば、離型剤にモノエステル化合物又はジエステル化合物を用いると、本発明で用いられるスチレン系樹脂と離型剤の一部が相溶し、樹脂の軟化を促進することができる為に、軟化温度(Ts)を低くすることができる。また、結着樹脂中で低分子量体が占める割合を大きくし、さらに低分子量体のピーク分子量を下げることで、軟化温度(Ts)を低く調整することができるが、これら軟化温度(Ts)が60.0℃を下回ると上述のように、保存安定性が悪化する為に好ましくない。
本発明の磁性トナーは高分子量体を含有してもよいが、高分子量体は溶融温度が高いた
め、定着条件によっては溶融せずに記録媒体と接着しなかったり、粒塊として残って熱伝導を阻害したりする。このため、結着樹脂中の高分子量体の含有量を調整し、磁性トナーの軟化点(Tm)を120.0℃以上、150.0℃以下に制御する必要がある。軟化点(Tm)が150.0℃を超えると、磁性トナーが溶融しづらく良好な定着が行われない。一方、軟化点(Tm)が120.0℃以下になると、高温領域での弾性が低下し、高温オフセットが発生する。
本発明の磁性トナー粒子は低温定着性に優れたものであるが、高温環境下での耐ブロッキング性といった保存安定性と低温定着性を高度に両立するためには、無機微粒子の付着状態を制御することが重要である。該被覆率Aを45.0%以上と高くすることで、磁性トナー粒子母体の露出を抑制し、高温環境下での保存安定性を向上させることができる。一方、被覆率Aを70.0%より大きくしようとすると、無機微粒子を多量に外添する必要がある。この場合、外添処理の方法を工夫しても、磁性トナー粒子から遊離した無機微粒子により定着時の伝熱効率が悪くなり、低温定着性が悪化する。
また、被覆率Aを45.0%以上、70.0%と高くすることで、上述のように保存安定性を向上できるほか、低温定着性にも効果があることが分かった。これは、無機微粒子によるベアリング効果の発生と、van der Waals力低下による磁性トナー同士の凝集力や部材との付着力の低減による為である。これらにより、現像装置内で静電潜像担持体に現像された磁性トナーは、凝集せずにほぐれている為に、最密充填構造に近い状態になっている。また、静電潜像担持体から紙などの記録媒体に磁性トナーが転写される際にも、静電潜像担持体との付着力が低減され、良好な転写性を示す。その結果、未定着画像の表面が平滑で、かつ最密充填構造に近い状態で磁性トナーが存在しているため、定着領域において良好な熱伝導性を示す。このため、低温定着性の向上に大きく貢献しているものと考えられる。
被覆率Aで表わされる無機微粒子は、磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子と、さらにその上層に存在する、比較的自由度の高い無機微粒子を含む。ここで、磁性トナー同士の凝集力や部材との付着力を低減することができる理由としては、磁性トナー間、磁性トナーと各部材間に存在しうる無機微粒子が影響していると考えられる。
まず、平板と粒子間に生じるvan der Waals力(F)は以下の式で示される。
F=H×D/(12Z2)
ここで、HはHarmaker定数、Dは粒子の粒径、Zは粒子と平板間の距離である。
Zに関しては、一般的に距離が遠い場合は引力が働き、距離が非常に近くなると斥力が働くと言われており、磁性トナー表面の状態とは関係ないため、定数として扱う事とする。
上記式より、van der Waals力(F)は平板と接する粒子の粒径に比例する。これを磁性トナー表面に適応すると、磁性トナー粒子が平板に接するよりも、粒子径が小さな無機微粒子が平板に接した方がvan der Waals力(F)が小さい。すなわち、van der Waals力は、磁性トナー粒子が定着フィルム等に直接接するよりも、外添剤としての無機微粒子を介して接する方が小さい。
次に、静電付着力は鏡映力と言い換えることができる。鏡映力は一般には粒子の電荷(q)の2乗に比例し、距離の2乗に反比例する事が知られている。
磁性トナーが帯電する場合、電荷を有するのは無機微粒子ではなく磁性トナー粒子表面である。このため、磁性トナー粒子表面と平板(ここでは定着フィルム)との距離が離れている方が鏡映力は小さくなる。
すなわち、磁性トナー表面においては、無機微粒子を介して磁性トナー粒子が平板と接していると磁性トナー粒子表面と平板間の距離がとれるため、鏡映力が低下する。
上述のように、磁性トナー粒子表面に無機微粒子が存在し、無機微粒子を介して磁性トナーが定着フィルムと接する事により、磁性トナーと定着フィルム間に生じるVan der Waals力と鏡映力が低下する。すなわち、磁性トナーと定着フィルムとの付着力が低下する。
次に、磁性トナー粒子が直接定着フィルムと接するか、無機微粒子を介して接するかは磁性トナー粒子表面をどれだけ無機微粒子が覆っているか、即ち無機微粒子の被覆率に依存する。
無機微粒子の被覆率が高いと磁性トナー粒子が直接定着フィルムと接する機会は減少し、磁性トナーは定着フィルムに貼り付き難いと考えられる。一方、無機微粒子の被覆率が低いと磁性トナーは定着フィルムに貼り付きやすくなり、定着フィルムからの離型性が低下する。
無機微粒子の被覆率については、無機微粒子、磁性トナーが真球状であると仮定すると、計算式で導く事は可能である。しかし、無機微粒子や磁性トナーが真球状でない場合も多く、さらに、無機微粒子が磁性トナー粒子表面で凝集した状態で存在する事もあるので、これらの手法で導き出された被覆率は本発明とは関連しない。
そこで本発明者らは、磁性トナー表面の走査電子顕微鏡(SEM)観察を行い、無機微粒子が磁性トナー粒子表面を実際に覆っている被覆率を求めた。
一例として、体積平均粒子径(Dv)が8.0μmの粉砕法による磁性トナー粒子(磁性体の含有量は43.5質量%)にシリカ微粒子の添加量(磁性トナー粒子100質量部に対するシリカの添加部数)を変えて混合したものの理論被覆率と実際の被覆率を求めた(図2、図3参照)。なお、シリカ微粒子としては体積平均粒子径(Dv)が15nmのシリカ微粒子を用いた。理論被覆率を算出する際のシリカ微粒子の真比重は2.2g/cm3、磁性トナーの真比重を1.65g/cm3とし、シリカ微粒子及び磁性トナー粒子に関しては、それぞれ粒径15nm、8.0μmの単分散の粒子とした。
図2に示すように、シリカ微粒子の添加部数を増やしていくと理論被覆率は100%を超える。一方、実際の観察により得られる被覆率はシリカ微粒子の添加部数と共に変化するが、100%を超える事はない。これは、シリカ微粒子が磁性トナー表面において、一部凝集体として存在しているため、あるいは、シリカ微粒子が真球でない影響が大きい。
また、本発明者らの検討によれば、シリカ微粒子の添加量が同じであっても、外添の手法によって被覆率が変化することがわかった。すなわち、無機微粒子の添加量から一義に被覆率を求める事は不可能である(図3参照)。なお、外添条件Aは図6の装置(を用い、1.0W/g、処理時間5分の条件で混合したものである。外添条件BはヘンシェルミキサーFM10C(三井三池化工機株式会社製)を用い、4000rpm、処理時間2分の条件で混合したものである。
このような理由から、本発明者らは磁性トナー表面のSEM観察により得られる無機微粒子の被覆率を用いた。
また上述のように、無機微粒子による被覆率を上げる事で部材への付着力を低減できると考えられる。そこで、無機微粒子の被覆率と部材との付着力について検証した。
磁性トナーの被覆率と部材との付着力の関係を、シリカ微粒子による被覆率を変えた球形ポリスチレン粒子とアルミ基板との静止摩擦係数を測定することで間接的に推測した。
具体的には、シリカ微粒子による被覆率(SEM観察から求めた被覆率)を変えた球形ポリスチレン粒子(重量平均粒径(D4)=7.5μm)を用い、被覆率と静止摩擦係数の関係を求めた。
より具体的には、アルミ基板上に、シリカ微粒子を添加した球形ポリスチレン粒子を押圧する。押圧を変化させながら基板に左右に動かし、その際の応力から静止摩擦係数を算出した。これを被覆率の異なる球形ポリスチレン粒子毎に行ない、得られた被覆率と静止摩擦係数の関係を図4に示す。
このような手法で求める静止摩擦係数は、球形ポリスチレン粒子と基板の間に働くVa
n der Waals力と鏡映力の総和と相関すると考えられる。図4より、シリカ微粒子の被覆率が高いと静止摩擦係数が小さくなる傾向がある。すなわち、無機微粒子による被覆率が高い磁性トナーは部材との付着力も小さい事が推測される。
被覆率Bは後述の遊離操作によっては遊離しない、磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子による被覆率を示す。被覆率Bで表わされる無機微粒子は磁性トナー粒子表面に半埋没状態で固着されており、現像装置内で摩擦帯電等によりトナーがシェアを受けても、移動することがないと考えられる。
本発明では、B/Aが0.50以上、0.85以下であるが重要であり、好ましくは0.55以上、0.80以下である。
B/Aが0.50以上、0.85以下であることは、磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子がある程度存在し、その上にさらに無機微粒子が容易に遊離し得る状態(磁性トナー粒子から離れて挙動できる状態)で、適当量存在していることを意味している。
本発明者らは、B/Aを0.50以上にし、無機微粒子を磁性トナー粒子にある程度埋め込むことで、無機微粒子の総量が同じでB/Aが0.50未満のものに比べて、磁性トナーの定着性が良化することを見出した。この理由については、以下のように考えている。
遊離した無機微粒子は、無機微粒子同士で凝集しやすく、凝集塊となって熱伝導を阻害し磁性トナー粒子が溶融するのを妨げる。B/Aを高めることで、これらの無機微粒子を低減し、効果的に熱を伝えることができる。
さらに、本発明者らは、磁性トナーの軟化温度(Ts)とB/Aが上記した範囲であることで、定着性の改善に対して相乗効果が働くことを見出した。これは、遊離し得る無機微粒子がもともと少ない上、定着領域においてこれらの無機微粒子も瞬時に磁性トナー粒子に埋め込まれる為、磁性トナー粒子同士が密接し熱伝導率が高まることが理由と考えている。これにより、無機微粒子による磁性トナー粒子の被覆率が高い場合においても、良好な低温定着性が発揮されると考えている。
一方で、遊離可能な無機微粒子は磁性トナー表面を滑ることにより、ベアリングのような効果を発揮し、磁性トナーが凝集しにくくなり、部材や磁性トナー同士の付着力も低下しやすくなる。そのため、現像器内で静電潜像担持体に現像される磁性トナーが凝集せずにほぐれており、最密充填に近い状態になっている。また、磁性トナーが静電潜像担持体から記録媒体上に転写される際にも、部材との付着力が低下しやすくなっているため、転写性が向上し、未定着画像の表面が平滑になっていると考えられる。このように、磁性トナーを最密充填に近い状態で記録媒体上に載せることができ、発熱体からの熱を均一かつ効率良く磁性トナーに付与できるようになる。このため、B/Aは0.85以下に制御するのがよい。0.50以上、0.85以下であることにより、適度に遊離可能な無機微粒子があり、上記した理由により定着性が良好になると考えられる。
り好ましくは、8.0以下である。被覆率Aの変動係数が10.0以下であるということは、磁性トナー粒子表面を無機微粒子が均一に被覆しているということを示している。また、磁性トナー粒子間の被覆率Aのバラつきが少ないということを示している。このため、磁性トナー粒子母体が露出している割合が少なく、露出した部分同士が接触する頻度が少ないので保存安定性がより向上する。さらに、トナー間の凝集力も低下し記録媒体上で最密充填構造をとり易いので、低温定着にも有利である。上記変動係数を10.0%以下にするための手法は特に限定されないが、磁性トナー粒子表面に高度にシリカ微粒子等の金属酸化物微粒子を拡散させることができる、後述するような外添装置や手法を用いることが好ましい。
ここで、図5に示すように、メインピーク(MA)とサブピーク(MB)の間には極小値(MMin)が存在し、分子量400から極小値(MMin)までの分子量分布曲線の面積をSA、極小値(MMin)から分子量500万までの分子量分布曲線の面積をSBとする。
本発明において、メインピークの分子量(MA)を5×103以上、1×104以下と低い領域で制御することにより低温定着をより高度に達成することができきる。メインピークの分子量(MA)が1×104を超えると低温定着性に劣り、5×103未満にすると保存安定性の観点で好ましくない。また、サブピークの分子量を(MB)1×105以上、5×105以下とすることにより、優れた耐オフセット性を維持することができる。1×105未満であると高温オフセットが発生しやすく、5×105を超えると定着阻害を発生するために好ましくない。このとき、メインピークの面積(SA)とサブピークの面積(SB)を合計した総面積に対する、メインピークの面積の比率(SA/(SA+SB))が、70%以上であると、低温定着と耐オフセット性が両立できるため、好ましい。70%を下回ると、低温定着に寄与する分子量5×103以上、1×104以下の成分が少なく、好ましくない。
なお、上記分子量分布は、低分子量樹脂と、高分子量樹脂を併用することで調整することができる。ここで、「低分子量樹脂」とは、後述するスチレン系樹脂を主成分とするものであり、ピーク分子量が、4000乃至20000程度のものを意味する。一方、「高分子量樹脂」とは、後述するスチレン系樹脂を主成分とするものであり、ピーク分子量が、10万乃至60万程度のものを意味する。
保存安定性に優れるものになるからである。
結着樹脂としては、具体的には、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体が、極性を有しておりモノエステル化合物又はジエステル化合物との相溶性が高まる点で好ましい。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
一方、離型剤は、上述のようにモノエステル化合物又はジエステル化合物である。その中でも、モノエステル化合物は、エステル化合物が直鎖状になりやすく、結着樹脂との相溶性が高くなるため、より低温定着性に優れる。好ましいモノエステル化合物の具体例としては、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの如き脂肪酸エステル類から酸成分の一部または全部を脱酸したもの、植物性油脂の水素添加等によって得られるもの、ヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸モノエステル類が挙げられる。また、ジエステル化合物の好ましい具体例としては、セバシン酸ジベヘニル、ノナンジオールジベヘネート、テレフタル酸ベヘネート、テレフタル酸ステアリルなどが挙げられる。なお、本発明に用いられる離型剤は、上記モノエステル化合物又はジエステル化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の他のワックスを含有させることが可能である。
離型剤の含有量は、結着樹脂全量に対して、1.0質量%以上、30.0質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは、3.0質量%以上、25.0質量%以下である。
離型剤の含有量が1.0質量%未満では低温オフセット抑制の効果が低下する傾向にあり、30.0質量%を超えると長期間の保存安定性が低下する傾向があると共に、磁性トナー表面へのしみ出し等による磁性トナーの帯電均一性の低下による転写効率の低下を招く場合がある。
上記磁性体は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が0.50μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm乃至0.30μmである。
また、上記磁性体の795.8kA/m印加での磁気特性として、抗磁力(Hc)が1.6乃至12.0kA/mであることが好ましく、磁化の強さ(σs)が50乃至200Am2/kgであることが好ましく、より好ましくは50乃至100Am2/kgであり、残留磁化(σr)が2乃至20Am2/kgであることが好ましい。
本発明の磁性トナーは、磁性体を35質量%以上、50質量%以下含有することが好ましく、40質量%以上、50質量%以下含有することがより好ましい。
磁性トナーにおける磁性体の含有量が35質量%未満の場合には、現像スリーブ内のマグネットロールとの磁気引力が低下し、カブリが悪化する傾向にある。
一方、磁性体の含有量が50質量%を超える場合には、現像性が低下傾向にあり、画像濃度が低下する場合がある。
なお、磁性トナー中の磁性体の含有量は、パーキンエルマー社製熱分析装置TGA Q5000IR等を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで磁性トナーを加熱し、100〜750℃の減量質量を磁性トナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体量とする。
負帯電用の荷電制御剤としては、有機金属錯化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯化合物;アセチルアセトン金属錯化合物;芳香族ハイドロキシカルボン酸または芳香族ダイカルボン酸の金属錯化合物等が挙げられる。 市販品の具体例として、Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)が挙げられる。
これらの荷電制御剤は単独、或いは二種以上組み合わせて用いることが可能である。これらの荷電制御剤の使用量は、磁性トナーの帯電量の点から、結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1乃至5.0質量部である。
磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子としてはシリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子が挙げられ、それら微粒子表面に疎水化処理を施したものも好適に用いる事が出来る。
また、本発明において磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子は、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物微粒子を含有し、該金属酸化物微粒子中の85質量%以上がシリカ微粒子であることが重要である。さらには、該金属酸化物微粒子中の90質量%以上がシリカ微粒子であることが好ましい。
これは、帯電性付与及び流動性付与の点で、シリカ微粒子が最もバランスが優れているだけでなく、磁性トナー間の凝集力低減の点でも優れているためである。
磁性トナー間の凝集力低減の点でシリカ微粒子が優れている理由については定かではないが、おそらくシリカ微粒子同士の滑り性の点で、前述したようなベアリング効果が大きく作用するためであると推測している。
さらに、磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子はシリカ微粒子が主成分であることが好ましい。具体的には、磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子は、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属
酸化物微粒子を含有し、該金属酸化物微粒子中の80質量%以上がシリカ微粒子であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上がシリカ微粒子である。これは、上記と同様の理由であると推察しており、帯電性付与及び流動性付与の点でシリカ微粒子が最も優れており、これにより磁性トナーの帯電の立ち上がりが素早くなる。その結果、高い画像濃度を得る事が出来、非常に好ましい。
ここで、磁性トナー粒子表面に存在する金属酸化物微粒子中の85質量%以上、及び磁性トナー粒子表面に固着された金属酸化物粒子中の80質量%以上を、それぞれシリカ微粒子とするには、無機微粒子添加の量やタイミングにより調整すればよい。
また、後述する無機微粒子の定量方法によりその存在量を確認することが可能である。
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)が上記範囲であることにより、被覆率A、及びB/Aを適正に制御しやすい。一次粒子の個数平均粒径(D1)が5nm未満であると、無機微粒子同士が凝集しやすく、B/Aの値が大きくなりにくいだけでなく、被覆
率Aの変動係数が大きくなりやすい。一方、一次粒子の個数平均粒径(D1)が50nmより大きいと、無機微粒子の添加量を多くしても、被覆率Aが小さくなりやすく、さらに無機微粒子が磁性トナー粒子に固着しにくいため、B/Aの値も小さくなりやすい。すなわち、一次粒子の個数平均粒径(D1)が50nmより大きい場合には、前述の付着力低減やベアリング効果が得られにくい。
上記疎水化処理の方法としては、有機ケイ素化合物、シリコーンオイル、長鎖脂肪酸等で処理する方法が挙げられる。
上記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いられる。
上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。
上記長鎖脂肪酸は炭素数が10乃至22の脂肪酸を好適に用いる事が出来、直鎖脂肪酸であっても、分岐脂肪酸であっても良い。また、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれも用いる事が可能である。
この中で、炭素数が10乃至22の直鎖の飽和脂肪酸は無機微粒子表面を均一に処理し易く、非常に好ましい。
該直鎖の飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミルスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
本発明に用いられる無機微粒子において、無機微粒子はシリコーンオイルにより処理されたものが好ましく、より好ましくは、無機微粒子を有機ケイ素化合物とシリコーンオイルにより処理したものである。疎水化度が好適に制御できるからである。
無機微粒子をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、有機ケイ素化合物で処理された無機微粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合する方法や、無機微粒子にシリコーンオイルを噴霧する方法が挙げられる。或いは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散させた後、無機微粒子を加えて混合し、溶剤を除去する方法でもよい。
シリコーンオイルの処理量は、良好な疎水性を得るために、無機微粒子100質量部に対し1質量部以上、40質量部以下であることが好ましく、3質量部以上、35質量部以下であることがより好ましい。
本発明で用いられるシリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子は磁性トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積(BET比表面積)が20m2/g以上、350m2/g以下のものが好ましく、25m2/g以上、300m2/g以下のものがより好ましい。
上記窒素吸着によるBET法で測定した比表面積(BET比表面積)の測定は、JIS
Z8830(2001年)に準じて行う。測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。
ここで、無機微粒子の添加量は、磁性トナー粒子100質量部に対して、無機微粒子1.5質量部以上、3.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは、1.5質量部以上、2.6質量部以下、さらに好ましくは、1.8質量部以上、2.6質量部以下である。
無機微粒子の添加量が上記範囲であることにより、被覆率A、及びB/Aを適正に制御
しやすく、さらに画像濃度やかぶりの点でも好ましい。
無機微粒子の添加量が3.0質量部を超える場合には、外添装置や外添方法を工夫しても、無機微粒子が遊離することに起因して、画像上にスジなどが発生しやすくなる。
本発明の磁性トナーには、上記無機微粒子に加えて、一次粒子の個数平均粒径(D1)が80nm以上、3μm以下の粒子を添加してもよい。例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;シリカ等のスペーサー粒子を本発明の効果に影響を与えない程度に少量用いることもできる。
(1)磁性トナー中のシリカ微粒子の含有量の定量(標準添加法)
磁性トナー3gを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製する。波長分散型蛍光X線分析(XRF)により、珪素(Si)の強度を求める(Si強度−1)。なお、測定条件は使用するXRF装置で最適化されたものであれば良いが、一連の強度測定はすべて同一条件で行うこととする。磁性トナーに、一次粒子の個数平均粒径が12nmのシリカ微粒子を、磁性トナーに対して1.0質量%添加して、コーヒーミルにより混合する。
この際、混合するシリカ微粒子は、一次粒子の個数平均粒径が5nm以上、50nm以下のものであれば、本定量に影響なく使用することができる。
混合後、上記と同様にペレット化したのちに、上記同様にSiの強度を求める(Si強度−2)。同様の操作を、シリカ微粒子を、磁性トナーに対して2.0質量%、3.0質量%添加混合したサンプルにおいても、Siの強度を求める(Si強度−3、Si強度−4)。Si強度−1乃至4を用いて、標準添加法により磁性トナー中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
磁性トナー中のチタニア含有量(質量%)及び、アルミナ含有量(質量%)については、上記のシリカ含有量の定量と同様に標準添加法により定量する。すなわち、チタニア含有量(質量%)については、一次粒子の個数平均粒径が5nm以上、50nm以下のチタニア微粒子を添加混合し、チタン(Ti)強度を求めることにより、定量することができる。アルミナ含有量(質量%)については、一次粒子の個数平均粒径が5nm以上、50nm以下のアルミナ微粒子を添加混合し、アルミニウム(Al)強度を求めることにより、定量することができる。
(2)磁性トナー粒子から外添剤の分離
磁性トナー5gを、精密天秤を用いて200mlの蓋付きポリカップに秤量し、メタノールを100ml加え、超音波分散機で5分間分散させる。ネオジム磁石により磁性トナーを引き付け、上澄み液を捨てる。メタノールによる分散と上澄みを捨てる操作を3回繰り返したのち、10%NaOHを100mlと、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を数滴加え、軽く混合したのち、24時間静置する。その後、再びネオジム磁石を用いて分離する。なお、この際にNaOHが残留しないように繰り返し蒸留水ですすぐ。回収された粒子を真空乾燥機により十分に乾燥させ、粒子Aを得る。上記操作により、外添されたシリカ微粒子は溶解、除去される。チタニア微粒子、アルミナ微粒子は10%NaOHに対して難溶解性であるため、粒子A中に残存しうる。
(3)粒子A中のSi強度測定
3gの粒子Aを直径30mmのアルミリングに入れ、10トンの圧力でペレットを作製し、波長分散型XRFにより、Siの強度を求める(Si強度−5)。Si強度−5と磁性トナー中のシリカ含有量の定量で使用したSi強度−1乃至4を利用して、粒子A中のシリカ含有量(質量%)を計算する。
(4)磁性トナーから磁性体の分離
5gの粒子Aに対して、100mlのテトラヒドロフランを加え、良く混合した後に超
音波分散を10分間行う。磁石により磁性粒子を引き付け、上澄み液を捨てる。この作業を5回繰り返し、粒子Bを得る。この操作で、磁性体以外の樹脂等の有機成分はほぼ取り除くことができる。ただし、樹脂中のテトラヒドロフラン不溶解分が残存する可能性があるため、上記操作で得られた粒子Bを800℃まで加熱して残存する有機成分を燃焼させることが好ましく、加熱後に得られた粒子Cを、磁性トナーに含有されていた磁性体と近似することができる。
粒子Cの質量を測定することにより、磁性トナー中の磁性体含有量W(質量%)とすることができる。この際、磁性体の酸化増量分を補正するために、粒子Cの質量に0.9666(Fe2O3→Fe3O4)を乗じる。
(5)分離した磁性体中のTi強度、Al強度の測定
磁性体中に不純物もしくは添加物としてTi、Alが含まれることがある。磁性体に起因するTi及びAlについては、波長分散型XRFのFP定量法によって、その量を検出できる。検出されたTi量、Al量を、チタニア、アルミナ換算して、磁性体中のチタニア、アルミナ含有量を算出する。
上記手法により得られた、各定量値を以下の式に代入することにより、外添シリカ微粒子量、外添チタニア微粒子量、外添アルミナ微粒子量を算出する。
外添シリカ微粒子量(質量%)=磁性トナー中のシリカ含有量(質量%)−粒子A中のシリカ含有量(質量%)
外添チタニア微粒子量(質量%)=磁性トナー中のチタニア含有量(質量%)−{磁性体のチタニア含有量(質量%)×磁性体含有量W/100}
外添アルミナ微粒子量(質量%)=磁性トナー中のアルミナ含有量(質量%)−{磁性体のアルミナ含有量(質量%)×磁性体含有量W/100}
(6)磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子において、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群より選ばれる金属酸化物微粒子中のシリカ微粒子の割合の算出。
後述する、被覆率Bの算出法において、「固着されていない無機微粒子の除去」操作をした後の磁性トナーを乾燥したのち、上記(1)乃至(5)の方法と同様な操作を実施することにより、金属酸化物微粒子中のシリカ微粒子の割合の算出が可能である。
本発明の磁性トナーは、被覆率A及びB/Aを調整する工程を有する製造方法であれば、特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。
そのような製造方法としては、以下の方法を好適に例示できる。まず、結着樹脂、磁性体及び離型剤、並びに、必要に応じて、荷電制御剤などのその他の材料を、ヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶せしめる。
得られた溶融混練物を冷却固化後に粗粉砕、微粉砕、分級を行い、得られた磁性トナー粒子に、無機微粒子等の外添剤を外添混合することによって得ることができる。
上記混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等が挙げられる。
上記混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)等が挙げられる。
上記粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング)等が挙げられる。
上記分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)等が挙げられる。
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
図6は、本発明に用いられる無機微粒子を外添混合する際に、用いることができる混合処理装置の一例を示す模式図である。
当該混合処理装置は、磁性トナー粒子と無機微粒子に対して、狭いクリアランス部において、シェアがかかる構成になっているために、磁性トナー粒子表面に無機微粒子を固着させやすい。
さらに、後述するように、回転体の軸方向において、磁性トナー粒子と無機微粒子が循環しやすく、固着が進む前に十分に均一混合されやすい点で、被覆率A、B/A、及び被覆率Aの変動係数を本発明において好ましい範囲に制御しやすい。
一方、図7は、上記混合処理装置に使用される攪拌部材の構成の一例を示す模式図である。
以下、上記無機微粒子の外添混合工程について図6及び図7を用いて説明する。
上記無機微粒子を外添混合する混合処理装置は、少なくとも複数の攪拌部材3が表面に設置された回転体2と、回転体を回転駆動する駆動部8と、攪拌部材3と間隙を有して設けられた本体ケーシング1とを有する。
本体ケーシング1の内周部と、撹拌部材3との間隙(クリアランス)は、磁性トナー粒子に均一にシェアを与え、磁性トナー粒子表面に無機微粒子を固着させやすくするために、一定かつ微小に保つことが重要である。
また本装置は、本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径の2倍以下である。図6において、本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径(回転体2から撹拌部材3を除いた胴体部の径)の1.7倍である例を示す。本体ケーシング1の内周部の径が、回転体2の外周部の径の2倍以下であると、磁性トナー粒子に力が作用する処理空間が適度に限定されるため、磁性トナー粒子に十分に衝撃力が加わるようになる。
また、上記クリアランスは、本体ケーシングの大きさに応じて、調整することが重要である。本体ケーシング1の内周部の径の、1%以上5%以下程度とすることが、磁性トナー粒子に十分なシェアをかけるという点で重要である。具体的には、本体ケーシング1の内周部の径が130mm程度の場合は、クリアランスを2mm以上5mm以下程度とし、本体ケーシング1の内周部の径が800mm程度の場合は、10mm以上30mm以下程度とすればよい。
本発明における無機微粒子の外添混合工程は、混合処理装置を用い、駆動部8によって
回転体2を回転させ、混合処理装置中に投入された磁性トナー粒子及び無機微粒子を攪拌、混合することで、磁性トナー粒子の表面に無機微粒子を外添混合処理する。
図7に示すように、複数の撹拌部材3の少なくとも一部が、回転体2の回転に伴って、磁性トナー粒子及び無機微粒子を回転体の軸方向の一方向に送る送り用撹拌部材3aとして形成される。また、複数の撹拌部材3の少なくとも一部が、磁性トナー粒子及び無機微粒子を、回転体2の回転に伴って、回転体の軸方向の他方向に戻す戻し用撹拌部材3bとして形成されている。
ここで、図6のように、原料投入口5と製品排出口6が本体ケーシング1の両端部に設けられている場合には、原料投入口5から製品排出口6へ向かう方向(図6で右方向)を「送り方向」という。
すなわち、図7に示すように、送り用撹拌部材3aの板面は送り方向(13)に磁性トナー粒子を送るように傾斜している。一方、撹拌部材3bの板面は戻り方向(12)に磁性トナー粒子及び無機微粒子を送るように傾斜している。
これにより、「送り方向」への送り(13)と、「戻り方向」への送り(12)とを繰り返し行いながら、磁性トナー粒子の表面に無機微粒子の外添混合処理を行う。
また、撹拌部材3aと3bは、回転体2の円周方向に間隔を置いて配置した複数枚の部材が一組となっている。図7に示す例では、撹拌部材3a、3bが回転体2に互いに180度の間隔で2枚の部材が一組をなしているが、120度の間隔で3枚、あるいは90度の間隔で4枚、というように多数の部材を一組としてもよい。
図7に示す例では、撹拌部材3aと3bは等間隔で、計12枚形成されている。
さらに、図7において、Dは撹拌部材の幅、dは撹拌部材の重なり部分を示す間隔を示す。磁性トナー粒子及び無機微粒子を、送り方向と戻り方向に効率よく送る観点から、図7における回転体2の長さに対して、Dは20%以上30%程度の幅であることが好ましい。図7においては、23%である例を示す。さらに撹拌部材3aと3bは撹拌部材3aの端部位置から垂直方向に延長線を引いた場合、撹拌部材3bと撹拌部材の重なり部分dをある程度有することが好ましい。これにより、磁性トナー粒子に効率的にシェアをかけることが可能である。Dに対するdは、10%以上30%以下であることがシェアをかける点で好ましい。
なお、羽根の形状に関しては、図7に示すような形状以外にも、送り方向及び戻り方向に磁性トナー粒子を送ることができ、クリアランスを維持することができれば、曲面を有する形状や先端羽根部分が棒状アームで回転体2に結合されたパドル構造であってもよい。
以下、図6及び図7に示す装置の模式図に従って、本発明を更に詳細に説明する。
図6に示す装置は、少なくとも複数の攪拌部材3が表面に設置された回転体2と、回転体2を回転駆動する駆動部8と、攪拌部材3と間隙を有して設けられた本体ケーシング1と、本体ケーシング1の内側及び回転体端部側面10にあって、冷熱媒体を流すことのできるジャケット4を有している。
更に、図6に示す装置は、磁性トナー粒子及び無機微粒子を導入するために、本体ケーシング1上部に形成された原料投入口5、外添混合処理された磁性トナーを本体ケーシング1から外に排出するために、本体ケーシング1下部に形成された製品排出口6を有している。
更に、図6に示す装置は、原料投入口5内に、原料投入口用インナーピース16が挿入されており、製品排出口6内に、製品排出口用インナーピース17が挿入されている。
本発明においては、まず、原料投入口5から原料投入口用インナーピース16を取り出し、磁性トナー粒子を原料投入口5より処理空間9に投入する。次に無機微粒子を原料投入口5より処理空間9に投入し、原料投入口用インナーピース16を挿入する。次に、駆動部8により回転体2を回転させ(11は回転方向を示す)、上記で投入した処理物を、回転体2表面に複数設けられた撹拌部材3により撹拌、混合しながら外添混合処理する。
尚、投入する順序は、先に無機微粒子を原料投入口5より投入し、次に、磁性トナー粒子を原料投入口5より投入しても構わない。また、ヘンシェルミキサーのような混合機で
予め、磁性トナー粒子と無機微粒子を混合した後、混合物を、図6に示す装置の原料投入口5より投入しても構わない。
より具体的には、外添混合処理条件として、駆動部8の動力を、0.2W/g以上、2.0W/g以下に制御することが、本発明で規定する被覆率A、B/A、及び被覆率Aの変動係数を得るうえで好ましい。また、駆動部8の動力を、0.6W/g以上、1.6W/g以下に制御することが、より好ましい。
0.2W/gより動力が低い場合には、被覆率Aが高くなりにくく、B/Aが低くなりすぎる傾向にある。一方、2.0W/gより高い場合には、B/Aが高くなりすぎる傾向にある。
処理時間としては、特に限定されないが、好ましくは、3分以上、10分以下である。処理時間が3分より短い場合には、B/Aが低くなる傾向にあり、被覆率Aの変動係数が大きくなりやすい。一方、処理時間が10分を超える場合には、逆にB/Aが高くなる傾向にあり、装置内が昇温しやすい。
外添混合時の撹拌部材の回転数については特に限定されないが、図6に示す装置の処理空間9の容積が2.0×10−3m3の装置において、撹拌部材3の形状を図7のものとしたときの撹拌部材の回転数としては、1000rpm以上、3000rpm以下であることが好ましい。1000rpm以上、3000rpm以下であることで本発明で規定する被覆率A、B/A、及び被覆率Aの変動係数を得やすくなる。
さらに、本発明において、特に好ましい処理方法は、外添混合処理操作の前に、プレ混合工程を持たせることである。プレ混合工程を入れることにより、無機微粒子が磁性トナー粒子表面上で高度に均一分散されることで、被覆率Aが高くなりやすく、さらに被覆率Aの変動係数を低減しやすい。
より具体的には、プレ混合処理条件として、駆動部8の動力を、0.06W/g以上、0.20W/g以下とし、処理時間を0.5分以上、1.5分以下とすることが好ましい。プレ混合処理条件として、0.06W/gより負荷動力が低い、或いは処理時間が0.5分より短い場合には、プレ混合として十分な均一混合がなされにくい。一方、プレ混合処理条件として、0.20W/gより負荷動力が高い、或いは処理時間1.5分より長い場合には、十分な均一混合がなされる前に、磁性トナー粒子表面に無機微粒子が固着されてしまう場合がある。
外添混合処理終了後、製品排出口6内の、製品排出口用インナーピース17を取り出し、駆動部8により回転体2を回転させ、製品排出口6から磁性トナーを排出する。得られた磁性トナーを、必要に応じて円形振動篩機等の篩機で粗粒等を分離し、磁性トナーを得る。
<被覆率Aの算出>
本発明における被覆率Aは、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影された磁性トナー表面画像を、画像解析ソフトImage−Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)により解析して算出する。S−4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上に磁性トナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分な磁性トナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S−4800観察条件設定
被覆率Aの算出は、S−4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は2次電子像と比べて無機微粒子のチャージアップが少ないため、被覆率Aを精度良く測定することが出来る。
S−4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S−4800の「PC−SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20〜40μAであることを確認する。試料ホルダをS−4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)磁性トナーの個数平均粒径(D1)算出
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
その後、磁性トナー粒子300個について粒径を測定して個数平均粒径(D1)を求める。尚、個々の粒子の粒径は、磁性トナーの粒子を観察した際の最大径とする。
(4)焦点調整
(3)で得た、個数平均粒径(D1)の±0.1μmの粒子について、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止め
る又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(5)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。磁性トナー粒子一つに対して写真を1枚撮影し、少なくとも磁性トナー30粒子以上について画像を得る。
(6)画像解析
本発明では下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで被覆率Aを算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。ただし、分割区画内に、粒径が50nm以上の無機微粒子が入る場合はその区画では被覆率Aの算出を行わないこととする。
画像解析ソフトImage−Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下の通りである。
ソフトImage−ProPlus5.1J
ツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2〜107と入力する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。この時、領域の面積(C)は24000〜26000ピクセルになるようにする。「処理」−2値化で自動2値化し、シリカの無い領域の面積の総和(D)を算出する。
正方形の領域の面積C、シリカの無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率aが求め
られる。
被覆率a(%)=100−(D/C×100)
上述したように、被覆率aの計算を磁性トナー30粒子以上について行う。得られた全
データの平均値を本発明における被覆率Aとする。
本発明における被覆率Aの変動係数は下記のように求める。上述の被覆率Aの計算において使用した全被覆率データの標準偏差をσ(A)とすると、被覆率Aの変動係数は下記式で得られる。
変動係数(%)={σ(A)/A}×100
被覆率Bは、まず、磁性トナー表面の固着されていない無機微粒子を除去し、その後被覆率Aの算出と同様の操作を行って、算出する。
(1)固着されていない無機微粒子の除去
固着されていない無機微粒子の除去は下記のように行う。この除去条件は、トナー表面に埋没した無機微粒子以外を十分除去するために本発明者らが検討し、決定した。
一例として、図6の装置を使用して、3種類の外添強度で被覆率Aを46%とした磁性トナーについて、超音波分散時間と、超音波分散後に算出した被覆率の関係を図9に示す。図9は、以下の方法により超音波分散による無機微粒子の除去を行った後、乾燥させた磁性トナーの被覆率を上記被覆率Aの算出と同様に行うことにより作成した。
図9より、超音波分散による無機微粒子の除去とともに、被覆率が低下し、いずれの外
添強度においても、20分間超音波分散することにより、被覆率がほぼ一定となることがわかる。このことから、30分間の超音波分散により、トナー表面に埋没した無機微粒子以外を十分除去できるとし、そのときに得られる被覆率を被覆率Bと定義した。
より詳細には、水16.0g、コンタミノンN(和光純薬製中性洗剤、商品No.037−10361)4.0gをガラス製の30mlバイアルに投入し、十分混合する。作製した溶液に磁性トナー1.50gを投入して磁石を底面から近付け、磁性トナーを全て沈める。その後、磁石を動かして気泡を除くと共に溶液に磁性トナーを馴染ませる。
超音波振動機UH−50(株式会社エスエムテー製、先端径φ6mmのチタン合金チップ使用)の先端が、バイアルの中央部であり、かつ、バイアル底面から5mmの高さになるようにセットし、超音波分散による無機微粒子の除去を行う。30分間、超音波を掛けた後、磁性トナーを全量取り出して乾燥させる。この時、極力熱を掛けないこととし、30℃以下で真空乾燥を行う。
(2)被覆率Bの算出
上述の乾燥後のトナーを上述の被覆率Aと同様に被覆率を算出し、被覆率Bを得る。
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影された磁性トナー表面の無機微粒子画像から算出される。S−4800の画像撮影条件は以下の通りである。
上述した「被覆率Aの算出」と同様に(1)〜(3)まで操作を行い、(4)と同様に磁性トナー表面を倍率5万倍で焦点調整を行ってピントを合わせた後、ABCモードで明るさ合わせを行う。その後、倍率を10万倍とした後に(4)と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、更に、オートフォーカスでピントを合わせる。焦点調整の操作を再度繰り返し、10万倍にてピントを合わせる。
その後、磁性トナー表面上の少なくとも300個の無機微粒子について粒径を測定して、一次粒子の個数平均粒径(D1)を求める。ここで、無機微粒子は凝集塊として存在するものもあるため、一次粒子と確認できるものの最大径を求め、得られた最大径を算術平均することによって、一次粒子の個数平均粒径(D1)を得る。
磁性トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャのフラッシュ」機能により、アパーチャチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
磁性トナーの軟化温度(Ts)および軟化点(Tm)の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる(流動曲線の模式図を図10に示す)。
本発明においては、軟化温度(Ts)は、ピストン降下量Sが減少方向に転じた時点の温度とする。ピストン降下量が減少するのは、測定試料である磁性トナーが溶融することで、体積が膨張するためである。
一方、軟化点(Tm)については、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点(Tm)とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.5gのトナーを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
フローテスターCFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:35℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
磁性トナーのガラス転移温度(Tg)および磁性トナーの吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
測定試料として、磁性トナー10mgを精密に秤量する。
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/min、常温常湿下で測定を行う。
この昇温過程で、温度40℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、磁性トナーのガラス転移温度(Tg)とする。
一方、上記測定において、一度200℃まで昇温速度10℃/minで昇温させ、続いて10℃/minで30℃まで降温し、その後に再度昇温速度10℃/minで昇温を行う。この2回目の昇温過程で、温度40〜120℃の範囲において最大吸熱ピークが得られる。
この最大吸熱ピークを磁性トナーの吸熱ピークとする。また、最大吸熱ピークのピーク温度を磁性トナーの吸熱ピークのピーク温度とする。
離型剤の「融点」は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
具体的には、測定試料10mgを精密に秤量し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温速度10℃/minで昇温させ、続いて10℃/minで30℃まで降温し、その後に再度昇温速度10℃/minで昇温を行う。この2回目の昇温過程において得られる最大吸熱ピークのピーク温度を離型剤の融点とする。
磁性トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて次の条件で測定する。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのが良い。例えば、昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることが
できる。本発明においては、昭和電工社製のshodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連カラムの組み合せを用いる。
一方で、磁性トナーをTHFに分散し溶解後、1晩静置した後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、マイショリディスクH−25−2(東ソー社製))を用いて濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整した磁性トナーのTHF溶液を50〜200μl注入して測定する。なお、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.製あるいは、東ソー社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。
ここで、メインピークとは、得られた分子量分布において分子量5×103以上、1×104以下の領域に得られる最大ピークであり、その時の分子量値をメインピークの分子量(MA)と定義する。また、サブピークとは分子量1×105以上、5×105以下の領域で得られた最大ピークであり、その時の分子量値をサブピークの分子量(MB)とする。また、メインピーク(MA)とサブピーク(MB)の間に存在する極小値(MMin)を用い、分子量400から極小値(MMin)までの分子量分布曲線の面積をSA、極小値(MMin)から分子量500万までの分子量分布曲線の面積をSBとする。SAおよびSBは、GPCによるクロマトグラムを切り抜き、重量比を計算し、THF不溶分の質量%を減じ、その面積比を計算して求めた。そして、得られたSAおよびSBを合計した総面積に対する、SAの比率(%)を求める。
<低分子量重合体A−1の製造例>
4つ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、昇温して還流させ、スチレン85質量部、n−ブチルクリレート15質量部、及び重合開始剤としてジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネート5.0質量部の混合液を5時間かけて滴下して、低分子量重合体A−1溶液を得た。
<低分子量重合体A−2〜A−10の製造例>
低分子量重合体A−1の製造において、重合性単量体比率、重合開始剤量を表1に記載のものに変更した以外は同様にして、低分子量重合体A−2溶液乃至A−10溶液を得た。
<高分子量重合体B−1の製造例>
4つ口フラスコ内に脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン75質量部、n−ブチルアクリレート25質量部、架橋剤としてジビニルベンゼン0.1質量部、及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド
3.0質量部の混合液を加え、撹拌し懸濁液とした。フラスコ内を十分に窒素で置換した後、85℃まで昇温して重合し、24時間保持して高分子量重合体(B−1)の重合を完了した。
<高分子量重合体B−2、B−3の製造例>
高分子量重合体B−1において、重合開始剤種及び量を表2に記載のものに変更し、85℃で24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド1.0質量部を追加添加し、さらに、12時間保持した以外は同様にして、高分子量重合体B−2、B−3を得た。
低分子量重合体A−1の溶液323質量部(含有される低分子量重合体A−1は80質量部)に20質量部の高分子量重合体B−1を投入し、還流下で十分に混合した後、有機溶剤を留去して結着樹脂1を得た。結着樹脂1の物性を表3に示す。
<結着樹脂2〜19の製造例>
結着樹脂1の製造例において、低分子量重合体と高分子重合体の種類と量を表3に記載のようにした以外は同様にして、結着樹脂2〜19を得た。結着樹脂2〜19の物性を表3に示す。
・表3に示す結着樹脂1 100質量部
(結着樹脂1の組成は表1および表2を参照)
・磁性体 95質量部
(組成:Fe3O4、形状:球形、一次粒子の個数平均粒径:0.21μm、795.8kA/mにおける磁気特性:Hc=5.5kA/m、σs=84.0Am2/kg、σr=6.4Am2/kg)
・表4に示す離型剤1 5質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77;保土谷化学工業(株)製) 2質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーFM10C(三井三池化工機(株))で予備混合した。その後、回転数250rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)により、混練物の出口付近における直接温度が145℃となるように設定温度を調節し、混練した。得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物をカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて、フィード量を25kg/hrとし、排気温度が38℃になるようエアー温度を調整して微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が7.8μmの磁性トナー粒子1を得た。
結着樹脂と離型剤を表5のように変更した以外は、磁性トナー粒子1の製造例と同様にして磁性トナー粒子2〜28を得た。
100質量部の磁性トナー粒子1、及び、0.5質量部のシリカ微粒子1をヘンシェルミキサーFM10C(三井三池化工機(株))に投入し、回転数を3000rpmとし、2分間混合・撹拌した。尚、上記シリカ微粒子1は、BET比表面積:130m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):16nmのシリカ100質量部をヘキサメチルジシラザン10質量部で処理し、次いでジメチルシリコーンオイル10質量部で処理を行ったものである。
次いで、この混合・撹拌物を、熱風を吹き付けることにより磁性トナー粒子の表面改質を行う装置であるメテオレインボー(日本ニューマチック工業社製)で表面改質を行った。表面改質時の条件は、原料供給速度2kg/hr、熱風流量700L/min、吐出熱風温度300℃で行った。このような熱風処理を行って、磁性トナー粒子30を得た。磁性トナー粒子30の重量平均径(D4)は7.9μmであった。
磁性トナー粒子29の製造例において、添加したシリカ微粒子1を1.5質量部とした以外は、磁性トナー粒子29の製造例と同様にして磁性トナー粒子30を得た。磁性トナー粒子30の重量平均径(D4)は7.9μmであった。
磁性トナー粒子1の製造例で得た磁性トナー粒子1に対して、図6に示す装置を用いて、外添混合処理を行った。
本実施例においては、図6に示す装置で、本体ケーシング1の内周部の径が130mmであり、処理空間9の容積が2.0×10−3m3の装置を用い、駆動部8の定格動力を5.5kWとし、攪拌部材3の形状を図7のものとした。そして、図7における攪拌部材3aと攪拌部材3bの重なり幅dを攪拌部材3の最大幅Dに対して0.25Dとし、攪拌部材3と本体ケーシング1内周とのクリアランスを3.0mmとした。
上記した装置構成で、該磁性トナー粒子1の100質量部(500g)と、シリカ微粒
子1の2.00質量部とを、図6に示す装置に投入した。
シリカ微粒子1は、BET比表面積:130m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):16nmのシリカ100質量部をヘキサメチルジシラザン10質量部で処理し、次いでジメチルシリコーンオイル10質量部で処理を行ったものである。
磁性トナー粒子とシリカ微粒子1を投入後、磁性トナー粒子とシリカ微粒子を均一に混合するために、プレ混合を実施した。プレ混合の条件は、駆動部8の動力を0.1W/g(駆動部8の回転数150rpm)とし、処理時間を1分間とした。
プレ混合終了後、外添混合処理を行った。外添混合処理条件は、駆動部8の動力を0.9W/g(駆動部8の回転数1650rpm)で一定となるように、攪拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を5分間とした。外添混合処理条件を表6に示す。
外添混合処理後、直径500mm、目開き75μmのスクリーンを設置した円形振動篩機で粗粒等を除去し、磁性トナー1を得た。磁性トナー1を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、磁性トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、18nmであった。磁性トナー1の外添条件を表6、各物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナー1の製造例において、磁性トナー粒子1の代わりに表6に示す磁性トナー粒子を用い、同様に表6に示す外添処方、外添装置、及び外添条件によって、それぞれ外添処理を実施し、磁性トナー2〜25、及び、磁性トナー28、29、及び32〜46を得た。なお、表6中のハイブリタイザーとは、ハイブリタイザー5型(奈良機械社製)を示す。また、磁性トナー16〜25、及び、磁性トナー28、29、32〜46については、プレ混合を行わず、投入後直ちに外添混合処理を実施した(表6中に「プレ無し」と記載)。また、表6に記載の、チタニア微粒子とアルミナ微粒子は、それぞれ、アナターゼ型酸化チタン微粒子[BET比表面積:80m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):15nm、イソブチルトリメトキシシラン12質量%処理]、アルミナ微粒子[BET比表面積:80m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):17nm、イソブチルトリメトキシシラン10質量%処理]を用いた。さらに、表6中には、シリカ微粒子以外に、チタニア微粒子、アルミナ微粒子を添加した場合のシリカ微粒子の割合(質量%)を示す。各磁性トナーの物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナー1の製造例において、シリカ微粒子1を、BET比表面積:200m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):12nmのシリカに対してシリカ微粒子1と同様の表面処理を行った、シリカ微粒子2に変更した。さらに、磁性トナー粒子1の代わりに磁性トナー粒子22を用い、表6に示す外添処方、外添装置、外添条件によって、それぞれ外添処理を実施した以外は、磁性トナー1の製造例と同様にして、磁性トナー26を得た。磁性トナー26を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、磁性トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、14nmであった。磁性トナー26の外添条件を表6、各物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナー1の製造例において、シリカ微粒子1を、BET比表面積:90m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):25nmのシリカに対してシリカ微粒子1と同様の表面処理を行った、シリカ微粒子3に変更した。さらに、磁性トナー粒子1の代わりに磁性トナー粒子22を用い、表6に示す外添処方、外添装置、外添条件によって、それぞれ外添処理を実施した以外は、磁性トナー1の製造例と同様にして、磁性トナー27を得た。磁性トナー27を得た。磁性トナー27を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、磁性トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、28nmであった。磁性トナー27の外添条件を表6、各物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナーの製造例1と同じ装置構成(図6の装置)を使用し、以下の手順で外添混合処理を行った。
磁性トナー1の製造例において、添加するシリカ微粒子1(2.00質量部)を表6に示すように、シリカ微粒子1(1.70質量部)とチタニア微粒子(0.30質量部)に変更し、磁性トナー粒子1の代わりに磁性トナー粒子22を用いた。
まず、100質量部の磁性トナー粒子22、及び1.70質量部のシリカ微粒子1を投入した。次に、プレ混合を行わずに、駆動部8の動力を0.9W/g(駆動部8の回転数1650rpm)で一定となるように、攪拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を2分間としたのち、一度混合処理を停止した。引き続き、残りのチタニア微粒子(磁性トナー粒子100質量部に対して、0.30質量部)を追加投入し、再び、駆動部8の動力を0.9W/g(駆動部8の回転数1650rpm)で一定となるように、攪拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を3分間とし、外添混合処理時間を計5分間とした。
外添混合処理後、磁性トナー1の製造例と同様に円形振動篩機で粗粒等を除去し、磁性トナー30を得た。磁性トナー30の外添条件を表6、各物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナーの製造例1と同じ装置構成(図6の装置)を使用し、以下の手順で外添混合処理を行った。
磁性トナー1の製造例において、添加するシリカ微粒子1(2.00質量部)を表6に示すように、シリカ微粒子1(1.70質量部)とチタニア微粒子(0.30質量部)に変更し、磁性トナー粒子1の代わりに磁性トナー粒子22を用いた。
まず、100質量部の磁性トナー粒子22、0.70質量部のシリカ微粒子1、及び0.30質量部のチタニア微粒子を投入した。次に、プレ混合を行わずに、駆動部8の動力を0.9W/g(駆動部8の回転数1650rpm)で一定となるように、攪拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を2分間としたのち、一度混合処理をした。引き続き、残りのシリカ微粒子1(磁性トナー粒子100質量部に対して、1.00質量部)を追加投入し、再び、駆動部8の動力を0.9W/g(駆動部8の回転数1650rpm)で一定となるように、攪拌部材3の最外端部周速を調整し、処理時間を3分間とし、外添混合処理時間を計5分間とした。外添混合処理後、磁性トナー1の製造例と同様に円形振動篩機で粗粒等を除去し、磁性トナー31を得た。磁性トナー31の外添条件を表6、各物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナー1の製造例において、磁性トナー粒子1の代わりに表6に示す磁性トナー粒子を用い、同様に表6に示す外添処方、外添装置、外添条件によって、それぞれ外添処理を実施した以外は同様にして、比較磁性トナー1〜17、及び、比較磁性トナー19〜24を得た。なお、表6中のヘンシェルミキサーとは、FM10C(三井三池化工機(株))を示す。各比較磁性トナーの物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナー1の製造例において、シリカ微粒子1を、BET比表面積:30m2/g、一次粒子の個数平均粒径(D1):51nmのシリカに対してシリカ微粒子1と同様の表面処理を行った、シリカ微粒子4に変更し、外添条件を表6の様に変更した以外は同様にして、比較磁性トナー18を得た。比較磁性トナー18を走査型電子顕微鏡で拡大観察し、磁性トナー表面のシリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径を測定したところ、53nmであった。比較磁性トナー18の外添条件を表6、物性を表7にそれぞれ示す。
磁性トナー1を用い、下記に示す各評価を実施した。
画像形成装置として、定着部材がフィルムで構成されるフィルム定着器を具備しているLBP―3100(キヤノン(株)製)を用い、フィルム定着器の温度を変更可能とし、印字速度を16枚/分を20枚/分に改造した。
また、低温定着性の試験時には低温低湿環境下(7.5℃、10%RH)で評価を行い、定着メディアにはFOX RIVER BOND紙(75g/m2)を用いた。
このように定着時の周辺環境を低温にし、メディアの紙温度を低くすることで、定着時の熱の伝達に不利な条件にすると共に、メディア自体も比較的表面の凹凸が大きいメディアを用いることで、擦れやすい状況にすることで定着性を厳しく評価することができる。
本発明の実施例及び比較例で行った各評価の評価方法とその判断基準について以下に述べる。また、評価結果を表8に示す。
低温定着性は、200℃の設定温度でFOX RIVER BOND紙に、マクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した画像濃度が0.75以上、0.80以下となるようにハーフトーン画像濃度を調整し画出しを行う。
その後、定着器の設定温度を210℃から5℃ずつ低下させて画出しを行った。その後、55g/cm2の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦し、摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%を超える温度を定着下限温度とした。この温度が低いほど低温定着性に優れたトナーである。下記の判断基準に従い、評価を行った。
A:160℃未満
B:160℃以上170℃未満
C:170℃以上185℃未満
D:185℃以上200℃未満
E:200℃以上
高温オフセット評価は、常温常湿下(25℃、50%RH)において、A4の90g/m2紙上に、縦2.0cm、横15.0cmのハーフトーン画像を、通紙方向に対し上端部から2.0cmの部分と下端部から2.0cmの部分に形成した。マクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した画像濃度は0.75以上、0.80以下となるように調整し画出しを行った。定着器の設定温度を180℃から5℃ずつ上昇させて画出しを行った。評価は、目視判断にて下記の判断基準に従い行った。
A:210℃まで高温オフセットが未発生
B:200℃以上210℃未満で高温オフセットが発生
C:190℃以上200℃未満で高温オフセットが発生
D:190℃未満で高温オフセットが発生
保存安定性試験では、高温高湿環境下(32.5℃、80%RH)でベタ画像の画出しを行った後、過酷環境下(45℃、90%RH)にて現像装置ごと30日間保管を行った。保管後、高温高湿環境下(32.5℃、80%RH)にてベタ画像を出力し、保管前後での画像濃度の比較評価を行った。ベタ画像の濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
A:保管前後の濃度差0.05未満
B:保管前後の濃度差0.05以上0.10未満
C:保管前後の濃度差0.10以上0.20未満
D:保管前後の濃度差0.20以上0.30未満
E:保管前後の濃度差0.30以上
磁性トナー2〜46を用いたこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれの磁性トナーも耐久試験前後で実用上問題ないレベル以上の画像が得られた。評価結果を表8に示す。
比較磁性トナー1〜24を用いたこと以外は、実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーも低温定着性と保存安定性の両方もしくはいずれかが悪かった。評価結果を表8に示す。
Claims (5)
- 結着樹脂、磁性体及び離型剤を含有する磁性トナー粒子と、該磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子とを含有する磁性トナーであって、
該磁性トナー粒子表面に存在する無機微粒子が、シリカ微粒子、チタニア微粒子、及びアルミナ微粒子からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属酸化物微粒子を含有し、該金属酸化物微粒子中の85質量%以上がシリカ微粒子であり、
該磁性トナーは、無機微粒子による磁性トナー粒子表面の被覆率を被覆率A(%)とし、該磁性トナー粒子表面に固着された無機微粒子による被覆率を被覆率B(%)としたときに、該被覆率Aが45.0%以上、70.0%以下であり、該被覆率Bの被覆率Aに対する比[被覆率B/被覆率A]が0.50以上、0.85以下であり、
該結着樹脂が、スチレン系樹脂であり、該離型剤はモノエステル化合物又はジエステル化合物であり、該磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度(Ts)が60.0℃以上、75.0℃以下であり、軟化点(Tm)が120.0℃以上、150.0℃以下であることを特徴とする磁性トナー。 - 該磁性トナーを、示差走査熱量計を用いて測定したときに、60℃以上、90℃以下に吸熱ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
- 該被覆率Aの変動係数が10.0以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性トナー。
- 該磁性トナーのガラス転移温度が45℃以上、55℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性トナー。
- 該磁性トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布において、分子量5×103以上、1×104以下の領域にメインピーク(MA)を有し、かつ、分子量1×105以上、5×105以下の領域にサブピーク(MB)を有し、メインピークの面積(SA)とサブピークの面積(SB)を合計した総面積に対する、メインピークの面積の比率(SA/(SA+SB))が、70%以上であること特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁性トナー。
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