本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
また、モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
以下、本発明の実施の形態を挙げて、さらに詳しく説明するが、これらに限定されることはない。
本発明の磁性トナー(以下、単にトナーともいう。)は、
結着樹脂、ワックス及び磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、
透過型電子顕微鏡を用いた該磁性トナー粒子の断面において、
一辺が0.8μmの正方グリッドで該磁性トナー粒子の断面を区切った際の、該磁性体の占有面積率の変動係数CV3が、40.0%以上80.0%以下であり、
該結着樹脂がスチレン系樹脂を含有し、
該磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度が60.0℃以上75.0℃以下であり、軟化点が120.0℃以上150.0℃以下であることを特徴とする。
該磁性トナーは、磁性トナー粒子(以下、単にトナー粒子ともいう。)における磁性体の分散状態を制御し、磁性トナーの軟化温度及び軟化点を制御するものである。
本発明者らは、磁性トナーの軟化温度及び軟化点を特定の温度範囲にすることで、低温定着性と保存安定性の両方を向上させうることを見出した。
しかし、耐久性に関しては、トナーの割れに課題を有していた。
本発明者らは、一成分接触現像方式のような高シェアのかかるようなシステムにおいて、結着樹脂がドメインのように他の物質を含まない部位を有することで、該ドメインが磁性トナーに加わる力を吸収し、割れを防ぐと考えた。
すなわち、磁性トナー粒子中で結着樹脂が偏在した箇所、つまり、結着樹脂のドメインを有することが、トナーの割れ、欠けに対して有効な解決手段であると考えた。
本発明者らは、トナー粒子の一つ一つにおいて、磁性体がある程度凝集した状態を形成させうる手段を見出した。その結果、割れに強く、低温定着性及び保存安定性に優れるトナーを見出し、本発明に至った。
該磁性トナーは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた該磁性トナー粒子の断面において、一辺が0.8μmの正方グリッドで該磁性トナー粒子の断面を区切った際の、磁性体の占有面積率の変動係数CV3が、40.0%以上80.0%以下である。該CV3は、50.0%以上70.0%以下であることが好ましい。
該CV3が上記範囲にあるということは、磁性トナー粒子中で磁性体が局所に偏在していることを意味する。すなわち、磁性トナー粒子中で磁性体を偏在させることにより、磁性体が存在しない部分(つまり、結着樹脂のドメイン部分)を適度に設けることができ、その部分に外部からのシェアを吸収させることが可能となる。その結果、トナーの割れが抑制され、一成分接触現像方式のような高シェアのかかるシステムにおいて、多数の画像出力を行った際の画像濃度の低下やカブリのない良好な画像を得ることができる。
該CV3が40.0%未満の場合、磁性トナー粒子の断面を区切った各グリッド間において、磁性体の占有面積率の差が小さいことになり、結着樹脂のドメインが存在していない、又は結着樹脂のドメインの存在量が少ないことを意味している。
この場合、結着樹脂は大半が細かいネットワーク構造を形成することになり、結着樹脂同士のつながりが細くなってしまう。その結果、一成分接触現像方式のようなトナーに高シェアのかかるシステムにおいて、トナーが割れやすくなり、帯電不良によるカブリが発生する。
一方、該CV3が80.0%を超える場合、トナー内で磁性体が過度に局在した状態となる。この場合、磁性体同士が凝集し、表面積低下に伴う着色力の低下が発生し、画出し初期の画像濃度が低下する。
該CV3を上記範囲に調整する方法としては、磁性体の表面の親疎水性を制御すること、トナー粒子の製造時に磁性体の凝集度を制御することなどが挙げられる。
例えば、乳化凝集法を用いる場合、予め磁性体を凝集させてトナー粒子中に導入する方法や、合一工程において、キレート剤の添加、及び/又はpH調製を行うことで磁性体の凝集度を調整する方法などが挙げられる。
該磁性トナーは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた該磁性トナー粒子の断面において、一辺が0.8μmの正方グリッドで該磁性トナー粒子の断面を区切った際の、磁性体の占有面積率の平均値は、10.0%以上40.0%以下であることが好ましい。より好ましくは、15.0%以上30.0%以下である。
占有面積率の平均値が上記範囲である場合、トナー粒子中の磁性体の分散状態が適正な状態となり、過度な凝集状態による着色力の低下を抑制することができる。
また、結着樹脂のドメインの存在量が適正であり、トナーの割れが発生しにくい。その結果、カブリが発生しにくく、良好な画像が得られる。
なお、該磁性体の占有面積率の平均値を上記範囲に制御するための手法としては、磁性体の表面の親疎水性を制御すること、トナー粒子の製造時に磁性体の凝集度を制御することなどが挙げられる。
該磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度は60.0℃以上75.0℃以下であり、軟化点は120℃以上150℃以下である。
該軟化温度(Ts)は65.0℃以上75.0℃以下であることが好ましく、該軟化点(Tm)は125.0℃以上140.0℃以下であることが好ましい。
磁性トナーの軟化温度(Ts)及び軟化点(Tm)は、いずれもトナーの溶融性の指標である。定着器の昇温に不利な低温環境下において、定着器の発熱体の熱量も低い場合には、特に磁性トナーの軟化温度(Ts)を上記範囲に制御するとよい。
定着温度が低い場合、定着領域における記録媒体の温度は、紙の場合100℃以下になることがある。該温度でもトナーが軟化しやすく、また、圧力により迅速にトナー粒子同士が密着できる場合、熱伝導が効率的に行われることから、定着に有利である。
軟化温度(Ts)が75.0℃以下の場合、上記のような定着に厳しい条件下でも磁性トナーが溶融しやすく、定着が良好に行われる。しかしながら、軟化温度(Ts)が60.0℃を下回ると低温定着性には好ましいが、保存安定性及び耐久性の観点では適さない。
軟化温度(Ts)は、ワックスの組成と、結着樹脂中における低分子量体の含有量によって、上記範囲に調整することができる。
例えば、ワックスがモノエステル化合物及び/又はジエステル化合物を含有する場合、結着樹脂中のスチレン系樹脂とワックスの一部が相溶し、結着樹脂の軟化を促進することができる。すなわち、軟化温度(Ts)を低くすることができる。
一方、結着樹脂中における低分子量樹脂、好ましくは低分子量のスチレン系樹脂の含有割合を大きくし、さらに、低分子量樹脂のピーク分子量を小さくすることで、軟化温度(Ts)を低く調整することができる。
しかし、該軟化温度(Ts)が60.0℃を下回る場合、上述のように、保存安定性及び耐久性が低下する。
なお、該低分子量樹脂、好ましくは低分子量のスチレン系樹脂のピーク分子量は、1000以上20000以下であることが好ましく、5000以上15000以下であることがより好ましい。
また、結着樹脂は、高分子量樹脂、好ましくは高分子量のスチレン系樹脂を含有してもよい。該高分子量樹脂は溶融温度が高いため、定着条件によっては、トナーの溶融性に影響を与える。そこで、結着樹脂中における高分子量樹脂の含有量を調整し、磁性トナーの軟化点(Tm)を120.0℃以上150.0℃以下に制御するとよい。
該軟化点(Tm)が150.0℃を超えると、低温定着性が低下する。
一方、軟化点(Tm)が120.0℃未満の場合、保存安定性及び耐久性が低下する。なお、該高分子量樹脂、好ましくは高分子量のスチレン系樹脂のピーク分子量は、20000以上80000以下であることが好ましく、25000以上60000以下であることがより好ましい。
該磁性トナーは、輝度と輝度分散値を制御することが好ましい。
一般的に、磁性体を含有するトナーにおいて磁性体がトナー粒子間でより均一に含有されることが好ましい。磁性体の含有率が異なるトナー粒子が存在する場合、帯電性、磁気性能が異なることになる。その場合、特に磁気搬送を有するシステムやトナーの帯電性、磁気性能を制御して現像を行うシステムでは、トナーごとに現像時の挙動に差が出る可能性があり、結果として濃度低下など画像不良を起こす可能性がある。
また、トナーの輝度はトナーの光の散乱の程度を表す指標であり、着色剤や光を吸収する磁性体のような物質を含有することでトナーの輝度は低下する。
一方、トナーの輝度分散値は、輝度の測定においてトナー粒子の粒子1つの中で輝度にどれだけ偏りがあるかを見る指標である。そのため、輝度分散値の変動係数はトナー粒子の粒子間でどれだけ輝度にバラつきがあるかを見る指標となる。
磁性トナー粒子の粒子間での磁性体の含有率を制御し、磁性トナーの輝度と輝度分散値の変動係数を適切な値にすることで、濃度低下のない良好な画像を得ることができることを見出した。
該磁性トナーの個数平均粒径をDn(μm)としたとき、
該磁性トナーの該Dnにおける平均輝度は、30.0以上60.0以下であることが好ましく、35.0以上50.0以下であることがより好ましい。
該平均輝度が上記範囲にある場合、磁性体の含有量が適切であり、良好な着色性を示し、連続で画出しをした後に画像濃度の低下のない画像を得ることが可能となる。
また、トナーの割れを防止しやすく、カブリの発生をより抑制することができる。
該平均輝度は、磁性体の含有量を調整することで上記範囲に調整することができる。
該磁性トナーの、Dn-0.500以上Dn+0.500以下の範囲における輝度分散値の変動係数をCV1(%)とし、
該磁性トナーの、Dn-1.500以上Dn-0.500以下の範囲における輝度分散値の変動係数をCV2(%)としたとき、
該CV1及び該CV2が、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
CV2/CV1≦1.00 (1)
該CV2/CV1は、0.70以上0.95以下であることがより好ましい。
CV2/CV1が上記範囲にある場合、磁性トナー粒子中の磁性体の含有量が、トナー粒子の粒径に依存しにくくなる。その結果、トナー粒子の帯電のムラ、磁気特性ムラが抑制されやすく、多数の画像出力を行う場合でも現像性が良好となりやすい。
CV2/CV1を上記範囲に制御する手段としては、磁性体の粒径を調整することが挙げられる。また、磁性体が小径粒子に取り込まれやすい、粉砕法や乳化凝集法などを用いてトナー粒子を製造するとよい。
該CV1は、4.00%以下であることが好ましく、3.50%以下であることがより好ましい。
CV1が上記範囲である場合、トナー粒子間での磁性体の存在状態に差が少なく、連続で画出しを行った後での画像濃度が変化しにくく、良好な画像が得られる。
該CV1は、トナー粒子の製造時に磁性体の分散状態を制御することによって調整することができる。
該スチレン系樹脂は、ポリマー中にスチレン由来のモノマーユニットを有する樹脂である。例えば、スチレンと他のモノマーと共重合体が挙げられる。
スチレン系樹脂の製造に使用可能なモノマーとしては、スチレン以外に以下のモノマーが挙げられる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα-オレフィン;
アルカジエン類、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン。
脂環式ビニル炭化水素:モノ-又はジ-シクロアルケン及びアルカジエン類、例えば、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン;
テルペン類、例えば、ピネン、リモネン、インデン。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン;及びビニルナフタレン。
カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びその金属塩:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及びそのモノアルキル(炭素数1以上27以下)エステル。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸のカルボキシ基含有ビニル系モノマー。
ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1以上22以下のアルキル基(直鎖若しくは分岐)を有するアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルアクリレート、ミリスチルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、エイコシルアクリレート、エイコシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレートなど)、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル、2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である。)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル、2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である。)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する。)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類及びポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレート及びポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート)。
これらの中でも、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートなどが好ましい。
また、カルボキシ基含有ビニルエステル:例えば、炭素数3以上20以下のアルキル鎖を有するカルボキシアルキルアクリレート、炭素数3以上20以下のアルキル鎖を有するカルボキシアルキルメタクリレートも用いることができる。
これらの中でも、β-カルボキシエチルアクリレートが好ましい。
該スチレン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用したものでもよい。2種類以上を併用する際は、化学的に結合した複合樹脂の形態でもよい。
結着樹脂は、該スチレン系樹脂以外にも、公知のトナー用の樹脂を含有させることができる。
結着樹脂中の該スチレン系樹脂の含有量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
該ワックスとしては、公知のワックスを用いるとよい。該ワックスの具体例として以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなど天然ワックス及びその誘導体、エステルワックスなど。
ここで、誘導体とは酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
また、エステルワックスとしては、1分子中にエステル結合を1つ含有するモノエステル化合物、1分子中にエステル結合を2つ含有するジエステル化合物を用いることができる。また、1分子中にエステル結合を4つ含有する4官能エステル化合物や、1分子中にエステル結合を6つ含有する6官能エステル化合物などの多官能エステル化合物を用いることもできる。
該ワックスは、モノエステル化合物及びジエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。
その中でも、モノエステル化合物は、エステル化合物が直鎖状になりやすく、スチレン系樹脂との相溶性が高くなるため、より低温定着性に優れる。
モノエステル化合物の具体例としては、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどのような脂肪酸エステル類から酸成分の一部又は全部を脱酸したもの、植物性油脂の水素添加などによって得られるもの、ヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどの飽和脂肪酸モノエステル類が挙げられる。
また、ジエステル化合物の具体例としては、セバシン酸ジベヘニル、ノナンジオールジベヘネート、テレフタル酸ジベヘネート、テレフタル酸ジステアリルなどが挙げられる。なお、ワックスは、上記化合物以外の公知の他のワックスを含有させることができる。また、ワックスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上25.0質量部以下であることがより好ましい。
該ワックスの示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度は、50.0℃以上100.0℃以下であることが好ましく、60.0℃以上90.0℃以下であることがより好ましい。
一方、低温定着性の観点から、該磁性トナーの示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度は、60.0℃以上90.0℃以下であることが好ましく、60.0℃以上80.0℃以下であることがより好ましい。
磁性トナーの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲にある場合、該温度範囲で磁性トナー内のワックスが溶融しやすい状態であり、結着樹脂の可塑を促進しやすいこと示している。また、磁性トナーの保存安定性の低下を抑制することができる。
なお、該最大吸熱ピークのピーク温度は、ワックスの組成を選択することで上記範囲に調整することができる。具体的には、ワックスの分子量を小さくすることで、該ピーク温度を低くできる。
該磁性トナーにおいて、該ワックスが該磁性トナー粒子の内部にドメインを形成し、該ドメインの個数平均径が、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上400nm以下であることがより好ましい。
該ドメインの個数平均径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた磁性トナー粒子の断面において、長軸が20nm以上のワックスのドメインを無作為に30個選び、長軸及び短軸の平均値をドメイン径とし、30個の平均値をドメインの個数平均径とした。なお、該ドメインの選択は同一トナー粒子中でなくともよい。
ドメインの個数平均径が上記範囲にある場合、磁性体の過度な凝集を抑制し、高温環境下におけるワックスのトナー粒子表面への染み出しを低減することができる。その結果、高温環境下におけるトナーの流動性が維持されやすく、高温環境下における濃度低下が抑制され、保存安定性がより向上する。
該ドメインの個数平均径は、ワックスの添加量や、トナーの製造方法として乳化凝集法を用いた場合は、ワックス分散液中のワックス粒子径、合一工程における保持時間などで調整することができる。
該磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの金属とアルミニウム、銅、マグネシウム、スズ、亜鉛、ベリリウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びそれらの混合物などが挙げられる。
該磁性体の一次粒子の個数平均粒径は、0.50μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.30μm以下であることがより好ましい。
トナー粒子中に存在する磁性体の一次粒子の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。
具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させて硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万~4万倍の拡大倍率の画像を撮影し、該画像中の100個の磁性体の一次粒子の投影面積を測定する。そして、該投影面積に等しい円の相当径を磁性体の一次粒子の粒子径とし、該100個の平均値を磁性体の一次粒子の個数平均粒径とする。
該磁性体の795.8kA/m印加での磁気特性として、抗磁力(Hc)は、1.6~12.0kA/mであることが好ましい。また、磁化の強さ(σs)は、50~200Am2/kgであることが好ましく、50~100Am2/kgであることがより好ましい。一方、残留磁化(σr)は、2~20Am2/kgであることが好ましい。磁性トナー中の磁性体の含有量は、35質量%以上50質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
磁性体の含有量が上記の範囲内であれば、現像スリーブ内のマグネットロールとの磁気引力が適度となる。
なお、磁性トナー中の磁性体の含有量は、パーキンエルマー社製熱分析装置TGA Q5000IRを用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで磁性トナーを加熱し、100~750℃の減量質量を磁性トナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体量とする。
該磁性体は、例えば、下記の方法で製造することができる。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。混合液のpHを5から10に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて混合液のpHは酸性側に移行していくが、混合液のpHは5未満にしない方がよい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
また、該磁性体は必要に応じて公知の表面処理を行ってもよい。
磁性トナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。なお、該磁性トナーは、負帯電性トナーであることが好ましい。
負帯電用の荷電制御剤としては、有機金属錯化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯化合物;アセチルアセトン金属錯化合物;芳香族ハイドロキシカルボン酸又は芳香族ダイカルボン酸の金属錯化合物などが例示される。
市販品の具体例として、Spilon Black TRH、T-77、T-95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S-34、S-44、S-54、E-84、E-88、E-89(オリエント化学工業(株))が挙げられる。
該荷電制御剤は単独、又は二種以上組み合わせて用いることが可能である。
該荷電制御剤の含有量は、帯電量の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。
該磁性トナーのガラス転移温度(Tg)は、45.0℃以上55.0℃以下であることが好ましく、50.0℃以上55.0℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度が上記範囲にある場合、保存安定性及び低温定着性を高度に両立させることができる。該ガラス転移温度は、結着樹脂の組成及びワックスの種類、並びに結着樹脂の分子量などにより制御することができる。
該磁性トナーの製造方法は、特に限定されず、乾式製法(例えば、混練粉砕法など)、湿式製法(例えば、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法など)のいずれを用いてもよい。これらの中でも、乳化凝集法を用いることが好ましい。
乳化凝集法を用いた場合、磁性トナーの輝度分散値の変動係数、磁性体の占有面積率の変動係数、ワックスのドメインの個数平均径などの上記範囲への調整が容易である。
該乳化凝集法を用いたトナー粒子の製造方法について、具体例を挙げて説明する。
乳化凝集法は大きく分けて以下の4つの工程を含む。
(a)微粒子分散液を調製する工程、(b)凝集粒子を形成する凝集工程、(c)溶融、合一によりトナー粒子を形成する合一工程、(d)洗浄、乾燥工程。
(a)微粒子分散液を調製する工程
微粒子分散液は水系媒体中に微粒子が分散したものである。
水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水などの水、アルコール類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系媒体中に微粒子を分散させるための助剤を用いてもよく、助剤として界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられる。
具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルのようなアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンのようなアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムのような四級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体のようなノニオン界面活性剤;アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインのような両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
微粒子分散液の調整方法は、分散質の種類により適宜選択することができる。
例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散機を用い、分散質を分散させる方法が挙げられる。また、有機溶剤に溶解する分散質の場合、転相乳化法を用いて水系媒体中に分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき材料を、材料が可溶な有機溶剤中に溶解し、有機連続相(O相)を中和する。その後、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
転相乳化法で用いられる溶剤は樹脂が溶解する溶剤であれば特に制限されるものではないが、液滴を形成する目的から疎水性、又は両親媒性の有機溶剤を用いることが好ましい。
乳化重合のように水系媒体中で液滴を形成したのちに重合を行うことで微粒子分散液を調製することも可能である。乳化重合は、まず分散すべき材料の前駆体、水系媒体、重合開始材を混合した後に撹拌又は剪断することで材料が水系媒体に分散した微粒子分散液を得る方法である。この際乳化の助剤として有機溶剤、界面活性剤を用いてもよい。また撹拌又は剪断する装置は一般的な装置を用いればよく、回転せん断型ホモジナイザーなどの一般的な分散機が挙げられる。
磁性体の分散は、一次粒径が目的の粒径のものを水系媒体に分散するとよい。分散には、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散機を用いるとよい。磁性体は、水に比べ比重が重く、沈降速度が速いため、分散後は即座に凝集工程に進むことが好ましい。
微粒子分散液の分散質の個数平均粒子径は、凝集速度の制御、合一の簡便性の観点から、例えば、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.08μm以上0.8μm以下であり、さらに好ましくは、0.1μm以上0.6μm以下である。
微粒子分散液中の分散質は、凝集速度の制御の観点から、分散液全量に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
(b)凝集工程
微粒子分散液を調製した後、1種類の微粒子分散液、又は2種類以上の微粒子分散液を混合し、微粒子を凝集させた凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を調製する。
混合方法は特に制限されるものではなく、一般的な攪拌機を用いて混合することができる。
凝集は凝集粒子分散液の温度、pH、凝集剤などで制御させるものであり、どの方法を用いてもよい。
凝集粒子を形成する温度に関しては、結着樹脂のガラス転移温度-30.0℃以上、ガラス転移温度以下であることが好ましい。
凝集剤としては無機金属塩、2価以上の金属錯体などが挙げられる。また、微粒子分散液に助剤として界面活性剤を用いた場合、逆極性の界面活性剤を用いることも有効である。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。無機金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウムなどの無機金属塩重合体などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤の具体例としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満であることがより好ましい。
微粒子分散液の混合のタイミングは特に制限されるものではなく、一度凝集粒子分散液を形成した後又は形成途中にさらに微粒子分散液を添加し、凝集させても構わない。
微粒子分散液の添加タイミングを制御することで、トナー中の構造を制御することが可能となる。
また、凝集工程では、撹拌速度を制御しうる撹拌装置を用いるとよい。該撹拌装置に関しては特に限定するものではなく、乳化機、分散機として汎用のものであれば使用可能である。
例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)のバッチ式、又は連続両用乳化機が挙げられる。
製造スケールに応じて撹拌速度を適宜調整するとよい。
特に比重の重い磁性体は撹拌速度の影響を受けやすい。撹拌速度と撹拌時間を調整することで、目的の粒径に制御することが可能となる。撹拌速度が速い場合、凝集が促進されやすく、磁性体の凝集が進み、輝度の低いトナーが最終的に形成されやすい。
また、撹拌速度が遅い場合、磁性体が沈降しやすく、凝集粒子分散液が不均一となり、粒子間での磁性体の導入量に差が出やすくなる。
一方、界面活性剤を添加することでも凝集状態を制御することが可能である。
凝集粒子が目的の粒径に達した段階で凝集を停止させることが好ましい。
凝集の停止には、希釈、温度の制御、pHの制御、キレート剤の添加、界面活性剤の添加などが挙げられ、キレート剤の添加が製造面から好ましい。また、キレート剤の添加とpHの調整により凝集の停止を行うことが、より好ましい方法である。キレート剤の添加とpHの調整を併用した場合、その後の合一工程後に磁性体がやや凝集したトナー粒子を形成させることができる。
(c)合一工程
凝集粒子を形成した後に加熱することで溶融、合一により、トナー粒子を形成する。
加熱温度は結着樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましい。
また、凝集粒子を加熱、合一した後に微粒子分散剤を混合し、さらに(b)凝集粒子を形成する工程、(c)溶融、合一工程を経ることでコア/シェル構造のトナー粒子を形成させてもよい。
(d)洗浄、乾燥工程
公知の洗浄方法、固液分離方法、乾燥方法を用いてよく、特に制限されるものではない。
ただし、洗浄工程は、帯電性の観点から、充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、生産性の観点から吸引濾過、加圧濾過などを施すことがよい。また、乾燥工程は生産性の観点から、凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥などを施すことがよい。
磁性トナー粒子は、必要に応じて、トナーの流動性向上及び/又は帯電性向上のために、外添剤を混合し、磁性トナーとしてもよい。該外添剤の混合には、公知の装置、例えば、ヘンシェルミキサーを用いるとよい。
該外添剤としては、一次粒子の個数平均粒径が、4nm以上80nm以下の無機微粒子が例示でき、6nm以上40nm以下の無機微粒子が好適に例示できる。
該無機微粒子は、疎水化処理が施された場合、トナーの帯電性及び環境安定性をより向上させることができる。該疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物などが挙げられる。該処理剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により拡大撮影されたトナーの画像を用いて算出するとよい。
該無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子などが挙げられる。シリカ微粒子としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された、いわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスなどから製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。
しかし、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3
2-などの製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。
また、乾式シリカにおいては、製造工程において、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、それらも包含する。
無機微粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。無機微粒子の含有量は、蛍光X線分析計を用い、標準試料から作成した検量線から定量するとよい。
磁性トナーは、実質的な悪影響を与えない範囲内でさらに他の添加剤を含有してもよい。
該添加剤としては、フッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;ケーキング防止剤などが挙げられる。該添加剤は、その表面を疎水化処理して用いることも可能である。
磁性トナーの体積平均粒径(Dv)は、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上7.0μm以下であることがより好ましい。
トナーの体積平均粒径(Dv)を上記範囲とすることで、トナーのハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足させることができる。
また、磁性トナーの、体積平均粒径(Dv)の個数平均粒径(Dn)に対する比(Dv/Dn)は、1.25未満であることが好ましい。
磁性トナーの平均円形度は、0.960以上1.000以下であることが好ましく、0.970以上0.990以下であることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲にある場合、一成分接触現像方式のような高シェアのかかるシステムにおいても、トナーの圧密化が発生しにくく、トナーの流動性を維持させやすい。その結果、多数の画像出力を行う際、後半の画像濃度の低下をより抑制できる。
平均円形度は、トナーの製造時に、一般的に用いられる方法で、円形度を制御すればよく、例えば、乳化凝集法では合一工程の時間や界面活性剤の添加量を制御するとよい。
本発明の画像形成方法は、
外部より帯電部材に電圧を印加し、静電潜像担持体を帯電する帯電工程、
帯電された該静電潜像担持体に静電潜像を形成する潜像形成工程、
該静電潜像をトナー担持体に担持されたトナーにより現像してトナー画像を静電潜像担持体上に形成する現像工程、
該静電潜像担持体上のトナー画像を、中間転写体を介して、又は介さずに転写材に転写する転写工程、及び、
転写材に転写されたトナー画像を加熱加圧手段により定着する定着工程を含む画像形成方法であって、
該現像工程は、該静電潜像担持体と該トナー担持体に担持されたトナーとが直接接触して現像が行われる一成分接触現像方式であり、
該トナーが、
結着樹脂、ワックス及び磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、
透過型電子顕微鏡を用いた該磁性トナー粒子の断面において、
一辺が0.8μmの正方グリッドで該磁性トナー粒子の断面を区切った際の、該磁性体の占有面積率の変動係数CV3が、40.0%以上80.0%以下であり、
該結着樹脂がスチレン系樹脂を含有し、
該磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度が60.0℃以上75.0℃以下であり、軟化点が120.0℃以上150.0℃以下であることを特徴とする。
該一成分接触現像方式は、トナー担持体と静電潜像担持体が接触配置(当接配置)された現像方式であり、これら担持体は回転することでトナーを搬送する。該トナー担持体と静電潜像担持体の接触部分には大きなシェアがかかる。そのため、高画質の画像を得るためには、トナーは高耐久性と高流動性を有することが好ましい。
一方、現像方式として、キャリアを使用する二成分現像方式よりも一成分現像方式の方が、現像剤が収容されるカートリッジの小型化が可能である。
また、該接触現像方式は、トナーの飛び散りの少なく、高品質な画像を得ることができる。すなわち、この両者を併せもつ一成分接触現像方式は、現像装置の小型化と画像の高画質化を両立させることができる。
以下、一成分接触現像方式について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、現像装置の一例を示す模式的断面図である。また、図2は、一成分接触現像方式の画像形成装置の一例を示す模式的断面図である。
図1又は図2において、静電潜像が形成された静電潜像担持体45は、矢印R1方向に回転される。トナー担持体47は矢印R2方向に回転することによって、トナー担持体47と静電潜像担持体45とが対向している現像領域にトナー57を搬送する。また、トナー担持体47にはトナー供給部材48が接しており、矢印R3方向に回転することによって、トナー担持体47の表面にトナー57を供給している。また、トナー57は、攪拌部材58にて攪拌される。
静電潜像担持体45の周囲には帯電部材(帯電ローラ)46、転写部材(転写ローラ)50、クリーナー容器43、クリーニングブレード44、定着器51、ピックアップローラ52などが設けられている。静電潜像担持体45は帯電ローラ46によって帯電される。そして、レーザー発生装置54によりレーザー光を静電潜像担持体45に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。静電潜像担持体45上の静電潜像は、現像装置49内のトナー57で現像されてトナー画像を得る。トナー画像は転写材を介して静電潜像担持体45に当接された転写部材(転写ローラ)50により転写材(紙)53上へ転写される。トナー画像の転写材への転写は、中間転写体を介して行われてもよい。トナー画像を載せた転写材(紙)53は定着器51へ運ばれ転写材(紙)53上に定着される。また、一部静電潜像担持体45上に残されたトナー57はクリーニングブレード44によりかき落とされ、クリーナー容器43に収納される。
また、トナー規制部材(図1の符号55)がトナーを介してトナー担持体に当接することによってトナー担持体上のトナー層厚を規制することが好ましい。このようにすることで規制不良の無い高画質を得ることができる。トナー担持体に当接するトナー規制部材としては、規制ブレードが一般的である。
上記規制ブレード上辺部側である基部は現像装置側に固定保持され、下辺部側をブレードの弾性力に抗してトナー担持体の順方向或いは逆方向にたわめ状態にしてトナー担持体表面に適度の弾性押圧力をもって当接させるとよい。
例えば、トナー規制部材55の現像装置への固定は図1に示すようにトナー規制部材55の片側自由端を2枚の固定部材(例えば、金属弾性体、図1の符号56)で挟み込み、ビス留めにより固定するとよい。
以下に、本発明に係る各物性値の測定方法を記載する。
<磁性トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)の測定方法>
磁性トナーの体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数25000にて行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180°ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散については、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、体積平均粒径(Dv)及び個数平均粒径(Dn)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「50%D径」を体積平均粒径(Dv)とする。前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「算術径」を個数平均粒径(Dn)とする。
<磁性トナーの平均輝度、輝度分散値及びその変動係数、平均円形度の測定方法>
磁性トナーの平均輝度、輝度分散値及びその変動係数、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用い、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
測定には、対物レンズとして「LUCPLFLN」(倍率20倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モード、トータルカウントモードにて2000個の磁性トナーを計測する。その結果からトナーの平均輝度、輝度分散値、平均円形度を算出する。
磁性トナーのDnにおける平均輝度は、前記磁性トナーの個数平均粒径(Dn)の結果に対して、本フロー式粒子像分析装置の円相当径を、Dn-0.500(μm)以上Dn+0.500(μm)以下の範囲に限定し、平均輝度を算出した値である。
CV1は、輝度分散値の測定結果において、前記磁性トナーの個数平均粒径(Dn)の結果に対して、本フロー式粒子像分析装置の円相当径を、Dn-0.500(μm)以上Dn+0.500(μm)以下の範囲に限定する。そして、輝度分散値の変動係数を計算した値である。
CV2は、輝度分散値の測定結果において、前記磁性トナーの個数平均粒径(Dn)の結果に対して、本フロー式粒子像分析装置の円相当径を、Dn-1.500(μm)以上Dn-0.500(μm)以下の範囲に限定する。そして、輝度分散値の変動係数を計算した値である。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5100A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本件では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用する。
解析粒子径を円相当径1.977μm以上39.54μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
<最大吸熱ピークのピーク温度(又は、融点)の測定方法>
磁性トナー又はワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)Q2000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしてはアルミニウム製の空パンを用いる。そのときの最大吸熱ピークのピーク温度を求める。また、ワックスについては、該最大吸熱ピークのピーク温度を融点とする。
<ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
磁性トナー又は樹脂などのガラス転移温度は、
前記最大吸熱ピークのピーク温度の示差走査熱量測定によって得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線において、
比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、リバーシングヒートフロー曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線と、が交わる点の温度(℃)である。
<樹脂などのピーク分子量(Mp)の測定方法>
樹脂及びその他の材料のピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
(1)測定試料の作製
試料とテトラヒドロフラン(THF)とを5.0mg/mLの濃度で混合し、室温にて5~6時間放置した後、充分に振とうし、THFと試料を、試料の合一体がなくなるまで良く混ぜる。さらに、室温にて12時間以上静置する。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が72時間以上となるようにし、試料のテトラヒドロフラン(THF)可溶分を得る。
その後、耐溶剤性メンブランフィルター(ポアサイズ0.45~0.50μm、マイショリディスクH-25-2[東ソー社製])でろ過して試料溶液を得る。
(2)試料の測定
得られた試料溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置 LC-GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:Shodex GPC KF-801、802、803、804、805、806、807(昭和電工社製)の7連
移動相:THF
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μL
検出器:RI(屈折率)検出器
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure ChemicalCo.製又は東洋ソーダ工業社製の、分子量が6.0×102、2.1×103、4.0×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2.0×106、4.48×106のものを用いる。
<微粒子分散液における分散体の粒径の測定方法>
各微粒子分散液の分散体の粒径は、レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて測定する。具体的には、JIS Z 8825-1(2001年)に準じて測定される。
測定装置としては、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA-920」(堀場製作所社製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析は、LA-920に付属の専用ソフト「HORIBA LA-920 for Windows(登録商標) WET(LA-920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA-920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、相対屈折率を微粒子に対応した値に設定する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100mL平底ビーカーに微粒子分散液を3mL入れる。さらに57mlのイオン交換水を入れて樹脂微粒子分散液を希釈する。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)60秒間超音波分散処理を継続する。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した微粒子分散液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%~95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、微粒子分散液中の分散体の粒径を算出する。
<磁性トナー中の磁性体の占有面積率及びその変動係数(CV3)の算出方法>
磁性トナー中の磁性体の占有面積率及びその変動係数(CV3)は、以下のように算出する。
まず、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、磁性トナー粒子の断面の画像を取得する。得られた断面画像を区画法に基づき、各区画グリッドにおける磁性体の占有面積率の頻度ヒストグラムを得る。
さらに、得られた各区画グリッドの占有面積率の変動係数を求め、占有面積の変動係数(CV3)とする。
具体的には、まず、磁性トナーを圧縮形成して錠剤とする。直径8mmの錠剤形成器に100mgの磁性トナーを充填し、35kNの力をかけて1分間静置することで錠剤を得る。
得られた錠剤を、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により切削し、膜厚250nmの薄片サンプルを得る。
得られた薄片サンプルを、透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM画像を撮影する。
STEM画像の撮影に用いるプローブサイズを1.0nmとし、画像サイズを1024×1024pixelとする。この際、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整することで、磁性体部分のみを暗く撮影することができる。該設定により、画像処理に好適なSTEM画が得られる。
得られたSTEM画像は、画像処理装置(株式会社ニレコ、LUZEX AP)を用いて数値化する。
具体的には、区画法により、一辺が0.8μmの正方グリッドにおける磁性体の占有面積率の頻度ヒストグラムを得る。この際、ヒストグラムの階級間隔は5%とする。
さらに、得られた各区画グリッドの占有面積率から変動係数を求め、占有面積率の変動係数CV3とする。また、占有面積率の平均値は各区画グリッドの占有面積率の平均をとったものである。
<ワックスのドメインの個数平均径の算出方法>
磁性トナーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりRu染色を行う。
その後、透過型電子顕微鏡(H7500、株式会社日立ハイテクノロジー製)を用い、加速電圧120kVで、得られた磁性トナー粒子の断面観察を行う。
観察する磁性トナー粒子の断面は、磁性トナー粒子の個数平均粒径から±2.0μm以内のものを10個選んで撮影を行い、断面画像を得る。
なお、非晶性樹脂や磁性体に比べ、ワックスはRuによる染色が進まず、該断面画像では白く見える。
ワックスのドメインの個数平均径は、該断面画像において、長軸が20nm以上のワックスのドメインを無作為に30個選び、長軸と短軸の平均値をドメイン径とし、30個の平均値をドメインの個数平均径とする。なお、ドメインの選択は同一の磁性トナー粒子中でなくてもよい。
<磁性トナーの軟化温度(TS)及び軟化点(Tm)の測定方法>
磁性トナーの軟化温度及び軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。
本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。流動曲線の模式図を図3に示す。
該軟化温度(Ts)は、ピストンの降下量が減少方向に転じた時点の温度とする。ピストンの降下量が減少するのは、測定試料である磁性トナーが溶融することで、体積が膨張するためである。
一方、該軟化点(Tm)は、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」とする。
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの磁性トナーを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて、10MPaで、60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに
制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、
すべて質量基準である。また、実施例10及び25は参考例である。
<樹脂(L-1)の製造例>
・スチレン 74.0部
・ブチルアクリレート 24.0部
・β-カルボキシエチルアクリレート 2.0部
・トルエン 150.0部
・重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.16部
撹拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。70℃まで加熱した後、5時間かけて重合を行い、減圧乾燥を行うことで樹脂(L-1)を得た。該樹脂(L-1)のピーク分子量(Mp)は12100であった。
<樹脂(L-2)~(L-7)の製造例>
樹脂(L-1)の製造例において、処方を表1のように変更した以外は同様にして、樹脂(L-2)~(L-7)を得た。
<樹脂(H-1)の製造例>
・スチレン 74.0部
・ブチルアクリレート 24.0部
・β-カルボキシエチルアクリレート 2.0部
・1,6-ヘキサンジオールジアクリレート 0.30部
・トルエン 150.0部
・重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.06部
撹拌装置及び温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。65℃まで加熱した後、5時間かけて重合を行い、減圧乾燥を行うことで樹脂(H-1)を得た。該樹脂(H-1)のピーク分子量(Mp)は32800であった。
<樹脂(H-2)~(H-7)>
樹脂(H-1)の製造例において、処方を表2のように変更した以外は同様にして、樹脂(H-2)~(H-7)を得た。
<樹脂粒子分散液D1の製造例>
樹脂(L-1)70.0部、及び、樹脂(H-1)30.0部をトルエン150.0部に溶解した後、イオン交換水300部中に入れ、1.0部のアニオン界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬株式会社)を加え、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)で攪拌した。その後、蒸留によってトルエンを分離することで樹脂粒子分散液D1を得た。樹脂粒子分散液D1中の固形分濃度は、イオン交換水を添加することで25.0質量%に調整した。
<樹脂粒子分散液D2~D11の製造例>
樹脂粒子分散液D1の製造例において、処方を表3のように変更した以外は同様にして樹脂粒子分散液D2~D11を得た。樹脂粒子分散液D2~D11の処方及び物性について、表3に示す。
<ワックス分散液W1の製造例>
・ベヘン酸ベヘニル 50.0部
・アニオン性界面活性剤 0.3部
(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
・イオン交換水 150.0部
以上を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社製)で分散処理し、ワックス粒子を分散させてなるワックス分散液W1(固形分濃度:25.0質量%)を調製した。得られたワックス粒子の体積平均粒径は0.22μmであった。
<ワックス分散液W2~W8の製造例>
ワックス分散液W1の製造例において、処方を表4のように変更した以外は同様にして、表4に示す物性のワックス分散液W2~W8を得た。
<磁性体1の製造例>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過及び洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させた。得られたリスラリー液に、コア粒子100部当たり、珪素換算で0.20質量%となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。
得られたスラリー液をフィルタープレスにてろ過、洗浄、さらにイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50部/L)に500部(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過及び洗浄し、乾燥及び解砕して、一次粒子の個数平均粒径が0.21μmの磁性体1を得た。
<磁性体2及び3の製造例>
磁性体1の製造例において、空気の吹き込み量と酸化反応時間を調整したこと以外は同様にして、磁性体2及び3を得た。表5に各磁性体の物性を示す。
<磁性体分散液M1の製造例>
・磁性体1 25.0部
・イオン交換水 75.0部
上記材料を混合して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで10分間分散し、磁性体分散液M1を得た。該磁性体分散液M1中の磁性体の体積平均粒径は0.23μmであった。
<磁性体分散液M2及びM3の製造例>
磁性体分散液M1の製造例において、磁性体1を、磁性体2又は3に変更した以外は同様にして磁性体分散液M2又は3を製造した。得られた磁性体分散液M2中の磁性体の体積平均粒径は0.18μmであり、磁性体分散液M3中の磁性体の体積平均粒径は0.35μmであった。
<磁性トナー粒子1の製造例>
・樹脂粒子分散液D1(固形分25.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液W1(固形分25.0質量%) 15.0部
・磁性体分散液M1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、30.0℃に温調した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000rpmで1分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として10.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
60分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0部添加し凝集粒子分散液1を調製した。
続いて、凝集粒子分散液1を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した後、凝集粒子分散液1を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液1を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液1をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子1を得た。
<磁性トナー1の製造例>
100部の磁性トナー粒子1に、一次粒子の個数平均粒径が115nmのゾルゲルシリカ微粒子を0.3部添加し、FMミキサ(日本コークス工業株式会社製)を用い混合した。その後、さらに一次粒子の個数平均粒径が12nmのシリカ微粒子にヘキサメチルジシラザンで処理をした後、シリコーンオイルで処理した。そして、処理後のBET比表面積値が120m2/gの疎水性シリカ微粒子0.9部を添加し、同様にFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)を用い混合し、磁性トナー1を得た。
得られた磁性トナー1についての下記結果を表7に示す。
体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)、Dnにおける平均輝度[表中では、単に平均輝度と表記する。]、CV1、CV2/CV1、磁性体の占有面積率の平均値[表中では、Aと表記する。]、平均円形度、ワックスのドメインの個数平均径[表中では、Bと表記する。]、磁性トナーのガラス転移温度[表中では、Tgと表記する。]、磁性トナーの示差走査熱量計を用いて測定された最大吸熱ピークのピーク温度[表中では、ピーク温度と表記する。]、磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度及び軟化点[表中では、軟化温度をTs、軟化点をTmとそれぞれ表記する。]。
<実施例1>
(画像形成装置)
一成分接触現像方式のLaserJet Pro M12(ヒューレットパッカード社製)を本来のプロセススピードよりも高速である、200mm/secに改造して使用した。
また、評価結果を表8に示す。なお、各評価における評価方法及び評価基準は以下の通りである。
<低温低湿環境下における画像濃度の評価>
上記のように改造した装置に磁性トナー1を100g充填し、低温低湿環境下(15.0℃/10.0%RH)で繰り返し使用試験を行った。
試験用の出力画像としては、印字率が1%の横線画像を、2枚間欠通紙にて4000枚印字する。
なお、試験に用いる評価紙は、坪量が75g/m2のbusiness4200(Xerox社製)を用いた。
画像濃度はベタ黒画像部を形成し、このベタ黒画像の濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
耐久使用前のベタ黒画像の反射濃度の判断基準は以下の通りである。
[評価基準]
A:1.45以上
B:1.40以上1.45未満
C:1.35以上1.40未満
D:1.35未満
耐久使用後半での画像濃度変化の判断基準は以下の通りである。
耐久使用前のベタ黒画像の反射濃度と、上記繰り返し使用試験4000枚印字後に出力したベタ黒画像の反射濃度の差が小さいほど良好とする。
[評価基準]
A:濃度差が0.10未満
B:濃度差が0.10以上0.15未満
C:濃度差が0.15以上0.20未満
D:濃度差が0.20以上
<低温低湿環境下におけるカブリの評価>
カブリは、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC-6DSを使用して測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。
評価は、上記繰り返し使用試験4000枚印字後に、まず、ベタ黒画像を出力した。
ベタ黒画像の転写直後の白地部分(非画像部)に対応する静電潜像担持体の領域をマイラーテープでテーピングしてはぎ取り、紙上にマイラーテープを貼った。
はぎ取ったマイラーテープを未使用の紙上に貼ったものの反射率から、マイラーテープのみを未使用の紙上に貼ったものの反射率を差し引いて差を、カブリの値とした。
[評価基準]
A:5.0%未満
B:5.0%以上10.0%未満
C:10.0%以上15.0%未満
D:15.0%以上
<低温定着性の評価>
評価環境は、常温常湿環境(25.0℃/50%RH)、使用装置は、前記画像形成装置、評価紙は、坪量が75g/m2のbusiness4200(Xerox社製)、評価画像は、ハーフトーン画像とした。
また、評価画像の濃度は、マクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した濃度が0.75以上0.80以下となるように調整した。
評価では、前記画像形成装置の定着器の設定温度を200℃から5℃ずつ低下させて画出しを行い、55g/cm2の加重をかけたシルボン紙で定着画像を10回摺擦し、摺擦後の定着画像の濃度低下率が10%を超える温度を定着下限温度とした。
下記の判断基準に従い、低温定着性の評価を行った。なお、該定着下限温度が低いほど低温定着性に優れている。
[評価基準]
A:160℃未満
B:160℃以上170℃未満
C:170℃以上185℃未満
D:185℃以上
<保存安定性(濃度ムラ)の評価>
前記画像形成装置を用い、高温高湿環境下(32.5℃/80%RH)でベタ画像の画出しを行った後、過酷環境下(45.0℃/90%RH)にて装置ごと30日間保管を行った。保管後、高温高湿環境下(32.5℃/80%RH)にてベタ画像を出力し、保管前後での画像濃度の比較評価を行った。ベタ画像の濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。また、評価紙は、坪量が75g/m2のbusiness4200(Xerox社製)を用いた。
[評価基準]
A:濃度差が0.05未満
B:濃度差が0.05以上0.10未満
C:濃度差が0.10以上0.20未満
D:濃度差が0.20以上
<磁性トナー粒子2の製造例>
(プレ凝集工程)
・磁性体分散液M1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、30.0℃に温調した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000rpmで1分間撹拌し、さらに凝集剤として1.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加し、1分間撹拌した。
(凝集工程)
・樹脂粒子分散液D2(固形分25.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液W2(固形分25.0質量%) 15.0部
該材料を上記ビーカーに投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、5000rpmで1分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として9.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
59分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0部添加し凝集粒子分散液2を調製した。
続いて、凝集粒子分散液2を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した後、凝集粒子分散液2を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液2を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液2をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子2を得た。
<磁性トナー粒子3~27の製造例>
磁性トナー粒子1の製造例において、表6に記載した条件に変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子3、5~7、9、及び11~27を得た。
一方、磁性トナー粒子2の製造例において、表6に記載した条件に変更した以外は同様にして、磁性トナー粒子4、8、及び10を得た。
なお、磁性トナー粒子3、5、及び9の製造例では、第一凝集工程において、0.2部の界面活性剤(ノイゲンTDS-200、第一工業製薬株式会社)を添加後に、凝集剤を添加した。
磁性トナー粒子16の製造例では、50.0℃で凝集粒子の成長を促進させる第一凝集工程の後に、表6に記載した分散液を添加し、再び、50.0℃で凝集粒子の成長を促進させる第二凝集工程を実施した。
<磁性トナー粒子28の製造例>
・樹脂(L-1) 75.0部
・樹脂(H-2) 25.0部
・ベヘン酸ベヘニル 4.0部
・磁性体1 65.0部
・荷電制御剤 1.0部
(アゾ鉄化合物;T-77(保土谷化学工業(株)))
上記原材料を、FMミキサ(FM10C、日本コークス工業株式会社製)を用い、2500rpmで2分間、予備混合した。その後、回転数200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM-30:池貝鉄工所社製)により、混練物の出口付近における混練物温度が150℃となるように設定温度を調節し、混練した。
得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物をカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT-250(ターボ工業社製)を用いて、フィード量を20kg/hrとし、排気温度が38℃になるようエアー温度を調整して微粉砕した。さらに、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、体積平均粒径(Dv)が7.48μmの磁性トナー粒子28を得た。
<磁性トナー粒子29の製造例>
・樹脂粒子分散液D10(固形分25.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液W2(固形分25.0質量%) 15.0部
・磁性体分散液M1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、30.0℃に温調した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、8000rpmで10分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として10.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
60分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0部添加し凝集粒子分散液29を調製した。
続いて、凝集粒子分散液29を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した後、凝集粒子分散液29を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液29を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液29をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。
次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子29を得た。
<磁性トナー粒子30及び31の製造例>
磁性トナー粒子29の製造例において、処方を表6のように変更した以外は同様にして磁性トナー粒子30及び31を得た。
<磁性トナー粒子32の製造例>
・樹脂粒子分散液D1(固形分25.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液W1(固形分25.0質量%) 15.0部
・磁性体分散液M1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、30.0℃に温調した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、8000rpmで10分間撹拌することにより混合した。
さらに0.1mol/Lの塩酸を徐々に添加しpHを5.0に調整し、さらに8000rpmで20分間撹拌した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し、0.1mol/Lの塩酸を徐々に添加しpHを3.0に調整し、撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
60分間経過した段階で、凝集粒子分散液32を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.8に調整した後、凝集粒子分散液32を90.0℃に加熱し、180分間放置し、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液32を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液32をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。
次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子32を得た。
<磁性トナー粒子33の製造例>
(プレ凝集工程)
・磁性体分散液M1(固形分25.0質量%) 105.0部
ビーカーに、上記材料を投入し、30.0℃に温調した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、8000rpmで10分間撹拌し、さらに凝集剤として1.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加し、10分間撹拌した。
(凝集工程)
・樹脂粒子分散液D1(固形分25.0質量%) 150.0部
・ワックス分散液W1(固形分25.0質量%) 15.0部
該材料を上記ビーカーに投入し、水の総部数が250部になるように調整した後、8000rpmで1分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として9.0部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
50分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0部添加し凝集粒子分散液33を調製した。
続いて、凝集粒子分散液33を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した後、凝集粒子分散液33を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間経過後、トナー粒子が分散したトナー粒子分散液33を得た。1.0℃/分の降温速度で冷却した後、トナー粒子分散液33をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS以下となったところで、ケーキ状になったトナー粒子を取り出した。
次に、トナー粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、充分にトナー粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、40℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、磁性トナー粒子33を得た。
<磁性トナー2~33の製造例>
磁性トナー1の製造例において、磁性トナー粒子1を磁性トナー粒子2~33に変更した以外は同様にして、磁性トナー2~33を得た。
得られた磁性トナー2~33についての下記結果を表7に示す。
体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)、Dnにおける平均輝度[表中では、単に平均輝度と表記する。]、CV1、CV2/CV1、磁性体の占有面積率の平均値[表中では、Aと表記する。]、平均円形度、ワックスのドメインの個数平均径[表中では、Bと表記する。]、磁性トナーのガラス転移温度[表中では、Tgと表記する。]、磁性トナーの示差走査熱量計を用いて測定された最大吸熱ピークのピーク温度[表中では、ピーク温度と表記する。]、磁性トナーの定荷重押し出し方式の細管式レオメータを用いて測定された軟化温度及び軟化点[表中では、軟化温度をTs、軟化点をTmとそれぞれ表記する。]。
<実施例2~27、及び、比較例1~6>
磁性トナー2~33を用い、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表8に示す。