JP2013155224A - 生分解性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂(A)以外の生分解性樹脂(B)を含有する生分解性フィルムであって、
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、生分解性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
連続相の厚さ(nm)をW、分散相の厚さ(nm)をWとしたときに、以下の条件を満たすことを特徴とする、生分解性フィルム。
条件1:0.45≦W/W≦1.5
条件2:60≦W≦1,000
【選択図】なし

Description

本発明は、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムに関する。
近年、環境意識の高まりのもと、プラスチック製品の廃棄による土壌汚染問題、また、焼却による二酸化炭素増大に起因する地球温暖化問題が注目されている。前者への対策として、種々の生分解樹脂、後者への対策として、焼却しても大気中に新たな二酸化炭素の負荷を与えないバイオマス(植物由来原料)からなる樹脂がさかんに研究、開発されている。その両者を満足し、かつ、コスト面でも比較的有利なポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸を、ポリエチレンなどのポリオレフィンに代表される軟質フィルム用途に適用しようとすると柔軟性や耐衝撃性に欠けるため、これらの特性を改善し実用化するために各種の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸とガラス転移温度が0℃以下の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルと可塑剤と無機質充填材とを構成成分とする樹脂組成物からなるフィルムが開示されている。また、特許文献2には、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤を含む組成物からなり、伸度、厚み、熱収縮率を規定したフィルムが開示されている。
特開2002−327107号公報 特開2009−138085号公報
前述の特許文献1には、フィルムの柔軟性や耐衝撃性の向上に関する記載はされているものの、耐引き裂き性、透明性を向上する技術については全く開示されておらず、実際、そのフィルムの耐引き裂き性、透明性は不十分なものであった。また、前述の特許文献2には、フィルムの柔軟性や耐衝撃性の向上に関する記載はされているものの、耐引き裂き性を向上する技術については全く開示されておらず、実際、そのフィルムの耐引き裂き性は不十分なものであった。
以上のように、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムに関連する技術について種々の検討がなされてきたが、未だに達成されていなかった。
そこで本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムを提供せんとするものである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次によって解決することを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の生分解性フィルムは、以下である。
1) 乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂(A)以外の生分解性樹脂(B)を含有する生分解性フィルムであって、
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、生分解性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
連続相の厚さ(nm)をW、分散相の厚さ(nm)をWとしたときに、以下の条件1及び2を満たすことを特徴とする、生分解性フィルム。
条件1:0.45≦W/W≦1.5
条件2:60≦W≦1,000
2) JIS K7128−2(1998)で定められたエレメンドルフ引き裂き法による、フィルムの長さ方向と、幅方向の引き裂き強度が、いずれも5N/mm以上であることを特徴とする、1)に記載の生分解性フィルム。
3) 乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)の合計100質量%における、乳酸系樹脂(A)の含有量(質量%)をP、生分解性樹脂(B)の含有量(質量%)をPとした際に、P:P=95:5〜40:60であることを特徴とする、1)又は2)に記載の生分解性フィルム。
4) 乳酸系樹脂(A)が、ホモポリ乳酸、及び、以下の群より選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体であることを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
群:ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、並びに、ポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体。
5) 生分解性樹脂(B)が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、および、ポリブチレンアジペート・テレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、1)〜4)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
本発明によれば、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムが提供される。本発明の生分解性フィルムは、生分解性やバイオマス性に加え、主に、耐引き裂き性、透明性を必要とする、農業用マルチフィルムや松くい虫燻蒸用シート、堆肥袋などの農林業用途、野菜や果物など食品包装用途、衣料用個別包装、買い物用手提げバッグ、ゴミ袋などの各用途、あるいは各種工業製品の袋などに好ましく用いることができる。
本発明は、前記課題、つまり、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムについて鋭意検討した結果、乳酸系樹脂と、乳酸系樹脂以外の生分解性樹脂を含有し、さらに、それらの樹脂の含有量比と分散状態の関係を、一定の条件内に納めることにより、かかる課題の解決に初めて成功したものである。すなわち本発明は、乳酸系樹脂(A)と、生分解性樹脂(B)を含有する生分解性フィルムであって、フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、生分解性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、連続相の厚さ(nm)をW、該分散相の厚さ(nm)をWとしたときに、以下の条件1及び2を満たすことを特徴とする、生分解性フィルムである。
条件1:0.45≦W/W≦1.5
条件2:60≦W≦1,000
以下、本発明の生分解性フィルムについて説明する。
(乳酸系樹脂(A))
本発明の生分解性フィルムは、乳酸系樹脂(A)を含有することが重要である。本発明でいう乳酸系樹脂(A)とは、重合体全体100質量%に対して、乳酸ユニットからなる構成成分が、5〜100質量%のものをいう。ここで乳酸ユニットからなる構成成分はバイオマス(植物由来原料)である。
本発明でいう乳酸系樹脂(A)は、重合体中の乳酸ユニットからなる構成成分が、60質量%以上100質量%以下であるポリ乳酸系樹脂と、重合体中の乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である他の乳酸系樹脂(乳酸系樹脂(A)において、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である重合体を、以下、単に他の乳酸系樹脂という)に分類される。そして本発明のフィルムは、乳酸系樹脂(A)を含有しさえすれば、ポリ乳酸系樹脂又は他の乳酸系樹脂のいずれを含有していても特に限定されないが、後述するように本発明のフィルムは、乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸系樹脂及び他の乳酸系樹脂の両方を含有することが好ましい。
以下、まず、乳酸ユニットからなる構成成分が、60質量%以上100質量%以下であるポリ乳酸系樹脂について説明する。
(乳酸系樹脂(A)の1つであるポリ乳酸系樹脂)
ポリ乳酸系樹脂の中でポリL−乳酸とは、乳酸系樹脂(A)(ポリ乳酸系樹脂)中の全乳酸ユニット100mol%中、L−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。一方、本発明でいうポリD−乳酸とは、乳酸系樹脂(A)(ポリ乳酸系樹脂)中の全乳酸ユニット100mol%中、D−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。
ポリL−乳酸は、D−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリL−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は高くなっていく。同様に、ポリD−乳酸は、L−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリD−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は高くなっていく。
本発明で用いられるポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、本発明で用いられるポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合は、組成物の機械強度を維持する観点から全乳酸ユニット100mol%中、80〜100mol%が好ましく、より好ましくは85〜100mol%である。
本発明でいう結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。
一方、本発明でいう非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様に測定を行った場合、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
また、本発明で用いられる乳酸系樹脂(A)(ポリ乳酸系樹脂)について、主成分がポリL−乳酸の場合はポリD−乳酸を、また、主成分がポリD−乳酸の場合はポリL−乳酸を、少量混合することも好ましい。その理由は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸により形成されるステレオコンプレックス結晶は、通常の結晶よりも融点が高くなり、耐熱性が向上するためである。このとき、少量混合するポリ乳酸の質量平均分子量は、主成分のポリ乳酸の質量平均分子量よりも小さい方が、フィルムの機械強度を維持できる観点、ステレオコンプレックス結晶を効率的に形成できる観点で好ましい。少量混合するポリ乳酸の質量平均分子量は、主成分のポリ乳酸の質量平均分子量の0.5〜50%であることが好ましく、1〜40%であることがより好ましく、2〜30%であることがさらに好ましい。
さらに、本発明で用いられる乳酸系樹脂(A)(ポリ乳酸系樹脂)は、L−乳酸ユニットからなるセグメントとD−乳酸ユニットからなるセグメントにより構成される、ポリ乳酸ブロック共重合体であることも耐熱性向上の点で好ましい。この場合、ポリ乳酸ブロック共重合体が分子内でステレオコンプレックス結晶を形成するため、通常の結晶よりも融点が高くなる。効率的なステレオコンプレックス結晶形成のためには、ポリ乳酸ブロック共重合体の質量平均分子量Xおよびセグメント1単位の最大質量平均分子量Yについて、Y<X/2を満たすようなセグメント長であることが好ましい。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、乳酸ユニットのみからなるホモポリ乳酸、乳酸以外の他の単量体ユニットを共重合したポリ乳酸系樹脂のいずれを用いてもよい。他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記の他の単量体ユニットの共重合量は、ポリ乳酸系樹脂の重合体中の単量体ユニット全体100mol%に対し、0〜30mol%であることが好ましく、0〜10mol%であることがより好ましい。なお、上記した単量体ユニットの中でも、用途に応じて生分解性を有する成分を選択することが好ましい。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量は、実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、8万〜40万であることがより好ましく、10万〜30万であることがさらに好ましい。
次に、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である乳酸系樹脂について説明する。
(乳酸系樹脂(A)の1つである他の乳酸系樹脂)
本発明の生分解性フィルムは、耐引き裂き性、透明性を発現させるため、乳酸系樹脂(A)として、ポリ乳酸系樹脂、及び、他の乳酸系樹脂を同時に用いることが好ましい。乳酸系樹脂(A)は、ホモポリ乳酸、及び、他の乳酸系樹脂を同時に用いることがより好ましい。
他の乳酸系樹脂は、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、および/または、ポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体であることが特に好ましい(これらブロック共重合体を、以下、「ブロック共重合体可塑剤」という。)。ここで、可塑化成分は、ポリエーテル系セグメント、ポリエステル系セグメントとなる。つまり乳酸系樹脂(A)は、ポリ乳酸系樹脂と他の乳酸系樹脂を併用することが好ましく、その中でもホモポリ乳酸、及び、ブロック共重合体可塑剤を併用することがより好ましい。以下、「ブロック共重合体可塑剤」について次に説明する。
(ブロック共重合体可塑剤)
ブロック共重合体可塑剤は、ポリ乳酸系樹脂を可塑化することにより柔軟性を発現し、ポリ乳酸系樹脂と生分解性樹脂(B)の相溶化剤としての役割、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度調整により後述する分散構造を形成させる役割により、耐引き裂き性、透明性を発現する。
ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントの質量割合は、ブロック共重合体可塑剤全体の50質量%以下であることが、より少量の添加で所望の柔軟性を付与できるため好ましく、5質量%以上であることが、ブリードアウト抑制の点から好ましい。また、ブロック共重合体可塑剤1分子中のポリ乳酸セグメントの数平均分子量は1,200〜10,000であることが好ましい。ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントが、1,200以上であると、ブロック共重合体可塑剤とポリ乳酸系樹脂との間に十分な親和性が生じ、また、該セグメントの一部はポリ乳酸系樹脂から形成される結晶中に取り込まれ、いわゆる共晶を形成することで、ブロック共重合体可塑剤をポリ乳酸系樹脂につなぎ止める作用を生じ、ブロック共重合体可塑剤のブリードアウト抑制に大きな効果を発揮する。ブロック共重合体可塑剤のポリ乳酸セグメントの数平均分子量は、1,500〜6,000であることがより好ましく、2,000〜5,000であることがさらに好ましい。なお、ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントは、L−乳酸が95〜100質量%であるか、あるいはD−乳酸が95〜100質量%であることが、特にブリードアウトが抑制されるため好ましい。
また、ブロック共重合体可塑剤はポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントを有するが、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体である方が、少量の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から好ましい。さらにポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体においては、より少量の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から、ポリエーテル系セグメントとしてポリアルキレンエーテルからなるセグメントを有することがより好ましい。具体的には、ポリエーテル系セグメントとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体などからなるセグメントが挙げられるが、特にポリエチレングリコールからなるセグメントは、ポリ乳酸系樹脂との親和性が高いために改質効率に優れ、特に少量の添加で所望の柔軟性を付与できるため好ましい。
なお、ブロック共重合体可塑剤がポリアルキレンエーテルからなるセグメントを有する場合、成形時などで加熱する際にポリアルキレンエーテルセグメントが酸化や熱分解され易い傾向があるため、後述するヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤やリン系などの熱安定剤を併用することが好ましい。
ブロック共重合体可塑剤がポリエステル系セグメントを有する場合は、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなどの脂肪族ジオールとコハク酸、セバシン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸よりなるポリエステルなどが、ポリエステル系セグメントとして好適に用いられる。
なお、ブロック共重合体可塑剤は、その1分子中に、ポリエーテル系セグメントとポリエステル系セグメントの両方の成分を含有してもよいし、いずれか一方の成分でもよい。可塑剤の生産性やコスト等の理由から、いずれか一方の成分とする場合は、より少量の可塑剤の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から、ポリエーテル系セグメントを用いる方が好ましい。つまりブロック共重合体可塑剤として好ましい態様は、ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとのブロック共重合体である。
さらにまた、ブロック共重合体可塑剤の1分子中のポリエーテル系セグメントやポリエステル系セグメントの数平均分子量は、7,000〜20,000であることが好ましい。上記範囲とすることで、本発明の生分解性フィルムを構成する組成物に十分な柔軟性を持たせ、なおかつ、乳酸系樹脂(A)、並びに生分解性樹脂(B)を含む組成物とした際に溶融粘度を適度なレベルとし、インフレーション製膜法などの製膜加工性を安定させることができる。
前記ポリエーテル系および/またはポリエステル系セグメントと、ポリ乳酸セグメントの各セグメントブロックの順序構成に特に制限は無いが、より効果的にブリードアウトを抑制する観点から、少なくとも1ブロックのポリ乳酸セグメントがブロック共重合体可塑剤分子の端にあることが好ましい。
次に、ポリエーテル系セグメントとして、両末端に水酸基末端を有するポリエチレングリコール(以下、PEG)を採用した場合について具体的に説明する。
両末端に水酸基末端を有するPEGの数平均分子量(以下、PEGの数平均分子量をMPEG)は、通常、市販品などの場合、中和法などにより求めた水酸基価から計算される。両末端に水酸基末端を有するPEGのw質量部に対し、ラクチドw質量部を添加した系において、PEGの両水酸基末端にラクチドを開環付加重合させ十分に反応させると、実質的にPLA−PEG−PLA型のブロック共重合体を得ることができる(ここで、「PLA」はポリ乳酸を示す)。この反応は、必要に応じてオクチル酸錫などの触媒併存下でおこなわれる。このブロック共重合体可塑剤の一つのポリ乳酸セグメントの数平均分子量は、実質的に(1/2)×(w/w)×MPEGにより求めることができる。また、ポリ乳酸セグメント成分のブロック共重合体可塑剤全体に対する質量割合は、実質的に100×w/(w+w)%により求めることができる。さらに、ポリ乳酸セグメント成分を除いた可塑剤成分のブロック共重合体可塑剤全体に対する質量割合は、実質的に100×w/(w+w)%により求めることができる。
なお、本発明における生分解性フィルムから、ブロック共重合体可塑剤中のポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメント、ポリ乳酸セグメントの数平均分子量の評価をするために、ブロック共重合体可塑剤を分離する方法としては、例えばクロロホルムなどの適当な良溶媒に生分解性フィルムを均一溶解した後、水や水/メタノール混合溶液など適当な貧溶媒に滴下して、ろ過などによりポリ乳酸系樹脂、生分解性樹脂(B)を主に含む沈殿物を除去し、ろ液の溶媒を揮発させてブロック共重合体可塑剤を得る再沈殿法などが挙げられる。こうして分離されたブロック共重合体可塑剤について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて数平均分子量(以後Mとする)を測定し、H−NMR測定により、ポリ乳酸セグメント、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントを特定する。そして、ブロック共重合体が有する一つのポリ乳酸セグメントの分子量は、M×{1/(ポリ乳酸セグメントの数)}×(IPLA×72)/[(IPE×UMPE/NPE)+(IPLA×72)]と算出する。ただし、IPLAは、PLA主鎖部のメチン基の水素に由来するH−NMR測定でのシグナル積分強度、IPEはポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントに由来するH−NMR測定でのシグナル積分強度、UMPEは、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントのモノマー単位の分子量、NPEはポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントのうち、シグナル積分強度を与える化学的に等価なプロトンの数である。また、ポリエーテル系セグメントおよび/またはポリエステル系セグメントの数平均分子量は、M−(ポリ乳酸セグメントの数平均分子量)×(ポリ乳酸セグメントの数)で計算できる。
本発明の生分解性フィルムに含有されるブロック共重合体可塑剤は、乳酸系樹脂(A)全体100質量%中、1〜30質量%であることが好ましい。乳酸系樹脂(A)全体100質量%中にブロック共重合体可塑を1質量%以上とすることで、前述した可塑剤、相溶化剤、溶融粘度調整剤としての機能を十分に発現でき、30質量%以下とすることで、フィルムとした際のコシが強く、取り扱い性、強度、耐久性、可塑剤の耐ブリードアウト性が高くなる。ブロック共重合体可塑剤の含有率は、好ましくは乳酸系樹脂(A)全体100質量%中、5〜25質量%、より好ましくは、10〜20質量%である。
ブロック共重合体可塑剤の乳酸系樹脂(A)全体100質量%中の含有量は、1〜30質量%であることが好ましいが、残りの70〜99質量%は、ポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。
乳酸系樹脂(A)の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明の生分解性フィルムは、生分解性フィルム全体100質量%中、乳酸系樹脂(A)を40〜95質量%含有することが好ましい。生分解性フィルム全体100質量%中、乳酸系樹脂(A)を40質量%以上とすることで、透明性、バイオマス性に優れたものとなり、乳酸系樹脂(A)を95質量%以下とすることで、柔軟性、耐引き裂き性に優れたものとなる。生分解性フィルム全体100質量%中、乳酸系樹脂(A)は45〜80質量%であることがより好ましく、50〜65質量%であることがさらに好ましい。
(生分解性樹脂(B))
本発明の生分解性フィルムは、柔軟性、耐引き裂き性を発現させるために、乳酸系樹脂(A)以外の生分解性樹脂(B)を含有することが重要である。生分解性樹脂(B)は、生分解速度の調整および生分解性フィルムを構成する組成物全体の溶融粘度を調整して特にインフレーション製膜法において安定したバブルを形成する役割も果たす。
生分解性樹脂(B)の具体例としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペートなどに代表される脂肪族ポリエステル、ポリエチレンサクシネート・テレフタレート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリブチレンアジペート・テレフタレートなどに代表される脂肪族芳香族ポリエステル、熱可塑性澱粉、澱粉と脂肪族(芳香族)ポリエステルからなる樹脂、セルロースエステルなどが好ましく用いられる。また、これらの樹脂は、バイオマス性を高める観点から、構成成分の一部または全部に植物由来原料を使用することが好ましい。
なかでも、柔軟性、耐引き裂き性の改良効果が大きいという点から、生分解性樹脂(B)としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペートおよびポリブチレンアジペート・テレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一つがより好ましく用いられる。そして、柔軟性、耐引き裂き性の改良効果が最も高いのは、ポリブチレンアジペート・テレフタレートである。
本発明の生分解性フィルムに含まれる、生分解性樹脂(B)は、生分解性フィルムを構成する組成物全体100質量%中、5〜60質量%であることが好ましい。40質量%以上であると、柔軟性、耐引き裂き性の改良効果が得られやすく、60質量%以下であれば透明性、適度な生分解性を付与することができる点で好ましい。生分解性フィルムを構成する組成物全体100質量%中、生分解性樹脂(B)は、20〜55質量%であることがより好ましく、35〜50質量%であることがさらに好ましい。
(可塑剤)
本発明の生分解性フィルムは、主に柔軟性を付与するために、生分解性妨げない範囲で、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシルなどのフタル酸エステル系、アジピン酸ジ−1−ブチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸ジフェニルオクチルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系、アセチルリシノール酸メチル、ステアリン酸アミルなどの脂肪酸エステル系、グリセリントリアセテート、トリエチレングリコールジカプリレートなどの多価アルコールエステル系、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステル、エポキシステアリン酸オクチルなどのエポキシ系可塑剤、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテル系、エーテルエステル系、アクリレート系などが挙げられる。そして、これらのうち複数種以上の混合物を、可塑剤として用いることも可能である。
さらに、可塑剤の耐ブリードアウト性やフィルムの耐ブロッキング性の観点から、例えば数平均分子量1,000以上のポリエチレングリコールなど、常温(20℃±15℃)で固体状、つまり、融点が35℃を超えることが好ましい。
(結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合)
本発明の生分解性フィルムを構成する組成物に含有される乳酸系樹脂(A)の一つであるポリ乳酸系樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合物であってもよい。混合物とすることにより、結晶性、非晶性、それぞれのポリ乳酸系樹脂の利点を両立できる。
なお前述のように、結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する融点が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。
一方で非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様の測定を行った際に、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
つまり、結晶性ポリ乳酸系樹脂の含有は、フィルムの耐引き裂き性、耐熱性、耐ブロッキング性向上に好適である。また、前述のブロック共重合体可塑剤を用いる場合、結晶性ポリ乳酸系樹脂はブロック共重合体可塑剤が有するポリ乳酸セグメントと共晶を形成することで、耐ブリードアウト性に大きな効果を発揮する。
一方、非晶性ポリ乳酸系樹脂の含有は、フィルムの柔軟性、耐ブリードアウト性の向上に好適である。これは、可塑剤が分散できる非晶部分を提供していることが影響している。
本発明の生分解性フィルムに用いられる結晶性ポリ乳酸系樹脂は、耐引き裂き性、耐熱性、耐ブロッキング性向上の観点から、ポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、ポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が全乳酸ユニット100mol%中、94〜100mol%が好ましく、より好ましくは96〜100mol%であり、さらに好ましくは98〜100mol%である。
本発明の生分解性フィルムを構成する組成物中のポリ乳酸系樹脂の量を100質量%としたとき、結晶性ポリ乳酸系樹脂の割合は5〜80質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、20〜40%であることがさらに好ましい。
(分散構造)
本発明の生分解性フィルムは、フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、生分解性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)の合計100質量%における、乳酸系樹脂(A)の含有量(質量%)をP、生分解性樹脂(B)の含有量(質量%)をP、連続相の厚さ(nm)をW、分散相の厚さ(nm)をWとしたときに、以下の条件1及び2を満たすことが重要である。
条件1:0.45≦W/W≦1.5
条件2:60≦W≦1,000
ここで連続相、分散相とは、いわゆる海島構造の海が連続相、島が分散相である。本発明の生分解性フィルムの場合、分散相がフィルムの長さ方向に長いので、連続相、分散相のいずれかの判断が難しい場合がある。その場合は、後述する透過型電子顕微鏡(TEM)での分散構造の確認の際、フィルムの長さ方向に観察範囲をずらしていき、島構造の先端が存在する方が分散相であると判断する。
発明者らは、生分解性フィルムを構成する乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)が、上記のような分散構造をとることで、生分解性フィルムに柔軟性、耐引き裂き性、透明性、バイオマス性を付与せしめることが可能であることを見出した。つまり、ポリ乳酸系樹脂はバイオマス性と生分解性を両立する樹脂であるが、生分解性樹脂の中では耐引き裂き性が低いため、下記の3つの因子を調整することで課題を解決することを見出した。
(1)乳酸系樹脂(A)が連続相、生分解性樹脂(B)が分散相となることで、フィルムの柔軟性、耐引き裂き性の向上が可能である。このような相構造にするための方法は、(a)PとPの比を後述する好ましい範囲とすること、(b)乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)の溶融粘度の関係を後述する好ましい範囲とすること、が挙げられる。
ここで、乳酸系樹脂(A)の連続相とは、該連続相中の全成分において乳酸系樹脂(A)が質量的に最も大きい成分であることを意味する。そのため、乳酸系樹脂(A)からなる連続相には、乳酸系樹脂(A)以外の成分、例えば、各種の添加剤、有機滑剤、粒子など、乳酸系樹脂(A)以外の各成分を含んでもよい。
同様に、生分解性樹脂(B)の分散相とは、該分散相中の全成分において生分解性樹脂(B)が質量的に最も大きい成分であることを意味する。そのため、生分解性樹脂(B)からなる分散相には、生分解性樹脂(B)以外の成分を含んでもよい。
(2)フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、生分解性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状またはフィルムの長さ方向に長い層状に分散した構造をとることで、乳酸系樹脂(A)のフィルムの耐引き裂き性への影響を低減し、結果としてフィルムの耐引き裂き性の向上、更には、透明性の向上が可能である。ここで、「楕円状」、「層状」とは、後述する、透過型電子顕微鏡での観察時に、フィルムの厚さ方向全体が見える倍率で観察した際、長さ方向の両側の端部が観察される場合を「楕円状」、長さ方向の少なくとも片方の端部が観察されない場合を「層状」とする。このような分散構造とするための方法は、前記(b)、(c)フィルムをインフレーション法で製膜する際に、ブロー比とドロー比を後述する好ましい範囲とすること、が挙げられる。
(3)条件1:0.45≦W/W≦1.5、及び、条件2:60≦W≦1,000を満たすことで、乳酸系樹脂(A)のフィルムの耐引き裂き性への影響を少なくすることができ、結果としてフィルムの耐引き裂き性、透明性の向上が可能である。
条件1は、分散相と連続相の厚さの比(W/W)がある一定値以上であることを示しており、この条件1を達成するための方法としては、前記(b)、前記(c)が挙げられる。また、分散相と連続相の厚さ比(W/W)が条件1(0.45≦W/W≦1.5)を満たすことで本発明は達成されるが、W/Wが0.45よりも小さい場合は、フィルムに十分な引き裂き強度が得られない。また、W/Wが1.5よりも大きい場合はフィルムとして十分な透明性が得られなくなる問題が生ずる。
条件2は海島構造の分散状態を示しており、この条件2を達成するための方法としては、後述するように、スパイラル型の環状ダイスのスパイラル条数を3〜10とすることが好ましい。W値は、60nm以上1,000nm以下の範囲であることが必要であるが、さらに150nm以上600nm以下がより好ましい。Wが60nm未満になると、耐引き裂き性が低下する。一方、Wが1,000nmを越えると透明性が低下する。
これはフィルムの断面において、耐引き裂き性が相対的に弱い、乳酸系樹脂(A)の面積を小さく、また、耐引き裂き性が相対的に強い、生分解性樹脂(B)の面積を大きくすることで、フィルム全体としての耐引き裂き性を発現させるため、また、乳酸系樹脂(A)、生分解性樹脂(B)両方の相の厚さを可視光の波長より小さくすることで透明性を発現させるためである。
(乳酸系樹脂(A)の含有量Pと、生分解性樹脂(B)の含有量P
本発明の生分解性フィルムは、前記した分散構造を有し、高い柔軟性、透明性、耐引き裂き性に加え、高いバイオマス性を発現させるため、乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)の合計100質量%における、乳酸系樹脂(A)の含有量(質量%)をP、生分解性樹脂(B)の含有量(質量%)をPとした際に、P:P=95:5〜40:60であることが好ましい。より好ましくは、P:P=80:20〜45:55、さらに好ましくは、P:P=65:35〜50:50である。
(乳酸系樹脂(A)と、生分解性樹脂(B)の溶融粘度の関係)
本発明の生分解性フィルムは、前記した分散構造の条件を満たすため、温度200℃、剪断速度100sec−1における乳酸系樹脂(A)の溶融粘度をη、温度200℃、剪断速度100sec−1における生分解性樹脂(B)の溶融粘度をηとしたとき、0.3≦η/η≦1.1の条件を満たすことが好ましい。0.5≦η/η≦0.9がより好ましく、0.5≦η/η≦0.6がさらに好ましい。
ここで、乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηは、乳酸系樹脂(A)が、ホモポリ乳酸、並びに、乳酸ユニットからなる構成成分が、5質量%以上60質量%未満である乳酸系樹脂からなる場合、両者を溶融混練した樹脂として測定する。
また、乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηの好ましい範囲は、400〜1,300Pa・sであり、より好ましくは、400〜1,000Pa・s、さらに好ましくは、700〜1,000Pa・sである。
生分解性樹脂(B)の溶融粘度ηの好ましい範囲は、700〜1,300Pa・sであり、より好ましくは、1,100〜1,300Pa・s、さらに好ましくは、1,100〜1,250Pa・s、特に好ましくは、1,200〜1,250Pa・sである。
(耐引き裂き強度)
本発明の生分解性フィルムは、JIS K7128−2(1998)で定められたエレメンドルフ引き裂き法による、フィルムの長さ方向と、幅方向の耐引き裂き強度が、いずれも5N/mm以上であることが好ましい。より好ましくは11N/mm以上、さらに好ましくは19N/mm以上である。なお、耐引き裂き強度は大きいほど好ましいが、現実的に達成可能な数値として、上限は200N/mm程度と考えられる。フィルムの長さ方向と、幅方向の引き裂き強度が5N/mm以上であると、農業用マルチフィルムや松くい虫燻蒸用シート、堆肥袋などの農林業用途、野菜や果物など食品包装用途、衣料用個別包装、買い物用手提げバッグ、ゴミ袋などの各用途、あるいは各種工業製品の袋などの用途とした際に、十分な耐引き裂き性得られ、破れにくく実用性が向上する。
フィルムの長さ方向と、幅方向の耐引き裂き強度を5N/mm以上とするための方法としては、前記(a)、前記(b)、前記(c)が挙げられる。
(伸度)
本発明の生分解性フィルムは、長さ方向および幅方向(長さ方向と垂直な方向)の伸度が、いずれも200%以上700%以下であることが好ましい。伸度が200%以上であると耐引き裂き性が高くなり、その上、農林業用途、食品包装用途、衣料用個別包装、買い物用手提げバッグ、ゴミ袋などの各用途、あるいは各種工業製品の袋などの用途とした際に破れにくく実用性が向上する。また、伸度が700%以下であると製膜時にロール間走行時や巻き取り時のタルミやシワが生じにくく、ロール巻姿や巻出し性が良好となる。長さ方向および幅方向の伸度は、250%以上600%以下がより好ましく、300%以上500%以下がさらに好ましい。
長さ方向および幅方向の伸度をいずれも200〜700%とするための方法としては、乳酸系樹脂(A)、生分解性樹脂(B)の配合量を、それぞれ前述した好ましい範囲とする方法が挙げられる。
(引張弾性率)
本発明の生分解性フィルムは、十分な柔軟性を付与するために、長さ方向、幅方向それぞれの引張弾性率が100〜1,500MPaであることが好ましい。引張弾性率は、200〜1,200MPaであることがより好ましく、300〜1,000MPaであることがさらに好ましい。
長さ方向、幅方向それぞれの引張弾性率を100〜1,500MPaとするための方法としては、乳酸系樹脂(A)、生分解性樹脂(B)の配合量を、それぞれ前述した好ましい範囲とする方法が挙げられる。
(厚み)
本発明の生分解性フィルムは、フィルム厚みが5〜200μmであることが好ましい。フィルム厚みを5μm以上とすることで、フィルムとした際のコシが強くなり、取り扱い性に優れ、また、ロール巻姿や巻出し性が良好となる。フィルム厚みを200μm以下とすることで柔軟性が向上し、農林業用途、食品包装用途、衣料用個別包装、買い物用手提げバッグ、ゴミ袋などの各用途、あるいは各種工業製品の袋などの用途とした際に取り扱い性に優れるものとなり、また、特にインフレーション製膜法においては、自重によりバブルが不安定化しない。フィルム厚みは、7〜150μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、12〜50μmがさらにより好ましい。
(耐ブロッキング剤)
本発明の生分解性フィルムは、フィルム全体100質量%中、耐ブロッキング剤を0.1〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは0.1〜5質量%である。耐ブロッキング剤としては、有機滑剤や有機粒子、無機粒子であり、各々、単独で含んでも良いし、複合で含んでも良い。
(有機滑剤)
本発明の生分解性フィルムは、フィルム全体100質量%中、有機滑剤を0.1〜5質量%含むことが好ましい。この場合、巻き取り後のブロッキングを良好に抑制できる。また、有機滑剤の添加過多による溶融粘度の低下や加工性の悪化、あるいはフィルムとした際のブリードアウトやヘイズアップなどの外観不良の問題も発生しにくい。
有機滑剤としては特に限定されず、種々の物を使用可能であるが、例えば、脂肪酸アミド系の有機滑剤が使用できる。その中でも、より良好な耐ブロッキング性を発現する観点で、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの比較的高融点である有機滑剤が好ましい。
(粒子)
本発明の生分解性フィルムは、フィルム全体100質量%中、有機粒子や無機粒子を0.1〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%含むことがさらに好ましい。
無機粒子や有機粒子は特に限定されないが、例えば、シリカ等の酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ化アルミニウム、ゼピオライト等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の各種酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、フッ化リチウム等の各種塩等からなる粒子を使用することができる。
(ヘイズ)
本発明の生分解性フィルムは、ヘイズが45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。ヘイズが40%以下である場合、食品包装用途、衣料用個別包装、買い物用手提げバッグ、ゴミ袋などの各用途、あるいは各種工業製品の袋などの用途などに成形加工した際には内容物が容易に確認できる、商品としての見栄えがよいなど高い意匠性により好適である場合が多い。なお、乳酸系樹脂(A)、生分解性樹脂(B)の一般的な特性から、生分解性フィルムのヘイズとしては1%未満にすることは困難であることから、下限は1%程度である。
(添加剤)
本発明の生分解性フィルムを構成する組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で前述した以外の添加剤を含有してもよい。例えば、公知の結晶核剤、酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、抗酸化剤、イオン交換剤、粘着性付与剤、消泡剤、着色顔料、染料、末端封鎖剤などが含有できる。
結晶核剤としては、有機系結晶核剤では、メラミン系化合物、フェニルホスホン酸金属塩、ベンゼンカルボアミド誘導体、脂肪族/芳香族カルボン酸ヒドラジド、ソルビトール系化合物、アミノ酸、ポリペプチド、金属フタロシアニン等を好ましく使用することができる。無機系結晶核剤では、タルク、クレー、マイカ、カオリナイト等の珪酸塩鉱物、カーボンブラックなどを好ましく使用することができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系などを好ましく使用することができる。
着色顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料などを好ましく使用することができる。
末端封鎖剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等の付加反応型化合物が挙げられる。乳酸系樹脂(A)や生分解性樹脂(B)を末端封鎖することは、カルボキシル基末端濃度を下げることで、加水分解による強度低下を抑制し、良好な耐久性を付与する観点で好ましい。
(製造方法)
次に、本発明の生分解性フィルムを製造する方法について具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、例えば、次のような方法で得ることができる。原料としては、L−乳酸またはD−乳酸の乳酸成分を主体とし、前述した乳酸成分以外のヒドロキシカルボン酸を併用することができる。またヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等を原料として使用することもできる。更にジカルボン酸類やグリコール類等も使用することができる。
ポリ乳酸系樹脂は、上記原料を直接脱水縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
本発明の生分解性フィルムを構成する組成物、つまり、乳酸系樹脂(A)、生分解性樹脂(B)、あるいはその他の成分等を含有する組成物を得るにあたっては、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、溶媒へ原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を採用することが好ましい。その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。
溶融混練時の温度は150℃〜240℃の範囲が好ましく、乳酸系樹脂(A)の劣化を防ぐ意味から、180℃〜210℃の範囲とすることがより好ましい。
本発明の生分解性フィルムは、例えば上記した方法により得られた組成物を用いて、公知のインフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスト法などの既存のフィルムの製造法により得ることが出来るが、本発明の生分解性フィルムの分散構造を得るためにはインフレーション法が好ましい。
本発明の生分解性フィルムを製造するにあたっては、例えば前述した方法により得られた組成物を一旦ペレット化し、再度溶融混練して押出・製膜する際には、ペレットを60〜100℃にて6時間以上乾燥するなどして、水分量を1,200ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下としたポリ乳酸系樹脂等を含有する組成物を用いることが好ましい。さらに、真空度10Torr以下の高真空下で真空乾燥をすることで、ポリ乳酸系樹脂等を含有する組成物中のラクチド含有量を低減させることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂等を含有する組成物の水分量を1,200ppm以下、ラクチド含有量を低減することで、溶融混練中の加水分解を防ぎ、それにより分子量低下を防ぐことができ、ポリ乳酸系樹脂等を含有する組成物とした際の溶融粘度を適度なレベルとし、製膜工程を安定させることができるためにも好ましい。また、同様の観点から、一旦ペレット化、あるいは溶融押出・製膜する際には、ベント孔付きの2軸押出機を使用し、水分や低分子量物などの揮発物を除去しながら溶融押出することが好ましい。
本発明の生分解性フィルムをインフレーション法により製造する場合は、例えば、前述のような方法により調整した組成物をベント孔付き2軸押出機にて溶融押出して環状ダイスに導き、環状ダイスから押出して内部には乾燥エアーを供給して風船状(バブル)に形成し、さらにエアーリングにより均一に空冷固化させ、ニップロールでフラットに折りたたみながら所定の引き取り速度で引き取った後、必要に応じて両端、または片方の端を切り開いて巻き取れば良い。
本発明の生分解性フィルムは、インフレーション製膜時のブロー比と、ドロー比の調整が重要である。ここで、ブロー比とは、フィルムの幅方向の延伸比のことで、(片方の端を切り開いて巻き取った際のフィルムの幅方向の長さ)/(環状ダイスの直径)で計算できる。また、ドロー比とは、フィルムの長さ方向のドロー延伸比のことで、(巻き取り速度)/(環状ダイスからの吐出速度)で表されるが、実用上は、(環状ダイスのリップ間隙)/{(製膜後のフィルム厚み)×(ブロー比)}で計算できる。本発明の生分解性フィルムでは、前述した分散構造を形成するために、ブロー比は、1.2〜4.0が好ましく、2.2〜3.4がより好ましい。ドロー比は15〜150が好ましく、40〜130がさらに好ましい。
環状ダイスのリップ間隙は、上記した好ましいブロー比、ドロー比で製膜した際に目的のフィルム厚みになるように調整すればよいが、通常、0.6〜1.8であり、好ましくは、1.2〜1.6である。また、環状ダイスは、厚み精度、均一性の点から、スパイラル型を用いることが好ましく、同様の観点から環状ダイスは回転式のものを用いることが好ましい。
このスパイラル型の環状ダイスのスパイラル条数が、Wの値に影響する。60≦W≦1,000とするためには、スパイラル型の環状ダイスのスパイラル条数は、3〜10の範囲であることが好ましい。スパイラル条数が3未満になると、乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)との分散状態が著しく悪くなり、海
島構造が不均一になる問題がある。一方、スパイラル条数が10を越えると分散状態が進み過ぎ、W値が小さくなり過ぎるために、フィルムの耐引き裂き強度が低下する。

また、本発明の生分解性フィルムをインフレーション製膜する際の押出温度は通常150〜240℃の範囲であり、180〜210℃が好ましく、環状ダイスの温度は通常150〜190℃の範囲であり、155〜170℃が好ましい。
フィルムに成形した後に、フィルムの熱収縮を抑制するために加熱ロールやオーブン内で熱処理を施しても良い。また、印刷性、ラミネート適性、コーティング適性などを向上させる目的で各種の表面処理を施しても良い。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などが挙げられ、いずれの方法をも用いることができるが、連続処理が可能であり、既存の製膜設備への装置設置が容易な点や処理の簡便さからコロナ放電処理が最も好ましいものとして例示できる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すとおりの条件で行った。
(1)分散構造
フィルムにルテニウム酸で染色処理を施し、エポキシ樹脂に包埋した後、ウルトラミクロトームを用いてフィルムの長さ方向に平行かつフィルム面に垂直な方向に切断し、超薄切片を作製した。切断面を、透過型電子顕微鏡(日立製H−7100型)を用いて、加速電圧100kVの条件下で、まずフィルムの厚さ方向全体が見える倍率で観察し、フィルムの厚さ方向に等間隔に3等分した際、3等分した各領域について厚さ方向の中央部分について、5万倍の倍率で写真を撮影した。
撮影した写真をフィルムの長さ方向を縦にして、15cm×15cmの正方形に切り出し、縦の長さの中央部分を横切る線を引く(すなわち、正方形を上下に等面積に分割する線を引く)。その線と、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した相の境界部分との交点を基準として、左右両端の相構造を省き、残りの全ての分散相、連続相の厚さを0.1mm単位で測定した。同様にして残り2領域についても分散相、連続相の厚さ測定を行い、分散相、連続相それぞれについて、全ての平均値を算出後、実測1mmを20nmに換算して、W、W(nm)(小数点第1位を四捨五入)とした。
なお、分散相がフィルムの長さ方向に長いために、連続相、分散相のいずれかの判断が難しい場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)での分散構造の確認において、フィルムの長さ方向に観察範囲をずらしていき、島構造の先端が存在する方が分散相であると判断する。
(2)耐引き裂き強度(N/mm)
温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下において、JIS K7128−2(1998)に従って、エレメンドルフ引き裂き法による耐引き裂き強度測定を以下のように行った。(株)オリエンテック製テンシロンUCT−100を用い、試験速度200mm/minで、測定は計10回行い、その平均値(小数点第1位を四捨五入)を採用した。これを長さ方向、幅方向、それぞれについて算出した。
(3)ヘイズ(%)
スガ試験機(株)製ヘイズメーターHGM−2DPを用いて、JIS K7136(2000)に規定された方法に従ってヘイズ値を測定した。測定は1サンプルにつき測定場所を変更して5回行い、その平均値(小数点第1位を四捨五入)を採用した。
(4)バイオマス度(%)
フィルム全体を100質量%としたときのバイオマス由来である樹脂の配合割合(質量%)(小数点第1位を四捨五入)とし、以下の基準にて評価した。
◎:38%以上
○:25%以上、38%未満
△:5%以上、25%未満
×:5%未満
(5)質量平均分子量、数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにWATERS社MODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(6)展張性
農業用マルチフィルム用途として展張性を確認する場合は、長野県の圃場(土壌タイプ:表層腐食質黒ボク土、気温:10℃)にてマルチャー付きのトラクターを用いて、畝立てと同時に展張を実施した。なお、畝の形状は畝幅60cm、畝高35cm程の断面が半円状の畝とした。50mの展張を行い、下記基準にて展張性を判定した。
(破れ)
◎:展張の際は破れることはなく、問題なく展張できる。
○:展張の際に2回以下の頻度で一部破れるが、実用面では問題ない。
×:◎、○のいずれにも該当しない。
(巻出し)
◎:展張の際に、ブロッキングなく巻出しが可能である。
○:展張の際に、軽く引き出したら巻出しが可能である。
×:◎、○のいずれにも該当しない。

[乳酸系樹脂(A)]
(A1)
ポリL−乳酸、質量平均分子量200,000、D体含有量1.4%、融点166℃、温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度1,400Pa・s、バイオマス度100%
(A2)
ポリL−乳酸、質量平均分子量200,000、D体含有量12.0%、融点無し、温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度1,250Pa・s、バイオマス度100%
(A3)
数平均分子量8,000のポリエチレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.05質量部を混合し、撹拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気下160℃で3時間重合することで、数平均分子量8,000のポリエチレングリコールの両末端に数平均分子量2,500のポリ乳酸セグメントを有するポリ乳酸系樹脂A3を得た。バイオマス度は39%であった。
(A4)
(A1)50質量部、(A2)20質量部、(A3)30質量部の混合物をシリンダー温度200℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して、ポリ乳酸系樹脂A4を得た。温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度は1,300Pa・sであった。バイオマス度は100%であった。
(A5)
(A2)70質量部、(A3)30質量部の混合物をシリンダー温度200℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して、ポリ乳酸系樹脂A5を得た。温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度は1,700Pa・sであった。バイオマス度は100%であった。
(A6)
(A1)60質量部、(A2)10質量部、(A3)30質量部の混合物をシリンダー温度200℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して、ポリ乳酸系樹脂A6を得た。温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度は1,100Pa・sであった。バイオマス度は100%であった。
(A7)
(A1)21質量部、(A2)49質量部、(A3)30質量部の混合物をシリンダー温度200℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して、ポリ乳酸系樹脂A7を得た。温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度は400Pa・sであった。バイオマス度は82%であった。
(A8)
ポリL−乳酸、質量平均分子量200,000、D体含有量5.0%、融点150℃、温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度1,400Pa・s、バイオマス度100%
[生分解性樹脂(B)]
(B1)
ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(BASF社製、商品名“エコフレックス”FBX7011)、温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度1,200Pa・s
(B2)
ポリブチレンサクシネート樹脂(三菱化学(株)製、商品名“GSPla”(登録商標)AZ91T)、温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度1,050Pa・s
(B3)
ポリブチレンサクシネート・アジペート樹脂(昭和高分子(株)製、商品名“ビオノーレ”(登録商標)#3001)、温度200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度1,250Pa・s

[耐ブロッキング剤(C)]
(C1)
有機滑剤:ステアリン酸アミド(日本油脂社製、商品名“アルフローS−10”)
(C2)
有機滑剤: ステアリン酸アミド(日本化成社製、商品名“アマイドAE−1”)
(C3)
無機粒子: 炭酸カルシウム
(C4)
無機粒子: タルク

[生分解性フィルムの作製]
(比較例1)
ポリ乳酸系樹脂(A7)64質量部、生分解性樹脂(B1)30質量部、耐プロッキング剤(C1)3質量部、耐ブロッキング剤(C3)3質量部の混合物を、シリンダー温度190℃のスクリュー径45mm、L/D=32の真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。
この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度80℃で12時間除湿真空乾燥した。
この組成物のペレットを、押出機シリンダー温度190℃のスクリュー径65mmの一軸押出機に供給し、直径250mm、リップクリアランス1.0mm、温度160℃のスパイラル型環状ダイスのスパイラル条数11により、ブロー比2.4にてバブル状に上向きに押出し、冷却リングにより空冷し、ダイス上方のニップロールで折りたたみながら引き取り、両端部をエッジカッターにて切断して2枚に切り開き、それぞれワインダーにてフィルムを巻き取った。吐出量と引き取り速度の調整により、ドロー比23、最終厚みが20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表に示した。
実施例1〜16、比較例2〜10は、フィルムの原料、製膜条件を表1〜3のとおりに変更した以外は、比較例1と同様にして、最終厚みが20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表に示した。
Figure 2013155224
Figure 2013155224
Figure 2013155224
本発明の生分解性フィルムは、柔軟性、耐引き裂き性、透明性に優れ、かつバイオマス性に優れた、特にインフレーション製膜法で良好な効果が発現する生分解性フィルムであり、生分解性やバイオマス性に加え、主に、柔軟性、耐引き裂き性、透明性を必要とする、農業用マルチフィルムや松くい虫燻蒸用シート、堆肥袋などの農林業用途、野菜や果物など食品包装用途、衣料用個別包装、買い物用手提げバッグ、ゴミ袋などの各用途、あるいは各種工業製品の袋などに好ましく用いることができる。

Claims (5)

  1. 乳酸系樹脂(A)と、乳酸系樹脂(A)以外の生分解性樹脂(B)を含有する生分解性フィルムであって、
    フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、生分解性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
    連続相の厚さ(nm)をW、分散相の厚さ(nm)をWとしたときに、以下の条件1及び2を満たすことを特徴とする、生分解性フィルム。
    条件1:0.45≦W/W≦1.5
    条件2:60≦W≦1,000
  2. JIS K7128−2(1998)で定められたエレメンドルフ引き裂き法による、フィルムの長さ方向と、幅方向の耐引き裂き強度が、いずれも5N/mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性フィルム。
  3. 乳酸系樹脂(A)と生分解性樹脂(B)の合計100質量%における、乳酸系樹脂(A)の含有量(質量%)をP、生分解性樹脂(B)の含有量(質量%)をPとした際に、P:P=95:5〜40:60であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生分解性フィルム。
  4. 乳酸系樹脂(A)が、ホモポリ乳酸、及び、以下の群より選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性フィルム。
    群:ポリエーテル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、並びに、ポリエステル系セグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体。
  5. 生分解性樹脂(B)が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、および、ポリブチレンアジペート・テレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性フィルム。
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