JP2015038193A - 多孔性フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明が解決しようとする課題は、柔軟性、透湿性、加工性に優れ、かつ耐ブリードアウト性に優れた、主にポリ乳酸系樹脂からなる多孔性フィルムを提供することである。【解決手段】本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)、及び充填剤(C)を含む多孔性フィルムであり、フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、該分散相の厚さが、200〜3,000nmであり、かつ、空孔率が10〜80%であることを特徴とする、多孔性フィルム、である。【選択図】なし
Description
本発明は、柔軟性、透湿性、加工性に優れ、かつ耐ブリードアウト性に優れた、主にポリ乳酸系樹脂からなる多孔性フィルムに関する。
近年、環境意識の高まりのもと、プラスチック製品の廃棄による土壌汚染問題、および、焼却による二酸化炭素排出に起因する地球温暖化問題が注目されている。前者への対策として、種々の生分解樹脂、後者への対策として、焼却しても大気中に新たな二酸化炭素の負荷を与えない植物由来原料からなる樹脂がさかんに研究、開発されている。その両方の特性を満足し、かつ、コスト面でも比較的有利なポリ乳酸が注目されている。しかし、ポリ乳酸を、ポリエチレンなどのポリオレフィンが代表的な素材として用いられる軟質フィルム用途に適用しようとすると柔軟性などの特性や、製造時の各工程における加工性に欠けるため、これらを改善し実用化するために各種の試みがなされている。
多孔性フィルムの分野では、例えば、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂、充填剤および一般的なポリエステル系可塑剤を含むシートを少なくとも1軸延伸してなる多孔性シートが開示されている。また、特許文献2には、ポリ乳酸系重合体、脂肪族芳香族共重合ポリエステル、微粉状充填材に加えて、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪族多価アルコールエステル、脂肪族多価アルコールエーテルおよびオキシ酸エステルから選ばれる一般的な可塑剤を含み、微粉状充填材と樹脂
成分との界面剥離による空孔が形成された多孔性フィルムが開示されている。さらに、特許文献3には、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系以外の熱可塑性樹脂、充填剤を含み、ある一定の空孔率を有する多孔性フィルムが開示されている。
成分との界面剥離による空孔が形成された多孔性フィルムが開示されている。さらに、特許文献3には、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系以外の熱可塑性樹脂、充填剤を含み、ある一定の空孔率を有する多孔性フィルムが開示されている。
前述の特許文献1および特許文献2に記載の技術では、一定の透湿性向上の効果はあるものの十分ではなく、また、耐ブリードアウト性に劣るものであった。ここで、耐ブリードアウト性は加工性に加え、製品化後の品質向上のためにも求められる性能である。また、前述の特許文献3に記載の技術では、耐ブリードアウト性は改良されているものの、透湿性と加工性の両立が不十分であった。
つまり、ポリ乳酸を用いた多孔性フィルムの検討がなされてきたが、その透湿性能は十分ではなく、また、加工性と両立し、耐ブリードアウト性にも優れた性能を有するフィルムの発明は、未だに達成されていなかった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、柔軟性、透湿性、加工性および耐ブリードアウト性に優れた、ポリ乳酸系多孔性フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)、及び充填剤(C)を含む多孔性フィルムであり、
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
該分散相の厚さが、200〜3,000nmであり、かつ、
空孔率が10〜80%であることを特徴とする、多孔性フィルム、である。
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
該分散相の厚さが、200〜3,000nmであり、かつ、
空孔率が10〜80%であることを特徴とする、多孔性フィルム、である。
本発明によれば、柔軟性、透湿性、加工性および耐ブリードアウト性に優れた、ポリ乳酸系樹脂を含む多孔性フィルムが提供される。本発明の多孔性フィルムは、柔軟性および透湿性を必要とする用途に好ましく用いることができる。具体的には、スポーツウェア、雨天用衣類、手袋などに必要とされる透湿・防水性、防護服などに必要とされる透湿・防塵性を具備する衣料材料、ベッド用シーツ、マット、枕カバーなどの寝具、紙おむつや生理用品などの吸収性物品に必要とされる透湿・防水性を具備する医療・衛生材料、ゴミ袋、堆肥袋、食品用袋、各種工業製品用袋などの包装材料、各種物質を分離するフィルター、セパレーターといった工業材料などに好ましく用いることができる。
発明者らは、前記課題、つまり柔軟性、透湿性、加工性および耐ブリードアウト性に優れた、ポリ乳酸系多孔性フィルムについて鋭意検討した結果、特定の組成、内部構造を有し、かつ、フィルムの空孔率を一定の条件内に納めることにより、かかる課題の解決に初めて成功したものである。
すなわち本発明は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)、及び充填剤(C)を含む多孔性フィルムであり、
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
該分散相の厚さが、200〜3,000nmであり、かつ、
空孔率が10〜80%であることを特徴とする、多孔性フィルム、である。
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
該分散相の厚さが、200〜3,000nmであり、かつ、
空孔率が10〜80%であることを特徴とする、多孔性フィルム、である。
以下、本発明の多孔性フィルムについて説明する。
(ポリ乳酸系樹脂(A))
本発明の多孔性フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)を含むことが重要である。本発明でいうポリ乳酸系樹脂(A)とは、重合体100質量%中において、乳酸ユニットを10質量%以上100質量%以下含有する樹脂を意味する。ポリ乳酸系樹脂(A)中の乳酸ユニットの含有量は、20質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
(ポリ乳酸系樹脂(A))
本発明の多孔性フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)を含むことが重要である。本発明でいうポリ乳酸系樹脂(A)とは、重合体100質量%中において、乳酸ユニットを10質量%以上100質量%以下含有する樹脂を意味する。ポリ乳酸系樹脂(A)中の乳酸ユニットの含有量は、20質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
以下に本発明でいうポリ乳酸系樹脂(A)を、第1の態様のポリ乳酸系樹脂と、第2の態様のポリ乳酸系樹脂に分けて説明する。
本発明でいう第1の態様のポリ乳酸系樹脂とは、重合体100質量%中において、乳酸ユニットを70〜100質量%含有する樹脂のことをいう。乳酸ユニットの質量割合は、重合体100質量%中において、80〜100質量%であることが好ましい。
本発明でいう第1の態様のポリ乳酸系樹脂であるポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸などが好ましく用いられる。本発明では、ポリL−乳酸とポリD−乳酸を総称して、以後、単にポリ乳酸という。本発明でいうポリL−乳酸とは、第1の態様のポリ乳酸系樹脂であって、さらに重合体(ポリ乳酸系樹脂)中の全乳酸ユニット100mol%中において、L−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。一方、本発明でいうポリD−乳酸とは、第1の態様のポリ乳酸系樹脂であって、さらに重合体(ポリ乳酸系樹脂)中の全乳酸ユニット100mol%中において、D−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。
ポリL−乳酸は、D−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリL−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づく。逆にポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は高くなっていく。同様に、ポリD−乳酸は、L−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリD−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づく。逆にポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は高くなっていく。
ポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、ポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合は、組成物の機械強度を維持する観点から全乳酸ユニット100mol%中において80〜100mol%が好ましく、より好ましくは85〜100mol%である。
本発明でいう第1の態様のポリ乳酸系樹脂は、乳酸ユニット以外の他の単量体ユニットを共重合してもよい。他の単量体としては、エチレングリコールなどのグリコール化合物、コハク酸、セバシン酸などのジカルボン酸、グリコール酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトンなどのラクトン類を挙げることができる。上記の他の単量体ユニットの共重合量は、重合体中の単量体ユニット全体100mol%中において、0〜30mol%であることが好ましく、0〜10mol%であることがより好ましい。なお、上記した単量体ユニットの中でも、用途に応じて生分解性を有する成分を選択することが好ましい。
また、ポリ乳酸系樹脂(A)として第1の態様のポリ乳酸系樹脂を用いる場合には、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とを併用して、ステレオコンプレックス結晶を形成させることも好ましい態様である。ステレオコンプレックス結晶は、通常のポリ乳酸の結晶よりも融点が高いため、フィルムの耐熱性を向上させることができる。
本発明でいう第1の態様のポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量、特に第1の態様のポリ乳酸系樹脂がポリ乳酸である場合の質量平均分子量は、実用的な機械特性と、透湿性の向上を両立させるため、100,000〜300,000であることが好ましく、100,000〜200,000であることがより好ましく、100,000〜150,000であることがさらに好ましい。
本発明でいう第1の態様のポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができる。具体的には、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明でいう第2の態様のポリ乳酸系樹脂とは、重合体100質量%中において、乳酸ユニットを10質量%以上70質量%未満含有する樹脂のことをいう。乳酸ユニットの質量割合は、重合体100質量%中において、20〜50質量%であることが好ましく、25〜45質量%であることがより好ましい。
本発明でいう第2の態様のポリ乳酸系樹脂は、ポリエーテルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、ポリエステルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体などが好ましく用いられる。ここで、ポリエステルセグメントとは、ポリ乳酸以外のポリエステルからなるセグメントを意味する。これらの第2の態様のポリ乳酸系樹脂は、少なくとも第1の態様のポリ乳酸系樹脂を可塑化する性能を有している。従って、以下、ポリエーテルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、および、ポリエステルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体を、総称して「ブロック共重合体可塑剤」と記す。これらブロック共重合体可塑剤について以下に説明する。
ブロック共重合体可塑剤に含まれるポリ乳酸セグメントの質量割合は、ブロック共重合体可塑剤全体の50質量%以下であることが、より少量の添加で所望の柔軟性を付与できるため好ましく、20質量%以上であることが、ブリードアウト抑制の点から好ましい。好ましくは、ブロック共重合体可塑剤100質量%中において、乳酸ユニットの質量割合が25〜45質量%であり、ポリエーテルセグメントやポリエステルセグメントの質量割合が55〜75質量%である。
また、ブロック共重合体可塑剤1分子中のポリ乳酸セグメントの数平均分子量は1,200〜10,000であることが好ましい。ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントの数平均分子量が、1,200以上であると、ブロック共重合体可塑剤と、第1の態様のポリ乳酸系樹脂との間に十分な親和性が生じる。また、該ポリ乳酸セグメントの一部は、第1の態様のポリ乳酸系樹脂から形成される結晶中に取り込まれ、いわゆる共晶を形成することで、ブロック共重合体可塑剤を第1の態様のポリ乳酸系樹脂につなぎ止める作用を生じ、ブロック共重合体可塑剤のブリードアウト抑制に大きな効果を発揮する。その結果、フィルムの耐ブロッキング性も優れることになる。また、このブロック共重合体可塑剤を用いた場合、常温で液状の可塑剤や常温で固体状であっても共晶を形成しない可塑剤を用いた場合と比較して、フィルムの透湿性は大きく優れる。これは、形成される共晶が、後述する延伸による空孔形成効率を向上させているためである。ブロック共重合体可塑剤中のポリ乳酸セグメントの数平均分子量は、1,500〜6,000であることがより好ましく、2,000〜5,000であることがさらに好ましい。なお、ブロック共重合体可塑剤の有するポリ乳酸セグメントにおいて、L−乳酸ユニットが95〜100質量%であるか、あるいはD−乳酸ユニットが95〜100質量%であることが、特にブリードアウトが抑制されるため好ましい。
ブロック共重合体可塑剤がポリエーテルセグメントを有する場合は、ポリエーテルセグメントとしてポリアルキレンエーテルからなるセグメントを有することがより好ましい。具体的には、ポリエーテルセグメントとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体などからなるセグメントが挙げられる。特にポリエチレングリコールからなるセグメントは、第1の態様のポリ乳酸系樹脂との親和性が高いために改質効率に優れ、特に少量の可塑剤の添加で所望の柔軟性を付与できるため好ましい。
また、ブロック共重合体可塑剤がポリエーテルセグメントを有する場合、該セグメントの親水性が高いため、フィルムの透湿性が向上する点でも好ましい。
ブロック共重合体可塑剤がポリエステルセグメントを有する場合は、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなどの脂肪族ジオールと、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸よりなるポリエステルなどが、ポリエステルセグメントとして好適に用いられる。
なお、ブロック共重合体可塑剤は、その1分子中に、ポリエーテルセグメントとポリエステルセグメントの両方の成分を含有してもよいし、いずれか一方の成分のみを含有してもよい。可塑剤の生産性やコスト等の理由から、いずれか一方の成分とする場合は、より少量の可塑剤の添加で所望の柔軟性を付与できる観点から、ポリエーテルセグメントを用いる方が好ましい。つまりブロック共重合体可塑剤として好ましい態様は、ポリエーテルセグメントとポリ乳酸セグメントとのブロック共重合体である。
さらにまた、ブロック共重合体可塑剤の1分子中のポリエーテルセグメントやポリエステルセグメントの数平均分子量は、7,000〜20,000であることが好ましい。上記範囲とすることで、多孔性フィルムを構成する組成物に十分な柔軟性を持たせ、なおかつ、フィルムを構成する樹脂組成物の溶融粘度を適度なレベルとし、インフレーション製膜法などの製膜加工性を安定させることができる。
前記ポリエーテルセグメントおよび/またはポリエステルセグメントと、ポリ乳酸セグメントの各セグメントブロックの順序構成に特に制限は無いが、より効果的にブリードアウトを抑制する観点から、少なくとも1ブロックのポリ乳酸セグメントがブロック共重合体可塑剤分子の端にあることが好ましい。ポリ乳酸セグメントのブロックがブロック共重合体可塑剤分子の両端にあることが最も好ましい。
本発明の多孔性フィルムに含まれるポリ乳酸系樹脂(A)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、後述するポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%としたときに、40〜95質量%であることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%中において、ポリ乳酸系樹脂(A)の含有量を40質量%以上とすることで、透湿性、耐熱性が良好となり、ポリ乳酸系樹脂(A)の含有量が95質量%以下とすることで、透湿性、柔軟性が良好となる。ポリ乳酸系樹脂(A)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%中において、45〜90質量%であることがより好ましく、50〜85質量%であることがさらに好ましく、55〜80質量%であることがさらにより好ましく、60〜80質量%であることが特に好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)として、第1の態様のポリ乳酸系樹脂と、第2の態様のポリ乳酸系樹脂、の両方を含有することが好ましい。
また、ポリ乳酸系樹脂(A)が、第1の態様のポリ乳酸系樹脂としてポリ乳酸を含み、さらに第2の態様のポリ乳酸系樹脂として、ポリエーテルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、及び/又は、ポリエステルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体を含むことがより好ましい。
本発明の多孔性フィルムに含まれるポリ乳酸系樹脂(A)において、第1の態様のポリ乳酸系樹脂と、第2の態様のポリ乳酸系樹脂の合計を100質量%とした際、第2の態様のポリ乳酸系樹脂の含有量は、30〜70質量%であることが好ましい。第1の態様のポリ乳酸系樹脂と第2の態様のポリ乳酸系樹脂の合計を100質量%とした際、第2の態様のポリ乳酸系樹脂の含有量を30質量%以上とすることで、透湿性が良好となり、第2の態様のポリ乳酸系樹脂の含有量を70質量%以下とすることで、加工性が良好となる。第2の態様のポリ乳酸系樹脂の含有量は、第1の態様のポリ乳酸系樹脂と第2の態様のポリ乳酸系樹脂の合計を100質量%とした際、35〜65質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましく、45〜55質量%であることが特に好ましい。
また、本発明の多孔性フィルム全体に対するポリ乳酸系樹脂(A)の含有量は、20〜65質量%であることが好ましく、25〜60質量%であることがより好ましく、30〜55質量%であることがさらに好ましく、35〜50質量%であることが特に好ましい。
(ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B))
本発明の多孔性フィルムは、柔軟性と透湿性を向上させるために、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)を含むことが重要である。本発明でいうポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)とは、重合体100質量%中において、乳酸ユニットの含有量が0質量%以上10質量%未満、好ましくは0質量%以上5質量%以下である樹脂のことをいう。
熱可塑性樹脂(B)としては、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体、セルロースエステル、熱可塑性澱粉、樹脂系の可塑剤などが使用できる。
本発明の多孔性フィルムには、前述の熱可塑性樹脂(B)の1種のみを含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)などの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート・アジペート)、などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ノバモント社の生分解性樹脂「マタービー(登録商標)」に代表される澱粉を含むポリエステル系樹脂などが使用できる。
樹脂系の可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤、ポリアルキレンエーテル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、アクリレート系可塑剤などが使用できる。
これらの中でも、柔軟性、透湿性および生分解性を向上する観点から、熱可塑性樹脂(B)は、脂肪族ポリエステル系樹脂、及び/又は、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。中でも、脂肪族ポリエステル系樹脂は、後述する製法にて同じ延伸条件でも、高空隙率の多孔性フィルムが得やすく、結果として透湿度がより高い多孔性フィルムとなるため、熱可塑性樹脂(B)としては脂肪族ポリエステル系樹脂がより好ましい。
本発明の多孔性フィルムに含まれるポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%中において、5〜60質量%であることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%中において、熱可塑性樹脂(B)の含有量を5質量%以上とすることで、透湿性、柔軟性が良好となり、熱可塑性樹脂(B)の含有量を60質量%以下とすることで、透湿性、耐熱性が良好となる。熱可塑性樹脂(B)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量%中において、10〜55質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましく、20〜45質量%であることがさらにより好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
(結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合)
本発明の多孔性フィルムに含有されるポリ乳酸系樹脂(A)のうち、第1の態様のポリ乳酸系樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合物であることが好ましい。混合物とすることにより、結晶性および非晶性、それぞれのポリ乳酸系樹脂の利点を両立できるからである。
なお、結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を100℃の加熱下24時間放置した後に、昇温速度20℃/分の条件で25℃から250℃まで示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する融点が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。一方で非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様の測定を行った際に、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
結晶性ポリ乳酸系樹脂の含有は、フィルムの耐熱性および耐ブロッキング性向上に好適である。また、第2の態様のポリ乳酸系樹脂として前述のブロック共重合体可塑剤を用いる場合、結晶性ポリ乳酸系樹脂はブロック共重合体可塑剤が有するポリ乳酸セグメントと共晶を形成することで、耐ブリードアウト性に大きな効果を発揮する。
一方、非晶性ポリ乳酸系樹脂の含有は、フィルムの柔軟性および耐ブリードアウト性の向上に好適である。これは、フィルムに非晶性ポリ乳酸系樹脂が含有されることにより非晶部分が提供され、そこに可塑剤が分散しやすくなることが影響している。
結晶性ポリ乳酸系樹脂は、耐熱性および耐ブロッキング性向上の観点から、ポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、ポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が全乳酸ユニット100mol%中において96〜100mol%が好ましく、より好ましくは98〜100mol%である。
第1の態様のポリ乳酸系樹脂として、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の混合物を用いる場合、結晶性ポリ乳酸系樹脂と非晶性ポリ乳酸系樹脂の合計を100質量%としたとき、結晶性ポリ乳酸系樹脂の含有量は5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
(充填剤(C))
本発明の多孔性フィルムは、充填剤(C)を含むことが重要である。充填剤(C)としては、無機充填剤および/または有機充填剤が使用できる。
充填剤とは、諸性質を改善するために基材として加えられる物質、あるいは増量、増容、製品のコスト低減などを目的として添加する不活性物質をいう。
無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、アルミナなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;珪酸塩鉱物、ヒドロキシアパタイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、モンモリロナイト、ゼオライト、ゼピオライト等の複合酸化物;リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のリン酸塩;塩化リチウム、フッ化リチウム等の金属塩などを使用することができる。
有機充填剤の例としては、シュウ酸カルシウム等のシュウ酸塩;テレフタル酸カルシウム、テレフタル酸バリウム、テレフタル酸亜鉛、テレフタル酸マンガン、テレフタル酸マグネシウム等のテレフタル酸塩;ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸等のビニル系モノマーの単独または共重合体からなる微粒子;ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子;木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末;籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの;ペーパースラッジ;綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維;絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維などを使用することができる。
これらの充填剤のなかでも、フィルムの透湿性向上や強度、伸度といった機械特性の維持、および低コスト化の観点から、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、クレー、モンモリロナイト、ゼオライトが好ましい。
充填剤の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜10μmが好ましい。平均粒径が0.01μm以上であることで、充填剤をフィルム中に高充填することが可能となり、その結果、フィルムの多孔化および透湿性向上のポテンシャルが高いフィルムとなる。平均粒径が10μm以下であることで、フィルムの延伸性が良好となり、その結果、フィルムの多孔化および透湿性向上のポテンシャルが高いフィルムとなる。平均粒径は、より好ましくは0.1〜8μm、さらに好ましくは0.5〜5μm、最も好ましくは1〜3μmである。なお、ここでいう平均粒径とは、レーザー回折散乱式の方法で測定される累積分布50%平均粒子径とする。
充填剤は、必要に応じて、表面処理することができる。表面処理を行うための表面処理剤としては、脂肪酸、リン酸エステル系化合物、界面活性剤、油脂、ワックス、カルボン酸系カップリング剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、高分子系表面処理剤などを使用することができる。表面処理することにより、マトリックス樹脂との親和性向上、充填剤の凝集抑制および分散性向上に効果があり、多孔性フィルム中に均一に分散させることができるようになる。その結果、良好な透湿度を発現するための延伸などの加工性に優れたフィルムを得ることが可能となる。
また、充填剤(C)の多孔性フィルム中での分散性を向上させるため、さらに脂肪酸などの分散剤を添加することも好ましい。
本発明の多孔性フィルムに含まれる充填剤(C)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量部としたときに、1〜400質量部であることが好ましい。充填剤(C)の含有量を1質量部以上とすることで、透湿性が良好となる。また、充填剤(C)の含有量を400質量部以下とすることで、フィルムの加工性が良好となる。
充填剤(C)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量部としたときに、20〜300質量部であることがより好ましく、30〜200質量部であることがさらに好ましく、40〜150質量部であることがさらにより好ましく、60〜120質量部であることが特に好ましい。
(熱可塑性樹脂(B)の分散構造)
本発明の多孔性フィルムは、フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、該分散相の厚さが、200〜3,000nmであることが重要である。
ここで連続相、分散相とは、いわゆる海島構造の海が連続相、島が分散相である。本発明の多孔性フィルムの場合、分散相がフィルムの長さ方向に長く、連続相、分散相のいずれかの判断が難しい場合がある。その場合は、後述する透過型電子顕微鏡(TEM)での分散構造の確認の際、フィルムの長さ方向に観察範囲をずらしていき、島構造の先端が存在する方が分散相であると判断する。
発明者らは、多孔性フィルムを構成するポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の上記のような分散構造が、多孔性フィルムの透湿性、加工性の向上に有効であることを見出した。以下に該分散構造について説明する。
本発明の多孔性フィルムは、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が分散した構造を有する。このような構造にするための方法は、例えば、ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の含有量を前述した好ましい範囲とすることや、原料として用いるポリ乳酸系樹脂(A)と原料として用いる熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度の関係を後述する好ましい範囲とすることが挙げられる。
ここで、熱可塑性樹脂(B)の分散相とは、該分散相中の全成分において熱可塑性樹脂(B)が質量的に最も大きい成分であることを意味する。そのため、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相には、熱可塑性樹脂(B)以外の成分、例えば、充填剤(C)、各種の添加剤など、熱可塑性樹脂(B)以外の各成分を含んでもよい。
同様に、ポリ乳酸系樹脂(A)の連続相とは、該連続相中の全成分においてポリ乳酸系樹脂(A)が質量的に最も大きい成分であることを意味する。そのため、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相には、ポリ乳酸系樹脂(A)以外の成分、例えば、充填剤(C)、各種の添加剤など、熱可塑性樹脂(B)以外の各成分を含んでもよい。
本発明の多孔性フィルムは、前記した熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有する。ここで、「楕円状」、「層状」とは、後述する、透過型電子顕微鏡での観察時に、フィルムの厚さ方向全体が見える倍率で観察した際、長さ方向の両側の端部が観察される場合を「楕円状」、長さ方向の少なくとも片方の端部が観察されない場合を「層状」とする。
また、本発明の多孔性フィルムは、前記した熱可塑性樹脂(B)からなる分散相の厚さが、200〜3,000nmである。該分散相の厚さが、200nm未満の場合、透湿性が不足し、3,000nmを超える場合、加工性が不足することがある。このような分散相の厚さとするための方法は、例えば、多孔性フィルムをTダイキャスト法により製造し、その口金のリップ間隔を後述する好ましい範囲とし、また、リップとドラム間距離を後述する好ましい範囲とする方法、ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度の関係を後述する好ましい範囲とする方法、フィルムの延伸倍率を後述する好ましい範囲とする方法などが挙げられる。該分散相の厚さは、400〜2,800nmであることが好ましく、600〜2,600nmであることがより好ましく、800〜2,600nmであることがさらに好ましい。
(空孔率)
本発明の多孔性フィルムは、空孔率が10〜80%であることが重要である。空孔率が10%未満であると、透湿性が不足し、空孔率が80%を超えると、フィルムの加工性が不足する。空孔率は、好ましくは20〜75%、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜70%、特に好ましくは50〜70%である。
空孔率を10〜80%とするための達成手段は、ポリ乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂樹脂(B)、充填剤(C)をそれぞれ前述した好ましい配合量とする方法、原料として用いるポリ乳酸系樹脂(A)と原料として用いる熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度の関係を後述する好ましい範囲とする方法、後述する好ましい延伸倍率で多孔性フィルムを製造する方法が挙げられる。
(引張伸度)
本発明の多孔性フィルムは、長さ方向および幅方向(長さ方向と垂直な方向)の引張伸度(以下、単に伸度と記す場合がある)が、いずれも100〜300%であることが好ましい。伸度が100%以上であると加工性が良好となり、伸度が300%以下であると製膜時にロール間走行時や巻き取り時のタルミやシワが生じにくく、ロール巻姿や巻出し性が良好となる。長さ方向および幅方向の伸度は、150〜300%がより好ましく、200〜300%がさらに好ましい。
長さ方向および幅方向の伸度をいずれも100〜300%とするための方法としては、ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂樹脂(B)の配合比を前述した好ましい範囲とする方法、フィルム製造時の延伸倍率を後述する好ましい範囲とする方法が挙げられる。
(ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度の関係)
本発明の多孔性フィルムは、温度200℃、剪断速度100sec-1における、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度をηA、熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度をηBとしたとき、粘度比(ηA/ηB)が0.4〜0.8であることが好ましい。なお、ここでいうポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度とは、フィルムを製造するための原料として用いるポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度を意味し、熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度とは、フィルムを製造するための原料として用いる熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度を意味する。粘度比(ηA/ηB)は、0.4〜0.75がより好ましく、0.4〜0.65がさらに好ましく、0.4〜0.55が特に好ましい。
ここで、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηAは、直接測定によって求められる場合は測定で得られる値とする。一方で直接測定できないときは、ポリ乳酸系樹脂(A)が第1の態様のポリ乳酸系樹脂と、第2の態様のポリ乳酸系樹脂、の両方を含有する場合は、それらの個別の溶融粘度を加重平均した値とする(1の位を四捨五入)。また、直接測定できないときであって、ポリ乳酸系樹脂(A)として複数の樹脂を含有する場合も、それらの個別の溶融粘度を加重平均した値とする(1の位を四捨五入)。
ここでいう加重平均とは、樹脂の質量基準の含有割合を考慮した平均という意味である。例えば、質量w1、溶融粘度η1の樹脂1と、質量w2、溶融粘度η2の樹脂2を含有する場合、その溶融粘度は、(η1w1+η2w2)/(w1+w2)と表される。
同様に、熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度ηBは、直接測定によって求められる場合は測定で得られる値とする。一方で直接測定できないときであって、熱可塑性樹脂(B)として複数の樹脂を含有する場合も、それらの個別の溶融粘度を加重平均した値とする。
ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηAの好ましい範囲は、500〜1,000Pa・sであり、より好ましくは、500〜900Pa・s、さらに好ましくは、500〜800Pa・sである。
熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度ηBの好ましい範囲は、800〜1,400Pa・sであり、より好ましくは、900〜1,300Pa・s、さらに好ましくは、1,000〜1,200Pa・sである。
(引張弾性率)
本発明の多孔性フィルムは、十分な柔軟性を付与するために、長さ方向および幅方向それぞれの引張弾性率が100〜1,500MPaであることが好ましい。引張弾性率は、200〜1,200MPaであることがより好ましく、300〜1,000MPaであることがさらに好ましく、400〜800MPaであることが特に好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、十分な柔軟性を付与するために、長さ方向および幅方向それぞれの引張弾性率が100〜1,500MPaであることが好ましい。引張弾性率は、200〜1,200MPaであることがより好ましく、300〜1,000MPaであることがさらに好ましく、400〜800MPaであることが特に好ましい。
長さ方向および幅方向それぞれの引張弾性率を100〜1,500MPaとするための方法としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂および充填剤の配合量を、それぞれ前述した好ましい範囲とする方法が挙げられる。
(厚み)
本発明の多孔性フィルムは、フィルム厚みが5〜200μmであることが好ましい。フィルム厚みを5μm以上とすることで、フィルムとした際のコシが強くなり、取り扱い性に優れ、また、ロール巻姿や巻出し性が良好となる。フィルム厚みを200μm以下とすることで柔軟性および透湿性に優れるものとなる。フィルム厚みは、7〜150μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、12〜50μmがさらにより好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、フィルム厚みが5〜200μmであることが好ましい。フィルム厚みを5μm以上とすることで、フィルムとした際のコシが強くなり、取り扱い性に優れ、また、ロール巻姿や巻出し性が良好となる。フィルム厚みを200μm以下とすることで柔軟性および透湿性に優れるものとなる。フィルム厚みは、7〜150μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、12〜50μmがさらにより好ましい。
(添加剤)
本発明の多孔性フィルムを構成する組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で前述した以外の添加剤を含有してもよい。例えば、公知の可塑剤、有機滑剤、酸化防止剤、結晶核剤、末端封鎖剤、鎖延長剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、抗酸化剤、イオン交換剤、粘着性付与剤、消泡剤、着色顔料、染料などが使用できる。
本発明の多孔性フィルムを構成する組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で前述した以外の添加剤を含有してもよい。例えば、公知の可塑剤、有機滑剤、酸化防止剤、結晶核剤、末端封鎖剤、鎖延長剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、抗酸化剤、イオン交換剤、粘着性付与剤、消泡剤、着色顔料、染料などが使用できる。
(製造方法)
次に、本発明の多孔性フィルムを製造する方法について具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
次に、本発明の多孔性フィルムを製造する方法について具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂(A)のうち、第1の態様のポリ乳酸系樹脂は、例えば、L−乳酸及び/又はD−乳酸を直接脱水縮合する方法、またはラクチドを開環重合する方法によって得ることができる。直接脱水縮合により製造する場合、有機溶媒、特に好ましくはフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。また、開環重合により製造する場合、オクチル酸錫等の触媒を用い重合することによって高分子量のポリマーが得られる。
本発明の多孔性フィルムを構成する組成物、つまり、ポリ乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、充填剤(C)、および必要に応じてその他の添加剤を含有する組成物を得るにあたっては、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する方法が、溶媒への原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要であるので好ましい。溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の公知の混合機を用いることができる。中でも生産性、充填剤(C)の樹脂中への分散性の観点から、二軸押出機の使用が好ましい。水分や低分子量物などの揮発物を除去できる観点から、ベント孔付きの二軸押出機の使用がより好ましい。
溶融混練時の温度は150℃〜240℃の範囲が好ましく、ポリ乳酸系樹脂の劣化を防ぐ意味から、180℃〜200℃の範囲がより好ましい。
前述した方法により得られた組成物を一旦ペレット化し、再度溶融混練して押出・製膜する際には、ペレットを60〜100℃にて6時間以上乾燥するなどして、水分量を200ppm以下とした組成物を用いることが好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、例えば上記した方法により得られた組成物を用いて、公知のインフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスト法などの既存のフィルムの製造法により得ることができるが、熱可塑性樹脂(B)の分散相の厚さを本願で規定する範囲とするためには、Tダイキャスト法が好ましい。
本発明の多孔性フィルムをTダイキャスト法により製造する場合は、例えば次のような方法が用いられる。前述のような方法により製造、乾燥した組成物を単軸押出機にて溶融押出して、ある一定のリップ間隔を有するスリット状の口金から吐出し、ある一定のリップ−ドラム間距離にて、0〜40℃の表面温度に設定した金属製冷却キャスティングドラム上に、直径0.5mmのワイヤー状電極を用いて静電印加して密着させ、無配向キャストフィルムを得る。
ここで、熱可塑性樹脂(B)の分散相の厚さを本願で規定する範囲とするためには、上記リップ間隔と、上記リップ−ドラム間距離が重要である。リップ間隔が小さいほど熱可塑性樹脂(B)の分散相は厚くなり、リップ間隔が大きいほど熱可塑性樹脂(B)の分散相は薄くなる。また、リップとドラム間距離が小さいほど熱可塑性樹脂(B)の分散相は厚くなり、リップとドラム間距離が大きいほど熱可塑性樹脂(B)の分散相は薄くなる。リップ間隔は0.05〜0.45mmであることが好ましく、0.10〜0.40mmであることがより好ましい。リップ−ドラム間距離は5〜20mmであることが好ましく、10〜15mmであることがより好ましい。
こうして得られた無配向フィルムを加熱ロール上で搬送することによって縦延伸を行う温度まで昇温する。昇温には赤外線ヒーターなど補助的な加熱手段を併用しても良い。延伸温度の好ましい範囲は40〜80℃であり、より好ましくは45〜75℃、さらに好ましくは50〜70℃である。このようにして昇温した無配向フィルムを、加熱ロール間の周速差を用いてフィルム長手方向に1段、もしくは2段以上の多段で延伸を行う。合計の延伸倍率は1.5〜3.5倍が好ましく、より好ましくは2〜3倍である。
このように一軸延伸したフィルムをいったん冷却した後、フィルムの両端部をクリップで把持してテンターに導き、幅方向の延伸を行う。延伸温度は45〜85℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃、さらに好ましくは55〜75℃である。延伸倍率は1.5〜3.5倍が好ましく、より好ましくは2〜3倍である。また、必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
延伸は縦、あるいは横のみの一軸延伸でも構わないし、縦・横の二軸延伸でも構わないが、フィルムの面積延伸倍率は3〜8倍が好ましく、4〜7倍がより好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱処理温度は60〜120℃であり、より好ましくは70〜110℃、さらに好ましくは80〜100℃である。フィルムの熱収縮率を低下させたい場合は、熱処理温度を高温にするとよい。熱処理時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。弛緩率は、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から1〜10%であることが好ましく、より好ましくは3〜5%である。熱固定処理を行う前にいったんフィルムを冷却することがさらに好ましい。さらに、フィルムを室温まで、必要に応じ長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする多孔性フィルムを得ることができる。
フィルムに成形した後に、印刷性、ラミネート適性、コーティング適性などを向上させる目的で各種の表面処理を施しても良い。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)分散相の厚さ(nm)
フィルムにルテニウム酸で染色処理を施し、エポキシ樹脂に包埋した後、ウルトラミクロトームを用いてフィルムの長さ方向に平行かつフィルム面に垂直な方向に切断し、超薄切片を作製した。切断面を、透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製H-7100型)を用いて、加速電圧100kVの条件下で、まずフィルムの厚さ方向全体が見える倍率で観察し、フィルムの厚さ方向に等間隔に3等分した際、3等分した各領域について厚さ方向の中央部分について、5万倍の倍率で写真を撮影した。写真では、染色された分散相、染色されない連続相、空孔、充填剤等が観察される。
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)分散相の厚さ(nm)
フィルムにルテニウム酸で染色処理を施し、エポキシ樹脂に包埋した後、ウルトラミクロトームを用いてフィルムの長さ方向に平行かつフィルム面に垂直な方向に切断し、超薄切片を作製した。切断面を、透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製H-7100型)を用いて、加速電圧100kVの条件下で、まずフィルムの厚さ方向全体が見える倍率で観察し、フィルムの厚さ方向に等間隔に3等分した際、3等分した各領域について厚さ方向の中央部分について、5万倍の倍率で写真を撮影した。写真では、染色された分散相、染色されない連続相、空孔、充填剤等が観察される。
撮影した写真をフィルムの長さ方向を縦にして、15cm×15cmの正方形に切り出し、縦の長さの中央部分を横切る線を引く(すなわち、正方形を上下に等面積に分割する線を引く)。そして該線上で分散相の厚さを測定した。すなわち、該線と、フィルムの長さ方向に長い楕円状またはフィルムの長さ方向に長い層状に分散した相の界面部分との交点から、分散相の厚さを0.1mm単位で測定した。なお、正方形の左端や右端に存在する結果、該線分上で分散相の厚さ方向の全体が正方形の中には収まっていない(存在しない)分散相については、厚さを求めなかった。同様にして残り2領域についても分散相の厚さ測定を行い、測定した全ての分散相の厚さの平均値を算出後、実測1mmを20nmに換算して、分散相の厚さ(小数点第1位を四捨五入)とした。
(2)空孔率(%)
フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの比重ρとした。
次に、測定したフィルムを、220℃、5MPaで熱プレスを行い、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作成した。このとき、必要に応じ、フィルムを数枚重ねて熱プレスしてシートを作成した。このシートの比重を上記した方法で同様に測定し、平均値を樹脂の比重(d)とした。フィルムの比重と樹脂の比重から、以下の式
空孔率(%)=〔(d−ρ)/d〕×100
により空孔率を算出した。
(3)引張伸度(%)
オリエンテック社製TENSILON(登録商標) UCT−100を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて、引張伸度を測定した。具体的には、測定方向に長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K−7127(1999)に規定された方法にしたがって、長さ方向、幅方向それぞれについて10回の測定を行い、その平均値を引張伸度とした。
(4)質量平均分子量Mw、数平均分子量Mn
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにWATERS社MODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodexGPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(5)溶融粘度(Pa・s)
(株)島津製作所製フローテスターCFT-500A(ダイ径1mm、ダイ長10mm、プランジャ断面積1cm2)を用いて、温度200℃、予熱3分で測定、剪断速度100sec-1の溶融粘度の値(Pa・s)(1の位を四捨五入)を採用した。
空孔率(%)=〔(d−ρ)/d〕×100
により空孔率を算出した。
(3)引張伸度(%)
オリエンテック社製TENSILON(登録商標) UCT−100を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて、引張伸度を測定した。具体的には、測定方向に長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K−7127(1999)に規定された方法にしたがって、長さ方向、幅方向それぞれについて10回の測定を行い、その平均値を引張伸度とした。
(4)質量平均分子量Mw、数平均分子量Mn
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにWATERS社MODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodexGPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(5)溶融粘度(Pa・s)
(株)島津製作所製フローテスターCFT-500A(ダイ径1mm、ダイ長10mm、プランジャ断面積1cm2)を用いて、温度200℃、予熱3分で測定、剪断速度100sec-1の溶融粘度の値(Pa・s)(1の位を四捨五入)を採用した。
また前述の通り、ポリ乳酸系樹脂(A)として複数の樹脂を含有する場合は、それらの個別の溶融粘度を加重平均した値をポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηAとした(1の位を四捨五入)。同様に、熱可塑性樹脂(B)として複数の樹脂を含有する場合は、それらの個別の溶融粘度を加重平均した値を熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度ηBとした(1の位を四捨五入)。
(6)引張弾性率(MPa)
オリエンテック社製TENSILON(登録商標) UCT−100を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて、引張弾性率を測定した。具体的には、測定方向に長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K−7127(1999)に規定された方法にしたがって、長さ方向、幅方向それぞれについて10回の測定を行い、その平均値を引張弾性率とした。
(7)透湿性
25℃、90%RHに設定した恒温恒湿装置にて、JIS Z0208(1976)に規定された方法に従って透湿度(g/(m2・day))を測定した。その透湿度の値を用いて、以下の基準にて評価した。
A:2000g/(m2・day)以上
B:1750g/(m2・day)以上2000g/(m2・day)未満
C:1500g/(m2・day)以上1750g/(m2・day)未満
D:1500g/(m2・day)未満。
(8)加工性
(3)で測定した長さ方向、幅方向の引張伸度のうち、小さい方の値を用いて、以下の基準にて評価した。
A:200%以上
B:150%以上200%未満
C:100%以上150%未満
D:100%未満。
(9)耐ブリードアウト性
次の通り、フィルムサンプルの熱水処理後の質量減少率(%)を求めることで、耐ブリードアウト性の指標とした。質量減少率が小さいほど、耐ブリードアウト性が良好となる。
あらかじめ、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1日以上調湿した約0.5gのフィルムサンプルについて処理前の質量(g)(小数点以下第3位まで)を測定した。次に、該サンプルを90℃の蒸留水中で30分間処理した後に再度処理前と同様の条件で調湿してから質量(g)(小数点以下第3位まで)を測定した。そして、処理前のサンプルの質量に対する処理後のサンプルの質量減少の割合を求めることで、質量減少率を算出した。
以下に、実施例で使用した材料について説明する。
[第1の態様のポリ乳酸系樹脂(A)]
(A1)
結晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=200,000、D体含有量=1.4mol%、融点=166℃、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,400Pa・s
(A2)
非晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=200,000、D体含有量=12.0mol%、融点=無し、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,300Pa・s
(A3)
結晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=110,000、D体含有量=1.4mol%、融点=166℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度800Pa・s
(A4)
非晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=140,000、D体含有量=9.5mol%、融点=130℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,000Pa・s
また、上記の融点は、ポリ乳酸樹脂を100℃の熱風オーブン中で24時間加熱させた後に、セイコーインスツル社製示差走査熱量計RDC220を用い、試料5mgをアルミニウム製受皿にセットし、25℃から昇温速度20℃/分で250℃まで昇温した際の結晶融解ピークのピーク温度として求めた。
(A1)
結晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=200,000、D体含有量=1.4mol%、融点=166℃、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,400Pa・s
(A2)
非晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=200,000、D体含有量=12.0mol%、融点=無し、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,300Pa・s
(A3)
結晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=110,000、D体含有量=1.4mol%、融点=166℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度800Pa・s
(A4)
非晶性ポリL−乳酸樹脂、質量平均分子量=140,000、D体含有量=9.5mol%、融点=130℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,000Pa・s
また、上記の融点は、ポリ乳酸樹脂を100℃の熱風オーブン中で24時間加熱させた後に、セイコーインスツル社製示差走査熱量計RDC220を用い、試料5mgをアルミニウム製受皿にセットし、25℃から昇温速度20℃/分で250℃まで昇温した際の結晶融解ピークのピーク温度として求めた。
[第2の態様のポリ乳酸系樹脂(A)]
(A5)
数平均分子量Mn8,000のポリエチレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.05質量部を混合し、撹拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気下160℃で3時間重合することで、数平均分子量Mn8,000のポリエチレングリコールの両末端に数平均分子量Mn2,500のポリ乳酸セグメントを有するポリ乳酸系樹脂A5を得た。剪断速度100sec-1における溶融粘度60Pa・s。
(A5)
数平均分子量Mn8,000のポリエチレングリコール62質量部とL−ラクチド38質量部とオクチル酸スズ0.05質量部を混合し、撹拌装置付きの反応容器中で、窒素雰囲気下160℃で3時間重合することで、数平均分子量Mn8,000のポリエチレングリコールの両末端に数平均分子量Mn2,500のポリ乳酸セグメントを有するポリ乳酸系樹脂A5を得た。剪断速度100sec-1における溶融粘度60Pa・s。
[熱可塑性樹脂(B)]
(B1)
ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(BASF社製、商品名“エコフレックス”FBX7011)、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,200Pa・s。
(B1)
ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(BASF社製、商品名“エコフレックス”FBX7011)、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,200Pa・s。
(B2)
ポリブチレンサクシネート系樹脂(三菱化学社製、商品名“GSPla(登録商標)”AZ91T)、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,050Pa・s。
ポリブチレンサクシネート系樹脂(三菱化学社製、商品名“GSPla(登録商標)”AZ91T)、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度1,050Pa・s。
[可塑剤(P)]
(P−1)
アセチルクエン酸トリブチル、ファイザー社製、商品名“シトロフレックスA−4”)。
(P−1)
アセチルクエン酸トリブチル、ファイザー社製、商品名“シトロフレックスA−4”)。
[充填剤(C)]
(C1)
炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名“カルテックスR”、平均粒子径:2.8μm、表面処理剤:ステアリン酸を主成分とする脂肪酸、表面処理剤の割合:3質量%以下)
[多孔性フィルムの作成]
(実施例1)
ポリ乳酸樹脂(A1)10質量部、ポリ乳酸樹脂(A2)30質量部、ポリ乳酸樹脂(A5)40質量部、ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(B1)20質量部、および充填剤(C1)70質量部の混合物をシリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度60℃で12時間真空乾燥した。
(C1)
炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名“カルテックスR”、平均粒子径:2.8μm、表面処理剤:ステアリン酸を主成分とする脂肪酸、表面処理剤の割合:3質量%以下)
[多孔性フィルムの作成]
(実施例1)
ポリ乳酸樹脂(A1)10質量部、ポリ乳酸樹脂(A2)30質量部、ポリ乳酸樹脂(A5)40質量部、ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(B1)20質量部、および充填剤(C1)70質量部の混合物をシリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度60℃で12時間真空乾燥した。
乾燥されたペレットをシリンダー温度190℃の単軸押出機に供給し、リップ間隔0.3mm、温度190℃に設定したTダイからフィルム状に押し出し、20℃に冷却したドラム上に、リップ−ドラム間距離15mmにてキャストして無配向フィルムを作製した。この無配向フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度70℃で3.5倍延伸した。この一軸配向フィルムをいったん冷却ロール上で冷却した後、両端をクリップで把持してテンター内に導き、幅方向に温度70℃で3.5倍延伸した。続いて定長下、温度80℃で5秒間熱処理後、幅方向に5%の弛緩処理を施し、厚さ20μmの多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
(実施例2〜10、比較例3)
フィルムの組成と製造条件を表1、2のように変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、2に示した。
フィルムの組成と製造条件を表1、2のように変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、2に示した。
(比較例1)
ポリ乳酸樹脂(A1)15質量部、ポリ乳酸樹脂(A2)45質量部、ポリ乳酸樹脂(A5)20質量部、ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(B1)20質量部、および充填剤(C1)5質量部の混合物をシリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度60℃で12時間真空乾燥した。
ポリ乳酸樹脂(A1)15質量部、ポリ乳酸樹脂(A2)45質量部、ポリ乳酸樹脂(A5)20質量部、ポリブチレンアジペート・テレフタレート樹脂(B1)20質量部、および充填剤(C1)5質量部の混合物をシリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付き2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度60℃で12時間真空乾燥した。
乾燥されたペレットをシリンダー温度190℃の単軸押出機に供給し、リップ間隔1.0mm、温度190℃に設定したTダイからフィルム状に押し出し、20℃に冷却したドラム上に、リップ−ドラム間距離50mmにてキャストして無配向フィルムを作製した。この無配向フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度70℃で3倍延伸した。この一軸配向フィルムをいったん冷却ロール上で冷却した後、両端をクリップで把持してテンター内に導き、幅方向に温度70℃で3倍延伸した。続いて定長下、温度120℃で10秒間熱処理後、幅方向に5%の弛緩処理を施し、厚さ20μmの多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表2に示した。
(比較例2、4〜6)
フィルムの組成と製造条件を表2のように変更した以外は、比較例1と同様にして厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表2に示した。
フィルムの組成と製造条件を表2のように変更した以外は、比較例1と同様にして厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表2に示した。
表中、ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の「質量%」とは、(A)と(B)の合計100質量%中における値であり、充填剤(C)の「質量部」とは、(A)+(B)=100質量部とした際の値である。
本発明の多孔性フィルムは、柔軟性、透湿性、加工性に優れ、かつ耐ブリードアウト性に優れた、主にポリ乳酸系樹脂からなる多孔性フィルムである。本発明の多孔性フィルムは、スポーツウェア、雨天用衣類、手袋などに必要とされる透湿・防水性、防護服などに必要とされる透湿・防塵性を具備する衣料材料、ベッド用シーツ、マット、枕カバーなどの寝具、紙おむつや生理用品などの吸収性物品に必要とされる透湿・防水性を具備する医療・衛生材料、ゴミ袋、堆肥袋、食品用袋、各種工業製品用袋などの包装材料、各種物質を分離するフィルター、セパレーターといった工業材料などに好ましく用いることができる。
Claims (7)
- ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(B)、及び充填剤(C)を含む多孔性フィルムであり、
フィルムの長さ方向と厚さ方向の断面において、ポリ乳酸系樹脂(A)からなる連続相に、熱可塑性樹脂(B)からなる分散相が、フィルムの長さ方向に長い楕円状または層状に分散した構造を有し、
該分散相の厚さが、200〜3,000nmであり、かつ、
空孔率が10〜80%であることを特徴とする、多孔性フィルム。 - 引張伸度が100〜300%であることを特徴とする、請求項1に記載の多孔性フィルム。
- ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%としたときに、ポリ乳酸系樹脂(A)が40〜95質量%、熱可塑性樹脂(B)が5〜60質量%であり、
ポリ乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量部としたとき、充填剤(C)を1〜400質量部含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多孔性フィルム。 - ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸を含有し、
該ポリ乳酸の質量平均分子量が、100,000〜150,000であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性フィルム。 - 温度200℃、剪断速度100sec-1における、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度をηA、熱可塑性樹脂(B)の溶融粘度をηBとしたとき、粘度比(ηA/ηB)が0.4〜0.8であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルム。
- ポリ乳酸系樹脂(A)が、ポリ乳酸を含み、
さらにポリ乳酸系樹脂(A)が、ポリエーテルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体、及び/又は、ポリエステルセグメントとポリ乳酸セグメントとを有するブロック共重合体を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性フィルム。 - 熱可塑性樹脂(B)が、脂肪族ポリエステル系樹脂、及び/又は、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の多孔性フィルム。
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JP2014137447A JP2015038193A (ja) | 2013-07-19 | 2014-07-03 | 多孔性フィルム |
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- 2014-07-03 JP JP2014137447A patent/JP2015038193A/ja active Pending
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