JP2013155087A - 固体電解質ガラス及びそれを用いたリチウムイオン電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】水分接触による硫化水素ガスの発生を抑制した固体電解質を提供する。
【解決手段】リチウム元素(Li)と硫黄元素(S)を含むガラスであって、このガラスが硫化リチウムを含み、X線回折分析による硫化リチウムの残存率が30%以下であるガラス。従来、固体電解質中に原料である硫化リチウムを残存させないように、反応時間(処理時間)を長くする必要があったが、本発明のガラスは、硫化リチウムが残存していても必ずしも硫化水素ガスの発生源とならないため、反応時間を短縮させた製法を採用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体電解質であるガラス、ガラスセラミック、及びそれを用いた正極、リチウムイオン電池に関する。
近年、安全性が高く、高容量のリチウムイオン電池の開発が活発になされている。
現在実用化されているリチウムイオン電池は、電解質が液体であるため、安全性が低いという欠点がある。そのため、無機固体電解質が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
固体電解質のなかでも、硫化物系固体電解質は高いイオン伝導性を有していることから、積極的に研究されている。硫化物系の固体電解質の課題の1つとして、水分接触により硫化水素ガスが発生することが挙げられる。そのため、安全面での対応が求められている。
硫化水素ガスの発生を抑制するために、特許文献2には、架橋硫黄及び硫化リチウムを含有しない硫化物系固体電解質が開示されている。しかしながら、この硫化物系固体電解質の材料は硫化リチウムであることから、原料を完全に反応させる必要がある。そのため、長時間のメカニカルミリング処理が必要であるため、製造費用が非常に高かった。
特開平11−134937号公報 特開2010−199033号公報
本発明の目的は、水分接触による硫化水素ガスの発生を抑制した固体電解質(ガラス又はガラスセラミック)を提供することである。
本発明者らは、固体電解質中に硫化リチウムが存在していても、必ずしも硫化水素ガスの発生源とならない場合があることを見出した。
従来、固体電解質中に原料である硫化リチウムを残存させないように、反応時間(処理時間)を長くする必要があったが、本発明では、硫化リチウムが残存していてもよいため、反応時間を短縮させた製法を採用することができる。
本発明によれば、以下のガラス等が提供される。
1.リチウム元素(Li)と硫黄元素(S)を含むガラスであって、
前記ガラスが硫化リチウムを含み、X線回折分析による前記硫化リチウムの残存率が30%以下であるガラス。
2.リチウム元素(Li)、リン元素(P)及び硫黄元素(S)を含むガラスであって、前記ガラスのラマンスペクトルを5回以上測定し、該ラマンスペクトルにおける330〜450cm−1のピークを波形分離し、各成分に分離した面積比の標準偏差が、いずれも3.0以下であり、前記波形分離して得られるPS 3−成分のピークの面積が、全体の10〜95%であり、同P 4−成分のピークの面積が、全体の5〜45%であり、前記PS 3−成分のピークの面積が、前記P 4−成分のピークの面積よりも広く、前記ガラスが溶媒を含み、該溶媒の残存量が5質量%以下であり、イオン伝導度が1.0×10−4S/cm以上であるガラス。
3.150℃で2時間の加熱乾燥処理後に溶媒を含み、該溶媒の残存量が5質量%以下である1に記載のガラス。
4.平均粒径が20μm以下であり、かつ、粒径が50μm以上である粒子の含有率が3質量%以下である1〜3のいずれかに記載のガラス。
5.原料を有機溶媒中で反応させて得られる1〜4のいずれかに記載のガラス。
6.前記原料が微粒化した硫化リチウムを含む5に記載のガラス。
7.前記微粒化した硫化リチウムの表面積が1m/g以上である6に記載のガラス。
8.上記1〜7のいずれかに記載のガラスを加熱処理して得られるガラスセラミック。
9.上記1〜7のいずれかに記載のガラス及び8に記載のガラスセラミックの少なくとも一方を含む正極。
10.上記1〜7のいずれかに記載のガラス及び8に記載のガラスセラミックの少なくとも一方を含む層を備えるリチウムイオン電池。
本発明によれば、水分接触による硫化水素ガスの発生を抑制した硫化物系固体電解質を提供することができる。
本発明の固体電解質は、溶媒を使用したスラリー法による製造方法により製造できるため、メカニカルミリング法のようなエネルギー消費の大きい製法を採用する必要がない。そのため、固体電解質の製造費用を低減することができる。
ラマンスペクトルの例である。 波形分離ソフトを用いて、ラマンスペクトルを各ピークに分離した例である。 本発明のガラスの製造装置の一実施形態を示す図である。 本発明のガラスの製造装置の他の実施形態を示す図である。 実施例1で製造した固体電解質ガラスの粒径分布である。 比較例1で製造した固体電解質ガラスのX線回折スペクトルである。
1.本発明のガラスの第一の態様
本発明のガラスの第一の態様は、リチウム元素(Li)と硫黄元素(S)を含むガラス(固体電解質)である。そして、ガラスが硫化リチウムを含み、XRDの分析による硫化リチウムの残存率が30%以下である。硫化リチウムの残存率が30%を超えると、硫化水素発生量が多くなる。また、リチウムイオン伝導度が低下する。
硫化リチウムの残存率は、15%以下が好ましい。硫化リチウムの残存率は硫化水素の発生量を抑えるということから考えると小さいほど好ましいが、製造時間を考えると0.1%以上が好ましく、より好ましくは、1%以上である。さらに好ましくは2%以上である。
硫化リチウムの残存率は、ガラスのX線回折(XRD)スペクトルから相対的に定量することにより求める。具体的に、例えば、原料として硫化リチウム及び硫化リンを使用した場合、反応前の硫化リチウム−硫化リン混合物は、2θ=27°付近のピーク強度が最も強い。反応させることで、このピーク強度は低下する。本願では、ベースライン補正を行い、ピーク高さの比から残存率を決定する。
尚、XRDスペクトルの強度は、測定機器や、測定する際の条件等によって変動するため、反応前の硫化リチウム−硫化リン混合物(標準試料)は、毎回測定することが必要である。
また、ガラスは水分の影響を受けやすいため、測定試料は不活性ガス下で密閉して準備することが必要である。
本態様のガラスにおいては、150℃で2時間の加熱乾燥処理後に溶媒を含み、該溶媒の残存量が5質量%以下であることが好ましい。ここで、該溶媒の残存量は少ない方が好ましいが、加熱乾燥温度を低くするため、また加熱乾燥時間を短くする観点から、残存量の下限は0.2質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよく、さらに1質量%以上でもよい。
充分に加熱乾燥してもガラスが溶媒を含む場合は、ガラスの製造時に溶媒を使用したことを意味するものである。製造時に溶媒を使用した場合、乾燥工程を経ても溶媒が若干残存する。逆に、充分に加熱乾燥したガラスが溶媒を検出しない場合、ガラスは無溶媒の製法により得られたものと推定できる。具体的には、溶媒を除去後に、さらに真空下、150℃で2時間乾燥させた場合にもガラスに溶媒が残る。無溶媒の製法により製造したガラスに溶媒を添加したり、該ガラスを溶媒中に浸漬したり、混合したりしても、上記のように加熱乾燥すると溶媒が全て飛び溶媒が検出されない。
溶媒量は、ガラスをメタノールに溶解し、均一溶液にした後、ガスクロマトグラフィーで定量する。
2.本発明のガラスの第二の態様
本発明のガラスの第二の態様は、リチウム元素(Li)、リン元素(P)及び硫黄元素(S)を含むガラスである。そして、ガラスのラマンスペクトルを5回以上測定し、該ラマンスペクトルにおける330〜450cm−1のピークを波形分離し、各成分に分離した面積比の標準偏差が、いずれも3.0以下である。また、波形分離して得られるPS 3−成分のピークの面積が、全体の10〜95%であり、同P 4−成分のピークの面積が、全体の5〜45%であり、PS 3−成分のピークの面積が、P 4−成分のピークの面積よりも広い。
さらに、ガラスが溶媒を含み、該溶媒の残存量が5質量%以下であり、イオン伝導度が1.0×10−4S/cm以上である。
本態様のガラスは、一試料につき5回以上ラマンスペクトル測定し、ラマンスペクトルにおける330〜450cm−1のピークを波形分離し、各成分に分離した面積比の標準偏差が、いずれも3.0以下であり、波形分離して得られるPS 3−成分のピークの面積が、全体の10〜95%であり、同P 4−成分のピークの面積が、全体の5〜45%であり、PS 3−成分のピークの面積が、前記P 4−成分のピークの面積よりも広いことを特徴とする。
ラマンスペクトルは、固体、粉体等の状態を把握するために用いられ、スペクトルの特性を把握することで、固体材料の性質を規定するための数値として用いられている(特開2005−336000,特開平10−326611,特開2001−19450参照)。
また、ラマンスペクトルは、固体の表面状態の解析に適している。同じロットの粒子を測定しても、粒子表面の組成が不均質であれば、異なったスペクトルが得られる。
例えば、固体材料をメカニカルミリングした場合において、充分に粉砕された部分と、壁部に付着して粉砕が不充分な部分が混在すると、粒子の均質性が低下するため、スペクトルが変化する。その結果、繰り返し測定した場合、スペクトルの再現性が低下する。従って、均質な材料のスペクトルを基準とし、測定粒子のスペクトルを基準と比較することで、測定粒子の表面状態を評価できる。本発明においては、スペクトルの再現性、特に分散数値を指標として、粒子の表面状態を評価する。
図1にラマンスペクトルの例を示す。
本発明のガラス粒子では、400cm−1付近に特徴的なピークが検出される。このピークは非対称であることから、複数成分の混合ピークである。このピークは、PS 3−,P 4−及びP 4−の3種類混合ピークとして同定されている(M.Tachez,J.−P.Malugani,R.Mercier, and G.Robert,Solid State Ionics,14,181(1984))。
分解能の高い装置を用いて、上記ピークを成分毎に検出することが望ましいが、ピーク分離が不充分であっても、一般、又は装置専用の波形解析ソフトを用いて個別のピークに分離することが可能である。波形解析ソフトとしては、例えば、Thermo SCIENTIFIC社製のGRAMS AIが使用できる。
図2に波形分離ソフトを用いて、各ピークに分離した例を示す。分離されたピークから、各成分の面積値を求めることができる。
標準偏差は、上記の面積値から一般的な計算方法を用いて算出することができる。測定は、1つの測定対象(粒子の集合体)につき5回(5か所)以上とすることが望ましい。尚、1測定対象の同一箇所を繰り返し測定するのではなく、測定対象の異なる箇所を5回以上測定する。
本発明では、各成分(PS 3−、P 4−及びP 4−)の面積比の標準偏差が3.0以下の場合、各ガラス粒子の表面が均質であり、電池に用いた場合に電池性能が安定化する。上記標準偏差は、好ましくは、いずれも2.7以下であり、より好ましくは、いずれも2.5以下であり、特に好ましくは2.0以下である。
本発明では、波形分離して得られるPS 3−成分のピークの面積が、全体の10〜95%であり、P 4−成分のピークの面積が、全体の5〜45%であり、かつ、PS 3−成分のピークの面積が、前記P 4−成分のピークの面積よりも広い。これにより、安定な電解質が得られる。
また、本態様のガラスは溶媒を含み、溶媒の残存量が5質量%以下である。
残存量の下限は0.2質量%以上であり、0.5質量%以上であってもよく、さらに1質量%以上でもよい。
溶媒量は、ガラスをメタノールに溶解し、均一溶液にした後、ガスクロマトグラフィーで定量する。
さらに、ガラスのイオン伝導度は1.0×10−4S/cm以上である。本態様のガラスは、このように高いイオン伝導度を示す。
尚、イオン伝導度は交流インピーダンス法により測定する。
本態様のガラスにおいて、ガラスが硫化リチウムを含み、XRDの分析による硫化リチウムの残存率が30%以下であることが好ましい。硫化リチウムの残存率が30%を超えると、硫化水素発生量が多くなる。また、リチウムイオン伝導度が低下する。硫化リチウムの残存率は、15%以下が好ましい。硫化リチウムの残存率は硫化水素の発生量を抑えるということから考えると小さいほど好ましいが、製造時間を考えると0.1%以上が好ましく、より好ましくは、1%以上である。さらに好ましくは2%以上である。
上述した第一の態様及び第二の態様に係るガラスについて、平均粒径は20μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.10μm以上15μm以下であり、さらに好ましくは0.15μm以上12μm以下である。
平均粒径が20μmより大きい場合、電池を作製する際に電解質層等の薄膜化が困難になる場合がある。
また、粗大粒子が存在する場合、電池を作製する際、電解質層の薄膜化に影響を与え、また、短絡の危険性が増大する。従って、粒径が50μm以上の固体電解質の含有率が3質量%以下であることが好ましい。特に好ましくは、1質量%以下である。
尚、ガラスの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した体積基準平均粒径(MeanVolumeDiameter)を意味する。粒径の測定は、乾燥状態を経由せず、直接スラリー状態で測定することが望ましい。一旦、乾燥すると、乾燥時に粒子が凝集し、みかけ上、粒径が大きくなる場合がある。
以下、本発明のガラスの製法について説明する。
原料は、特に制限はないが、硫化リチウム(LiS)と五硫化二リン(P)、又は硫化リチウムと単体リン及び単体硫黄、さらには硫化リチウム、五硫化二リン、単体リン及び/又は単体硫黄が好ましい。
原料混合物におけるLi元素とP元素の比(Li:P、モル比)は、下記式を満たすことが好ましい。
60:40<Li:P≦85:15(モル比)
上記比率を外れた場合、ガラスのイオン伝導度が低下して好ましくない。
好ましくはLi元素が70〜83モル%、P元素が17〜30モル%であり、さらに好ましくは、Li元素が74〜81モル%、P元素が19〜26モル%である。
ガラスの、Li,P及びSの各元素のモル比は、原料の元素比により調整できる。尚、原料の元素比とガラスの元素比はほぼ一致する。
本発明のガラスは、上述したLi、P及びSのみからなっていてもよく、これら元素の他に、Al、B、Si、Ge等を含む物質を含んでいてもよい。
以下、硫化リチウム(LiS)と五硫化二リン(P)を原料とした例について説明する。
硫化リチウムは、特に制限なく工業的に入手可能なものが使用できるが、高純度のものが好ましい。
好ましくは、硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩の総含有量が3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下であり、かつN−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、水酸化リチウムの含有量が4.0質量%以下、より好ましくは、3.0質量%以下、炭酸リチウムの含有量が2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、水硫化リチウムの含有量が2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、リチウム以外の金属、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄等の総含有量が1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、である。
尚、硫化リチウム純度は電位差滴定法により測定する。
硫化リチウムの製造法としては、少なくとも上記不純物を低減できる方法であれば特に制限はない。例えば、以下の方法a〜cで製造された硫化リチウムを精製することにより得ることができる。
a.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを0〜150℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を150〜200℃で脱硫化水素化する方法(特開平7−330312号公報参照)。
b.非プロトン性有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを150〜200℃で反応させ、直接硫化リチウムを生成する方法(特開平7−330312号公報参照)。
c.水酸化リチウムとガス状硫黄源を130〜445℃の温度で反応させる方法(特開平9−283156号公報参照)。
上記のようにして得られた硫化リチウムの精製方法としては、特に制限はない。好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号に記載された精製法等が挙げられる。具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。
洗浄に用いる有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒であることが好ましく、さらに、硫化リチウム製造に使用する非プロトン性有機溶媒と洗浄に用いる非プロトン性極性有機溶媒とが同一であることがより好ましい。
洗浄に好ましく用いられる非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機硫黄化合物、環式有機リン化合物等の非プロトン性の極性有機化合物が挙げられ、単独溶媒、又は混合溶媒として好適に使用することができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)は、良好な溶媒に選択される。
洗浄に使用する有機溶媒の量は特に限定されず、また、洗浄の回数も特に限定されないが、2回以上であることが好ましい。洗浄は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
洗浄された硫化リチウムを、洗浄に使用した有機溶媒の沸点以上の温度で、窒素等の不活性ガス気流下、常圧又は減圧下で、5分以上、好ましくは約2〜3時間以上乾燥することにより、本発明で用いられる硫化リチウムを得ることができる。
また、水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒からなるスラリー中に、硫化水素ガスを吹き込み、前記水酸化リチウムと硫化水素を反応させ、前記反応により生じる水を、前記スラリーから除去しながら反応を継続し、系内の水分が実質的に無くなった後、硫化水素の吹き込みを止め、不活性ガスを吹き込むことにより硫化リチウムを製造することができる(特開2010−163356)。
以上の手法で調製した硫化リチウムは、一旦乾燥してから次の工程に供してもよいが、スラリーのまま、次工程に供してもよい。
硫化リチウムは微粒化されたものが好ましい。硫化リチウムの微粒化は、ミル装置等を用いた物理的な手法や、硫化リチウムに極性基を1個以上もつ極性溶媒を添加して行う手法等により実施できる。
ミル装置を用いた物理的な手法は、乾式、あるいは、湿式で行うことができる。乾式の場合、ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル装置などを用いることができる。
湿式の場合、用いることのできる溶媒は、非水系溶媒であり、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテルがある。乾式と同じミル装置を用いることができる。
また、スラリー溶液化を行って、ミル装置に供給、あるいは、循環させる手法も可能である。
硫化リチウムに極性基を1個以上もつ極性溶媒を添加して行う手法は、以下のように行うことができる。
極性溶媒のみで行うことも可能であるが、非極性溶媒を併用して、スラリーとすることが望ましい。
この際の非水性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテルがある。
極性溶媒の極性基としては、水酸基、カルボキシ基、ニトリル基、アミノ基、アミド結合、ニトロ基、−C(=S)−結合、エーテル(−O−)結合、−Si−O−結合、ケトン(−C(=O)−)結合、エステル(−C(=O)−O−)結合、カーボネート(−O−C(=O)−O−)結合、−S(=O)−結合、クロロ、フロオロから選ばれる1種類以上の極性基をもつ溶媒であることが好ましい。
極性基を1種類含む極性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、水、エチレングリコール、蟻酸、酢酸、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、トリメチルシリル=シアニド、N−メチルピロリドン、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、二硫化炭素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、フェニルメチルエーテル、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロへキシルメチルジメトキシシラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、酢酸エチル、無水酢酸、メチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、メチレンクロライド、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、ヘキサフロオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。
極性基を2種類含む極性溶媒としては、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフロオロイソプロパノール、2−アミノエタノール、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メトキシプロピオニトリル、3−エトキシプロピオニトリル、シアノ酢酸メチル、ジフルオロアセトニトリル等が挙げられる。
上記の極性溶媒、非極性溶媒は脱水する必要はないが、水分量により副生する微粒化物中の水酸化アルカリ金属の量に影響を与えるおそれがあるため、好ましくは水分量が50ppm以下、より好ましくは30ppm以下である。
極性溶媒の溶媒中の濃度は、好ましくは0.1質量%以上100質量%以下である。より好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは、0.5質量%以上である。
尚、溶媒は極性溶媒のみであってもよい。
極性溶媒の沸点は、常圧下で好ましくは40℃〜300℃、より好ましくは45℃〜280℃である。この範囲であると、加熱真空下の溶媒除去での乾燥容易性から好ましい。
微粒化の際、上記溶媒100質量部に対し、硫化リチウムを0.5質量部〜1000質量部とすることが望ましい。
処理温度は、使用する溶媒の沸点、凝固点により異なるが、好ましくは−100℃以上100℃以下、より好ましくは−80℃以上80℃以下である。高温での処理は、望ましい結果が得られないおそれがある。
上記処理は、特に水分の影響に注意する必要はないが、生成物の安定的な合成のため、密閉下、あるいは、不活性ガス下で行うことが好ましい。
処理時間は、好ましくは5分から1週間、より好ましくは1時間から5日である。
微粒化処理は、連続相、バッチ相いずれにおいても可能である。バッチ反応の場合、攪拌は一般的な翼が使用可能であり、好ましくはアンカー翼、ファドラー翼、ヘリカル翼、マックスブレンド翼である。ラボスケールでは、一般的にスターラーによる撹拌子が用いられる。また、バッチ反応では、ボールミルを用いた反応槽も使用可能である。
微粒化処理した後に必要により溶媒を除去する。極性溶媒を除去する場合、例えば、真空下での加熱により、又は非極性溶媒置換により行うことができる。また、非極性溶媒に置換することもできる。改質後の工程がスラリー状態を要求する場合、この溶媒置換を行った後、スラリー状態のままで保管することもできる。
得られた微粒化物は、残存溶媒を除去するため、必要に応じて乾燥処理する。乾燥処理は好ましくは窒素気流下又は真空下で行う。乾燥温度は好ましくは室温〜300℃である。
極性溶媒の種類によっては、処理時にアルカリ金属水酸化物が副生することがある。この水酸化物は、硫化水素ガスを微粒化物スラリー溶液へ導入することで硫化物へ再変換することができる。
この硫化水素の吹き込みは、上述した非水性溶媒中で行うことができる。
微粒化した硫化リチウムの表面積は、1m/g以上であることが好ましい。これにより、反応性が向上し、各種反応への応用が容易となる。硫化リチウムの表面積は、5〜400m/gであることが好ましく、特に、10〜300m/gであることが好ましい。
尚、硫化リチウムの表面積は、窒素によるBET法により測定した値である。
五硫化二リン(P)は、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。純度は、95%以上が好ましく、さらに好ましくは99%以上である。尚、Pに代えて、相当するモル比の単体リン(P)及び単体硫黄(S)を用いることもできる。単体リン(P)及び単体硫黄(S)は、工業的に生産され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
本発明のガラスは、上記の硫化リチウム及び五硫化二リンから合成することができる。反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。これにより、ガラスの製造に必要なエネルギーを低減できる。
硫化リチウムと五硫化二リンの割合(モル比)は、通常50:50〜80:20、好ましくは60:40〜75:25である。
反応溶媒は、上述した微粒化処理で使用する非水系溶媒が好ましい。
反応温度は、50〜210℃、好ましくは、60〜180℃の範囲である。温度が高い場合、反応と結晶化が同時に進行するため、反応が進行しなくなり、その結果、残存硫化リチウムが多くなる場合がある。一方、温度が低い場合、反応が進行しない場合がある。
反応時間は、1〜200時間、好ましくは、4〜180時間の範囲である。反応時間が短い場合、反応が進行しない場合がある。反応時間が長い場合、結晶化が部分的に進行して、イオン伝導度等が低下する場合がある。
反応濃度は、反応溶媒中に対し反応基質である固体成分量として0.1〜70質量%が好ましい。より好ましくは0.5〜50質量%である。70質量%よりも高い場合、通常の撹拌翼では均一撹拌が困難となる場合がある。一方、0.1質量%よりも希薄な場合、生産性が低くなるおそれがある。
反応は、連続相、バッチ相いずれにおいても可能である。
バッチ式の反応槽(リアクター)としては、一般的な撹拌翼を有する層が使用できる。好ましくはアンカー翼、ファドラー翼、ヘリカル翼、マックスブレンド翼を設置した反応槽である。試験研究では、一般的にスターラーによる撹拌子が用いられる。
連続相の場合、プラグフロー型のリアクターを用いることが望ましい。また、複数のバッチを直列に設置して用いてもよい。
得られた反応生成物(固体電解質ガラス)は、スラリー状で使用してもよく、また、乾燥し粉末にして使用することもできる。
スラリーのまま用いる場合は、反応後、上澄みを除去、あるいは、非水系溶媒を追加して、別の容器に移送して使用することができる。
乾燥粉末として使用する場合は、非水系溶媒を除去する必要がある。溶媒の除去は、真空下、又は、窒素流通下において、室温、又は加温処理にて行うことができる。加温条件は、50〜160℃が好ましい。これよりも温度が高い場合、固体電解質の結晶化が進行し、伝導度が低下する場合がある。一方、温度が低い場合、残存溶媒の除去が不十分となる場合がある。
乾燥処理により、得られる固体電解質の残存溶媒量は、5質量%以下であり、好ましくは、3質量%以下である。残存溶媒が多い場合、電解質中に非導電体(抵抗成分)が存在することになるため、電池性能が低下する。
本発明のガラスの製造装置の好適例を説明する。
図3は、本発明のガラスの製造装置の一実施形態を示す図である。
製造装置1は、原料を粉砕しつつ反応させてガラスであるイオン伝導性物質を合成する粉砕機(粉砕合成手段)10と、原料を反応させてイオン伝導性物質を合成する反応槽(合成手段)20とを備える。本装置では反応槽20は容器22と撹拌翼24からなる。撹拌翼24はモータ(M)により駆動される。
粉砕機10には、粉砕機10内を20℃以上80℃以下に保つために、粉砕機10の周りに温水を通すことのできるヒータ30(第1の温度安定手段)が設けられている。反応槽20は、反応槽20内を40℃以上200℃以下に保つために、オイルバス40(第2の温度安定手段)に入っている。オイルバス40は容器22内の原料と溶媒を所定温度に加熱する。反応槽20には気化した溶媒を冷却して液化する冷却管26が設けられる。
粉砕機10と反応槽20は、第1の連結管50と第2の連結管52(連結手段)で連結されている。第1の連結管50は、粉砕機10内の原料と溶媒を反応槽20に移動させ、第2の連結部52は、反応槽20内の原料及び溶媒を粉砕機10内に移動させる。原料等を連結管50,52を通して循環するために、ポンプ54(例えばダイアフラムポンプ)(循環手段)が、第2の連結管52に設けられている。
この装置1を用いて、ガラスを製造するときは、炭化水素系溶媒と原料を、粉砕機10と反応槽20にそれぞれ供給する。ヒータ30には温水(HW)が入り排出される(RHW)。ヒータ30により粉砕機10内の温度を20℃以上80℃以下に保ちながら、原料を炭化水素系溶媒中で粉砕しつつ反応させてイオン伝導性物質を合成する。オイルバス40により反応槽20内の温度を40℃以上200℃以下に保ちながら、原料を炭化水素系溶媒中で反応させてイオン伝導性物質を合成する。反応槽20内の温度は温度計(Th)で測定する。このとき、撹拌翼24をモータ(M)により回転させて反応系を撹拌し、原料と溶媒からなるスラリーが沈殿しないようにする。冷却管26には冷却水(CW)が入り排出される(RCW)。冷却管26は、容器22内の気化した溶媒を冷却して液化し、容器22内に戻す。粉砕機10と反応槽20でイオン伝導性物質を合成する間、ポンプ54により、反応中の原料は連結管50,52を通って、粉砕機10と反応槽20の間を循環する。粉砕機10に送り込まれる原料と溶媒の温度は、粉砕機10前の第2の連結管に設けられた温度計(Th)で測定する。
粉砕機10は、原料を粉砕混合しながら反応させ、ガラスを製造することができるものであればどのような粉砕機でもよい。例えば、回転ミル(転動ミル)、揺動ミル、振動ミル、ビーズミルを挙げることができる。原料を細かく粉砕できる点でビーズミルが好ましい。原料が細かいほど、反応性が高くなり、短時間でガラスを製造できる。
粉砕機がボールを含むとき、ボールと容器とが磨耗することによるガラスへの異物混入を防止するため、ボールはジルコニウム製、強化アルミナ製、アルミナ製であることが好ましい。
また、粉砕機10から反応槽20へのボールの混合を防ぐため、必要に応じて粉砕機10又は第1の連結管50にボールと原料及び溶媒を分離するフィルタを設けてもよい。
粉砕機での粉砕温度は、20℃以上80℃以下、好ましくは20℃以上70℃以下である。粉砕機での処理温度が20℃未満の場合、製造に要する反応時間を短縮する効果が小さく、80℃を超えると、容器、ボールの材質であるジルコニア、強化アルミナ、アルミナの強度低下が著しく起こるため、容器、ボールの磨耗、劣化や、ガラスへの異物混入が生じるおそれがある。
反応槽20は、原料を反応させ、ガラスを製造することができるものであればどのような反応槽でもよい。通常、反応槽は、容器と、攪拌機等の混合手段、冷却手段を有する。混合手段は、容器内の原料と溶媒からなるスラリーを混合し、スラリーが沈殿しないようにする。冷却手段は、蒸発した溶媒を冷却して容器に戻す。
容器22は、金属製又はガラス製であることが好ましい。溶媒の沸点以上の反応温度で反応する場合には耐圧仕様の容器を用いることが好ましい。
容器22内の反応温度は40℃以上200℃以下である。80℃以上150℃以下が好ましい。60℃未満ではガラス化反応に時間がかがり生産効率が十分ではない。200℃を超えると、好ましくない結晶が析出する場合がある。
反応は温度が高い領域が速いので高温にすることが好ましいが、粉砕機を80℃を超える温度にすると磨耗等の機械的な問題が発生する。従って、反応槽は反応温度を高めに設定し、粉砕機は比較的低温に保つ必要がある。
反応槽20の容量と粉砕機10の容量との比率は任意でよいが、通常反応槽20の容量は、粉砕機10の容量の1〜100倍程度である。
図4は、製造装置の他の実施形態を示す図である。
製造装置2は、第2の連結部52に熱交換器60(熱交換手段)を設けた他は、上述した製造装置1と同じである。製造装置1と同じ部材には同じ符号を付して説明は省略する。
熱交換器60は、反応槽20から送り出される高温の原料と溶剤を冷却して、撹拌機10に送り込む。例えば、反応槽20において、80℃を超える温度で反応を行った場合、原料等の温度を80℃以下に冷却して、撹拌機10に送り込む。
本発明のガラスを、200℃以上400℃以下、より好ましくは230〜350℃で加熱処理することにより、ガラスセラミックが得られる。ガラスセラミック化することにより、イオン伝導性が向上する場合がある。尚、ガラスは一部のみ結晶化していてもよい。
加熱処理の時間は、0.1〜24時間が好ましく、特に0.5〜12時間が好ましい。
加熱処理は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの露点は−20℃以下が好ましく、特に好ましくは−40℃以下である。圧力は、通常、減圧〜20MPaであり、減圧乾燥、あるいは常圧で不活性ガスを流通させることが好ましい
また、スラリー状でも結晶化(セラミック化)処理は可能である。
結晶化工程における溶媒は炭化水素系溶媒が使用できる。炭化水素系溶媒として、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等の不飽和炭化水素、トルエン、キシレン、デカリン、エチルベンゼン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
プロセスの簡略化から、結晶化工程の溶媒は、固体電解質ガラス製造時の溶媒と同じにすることが好ましい。
炭化水素系溶媒は脱水されていることが好ましく、水分含有量は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは30ppm以下である。
固体電解質ガラスの溶媒1Lに対する添加量は0.001〜1Kg程度である。好ましくは0.005〜0.5Kg、より好ましくは0.01〜0.3Kgである。
ガラスの結晶化の温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃である。150℃未満であると、結晶化が進まないおそれがあり、400℃より高いと、イオン伝導率が低下するおそれがある。
結晶化時間は、好ましくは5分〜50時間、より好ましくは10分〜40時間である。接触時間が5分未満であると結晶化が不十分となるおそれがあり、50時間を越えると生産効率の低下やイオン伝導率の低下のおそれがある。
尚、結晶化温度や結晶化時間はいくつかの条件を組み合わせてもよい。
生成した固体電解質ガラスセラミックスと溶媒とを分離する必要がある場合、デカンテーション、ろ過、遠心分離等、又はこれら組み合わせ等、公知の方法を採用できる。分離して得られたケーキ状物は、窒素、アルゴン等の不活性ガスあるいは乾燥空気等の流通下、あるいは減圧下で乾燥することができる。この際の温度については特に制限は無いが、通常0℃から400℃以下である。
固体部分と溶媒を分離した後に、適当な溶媒によりさらに洗浄してもよい。洗浄溶媒は、結晶化に使用できるものであればよく、結晶化の際に用いた溶媒と同一でも、異なっていてもよい。また、混合物でもよい。
ガラスセラミックの結晶構造として、例えば、特開2002−109955に開示されているLiPS構造、Li構造、LiPS構造、LiSiS構造、LiSiS構造、特開2005−228570やWO2007/066539に開示されているLi11構造が好ましい。特に好ましくは、ガラスセラミックの結晶構造としてLiPS構造が好ましい。
尚、硫化物系固体電解質の結晶化された部分は、1つの結晶構造のみからなっていてもよく、複数の結晶構造を有していてもよい。
硫化物系固体電解質の結晶化度(非晶体よりイオン伝導度が高い結晶構造の結晶化度)は、50%以上が好ましく、より好ましくは、60%以上である。
硫化物系固体電解質の結晶化度が50%未満の場合は、結晶化によりイオン伝導度を高くするという効果が少なくなるためである。
結晶化度は、NMRスペクトル装置を用いることにより測定できる。具体的には、硫化物系固体電解質の固体31P−NMRスペクトルを測定し、得られたスペクトルについて、70−120ppmに観測される共鳴線を、非線形最少二乗法を用いたガウス曲線に分離し、各曲線の面積比を求めることにより測定できる。
尚、本発明の「ガラス」は上述したガラスセラミック化の前の状態を意味するものであり、ガラス製造時により生じる少量の結晶構造を含んでいてもよい。ガラスであることは、X線回折測定によって結晶に起因するピークが観測されないか、観測されても小さいことにより確認できる。
本発明のガラス及びガラスセラミック(以下、ガラス及びガラスセラミックを纏めて本発明の固体電解質ということがある。)は、電池の構成層、例えば、リチウムイオン電池の正極、固体電解質層、負極等に使用する固体電解質として好適に使用できる。特に、正極及び固体電解質層に好適である。
本発明の正極は、上述した本発明の固体電解質を含有していればよく、他の構成材料については公知の部材を使用できる。
本発明の固体電解質以外の部材としては、例えば、バインダー、導電助剤、他の固体電解質がある。
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
導電助剤としては、電気伝導率が1.0×10S/m以上の導電性物質が使用できる。好ましくは1.0×10S/m以上の物質であり、より好ましくは1.0×10S/m以上の物質である。
導電性物質の形状は特に限定されず、粒子状導電性物質であってもよく、板状導電性物質であってもよく、棒状導電性物質であってもよい。例えば、板状導電性物質としてはグラフェンが挙げられ、棒状導電性物質としては、例えば、カーボンナノチューブ等であり、粒子状導電性物質としては、表面積が大きく、細孔容量が大きく、かつ電子伝導性が高いケッチェンブラックや活性炭が挙げられる。
導電性物質としては、炭素材料、金属粉末、金属化合物等が挙げられ、好ましくは炭素材料が挙げられる。炭素は導電度が高く、かつ軽いために、質量当りのエネルギー密度が高い電池を得ることができる。
より好ましくは、導電性物質は、細孔を有する多孔質炭素である。
導電性物質である多孔質炭素としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;黒鉛、炭素繊維、活性炭等の炭素が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
正極が導電助剤を含む場合、電極中の導電助剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは、0.01質量%以上50質量%以下である。
導電助剤の含有量が多すぎると電気容量が小さくなるおそれがあり、導電助剤の量が少ないと(又は含まない)と電気抵抗が高くなるおそれがある。
正極がバインダーを含む場合、電極中のバインダーの含有量は、好ましくは0.01質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
バインダーの含有量が多すぎると電気容量が小さくなるおそれがあり、バインダーの量が少ないと(又は含まない)と結着が弱くなるおそれがある。
本発明の正極は、上記の材料を通常の方法でプレス成形して、シート状の電極とする方法等により形成できる。例えば、固体電解質がガラスである場合、ガラス転移温度以上の温度で加熱しながらプレスし、当該ガラス状固体電解質の一部又は全部を互いに融着させてもよく、結晶化温度以上に加熱してガラス状固体電解質の一部又は全部をガラスセラミック化してもよい。
また、正極材料を集電体上に膜状に形成して正極とする方法が挙げられる。製膜方法としては、エアロゾルデポジション法、スクリーン印刷法、コールドスプレー法等が挙げられる。さらに、溶媒に分散又は一部を溶解させてスラリー状にして塗布する方法が挙げられる。必要に応じてバインダーを混合してもよい。
上記集電体としては、ステンレス鋼、金、白金、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、アルミニウム又はこれらの合金等からなる板状体、箔状体、網目状体等が使用できる。
正極層として用いる場合は、電池設計に応じて、適宜に層厚みを選定すればよい。
本発明のリチウムイオン電池は、上述した本発明の固体電解質を使用していればよく、正極、電解質層及び負極等、他の構成については公知のものが使用できる。
固体電解質層は、本発明の固体電解質又は公知の固体電解質からなる層であり、好ましくは固体電解質粒子が互いに融着している層である。ここで融着とは、固体電解質粒子の一部が溶解し、溶解した部分が他の固体電解質粒子と一体化することを意味する。また、固体電解質層は、固体電解質の板状体であってもよく、当該板状体固体電解質層は、固体電解質粒子の一部又は全部が溶解し、互いに結合して板状体になっている場合を含む。
固体電解質層の厚さは、好ましくは0.001mm以上1mm以下である。
負極層は、負極活物質、電解質、及び導電助剤を含むことが好ましい。また、バインダーを含んでいてもよい。形成法や厚さは正極の場合と同様である。
負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。中でも、高い理論容量を有するケイ素、スズ、リチウム金属が好ましい。
電解質、及び導電助剤については、上述した電極材料と同様なものが使用できる。
本発明のリチウムイオン電池は、公知の方法により製造することができ、例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
[硫化リチウムの製造]
製造例1
(1)硫化リチウムの製造
窒素気流下で非極性溶媒としてトルエン270gを600mlセパラブルフラスコに加え、水酸化リチウム(本荘ケミカル社)30gを投入し、フルゾーン撹拌翼にて300rpmで撹拌しながら、95℃に保持した。スラリー中に硫化水素を300ml/分の供給速度で吹き込みながら104℃まで昇温した。セパラブルフラスコからは、水とトルエンの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するトルエンと同量のトルエンを連続的に供給し、反応液レベルを一定に保持した。
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後6時間で水の留出は認められなくなった(水分量は総量で22mlであった)。尚、反応の間は、トルエン中に固体が分散して撹拌された状態であり、トルエンから分層した水分は無かった。この後、硫化水素を窒素に切り替え300ml/分で1時間流通した。固形分をろ過・乾燥して白色粉末である硫化リチウムを得た。
得られた粉末を塩酸滴定及び硝酸銀滴定で分析したところ、硫化リチウムの純度は99.0質量%であった。また、X線回折測定したところ、硫化リチウムの結晶パターン以外のピークが検出されないことを確認した。
得られた硫化リチウムの比表面積を窒素ガスによるBET法でAUTOSORB6を用いて測定したところ、14.8m/gであった。
硫化リチウムの平均粒径を、レーザー回折式粒度分布測定装置(MalvernInstrumentsLtd社製マスターサイザー2000)を使用した。平均粒径は450μm(スラリーにて測定)であった。
尚、具体的な測定方法は以下の通りである。
まず、装置の分散槽に脱水処理されたトルエン(和光純薬製、製品名:特級)110mlを入れ、さらに分散剤として脱水処理されたターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を6%添加する。十分混合した後、固体電解質を添加して粒子径を測定する。
ここで、固体電解質の添加量は、上記装置で規定されている操作画面で、粒子濃度に対応するレーザー散乱強度が規定の範囲内(10〜20%)に収まるように加減して加える。この範囲を超えると多重散乱が発生し、正確な粒子径分布を求めることができなくなるおそれがある。また、この範囲より少ないとSN比が悪くなり、正確な測定ができないおそれがある。上記装置では、固体電解質含有組成物の添加量に基づきレーザー散乱強度が表示されるので、上記レーザー散乱強度範囲に入る添加量を見つける。
上記のように、固体電解質の添加量は濃度によって異なるが、概ね10μL〜200μL程度である。
得られた硫化リチウムの水溶液のイオン成分を分析した。具体的に、硫化リチウム約1gを20mlの水に溶解後、一部の水溶液を回収して測定した。
測定装置:ダイオネクス製DIONEX DX−120
測定カラム:陽イオンクロマト CS12A;陰イオンクロマト AS12A
結果を表1に示す。
表からわかるように、硫化リチウムはイオン成分に分離し、これ以外の成分は副生しないことがわかる。尚、LiとS2−以外の成分は、不純物成分である。
Figure 2013155087
(2)微粒化処理A
(A)微粒化処理
上記(1)で製造した硫化リチウム26.0gをグローブボックス内で秤量し、シュレンク瓶に入れた。シュレンク瓶に窒素雰囲気下、脱水トルエン(和光純薬製)507ml、脱水エタノール(和光純薬製)252mlをこの順に加え、室温で24時間、スターラーで撹拌することで微粒化硫化リチウムを得た。
(B)硫化水素ガスによる処理
上記処理後、バス温度を120℃まで昇温し、硫化水素ガスを100ml/分で流通させながら、さらに、90分間硫化水素ガスを流通させた。トルエンを留出させながら、脱水トルエンを添加して、スラリー状態を保持した。硫化水素ガス流通後、室温窒素気流下で溶媒を留去し、さらに、真空下、200℃で2時間処理して微粒化硫化リチウムを回収した。
上記(1)と同様にして微粒化した硫化リチウムを評価した。その結果、硫化リチウムは純度97.5質量%、水酸化リチウム量0.5質量%、平均粒径11.9μm(スラリー)、比表面積46m/g、細孔容積0.53ml/gであった。純度、水酸化リチウム含量は滴定法によりそれぞれ定量した。尚、分析値合計が、100%とならないのは、表1と同様、不純物である炭酸リチウム、他のイオン塩や残存溶媒を含んでいるためである。
(3)微粒化処理B
上記(2)において、エタノールの代わりにメタノール6.9mlを用いた他は、同様にして微粒化処理した。
その結果、得られた硫化リチウムは純度95.5質量%、水酸化リチウム量1.2質量%、平均粒径13.7μm、比表面積24.6m/g、細孔容積0.36ml/gであった。
製造例2
(1)硫化リチウムの製造
特開平7−330312号公報における第1の態様(2工程法)の方法に従って、硫化リチウムを製造した。具体的に、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。続いて、この反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した水硫化リチウムを脱硫化水素化し硫化リチウムを得た。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。水硫化リチウムの脱硫化水素反応が終了後(約80分)に反応を終了し、硫化リチウムを得た。
(2)硫化リチウムの精製
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
尚、亜硫酸リチウム(LiSO)、硫酸リチウム(LiSO)並びにチオ硫酸リチウム(Li)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、N−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)は0.07質量%であった。平均粒径は190μm(スラリー溶液)であった。
実施例1(固体電解質ガラス)
スターラーチップ入りオートクレーブを窒素で置換し、製造例1(2)で製造した微粒化LiS1.2g(75モル%)、五硫化二リン1.88g(アルドリッチ社製、25モル%)、水分含有量10ppmに脱水した30mlのトルエン(和光純薬工業株式会社製)を仕込み、150℃で72時間反応させ、固体電解質ガラス(スラリー)を得た。
固体電解質ガラススラリーを室温で真空下に置くことにより、トルエンを揮発させて粉末状のガラスとした。粉末状ガラスを、さらに150℃で2時間、真空乾燥した。
このガラスは粉末状であり、イオン伝導度を測定したところ、1.25×10−4S/cmであった。尚、イオン伝導度は交流インピーダンス法により測定した。
上記ガラスはアモルファス成分を主成分であり、原料の硫化リチウムが残存する。アモルファス成分は後述する図6に示すようなブロードなピークしか示さないが、原料の硫化リチウムは結晶化しているため、硫化リチウムに起因するピークが観察される。
硫化リチウムに起因する最も大きなピークとして約27°を選択してその強度を評価した結果1850であった。尚、ベースラインは、前後2°の最も低い値より直線補正を行って設定した。
標準試料として、硫化リチウム1.2gと五硫化二リン1.88gを混合した試料を用いた。約27°のピークの強度は、約15500であった。
約27°のピークの強度比から、硫化リチウムの残存率は11.9%である。
ガスクロマトグラフィーによる測定から、ガラスの残存溶媒量は2.2質量%であった。
レーザー回折式粒度分布測定装置にてガラスの粒径分布を測定した。結果を図5に示す。平均粒径は17.8μmであり、50μm以上の粒子がないことがわかる。
耐加水分解性の指標となる硫化水素濃度を下記方法で測定した。
測定試料を、露点−60℃以下の環境の窒素グローボックス内にて乳鉢でよく粉砕したものを用いた。測定試料を0.1g、100mlのシュレンク瓶内に封入した。
次に、シュレンク瓶内に、水槽を通過させることにより加湿した空気(ウェットエア)を500ml/分で流通させる。尚、ウェットエアの温度は、25℃程度、湿度は、80〜90%となっている。また、空気の供給量は流量計で制御する。
流通開始後1分〜1分45秒の間、流通後のガスを捕集して測定用のサンプルガスとする。
三菱化学アナリテック製TS−100を用いて、紫外蛍光法により硫黄分を定量して、サンプルガスの硫化水素濃度を算出する。尚、サンプルガスをアジレント6890(硫黄選択検出器(SIEVERS355)付)を用いてガスクロマトグラフにて定性分析したところ、硫黄分はその99%以上硫化水素ガスになっていることを確認している。
流通開始5分後〜5分45秒後の間、流通開始10分後〜10分45秒後の間、流通開始20分後〜20分45秒後の間、流通開始60分後〜60分45秒後の間にシュレンク瓶から排出されたガスについても、同様に測定する。この測定結果から、最大の硫化水素ガス量(最大濃度)を評価した。
その結果、最大濃度は86ppm(流通開始後5分〜5分45秒に採取したガス)であった。
尚、標準試料(硫化リチウム1.2gと五硫化二リン1.88gを混合した試料)について、硫化水素ガスの最大濃度は1440ppm(流通開始後5分〜5分45秒に採取したガス)であった。
実施例2
実施例1で得た固体電解質ガラスを、真空下で300℃、2時間の加熱処理し、ガラスセラミック化した。得られたガラスセラミックは粉末状であり、イオン伝導度を測定したところ、1.26×10−4S/cmであった。
このように、硫化リチウムが残存している固体電解質ガラスを結晶化させても、硫化リチウムが残存している固体電解質ガラスと同等のイオン伝導度を得られることが分かる。
ガラスセラミックの残存溶媒量は、0.1質量%以下(検出下限以下)であった。
硫化水素ガスの最大濃度は5ppm(流通開始後1分〜1分45秒に採取したガスと同5分〜5分45秒に採取したガス)であった。
実施例3
製造例1(3)で製造した微粒化LiSを用いた他は、実施例1と同様にして固体電解質ガラスを製造し、評価した。
イオン伝導度は、1.12×10−4S/cmであった。硫化リチウムの残存率は、12.8%であった。残存溶媒量は2.3質量%であった。
硫化水素ガスの最大濃度は97ppm(流通開始後5分〜5分45秒に採取したガス)であった。
実施例4
製造例1(1)において調製した硫化リチウムを窒素雰囲気下においてジェットミル装置(アイシンナノテクノロジー製)を用いて、粉砕を行った。回収した硫化リチウムの表面積20m/g、粒径2.1μmであった。
ジェットミル装置で粉砕した硫化リチウム1gと、五硫化二リン 1.61gを用いて、電解質ガラスを実施例1と同様に調製した。
電解質ガラスの硫化リチウムの残存ピーク強度は2050、硫化リチウムの残存量は13.2%、イオン伝導度1.2×10−4S/cmであった。
実施例5
図3に示す装置を用いた。撹拌機として、アシザワ・ファインテック社製スターミルミニツェア(0.15L)(ビーズミル)を用い、0.5mmφジルコニアボール450gを仕込んだ。反応槽として、撹拌機付の1.5Lガラス製反応器を使用した。
尚、上記計量、添加、密閉作業は全てグローブボックス内で実施し、使用する器具類は全て乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。また、脱水トルエンはカールフィッシャー法による水分測定で8.4ppmであった。
製造例2の硫化リチウム(微細化処理は未実施)42.0gと五硫化二リン67.8gに、広島和光純薬製社製脱水トルエン1248ml(水分量8.4ppm)を加えた混合物を反応槽及びミルに充填した。
ポンプにより内容物を400mL/分の流量で循環させ、反応槽を80℃になるまで昇温した。
ミル本体は、液温が70℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速8m/sの条件で8時間運転した。
得られたスラリーをろ過・風乾後、150℃で2時間チューブヒーターにより乾燥し固体電解質ガラス粉体を得た。このときの回収率は95%であり、反応器内に付着は見られなかった。
得られた粉体のX線回折測定(CuKα:λ=1.5418Å)を行なった結果、固体電解質ガラスに起因するハローパターンであり、硫化リチウムの残存も観測できた。
この電解質ガラスのイオン伝導度は、2.0×10−4S/cmであった。
X線回折測定のLiS残存ピーク強度は950であり、LiS残存量は6.1%と計算された。
比較例1
製造例2で製造した硫化リチウムを用いて、国際公開公報WO07/066539の実施例1に準拠した方法で硫化物系ガラスを製造した。具体的には、下記のように行った。
製造例2で製造した硫化リチウム0.383g(0.00833mol、75mol%)と五硫化二リン(アルドリッチ社製)を0.618g(0.00278mol,25mol%)をよく混合した。そして、この混合した粉末と直径10mmのジルコニア製ボール10ケと遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)アルミナ製ポットに投入し完全密閉するとともにこのアルミナ製ポット内に窒素を充填し、窒素雰囲気にした。
そして、はじめの数分間は、遊星型ボールミルの回転を低速回転(85rpm)にして硫化リチウムと五硫化二リンを十分混合した。その後、徐々に遊星型ボールミルの回転数を上げ370rpmまで回転数を上げた。遊星型ボールミルの回転数を370rpmで20時間メカニカルミリングを行い、ガラスを得た。このメカニカルミリング処理をした白黄色の粉体をX線測定により評価した結果、ガラス化(硫化物ガラス)していることが確認できた。図6に比較例1で製造した固体電解質ガラスのX線回折スペクトルを示す。
得られた固体電解質ガラスのイオン伝導度を測定したところ、1.3×10−4S/cmであった。また、硫化水素ガスの最大濃度は66ppm(流通開始後5分〜5分45秒に採取したガス)であった。
また、硫化リチウムの残存率は0%であった。
各実施例と比較例1を比較すると、硫化水素ガスの最大濃度(発生量)に差はなく、固体電解質中に所定量の硫化リチウムが残存していても硫化水素の発生量に差がないことが確認できた。
上記実施例1,3〜5及び比較例1で得たガラスのラマンスペクトルを以下の条件で測定した。
・レーザーラマン測定条件
測定装置:サーモフィッシャーサイエンティフィックス株式会社製 Almega
レーザー波長:532nm
レーザー出力:10%
アパーチャ:25μmφ
露光時間:10秒
露光回数:10回
対物レンズ:×100
分解能:高(2400lines/mm)
ラマンスペクトルは、同ロットサンプルをラマン管に封入後、測定位置を変えて5回測定した。
測定したスペクトルについて、波形解析ソフト(Thermo SCIENTIFIC社製:GRAMS AI)を使用して各ピークに分離した。
分離した各ピークの面積比の平均値及び標準偏差を表2に示す。
Figure 2013155087
本発明のガラス及びガラスセラミックは、全固体電池の電解質や電極材料として好適に使用できる。
本発明のリチウムイオン電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを電力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電池として用いることができる。
1、2 製造装置
10 粉砕機(力学的エネルギー供与手段)
20 反応槽(接触手段)
22 容器
24 撹拌翼
26 冷却管
30 ヒータ
40 オイルバス
50 第1の連結管(連結手段)
52 第2の連結管(連結手段)
54 ポンプ(循環手段)
60 熱交換器

Claims (10)

  1. リチウム元素(Li)と硫黄元素(S)を含むガラスであって、
    前記ガラスが硫化リチウムを含み、X線回折分析による前記硫化リチウムの残存率が30%以下であるガラス。
  2. リチウム元素(Li)、リン元素(P)及び硫黄元素(S)を含むガラスであって、
    前記ガラスのラマンスペクトルを5回以上測定し、該ラマンスペクトルにおける330〜450cm−1のピークを波形分離し、各成分に分離した面積比の標準偏差が、いずれも3.0以下であり、
    前記波形分離して得られるPS 3−成分のピークの面積が、全体の10〜95%であり、同P 4−成分のピークの面積が、全体の5〜45%であり、
    前記PS 3−成分のピークの面積が、前記P 4−成分のピークの面積よりも広く、
    前記ガラスが溶媒を含み、該溶媒の残存量が5質量%以下であり、
    イオン伝導度が1.0×10−4S/cm以上であるガラス。
  3. 150℃で2時間の加熱乾燥処理後に溶媒を含み、該溶媒の残存量が5質量%以下である請求項1に記載のガラス。
  4. 平均粒径が20μm以下であり、かつ、粒径が50μm以上である粒子の含有率が3質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のガラス。
  5. 原料を有機溶媒中で反応させて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のガラス。
  6. 前記原料が微粒化した硫化リチウムを含む請求項5に記載のガラス。
  7. 前記微粒化した硫化リチウムの表面積が1m/g以上である請求項6に記載のガラス。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のガラスを加熱処理して得られるガラスセラミック。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載のガラス及び請求項8に記載のガラスセラミックの少なくとも一方を含む正極。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載のガラス及び請求項8に記載のガラスセラミックの少なくとも一方を含む層を備えるリチウムイオン電池。
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