JP5912550B2 - 電極材料、電極及びそれを用いた電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1の電池では、硫黄の理論容量から推定される容量の一部しか使用できていないという問題があった。
特許文献1の全固体電池では、上述した連結構造が少ないことを原因の1つとして、電池の出力密度が低くなるとともにエネルギー密度も低くなっていると考える。
本発明によれば、以下の電極材料等が提供される。
1.活物質、固体電解質及び導電性物質を一体化した複合材料粒子を含み、
前記複合材料粒子が下記式(1)を満たす、電極材料。
2.5≦lnσ2≦9.5…(1)
[式中、σ2は複合材料粒子の粒子径の対数正規分布の分散を示す。]
2.前記活物質が、硫黄又は硫黄を含む化合物である1に記載の電極材料。
3.前記固体電解質が、硫黄とリチウムを含む電解質である1又は2に記載の電極材料。
4.前記導電性物質が細孔を有する1〜3のいずれかに記載の電極材料。
5.前記導電性物質が炭素材料である1〜4のいずれかに記載の電極材料。
6.上記1〜5のいずれかに記載の電極材料から製造される電極。
7.上記1〜5のいずれかに記載の電極材料を含む電極。
8.上記6又は7に記載の電極を含む電池。
2.5≦lnσ2≦9.5…(1)
本発明では、lnσ2は3以上9以下であることが好ましく、特に、6以上8以下であることが好ましい。
はじめに、複合材料粒子の粒径分布をレーザー回折式粒度分布測定装置で測定する。測定条件の詳細については、後述する実施例を参照できる。図1に粒径分布の例を示す。この結果より、モード径(dmod)が得られる。
σ2={exp(2μ0+σ0 2)}{exp(σ0 2)−1} (c)
また、上記のような乾式で制御する方法以外に、ビーズミルやフィルミックス等の湿式で粒径を制御する方法も利用できる。
以下、複合材料粒子の材料及び製法について説明する。
複合材料粒子に使用する活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質である。
正極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において正極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、V2O5、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCoYO2、LiCo1−YMnYO2、LiNi1−YMnYO2(ここで、0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNiZO4、LiMn2−ZCoZO4(ここで、0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、LixCoO2,LixNiO2,LixMn2O4,LixFePO4,LixCoPO4,LixMn1/3Ni1/3Co1/3O2,LixMn1.5Ni0.5O2等の酸化物が挙げられる。
また、硫化物系では、単体硫黄(S)、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)、硫化リチウム(Li2S、Li2S2、Li2S4、Li2S8)、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、硫化フランシウム、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物等が使用できる。
有機ジスルフィド化合物及びカーボンスルフィド化合物を以下に例示する。
導電性物質は、電気伝導率が1.0×103S/m以上の物質であり、好ましくは1.0×104S/m以上の物質であり、より好ましくは1.0×105S/m以上の物質である。
上記導電性物質は、細孔を有することが好ましい。細孔を有することにより、硫黄や硫黄系化合物等の活物質を細孔内に含めることができ、活物質と導電性物質の接触面積を増やすことができると共に、活物質の比表面積を大きくすることができる。
導電性物質の形状は特に限定されず、粒子状導電性物質であってもよく、板状導電性物質であってもよく、棒状導電性物質であってもよい。例えば、板状導電性物質としてはグラフェンが挙げられ、棒状導電性物質としては、例えば、カーボンナノチューブ等であり、粒子状導電性物質としては、表面積が大きく、細孔容量が大きく、かつ電子伝導性が高いケッチェンブラックや活性炭が挙げられる。
より好ましくは、導電性物質は、細孔を有する多孔質炭素である。
導電性物質である多孔質炭素としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;黒鉛、炭素繊維、活性炭等の炭素が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
導電性物質が細孔を有することで、活物質と複合化することができ、電極材料の電子伝導性を高めることができる。
導電性物質の細孔容量が0.5cc/g未満の場合、導電性物質内部の活物質含有量が少なくなるおそれがあり、電気容量が高いリチウムイオン電池を得ることが困難になるおそれがある。一方、導電性物質の細孔容量が4.0cc/g超の場合、活物質と複合化しても電子伝導性が十分に確保できないおそれがある。
導電性物質の平均細孔直径が1nm未満の場合、細孔内に活物質を含浸させることが困難となるおそれがある。一方、導電性物質の平均細孔直径が100nm超である場合、細孔内に含浸した活物質が活物質として十分に機能しないおそれがある。
例えば硫黄と多孔質炭素を複合化した硫黄−多孔質炭素複合体が、固体電解質との接触面積を確保するためには、多孔質炭素の比表面積は大きい方がよいが、大きすぎると、平均細孔直径が小さくなるため、硫黄を細孔内に含有させにくい。多孔質炭素の比表面積が小さいと、平均細孔直径は大きくなり、硫黄の含有が容易になるが、含有された硫黄の粒子径が大きくなってしまい、細孔内に含有された硫黄が活物質として十分に機能しないおそれがある。よって、多孔質炭素のBET比表面積は、平均細孔直径が小さい場合(1〜15nm)には450m2/g以上4500m2/g以下であることがより好ましく、特に650m2/g以上4000m2/g以下であることが好ましい。平均細孔直径が大きい場合(15〜18nm)には、400m2/g以上2000m2/g以下であることがより好ましく、特に、600m2/g以上1800m2/g以下であることが好ましい。
BET比表面積、細孔直径、細孔容量及び平均細孔直径は、多孔質炭素を液体窒素温度下において、多孔質炭素に窒素ガスを吸着して得られる窒素吸着等温線を用いて求めることができる。
具体的には、窒素吸着等温線を用いて、Brenauer−Emmet−Telle(BET)法により比表面積を求めることができる。また、窒素吸着等温線(吸着側)を用いて、Barret−Joyner−Halenda(BJH)法により細孔直径、細孔容量を求めることができる。また、平均細孔直径は、細孔構造を円筒型であると仮定して、全細孔容積とBET比表面積から計算される。
測定装置としては、例えば、Quantacrome社製の比表面積・細孔分布測定装置(Autosorb−3)を用いて測定できる。測定の前処理は、例えば、200℃で3時間の加熱真空排気等が挙げられる。
固体電解質としては、リチウムイオン伝導性固体電解質であればよく、その原料としては、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものが使用できる。
LiaMbPcSd (1)
式(1)において、MはB、Zn、Si、Cu、Ga又はGeから選択される元素を示す。
a〜dは各元素の組成比(モル比)を示し、a:b:c:dは1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。
好ましくは、bは0であり、より好ましくは、a、c及びdの比(a:c:d)がa:c:d=1〜9:1:3〜7、さらに好ましくは、a:c:d=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。
各元素の組成比は、固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
ここで、結晶化させるとガラスよりもイオン伝導度が高くなる場合があり、その場合には結晶化させることが好ましい。
ここで、Li7P3S11構造は、X線回折(CuKα:λ=1.5418Å)において、2θ=17.8±0.3deg,18.2±0.3deg,19.8±0.3deg,21.8±0.3deg,23.8±0.3deg,25.9±0.3deg,29.5±0.3deg,30.0±0.3degに回折ピークを有する。
上記結晶構造であれば、非晶体よりイオン伝導度が高くなるからである。
硫化物系固体電解質の結晶化度が50%未満の場合は、結晶化によりイオン伝導度を高くするという効果が少なくなるためである。
結晶化度は、NMRスペクトル装置を用いることにより測定できる。具体的には、硫化物系固体電解質の固体31P−NMRスペクトルを測定し、得られたスペクトルについて、70−120ppmに観測される共鳴線を、非線形最少二乗法を用いたガウス曲線に分離し、各曲線の面積比を求めることにより測定できる。
好ましい硫化物系固体電解質の原料は、Li2S(硫化リチウム)、P2S5(五硫化二リン)である。
以下、硫化物系固体電解質の原料として、Li2S(硫化リチウム)、P2S5(五硫化二リン)を用いた硫化物系固体電解質について説明する。
硫化リチウムは、例えば、特開平7−330312号、特開平9−283156号、特開2010−163356、特願2009−238952に記載の方法により製造することができる。
例えば、特開2010−163356では、炭化水素系有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを70℃〜300℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成する。
また、特願2009−238952では、水溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを10℃〜100℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成する。
また、N−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物がリチウムイオン電池のサイクル性能を低下させることがない。このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高イオン伝導性電解質が得られる。
一方、特開2010−163356に記載の硫化リチウムの製法で製造した硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等の含有量が非常に少ないため、精製せずに硫化物系固体電解質の製造に用いても良い。
好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号に記載された精製法等が挙げられる。具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。
特に好ましくは、Li2S:P2S5=68:32〜74:26(モル比)である。
(a)溶融急冷法
溶融急冷法は、例えば、特開平6−279049、WO2005/119706に記載されている。
具体的には、P2S5とLi2Sを所定量乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物系ガラス固体電解質が得られる。
反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃である。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/sec程度、好ましくは10〜10000K/secである。
メカニカルミリング法は、例えば、特開平11−134937、特開2004−348972、特開2004−348973に記載されている。
具体的には、P2S5とLi2Sを所定量乳鉢にて混合し、例えば、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、硫化物系ガラス固体電解質が得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応を行うことができる。MM法によれば、室温でガラス固体電解質を製造できるため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス固体電解質を得ることができるという利点がある。
また、MM法では、ガラス固体電解質の製造と同時に、ガラス固体電解質を微粉末化できるという利点もある。
MM法は回転ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等種々の形式を用いることができる。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、特開2010−90003に記載されているように、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、特開2009−110920や特開2009−211950に記載されているように、原料に有機溶媒を添加してスラリー状にし、このスラリーをメカニカルミリング処理してもよい。
また、特開2010−30889に記載のようにメカニカルミリング処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
メカニカルミリングの際に原料が60℃以上160℃以下になるようにすることが好ましい。
スラリー法は、WO2004/093099、WO2009/047977に記載されている。
具体的には、所定量のP2S5粒子とLi2S粒子を有機溶媒中で所定時間反応させることにより、硫化物系ガラス固体電解質が得られる。
ここで、特開2010−140893に記載されているように、反応を進行させるため、原料を含むスラリーをビーズミルと反応容器との間で循環させながら反応させてもよい。
また、WO2009/047977に記載されているように、原料の硫化リチウムを予め粉砕しておくと効率的に反応を進行させることができる。
また、特願2010−270191に記載されているように、原料の硫化リチウムの比表面積を大きくするために溶解パラメーターが9.0以上の極性溶媒(例えば、メタノール、ジエチルカーネート、アセトニトリル)に所定時間浸漬してもよい。
反応時間は、好ましくは1時間以上16時間以下、より好ましくは、2時間以上14時間以下である。
原料である硫化リチウムと五硫化二りんが、有機溶媒の添加により溶液又はスラリー状になる程度であることが好ましい。通常、有機溶媒1リットルに対する原料(合計量)の添加量は0.001kg以上1kg以下程度となる。好ましくは0.005kg以上0.5kg以下、特に好ましくは0.01kg以上〜0.3kgである。
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性有機溶媒(例えば、炭化水素系有機溶媒)、非プロトン性の極性有機化合物(たとえば、アミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化合物,
環式有機リン化合物等)を、単独溶媒として、又は、混合溶媒として、好適に使用することができる。
炭化水素系有機溶媒としては、溶媒である炭化水素系溶媒としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素又は芳香族炭化水素が使用できる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
これらのうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
尚、必要に応じて炭化水素系溶媒に他の溶媒を添加してもよい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類等、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
具体的には、上記で得られた硫化物系固体電解質(ガラス)を所定の温度で熱処理し、硫化物系結晶化ガラス(ガラスセラミックス)固体電解質を生成させる。
また、加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。
また、加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。
また、雰囲気は、空気であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。
さらに特開2010−186744に記載されているように溶媒中で加熱してもよい。
熱処理時間は、180℃以上210℃以下の温度の場合は、3時間以上240時間以下が好ましく、特に4時間以上230時間以下が好ましい。また、210℃より高く330℃以下の温度の場合は、0.1時間以上240時間以下が好ましく、特に0.2時間以上235時間以下が好ましく、さらに、0.3時間以上230時間以下が好ましい。
熱処理時間が0.1時間より短いと、結晶化度の高い結晶化ガラスが得られにくい場合があり、240時間より長いと、結晶化度の低い結晶化ガラスが生じるおそれがある。
平均粒径の測定は、レーザー回折式粒度分布測定方法により行うことが好ましい。
固体電解質、活物質及び導電性物質を一体化した複合材料粒子において、複合材料粒子全体に占める、固体電解質の配合量は0質量%より大きく70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、10質量%以上65質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。活物質と導電性物質の合計の配合量は、30質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは、35質量%以上90質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
活物質と導電性物質の合計に対する活物質の配合量は、5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、40質量%以上90質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
これら製造方法のうち、遊星ボールミルを用いて混合する方法、又は活物質と導電性物質の混合物を活物質の融点以上で加熱する方法が好ましい。
加熱温度は活物質の融点以上であればよいが、好ましくは112℃〜440℃である。加熱保持時間は例えば1分〜48時間であり、好ましくは10分〜12時間であり、より好ましくは15分〜10時間である。
尚、円形度Cは下記式で定義される。
円形度C=(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の周長)/(粒子投影図の輪郭の長さ)
円形度Cは、測定対象である複合材料粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の画像解析から決定する。
N/ΔVN=(1/a)N+(1/(ab)) (1)
(式中、aは流動性パラメーター、Nはタッピング回数、ΔVNはかさ減り度を示す。)
かさ減り度Vは下記式より求める。
ΔVN=(V0−VN)/V0 (2)
(式中、V0はタッピング前の粉体容積、VNはN回タッピング後の粉体容積である。)
測定したV0及びVNと上記式から、N回タッピングした後のかさ減り度ΔVNを算出する。
タッピング回数の上限を1000回とし、1000回までの数点について、かさ減り度ΔVNを算出する。式(1)に示すように、得られたデータについて、X軸をN、Y軸を(N/ΔVN)としてグラフ化すると直線が得られる。直線の傾き(1/a)からaを求め、このaと切片(1/(ab))から付着性指数(1/b)を算出する。
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
導電助剤の含有量が多すぎると電気容量が小さくなるおそれがあり、導電助剤の量が少ないと(又は含まない)と電気抵抗が高くなるおそれがある。
バインダーの含有量が多すぎると電気容量が小さくなるおそれがあり、バインダーの量が少ないと(又は含まない)と結着が弱くなるおそれがある。
尚、ガラス状固体電解質と比較してガラスセラミックス固体電解質のイオン伝導度が高い場合には、ガラスセラミック化することが好ましい。
ガラス状固体電解質の一部又は全部を融着させれば、ガラス状固体電解質粒子間の界面抵抗を低くすることができる場合がある。
また、本発明の電極材料を集電体上に膜状に形成して電極とする方法が挙げられる。製膜方法としては、エアロゾルデポジション法、スクリーン印刷法、コールドスプレー法等が挙げられる。さらに、溶媒に分散又は一部を溶解させてスラリー状にして塗布する方法が挙げられる。必要に応じてバインダーを混合してもよい。
電極層として用いる場合は、電池設計に応じて、適宜に層厚みを選定すればよい。
固体電解質層は、上述した固体電解質からなる層であり、好ましくは固体電解質粒子が互いに融着している層である。ここで融着とは、固体電解質粒子の一部が溶解し、溶解した部分が他の個体電解質粒子と一体化することを意味する。また、固体電解質層は、固体電解質の板状体であってもよく、当該板状体固体電解質層は、固体電解質粒子の一部又は全部が溶解し、互いに結合して板状体になっている場合を含む。
固体電解質層の厚さは、好ましくは0.001mm以上1mm以下である。
負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
電解質、及び導電助剤については、上述した電極材料と同様なものが使用できる。
(1)硫化リチウム(Li2S)の製造
硫化リチウムは、特開平7−330312号公報の第1の態様(2工程法)の方法に従って製造した。具体的には、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。
得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
尚、亜硫酸リチウム(Li2SO3)、硫酸リチウム(Li2SO4)並びにチオ硫酸リチウム(Li2S2O3)の各硫黄酸化物、及びN−メチルアミノ酪酸リチウム(LMAB)の含有量は、イオンクロマトグラフ法により定量した。その結果、硫黄酸化物の総含有量は0.13質量%であり、LMABは0.07質量%であった。
上記で製造したLi2SとP2S5(アルドリッチ製)を出発原料に用いた。これらをモル比70:30に調整した混合物約1gと、直径10mmのアルミナ製ボール10ケとを45mLのアルミナ製容器に入れ、遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)にて、窒素中、室温(25℃)にて、回転速度を370rpmとし、20時間メカニカルミリング処理することで、白黄色の粉末である硫化物系ガラス固体電解質を得た。ガラス転移温度をDSC(示差走査熱量測定)により測定したところ、220℃であった。
硫化物系ガラス固体電解質の組成(LiaMbPcSd)は、a=14、b=0、c=6、d=22である。
製造した硫化物系ガラスを窒素雰囲気下、300℃で2時間加熱した。得られた硫化物ガラスセラミックスについて、X線回折測定したところ、2θ=17.8、18.2、19.8、21.8、23.8、25.9、29.5、30.0degにピークが観測された。
(1)複合材料粒子(正極材料)の作製
硫黄(S)(アルドリッチ製、純度99.998%)7gと、カーボンブラック(CB)(ケッチェンブラック(EC600JD、ライオン社製)3gを、事前に混合した後、混合物を密閉性のステンレス容器に入れ、電気炉にて加熱処理した。具体的に、室温から10℃/分にて150℃まで昇温し、150℃で6時間保持した後、300℃まで10℃/分で昇温し、2.75時間保持、その後自然冷却した。これにより、S/CBの複合体を得た。
この複合体5gと製造例1で製造した硫化物ガラスセラミックス粉末5gをミルポットに入れ、遊星型ボールミル(伊藤製作所製LP4)で室温(25℃)にて、回転速度を220rpmとし、5時間メカニカルミリング処理することで複合材料粒子(正極材料)を得た。
(1)の正極材料をハイブリダイゼーションシステム((株)奈良機械製作所NHS−O型)を用いて回転数10000rpm、温度30℃で1時間処理した。
測定装置として、レーザー回折式粒度分布測定装置(MalvernInstrumentsLtd社製マスターサイザー2000)を使用した。
装置の分散槽に脱水処理されたトルエン(和光純薬製、製品名:特級)110mlを入れ、さらに分散剤として脱水処理されたターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を6%添加し、十分混合した後、測定対象である乾燥した正極材料を添加して粒径分布を測定した。尚、乾燥した正極材料の添加量は、測定装置で規定されている操作画面で、粒子濃度に対応するレーザー散乱強度が規定の範囲内(10〜20%)に収まるように加減する。この範囲を超えると多重散乱が発生し、正確な粒子径分布を求めることができなくなるおそれがある。また、この範囲より少ないとSN比が悪くなり、正確な測定ができないおそれがある。マスターサイザー2000では、乾燥した正極材料の添加量に基き、レーザー散乱強度が表示されるので、上記レーザー散乱強度に入る添加量を見つけるとよい。
乾燥した正極材料の添加量は、イオン伝導性物質の種類等により異なるが、概ね0.01g〜0.05g程度である。
測定した粒径分布を図3に示す。尚、図の縦軸は粒子数の相対頻度を表す。この正極材料のモード径(dmod)は7.61μmであった。
具体的に、粒径分布から得られた、正極材料のモード径(dmod)と下記式(a)からμ0を算出し、μ0と下記式(b)からσ0 2を算出した。
σ2={exp(2μ0+σ0 2)}{exp(σ0 2)−1} (c)
計算の結果、この正極材料のlnσ2は3.92であった。
上記正極材料を用いて、リチウムイオン電池を作製した。具体的に、製造例1で製造した硫化物ガラスセラミックス粉末60mgを直径10mmのプラスティック製の円筒に投入し、加圧成型して、さらに、正極材料を5.1mg投入し再び加圧成型した。正極材料とは反対側から、インジウム箔(厚さ0.3mm、9mmφ)とリチウム箔(厚さ0.2mm、9mmφ)を投入して、正極、固体電解質層及び負極の三層構造とし、リチウムイオン電池を作製した。
この電池の放電容量を測定した結果を表1に示す。
ハイブリダイゼーション処理をしなかった他は、実施例1と同様にして正極材料、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。また、粒径分布を図4示す。この正極材料のlnσ2は7.56であった。
遊星型ボールミルのかわりに高速遊星ボールミル((株)栗本鐵工所製:ハイジー)を用い、ハイブリダイゼーション処理をしなかった他は、実施例1と同様にして正極材料、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。また、粒径分布を図5に示す。この正極材料のlnσ2は7.65であった。
ハイブリダイゼーション処理時の回転数を15000rpmとした他は、実施例1と同様にして正極材料、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。また、粒径分布を図6示す。この正極材料のlnσ2は2.49であった。
遊星ボールミルの代わりに、せん断式複合化装置を用い、ハイブリダイゼーション処理をしなかった他は、実施例1と同様にして正極材料、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。また、粒径分布を図7に示す。
図7のSEM写真と図3のSEM写真を比較すると、図7のSEM写真ではCBが分散不良であることがわかる。この正極材料のlnσ2は10.8であった。
遊星ボールミルの代わりに乳鉢混合法を用い、ハイブリダイゼーション処理をしなかった他は、実施例1と同様にして正極材料、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。また、粒径分布を図8に示す。この正極材料のlnσ2は10.3であった。
(1)複合材料粒子(正極材料)の作製
Li2Sを4.35g、CB(アセチレンブラック(デンカブラック電気化学工業(株)製)を1.3g、製造例1で製造した硫化物ガラスセラミックス粉末4.35gを、同時にミルポットに入れ、遊星ボールミルで回転速度220rpmとし、20時間メカニカルミリング処理することで正極材料を得た。
実施例1と同じハイブリダイゼーションシステムを用いて、正極材料を回転数10000rpm、温度50℃で1時間処理した。粒径分布を図9に示す。この正極材料のlnσ2は4.28であった。
製造例1で製造した硫化物ガラスセラミックス粉末60mgを直径10mmのプラスティック製の円筒に投入し、加圧成型して、さらに正極材料を5.9mg投入し再び加圧成型した。正極材料とは反対側から、インジウム箔(厚さ0.3mm、9mmφ)とリチウム箔(厚さ0.2mm、9mmφ)を投入して、正極、固体電解質層及び負極の三層構造とし、リチウムイオン電池を作製した。
この電池の放電容量を表2に示す。
ハイブリダイゼーション処理をしなかった他は、実施例4と同様にして正極材料、リチウムイオン電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。また、粒径分布を図10に示す。この正極材料のlnσ2は9.62であった。
本発明の電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを電力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電池として用いることができる。
Claims (8)
- 活物質粒子、固体電解質及び導電性物質を一体化した複合材料粒子を含み、
前記活物質粒子が、硫黄又は硫黄を含む化合物であり、
前記固体電解質が、硫黄とリチウムを含む電解質であり、
前記導電性物質が細孔を有する炭素材料であり、
前記複合材料粒子が下記式(1)を満たす、全固体リチウムイオン二次電池用正極材料。
3≦lnσ2≦9…(1)
[式中、σ2は複合材料粒子の粒子径の対数正規分布の分散を示す。] - 前記活物質粒子が単体硫黄又は硫化リチウムである請求項1に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記導電性物質が、カーボンブラック、炭素繊維及び活性炭から選択される多孔質炭素である請求項1又は2に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記固体電解質が、下記式(1)に示す組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質である請求項1〜3のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極材料。
LiaMbPcSd (1)
((1)において、MはB、Zn、Si、Cu、Ga又はGeから選択される元素を示す。
a〜dは各元素の組成比(モル比)を示し、a:b:c:dは1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。) - 前記導電性物質の細孔内に前記活物質粒子が含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極材料から製造される、全固体リチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極材料を含む、全固体リチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項6又は7に記載の正極を含む全固体リチウムイオン二次電池。
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