JP2013147680A - 黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本来的には白色であるフッ化物溶射皮膜が有する優れた耐食性を損なうことなく、白色フッ化物溶射皮膜の表面の色を変化させて、文字や数字、図形、模様、あるいは社名か製造番号等の識別記号等を表示させて工業製品をデザイン化処理するのに有効な技術を提案することにある。
【解決手段】基材と、その表面に直接またはアンダーコートを介して形成された、元素の周期律表IIIa族元素のフッ化物白色溶射皮膜とからなるものにおいて、そのフッ化物白色溶射皮膜の表面に、高エネルギー照射処理して得られる黒色緻密化層を設けた黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材であって、その黒色緻密層が文字や図形あるいはその他の識別記号等として表現されたもの該皮膜表面に形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材およびその製造方法に関し、特に、皮膜表層部分に腐食性の強いハロゲンガスなどの雰囲気に曝されても良好な耐食性や耐プラズマエロージョン性を示す黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材とそれの製造方法について提案する。
溶射法は、ArやHなどのガスプラズマ炎または炭化水素の燃焼炎などを用いて、金属(以下、合金を含めて金属と言う)やセラミックス、サーメットなどの粒子を、軟化もしくは溶融した状態にして被処理対象物(基材)の表面に吹付け、これらを堆積させて皮膜状にする表面処理技術の1つである。この技術は、熱によって軟化したり溶融する材料であれば、ガラスやプラスチックをはじめ、融点の高いタングステン(融点3,387℃)、タンタル(融点2,996℃)などの金属はもとより、Al(融点2,015℃)、MgO(融点2,800℃)などの酸化物系セラミックスでも成膜することが可能であり、皮膜材料種の選択自由度が非常に大きいという利点がある。このため、溶射皮膜の特性を利用した用途が、多くの産業分野に拡大している。
また、溶射装置や溶射ガンなどについても、これらの良し悪しが溶射皮膜の品質に大きく影響することから、品質の向上や生産性の向上と共に、さらなる改善や開発が精力的に行なわれている。例えば、特許文献1では、大気中で溶射された金属皮膜の粒子は酸化物を多量に含むため皮膜を構成する粒子間の相互結合力や基材との密着力低下原因となるとして、空気を排除した50hPa〜200hPaの低圧アルゴンガス雰囲気下でプラズマ溶射(減圧プラズマ溶射)する方法やその装置を提案している。
また、特許文献2では、炭化物サーメット粒子のように、高温の熱源中において炭化物が分解したり酸化する現象を最少限に止めると共に熱源の運動エネルギーを最大限に利用して炭化物粒子の飛行速度を上げ、その粒子の被爆時間(温度)を極限まで短縮する高速フレーム溶射法を提案している。
このように従来、溶射皮膜の品質や溶射装置については十分に検討されてきたが、溶射皮膜の成膜プロセスについての検討は未だ不十分である。例えば、溶射熱源中に投入された溶射粒子群には完全に溶融するものがある一方で、未溶融状態のままのものもあり、こうした粒子は基材表面に堆積した際、相互の融着が不完全ないしは不均等になることから、空隙(気孔)が不可避に発生し、これが皮膜の気孔となって顕在化する問題がある。
例えば、特許文献3によれば、減圧プラズマ溶射法で形成されたAlやYの溶射皮膜は、0.2〜7%程度の気孔が存在していることが明らかにされている。即ち、これらの気孔の大部分は、貫通気孔(皮膜の外部から基材の表面まで続いている気孔)として存在しているため、使用環境の中では腐食性のガスや流体の浸入通路を提供することとなって、基材表面の腐食が進行し、該皮膜と基材との接合力の低下を招いて剥離する原因となる。
このように、溶射皮膜というのは、気孔が不可避に存在することから成膜後に封孔処理を施すことが奨励されている。例えば、JIS H 9302セラミック溶射作業標準では、セラミック溶射皮膜を形成した後、その表面に無機系あるいは有機高分子系の封孔剤を塗布したり噴霧して、気孔内部に充填する方法が記載されている。
ところで、前述した溶射皮膜被覆部材が、半導体加工装置用部材、とくにハロゲンやハロゲン化合物が存在する環境下でプラズマ処理されたり、プラズマ処理によって発生する微細なパーティクルを洗浄除去することが必要な半導体加工装置の分野において使用される場合、さらに、以下のような表面処理の検討が必要であり、そのための従来技術についても幾つかの提案がある。
即ち、半導体加工および液晶製造プロセスに使用されるドライエッチャー、CVD、PVDなどの加工装置類では、シリコンやガラスなどの基板回路の高集積化に伴う微細加工とその精度向上の必要性から、加工環境として一段と高い清浄性が求められるようになってきた。その一方で、微細加工用の各種プロセスについては、フッ化物、塩化物をはじめとする腐食性の強い有害ガスあるいは水溶液を用いている。従って、これらのプロセスに配設されている部材類は腐食損耗速度が速く、その結果として、腐食生成物の発生とその飛散による二次的な環境汚染が懸念されている。
半導体ディバイスは、その素材が、SiやGa、As、Pなどから成る化合物半導体を主体としたものであり、その製造工程の多くは、真空もしくは減圧中で処理されるいわゆるドライプロセスに属し、これらの環境中において、各種の成膜、不純物の注入、エッチング、アッシング、洗浄などの処理が繰返し施されている。このようなドライプロセスに属する装置としては、酸化炉、CVD装置、PVD装置、エピタキシャル成長装置、イオン注入装置、拡散炉、反応性イオンエッチング装置およびこれらの装置に付属している配管、給排気ファン、真空ポンプ、バルブ類などの部材、部品がある。また、これらの装置類では、次に示すような腐食性の強い薬剤およびガスの使用が知られている。基本的には、BF、PF、PF、NF、WF、HFなどのフッ化物、BCl、PCl、PCl、POCl、AsCl、SnCl、TiCl、SiHCl、SiCl、HCl、Clなどの塩化物、HBrなどの臭化物、NH、ClFなどの使用も散見されている。
上述したハロゲン化物を用いるドライプロセスでは、反応の活性化と加工精度の向上のため、しばしばプラズマ(低温プラズマ)が用いられる。プラズマ使用環境中では、各種のハロゲン化物は腐食性の強い原子状またはイオン化したF、Cl、Br、Iとなって半導体素材の微細加工に大きな効果を発揮している。その一方で、プラズマ処理(特にプラズマエッチング処理)された半導体素材の表面からは、エッチング処理によって削りとられた微細なSiO、Si、Si、Wなどのパーティクルが環境中に浮遊し、これらが加工中あるいは加工後のディバイスの表面に付着してその品質を著しく低下させるという問題がある。
これらの対策の一つとしては、従来、アルミニウム陽極酸化物(アルマイト)による表面処理がある。その他、Al、Al・TiO、Yなどの酸化物をはじめ、周期律表IIIa族金属の酸化物を溶射法、蒸着法(CVD法、PVD法)などによって、装置用部材の表面を被覆したり、また、焼結材として利用する技術がある(特許文献4〜8)。
さらに最近では、YやY−Alの溶射皮膜表面を、レーザビームや電子ビームを照射して該溶射皮膜の表面を再溶融することによって、耐プラズマエロージョン性を向上させる技術も開示されている(特許文献9〜12)。
例えば、昨今の高性能半導体加工の製造環境の清浄化度を極限まで高める手段として、従来のY皮膜の耐プラズマエロージョン性能を凌駕する材料としてYF(フッ化イットリウム)を成膜状態で適用する方法が提案されている。具体的には、YAGなどの焼結体や周期律表IIIa族元素の酸化物の表面にYF膜を被覆したり(特許文献13、14)、YやYb、YFなどの混合物を成膜材料とした方法(特許文献15、16)、YFを成膜材料として溶射法によって被覆形成する方法が(特許文献17、18)に見られる。
特開平1−139749号公報 特開平9−67661号公報 特開2001−164354号公報 特公平6−36583号公報 特開平9−69554号公報 特開2001−164354号公報 特開平11−80925号公報 特開2007−107100号公報 特開2005−256093号公報 特開2005−256098号公報 特開2006−118053号公報 特開2007−217779号公報 特開2002−293630号公報 特開2002−252209号公報 特開2008−98660号公報 特開2005−243988号公報 特開2004−197181号公報 特開2002―037683号公報
以上説明したように、従来のフッ化物溶射皮膜は、フツ化物皮膜が有する耐ハロゲン腐食性を利用することを目的として開発されたものである。具体的には、特許文献13に記載されているように、大気または減圧プラズマ溶射法や高速フレーム溶射法によってフッ化物溶射皮膜を形成するに際し、基材を予熱したり、成膜後250℃〜500℃の熱処理を施して、アモルファス状フッ化物を斜方晶化させたり、特許文献16に開示されているように、低温の溶射熱源によるコールドスプレー法を利用する提案などである。
また、特許文献14に開示されているように、酸化イットリウムの溶射皮膜や焼結
体の表面をフツ化物に変化させる提案などもある。これらの技術は、フッ化物皮膜の耐ハロゲンガス性の向上を目的とし、フッ化物皮膜の色彩については全く関心がないばかりか、前記特許文献13の(0010)段落に記載されているように「フッ化イットリウムを用いるだけでは、腐食性ハロゲンによりフッ化イットリウム膜の色が変化する」とし、その変色の原因は、溶射成膜状態のままでは皮膜の耐食性が十分でないことを示唆するものと判断し、その対策として、成膜後の熱処理の施工を提案している。
このように、従来のフッ化物溶射皮膜については、皮膜の性質や性状、組成などの科学的・物理的な研究はあるものの、該フッ化物溶射皮膜が有する色(彩)に関しての研究や皮膜の意匠性などに及ぼす技術的な検討までは行なわれていないのが実情である。そのため、従来のフッ化物溶射皮膜は、この皮膜の原色(生成り色)である白色ないし乳白色のみの状態で製品化されている。
本発明者らは、かって、白色のY溶射皮膜を減圧雰囲気下で電子ビーム照射することによって、酸化物溶射皮膜を黒色化したり(特許第4398436号)、実質的に酸素を含まない雰囲気下で白色のY粉末を用いて黒色のY3−x溶射皮膜を形成する技術を提案し(特許第4603018号)(特許4740932号)、白色の酸化物溶射皮膜では得られない熱放射特性を付与することに成功し、半導体加工作業の効率向上に寄与した経緯がある。
そこで本発明の目的は、本来的には白色であるフッ化物溶射皮膜が有する優れた耐食性を損なうことなく、白色フッ化物溶射皮膜の表面の色を変化させて、文字や数字、図形、模様、あるいは社名や製造番号等の識別記号等を表示させて工業製品をデザイン化処理するのに有効な技術を提案することにある。
また、本発明の他の目的は、フッ化物溶射皮膜の表面部分を、熱エネルギー照射による再溶融処理によって無気孔化し、良好な耐食性と耐プラズマエロージョン性とを兼ね備えたフッ化物溶射皮膜被覆部材を提供すること、およびこうした部材の有利な製造方法を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、発明者らは以下に述べるような知見を得た。すなわち、基材の表面に被覆形成した白色のフッ化物溶射皮膜の表面を高エネルギー照射して再溶融すると、その再溶融部のみが局部的に黒化変化し、未溶融部の白色部と鮮明に区別できるようになることである。その様子は白紙に鉛筆や黒インクによって文字を書いたり、絵を描いたりするような識別力が得られるほどである。とくに、発明者らの知見では、フッ化物の白色溶射皮膜を局部的に再溶融して黒色化する高エネルギー照射処理の方法としてはレーザービームが適しており、一方、広い面積を再溶融しかつ黒色化する高エネルギー照射処理には電子ビーム照射が好適であることが判った。
このような知見の下に開発した本発明は、基材と、その表面に直接またはアンダーコートを介して形成された、元素の周期律表IIIa族元素のフッ化物白色溶射皮膜とからなるものにおいて、そのフッ化物白色溶射皮膜の表面に、高エネルギー照射処理して得られる黒色緻密層を設けたことを特徴とする黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材である。
また、本発明は、基材の表面に、直接またはアンダーコートを介して、元素の周期律表のIIIa族のYおよび原子番号57〜71のランタノイド系元素のフッ化物からなる多孔質な白色溶射皮膜を形成し、その後、そのフッ化物溶射皮膜の表面を高エネルギー照射処理して黒色緻密層にすることを特徴とする黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材の製造方法を提案する。
なお、本発明では、以下のような構成にすることがより好ましい解決手段である。
(1) 前記フッ化物白色溶射皮膜は、気孔率が0.2〜20%の多孔質層で、全体の厚さが30〜500μmであって、そのうちの該溶射皮膜表面から0.1〜3μmまでの範囲が電子ビーム照射またはレーザビーム照射処理によって黒色緻密層に変化していること、
(2)前記アンダーコートは、Al、Al−Ni、Al−Zn、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr−Alのうちから選ばれる1種以上の金属質溶射皮膜を、30〜150μmの厚さに形成したものであること、
(3)前記フッ化物白色溶射皮膜は、元素の周期律表IIIa族のYおよび原子番号57〜71のランタノイド系元素から選ばれる1種以上の元素のフッ化物であること、
(4)前記高エネルギー照射処理によって形成される黒色緻密層の部分が、文字や数字、図形、模様あるいは社名や製造番号、商標のような識別番号等を表示する部分であること、
(5)前記フッ化物白色溶射皮膜を120〜250℃に予熱したのち、前記高エネルギー処理を施し、次いで、1分間当り1℃以下の冷却速度で室温まで冷却すること、
(6)前記高エネルギー照射処理により、前記白色溶射皮膜の表面に、文字や数字、図形、模様あるいは社名や製造番号商標のような識別番号等を表示する黒色緻密化層を形成すること、
(7)白色のフッ化物白色溶射皮膜は、フッ化物溶射粉末材料を、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、低温溶射法(コールドスプレー法)などにより、基材の表面に灰色(乳白色)に被覆形成したものであってもよい。
(8)前記のフッ化物白色の溶射皮膜がレーザー
や電子ビームなどの高エネルギー源に照射された際、溶融した溶射皮膜が照射後の冷却過程において化学的性質を消失することがない溶射皮膜に対して適用できるものである。従って、高蒸気圧AlFのように高エネルギー照射時に昇華するような皮膜には、照射条件を検討する必要がある。
本発明に係るフッ化物白色の溶射皮膜の黒色化技術は、次のような効果が期待できる。
(1)本発明によれば、表面が白色〜乳白色であるフッ化物溶射皮膜の外観色一部のみまたは全体を黒色化させることができる。
(2)本発明によれば、黒色化したフッ化物溶射皮膜表面が、緻密化すると共に結晶化する傾向が強いため、皮膜の気孔率の減少に伴う耐食性の向上と耐ハロゲン性などの化学的性質の安定性が向上する。
(3)本発明によれば、黒色化したフッ化物溶射皮膜の表面層は、0.1〜3μmの範囲に限定され、その下層部のフッ化物層は、成膜当初の状態(フッ化物の白色溶射皮膜のままの状態)で存在しているため、黒色化するための高エネルギー照射に起因する熱影響が表層部のみに限定される。そのため、基材に対するフッ化物溶射皮膜の密着性などに悪影響が出ることはなく、成膜時の良好な性状を維持することができる。
(4)本発明によれば、フッ化物白色溶射皮膜の黒色化のための熱源として、レーザビームと電子ビームを使用するため、熱源の特性を利用することによって、皮膜の全面はもとより、文字や数字、複雑な図形、模様を描くなど、部分的、局部的に黒色化させる場合などに対応でき、選択の自由度が高い。
a.具体的には、レーザ熱源を使用すると、ビームの直径を変化させたり、レンズなどを利用することによって、大小さまざまな黒い線をフッ化物白色溶射皮膜の表面に描くことができる。従って、これらのレーザ熱源の特性を利用することによって、白色の溶射皮膜の表面に黒色の線による各種の模様をはじめ、文字、数字、社名、商標、製品番号、記号などを自由に表現することに可能となる。例えば、本発明によれば、半導体加工用装置内に配設される各種のフツ化物溶射皮膜被覆部に対して、黒色の製造番号、管理番号、製造日、責任者名の記入を通して、品質管理体制を充実させることができる。
b.一方、電子ビーム照射の熱源は、広く表面のフッ化物溶射皮膜の黒色化に有利に使用するので、被覆面積の大きい部材の全体を黒色化する場合などに適している。また、フッ化物皮膜の表面層の極浅い層(例えば0.1μm厚さ)のみを黒色化して、実際の半導体加工装置内で使用すると、ハロゲンガスによる化学的腐食作用やプラズマエロージョン性などの物理的作用によって、発生する皮膜の不均等な消耗状況が可視化できる利点がある。そのため、消耗の不均等性を是正するための部材形状の変更や皮膜厚さの増減などの対策が可能となる。
なお、フッ化物溶射皮膜の表面を電子ビーム照射するに際して、予め文字や数字などを切り抜いた高分子膜を貼付し、その上から照射処理を行うと文字や数字のみが黒色として印刷されるので、レーザ照射を同様な目的に利用できる。
本発明によれば、さらに次のような効果も期待できる。
(5)上掲の構成に係る本発明によれば、フッ化物白色溶射皮膜に対して電子ビームやレーザビーム照射処理を施して該溶射皮膜の表面部分を再溶融することにより、その表面層部分の開気孔の他、該皮膜内部の空隙を通じて繋がる貫通気孔が、融着現象によって全て封鎖できるので、気孔の存在によって誘発される前述の腐食問題を確実に解決することができる。
(6)本発明によれば、フッ化物溶射皮膜を高エネルギー照射処理したときの再溶融層については、これが急冷されたときに該溶射皮膜の照射面において発生する“ひび割れ”が、基材の予熱や徐冷によってほぼ完全に消滅して無気孔化するので、部材の耐食性をより一層向上すると共に、半導体や液晶の製造・加工装置などに適用した場合に耐プラズマエロージョン性をより一層向上させることができる。
本発明を説明するための処理工程を模式的に示した図である。 YF大気プラズマ溶射後の成膜状態と電子ビーム照射状態の皮膜表装部の色彩を対比する図である。 YF白色溶射皮膜の表層部をレーザビーム照射によって黒色化させて図形(a)、社名(b)を描いた状態を示す図である。
以下、本発明の好適実施形態について説明する。図1は、本発明の方法を実施するための工程の流れを示したものである。以下、その工程順に沿って、本発明の構成の詳細を説明する。
(1)基材および前処理
本発明に適用できる基材は、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、ステンレス鋼、その他の合金鋼や炭素鋼、Niおよびその合金などの金属、石英や酸化物、炭化物、硼化物、珪化物、窒化物、およびこれらの混合物からなる無機化合物の焼結体などが好適である。また、本発明に用いる基材としては、表面に金属めっき(電気めっき、CVD、PVD)したものも使用することができる。これらの基材については、必要に応じ、脱脂や粗面化などの前処理を施すことが好ましい。
(2)基材表面へのフッ化物白色溶射皮膜の形成方法
前述したように、前記基材表面にフッ化物溶射皮膜を形成するに当たっては、JIS H9302に規定されているセラミック溶射作業標準に準拠した前処理を行なうことが好ましい。例えば、基材表面の錆や油脂類などを除去し、その後、AlやSiCなどの研削粒子を吹付けて粗面化し、その表面に直接または金属質のアンダーコートを施した後に、その上にトップコートとしてフッ化物溶射皮膜を形成する。そのフッ化物白色溶射皮膜を基材表面に被覆形成する方法としては、大気プラズマ溶射法や減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法などが好適に用いられるが、特には限定されない。
前記基材上への前記フッ化物白色溶射皮膜の形成は、その表面に直接またはアンダーコートを介して間接的に行なう。そのアンダーコートとしては、AlやAl−Ni合金、Al−Zn合金、Ni−Cr合金、Ni−Al合金、Ni−Cr−Al合金などの金属質のものを、30〜150μmの厚さに施工するのが好ましい。
なお、これらのアンダーコートは、フレーム溶射、電気アーク溶射法、高速フレーム溶射法、各種プラズマ溶射法などによって成膜できるが、他の成膜方法であってもよい。
(3)フッ化物溶射材料
本発明において用いられるフッ化物溶射皮膜形成用溶射材料としては、元素の周期律表IIIaのY、原子番号57〜71に属するランタノイド系元素のフッ化物の粒子が用いられる。即ち、原子番号57〜71の金属元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジズプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などがある。
これらの金属からなるフッ化物溶射材料としては、粒径5〜80μmに調整し生成りの色(原色)が略白色の粒子を用いる。この粒径のものに限定する理由は、5μm未満の細粒では溶射熱源中で加熱された際に分解されて粒子径がさらに小さくなって成膜するより飛散するものの方が多くなるからである。一方、80μm超の粒子では、溶射ガンへの送給速度が不安定になると共に、成膜された皮膜の気孔が大きくなる傾向が認められるからである。
前記フッ化物溶射材料を溶射して得られるフッ化物白色溶射皮膜は、30〜500μmの厚さとなるように施工するのがよい。特に、50〜200μmの範囲が好適である。その理由は、30μmよりも薄い膜では、均等な膜厚のものを得にくく、一方、500μmより厚く形成すると、フッ化物膜の形成時における残留応力が大きくなって、基材から剥離しやすくなるからである。
(4)フッ化物白色溶射皮膜の特徴
フッ化物共通の物理化学的性質として次のように考えられる。即ち、このフッ化物白色溶射皮膜は、金属皮膜やセラミック皮膜と比較すると、ハロゲン系ガスに対する化学的安定性を有するが、表面エネルギーが小さいために皮膜を構成するフッ化物粒子の相互結合力および基材の密着強さが弱いという問題がある。また、この皮膜は、溶射熱源中で分解(酸化)、蒸気化(気化)、溶融、軟化などの諸現象が極めて短時間(1/100〜1/1000秒)のうちに進行したフッ化物粒子の集合体であることから、多孔質(面積率0.2〜20%)で、皮膜中には大きな残留応力が発生するため、基材が僅かに変形しただけでも、皮膜が剥離することが多い。加えて、フッ化物自体は延性に乏しいため、皮膜が容易に“ひび割れ”し、前記成膜時に発生する気孔部とともに、酸やアルカリ洗浄液などの内部浸入を招き、このことが基材の腐食原因となりやすい。従って、フッ化物そのものの耐食性は良好であるものの、その性質を有効に利用できないという問題もある。
(5)フッ化物白色溶射皮膜表面への高エネルギー照射処理
そこで本発明では、基材表面に被覆した前記フッ化物白色溶射皮膜中に存在する貫通気孔部や残留応力に起因して発生する「ひび割れ」防止を、該皮膜表面を電子ビームまたはレーザビームなどの高エネルギー照射処理して再溶融させて緻密な膜にすると同時に、上述した目的に沿って黒色に変化させることにした。例えば、再溶融による緻密化と黒色化のための処理として、本発明では、下記のような高エネルギー照射処理、例えば、下記の条件の電子ビームの照射やレーザービームの照射が好適である。
(a)電子ビーム照射処理
照射雰囲気:1×10−1〜5×10−3MPaの不活性ガス雰囲気
照射出力:10〜30KeV、好ましくは12〜20KeV
照射速度:1〜50mm/s、好ましくは3〜10mm/s
照射回数:1〜30回(連続または不連続)、好ましくは3〜8回、但し、1回の照射で皮膜は黒色化する。
(b)レーザビーム照射処理
フッ化物白色照射皮膜の表面に対して、COレーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、エキシマレーザなどのレーザ熱源を照射して、前記溶射皮膜表面を溶融する。レーザビーム照射処理の雰囲気は、空気中、不活性ガス中、減圧(真空)中など自由に選択できる。なお、レーザビーム照射条件としては、下記のようなものが推奨される。
レーザ出力:1〜10kW、好ましくは3〜6kW
ビーム面積:1〜10mm、好ましくは1〜3mm(数字・文字は1mm以下でも可)
ビーム走査速度:1〜20mm/s、好ましくは1〜3mm/s
照射回数:1〜30回(連続または不連続)、このましくは1〜3回、但し、1回の照射で皮膜は黒色化する。
前記フッ化物白色溶射皮膜は、電子ビームやレーザビームのような高エネルギー照射処理によって、その表面層が溶融する。このことによって、該溶射皮膜表面には緻密層になると同時に黒色化する。この黒色化した緻密層は、表面からの深さが0.1〜3μm程度となるように照射条件を決定する。その理由は、0.1μmより薄い黒色緻密層では黒色の程度が薄くまた緻密性が不十分である。一方、3μmより厚くしても黒色化および緻密化の程度の照射効果が飽和するうえ、再溶融後の冷却過程において“ひび割れ”を起しやくなるからである。
次に、フッ化物白色溶射皮膜を前記の高エネルギー照射処理するに際しては、照射処理層の厚さを考慮(厚さ)して被処理基材を予熱すること、および照射後には徐冷することが好ましく、その条件として次のような管理を行なうことが好ましい。具体的には、高エネルギー照射処理前に、120〜250℃の温度に予熱し、その温度を維持しつつ高エネルギー照射を行い、該フッ化物白色溶射皮膜の表面を再溶融黒色化する。
その後、該溶射皮膜を冷却速度:1℃/min以下の速度にて徐冷することが好ましい。その理由は、フッ化物溶射皮膜の熱伝導率が小さく延性に乏しいため、予熱せずに高エネルギー溶射処理してから、室温(15〜30℃)状態にまで自然冷却すると、照射面に前記セラミックス溶射皮膜面の再溶融後と同様な“ひび割れ”現象を発生するからである。このため、実際の予熱−照射処理−徐冷の各操作は、0.1〜10hPa減圧中で実施することが望ましい。それは、減圧雰囲気だと、予熱温度を利用して照射できるうえ、そのまま放冷しても急冷されることなく、フッ化物溶射皮膜の表面が平滑化すると共に割れの発生を防止できるからである。なお、後述する実施例における本発明に係るフッ化物溶射皮膜の高エネルギー照射処理は、すべての減圧中で処理したものである。
(6)高エネルギー照射処理によるフッ化物溶射皮膜の表面処理事例
図2は、本発明に係るYFフッ化白色物溶射皮膜表面への高エネルギー照射による処理事例を示したものである。
a.図2(a)は、白色溶射皮膜を成膜直後のYFフッ化物溶射皮膜、同図(b)は、そのひまく表面を電子ビーム照射処理した該皮膜表層部(外観)を示すものである。成膜直後のフッ化物溶射皮膜は、白色(乳白色)を呈しているが、この表面を電子ビーム照射すると、全面が均等に黒色化し、両者の色別が容易となるほか、黒色化によって熱放射特性を発揮するようになることがうかがえる。
次に、図3(a)は、YFフッ化白色物溶射皮膜の表面をレーザビームを照射して、四角状の模様を描いた例を示したものである。図3(b)は、同じくフッ化物溶射皮膜の表面を、レーザビーム照射によって、社名をアルファベット記載したものであり、白色の溶射皮膜表面に黒色の英文社名が明瞭に印字されている。
以上の説明から明らかなように、フッ化物白色溶射皮膜の表面に対して、レーザービームや電子ビーム照射することによって、白色溶射皮膜の全面および局部を黒色化することができる。従って、この現象を利用すれば、溶射皮膜の表面に、文字や数字、図形、模様あるいは社名、商標などを自由に記載することができ、また、デザイン化することも可能である。
なお、高エネルギー照射部が黒色に変化する理由については、汎用の光学顕微鏡、電子顕微鏡、X線回折装置などによる試験や解析では明かでないが、今後、放射光を利用した解析装置による試験を行って、黒色化機構を解明する予定である。
(実施例1)
この実施例では、基材に相当するSS400鋼試験片(寸法:幅50mm×縦70mm×厚3.2mm)の表面に直接、YF、CeF、ErFのフッ化物溶射皮膜を、大気プラズマ溶射法によってそれぞれ100μmの厚さに形成し、その後、その溶射皮膜表面を高エネルギー照射して黒色の再溶融化した黒色緻密層を形成したものを準備し、該皮膜の貫通気孔の有無をフェロキシル試験方法によって調査した。なお、比較例として、高エネルギー照射処理をしないフッ化物白色溶射皮膜および耐プラズマエロージョン用溶射皮膜として知られているY溶射皮膜についても、高エネルギー照射の有無を変動因子としてフェロキシル試験に供した。
(1)フェロキシル試験(塩基噴霧試験)
このフェロキシル試験としては、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム10gおよび塩化ナトリウム15gを1リットルの蒸留水に溶解し、これを分析用のろ紙に十分含浸させ、その後、このろ紙を試験片表面に貼付し、30分間静置した後、ろ紙を剥がして、ろ紙面での青色斑点の有無を目視判定する方法によった。この方法によれば、アモルファス状膜に貫通気孔が存在するとフェロキシル試験液が浸透し、鉄基材界面に達して鉄イオンを生成させ、これにヘキサシアノ(III)酸カリウム塩が反応して、ろ紙の表面に青色斑点を生成することによって判定することができる。
(2)試験結果
上記試験結果を表1に示した。この表に示す結果から明らかなように、フッ化物溶射皮膜、酸化物溶射皮膜(Y)のいずれも成膜状態のままでは皮膜に多くの貫通気孔が存在するため、青色斑点が多数発生した(No.1、4、7、10)。また、酸化物溶射皮膜では(No.11、12)高エネルギー照射処理を行って皮膜表面を再溶融しても、溶融部の冷却過程において、皮膜に“ひび割れ”が発生するため、青色斑点数は少なくなるものの完全な緻密膜とはならなかった。
これに対して、フッ化物白色溶射皮膜を高エネルギー照射処理すると、皮膜の再溶融現象によって成膜時の貫通気孔部が消滅し、青色斑点は殆ど認められなくなり、酸、アルカリ、洗浄水などの内部浸入防止効果のあることが確認された。
Figure 2013147680
(実施例2)
この実施例では、Al基材(寸法:幅50mm×縦50mm×厚3mm)の表面に、大気プラズマ照射法によって、いずれも白色のフッ化物(YF、DyF、CeF)を80μmの厚さに溶射した後、その表面に対して電子ビーム照射またはレーザビーム照射を行なって再溶融処理して表面を黒色緻密層としたものを供試皮膜とし、これをプラズマエッチング処理を行なって、それぞれの皮膜の耐エロージョン性を評価した。なお、比較例の皮膜として、Y、Dy、CeO 12mass%Y−88mass%ZrO溶射皮膜についても同条件でプラズマエッチング処理を行なって比較検討した。
以下にプラズマエッチング雰囲気ガス組成と条件を示す。
(1)雰囲気ガスと流量条件
(a)含Fガス:CHF/O/Ar=80/100/160(1分間当りの流量cm
(b)含CHガス:C/Ar=80/100(1分間当りの流量cm
(2)プラズマ照射出力
高周波電力:1300W
圧力:4Pa
温度:60℃
(3)プラズマエッチング試験の雰囲気
(a)含Fガス雰囲気中で実施
(b)含CHガス雰囲気中で実施
(C)含Fガス雰囲気1h⇔含CHガス雰囲気1hを交互に繰返す雰囲気中で実施
(4)評価方法
耐プラズマエロージョン試験は、エッチング処理によって供試皮膜から飛散する皮膜成分のパーティクル数を計測することによって、耐プラズマエロージョン性と耐環境汚染性を調査した。パーティクル類は、試験容器内に配設した直径8インチのシリコンウエハーの表面に付着する粒径0.2μm以上の粒子数が30個に達するまでの時間を測定することにより実施した。
(5)試験結果
試験結果を表2に示した。この表に示す結果から明らかなように、比較例の溶射皮膜(Nパーティクル発生量が許容値を超えるまでの時間を示した場合、含CHガス中ではパーティクルの発生が少なく、含Fガス中ではやや多くなり、許容値に達する時間が短くなる状況が見られる。しかし、含Fガスと含CHガスを交互に繰返す雰囲気下におけるパーティクル発生数は一段と多くなっていることが判明した。この原因は、含Fガス中におけるフッ化ガスの酸化作用とCHガスの還元作用の繰返しによって、酸化物セラミック皮膜の表面の酸化膜が常に不安定な状態となって飛散するためと考えられる。これに対して、皮膜表面に黒色緻密層を有するフッ化物溶射皮膜(No.2、4、6)は、含Fガス中、含CHガス中およびこれらのガスを交互に繰返し雰囲気中に供給した場合でも化学的に安定な状態を維持し、パーティクルの発生を抑制したものと考えられる。なお、フッ化物溶射皮膜からエロージョンにより削り取られるパーティクルの大きさは、酸化物セラミックからなる溶射皮膜に比較して1/5〜1/10程度小さいのものが多い点も耐環境汚染性をよくしているものと考えられる。
Figure 2013147680
(実施例3)
この実施例では、本発明に係る皮膜表面を黒色化したフッ化物溶射皮膜の耐プラズマエロ−ジョン性を調査した。
(1)供試皮膜、
基材として、JIS−H4000に規定のA3003〔寸法:幅50mm×縦50mm×厚5mm〕を用い、その表面に、大気プラズマ溶射法によって白色のYF溶射材料を、そして、減圧プラズマ溶射法によって白色のEuF溶射材料を、それぞれ80μmの厚さのフッ化物白色溶射皮膜を形成した。また、このフッ化物白色溶射皮膜の形成に先立って、アンダーコート(Ni−20mass%Cr)を30μmの厚さに施工した場合についても、その影響の有無を調査した。
上記のフッ化物白色溶射皮膜の表面に対して、電子ビームおよびレーザビームを照射して、それぞれの溶射皮膜の表層部全面を黒色化すると同時に再熔融処理に伴う緻密化を行なった。なお、比較例の溶射皮膜として、高エネルギー照射を実施しないフッ化物白色溶射皮膜を準備した。
(2)耐プラズマエロージョン試験方法
耐プラズマエロージョン試験は、実施例2の含Fガス雰囲気中で同条件で実施し、
試験結果の評価は試験終了後の各皮膜の減少厚さを測定することによって判定した。
(3)試験結果
試験結果を表3に示した。この表に示す結果から明らかなように、比較例の白色フッ化物皮膜(No.1、4、7、10)は、アンダーコートの有無に拘らず、プラズマエロージョン損失量が最も多く、2.2〜2.7μmに達した。これに対して、フッ化物白色溶射皮膜の表面を高エネルギー照射して得られた黒色緻密層を表面に形成した溶射皮膜(No.2、3、5、6、8、9、11、12)では損失量は0.6〜0.8μmの範囲にとどまり、優れた耐プラズマエロージョン性が確認された。
また、エロージョン損失量は、大気プラズマ溶射法で形成された多孔質なフッ化物白色皮膜(No.1.4)の方が、気孔率の小さい減圧プラズマ法による皮膜よりやや多くなっていることから、フッ化物溶射皮膜の気孔率が、この種の耐プラズマエロージョン特性に影響を与えることが窺え、皮膜表面が平滑でプラズマ粒子の集中的衝撃の目標とならない平滑な黒色緻密層が有利であることが認められる。
Figure 2013147680
本発明に係る技術は、高度な耐ハロゲン腐食性と耐プラズマエロージョン性とが要求されている半導体の精密加工装置用部材に適用することができる。具体的には、ハロゲンおよびその化合物を含む処理ガスを用いて、プラズマ理される装置に配設されているテッポシールド、バッフルプレート、フォーカスリング、インシュレータリング、シルドリング、ベローズカバー、電極などに加え、類似のガス雰囲気の化学プラント装置用部材などの耐食皮膜として利用できる。

Claims (10)

  1. 基材と、その表面に直接またはアンダーコートを介して形成された、元素の周期律表IIIa族元素のフッ化物白色溶射皮膜とからなるものにおいて、そのフッ化物白色溶射皮膜の表面に、高エネルギー照射処理して得られる黒色緻密層を設けたことを特徴とする黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材。
  2. 前記フッ化物白色溶射皮膜は、気孔率が0.2〜20%の多孔質層で、全体の厚さが30〜500μmであって、そのうちの該溶射皮膜表面から0.1〜3μmまでの範囲が電子ビーム照射またはレーザビーム照射処理によって黒色緻密層に変化していることを特徴とする請求項1記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材。
  3. 前記アンダーコートは、Al、Al−Ni、Al−Zn、Ni−Cr、Ni−Al、Ni−Cr−Alのうちから選ばれる1種以上の金属質溶射皮膜を、30〜150μmの厚さに形成したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材。
  4. 前記フッ化物白色溶射皮膜は、元素の周期律表IIIa族のYおよび原子番号57〜71のランタノイド系元素から選ばれる1種以上の元素のフッ化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材。
  5. 前記高エネルギー照射処理によって形成される黒色緻密化層の部分が、文字や数字、図形、模様あるいは社名や製造番号、商標のような識別番号等を表示する部分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材。
  6. 基材の表面に、直接またはアンダーコートを介して、元素の周期律表のIIIa族のYおよび原子番号57〜71のランタノイド系元素のフッ化物からなる多孔質な白色溶射皮膜を形成し、その後、そのフッ化物溶射皮膜の表面を高エネルギー照射処理して黒色緻密化層にすることを特徴とする黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  7. 前記フッ化物白色溶射皮膜を120〜250℃に予熱したのち、前記高エネルギー処理を施し、次いで、1分間当り1℃以下の冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする請求項6に記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  8. 前記フッ化物白色溶射皮膜は、気孔率が0.2〜20%の多孔質で全体の厚さを30〜500μmに成膜し、その後、電子ビーム照射またはレーザビーム照射処理して該白色溶射皮膜表面から0.1〜3μmまでの範囲を黒色緻密化層に変化させることを特徴とする請求項6または7記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  9. 前記フッ化物白色溶射皮膜は、元素の周期律表IIIa族のYおよび原子番号57〜71のランタノイド系元素から選ばれる1種以上のフッ化物であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材の製造方法。
  10. 前記高エネルギー照射処理により、前記白色溶射皮膜の表面に、文字や数字、図形、模様あるいは社名や製造番号商標のような識別番号等を表示する黒色緻密化層を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の黒色層を有するフッ化物溶射皮膜被覆部材の製造方法。
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