JP5001323B2 - 白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法および酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材 - Google Patents
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(1)前記強酸化性ガスが、酸素、オゾン、亜酸化窒素のうちから選ばれるいずれか1種以上のガスであること、
(2)前記白色二次再結晶層は、一次変態した単斜晶と立方晶とからなる白色の酸化イットリウム溶射皮膜の表面を、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム照射によって、該溶射皮膜表面の酸化イットリウム粒子群を白色状態のまま溶融一体化させて立方晶に二次変態させて形成すること、
(3)基材と、表面に白色二次再結晶層を有する酸化イットリウム溶射皮膜との間に、金属質アンダーコートを形成すること、
(4)前記アンダーコートは、Ni、Cr、Al、W、Mo、Tiおよびこれらの金属の合金から選ばれるいずれか1種以上の金属を、50〜500μmの厚さに溶射して施工した層からなること、
(5)前記白色二次再結晶層を有する酸化イットリウム溶射皮膜は、50〜2000μmの厚さに形成すること、
(6)前記白色二次再結晶層は、白色の酸化イットリウム溶射皮膜に含まれる一次変態したイットリウム酸化物粒子の堆積層を、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム熱源による高エネルギー照射処理によって二次変態させて形成すること、
(7)前記白色二次再結晶層は、その表面の最大粗さ(Ry)が5〜24μmの平滑面であること、
(8)前記白色二次再結晶層の層厚は、100μm以下の厚さにすること、
などの条件を採用することがより好ましい解決手段を与える。
(1)前記基材と、白色二次再結晶層を有する酸化イットリウム溶射皮膜との間には、膜厚が50〜500μmの金属質アンダーコートを有すること、
(2)前記の白色二次再結晶層は、単斜晶と立方晶からなる一次変態した酸化イットリウム溶射皮膜の表面を、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム照射処理によって立方晶からなる層に変態した層であること、
(3)前記基材は、ステンレス鋼を含む各種鋼材、アルミニウムおよびその合金、チタンおよびその合金、タングステンおよびその合金、モリブデンおよびその合金、焼結炭素、石英、ガラス、酸化物および非酸化物系セラミック焼結体のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属または非金属の基材であること、
(4)前記金属質アンダーコートは、Niおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属もしくは合金であること、
などの条件を採用することが、より好ましい解決手段を与える。
(2)白色二次再結晶層を表面に有するY2O3溶射皮膜は、表面が緻密かつ平滑で、とくに耐プラズマ・エロージョン性が格段に優れたものになる。
(3)白色二次再結晶層を表面に有するY2O3溶射皮膜被覆部材は、これを半導体加工用装置に適用した場合、プラズマ・エッチング作用を受けて飛散する皮膜成分の微粉末(ダスト類)の発生が長時間にわたって抑制されるようになるため、高品質の半導体加工製品を効率よく生産するのに寄与できる。
(4)発明者らが先に提案した(特許文献8)黒色の二次再結晶層を有するY2O3溶射皮膜と本発明の白色二次再結晶層を表面に有する白色Y2O3溶射皮膜とは、同等の耐プラズマ・エロージョン性を有する。従って、半導体加工用装置内に配設される各種の部材を、被覆の外観色を利用して、装置の用途別、性能別、または部材別に区別して使用することができるようになるので、カラーデザイン化したことについての工学的な観点からの価値が向上する。
一般的なY2O3溶射皮膜は、市販の白色粉末状態のY2O3溶射材料を、大気プラズマ溶射することによって形成するのが普通である(特許文献8)。
レーザ出力:1〜10kW
レーザビーム面積:0.1〜10mm2
レーザ移行速度:1〜20mm/s
a.大気プラズマ溶射法によって成膜される一次再結晶した白色のY2O3溶射皮膜を形成するための溶射材料粉末は、白色で粒径5〜80μm、Y2O3の純度が98mass%以上のものが用いられる。
b.溶射皮膜の厚さは、50〜2000μmの範囲内の厚さとする。
c.溶射皮膜を被覆形成するための基材としては、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、ステンレス鋼、黒鉛(炭素)、セラミックス焼結体などが用いられる。
d.これらの基材の表面には、白色のY2O3溶射皮膜を直接、または、Niおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金およびMg合金などのアンダーコート(膜厚50〜500μm)を介し、白色のY2O3溶射皮膜をトップコートとして被覆形成してもよい。
一次再結晶した従来の白色のY2O3溶射皮膜と、この溶射皮膜表面を、本発明に従い、強酸化雰囲気の下で、レーザビーム照射処理して白色のまま二次再結晶させたY2O3溶射皮膜の断面構造の模式図を図2に示す。
本発明によってレーザビーム照射処理し、Y2O3溶射皮膜の表面に二次再結晶層を形成させた後も表面(二次再結晶層)が白色状態を維持しているY2O3溶射皮膜は、表1に示すような性状および特徴を有するものである。表1に示すとおり、No.1は、大気プラズマ溶射して得られる通常の白色Y2O3溶射皮膜であり、図2(a)に示した断面構造を有するものである。この溶射皮膜表面の粗さは、Ra:3〜6μm、Ry:16〜32μmであり、気孔率も高い。そして、そのNo.1の溶射皮膜を従来法に従って空気中でレーザビーム照射処理すると、該溶射皮膜は黒色に変化するとともに、少し平滑化して表面粗さ(Ra:0.8〜3.0、Ry:6〜22)の小さい表面となる。そして、図2(b)に示すような二次再結晶層を生成することとなる。
現在、Y2O3溶射皮膜は、半導体加工装置用部材の分野において、例えば、加工環境の腐食成分による化学的腐食作用、あるいはハロゲンガスやハロゲンイオンのプラズマ励起環境下における物理的なエッチング作用に対して優れた皮膜として、広く認識されている。この点、本発明に係る技術は、二次再結晶層をもつ溶射皮膜が本来的に具える特性(化学的な耐食特性および物理的な耐プラズマ・エロージョン特性)および皮膜表面性状を向上させるだけに止まらず、これらの特性を黒色皮膜としてではなく、白色状態を維持した状態のY2O3溶射皮膜として提供することができる。そのため、本発明に係る白色二次再結晶層を有するY2O3溶射皮膜を被覆した部材を配設した半導体加工用装置は、汚染の状態を直ちに発見するときに効果があり、とくに高度な清浄環境下の半導体加工を実現するのに有効である。
アルミニウム基材(寸法:50mm×50mm×5mm)の表面に、大気プラズマ溶射法によって、80mass%Ni−20mass%Crのアンダーコートを80μm厚さに施工し、その上に、純度が98.3mass%のY2O3溶射用粉末を大気プラズマ溶射して、200μm厚さの溶射皮膜を形成した。このときのY2O3溶射皮膜の外観色(表面色)は白色であり、溶射用粉末も白色である。
ここでは、本発明方法に従うレーザビーム照射処理によって形成した白色二次再結晶層を有するY2O3溶射皮膜の耐熱衝撃性を調べた。
供試材として、SUS410鋼基材(寸法:50mm×50mm×5mm)の表面をブラスト(粗面化)処理し、その後、基材表面に直接、大気プラズマ溶射法によってY2O3皮膜を150μm厚に施工したもの、および、まずNi80mass%−Cr20mass%のアンダーコートを大気プラズマ溶射法によって100μmの厚さに形成し、次いでこのアンダーコートの表面に、トップコートとして大気プラズマ溶射法によってY2O3溶射皮膜を150μmの厚さに形成した。このY2O3溶射皮膜の外観色は白色である。その後、トップコートであるY2O3溶射皮膜の表面を下記の条件で、レーザビーム照射処理して供試材とした。
(I)白色Y2O3溶射皮膜の表面を、O2ガス雰囲気中でレーザビーム照射処理(発明例)
(II)白色Y2O3溶射皮膜の表面を大気中でレーザビーム照射処理(比較例)
(III)白色Y2O3溶射皮膜をそのままの状態で供試(比較例)
熱衝撃試験は、500℃に加熱した電気炉中で15分間保持した試験片を、25℃の水道水中に投入する操作を1サイクルとし、これを5回繰返した後、トップコートのY2O3溶射皮膜の表面を拡大鏡(×20)で観察して、ひび割れの有無を調査した。
熱衝撃試験結果を表3に要約した。この結果から明らかように、SUS410鋼基材にY2O3溶射皮膜を直接形成したもの(No.1、3、5)およびNi−Cr合金のアンダーコートを施工した溶射皮膜はもとより、Y2O3溶射皮膜に対するレーザビーム照射処理の有無にかかわらず、すべての溶射皮膜が優れた耐熱衝撃性を示した。言い換えれば、強酸化性ガス雰囲気下でレーザビーム照射処理した場合も、比較例と同じように、皮膜表面が溶融一体化した二次再結晶層が生成しており、この場合でも耐熱衝撃性は低下しないことが確認された。
この実施例では、本発明方法に従うレーザビーム照射処理によって白色状態の外観を有しつつ二次再結晶させたY2O3溶射皮膜の耐プラズマ・エロージョン性を調査した。
供試材として、寸法:50mm×50mm×5mmのアルミニウム基材を用い、この表面をAl2O3によるブラスト(粗面化)処理した後、Ni80mass%−Al20mass%合金を80μmの厚さに大気プラズマ溶射してアンダーコートとした。次いで、そのアンダーコートの表面に、トップコートとして大気プラズマ溶射法によって、白色のY2O3皮膜を150μm厚さに被覆形成した。このようにして作製した白色のY2O3溶射皮膜の表面に対し、純酸素(O2)ガス雰囲気中でレーザビーム照射処理を施し、照射面に白色二次結晶層を生成させた。
(I)白色のY2O3溶射皮膜
(II)白色のY2O3溶射皮膜の表面を空気中でレーザビーム照射処理を行い、二次再結晶層を生成させた皮膜(黒色皮膜)
(III)大気プラズマ溶射したAl2O3皮膜
(IV)大気プラズマ溶射したB4C皮膜
前記供試材の中央部の表面(10mm×10mm)ののみが露出するように、他の部分をマスクし、下記の条件にて20時間の連続のプラズマ・エロージョン試験を実施し、露出部の損傷深さを測定することによって、耐プラズマ・エロージョン性を評価した、なお、レーザビーム照射処理を施さない供試材に対しては、あらかじめ露出面をエメリー紙によって研磨して、皮膜表面の凸部を除去し、損傷深さ測定値の精度を向上させるようにした。
プラズマ・エッチング条件
プラズマガス組成:CF4/Ar/O2=容積比10/100/1
プラズマ出力:1300W
耐プラズマ・エロージョン性の試験結果を表4に要約した。この結果から明らかように、大気プラズマ溶射して形成したAl2O3皮膜(No.4)、B4C皮膜(No.5)は、プラズマ・エロージョン損失量が多く、また、レーザビーム照射処理を施さないY2O3皮膜(No.1)は、前者に比較すると損失量は少ないものの6.0μmのエロージョン深さとなった。これに対して、皮膜表面にレーザビーム照射して二次再結晶層を生成させた皮膜(No.2、3)は、外観色の黒(No.2)、白(No.3)とも、極めて損失量が少なく優れた耐プラズマ・エロージョン性を発揮していることがわかる。これらの結果からレーザビーム照射処理によって得られるY2O3溶射皮膜表面では、溶射粒子が溶融一体化しているうえに、二次再結晶層を生成する皮膜形態の変化が、耐プラズマ・エロージョン性を向上させていることがうかがえる。
2 溶射皮膜(一次再結晶粒子の堆積皮膜)
3 空隙(気孔)
4 粒子界面
5 貫通気孔
6 二次再結晶層
7 二次再結晶層に発生したひび割れ
Claims (13)
- 基材の表面に金属質アンダーコートを介して被覆形成された白色の酸化イットリウム溶射皮膜を、空気よりも酸化力の強い強酸化性ガスの雰囲気中でレーザビーム照射することによって、該溶射皮膜表面に白色二次再結晶層を生成させることを特徴とする白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記強酸化性ガスが、酸素、オゾン、亜酸化窒素のうちから選ばれるいずれか1種以上のガスであることを特徴とする請求項1記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記白色二次再結晶層は、一次変態した単斜晶と立方晶とからなる白色の酸化イットリウム溶射皮膜の表面を、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム照射によって、該溶射皮膜表面の酸化イットリウム粒子群を白色状態のまま溶融一体化させて立方晶に二次変態させて形成することを特徴とする請求項1または2記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記アンダーコートは、Ni、Cr、Al、W、Mo、Tiおよびこれらの金属の合金から選ばれるいずれか1種以上の金属を、50〜500μmの厚さに溶射して施工した層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記白色二次再結晶層を有する酸化イットリウム溶射皮膜は、50〜2000μmの厚さに形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記白色二次再結晶層は、白色の酸化イットリウム溶射皮膜に含まれる一次変態したイットリウム酸化物粒子の堆積層を、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム熱源による高エネルギー照射処理によって二次変態させて形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記白色二次再結晶層は、その表面の最大粗さ(Ry)が5〜24μmの平滑面であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 前記白色二次再結晶層の層厚は、100μm以下の厚さにすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜表面の改質方法。
- 基材の表面に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって被覆形成された、白色二次再結晶層を有する酸化イットリウム溶射皮膜が、50〜2000μmの範囲内の膜厚で形成されていることを特徴とする酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
- 前記基材と、白色二次再結晶層を有する酸化イットリウム溶射皮膜との間には、膜厚が50〜500μmの金属質アンダーコートを有することを特徴とする請求項9記載の酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
- 前記の白色二次再結晶層は、単斜晶と立方晶からなる一次変態した酸化イットリウム溶射皮膜の表面を、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム照射処理によって立方晶からなる層に変態した層であることを特徴とする請求項9記載の酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
- 前記基材は、ステンレス鋼を含む各種鋼材、アルミニウムおよびその合金、チタンおよびその合金、タングステンおよびその合金、モリブデンおよびその合金、焼結炭素、石英、ガラス、酸化物および非酸化物系セラミック焼結体のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属または非金属の基材であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1に記載の酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
- 前記金属質アンダーコートは、Niおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属もしくは合金であることを特徴とする請求項10記載の酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
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