JP5001322B2 - 酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法および白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材 - Google Patents

酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法および白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材 Download PDF

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Description

本発明は、酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法および白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材に関するものであり、とくに化学的腐食(耐食性)と耐プラズマ・エロージョン性(耐物理的損傷)に優れる溶射皮膜について、この皮膜の外観を黒色から白色へ変化させる技術の提案とその技術によって製造された部材に関するものである。
溶射法は、金属やセラミックス、サーメットなどの粉末を、プラズマジェットや燃焼炎によって溶融しつつ、飛行させ、被溶射材(基材)の表面に吹き付けることによって、該基材の表面に皮膜を形成する技術であり、多くの産業分野において広く採用されている表面処理技術の一つである。ただ、溶射皮膜というのは、その皮膜を構成する粒子間結合力の強弱や結合しない粒子の量、また、未溶融粒子の存在などによって、皮膜の機械的強度や耐食性に大きな差が生じることが知られている。このため、従来、溶射技術の検討は、熱源、例えば、プラズマ熱源を用いて溶射粒子を完全に溶融させることを目的とした装置や、被溶射体の表面に強い衝突エネルギーを発生させることにより、粒子間結合力を高めて皮膜気孔率を小さくするための装置、あるいは皮膜と基材との接合力を向上させるための装置などの開発に向けられていた。
しかも、金属の溶射皮膜については、これが大気中で処理されたものだと、個々の溶射粒子が空気と接触して粒子表面に酸化膜を生成することから、粒子間結合力や基材との密着性が阻害されることになる。従来、このような弊害をなくすため、例えば、特許文献1では低圧の不活性ガス雰囲気中において溶射する方法を提案している。具体的には、空気を排出した真空容器中に、50〜200hPaのArガスを導入し、この減圧雰囲気中でプラズマ溶射するものである。
しかし、酸化物系セラミックの溶射皮膜は、溶射材料自体が既に酸化しているため、大気中で溶射してもさらに酸化するようなことはなく、一方で、減圧下のArガス雰囲気中で溶射してもまた、溶射粒子はとくに化学変化が起らないことから、減圧プラズマ溶射法による研究開発例は、大気プラズマ溶射に比較して少ないのが実情である。
このように、従来の溶射皮膜に関する技術開発は、この皮膜が有する硬さ、耐摩耗性、耐熱性、耐食性あるいは密着性などのさらなる向上を図ることに向けられてきれた。例えば、金属(合金)、セラミック、サーメットなどの溶射材料の種類や化学成分の選定をはじめ、溶射法の選択、溶射条件の決定などに重点が置かれた研究がなされていた。従って、これまでは、溶射皮膜がもつ色(彩)に関する工学的研究や溶射皮膜製品の意匠性(カラーデザイン化による商品価値)についての研究までは行われてこなかった。
一般に、セラミック溶射皮膜の場合、その外観色は以下のとおりである。例えば、溶射材料としての酸化クロム(Cr)粉末は、黒色に近い濃緑色であるが、これをプラズマ溶射した場合、黒色の皮膜となる。一方、酸化アルミニウム(Al)については、その粉末の色は白色であり、これをプラズマ溶射して得られる皮膜は白色である。ただし、酸化チタン(TiO)粉末については、白色系であるが、これをプラズマ溶射すると黒色系の皮膜になる。このように、溶射皮膜の色が変化する原因についてはよく知られていないが、溶射熱源中において、例えばTiOの場合、この化合物を構成している酸素の一部が溶射に際して消失し、(Ti2n−1)で示されるような酸化物に変化するためではないかと考えられている(特許文献2)。
以上説明したように、酸化物系セラミック溶射皮膜の色は、一部の酸化物を除き、溶射用粉末材料自体の色がそのまま皮膜の色として再現されるのが普通である。例えば、酸化イットリウム(Y)は、通常、酸化アルミニウム(Al)と同じように、粉末材料の状態はもとより、この粉末材料を溶射して得られる溶射皮膜もまた白色系である。なお、Yは、これをプラズマ熱源中で溶射したとしても、Y粒子を構成するYとO(酸素)の結合状態に変化はないと考えられる。それは、金属元素としてのAlやYは、ともに酸素との化学的親和力が極めて強く、高温のプラズマ環境中においても酸素を消失することなく、溶射皮膜となった後でも、粉末材料時のA1、Yの物理化学的特性をそのまま維持しているためと考えられるからである。
ところで、上記Y溶射皮膜は、耐熱性や耐高温酸化性、耐食性に優れる他、とくに半導体製造装置やその加工工程で使用されるハロゲン化物を用いた低温プラズマによるプラズマエッチング雰囲気中にあっても、卓越した抵抗力(耐プラズマ・エロージョン性)を発揮する。このことから、Y溶射皮膜は多くの産業分野で使用されている(特許文献3〜7)。
ところで、上記Y溶射皮膜は、そのすべてが白色系での皮膜であり、それが普通である。例えば、その白色系Y溶射皮膜が本来的に具えている工学的特性を変化させることなく、この皮膜表面の色を種々に変化させ、これを工学的な知見だけでなく、意匠性をも考慮して検討することは、これまでには全くないことであった。
こうした溶射皮膜の表面を改質する技術としては、例えば、電子ビーム照射やレーザビーム照射を利用する技術がある。電子ビーム照射に関しては、特許文献8において、金属皮膜に電子ビームを照射してこの皮膜を溶融して気孔を消滅させる技術、特許文献9には、炭化物サーメット皮膜や金属皮膜に対して電子ビームを照射して、皮膜の性能を向上させる技術などが知られている。また、特許文献11には、ZrO系セラミック溶射皮膜に対して、レーザビームを照射する技術が開示されている。さらに、特許文献12には、希土類酸化物の溶射皮膜を形成する際に、溶射材料中にカーボン、Ti、Moを添加することによって、皮膜を灰色〜黒色に変化させる技術が開示されている。しかし、この技術は、溶射粉末材料への異種成分の添加を必須条件としているため、添加作業の増加に加え、皮膜成分の純度低下による物理化学的性質の低下が免れないという問題がある。
いずれにしても、これらの先行技術は、溶射皮膜の気孔を消滅させるか密着性を向上させる方法、あるいは再溶融後の冷却過程を利用して該皮膜に縦割れを発生させることを目的として開発された技術などである。
特開平6−196421号公報 特開平9−069554号公報 特開平10−004083号公報 特開平10−163180号公報 特開平10−547744号公報 特開2001−164354号公報 特開2003−321760号公報 特開昭61−104062号公報 特開平9−316624号公報 特開平10−202782号公報 特開2006−118053号公報 特開2004−100039号公報
このような現状に対して、発明者らは、さきに特許文献12において、黒色の酸化イットリウム(以下、「Yとして示す溶射皮膜」)を製造すること、あるいは白色のY溶射皮膜の表面をレーザビームや電子ビームなどの高エネルギーを照射処理することによって、その表面を溶融させるとともに黒色に変化させた二次再結晶層を形成することに成功するとともに、黒色化による熱放射特性の向上という工学的価値および色を変えることによる意匠的商品価値の向上について提案した。
しかし、顧客によっては、Y溶射皮膜が黒色化することについて、望ましくないと考える場合があること、また、その黒色化した層の一部もしくは全部を白色に戻して意匠性をさらに向上させることの要請があることも事実である。
そこで、本発明の目的は、黒色Y溶射皮膜を表面に有する白色Y溶射皮膜の表面に黒色二次再結晶層を形成してなるものについて、その黒色化した表面層を再び白色化させる方法(白色に戻す方法)と、こうしてできた溶射皮膜を被覆してなる部材の構成を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、発明者らは以下に述べる解決手段に想到した。即ち、本発明は、基材の表面に被覆形成された、少なくとも表面層が黒色である酸化イットリウム溶射皮膜を、強酸化性のガス雰囲気中でレーザビーム照射することによって、該酸化イットリウム溶射皮膜表面またはその皮膜表面に形成された黒色二次再結晶層表面の全面またはその一部を、黒色から白色に変化させて白色改質層とすることを特徴とする酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法である。
本発明においては、
(1)前記強酸化性ガスが、酸素、オゾン、亜酸化窒素のうちから選ばれるいずれか1種以上のガスであること、
(2)前記白色改質層は、溶射時の一次変態によって単斜晶と立方晶との混晶からなる黒色酸化イットリウム溶射皮膜の表面、または白色酸化イットリウム溶射皮膜の表面に高エネルギー照射処理によって生成させた、立方晶からなる黒色二次再結晶の表面のいずれかを、レーザビーム処理して白色化させた層であること、
(3)基材と少なくとも表面が黒色化した酸化イットリウム溶射皮膜との間に、金属質のアンダーコートを有すること、
(4)前記アンダーコートは、Ni、Cr、Al、W、MоおよびTiまたはこれらの合金から選ばれたいずれか1種以上を、50〜500μmの厚さに溶射施工したものであること、
(5)前記黒色の酸化イットリウム溶射皮膜は、50〜2000μmの厚さを有すること、
(6)前記白色改質層は、一次再結晶した黒色の酸化イットリウム溶射皮膜またはその溶射皮膜の表面を高エネルギー照射処理して得られた黒色二次再結晶層のいずれかを、強酸化性ガス雰囲気下で、レーザビーム照射して形成した層であること、
(7)前記白色改質層は、表面の最大粗さ(Ry)が、5〜24μmの平滑面にした層であること、
(8)前記白色改質層の層厚は、100μm以下の厚さにすること、
がより好ましい解決手段である。
本発明はまた、(1)〜(8)の好ましい解決手段を含む上述した方法によって、黒色酸化イットリウム溶射皮膜表面もしくはその皮膜表面に形成された黒色二次再結晶層表面が改質されて生成した白色改質層を有する酸化イットリウム溶射皮膜が、基材表面に膜厚50〜2000μmの範囲で形成されていることを特徴とする白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材である。
本発明においては、
(1)前記基材と、少なくとも表面が黒色化した酸化イットリウム溶射皮膜との間には、膜厚が50〜500μmの金属質アンダーコートを有するこ、
(2)前記の黒色酸化イットリウム溶射皮膜は、単斜晶と立方晶との混晶からなる一次変態した層であり、前記黒色二次再結晶層は高エネルギー照射処理によって立方晶からなる結晶型を有する層であり、前記白色改質層は、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム照射処理によって立方晶からなる二次再結晶のまま白色化した層であること、
(3)前記基材は、ステンレス鋼を含む各種鋼材、アルミニウムおよびその合金、チタンおよびその合金、タングステンおよびその合金、モリブデンおよびその合金、焼結炭素、石英、ガラス、酸化物および非酸化物系セラミック焼結体のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属または非金属の基材であること、
(4)前記金属質アンダーコートは、Niおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属もしくは合金であること、
がより好ましい解決手段である。
本発明に係る黒色酸化イットリウム溶射皮膜の表面、または白色Y溶射皮膜の表面に形成された黒色二次再結晶層を、白色化処理して、白色改質層を形成してなるY溶射皮膜については、次のような効果がある。
(1)本発明によれば、少なくとも表面が黒色であるY溶射皮膜の外観色を、白色に変化させることが可能である。
(2)本発明によれば、黒色Y溶射皮膜または皮膜の表面に形成された黒色二次再結晶層の耐プラズマ・エロージョン性を格段に向上させる。
(3)本発明によれば、白色Y溶射皮膜の表面を高エネルギー照射処理によって黒色化させた皮膜の表面には、すでに黒色の二次再結晶層が生成しているが、この二次再結晶層の特性を阻害することなく、そのまま維持した上で、白色改質層を白色化させることができる。
(4)本発明によれば、黒色Y溶射皮膜表面の白色化処理熱源として、レーザビームを使用するため、ビームの直径を変化させたり、レンズなどを利用することによって大小さまざまな白い線を黒色Y溶射皮膜の表面に描くことが可能になる。しかも、黒色皮膜・黒色二次再結晶層の表面全体を白色に変化させたり、局部的に白色化することができる。その結果、これらのレーザ熱源の特性を利用することによって、黒色皮膜・層表面に白色の線や各種の模様をはじめ、文字、数字、商標などを自由に描くことが可能になる。
(5)本発明によれば、半導体加工用装置内に配設される各種のY溶射皮膜被覆部材、その他の部材、部品に対し、例えば、黒色Y溶射皮膜被覆部材の上に、白色の製品番号、管理番号、製造者条件、責任者の表示等を通して品質管理体制を充実させることができる。
黒色Y溶射皮膜とその皮膜表面をレーザビーム照射した皮膜の断面図である。(a)は雰囲気制御溶射法または減圧プラズマ溶射法で形成された溶射皮膜の断面、(b)は(a)の皮膜表面をレーザビーム照射した皮膜の断面 溶射皮膜表面のレーザビーム照射部と未照射部との境界部分の電子顕微鏡写真である。 黒色のY皮膜(a)と、この黒色皮膜表面をレーザビーム照射処理によって白色に変化した皮膜(b)の外観色例を示した写真である。 溶射皮膜表面をレーザビーム照射して生成させた二次再結晶層のX線回折パターンを照射前の皮膜と比較した図である。 白色改質層を生成するまでのプロセスを説明する模式図である。
本発明は、半導体加工装置用部材などの耐食性および耐プラズマ・エロージョン性の向上を目的として形成されたY溶射皮膜の性能向上に加え、その外観色を黒色から白色へ変化させる技術を提案する。
(1)黒色Y溶射皮膜ならびに表面に黒色二次再結晶層を有する白色Y溶射皮膜(被処理対象部材)
本発明において処理対象となるY溶射溶射皮膜、二次再結晶層は下記の方法によって製造される。
(a)大気プラズマ溶射法によってY溶射皮膜を形成する時において、溶射施工環境、即ち、溶射ガンから被溶射基材へ噴射される白色のY溶射材料粒子の飛行雰囲気を、Nガス、Arガスなどの不活性ガス中で溶射して得られる黒色のY溶射皮膜(以下、「雰囲気制御溶射法」という)
(b)上記溶射環境を50〜200hPa程度のAr、Heガスなどの減圧雰囲気中で溶射して得た黒色のY減圧プラズマ溶射皮膜(以下、「減圧プラズマ溶射法」という)
(c)大気プラズマ溶射法で形成される白色のY溶射皮膜の表面を、電子ビームやレーザビームなどの高エネルギー照射処理によって、該白色皮膜の表面に黒色二次再結晶層を設けてなるY溶射皮膜(以下、「高エネルギー照射法」という)
これらの方法で得られた少なくとも表面が黒色であるY溶射皮膜は、発明者らが、先に特許文献12で提案したように、それぞれのプロセスにおいて、白色のY溶射用粒子が酸素を放出(一部)してY3−x(但し、xは放出酸素)の形態を示した結果、黒色化すると考えているが、現在までの技術では、この黒色皮膜を白色化する技術は知られていない。
なお、本発明は、黒色のY溶射皮膜または白色Y溶射皮膜表面に形成された黒色二次再結晶層を白色改質層に変化させる新技術の提案に加え、Y溶射皮膜自体の耐プラズマ・エロージョン性能を格段に向上させるものである。
なお、黒色Y溶射皮膜形成用のY溶射材料粉末は、いずれも白色の粉末であり、粒径5〜80μm、Yの純度は98mass%以上のものが用いられ、溶射皮膜としての膜厚は50〜2000μmの範囲にある。
黒色Y溶射皮膜あるいは黒色二次再結晶層つき、白色Y溶射皮膜が被覆形成される基材としては、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、各種ステンレス鋼、黒鉛(炭素)、セラミックス焼結体が使用される。そして、前記黒色・白色Y溶射皮膜は、前記基材に直接、またはNiおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Mg合金などのアンダーコート(膜厚50〜500μm)を介して、アンダーコート被覆形成される。
(2)黒色Y溶射皮膜
図1(a)は、大気雰囲気下での溶射および減圧プラズマ溶射によって形成される黒色のY溶射皮膜の代表的な断面構造である。基材の表面に直接形成されたY溶射皮膜は、溶射熱源によって溶融されるとともに、加速されたY粒子が基材に衝突して堆積した状態となる典型的なセラミック溶射皮膜の構造である。一方、Yは、約2435℃の高融点を有しているため、プラズマ熱源中で溶融したとしても、室温状態の基材表面に衝突すると急冷凝固されるため溶射粒子同士は完全な融合体とはならない。そのため、溶射粒子間には多くの隙間(気孔)が存在し、貫通気孔も生成することとなる。ただ、減圧プラズマ溶射によって形成された皮膜は、基材を高温(例えば、300〜700℃)で予熱しても、該基材の表面に酸化スケールが生成しないため、十分な予熱が可能である。予熱された基材の表面に形成される皮膜の気孔率は、前者の溶射法に比較して少なくなる。
これに対して図1(b)は、前記(c)の方法によって形成した白色Y溶射皮膜の表面を、電子ビーム照射処理したものの断面構造例を示したものである。電子ビーム照射された溶射皮膜の表層部は、この皮膜を構成するY粒子が完全に融合一体化するため、単独粒子として存在することはなく、これに伴って気孔も消失し、緻密で平滑な表面となる。ただし、Y粒子が完全に溶融した後、冷却過程において体積の収縮反応を起こして、小さなひび割れが発生する。しかし、その発生程度は小さくかつ少ないので、外部からの腐食性ガス成分の侵入を抑制する効果はある。電子ビーム照射に代え、レーザビーム照射しても同じような断面構造となる。
なお、図1に示す符号1は基材、2は多孔質層(溶射粒子堆積層)、3は空隙(気孔)、4は粒子界面、5は貫通気孔、6は電子ビーム照射処理によって生成した二次再結晶層、7は電子ビーム照射面に生成した微小なひび割れである。
(3)本発明法による少なくとも表面が黒色であるY溶射皮膜の白色化方法
上述した雰囲気制御溶射法、減圧プラズマ溶射法あるいは表層への高エネルギー照射法によって形成される黒色・白色Y溶射皮膜ならびにそのうちの白色溶射皮膜表面に形成した黒色二次再結晶層の外観色はすべてが黒色である。以下、これらの黒色表面を有するY溶射皮膜表面に、その外観色を白色化させて白色改質層を形成する方法について説明する。
本発明では、少なくとも表面が黒色化しているY溶射皮膜を被処理体とし、その黒色溶射皮膜・黒色層の表面に、COガスレーザ、YGAレーザ、Arガスレーザ、エキシマレーザあるいは半導体レーザなどのレーザビームを照射し、その照射部のY堆積粒子または溶射皮膜もしくは二次再結晶層を融点以上に加熱する。しかも、このときにレーザビーム近傍の照射環境を、酸素(O)、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)などの強酸化性ガス流通雰囲気として、照射環境の酸素ポテンシャルを大きくする。その結果、Yの黒色皮膜等を構成している皮膜構成粒子または黒色二次再結晶層の表面は、高温状態において高酸素ポテンシャルの影響を受けて強く酸化され、黒色から白色へと変化した白色改質層となる。
このように、本発明において特徴的なことは、前記レーザビーム照射雰囲気として、空気よりも酸化力の強い強酸化性ガス、例えば、酸素(活性酸素を含む)、オゾン、亜酸化窒素などのガスを用いることにある。これらの強酸化性ガスは、それぞれ酸化力が強く、特にY溶射皮膜が溶融状態となる高温では強力な酸化作用を発揮する。本発明の場合、とくに、オゾンや亜酸化窒素のように放出しやすい酸素原子をもつガス、あるいはマイナス電子をもつ不安定な状態の活性酸素を照射環境にすることはより有効である。ただ、Oガスの利用は、人体に対して悪影響を及ぼすことはないが、Oガス、NOガスなどを使用する場合には、排気装置を有する装置内で実施することが望ましい。なお、窒素酸化物には、NO、NO、N、NO、N、N、NO、Nなど多くの種類があり、いずれも強い酸化性を示す特徴があるので、NOのみに限定するものでない。NO以外の化合物は化学的に不安定であったり、また有毒性を示すため、本発明ではNOを使用することを推奨するものである。
本発明において、YAG結晶を利用したYAGレーザなどのレーザビーム熱源の照射出力の条件としては、下記の仕様のものが推奨されるが、照射に当っては、照射出力を増強するための高周波パルスの仕様など、レーザ業界において、日常的に利用されているレーザの効果的使用条件をも包含するものである。
レーザ出力:1〜10kW
レーザビーム面積:0.1〜10mm
レーザ移行速度:1〜20mm/s
なお、本発明において、大気プラズマ溶射法によって成膜される一次再結晶(斜方晶から単斜晶+立方晶への変態)した白色のY溶射皮膜は、白色で粒径5〜80μm、純度が98mass%以上の白色の溶射材料粉末が用いられる。そして、得られる溶射皮膜の厚さは50〜2000μm程度の膜厚にしたものが好ましい。また、本発明において用いられる溶射皮膜を被覆形成する基材は、Alおよびその合金、Tiおよびその合金、ステンレス鋼、黒鉛(炭素)、セラミックス焼結体などが好適に用いられる。なお、Y溶射皮膜は、基材の表面に直接、または、Niおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金およびMg合金などのアンダーコート(膜厚50〜500μm)を介して形成してもよい。
ところで、白色のY溶射粉末材料を不活性ガスプラズマ溶射した場合、生成するYの溶射皮膜は黒色となる。この理由は、自由電子を多量に含む高温のプラズマ熱源に加え、溶射雰囲気が低酸素ポテンシャルであることによって、Yが部分的に、あるいはその一部の酸素が奪われ、Y3−xで示されるような分子式で示される還元反応が起こった結果、変色するものと考えられる。簡単に言うと、本発明は、表面が黒色化しているY溶射皮膜を、強酸化性ガス雰囲気下でレーザビーム照射処理して再び白色化させる試み、即ち、白色改質層を形成する技術である。
なお、本発明に係る前記の強酸化性ガスによる反応は、温度の影響が大きく、室温から500℃程度の低い温度域では前記白色化は観察されないか、観察されたとしてもその程度は軽微である。しかも、500℃以上の温度に加熱すると、Al、Tiなどの金属基材では、機械的強度が劣化するので好ましくない。それ故に、本発明では、レーザビーム照射処理のように局部的に高温にできる加熱方法を採用することが好ましい。図5は、本発明方法によって、少なくとも表面が黒色であるY溶射皮膜のその表面を白色化させる過程を例示したものである。
(4)本発明の適用によって表面が白色化した(白色改質層)Y溶射皮膜の特徴
本発明法によって、黒色表面を有するY溶射皮膜を白色化させて得られる白色改質層の性状および特徴事項を表1に挙げた。表1中において、No.2の方法(雰囲気制御方法)によって形成された黒色Y溶射皮膜の気孔率、表面粗さなどの性状は、No.1の通常の大気プラズマ溶射法によって得られる白色Y溶射皮膜の性状と同等であり、皮膜の外観色のみが黒色を呈しているだけである。また、No.3の減圧プラズマ溶射法による黒色Y溶射皮膜は、気孔率が低下するとともに、表面粗さも小さくなる傾向が認められるが、No.4の高エネルギー照射による黒色化された溶射皮膜表面のような溶射粒子の再溶融一体化現象がないため、平滑性はそれほど優れているとはいえない。
これに対して、本発明に係るNo.5の溶射皮膜は、No.2の黒色Y溶射皮膜の外観色を黒色から白色に変化するとともに、その皮膜表面を再溶融し、気孔率の低下と表面の平滑化の効果を発揮しており、No.4の高エネルギー照射皮膜と同等の性状になっている。これらの皮膜性状の変化から、本発明に係る白色改質層を有するY溶射皮膜は、白色を呈すること以外にも、黒色の高エネルギー照射Y溶射皮膜と同等の性能を示すことがわかる。
Figure 0005001322
次に、図2の写真は、Y溶射皮膜表面へのレーザビーム照射部と未照射部の境界部分を電子顕微鏡(SEM)によって倍率を拡大して観察した結果である。未照射部ではY粒子の堆積に起因する表面の凹凸が不連続に見られるが、照射部では凹凸が消失して平滑面となっている。ただ、レーザビームの走査線に沿って溝状の痕跡が認められ、この痕跡によって照射面の表面粗さのRy値が大きくなっていることがうかがえる。
図3の写真は、No.2の黒色Y溶射皮膜と、その表面を、本発明方法に従って白色化した外観状況を比較して示したものである。ここで図3(a)は、雰囲気制御溶射法で形成した黒色Y溶射皮膜、図3(b)は(a)のその黒色皮膜をOガス雰囲気中でレーザビーム照射した後の白色Y溶射皮膜である。
なお、前記白色改質層は、黒色Y溶射皮膜の表面あるいは白・黒Y溶射皮膜表面に形成した黒色二次再結晶層の表面を、強酸化性ガス雰囲気でレーザビーム照射して得られるものであり、これは緻密で平滑な表面層がそのまま維持された立方晶のままの二次再結晶層である。
なお、斜方晶などからなるYの白色溶射材料粉末を用いて、プラズマ溶射して得られる溶射皮膜は、プラズマ熱源による溶融現象を経て、単斜晶と立方晶とからなるY粒子の集合体である。これを一次再結晶層と呼ぶ。本発明では、その一次再結晶後のY粒子の集合体(溶射皮膜)をレーザビーム熱源によって再度溶融させ、これが凝固する際に立方晶に変わるので、この現象を二次再結晶と定義している。一次再結晶層は、プラズマ熱源中で一旦溶融するものの溶射粒子が微小(粒径5〜80μm)であるため、被処理体の表面に衝突した際、急冷凝固する速度が非常に早く結晶型としては、非平衡状態にある。一方、二次再結晶層は熱容量の大きい皮膜の溶融・凝固反応であるため、前者に比較すると、その冷却速度は遅く、平衡状態に近い結晶型を示すこととなる。
図4は、大気プラズマ溶射法によって形成した白色Y溶射皮膜と、この溶射皮膜をレーザビーム照射した皮膜表面のX線回折図を示したものである。この回折図中に記入した×印は単方晶、〇印は立方晶と推定されるピークである。この結果から大気プラズマ溶射法で形成されたY溶射皮膜のX線回折図(図では処理前と記載)、×印の単斜晶と〇印の立方晶が混在しており、皮膜を構成するY粒子が、溶射熱源のプラズマジェットに加熱された後、急冷・凝固され、非平衡状態の結晶型を示していることが認められる。
一方、この皮膜表面をレーザビーム照射すると(図中では処理後と記載)、〇印で示す立方晶のピークが明確化し、また、処理前の皮膜に認められた×印の単斜晶のピークが消失する傾向が顕著となっている。これらの挙動から溶射皮膜を構成するY成分がレーザビーム照射熱源によって、溶融一体化した後の冷却速度が前者の一次再結晶生成時に比較して穏やかとなって、非平衡からより安定した平衡型へ移行していることがうかがえる。なお、この試験に用いた装置は、理学電気社製RINT1500X線回折装置であり、次の条件で回折試験を行ったものである。
出力:40kV
走査速度:2°/min
(5)Y溶射皮膜の意匠特性
現在、Y溶射皮膜は、主に半導体加工装置用部材の表面に被覆形成して用いられているものであるが、とくに加工環境における化学的腐食作用およびハロゲンガスやハロゲンイオンの励起環境下におけるプラズマ・エッチング作用による物理的損傷に耐える皮膜として広く利用されている。しかしながら、本発明は、従来のY溶射皮膜が有する前記耐食性や耐プラズマ・エロージョン性という物理化学的特性に加え、皮膜の加工条件によっては、さらにこれらの性能を向上させつつ、半導体装置に組込まれて多くの部材、具体的にはデポシールド、バッフルプレート、フォーカスリングなどをY溶射皮膜の外観色によって、区別したり、品質管理することが可能となる。この点については、発明の効果として述べたとおりである。
なお、本発明は、黒色Y溶射皮膜等の全面を白色化するにとどまらず、レーザビーム熱源の特性を利用して、該黒色溶射皮膜表面に白線を用いた格子縞をはじめ、各種の模様、数字、文字、商標を描くことも容易となる。このような技術の展開によって、半導体加工用装置部材に色を工学的に利用することが可能になり、その商品価値の向上をはかることができる。
(実施例1)
アルミニウム基材(寸法:50mm×50mm×5mm)の表面に大気プラズマ溶射法によって、80mass%Ni−20mass%Crのアンダーコートを80μm厚さに施工し、その上にY溶射皮膜を下記の条件でプラズマ溶射法によって200μm厚さに形成した。このときのY溶射皮膜の外観色はいずれも黒色であった。
(a)雰囲気制御法によって形成したプラズマ溶射皮膜
(b)減圧プラズマ溶射法によって形成した溶射皮膜
(c)上記aの溶射皮膜の表面を電子ビーム照射処理を施して形成した二次再結晶層
次いで、前記3種類のY溶射皮膜等の表面をレーザビーム照射するに際して、その照射環境の雰囲気をO、OおよびNOのような強酸化性ガスをそれぞれ単独で流しながら(周囲に存在する空気の流入を遮断)照射処理を実施した。なお、比較例として空気中での照射処理を行った。
上記レーザビーム照射後におけるY溶射皮膜およびこの二次再結晶層の外観色の変化および皮膜表面の平滑度などを目視および拡大鏡を用いて観察した。
表2は、以上の結果を要約したものである。この結果から明らかなように、黒色のY溶射皮膜を空気中でレーザビーム照射処理を実施しても、皮膜の外観色は変化せず、概ね黒色を維持していた(試験片No.1、5、9)。こらに対して、強い酸化性を示すO、OあるいはNOなどのガス雰囲気中でレーザビーム照射した皮膜は(試験片No.2〜4、6〜8、10〜12)いずれも白色に変化するとともに、とくに溶射皮膜表面のY粒子は溶融一体化し、かつ平滑で光沢を有する状態となっていた。
Figure 0005001322
(実施例2)
本発明に適合する条件にてレーザビーム照射処理し、皮膜等の表面を白色に変化させたY溶射皮膜の耐熱衝撃性を調査した。
(1)供試材
供試材として、寸法:50mm×50mm×5mmのSUS410鋼を用い、その表面をブラスト粗面化処理した後、Ni−20mass%Alのアンダーコートを大気プラズマ溶射法によって、100μmの厚さに施工し、次いで、その表面に下記に示す3種類の黒色Y溶射皮膜を150μmの厚さに被覆形成した。その後、黒色のY溶射皮膜の一部を本発明に適合する方法(Oガス雰囲気中)でレーザビーム照射処理を施した。なお、成膜に当り、アンダーコートは施工せず、SUS410鋼基材の表面にブラスト粗面化処理後、直接、黒色Y溶射皮膜を形成したものについても、150μm厚さにして供試皮膜とした。
(a)雰囲気制御溶射法
(b)減圧プラズマ溶射法
(c)高エネルギー照射法
(2)熱衝撃試験
熱衝撃試験は、500℃に加熱した電気炉中で15分間維持した後25℃の水道水中に投入する操作を5回繰返した後、皮膜表面を拡大鏡(×20倍)で観察して、剥離の有無を調べた。なお、この試験には、従来技術による大気プラズマ溶射法によって形成した白色のY溶射皮膜を比較冷として供試した。
(3)試験結果
熱衝撃試験結果を表3に示した。この結果から明らかように、全供試材、即ち、SUS410鋼基材に直接Y溶射皮膜を形成したものおよびNi−Cr合金のアンダーコートを施工した皮膜はもとより、Y溶射皮膜の外観色や皮膜表面の二次再結晶層の有無に関係なく、この実施例の条件では、すべての皮膜が優れた耐熱衝撃性を示した。言い換えれば、レーザビーム照射処理によって、皮膜表面に緻密な溶融一体化した二次再結晶層が生成しても、照射処理層の下部には気孔の多い層が存在しているため、耐熱衝撃性は低下しないことが確認された。
Figure 0005001322
(実施例3)
この実施例では、強酸化性ガス下でのレーザビーム照射処理によって白色に変化させたY溶射皮膜の耐プラズマ・エロージョン性を調査した。
(1)供試皮膜
供試皮膜として、寸法:50mm×50mm×5mmのアルミニウム基材を用い、これの表面をブラスト処理した後、Ni−20mass%Alのアンダーコートを大気プラズマ溶射法によって80μmの厚さに施工した。次いで、その表面に下記の3種類の黒色のY溶射皮膜を150μmの厚さに被覆形成し、さらにその黒色のY溶射皮膜の一部を本発明に適合する方法(Oガス雰囲気中)でレーザビーム照射処理した。
(a)雰囲気制御溶射法
(b))減圧プラズマ溶射法
(c)高エネルギー照射法
(2)プラズマ・エロージョン試験
前記供試皮膜の中央部の表面積(10mm×10mm)の範囲が露出するように、他の部分をマスクし、下記の条件にて20時間の連続のプラズマ・エロージョン試験を実施し、露出部の損傷深さを測定することによって、耐プラズマ・エロージョン性を評価した、なお、この試験には、比較用の皮膜として大気プラズマ溶射法によって形成したAl、Y、BCと皮膜を同じ条件にて評価した。なお、プラズマ・エッチング条件は、CF/Ar/O(容積比10/100/1)の混合ガスを用い、プラズマ出力1300Wの環境下に暴露する方法である。
(3)試験結果
耐プラズマ・エロージョン性の試験結果を表4に示した。この結果から明らかように、現行技術による大気プラズマ溶射法で形成されたAl皮膜(No.8)、BC皮膜(No.9)は、プラズマ・エロージョン損失量が多く、また、Y皮膜(No.1)は、比較的損失量が少なく、黒色のY皮膜(No.1、No.3)と同程度の損失量にとどまっている。これらの結果から、Y溶射皮膜の耐プラズマ・エロージョン性は外観色が黒か白という違いに関係なく、皮膜を構成するY粒子の相互結合力の強弱に依存していることがうかがえる。具体的にいえば、電子ビーム処理によって得られる黒色のY溶射皮膜(No.5)では、その表面が、高エネルギー照射によってY粒子が溶融一体化した二次再結晶層を有しているため、本発明に係るレーザビーム照射処理の有無に拘らず、優れた耐プラズマ・エロージョン性を発揮していることからも推定することができる。
本発明方法に係るレーザビーム照射処理を行ったものは、溶融一体化を伴う二次再結晶化層を有しない黒色のY溶射皮膜であっても、これを白色に変化させることができるとともに、この場合には、二次再結晶層を新しく生成させることによって、耐プラズマ・エロージョン性を向上させていることがわかる。
なお、No.5、6溶射皮膜のように、二次再結晶層を有する黒色のY溶射皮膜に対しては、既存の二次再結晶層の耐プラズマ・エロージョン効果を消失させることなく、単にその皮膜の外観色を黒色から白色へ変化させることが認められる。
Figure 0005001322
本発明の技術は、半導体加工装置に使われる一般的な部材、部品等はもとより、昨今の一段と精密で高度な加工が要求されるプラズマ処理装置用部材の表面処理技術として好適に用いられる。とくに、本発明は、含Fガスや含CHガスをそれぞれ単独に使用する装置またはこれらのガスを交互に繰返して使用するような苛酷な雰囲気中においてプラズマ処理する半導体加工装置のデポシールド、バッフルプレート、フォーカスリング、アッパー・ロワーインシュレータリング、シールドリング、ベローズカバー、電極、固体誘電体などの部材、部品等への表面処理技術として好適である。また、本発明は、液晶デバイス製造装置用部材の表面処理技術としての適用が可能である。
1 基材
2 溶射皮膜
3 空隙(気孔)
4 粒子界面
5 貫通気孔
6 二次再結晶層
7 二次再結晶層に発生したひび割れ

Claims (14)

  1. 基材の表面に被覆形成された、少なくとも表面層が黒色である酸化イットリウム溶射皮膜を、強酸化性のガス雰囲気中でレーザビーム照射することによって、該酸化イットリウム溶射皮膜表面またはその皮膜表面に形成された黒色二次再結晶層表面の全面またはその一部を、黒色から白色に変化させて白色改質層とすることを特徴とする酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  2. 前記強酸化性ガスが、酸素、オゾン、亜酸化窒素のうちから選ばれるいずれか1種以上のガスであることを特徴とする請求項1記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  3. 前記白色改質層は、溶射時の一次変態によって単斜晶と立方晶との混晶からなる黒色酸化イットリウム溶射皮膜の表面、または白色酸化イットリウム溶射皮膜の表面に高エネルギー照射処理によって生成させた立方晶からなる黒色二次再結晶層の表面のいずれかを、レーザビーム照射して白色化させた層であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  4. 基材と少なくとも表面が黒色化した酸化イットリウム溶射皮膜との間に、金属質のアンダーコートを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  5. 前記アンダーコートは、Ni、Cr、Al、W、MoおよびTiまたはこれらの合金から選ばれたいずれか1種以上を、50〜500μmの厚さに溶射施工したものであることを特徴とする請求項4に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  6. 前記黒色の酸化イットリウム溶射皮膜は、50〜2000μmの厚さを有することを特徴とする請求1〜5のいずれか1に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  7. 前記白色改質層は、一次再結晶した黒色の酸化イットリウム溶射皮膜またはその溶射皮膜の表面を高エネルギー照射処理して得られた黒色二次再結晶層のいずれかを、強酸化性ガス雰囲気下で、レーザビーム照射して形成した層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  8. 前記白色改質層は、表面の最大粗さ(Ry)が5〜24μmの平滑面にした層であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  9. 前記白色改質層の層厚は、100μm以下の厚さにすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の酸化イットリウム溶射皮膜の黒色表面の白色化方法。
  10. 基材の表面に請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって、黒色酸化イットリウム溶射皮膜もしくはその皮膜表面に形成された黒色二次再結晶層の表面が改質されて生成した白色改質層を有する酸化イットリウム溶射皮膜が、基材表面に膜厚50〜2000μmの範囲で形成されていることを特徴とする白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
  11. 前記基材と、少なくとも表面が黒色化した酸化イットリウム溶射皮膜との間には、膜厚が50〜500μmの金属質アンダーコートを有することを特徴とする請求項10記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
  12. 前記の黒色酸化イットリウム溶射皮膜は、単斜晶と立方晶との混晶からなる一次変態した層であり、前記黒色二次再結晶層は高エネルギー照射処理によって立方晶からなる結晶型を有する層であり、前記白色改質層は、強酸化性ガス雰囲気中でのレーザビーム照射処理によって立方晶からなる二次再結晶のまま白色化した層であることを特徴とする請求項10記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
  13. 前記基材は、ステンレス鋼を含む各種鋼材、アルミニウムおよびその合金、チタンおよびその合金、タングステンおよびその合金、モリブデンおよびその合金、焼結炭素、石英、ガラス、酸化物および非酸化物系セラミック焼結体のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属または非金属の基材であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
  14. 前記金属質アンダーコートは、Niおよびその合金、Crおよびその合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金のうちから選ばれるいずれか1種以上の金属もしくは合金であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1に記載の白色酸化イットリウム溶射皮膜被覆部材。
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