JP2013139557A - セルロース水溶液の製造方法およびセルロース誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース精製物またはセルロースを含有する物質と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含むセルロース水溶液の製造方法であって、前記セルロース原料と接触した状態において、前記水酸化四級アンモニウム水溶液中に溶解しているアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計の濃度が1重量%以下であることを特徴とするセルロース水溶液の製造方法。あるいは、セルロース原料と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含むセルロース水溶液の製造方法であって、前記セルロース原料と前記水酸化四級アンモニウム水溶液との接触を環状ポリエーテルの存在下に行うことを特徴とするセルロース水溶液の製造方法。
【選択図】なし
Description
一方、代表的なセルロース誘導体の製造方法としては、次のようなものが知られている。
[1] セルロース精製物またはセルロースを含有する物質(以下「セルロース原料」と総称する。)と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含むセルロース水溶液の製造方法であって、前記セルロース原料と接触した状態において、前記水酸化四級アンモニウム水溶液中に溶解しているアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計の濃度が1重量%以下であることを特徴とする、セルロース水溶液の製造方法。
[3] 前記水酸化四級アンモニウムが、置換もしくは非置換のアルキル基および/または置換もしくは非置換のアリール基を4つの置換基として有するものであり、当該4つの置換基の炭素原子数の合計が4〜60である、[1]または[2]に記載のセルロース水溶液の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により得られる、セルロース水溶液。
[9] [1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液と、セルロース誘導体の原料となるヒドロキシ基反応性化合物とを混合する工程を含むことを特徴とする、セルロース誘導体の製造方法。
[14] [1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液を紡糸することを特徴とする、セルロース繊維の製造方法。
本発明によるセルロース水溶液の製造方法は、セルロース原料(セルロース精製物またはセルロースを含有する物質)と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含む。上記工程により得られる水溶液中に溶解している物質は、セルロースのいずれかのヒドロキシ基に水酸化四級アンモニウムが反応して生成したセルロース・四級アンモニウム複合体であると推定されるが、本発明ではそのような複合体が溶解していると推定される水溶液を「セルロース水溶液」と称することにする。
本発明における「セルロース原料」は、セルロース精製物、すなわちセルロース粉末などとして一般的な製品やそれと同程度の純度を有するセルロースであってもよいし、その他のセルロースを含有する物質、すなわち植物原料(パルプ)から得られる紙製品等の加工品などであってもよいし、作物、植物廃棄物、その他の植物性の物質などであってもよい。なお、木質は通常、セルロース以外にも比較的多量のヘミセルロース、リグニン等を含有するが、本発明を適用することが可能である。セルロース原料は、必要に応じて適切なサイズに微細化、粉末化しておいてもよく、たとえば、製材の際に副製するおがくず、木質チップ等の形態でも利用できる。
本発明のセルロース水溶液の製造方法に用いる水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度は、セルロースの溶解反応が進行する所定の値以上とする必要があり、好ましくは35重量%以上で行うことが望ましい。上記水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度に係る「所定の値」は、後記実施例の条件下では、32〜35重量%の間に存在すると推測される。水酸化四級アンモニウム水溶液中の濃度が所定の値より低いと、セルロースが溶解せず、セルロース水溶液が得られないおそれがある。当該水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度の上限値は、必要であれば他の条件を考慮しながら設定することもできるが、通常は特に設定されるべきものではなく、製品として入手できる水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度が上記の濃度の条件を満たしていれば(たとえば当該濃度が40重量%の製品は容易に入手可能である)、それより高める必要はない。
本発明のセルロース水溶液の製造方法は、セルロース原料と接触した状態における、水酸化四級アンモニウム水溶液中に溶解しているアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物(本発明において「無機塩不純物」と称する場合もある。)の合計の濃度が、セルロースの溶解反応を阻害しない所定の値以下で行う必要があり、当該濃度が1重量%以下で行うことが好ましい。なお、後記実施例の条件下では、上記「所定の値」は1〜2重量%の間に存在すると推測される。水酸化四級アンモニウム水溶液中に溶解している無機塩不純物の濃度が所定の値より高いと、セルロースの溶解反応が阻害され、セルロース水溶液が得られないおそれがある。無機塩不純物は実質的に全く含まれないことが理想的である、つまり濃度は極力低い方がよいと考えられるため、無機塩不純物の濃度の下限値は設けなくてもよい(0としてもよい)が、必要であれば他の条件を考慮しながら設定してもよい。ただし、後述するように、環状ポリエーテルを用いる場合は、水酸化四級アンモニウム水溶液中に溶解している無機塩不純物の濃度は上記範囲に限定されるものではなく、上記範囲を超えていてもセルロースを溶解することが可能である。
本発明によるセルロース水溶液の製造方法は、環状ポリエーテル(クラウンエーテル)の存在下に、セルロース原料と水酸化四級アンモニウムとを接触させると、セルロースの溶解速度を向上させるとともに得られる溶液の透明性を向上させることができるため、より好ましい。水酸化四級アンモニウムを用いずに、環状ポリエーテルを単独でセルロース原料と接触させても、セルロースはほとんど溶解することができない。
セルロース原料と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる(すなわちセルロースと水酸化四級アンモニウムとを反応させる)工程は、これらを反応容器内で撹拌しながら混合することにより行うことができる。環状ポリエーテルを用いる場合は、たとえば、あらかじめ水酸化四級アンモニウム水溶液と環状ポリエーテルとを混合しておき、この溶液とセルロースとを混合するようにすればよい。
・セルロース・四級アンモニウム複合体の製造方法
本発明によるセルロース・四級アンモニウム複合体の製造方法は、前述のような製造方法により得られるセルロース水溶液と、セルロースの貧溶媒とを混合し、セルロース・四級アンモニウム複合体を析出させる工程を含むことを特徴とする。
本発明によるセルロースフィルムの製造方法は、前述のような製造方法により得られるセルロース水溶液から、乾燥により溶媒を除去する工程を含む。
また、セルロース水溶液からは、たとえば溶液(湿式)紡糸法を用いてセルロース繊維を製造したりするなど、各種のセルロース製品の製造が可能となる。本発明のセルロース水溶液を用いたセルロース繊維の製造方法は、従来のセルロース繊維の製造方法を応用することが可能であるが、たとえば、セルロース水溶液を紡糸ノズルから適切な凝固液(たとえばメタノール等の貧溶媒)中に押し出し、回収、洗浄等することにより、セルロース・四級アンモニウム複合体からなるセルロース繊維を製造することができる。
本発明によるセルロース誘導体の製造方法は、前述のような製造方法により得られるセルロース水溶液と、セルロース誘導体の原料となるヒドロキシ基反応性化合物とを混合する工程を含む。
さらに、ハロゲン化アルキル(塩化メチル等)をヒドロキシ基反応性化合物として用いることにより、アルキルセルロース(メチルセルロース等のエステル化合物)を製造できる可能性もある。
本発明の製造方法により得られるセルロース誘導体は、従来の方法により得られるセルロース誘導体と同様の用途において利用することができる。
図2に示す手順に従って、セルロース・アンモニウム複合体を単離した。セルロース自体はDMSOに不溶であるが、セルロースとTBAHとの反応後の固体は、酢酸エチル、エタノールおよびアセトンでの洗浄後もDMSOに溶解したので、当該固体は(単にセルロースの表面にアンモニウム塩が付着した物質ではなく)セルロースのアンモニウム塩であると推定された。
セルロース、濾紙をそれぞれテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(アルドリッチ社、40 % in water)に溶解させ、得られた溶解液をシャーレに移して自然乾燥させたところ、それぞれからフィルムが形成された。
濾紙No.2に3種類のTBAH製品を10μl滴下し、50℃で3h乾燥した後、蛍光X線測定を行なった。濃度が既知のKBr水溶液を用いて蛍光X線測定を行い、検量線を作成し(K−KA:y=10104x−1644.4、Br−KA:y=950.24x−846.33、yはKBrの濃度[ppm]、xはピーク強度)、各TBAH製品に含まれるKおよびBrの濃度を求めた。結果は下記表に示すとおりである。TBAH製品2にはK+が約2.1重量%、Br-が約2.4重量%含まれており、TBAH製品3にはK+が約2.0重量%、Br-が約1.9重量%含まれているものと考えられるが(それぞれK-KAおよびBR-KAの列参照)、TBAH製品1(アルドリッチ社製)にはK+およびBr-は実質上ほとんど含まれていないものと考えられる。なお、TBAH製品1を用いると常にセルロースを溶解することができる一方、TBAH製品2および3を用いると(ロットによって)セルロースを溶解することができない場合があることが確認されている。
小さくカットした濾紙(定性濾紙No.2)を500mg入れた20ml試験管に、KBrを下記各水準で加えた前記TBAH製品1(アルドリッチ社製)を加えた。10℃で12h静置した後のセルロースの溶解性を目視で確認し、濾紙が溶解した状態を○、濾紙が溶解していない状態を×と評価した(図5参照)。結果を下記表に示す。TBAH中のKBr濃度が5重量%を超えたentry 4では、セルロースを溶解することができなかった。
水酸化四級アンモニウム塩水溶液10mlに塩を各水準で加え、20ml試験管に小さくカットした濾紙(定性濾紙No.2)を500mg加え、10℃で12h静置した。結果を下記表に示す。溶解性の評価基準は実施例3−2と同じである。なお、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)はいずれもアルドリッチ社製のものであり、いずれの製品も初期の(KBr無添加時の)KBr濃度はほぼ0重量%である。無機塩が1重量%以下の場合、どの四級アンモニウム塩の水溶液(濃度40重量%)にもセルロースは溶解した。一方、無機塩が2重量%以上の場合、どの四級アンモニウム塩の水溶液にも溶解せず、四級アンモニウム塩の濃度を上げても溶解しなかった。
20ml試験管に小さくカットした濾紙(定性濾紙No.2)を入れ、下記各水準の希釈テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)を10ml加え、10℃で24時間静置した。結果を下記表に示す。溶解性の評価基準は実施例3−2と同じである。TBAHの場合、濃度が35重量%以上でセルロースが溶解することが確認されたが、32重量%ではセルロースの量に関わりなくセルロースを溶解することができなかった。
シアノエチルセルロースアンモニウム塩の合成
シアノエチルセルロースの合成
実施例5−1で回収した固体(シアノエチルセルロース)160mgを水3mlに溶解させ、シャーレに移して36時間自然乾燥させたところフィルム化した。このフィルムは半透明だった。
ヒドロキシヘキシルセルロースの合成
アセチルセルロースの合成
アセチルセルロースの置換度の決定のためのプロピオニル化
(1)セルロース(メルク社、102330)560mgと水性アクリル樹脂(和信ペイント水性艶出しニス、固形分30%)3gとを混合して塗工液を調製した。この塗工液を平板上に塗工し、溶解前のセルロースの状態を目視および光学顕微鏡で観察した。塗工サンプルは白く、光学顕微鏡で観察するとセルロースの微粒子がそのまま観察された(図17参照)。
おが屑からのセルロース抽出
電動のこぎりで木材を切断しておがくずを用意した。10ml二ツ口反応器に撹拌子およびそのおがくず200mgを入れてN2置換した。テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液5ml(アルドリッチ社、40 % in water、MW259.47、d0.99、7.71mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。上澄み(2.89g)をバイアルに移し、メタノール9mlを加えたところ、セルロース・四級アンモニウム塩が析出した。また、残渣にもメタノール9mlを加えたところ、こちらからもセルロース・四級アンモニウム塩が析出した。
セルロース515mg(3.2mmol)を、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)5ml(アルドリッチ社製、40重量%水溶液、セルロースに対して2.39当量)に少量ずつ撹拌しながら加えた。この溶液を1週間放置した後の試料Aおよび1日放置した後の試料Bについて、40倍の明視野と偏光顕微鏡(POM)で観察した。試料AおよびBいずれも、繊維状の物質は観られず、またPOM像でサンプルの異方性(結晶性)に基づく複屈折が観られなかったため、等方性溶液と考えられる。
セルロース(515 mg, 3.2 mmol)およびTBAH5ml(アルドリッチ社、40% 水溶液、2.39当量)を加え、5h後に、メタノール15mlを加えて再沈殿させた。濾過して白色固形物を回収し、真空ポンプで5h乾燥して、601mgのパリパリ状の固形物を得た。この固形物(再沈殿試料)の広角X−線解析プロファイル(測定条件:試料形状,乳鉢で2分間粉砕;室温;0.01°毎にサンプリング;スキャンスピード,2°/min)を図22に示す。明確なセルロースI型結晶の回折は観られないため非晶のサンプルが得られている。従って、溶解時に結晶の溶け残りは無いと考えられる。セルロースI型は天然のセルロースに特有な結晶系である。非晶ハローはbimodalになっており、ピーク位置はセルロースII結晶に相当する。セルロースIIは分子分散した溶解状態を経て析出(再生)させた試料に特有な結晶系で、セロハンやレーヨンなどが該当する。偏光顕微鏡観察の結果とあわせて、セルロースは見た目の通り本溶媒に溶解していると考えられる。
(1)金属イオンが無い場合
(1)40% TBAH水溶液またはその代わりにイオン交換水を用いた場合
(2)40% TBAH水溶液の代わりにKOHまたはNaOHを用いた場合
(3a)DMSOの場合
Claims (15)
- セルロース精製物またはセルロースを含有する物質(以下「セルロース原料」と総称する。)と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含むセルロース水溶液の製造方法であって、
前記セルロース原料と接触した状態において、前記水酸化四級アンモニウム水溶液中に溶解しているアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計の濃度が1重量%以下であることを特徴とするセルロース水溶液の製造方法。 - 前記水酸化四級アンモニウム水溶液の濃度が35重量%以上である、請求項1に記載のセルロース水溶液の製造方法。
- 前記水酸化四級アンモニウムが、置換もしくは非置換のアルキル基および/または置換もしくは非置換のアリール基を4つの置換基として有するものであり、当該4つの置換基の炭素原子数の合計が4〜60である、請求項1または2に記載のセルロース水溶液の製造方法。
- セルロース原料と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含むセルロース水溶液の製造方法であって、
前記セルロース原料と前記水酸化四級アンモニウム水溶液との接触を環状ポリエーテルの存在下に行うことを特徴とするセルロース水溶液の製造方法。 - 前記環状ポリエーテルが、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6およびジアザ-18-クラウン-6からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項4に記載のセルロース水溶液の製造方法。
- 前記水酸化四級アンモニウム水溶液中の環状ポリエーテルの濃度が0.01〜5Mである請求項4また5に記載のセルロース水溶液の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる、セルロース水溶液。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液中に生成している、セルロースと水酸化四級アンモニウムとから形成された複合体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液と、セルロース誘導体の原料となるヒドロキシ基反応性化合物とを混合する工程を含むことを特徴とする、セルロース誘導体の製造方法。
- 前記ヒドロキシ基反応性化合物が、α,β−不飽和ニトリル、エポキシド、有機カルボン酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸エステルおよびハロゲン化アルキルからなる群より選択されるものである、請求項9に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液と、セルロースの貧溶媒とを混合し、セルロース・四級アンモニウム複合体を析出させる工程を含むことを特徴とする、セルロース・四級アンモニウム複合体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液から、乾燥により溶媒を除去する工程を含むことを特徴とする、セルロースフィルムの製造方法。
- 請求項12に記載の製造方法により得られるセルロースフィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られるセルロース水溶液を紡糸することを特徴とする、セルロース繊維の製造方法。
- 請求項14に記載の製造方法により得られるセルロース繊維。
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