JP2008266625A - セルロースエーテルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アミン(a1)もしくは第四級アンモニウム塩(a2)、イオン液体(b)、水(c)およびセルロース(d)を含有してなるセルロース溶液もしくは分散液(A)にエーテル化剤(e)を加えてセルロースをエーテル化反応させる工程を含むセルロースエーテルの製造方法であって、(A)が、(A)の重量に基づいてアミン(a1)もしくは第四級アンモニウム塩(a2)を1〜31重量%、イオン液体(b)を11〜91重量%、水(c)を6〜65重量%および(d)を1〜20重量%含むことを特徴とするセルロースエーテルの製造方法。
【選択図】なし
Description
セルロースに様々な置換基を導入した誘導体化が行われており、セルロースにアルキルエーテル基を導入する方法として、従来から、セルロースをアルカリ水中で膨潤させた上でアルキルハロゲン化物を用いてエーテル化するwilliamson合成が行われている。しかし、溶液ではなく膨潤状態での反応であるため反応率が低く、置換度は比較的低かった。
近年、セルロースやセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)を溶解する溶解剤が発見されており、ジメチルアセトアミド/LiClやイオン液体等が挙げられる。これらの溶解剤を用いてアルキルハロゲン化物でアルキルエーテル化反応した場合は、比較的高い置換度のものが得られている(特許文献1)。
しかしながら、ジメチルアセトアミド/LiClを溶解剤として使用した場合は、これらの溶解剤を回収することは不可能に近く、コストアップの原因となっていた。
また、イオン液体を利用したエーテル化反応においては、無機アルカリの存在下で高温下(50〜130℃)での反応が必要であるが、このような高温では無機アルカリとイオン液体との反応が起こりやすいため、無機アルカリおよびイオン液体が少なからず失活し、追加の無機アルカリが必要になったり、イオン液体の回収率が低かった。
即ち、本発明は、アミン(a1)もしくは第四級アンモニウム塩(a2)、イオン液体(b)、水(c)およびセルロース(d)を含有してなるセルロース溶液もしくは分散液(A)にエーテル化剤を加えてセルロースをエーテル化反応させる工程を含むセルロースエーテルの製造方法であって、(A)が、(A)の重量に基づいてアミン(a1)もしくは第四級アンモニウム塩(a2)を1〜31重量%、イオン液体(b)を11〜91重量%、水(c)を6〜65重量%および(d)を1〜20重量%含むことを特徴とするセルロースエーテルの製造方法;およびこの製造方法によって得られ、アルカリ金属の中和塩の含有量が100ppm以下であることを特徴とするセルロースエーテルである。
従来のアルカリセルロース化剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化リチウム等の無機塩基が使用されており、セルロースを膨潤させ、エーテル化剤の浸透を助けるとともにエーテル化反応剤として大量のアルカリが使用されてきた。本発明では、反応媒体であるイオン液体がセルロースを膨潤もしくは溶解させているため、アルカリの使用量としては従来よりも大幅に低減することができる。その結果、これらの大量の水酸化ナトリウムや水酸化リチウムなどの強アルカリを廃棄するための処理が軽減できる。
基、さらに好ましいのはアルキル基およびアルケニル基である。
[1]R1〜R4がいずれも炭素数1〜6のアルキル基であるカチオン[テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ(n−およびi−)プロピルアンモニウム、テトラ(n−、i−およびt−)ブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウムおよびテトラエチルアンモニウム等];
[2]R1〜R3が炭素数1〜6のアルキル基であって、R4が炭素数7〜24の炭化水素基であるカチオン[トリメチルへプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルステアリルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルへキシルアンモニウム、トリエチルオクチルアンモニウム、トリエチルステアリルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリブチルオクチルアンモニウムおよびトリへキシルステアリルアンモニウム等];
[3]R1およびR2が炭素数1〜6のアルキル基であって、R3およびR4が炭素数7〜24の炭化水素基であるカチオン[ジメチルジオクチルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウムおよびジメチルジベンジルアンモニウム等];
[4]R1が炭素数1〜6のアルキル基であって、R2〜R4が炭素数7〜24の炭化水
素きであるカチオン[メチルトリオクチルアンモニウム、エチルトリオクチルアンモニウムおよびメチルオクチルジベンジルアンモニウム等];
従って、第四級アンモニウム塩(a2)としては、第四級アンモニウム水酸化物が好ましい。
セルロースの溶解性または完全に溶解しない場合の分散性の観点から好ましいのは、イオン液体(b)を構成するカチオンが、イミダゾリウムカチオン(b1)もしくはピリジニウムカチオン(b2)が挙げられる。
ここで、「イオン液体」とは、通常は常温(25℃)で液状である、カチオンおよびアニオンから構成される塩を一般には総称されているが、本発明においては必ずしも常温で液体である必要はなく、セルロースをアルキル化反応時の温度(後述するように130〜180℃)以下の融点を有するものであれば使用することができる。
従って、取り扱いの観点から、その融点は、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは常温以下である。
例えばN−メチルイミダゾリウム、N−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムおよび1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
これらのうち、溶解性の観点から好ましくはハロゲンアニオン、カルボキシレートアニオンおよびリン酸アニオンであり、さらに好ましくはカルボキシレートアニオン、ハロゲンアニオンである。
また、有機アルカリ(a)が31%を超えると反応時に副生成物が多くなり、イオン液体(b)が91%を超え、またはセルロース(d1)もしくはセルロース誘導体(d)が1%未満であると、セルロース濃度が低くなってしまい、水(c)が6%未満であると(d)が溶解または分散しにくくなり、(d)が20%を超えると、系中の粘度が上昇するため、生産性の観点から好ましくない。
セルロースの溶解機構はセルロースの膨潤を経て溶解することから、セルロースの形状としては溶解溶剤との接触面積が大きい粉末状が好ましい。
(2)有機アルカリ(a)および水(c)からなる有機アルカリ水溶液にセルロース(d)を膨潤させた後、さらにイオン液体(b)を混合して得られたセルロース溶液もしくは分散液。
(3)イオン液体(b)および水(c)からなるイオン液体水溶液にセルロース(d)を溶解もしくは分散させた後、さらに有機アルカリ(a)を混合して得られたセルロース溶液もしくは分散液。
なお、(1)〜(3)における混合操作は、通常の攪拌を行えばよいが、特別に高速で攪拌する(例えばホモジナイザーを使うなど)必要はなく、必要により、50〜100℃で加熱してもよい。
炭酸ジアルキルとしては、炭酸ジメチルおよび炭酸ジエチルなどが挙げられる。硫酸ジアルキルとしては硫酸ジメチルおよび硫酸ジエチルなどが挙げられる。
炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイドおよび1,4−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
モノハロゲン化酢酸としては、モノクロル酢酸、モノブロム酢酸などが挙げらる。
製造コストおよび各種用途への適応性から、ハロゲン化アルキル、炭素数2〜4のアルキレンオキシドおよびモノハロゲン化酢酸が好ましい。
エーテル化剤の投入方法としては、連続滴下、分割、一括等が挙げられ、反応率制御の観点から連続滴下にて投入する方法が好ましい。
との混合物が得られるが、この混合物からイオン液体を回収する方法としては以下の方法が挙げられる。例えば、混合物を、濾過、遠心分離および/またはデカンテーションなどの操作を用いてイオン液体を分取し、分取したイオン液体を、さらに50〜200℃、好ましくは100〜150℃で常圧もしくは減圧下に脱水し、脱水と同時に未反応アルカリや副生成物を分解したり、または必要により濾過して、回収イオン液体を得ることができる。回収イオン液体は、通常、水分は10%以下、好ましくは0.5%以下である
セルロースをアルカリ化した後にエーテル化する従来の方法で得られるセルロースエーテル中には、副生成物としてのアルカリ金属の中和塩の含有が不可避であった。
そのアルカリ金属の中和塩としては、アルカリ金属とハロゲンとの中和塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウムなど);アルカリ金属と有機酸との中和塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)が挙げられる。
なお、セルロースエーテルに含まれるアルカリ金属の中和塩の含有量は、蛍光X線法で測定できる。
電子材料用バインダーとしては、コンデンサー、IC基板、ハニカム状触媒抗体、圧電素子等に利用できる。
医薬品用途としては、錠剤、顆粒剤、丸薬等の腸溶性コーティング剤、防湿皮膜基剤、徐放性コーティング剤、苦味マスキング剤等に利用できる。
また、化粧品用途としては、洗浄剤、増粘剤、整髪剤等に利用できる。さらに塗料用増粘剤、建材用保水剤等にも利用できる。
攪拌機、冷却管、温度計を備えたオートクレーブに、有機アルカリ(a)としての25%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(TMAH)水溶液67g(有効成分は16.75g)、イオン液体(b)としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMICl)100g、およびセルロース(d)としてのパルプ(日本製紙ケミカル(株)製、 重合度=約1,200)10gを加え、50℃で1時間攪拌した。減圧下で80℃で1時間撹拌することで、水分を9.0%まで脱水し、表1に記載の(a)〜(d)成分の含有割合を有するセルロース溶液を得た。
その後、エーテル化剤としてのエチルクロライド(EtCl)24gを滴下し、90℃で4時間反応させることで粗エチルセルロース溶液を得た。精製は以下の工程で行った。
粗エチルセルロース溶液を85〜90℃の熱水1,000gに投入し、目的物質であるエチルセルロースを析出させた。遠心分離機で18,000Gで30分間脱水・分離し、得られた固形物にさらに水を200g加えて30分間攪拌して水洗したのち、上記と同様の条件で遠心分離機で脱水した。水洗−脱水の操作をさらに3回繰り返し、70℃で24時間減圧乾燥して、エチルセルロース 8.4gを得た。
また、上記の精製工程で得られたイオン液体を含有した回収混合物約1,200gを、加熱、攪拌および冷却管を装備した反応糟に仕込み、減圧下に、100〜105℃で、5時間かけて水分が0.8%になるまで脱水し、減圧濾過を行い塩を除去することで、回収イオン液体81gを得た。
実施例1と同様にして(a)〜(d)成分を混合し、50℃で1時間攪拌した後に、脱水を行わないことで、表1に記載の(a)〜(d)成分の含有割合を有するセルロース溶液を得た。その後、プロピレンオキサイド(PO)24gを滴下し、90℃で2時間反応させることで粗ヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。
精製は実施例1と同様にして行い、ヒドロキシプロピルセルロース 12.4gを得た。
また、実施例1と同様にして、回収イオン液体85gを得た。
表1に記載の、有機アルカリ(a)、イオン液体または回収イオン液体(b)、およびエーテル化剤(e)を表1に記載の量使用し、表1に記載の温度と時間で反応したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3〜7の反応および精製を行った。
アルカリとして48%水酸化ナトリウム水溶液30gを使用し、イオン液体(b)を使用せず、エチルクロライドの仕込量を30gとし、エーテル化反応温度を110℃としたこと以外は実施例1と同様にしてエチルセルロース7.5gを得た。
エチルクロライドの代わりにプロピレンオキサイド30gを使用したこと以外は比較例1と同様にしてヒドロキシプロピルセルロース8.5gを得た。
実施例1と同様のオートクレーブに、実施例1と同様のセルロース(d)を10g、イオン液体(b)としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドを100g、水(c)を8.0g仕込み、90℃1時間攪拌することで溶解させた。セルロースの水酸基と等当量となる水酸化ナトリウム7.4gを加え、60℃で30分攪拌した後、アルカリ価を測定した結果、水酸化ナトリウムのうちの20%が失活していることが判明したため、水酸化ナトリウムを16.6g追加し、その後、アルキルエーテル化剤としてのエチルクロライド30gを90℃で1時間かけて徐々に加え、さらに4時間反応させアルキルエーテル化を終了した。その後、実施例1と同様にして精製し、エチルセルロース6.7gを得た。
有機アルカリ(a)の仕込量を表1の量に変更したこと以外は実施例2と同様にして、プロピレンオキサイド24gを滴下し90℃で2時間撹拌したが、プロピレンオキサイドの付加は全く認められなかった。
実施例1と同様のオートクレーブに、イオン液体(b)としての1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド100gおよび水(c)8gを仕込んで混合した後、実施例1で使用したのと同様のセルロース10gを加えて、90℃1時間攪拌することで溶解させた。さらに有機アルカリ(a)として25%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液4.0g(有効成分は1.0g)を加えて表1に記載の(a)〜(d)の含有割合を有するセルロース溶液を得た。その後、プロピレンオキサイド24gを滴下し90℃で2時間撹拌したが、プロピレンオキサイドの付加は全く認められなかった。
TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド
TMA:トリメチルアミン
NaOH:水酸化ナトリウム
EMICl:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド
EMIAc:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート
EDMICl:1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド
EtCl:エチルクロライド
PO:プロピレンオキサイド
MeCl:メチルクロライド
MCA:モノクロロ酢酸
置換度は、臭化水素酸およびヨウ化水素酸による開裂の後、対応するヨウ化アルキルをガスクロマトグラフィーによる方法で測定した。
また、イオン液体の回収率(%)として、仕込みのイオン液体の重量に対する回収イオン液体の重量%を計算した。結果を表2に示す。
電子材料用バインダーとしては、コンデンサー、IC基板、ハニカム状触媒抗体、圧電素子等に利用できる。
医薬品用途としては、錠剤、顆粒剤、丸薬等の腸溶性コーティング剤、防湿皮膜基剤、徐放性コーティング剤、苦味マスキング剤等に利用できる。
また、化粧品用途としては、洗浄剤、増粘剤、整髪剤等に利用できる。さらに塗料用増粘剤、建材用保水剤等にも利用できる。
Claims (5)
- アミン(a1)もしくは第四級アンモニウム塩(a2)からなる有機アルカリ(a)、イオン液体(b)、水(c)およびセルロースもしくはセルロース誘導体(d)を含有してなるセルロース溶液もしくは分散液(A)に、エーテル化剤(e)を加えてセルロースもしくはセルロース誘導体(d)をエーテル化反応させる工程を含むセルロースエーテルの製造方法であって、(A)の重量に基づいて有機アルカリ(a)が1〜31重量%、イオン液体(b)が11〜91重量%、水(c)が6〜65重量%、およびセルロースもしくはセルロース誘導体(d)が1〜20重量%含まれることを特徴とするセルロースエーテルの製造方法。
- 該第四級アンモニウム塩(a2)が第四級アンモニウム水酸化物である請求項1記載のセルロースエーテルの製造方法。
- イオン液体(b)を構成するカチオンが、イミダゾリウムカチオン(b1)である請求項1または2記載のセルロースエーテルの製造方法。
- エーテル化剤(e)が炭素数1〜20のハロゲン化アルキル、炭素数2〜4のアルキレンオキシドまたはモノハロゲン化酢酸である請求項1〜3のいずれか記載のセルロースエーテルの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか記載の製造方法で得られ、セルロースエーテルに含まれるアルカリ金属の中和塩の含有量が100ppm以下であることを特徴とするセルロースエーテル。
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