JP2018100361A - セルロース混合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルロース誘導体の製造原料として用いると、水溶性の高いセルロース誘導体を高選択率で得ることができるセルロース混合物を製造する方法を提供する。【解決手段】原料セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒とを混合する工程を有するセルロース混合物の製造方法であって、該溶媒は有機溶剤を含み、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満であるセルロース混合物の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース混合物の製造方法に関する。
セルロース誘導体は、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分や分散剤、改質剤、凝集剤等に用いられ、その用途は多岐にわたる。このセルロース誘導体の製造原料となるセルロースは、結晶性が高く、反応性に乏しいため、その結晶性を低減し、反応性を改善する必要がある。
そこで、一般的なセルロース誘導体の製造方法としては、セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合してアルカリセルロースとする、アルセル化又はマーセル化と呼ばれるセルロースの活性化処理の後、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド等のカチオン化剤やアルキレンオキシド等のヒドロキシアルキル化剤(以下、セルロースを誘導体化するために用いる、カチオン化剤やヒドロキシアルキル化剤等の化合物をまとめて「反応剤」ともいう)と反応させて誘導体化する方法が知られている。しかしながらこの方法では、大過剰のアルカリを使用するため、反応剤の反応選択率が低い上に、大量の塩が副生して、その副生塩を除去するための精製負荷が問題になる。
そこで、予めボールミルやロッドミル等を用いたメカノケミカル的手法でセルロースの結晶性を低下させ、その後にセルロースの誘導体化を行う方法も知られている。この方法ではセルロースの活性化に必要なアルカリが少量でよいため、大過剰のアルカリを除去するための洗浄工程を省略することができ、上記の生産性や効率に関する課題を解決した優れた方法である。
例えばセルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の製造方法として、機械力を用いて粉砕した低結晶性の粉末セルロース、セルロースのアンヒドログルコース単位に対して当量程度のアルカリ金属水酸化物及び水を混合してアルカリセルロースとした後、粉体状態のままプロピレンオキシドと反応させる方法が知られている(特許文献1)。しかしながら少量のアルカリでセルロースを活性化する際、セルロース中へのアルカリの拡散が不十分であると、セルロースのI型結晶が残存しやすい。このセルロースを粉末状態でプロピレンオキシドと反応させると、反応不活性であるI型結晶部分のヒドロキシプロピル化が進行し難いため反応が均一に進行せず、得られるヒドロキシプロピルセルロースの水溶性も低下することがある。これを回避するためには、ほぼ完全に結晶がなくなるまで結晶性を低下させたセルロースを原料に用いることが必要であった。
また、水の存在下では、反応剤であるプロピレンオキシドが加水分解し多量化するという副反応が進行して副生成物を生じることがある。反応終了後の前記洗浄工程を省略した場合、当該副生成物が製品中に残存し、製品純度が低下しやすいという問題があるので、上記副反応の発生を抑えてセルロースと反応剤との反応選択率を向上させることが望まれている。
セルロース溶液を用いてセルロース誘導体や再生セルロースを製造することも知られており、セルロースの溶解性を高め、温和な条件でセルロース溶液を得る方法が検討されている。例えば特許文献2には、セルロース原料と水酸化四級アンモニウム水溶液とを接触させる工程を含むセルロース水溶液の製造方法であって、水酸化四級アンモニウム水溶液中のアルカリ金属のハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の合計の濃度を1重量%以下とするか、又は、前記接触を環状ポリエーテルの存在下に行うことを特徴とする、セルロース水溶液の製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、第四級ホスホニウム水酸化物及び第四級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも1種のオニウム水酸化物と水とを含み、且つオニウム水酸化物の含有量が45〜85重量%、水の含有量が15〜55重量%である溶媒にセルロースを溶解する工程を含む、固体状セルロースの製造方法が開示されている。
特開2009−143997号公報 特開2013−139557号公報 特開2014−144998号公報
本発明は、セルロース誘導体の製造原料として用いると、水溶性の高いセルロース誘導体を高選択率で得ることができるセルロース混合物を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び所定の溶媒とを混合することにより前記課題を解決できることを見出した。
本発明は、下記に関する。
[1]原料セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒とを混合する工程を有するセルロース混合物の製造方法であって、該溶媒は有機溶剤を含み、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満である、セルロース混合物の製造方法。
[2]上記[1]に記載の方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物と反応剤とを混合して反応させる工程とを有する、セルロース誘導体の製造方法。
[3]上記[1]に記載の方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物とセルロースの貧溶媒とを混合してセルロースを再沈殿させる工程とを有する、再生セルロースの製造方法。
本発明の製造方法により得られるセルロース混合物は、セルロース誘導体の製造原料として用いると水溶性の高いセルロース誘導体を高選択率で得ることができる。また当該セルロース混合物は、再生セルロースの製造にも好適に用いられる。
実施例8の再生セルロースの製造に用いた原料パルプ及び得られた再生セルロースの広角X線回折図である。
[セルロース混合物の製造方法]
本発明のセルロース混合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)は、原料セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒とを混合する工程を有し、該溶媒は有機溶剤を含み、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満であることを特徴とする。本発明においてセルロース混合物とは、セルロース、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒を含む混合物であればよく、例えば、(1)セルロース、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒を含む固体状態の混合物、(2)セルロース、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒を含む、湿潤又は懸濁状態の混合物、並びに、(3)セルロースが第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒に溶解した溶液状態の混合物いずれの態様も包含する。(1)の「固体状態の混合物」とは、(2)及び(3)以外の状態の混合物をいう。
本発明の製造方法により得られるセルロース混合物は、セルロース誘導体の製造原料として用いると、セルロース誘導体を高選択率で得ることができるという効果を奏する。この理由は定かではないが、以下のように考えられる。
セルロースは結晶性が高いことから、水や有機溶媒などの溶媒に対する溶解性が低く、セルロース誘導体の製造に用いられる各種反応剤との反応活性も低い。第四級アンモニウム水酸化物は他のアルカリ化合物と同様にセルロースの活性化が可能で、セルロースと反応剤との反応触媒としても作用し、かつ、第四級アンモニウム水酸化物を含む溶媒はセルロースの良溶媒ともなる。
第四級アンモニウム水酸化物と有機溶剤を含む溶媒とを併用すると、第四級アンモニウム水酸化物が原料セルロース中に均一に拡散するため、セルロースが均一に活性化される。さらに、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中の水の含有量が50質量%未満であると、上記効果に加えて、反応剤であるアルキレンオキシドの加水分解を抑制することもできる。
そのため本発明の方法によれば、第四級アンモニウム水酸化物の使用量が少なくてもセルロースを活性化することができ、アルキレンオキシド等の反応剤の反応選択率及び反応均一性も向上するので、水溶性の高いセルロース誘導体を高選択率で得ることができると考えられる。
加えて、第四級アンモニウム水酸化物と有機溶剤を含む溶媒との混合溶媒をセルロースと接触させることにより、セルロースの結晶性を低減させることができるため、本発明の方法により、再生セルロースの製造に好適なセルロース混合物を容易に調製できる。
<原料セルロース>
本発明の製造方法に用いられる原料セルロースとしては、化学的に純粋なセルロースの他、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造される木材パルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等、種々のセルロース含有原料を用いることができる。これらの中では、原料中のセルロース純度、セルロースの重合度、及び入手容易性の観点から、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類が好ましい。本発明においては、原料に用いる、化学的に純粋なセルロース又はセルロース含有原料をまとめて「原料セルロース」という。
原料セルロース中のセルロースの平均重合度は特に限定はないが、得られるセルロース誘導体を各種用途へ用いた際の性能の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、さらに好ましくは500以上、よりさらに好ましくは1,000以上であり、入手容易性の観点から、該平均重合度は好ましくは12,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、よりさらに好ましくは2,500以下である。
原料セルロースの平均重合度とは、実施例に記載の銅−アンモニア法等により測定される粘度平均重合度をいう。
原料セルロースの形状は特に限定されないが、操作上の観点から、シート状、ペレット状、チップ状、綿状又は粉末状であることが好ましく、チップ状、綿状又は粉末状がより好ましく、操作上の観点、及びセルロース誘導体の製造に用いられる反応剤との反応性を向上させる観点から、粉末状がさらに好ましい。チップ状の原料セルロースは、例えば原料セルロースを裁断処理することで得ることができる。粉末状の原料セルロースは、例えば原料セルロースを必要に応じて裁断処理及び乾燥処理した後、粉砕処理することで得ることができる。粉砕処理では、原料セルロースを粉末化するとともに結晶化度を低減することができるので、反応性をより向上させることができる。以下、裁断処理、乾燥処理、及び粉砕処理について説明する。
(裁断処理)
原料セルロースの種類や形状によっては、前処理として裁断処理を行うことが好ましい。原料セルロースを裁断する方法は、原料セルロースの種類や形状により適宜選択することができるが、例えば、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する方法が挙げられる。
シート状の原料セルロースを用いる場合、裁断機としてシュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性を向上させる観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。
スリッターカッターは、シートの長手方向に沿った縦方向にロールカッターで縦切りして、細長い短冊状とし、次に、固定刃と回転刃でシートの幅方向に短く横切りする裁断機であって、スリッターカッターを用いることにより、原料セルロースの形状をさいの目形状にすることができる。スリッターカッターとしては、株式会社荻野精機製作所製の裁断機(スーパーカッター)、株式会社ホーライ製のシートペレタイザー等を好ましく使用でき、この装置を使用すると、シート状の原料セルロースを約1〜20mm角に裁断することができる。
間伐材、剪定枝材、建築廃材等の木材類、あるいはシート状以外の原料セルロースを裁断する場合には、ロータリーカッターを使用することが好ましい。ロータリーカッターは、回転刃とスクリーンから構成され、ロータリーカッターを用いることにより、回転刃によりスクリーンの目開き以下の大きさに裁断された原料セルロースを容易に得ることができる。なお、必要に応じて固定刃を設け、回転刃と固定刃により裁断することもできる。
ロータリーカッターを使用する場合、得られる裁断処理物の大きさは、スクリーンの目開きを変えることにより、制御することができる。
裁断処理後に得られる原料セルロースの大きさとしては、生産性を向上させる観点から、好ましくは1mm角以上、より好ましくは2mm角以上であり、後の粉砕処理における粉砕に要する負荷を軽減する観点、及び後述する乾燥処理を効率よく容易に行う観点から、好ましくは70mm角以下、より好ましくは50mm角以下である。
(乾燥処理)
一般に、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、木材類、植物茎・葉類、植物殻類等の原料セルロースは、5質量%を超える水分を含有しており、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。したがって、原料セルロース、好ましくは裁断処理後に得られる原料セルロースの乾燥処理を行うことによって水分量を調整することが、本発明の効果を得る観点からは好ましい。また、粉砕処理に供される原料セルロースの水分量が少ない方が、粉砕及び低結晶化が効率よく進行する。
乾燥処理における温度は、効率よく乾燥を行う観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上であり、品質確保の点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。乾燥処理時間は、水分量を低減する観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、さらに好ましくは0.5時間以上であり、効率よく乾燥を行う観点から、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.5時間以下である。
必要に応じて減圧下で乾燥処理を行ってもよく、効率よく乾燥を行う観点から、絶対圧力は、好ましくは1kPa以上、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは100kPa以上であり、また、好ましくは120kPa以下、より好ましくは105kPa以下である。
乾燥方法としては、公知の乾燥手段を適宜選択すればよく、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行)176頁に記載の方法が挙げられる。該乾燥手段としては、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
これらの乾燥方法は1種でも又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、効率よく乾燥を行う観点から、伝導受熱乾燥法が好ましい。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性を向上させる観点から連続処理が望ましい。
連続乾燥機としては、伝熱効率の観点から伝導受熱型の横型攪拌乾燥機が好ましい。さらに、微粉が発生しにくく、連続排出の安定性を向上させる観点から2軸の横型攪拌乾燥機が好ましい。2軸の横型攪拌乾燥機としては、株式会社奈良機械製作所製の2軸パドルドライヤーを好ましく使用できる。
乾燥処理後の原料セルロースの水分量の下限は、原料セルロースに対して0質量%であるが、生産性を向上させる観点から、該水分量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。また、粉砕処理において原料セルロースを効率よく粉砕及び低結晶化する観点、セルロース混合物中の水の含有量を調整しやすくする観点、及び、得られるセルロース誘導体の水溶性を向上させる観点から、当該水分量は好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.1質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下、よりさらに好ましくは1.5質量%以下である。
当該水分量は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
(粉砕処理)
粉砕処理で用いられる粉砕機に特に制限はなく、原料セルロースを粉末化できる装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動式媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、カッターミル等が挙げられる。
これらの中では、原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルがさらに好ましく、振動ロッドミルがよりさらに好ましい。粉砕方法としては、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
粉砕処理に用いる装置の材質、媒体の材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、原料セルロースの粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、さらに工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスが特に好ましい。
原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径は、粉砕効率の観点から好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、同様の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、原料セルロースの粉砕効率、及び生産性を向上させる観点から、粉砕容器の体積に対して、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、60体積%以上であり、また好ましくは97体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下、よりさらに好ましくは70体積%以下である。
充填率がこの範囲内であれば、原料セルロースとロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容積に対するロッドの体積をいう。
粉砕処理に用いる粉砕機は1種でもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、粉砕処理は多段階に分けて行ってもよい。粉砕処理を多段階に分けて行う場合、例えば、裁断処理及び乾燥処理を行った原料セルロースを粗粉砕処理し、次いで、小粒径化処理を行う方法が挙げられる。小粒径化処理では、篩を用いて粗粉を除去する操作を併用してもよい。
小粒径化処理で用いる粉砕機としては、高速回転式微粉砕機が好ましい。高速回転式微粉砕機とは、ハンマー、ブレード、ピン等を高速回転させ、衝撃、せん断により粉砕筒内に装填された粗粉砕セルロースの粉砕を行う装置である。
小粒径化処理に用いられる高速回転式微粉砕機としては、「改訂六版 化学工学便覧」(社団法人化学工学会編集、丸善株式会社、1999年発行)843頁に記載の高速回転ミル及び分級機内蔵型高速回転ミルに分類されるものが挙げられる。これらの高速回転ミル及び分級機内蔵型高速回転ミルの中でも、粗粉砕セルロースの小粒径化の観点から、ハンマーミル、ディスインテグレーター、ターボ型ミル、アニュラー型ミルからなる群から選ばれるいずれか1種が好ましい。
ハンマーミルとしては株式会社ダルトン製のアトマイザーやサンプルミル、ディスインテグレーターとしては株式会社奈良機械製作所製の自由粉砕機、ターボ型ミルとしてはターボ工業株式会社製のターボミル、アニュラー型ミルとしては株式会社アーステクニカ製のクリプトロンシリーズを、それぞれ好ましく使用することができる。
粉砕処理時の温度に特に限定はないが、セルロースの分解及び操作コストを抑制する観点から、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。処理時の発熱により昇温が認められる場合には、冷却等の操作を行うことができる。
粉砕処理の時間は、原料セルロースが粉末化されるよう、適宜調整すればよい。粉砕処理の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、原料セルロースを十分に粉末化させる観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.05時間以上であり、生産性を向上させる観点から、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。
上記の粉砕処理により、原料セルロースの粉末化及び低結晶化が進行し、本発明の製造方法に用いるのに好適な粉末状の原料セルロースを得ることができる。
粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロースの結晶化度は、溶解性の観点、及び、後述する反応剤との反応性を向上させる観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下であり、好ましくは0%以上である。セルロースの結晶化度が小さいほど、結晶部と非晶部の反応速度に差が生じにくく、より均一に反応が進行する。
本発明において、セルロースの結晶化度とは原料セルロースのI型結晶構造に由来する結晶化度を示し、X線結晶回折測定の結果から下記計算式(1)により求められる。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロースの平均重合度は、得られるセルロース誘導体を各種用途へ用いた際の性能の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは500以上である。また、原料セルロースの入手容易性の観点から、該平均重合度は好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下、さらに好ましくは1,000以下である。
粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロース中の水分量は、0質量%以上であるが、生産性を向上させる観点及び入手容易性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。また、セルロース混合物中の水分量を低減する観点から、該水分量は好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.1質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下、よりさらに好ましくは1.5質量%以下である。
また、粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロースのメジアン径は、反応剤との反応均一性の観点及び粉末状の原料セルロースの生産性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、溶解性の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
<第四級アンモニウム水酸化物>
本発明に用いる第四級アンモニウム水酸化物としては、置換又は非置換の炭化水素基を4つ有するアンモニウム水酸化物が挙げられる。例えば、第四級アンモニウム水酸化物としては下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。

式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の、置換又は非置換の炭化水素基である。
当該「置換又は非置換の炭化水素基」としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、ヒドロキシアリール基、及びアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、アルキル基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
上記アルキル基は直鎖又は分岐鎖のいずれでもよい。直鎖又は分岐鎖のアルキル基の炭素数は1以上であり、セルロースの結晶性を低減させる観点から好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。また、溶媒溶解性の観点から、直鎖又は分岐鎖のアルキル基の炭素数は好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは8以下、よりさらに好ましくは6以下である。また、直鎖又は分岐鎖のアルキル基の中でも、直鎖アルキル基が好ましい。
当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、及びテトラコシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びヘキシル基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、ブチル基がさらに好ましい。
上記ヒドロキシアルキル基の炭素数は1以上であり、セルロースの結晶性を低減させる観点から好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。また溶媒溶解性の観点から、上記ヒドロキシアルキル基の炭素数は好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは8以下、よりさらに好ましくは6以下である。
当該ヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、ヒドロキシイコシル基、ヒドロキシドコシル基、ヒドロキシヘンイコシル基、ヒドロキシドコシル基、ヒドロキシトリコシル基、及びヒドロキシテトラコシル基等が挙げられる。
上記アリール基及びヒドロキシアリール基の炭素数は6以上であり、溶媒溶解性の観点から、好ましくは炭素数24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下、よりさらに好ましくは16以下、よりさらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは8以下である。当該アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。また当該ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシフェニル基、クレジル基、ヒドロキシナフチル基等が挙げられる。
また、上記アラルキル基の炭素数は7以上であり、溶媒溶解性の観点から、好ましくは炭素数24以下、より好ましくは19以下、さらに好ましくは17以下、よりさらに好ましくは13以下、よりさらに好ましくは9以下である。当該アラルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、及びナフチルメチル基等が挙げられる。これらの中でも、ベンジル基が好ましい。
〜Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。上記の中でも、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上18以下のアリール基、及び炭素数7以上19以下のアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、炭素数1以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、及び炭素数7以上13以下のアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基、炭素数6以上8以下のアリール基、及び炭素数7以上9以下のアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、及びベンジル基からなる群から選ばれる1種以上がよりさらに好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びベンジル基からなる群から選ばれる1種以上がよりさらに好ましい。
また溶媒溶解性の観点からは、R〜Rのうち2つ以上が炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基であることが好ましく、3つ以上が炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基であることがより好ましく、4つ全てが炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基であることがさらに好ましい。直鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。
また、第四級アンモニウム水酸化物が有する4つの置換基(一般式(1)におけるR〜R)の炭素数の合計は4以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは12以上である。また、溶媒溶解性の観点から、該炭素数は好ましくは48以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは32以下、よりさらに好ましくは24以下、よりさらに好ましくは22以下、よりさらに好ましくは18以下である。
第四級アンモニウム水酸化物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド(THAH)、トリメチルペンチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)からなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)がよりさらに好ましい。
第四級アンモニウム水酸化物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第四級アンモニウム水酸化物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
第四級アンモニウム水酸化物の製造時、単離が困難である場合には、第四級アンモニウム水酸化物は後述する溶媒を含んだ状態で用いてもよい。本発明の効果を得る観点からは、当該溶媒は有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては第四級アンモニウム水酸化物を溶解しうる溶剤であれば特に制限はないが、第四級アンモニウム水酸化物の分解を抑制する観点からは極性溶剤であることが好ましく、プロトン性極性溶剤がより好ましい。極性溶剤は、後述する溶媒において例示する極性溶剤と同様のものを用いることができる。
<溶媒>
本発明の製造方法で用いる溶媒は有機溶剤を含み、前記原料セルロースと混合する第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満であることを特徴とする。当該溶媒が有機溶剤を含み、かつ水の含有量を少なくすることでアルキレンオキシドの加水分解を抑制できるので、反応選択率も向上する。例えばセルロース混合物の製造において、原料セルロースと混合する溶媒が水のみである場合や、原料セルロースと混合する溶媒中の水の含有量が多い場合には、反応選択率が低下する。
(有機溶剤)
本発明に用いられる有機溶剤としては特に限定されないが、原料セルロース中に第四級アンモニウム水酸化物を均一に拡散させる観点、及び、セルロースとの親和性の観点から、極性溶剤が好ましい。極性溶剤としては、プロトン性極性溶剤、非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
本発明に用いられるプロトン性極性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、(1−メチルエトキシ)−2−プロパノール、1−(2−ブトキシエトキシ)−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ポリアルキレングリコール等の2価アルコール;ヘキサントリオール、オクタントリオール、デカントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチルオキシルトリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリン等の3価アルコール;等が挙げられる。これらの中でも、第四級アンモニウム水酸化物の溶解性の観点からは1価アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、及び2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
非プロトン性極性溶剤は水酸基等の活性水素を有さない極性溶剤であり、例えば、アセトニトリル;ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;が挙げられる。
上記極性溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもセルロース及び第四級アンモニウム水酸化物との親和性の観点からは、当該有機溶剤が非プロトン性極性溶剤を含むことがより好ましく、非プロトン性極性溶剤としてアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、アセトニトリル及びジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1種以上を含むことがさらに好ましい。
最終製造物であるセルロース誘導体や再生セルロースから非プロトン性極性溶剤を除去する観点からは、低沸点の非プロトン性極性溶剤が好ましく、アセトニトリルがより好ましい。一方、セルロース混合物の製造過程における非プロトン性極性溶剤の揮発を避ける観点からは、高沸点の非プロトン性極性溶剤が好ましく、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
上記極性溶剤中の非プロトン性極性溶剤の含有量は、セルロース及び第四級アンモニウム水酸化物との親和性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上である。また、上限は100質量%であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
本発明の製造方法においては、前記原料セルロースと混合する、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量は50質量%未満である。当該水の含有量が少ないことにより、得られるセルロース誘導体の反応選択率が向上する。
当該水の含有量の下限は0質量%である。また上記効果を得る観点から、水の含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは7.5質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下である。
(使用量)
前記原料セルロースと混合する第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒の好ましい使用量は下記のとおりである。
第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との比率は特に限定されない。セルロースの活性化向上の観点、セルロースの溶解性の観点、並びに、得られるセルロース誘導体の水溶性及び反応選択率向上の観点から、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との質量比(第四級アンモニウム水酸化物/溶媒)は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10、よりさらに好ましくは15/85〜85/15、よりさらに好ましくは15/85〜80/20、よりさらに好ましくは15/85〜75/25、よりさらに好ましくは20/80〜70/30、よりさらに好ましくは20/80〜60/40、よりさらに好ましくは30/70〜60/40、よりさらに好ましくは30/70〜55/45である。
ここで、後述するセルロース誘導体の製造においては、生産性及び経済性の観点からは、セルロースと反応剤とを固相状態で反応させることが好ましい。そのため、当該セルロース誘導体の製造原料として用いるセルロース混合物は固体状態であることが好ましい。
固体状態のセルロース混合物を製造する場合、原料セルロースと混合する第四級アンモニウム水酸化物の量は、セルロースを活性化し、反応剤との反応均一性及び反応効率を向上させる観点、並びに、得られるセルロース誘導体の水溶性及び反応選択率を向上させる観点から、原料セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう)1モルに対し、好ましくは0.01モル当量以上、より好ましくは0.1モル当量以上、さらに好ましくは0.2モル当量以上、よりさらに好ましくは0.5モル当量以上であり、経済性の観点から、好ましくは5.0モル当量以下、より好ましくは3.0モル当量以下、さらに好ましくは2.0モル当量以下、よりさらに好ましくは1.5モル当量以下、よりさらに好ましくは1.3モル当量以下である。
また固体状態のセルロース混合物を製造する場合、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量は、原料セルロースに対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは100質量%以上、よりさらに好ましくは150質量%以上、さらに好ましくは200質量%以上であり、固体状態を維持する点から、好ましくは800質量%以下、より好ましくは650質量%以下、さらに好ましくは500質量%以下、よりさらに好ましくは400質量%以下である。
一方、セルロース混合物としてセルロース溶液を製造する場合には、第四級アンモニウム水酸化物の使用量は、セルロースを活性化し、反応剤との反応均一性及び反応効率を向上させる観点、並びに、得られるセルロース誘導体の水溶性及び反応選択率を向上させる観点から、セルロースのAGU1モルに対し、好ましくは0.01モル当量以上、より好ましくは0.1モル当量以上、さらに好ましくは0.2モル当量以上、よりさらに好ましくは0.5モル当量以上、よりさらに好ましくは0.7モル当量以上である。第四級アンモニウム水酸化物の使用量の上限値、及び、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量は、セルロースが溶解する量である限り特に制限されず、所望するセルロース溶液の濃度に応じて適宜選択できる。
セルロース溶液中のセルロース濃度は、例えば0.01質量%以上、25質量%以下の範囲から選択される。
セルロース混合物中の水の含有量は、本発明の効果を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.5質量%以下、よりさらに好ましくは1.0質量%以下である。また、セルロース混合物中の水の含有量の下限値は0質量%である。
本発明の製造方法において、原料セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒との混合順序には特に制限はない。例えば、(i)原料セルロースと第四級アンモニウム水酸化物とを混合し、次いで溶媒を添加して混合する方法、(ii)原料セルロースに、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との混合物を添加して混合する方法、(iii)原料セルロースと溶媒とを混合し、次いで第四級アンモニウム水酸化物を添加して混合する方法、などが挙げられる。
第四級アンモニウム水酸化物は、溶媒の一部を含む状態で添加、混合してもよい。例えば(i)の方法では、第四級アンモニウム水酸化物と前記溶媒の一部とを含む混合液を調製し、これを原料セルロースと混合した後に、前記溶媒の残部を添加して混合する。(iii)の方法では、第四級アンモニウム水酸化物と前記溶媒の一部とを含む混合液を調製し、原料セルロースと前記溶媒の残部とを混合した後に、前記混合液を添加して混合する。
固体状態のセルロース混合物を製造する場合には、各成分を均一に混合する観点から、(iii)の方法が好ましい。中でも、前記「溶媒の残部」が非プロトン性極性溶剤であることが好ましい。すなわち、原料セルロースと非プロトン性極性溶剤とを混合した後に、前記混合液を添加して混合する方法である。
各成分の混合方法は、原料セルロース、第四級アンモニウム水酸化物、及び溶媒を均一に混合できる方法であれば特に制限はなく、例えば、公知の機械式攪拌装置などを用いることができる。
各成分の混合時の温度は特に制限されないが、セルロース混合物中の各成分の分解や揮発を避ける観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。また、経済性の観点、及び、セルロース混合物がセルロース溶液である場合の原料セルロースの溶解性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上である。
各成分の混合時間も特に制限されないが、均一に混合する観点からは、好ましくは2分以上、より好ましくは5分以上であり、生産性の観点から、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下である。
本発明の方法で得られたセルロース混合物は、セルロース誘導体の製造原料や、再生セルロースの製造原料として好適に用いられる。
[セルロース誘導体の製造方法]
本発明のセルロース誘導体の製造方法は、前記方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物と反応剤とを混合して反応させる工程とを有する。前記セルロース混合物は第四級アンモニウム水酸化物及び有機溶剤を含む溶媒を含有するため、反応活性及び反応剤との反応均一性が高い。さらに、第四級アンモニウム水酸化物はセルロースと反応剤との反応触媒としても作用するため、当該反応が効率よく進行する。
セルロース混合物としては固体状態、湿潤又は懸濁状態、溶液状態のいずれも用いることができるが、前述したように、生産性及び経済性の観点からは、セルロースと反応剤とを固相状態で反応させることが好ましい。そのため、当該セルロース誘導体の製造に用いるセルロース混合物は固体状態であることが好ましい。
<反応剤>
本発明で用いる反応剤は、セルロースを誘導体化するために用いられる化合物であって、セルロースの第1級又は第2級の水酸基と反応して置換基を導入しうる化合物であり、例えばヒドロキシアルキル化剤、グリセロール化剤、カチオン化剤等が挙げられる。
本発明のセルロース誘導体の製造方法は、ヒドロキシアルキルセルロースの製造に用いることが好ましい。ヒドロキシアルキルセルロースの製造に用いる反応剤としては、アルキレンオキシド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルハロヒドリンエーテル等のヒドロキシアルキル化剤が挙げられる。これらの中でも、反応時に塩の生成がない点、及び経済性の観点から、アルキレンオキシドが好ましい。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられ、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、プロピレンオキシドがより好ましい。
以下、本発明のセルロース誘導体の製造方法の一例として、反応剤としてアルキレンオキシドを用いてヒドロキシアルキルセルロースを製造する方法を説明する。
本発明で用いる反応剤の量は、セルロースへの置換基の所望の導入量に応じて適宜選択できる。反応剤がアルキレンオキシドである場合には、得られるヒドロキシアルキルセルロースの水溶性を向上させる観点から、セルロースのAGU1モルに対し、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.10当量以上、さらに好ましくは0.20当量以上である。一方、反応生成物の水溶液粘度を向上させる観点、及び経済性の観点から、本発明で用いるアルキレンオキシドの量は、セルロースのAGU1モルに対し、好ましくは50当量以下、より好ましくは30当量以下、さらに好ましくは20当量以下、よりさらに好ましくは10当量以下、よりさらに好ましくは5.0当量以下である。
セルロース混合物に対するアルキレンオキシドの添加方法には特に制限はなく、一括添加、分割添加のいずれでもよい。反応均一性の観点、及びアルキレンオキシド自身の重合を避ける観点からは、分割添加が好ましい。また、アルキレンオキシドの沸点以上の温度で反応させる場合には、還流管を備えた反応装置を用い、アルキレンオキシドを徐々に滴下させながら行うのが好ましい。
本発明においては、装置を使用してセルロース混合物と反応剤の混合及び反応を行ってもよい。当該装置としては、撹拌が可能なレディゲミキサー等のミキサーや、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。
反応温度及び反応温度は、反応剤の種類等に応じて適宜選択できる。反応剤がアルキレンオキシドである場合、反応速度を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上、よりさらに好ましくは40℃以上である。また、原料の分解を抑制する観点から、反応温度は好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下、よりさらに好ましくは60℃以下である。
反応時間は、反応速度及び反応収率を向上させる観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、よりさらに好ましくは12時間以上、よりさらに好ましくは24時間以上である。また、セルロースのアンヒドログルコース由来の主鎖の分子量の低下を抑制する観点からは、該反応時間は、好ましくは96時間以下、より好ましくは72時間以下である。
上記反応は、ヒドロキシアルキルセルロースの着色、及びアンヒドログルコース由来の主鎖の分子量の低下を抑制する観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
反応終了後は、酸性化合物を用いて第四級アンモニウム水酸化物を中和する工程を行うことができる。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸等の有機酸を用いることができる。中和効率の観点、及びセルロースのアンヒドログルコース由来の主鎖の分子量の低下を抑制する観点から、当該酸性化合物としては有機酸が好ましく、カルボン酸がより好ましく、酢酸がさらに好ましい。
反応終了後に得られたヒドロキシアルキルセルロースは、必要に応じて、ろ過精製により分別したり、熱水、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応のアルキレンオキシド、並びにアルキレンオキシド由来の副生成物を除去したりすることもできる。その他、精製方法としては、凍結乾燥、再沈殿精製、遠心分離、透析膜を使用した膜精製等、一般的な精製方法を用いることができる。これらの精製方法の中では、精製効率、及び得られるヒドロキシアルキルセルロースの純度の高さの観点から、ろ過精製又は膜精製が好ましい。
得られたヒドロキシアルキルセルロースは、必要に応じ乾燥を行うこともできる。乾燥方法としては特に制限はないが、乾燥効率を向上させる観点からは減圧乾燥を行うことが好ましく、凍結乾燥を行うことがより好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロースは、水溶性の観点から、セルロース主鎖を構成するセルロースのAGU1モルあたりに対するヒドロキシアルキル基の平均付加モル数が、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.50以上、よりさらに好ましくは0.80以上である。また、ヒドロキシアルキルセルロースの水溶液粘度、及び経済性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8.0以下、よりさらに好ましくは5.0以下である。
ヒドロキシアルキル基の平均付加モル数は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
当該ヒドロキシアルキルセルロースは、さらにカチオン化剤と反応させてカチオン化ヒドロキシアルキルセルロールを製造することもできる。
本発明の製造方法で得られたセルロース誘導体は、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分、分散剤、改質剤、凝集剤等に好適である。
[再生セルロースの製造方法]
本発明の再生セルロースの製造方法は、前記方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物とセルロースの貧溶媒とを混合してセルロースを再沈殿させる工程とを有することを特徴とする。再生セルロースの製造には、固体状態、溶液状態のいずれのセルロース混合物を用いてもよいが、セルロース混合物として固体状態のセルロース混合物を用いることが好ましい。固体状態のセルロース混合物を用いると、より少ない溶媒量で再生セルロースを調製できるため、生産性や経済性の点で好適である。セルロース混合物中に含まれる原料セルロース、第四級アンモニウム水酸化物、溶媒、これらの使用量、並びに好ましい態様については前記と同じである。
再生セルロースの製造に用いるセルロース混合物中のセルロース濃度は、再生セルロースの生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
セルロースの貧溶媒は特に制限されず、水又は有機溶剤のいずれも用いることができる。当該貧溶媒は混合溶媒ではなく単一組成の溶媒であることが好ましい。単一組成の溶媒は、セルロースの溶解性が低いためである。また、再沈殿後に貧溶媒を除去する観点からは、貧溶媒は常圧における沸点が100℃未満であることが好ましい。
上記観点、及びセルロース混合物との混和性の観点から、貧溶媒としては、水又は常圧における沸点が100℃未満の極性溶剤が好ましい。当該極性溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の炭素数1以上4以下のアルコール、又はアセトンが好ましく、エタノールがより好ましい。
なお、貧溶媒として水を用いると、得られる再生セルロースはII型結晶となり、貧溶媒としてエタノール等の極性溶剤を用いると、得られる再生セルロースは非晶性のセルロースとなる。
セルロースを再沈殿させる際のセルロース混合物と貧溶媒との混合方法は特に制限されず、例えば、反応槽中に貧溶媒を充填し、必要に応じ攪拌しながら、貧溶媒中にセルロース混合物を添加する方法が挙げられる。その際、貧溶媒中にセルロース混合物を添加し再沈殿させると、粉末状又は粒状の再生セルロースが得られる。また、セルロース溶液を貧溶媒中に繊維状に押出添加して紡糸すると、繊維状の再生セルロースを得ることができる。
再沈殿時の温度は、貧溶媒の沸点未満であれば特に制限されず、通常、0℃以上、80℃以下の範囲である。
再沈殿したセルロースは、ろ過などにより固液分離した後、必要に応じ洗浄、乾燥して、再生セルロースとして単離することができる。得られた再生セルロースは、セルロース誘導体の製造原料や再生セルロース繊維として有用である。
上述した実施の形態に関し、本発明は以下のセルロース混合物の製造方法、セルロース誘導体の製造方法、再生セルロースの製造方法、セルロース混合物、及び使用を開示する。
<1>
原料セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒とを混合する工程を有するセルロース混合物の製造方法であって、該溶媒は有機溶剤を含み、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは7.5質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下である、セルロース混合物の製造方法。
<2>
前記有機溶剤が極性溶剤であり、好ましくは非プロトン性極性溶剤を含む、上記<1>に記載のセルロース混合物の製造方法。
<3>
前記非プロトン性極性溶剤がアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる1種以上、好ましくはアセトニトリル及びジメチルスルホキシドからなる群から選ばれる1種以上である、上記<2>に記載のセルロース混合物の製造方法。
<4>
前記セルロース混合物中の水の含有量が、前記原料セルロース中のセルロースに対し好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.5質量%以下、よりさらに好ましくは1.0質量%以下である、上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<5>
前記第四級アンモニウム水酸化物が置換又は非置換の炭化水素基を4つ有するアンモニウム水酸化物であり、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物である、上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。

式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の、置換又は非置換の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1以上24以下の、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、ヒドロキシアリール基、及びアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくは、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上18以下のアリール基、及び炭素数7以上19以下のアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくは炭素数1以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、及び炭素数7以上13以下のアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくは炭素数1以上6以下の直鎖アルキル基、炭素数6以上8以下のアリール基、及び炭素数7以上9以下のアラルキル基からなる群から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、及びベンジル基からなる群から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びベンジル基からなる群から選ばれる1種以上である。R〜Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
<6>
前記一般式(1)におけるR〜Rの炭素数の合計が4以上、好ましくは8以上、より好ましくは12以上であり、48以下、好ましくは40以下、より好ましくは32以下、さらに好ましくは24以下、よりさらに好ましくは22以下、よりさらに好ましくは18以下である、上記<5>に記載のセルロース混合物の製造方法。
<7>
前記第四級アンモニウム水酸化物と前記溶媒との質量比が1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは15/85〜85/15、よりさらに好ましくは15/85〜80/20、よりさらに好ましくは15/85〜75/25、よりさらに好ましくは20/80〜70/30、よりさらに好ましくは20/80〜60/40、よりさらに好ましくは30/70〜60/40、よりさらに好ましくは30/70〜55/45である、上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<8>
前記極性溶剤中の非プロトン性極性溶剤の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは50質量%以上であり、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である、上記<2>〜<7>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<9>
前記第四級アンモニウム水酸化物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)からなる群から選ばれる1種以上、好ましくはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)、及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)である、上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<10>
前記セルロース混合物が固体状態である、上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<11>
前記原料セルロースと混合する前記第四級アンモニウム水酸化物の量が、原料セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対し、好ましくは0.01モル当量以上、より好ましくは0.1モル当量以上、さらに好ましくは0.2モル当量以上、よりさらに好ましくは0.5モル当量以上であり、好ましくは5.0モル当量以下、より好ましくは3.0モル当量以下、さらに好ましくは2.0モル当量以下、よりさらに好ましくは1.5モル当量以下、よりさらに好ましくは1.3モル当量以下である、上記<10>に記載のセルロース混合物の製造方法。
<12>
前記第四級アンモニウム水酸化物と前記溶媒との合計量が、原料セルロースに対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは100質量%以上、よりさらに好ましくは150質量%以上、さらに好ましくは200質量%以上であり、好ましくは800質量%以下、より好ましくは650質量%以下、さらに好ましくは500質量%以下、よりさらに好ましくは400質量%以下である、上記<10>又は<11>に記載のセルロース混合物の製造方法。
<12>
前記セルロース混合物がセルロース溶液である、上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<13>
前記セルロース混合物中の水の含有量が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.5質量%以下、よりさらに好ましくは1.0質量%以下である、上記<1>〜<12>のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
<14>
上記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物と反応剤とを混合して反応させる工程とを有する、セルロース誘導体の製造方法。
<15>
前記反応剤がアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはプロピレンオキシドである、上記<14>に記載のセルロース誘導体の製造方法。
<16>
前記製造方法に用いるアルキレンオキシドの量が、セルロースのAGU1モルに対し、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.10当量以上、さらに好ましくは0.20当量以上であり、好ましくは50当量以下、より好ましくは30当量以下、さらに好ましくは20当量以下、よりさらに好ましくは10当量以下、よりさらに好ましくは5.0当量以下である、上記<15>に記載のセルロース誘導体の製造方法。
<17>
前記セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロースである、上記<14>〜<16>のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
<18>
前記ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシアルキル基の平均付加モル数が、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.50以上、よりさらに好ましくは0.80以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8.0以下、よりさらに好ましくは5.0以下である、上記<17>に記載のセルロース誘導体の製造方法。
<19>
上記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物とセルロースの貧溶媒とを混合してセルロースを再沈殿させる工程とを有する、再生セルロースの製造方法。
<20>
前記貧溶媒が単一組成の溶媒である、上記<19>に記載の再生セルロースの製造方法。
<21>
前記貧溶媒が水又は常圧における沸点が100℃未満の極性溶剤である、上記<19>又は<20>に記載の再生セルロースの製造方法。
<22>
前記極性溶剤が炭素数1以上4以下のアルコール又はアセトン、好ましくはエタノールである、上記<21>に記載の再生セルロースの製造方法。
<23>
原料セルロース、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒を含有するセルロース混合物であって、該溶媒は有機溶剤を含み、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは7.5質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下である、セルロース混合物。
<24>
上記<23>に記載のセルロース混合物の、セルロース誘導体の製造への使用。
<25>
上記<23>に記載のセルロース混合物の、再生セルロースの製造への使用。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。
平均重合度、結晶化度、水分量、メジアン径、ヒドロキシアルキル基の平均付加モル数、反応選択率、及び水溶性の測定ないし算出は、下記の方法により行った。
(1)平均重合度の測定
実施例及び比較例において用いた原料セルロース(パルプ)の粘度平均重合度は、以下に示す方法によって測定した。
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅(関東化学工業(株)製)0.5g、25%アンモニア水(アルドリッチ社製)20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅(関東化学社製)1.0g、及び25%アンモニア水を加えた。これを30〜40分、25℃で撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤した粉砕パルプ(105℃、20kPa[絶対圧力]で12時間減圧乾燥したもの)を加え、メスフラスコの標線まで前記アンモニア水を満たした。マグネチックスターラーで12時間、25℃で撹拌して溶解した。同じように添加するパルプ量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
(ii)粘度平均重合度の測定
前記(i)で得られた測定用溶液をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置したのち、液の流下速度を測定した。種々のパルプ濃度(g/dL)の測定用溶液の流下時間(t(秒))とパルプ無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を以下の式より求めた。
ηsp/c=(t/t0−1)/c
(式中、cはパルプ濃度(g/dL)である。)
さらに、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、以下の式より粘度平均重合度(DPv)を求めた。
DPv=2000×[η]
(式中、2000はセルロースに固有の係数である。)
(2)結晶化度の算出
セルロースの結晶化度は、それぞれのパルプのX線回折強度を、X線回折装置「RINT 2500VC X−RAY diffractometer」(リガク社製)を用いて以下の条件で測定し、下記計算式に基づいて算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kV,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5〜45°,X線のスキャンスピード:10°/minであり、測定用のサンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮して作製した。
(3)水分量の測定
原料セルロース中の水分量は、電子式水分計「MOC−120H」(島津製作所社製)を用いて測定した。温度120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が 0.1質量%以下となる点を測定の終点とした。前記条件下において測定された水分量の値を、原料セルロースから水を差し引いた残余の質量に対する質量%に換算し、水分量とした。
(4)セルロース含有量
原料セルロースから水を差し引いた残余の成分の含有量を原料セルロースの質量に対する質量%に換算し、セルロース含有量とした。
(5)メジアン径の測定
粉末状原料セルロース(粉砕パルプ)のメジアン径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いて測定した。粉末状原料セルロースをエタノールに添加し、1分間超音波分散処理を行った後、この分散液を試料として測定を行った。
(6)ヒドロキシアルキル基の平均付加モル数の算出
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の、セルロースの主鎖を構成するAGUあたりのヒドロキシプロピル基の導入数の平均値(平均付加モル数)は、第十六改正日本薬局方47頁に記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って得られた値から求めた。
具体的には、実施例で得られた精製HPCのヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OCOH)=75.09〕(b(モル/g))(%)を、下記計算式から求めた。
b(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100)
次に、得られた値bと下記計算式からHPCのヒドロキシプロピル基の平均付加モル数(m)を算出した。
b=m/(162+m×58.08)
ガスクロマトグラフィー測定は「GC−2014」(島津サイエンス社製)を用いて測定を行った。また、オートサンプラーとして「AOC−20i」(島津サイエンス社製)、水素発生装置として「HG260B」(ジーエルサイエンス社製)を用いた。分析条件は以下の通りである。
カラム:「Silicone SE−30 30% Chromosorb W 60/80 AW−DMCS」(島津サイエンス社製)
カラム温度:60℃(5min)→10℃/1min→300℃(1min)
インジェクター温度:250℃
検出器温度:320℃
打ち込み量:1μL
またヒドロキシブチルセルロース(HBC)の、セルロース主鎖を構成するAGUあたりのヒドロキシブチル基の導入量の平均値(平均付加モル数)は以下の方法で行った。
実施例で得られた精製HBCのヒドロキシブトキシ基含有量〔式量(−OCOH)=89.11〕(b’(モル/g))(%)を、下記計算式から求めた。
b’(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシブトキシ基含有量(%)/(89.11×100)
次に、得られた値b’と下記計算式からHBCのヒドロキシブチル基の平均付加モル数(m)を算出した。
b’=m/(162+m×72.10)
ガスクロマトグラフィー測定は「GC−2014」(島津サイエンス社製)を用いて測定を行った。また、オートサンプラーとして「AOC−20i」(島津サイエンス社製)、水素発生装置として「HG260B」(ジーエルサイエンス社製)を用いた。分析条件は以下の通りである。
カラム:「Silicone SE−30 30% Chromosorb W 60/80 AW−DMCS」(島津サイエンス社製)
カラム温度:60℃(5min)→10℃/1min→300℃(1min)
インジェクター温度:250℃
検出器温度:320℃
打ち込み量:1μL
(7)反応選択率の算出
反応剤としてアルキレンオキシドを用いた場合の反応選択率は、アルキレンオキシドの投入量と得られたHPC又はHBCのヒドロキシアルキル基の平均付加モル数から、下記計算式により算出した。
反応選択率(%)=ヒドロキシアルキル基の平均付加モル数/[(アルキレンオキシド投入量(モル)/主鎖AGU(モル))×100]
(8)水溶性の評価
HPC又はHBC150mgを精秤し、水50mlと撹拌子を加え、マグネチックスターラーで室温下、一晩攪拌を行った。その後、3000rpm、30分間の条件で、遠心分離機「H−28F」(コクサン社製)を用いて遠心分離した。得られた上澄みを凍結乾燥し、得られた固形分の重量を測定することで水可溶分の重量分率(%)を求めた。表1に示す水溶性(%)は水可溶分の重量分率であり、該重量分率が高いほど水溶性に優れることを意味する。
製造例1(粉末状原料セルロースの製造)
(1)裁断処理
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ「BioflocHV+」(Tembec社製、結晶化度:82%、水分量:8.5質量%、平均重合度1550)を、裁断機「RK6−800」(荻野精機製作所社製)を用いて3mm×1.5mm×1mmのチップ状に裁断した。
(2)乾燥処理
前記(1)の裁断処理により得られたチップ状の原料セルロースを、2軸横型攪拌乾燥機「NPD−3W(1/2)」(奈良機械製作所社製)を用いて乾燥した。大気圧下、連続処理にてパルプを乾燥した。このとき乾燥機の加熱媒体は150℃のスチームを用い、チップ状の原料セルロースの供給速度は45kg/hとした。連続処理で得られた乾燥後のチップ状の原料セルロースの水分量は0.5質量%であった。
(3)粗粉砕処理
前記(2)の乾燥処理により得られた乾燥後の原料セルロースを、連続式振動ミル「YAMT−200」(ユーラステクノ社製、第1及び第2粉砕室の容量:112L)を用いて粗粉砕した。第1及び第2粉砕室には、直径30mm、長さ1300mmのステンレス製の丸棒状の粉砕媒体を80本ずつ収容した。粉砕媒体の充填率は66.5%であった。連続式振動ミルを振動数16.7Hz、振幅13.4mm、温度75℃、乾燥後の原料セルロースの滞留時間2.6分間の条件下、乾燥後の原料セルロースを20kg/hで投入した。得られた粗粉砕セルロースのメジアン径は191μm、結晶化度は19%であった。
(4)セルロース小粒径化処理
前記(3)の粗粉砕処理により得られた粗粉砕セルロースを、高速回転式微粉砕機「KIIW−1型」(ダルトン社製)を用いて小粒径化した。目開き0.7mmのスクリーンを装着し、ローター周速度を81m/sで駆動すると共に、原料供給部から粗粉砕セルロースを18kg/hの供給速度で供給した。
次いで、円形振動篩機「KGC−500」(興和工業所社製)に、篩面積0.196m、目開き150μmのSUS製スクリーンを装着し、振動数30Hz(振動回転数1800r/min)、縦方向の片振幅3mm、横方向の片振幅3mm、ウエイト位相角60°で駆動すると共に、原料供給部から原料を14kg/hの供給速度で供給して、粗粉を除去し、篩通過物を粉末状の原料セルロース(結晶化度:19%、水分量:1.5質量%、平均重合度:855、メジアン径:83μm)として回収した。
製造例2(TBAHの製造)
テトラブチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製)13.9gをビーカーに量り取り、これにメタノール(和光純薬工業(株)製)500mlを加え、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、室温下で溶解させた。これに、予め500mlのメタノール(和光純薬工業(株)製)で洗浄した強イオン性イオン交換樹脂(DOWEX MONOSPHER(登録商標)550(OH)、和光純薬工業(株)製)56.7gを加えて室温下で撹拌した。濾過によりイオン交換樹脂を除去し、バス温30℃のエバポレーターでメタノールを留去後、真空ポンプを用いて真空乾燥することでテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)を得た。
得られたTBAH1.0gをイオン交換水50mlで希釈し、これに1%フェノールフタレインエタノール溶液を加えて1M塩酸(和光純薬工業(株)製)で中和滴定を行うことでTBAHの純度を算出した。得られたTBAHの純度は70%であった。なお、残余の30%はメタノールである。
製造例3(BTEAHの製造)
ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(和光純薬工業(株)製)11.4gをビーカーに量り取り、これにメタノール(和光純薬工業(株)製)500mlを加え、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、室温下で溶解させた。これに、予め500mlのメタノール(和光純薬工業(株)製)で洗浄した強イオン性イオン交換樹脂(DOWEX MONOSPHER(登録商標)550(OH)、和光純薬工業(株)製)56.7gを加えて室温下で撹拌した。濾過によりイオン交換樹脂を除去し、バス温30℃のエバポレーターでメタノールを留去後、真空ポンプを用いて真空乾燥することでベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(BTEAH)を得た。
得られたBTEAH1.0gをイオン交換水50mlで希釈し、これに1%フェノールフタレインエタノール溶液を加えて1M塩酸(和光純薬工業(株)製)で中和滴定を行うことでBTEAHの純度を算出した。得られたBTEAHの純度は68%であった。なお、残余の32%はメタノールである。
実施例1
(セルロース混合物の製造)
製造例1で得られた粉末状の原料セルロース2.0gを乳鉢に量り取り、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業(株)製)3.2gをスポイトで原料セルロースに数滴ずつ加えて乳棒で混合する操作を繰り返した。ジメチルスルホキシドを添加した後、これに製造例2で得られた純度70%のTBAH3.2g(TBAH純分2.24g、メタノール0.96g)をスポイトで数滴ずつ加えて乳棒で混合する操作を繰り返し、セルロース混合物を得た。
(HPCの製造)
得られたセルロース混合物をガラス製密閉容器に移し、ここに反応剤であるプロピレンオキシド(和光純薬工業(株)製)を0.29g(0.4当量/AGU)添加して密閉後、50℃で2時間反応させた。この操作をさらに4回繰り返し、計2.0当量/AGUのプロピレンオキシドを反応に用いた。得られた粗HPCを酢酸(和光純薬工業(株)製)で中和し、中和物を透析膜(和光純薬工業(株)製、分画分子量8000)を用いて精製した後、凍結乾燥を行い、精製HPCを得た。
得られた精製HPCについて前述の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、ジメチルスルホキシドの使用量を1.6g、製造例2で得られた純度70%のTBAHの使用量を1.6gにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース混合物を得た。また、このセルロース混合物を用いて実施例1と同様の方法で精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、ジメチルスルホキシドの使用量を1.9g、製造例2で得られた純度70%のTBAHの使用量を4.5gにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース混合物を得た。また、このセルロース混合物を用いて実施例1と同様の方法で精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、ジメチルスルホキシドの使用量を0.64g、製造例2で得られた純度70%のTBAHの使用量を5.8gにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース混合物を得た。また、このセルロース混合物を用いて実施例1と同様の方法で精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
実施例5
実施例1において、ジメチルスルホキシド3.2gに代えてアセトニトリル3.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース混合物を得た。また、このセルロース混合物を用いて実施例1と同様の方法で精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
実施例6
実施例1において、ジメチルスルホキシドの使用量を2.58gに変更し、製造例2で得られた純度70%のTBAH3.2gに代えて、製造例3で得られた純度68%のBTEAH2.6g(BTEAH純分1.8g、メタノール0.8g)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース混合物を得た。また、このセルロース混合物を用いて実施例1と同様の方法で精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
実施例7
実施例1と同様の方法でセルロース混合物を得た後、以下の方法でヒドロキシブチルセルロース(HBC)を製造した。
(HBCの製造)
セルロース混合物をガラス製密閉容器に移し、ここに反応剤である1,2−ブチレンオキシド(東京化成工業(株)製)を0.45g(0.5当量/AGU)添加して、50℃で2時間反応させた。この操作をさらに1回繰り返し、計1.0当量/AGUの1,2−ブチレンオキシドを反応に用いた。得られた粗HBCを酢酸(和光純薬工業(株)製)で中和し、中和物を透析膜(和光純薬工業(株)製、分画分子量8000)を用いて精製した後、凍結乾燥を行い、精製HBCを得た。
得られた精製HBCについて前述の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、ジメチルスルホキシド3.2gに代えて水3.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でセルロース混合物及び精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
比較例2
実施例2において、ジメチルスルホキシド1.6gに代えて水1.6gを用いたこと以外は、実施例2と同様の方法でセルロース混合物及び精製HPCを得た。得られた精製HPCについて前述の評価を行った結果を表1に示す。
注釈)
TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
BTEAH:ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド
PO:プロピレンオキシド
BO:ブチレンオキシド
表1より、本発明の製造方法により得られるセルロース混合物を用いてセルロース誘導体であるヒドロキシアルキルセルロースを製造すると、得られるヒドロキシアルキルセルロースは水溶性に優れ、反応選択率も高くなることがわかる。一方、比較例1及び2のように、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%以上であると、ヒドロキシアルキルセルロースの水溶性及び反応選択率はいずれも低下する。
実施例8(再生セルロースの製造)
撹拌子を備えたガラス容器にアセトニトリル(和光純薬工業(株)製)1.0gと製造例2で得られた純度70%のTBAH1.0g(TBAH純分0.70g、メタノール0.30g)を量り取り、室温下で撹拌を行った。これに製造例1で得られた粉末状の原料セルロースを200mg加え、室温下で1時間撹拌することで1質量%のセルロース溶液を調製した(セルロース混合物調製工程)。次いで、撹拌子を備えたビーカーに50mlのイオン交換水を加え、これに調製したセルロース溶液をスポイトで少量ずつ加えて再沈殿させることで固形物を析出させた(再沈殿工程)。固形物を濾過によって回収し、減圧下、50℃で一晩乾燥させることで粉末状の固形物を得た。
原料パルプと、上記固形物(再生セルロース)の広角X線回折図(測定条件:試料形状は粉末状、測定機器と測定条件については原料セルロースの結晶化度の算出に用いた条件と同一)を図1に示す。実施例8で得られた固形物の広角X線回折図では原料パルプのX線回折パターンに見られるセルロースI型の回折は見られず、セルロースII型の回折が見られ、再生セルロースが得られたことが分かる。
本発明の製造方法により得られるセルロース混合物は、セルロース誘導体の製造原料として用いると水溶性の高いセルロース誘導体を高選択率で得ることができる。また当該セルロース混合物は、再生セルロースの製造にも好適に用いられる。

Claims (10)

  1. 原料セルロースと、第四級アンモニウム水酸化物及び溶媒とを混合する工程を有するセルロース混合物の製造方法であって、該溶媒は有機溶剤を含み、第四級アンモニウム水酸化物と溶媒との合計量100質量%中、水の含有量が50質量%未満である、セルロース混合物の製造方法。
  2. 前記有機溶剤が非プロトン性極性溶剤を含む、請求項1に記載のセルロース混合物の製造方法。
  3. 前記非プロトン性極性溶剤がアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項2に記載のセルロース混合物の製造方法。
  4. 前記セルロース混合物中の水の含有量が、前記原料セルロース中のセルロースに対し50質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
  5. 前記第四級アンモニウム水酸化物が下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。

    式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1以上24以下の、置換又は非置換の炭化水素基である。
  6. 前記一般式(1)におけるR〜Rの炭素数の合計が4以上、48以下である、請求項5に記載のセルロース混合物の製造方法。
  7. 前記第四級アンモニウム水酸化物と前記溶媒との質量比が1/99〜99/1である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロース混合物の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物と反応剤とを混合して反応させる工程とを有する、セルロース誘導体の製造方法。
  9. 前記反応剤がアルキレンオキシドである、請求項8に記載のセルロース誘導体の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によりセルロース混合物を得る工程と、該セルロース混合物とセルロースの貧溶媒とを混合してセルロースを再沈殿させる工程とを有する、再生セルロースの製造方法。
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