JP2013136096A - 溶接構造物の疲労損傷抑制方法および打撃痕形成用工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶接部の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成する打撃痕形成用工具として、溶接ビードを直角に横切る方向に沿って1mm以上5mm以下の曲率半径rで円弧状に湾曲し、かつ溶接ビードに沿って互いに平行な2つの端面8a,8bのうち一方の端面側に曲率中心rOを偏らせた打撃痕形成面7を先端に有する打撃痕形成用工具6を用い、この打撃痕形成用工具6により最大深さが0.2mm以上の打撃痕を溶接ビードに沿って連続的に形成して溶接ビードの止端近傍に圧縮残留応力を導入する。
【選択図】図1
Description
鋼橋などの溶接構造物では、割れなどの欠陥が溶接部に生じたり、溶接ビードの形状が不適で応力集中が溶接ビードの止端近傍に発生したりすると、繰り返し応力による影響と溶接残留応力の影響が重畳して疲労き裂が溶接部に発生しやすくなり、疲労破壊をもたらす場合がある。
特許文献3に記載の方法は、溶接ビードの止端部に圧縮残留応力をハンマーピーニングにより導入する方法であるが、先端の曲率半径が2〜10mmの打撃ピンを母材表面に溶接金属に触れないように押し当てて圧縮残留応力を導入する方法であるため、圧縮残留応力を導入することが難しいという問題点がある。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法において、前記打撃痕形成用工具として、前記端面に対して直角な2つの側面を有し、該側面の形状が前記打撃痕形成面に対してレの字形に形成された打撃痕形成用工具を用いて前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする。
請求項5の発明は、溶接構造物の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成するときに用いられる打撃痕形成用工具であって、前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿って1mm以上5mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲し、かつ前記溶接ビードに沿って互いに平行な2つの端面のうち一方の端面側に曲率中心を偏らせた打撃痕形成面を先端に有することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の打撃痕形成用工具において、前記端面に対して直角な2つの側面を有し、該側面の形状が前記打撃痕形成面に対してレの字形に形成されていることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7に記載の打撃痕形成用工具において、前記打撃痕形成面と前記側面との境界部に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する円弧面を有することを特徴とする。
さらに、打撃痕形成用工具6は端面8a,8bに対して直角な2つの側面9a,9bを有し、これら側面9a,9bの形状は打撃痕形成面7に対してレの字形に形成されている。
このような打撃痕形成用工具6を用いて本発明を実施する場合は、打撃痕形成用工具6の端面8bが溶接ビード3の止端4と隣接するように打撃痕形成用工具6の位置を調整した後、打撃痕形成用工具6の打撃痕形成面7を母材1の表面に押し当て、溶接ビード3と隣接する母材1の表面に最大深さが0.2mm以上の打撃痕5をハンマー衝撃ピーニング法あるいは超音波衝撃ピーニング法により形成する。
ここで、打撃痕形成面7の曲率半径rを1mm以上5mm以下とした理由は以下の理由からである。すなわち打撃痕形成面7の曲率半径rが1mm未満では、打撃痕5の幅が狭くなり過ぎ、溶接ビード3の止端4に荷重が負荷されたときに応力集中が打撃痕5に発生しやすくなって疲労き裂の発生原因となる。また、打撃痕形成面7の曲率半径rが5mmを超えると打撃痕形成面7の面積が大きくなり過ぎ、最大深さが0.2mm以上の打撃痕5を母材1の表面に形成することが困難となるため、打撃痕形成面7の曲率半径rを1mm以上5mm以下とした。
また、比較例4、5は、図4に示す打撃痕形成用工具13の先端に平面状の打撃痕形成面14が正方形状(1辺の長さLが3mm、5mm)に形成されたものを用いて母材1の表面に最大深さRaが0.2mm以上の打撃痕5を形成した場合をそれぞれ示している。
実施例1〜4と比較例1〜5を比較すると、比較例1〜5では打撃痕5により溶接ビード3の止端4の近傍に導入される圧縮残留応力が230MPa〜270MPaであるのに対し、実施例1〜4では打撃痕5により溶接ビード3の止端4の近傍に導入される圧縮残留応力が330MPa〜340MPaとなることがわかる。
さらに、実施例1〜4のように、打撃痕形成面7と端面9a,9bとの境界部に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する円弧面10a,10bを有する打撃痕形成用工具6を用いることで、打撃痕5の長手方向端部に応力集中が発生することを防止することができる。
2…リブ
3…溶接ビード
4…止端
5…打撃痕
6,11,13…打撃痕形成用工具
7,12,14…打撃痕形成面
8a,8b…端面
9a,9b…側面
10a,10b…円弧面
Claims (8)
- 溶接構造物の溶接部に疲労損傷が発生するのを抑制する方法であって、
前記溶接部の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成する打撃痕形成用工具として、前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿って1mm以上5mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲し、かつ前記溶接ビードに沿って互いに平行な2つの端面のうち一方の端面側に曲率中心を偏らせた打撃痕形成面を先端に有する打撃痕形成用工具を用い、
該打撃痕形成用工具により最大深さが0.2mm以上の打撃痕を前記溶接ビードに沿って連続的に形成して前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする溶接構造物の疲労損傷抑制方法。 - 前記打撃痕形成用工具として、前記溶接ビードに沿う前記打撃痕形成面の長さが1mm以上10mm以下の打撃痕形成用工具を用いて前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする請求項1に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法。
- 前記打撃痕形成用工具として、前記端面に対して直角な2つの側面を有し、該側面の形状が前記打撃痕形成面に対してレの字形に形成された打撃痕形成用工具を用いて前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法。
- 前記打撃痕形成用工具として、前記打撃痕形成面と前記側面との境界部に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する円弧面を有する打撃痕形成用工具を用いて前記溶接部の疲労損傷を抑制することを特徴とする請求項3に記載の溶接構造物の疲労損傷抑制方法。
- 溶接構造物の溶接ビードと隣接する母材表面に打撃痕をハンマーピーニングまたは超音波衝撃ピーニングによって形成するときに用いられる打撃痕形成用工具であって、
前記溶接ビードを直角に横切る方向に沿って1mm以上5mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲し、かつ前記溶接ビードに沿って互いに平行な2つの端面のうち一方の端面側に曲率中心を偏らせた打撃痕形成面を先端に有することを特徴とする打撃痕形成用工具。 - 前記溶接ビードに沿う前記打撃痕形成面の長さが1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の打撃痕形成用工具。
- 前記端面に対して直角な2つの側面を有し、該側面の形状が前記打撃痕形成面に対してレの字形に形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の打撃痕形成用工具。
- 前記打撃痕形成面と前記側面との境界部に0.15mm以上0.30mm以下の曲率半径で円弧状に湾曲する円弧面を有することを特徴とする請求項7に記載の打撃痕形成用工具。
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