JP2013121757A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】周方向溝によって区画された陸部の、該周方向溝に隣接する側方端部の偏摩耗を十分に抑制するとともに、該側方端部における周上での不均一な摩耗を抑制することが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】車両への装着向きが指定され、かつ、トレッド部1にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも1本の周方向溝2によって区画された陸部3を備え、該陸部3の、周方向溝2に隣接する側方端部3aに複数本のサイプ4をタイヤ周方向に相互に間隔をおいて設けてなる空気入りタイヤにおいて、サイプ4は、タイヤ赤道面に平行な断面でみて、陸部表面に開口するタイヤ径方向の外端を基準として、該外端からタイヤ径方向の内端に向かう延在方向が、陸部表面の法線mに対してタイヤの回転方向とは逆方向に傾斜しており、サイプ4の、法線mに対する傾斜角度θは、タイヤ径方向の外端からタイヤ径方向の内端に向かうにつれて大きくなる空気入りタイヤである。
【選択図】図2

Description

この発明は、トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも1本の周方向溝を配設して、トレッド部に陸部を区画してなる空気入りタイヤに関し、特に、該陸部の側方端部に発生する偏摩耗を抑制しようとするものに関する。
従来、空気入りタイヤにおいて、偏摩耗抑制やウエット性能の向上のため、図8及び図9に示すように、周方向溝2によって区画されたリブ状またはブロック状の陸部3の、周方向溝2に隣接する側方端部3aに、タイヤ幅方向の一端が該周方向溝2に開口し他端が陸部3内で終端する複数本のサイプ(いわゆるマルチサイプ)4をタイヤ周方向に相互に間隔をおいて配設することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。このようなサイプ4を陸部3の側方端部3aに配設することにより、横力入力時等における該側方端部3aへの局所的な接地圧力の増大を緩和できるので、陸部3の側方端部3aにおける偏摩耗を抑制することができるとともに、エッジ成分の増大によりウエット性能を向上させることができる。
特開2002−362115号公報
しかしながら、上述したようなサイプを設けた空気入りタイヤでは、図10(a)の模式図(図中、仮想線は接地中かつ蹴り出し前のサイプ4を示し、実線は蹴り出し後のサイプを示している。)を参照しながら説明するに、陸部3の側方端部3aの、サイプ4に隣接した部分がタイヤ転動時に動き易く(すなわち変動量が大きく)、タイヤの蹴り出し時に該部分に大きなせん断歪が発生することから、図10(b)に図10(a)の模式図で示した部分を平面図で示すように、陸部3の側方部分3aの、サイプ4からみてタイヤの進行方向側の部分(図中、斜線で示す)が偏摩耗し易いという問題があり、十分に偏摩耗を抑制できるものではなかった。なお、図10(a)、(b)中、符号Iはタイヤの回転方向を指し、符号Rはタイヤ径方向を指す。
また、タイヤの製造上不可避的に発生する重量、剛性、寸法的なばらつき等に起因して、図11のタイヤ側部の模式図に示すように、サイプが形成された陸部の側方端部の不特定な一部分で早期に摩耗が進展し、すなわち陸部の側方端部において周上に亘って摩耗速度が早い部分と遅い部分とが混在する場合がある。このようなタイヤの周上の不均一な偏摩耗は、外観不良をもたらすのみならず、振動や騒音の原因にもなる。
それゆえ、この発明の目的は、周方向溝によって区画された陸部の、該周方向溝に隣接する側方端部の偏摩耗を十分に抑制するとともに、該側方端部における周上での不均一な摩耗を抑制することが可能な空気入りタイヤを提供することにある。
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の空気入りタイヤは、タイヤの回転方向が指定され、かつ、トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも1本の周方向溝によって区画された陸部を備え、該陸部の、前記周方向溝に隣接する側方端部に、タイヤ幅方向における一端が前記周方向溝に開口する複数本のサイプをタイヤ周方向に相互に間隔をおいて設けてなる空気入りタイヤにおいて、前記サイプは、タイヤ赤道面に平行な面に沿った断面でみて、陸部表面に開口するタイヤ径方向の外端を基準として、該外端からタイヤ径方向の内端に向かう延在方向が、陸部表面の法線に対してタイヤの回転方向とは逆方向に傾斜しており、前記サイプの、前記法線に対する傾斜角度は、前記タイヤ径方向の外端から前記タイヤ径方向の内端に向かうにつれて大きくなることを特徴とするものである。ここでいう「前記サイプの、前記法線に対する傾斜角度は、前記タイヤ径方向の外端から前記タイヤ径方向の内端に向かうにつれて大きくなる」とは、サイプの傾斜角度が連続的に大きくなることのみならず、段階的に大きくなることも含む意味である。
この発明の空気入りタイヤにあっては、タイヤ赤道面に平行な断面でみて、サイプを、タイヤ径方向の外端を基準として、上記延在方向をタイヤの回転方向とは逆方向(すなわち、せん断力が働く方向とは逆方向)に傾斜させたことから、タイヤ転動時における、陸部の側方端部の、サイプに隣接した部分の変動量を小さくすることができ、陸部の側方端部の、サイプからみてタイヤの進行方向側の部分に発生する偏摩耗を低減することができる。また、陸部の側方端部において周上で摩耗速度が早い部分と遅い部分とが発生した場合、摩耗速度が早い部分のサイプの、法線に対する傾斜角度は、摩耗速度が遅い部分のサイプの、法線に対する傾斜角度よりも大きくなり、摩耗速度が早い部分は摩耗速度の遅い部分に比べて摩耗し難くなるため、周上での摩耗速度は均一化される。
なお、この発明の空気入りタイヤにあっては、前記サイプは、前記タイヤ径方向の外端と前記タイヤ径方向の内端との間に少なくとも1つの屈曲部を有し、前記傾斜角度は、該屈曲部を経て変化することが好ましい。これによれば、陸部の側方端部の、サイプを介して向き合う部分が接地時に変形した際に、屈曲部を形成するサイプの対向する壁面同士を係合させることができるので、該陸部の剛性を高めて上記偏摩耗をより一層抑制することができる。
また、この発明の空気入りタイヤにあっては、前記サイプは、前記屈曲部を2つ有することが好ましい。これによれば、周上で摩耗速度を均一化する効果を、摩耗初期から摩耗中期の間と摩耗中期から摩耗末期の間の2回得ることができ、より長期に亘って周上での不均一な摩耗を抑制することができる。
さらに、この発明の空気入りタイヤにあっては、2つの前記屈曲部のうち、前記陸部表面に近い方を第1屈曲部とし、該陸部表面から遠い方を第2屈曲部とし、前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端から前記第1屈曲部までの前記傾斜角度をαとし、前記サイプの、前記第1屈曲部から第2屈曲部までの前記傾斜角度をβとし、前記サイプの、前記第2屈曲部から前記タイヤ径方向の内端までの前記傾斜角度をγとしたとき、各傾斜角度α、β及びγは、0°≦α≦30°かつ15°≦β≦60°かつ30°≦γ≦75°を満たすことが好ましい。これによれば、偏摩耗を抑制する効果及び周上で摩耗速度を均一化する効果をより確実に得ることができる。
さらに、この発明の空気入りタイヤにあっては、タイヤ周方向に隣り合う前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端相互間のタイヤ周方向に沿った距離をL1とし、前記サイプの前記タイヤ径方向の外端及び前記タイヤ径方向の内端相互間のタイヤ周方向に沿った距離をL2としたとき、各距離L1、L2は、L1>L2を満たすことが好ましい。サイプ同士が近いとサイプに隣接した部分が変形し易くなり、摩耗が進行し易くなるのに対し、このようにサイプ間距離を所定以上とすることによって、サイプ間の部分の変形を抑制して、摩耗の進行を遅らせることができるからである。
しかも、この発明の空気入りタイヤにあっては、2つの前記屈曲部のうち、前記陸部表面に近い方を第1屈曲部とし、該陸部表面から遠い方を第2屈曲部とし、前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端から前記第1屈曲部までの前記法線に沿った距離をD1とし、前記サイプの、前記第1屈曲部から前記第2屈曲部までの前記法線に沿った距離をD2とし、前記サイプの、前記第2屈曲部から前記タイヤ径方向の内端までの前記法線に沿った距離をD3とし、前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端から前記タイヤ径方向の内端までの前記法線に沿った距離をD4としたとき、各距離D1、D2及びD3は、(D4×1/4)≦D1≦(D4×1/2)かつ(D4×1/4)≦D2≦(D4×1/2)かつ(D4×1/4)≦D3≦(D4×1/2)を満たすことが好ましい。これによれば、摩耗初期、中期における偏摩耗抑制効果を高めることができ、周上の摩耗速度を均一にすることができる。
この発明の空気入りタイヤによれば、周方向溝によって区画された陸部の、該周方向溝に隣接する側方端部の偏摩耗を十分に抑制するとともに、該側方端部における周上での不均一な摩耗を抑制することが可能となる。
この発明にしたがう一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図である。 図1中のA−A線に沿う断面図である。 (a)は、図1の空気入りタイヤにおいて、陸部の側方端部に設けられたサイプの、蹴り出し前(接地中)と蹴り出し後との様子を模式的に示す断面図であり、(b)は、図1の空気入りタイヤにおいて、陸部の側方端部に発生する偏摩耗の様子を模式的に示す平面図である。 (a)は、陸部の側方端部のうち、周上で摩耗速度の遅い部分を示す断面図であり、(b)は、陸部の側方端部のうち、周上で摩耗速度の早い部分を示す断面図である。 この発明に適用可能な他のサイプを示した、図2と同様の断面図である。 この発明にしたがう他の実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図である。 この発明にしたがう更に他の実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図である。 従来の空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図である。 図8中のB−B線に沿う断面図である。 (a)は、図8の空気入りタイヤにおいて、陸部の側方端部に設けられたサイプの、蹴り出し前(接地中)と蹴り出し後との様子を模式的に示す断面図であり、(b)は、図8の空気入りタイヤにおいて、陸部の側方端部に発生する偏摩耗の様子を模式的に示す平面図である。 周上で摩耗の早い部分と摩耗の遅い部分が発生することを説明するための、タイヤの側面図である。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここで、この発明にしたがう実施形態の空気入りタイヤは、図示を省略するが慣例によるタイヤ構造を備えており、例えば、一対のビード部と、該ビード部のタイヤ径方向に延びる一対のサイドウォール部と、これらのサイドウォール部間を跨るトレッド部とを備え、タイヤ内部に、これらビード部、サイドウォール部及びトレッド部に亘ってトロイド状に延びるとともに、その端部がそれぞれ各ビード部に埋設したビードコアに係止されたカーカスと、カーカスのタイヤ径方向外側に配置されたベルトとを有している。なお、タイヤ構造としてはこれに限定されず、ベルトのタイヤ径方向外側にキャップ層やレイヤー層等の補強層を配置してもよく、カーカスを構成するプライとしてはラジアルプライ、バイアスプライのいずれでも良い。また、この空気入りタイヤは、車両への装着向き又は回転方向が指定されたものであり、これらの装着向きや回転方向は、通常は、タイヤのサイドウォール部外表面等に刻印又は印刷により形成された矢印等の表示部により特定されるものであるが、装着向きや回転方向を示す手段としては、これに限定されない。
図1に示すように、この空気入りタイヤは、トレッド部1に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも1本、図示例では4本の周方向溝2が配設され、該周方向溝2によって5つのリブ状の陸部3が区画形成されている。ここでは周方向溝2は直線状に延在するものとして示しているが、波状またはジグザグ状をなしてタイヤ周方向に沿って延びるものであってもよい。図中、符号Iはタイヤの回転方向を示している。
また、この空気入りタイヤは、周方向溝2に隣接しタイヤ周方向に延在する、陸部3の側方端部3aのうちの少なくとも一方、ここでは両側方端部3aに、一端が周方向溝2に開口し他端が陸部3内で終端する複数本のサイプ(マルチサイプともいう。)4がタイヤ周方向に間隔をおいて配設されている。ここで、「サイプ」とは、タイヤの接地時に少なくとも一部が閉塞する程度の溝幅を有する細溝の意味であり、その溝幅は例えば0.5mm〜2mmとすることができる。また、「接地時」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)のYEAR BOOKに規定される空気圧−負荷能力対応表において、最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をタイヤに充填し、その最大負荷能力の80%の荷重をもって平坦な面に押し付けた状態を意味する。
サイプ4は、図示例では、直線状に延びるものであるが、トレッドの展開図上で湾曲または屈曲しながら延びるものでもよい。また、サイプ4は、図示例では、タイヤ幅方向に平行に配置されているが、タイヤ幅方向に対して60°以下で傾斜させて配置してもよい。さらに、サイプ4は、図1に示すように、タイヤ周方向に一定の間隔をおいて配置することが好ましい。
そして、この空気入りタイヤでは、サイプ4は、図2に示すように、タイヤ赤道面Eに平行な面に沿った断面でみて、陸部表面に開口するタイヤ径方向の外端を基準として、該外端からタイヤ径方向の内端に向かう延在方向が、陸部表面の法線mに対してタイヤの回転方向とは逆方向に傾斜しており、サイプ4の、法線mに対する傾斜角度θは、タイヤ径方向の外端からタイヤ径方向の内端に向かうにつれて段階的に大きくなるよう形成されている。
より具体的には、サイプ4は、タイヤ径方向の外端とタイヤ径方向の内端との間に複数(この実施形態では2つ)の屈曲部4a、4bを有し、傾斜角度θは、該屈曲部4a、4bを経て変化するものである。すなわち、2つの屈曲部4a、4bのうち、陸部表面に近い方を第1屈曲部4aとし、該陸部表面から遠い方を第2屈曲部4bとし、サイプ4の、タイヤ径方向の外端から第1屈曲部4aまでの傾斜角度θをαとし、サイプ4の、第1屈曲部4aから第2屈曲部4bまでの傾斜角度θをβとし、サイプ4の、第2屈曲部4bからタイヤ径方向の内端までの傾斜角度θをγとしたとき、これらの傾斜角度α、β及びγは、α<β<γの関係を満たす。なお、サイプ4のタイヤ径方向の外端及び第1屈曲部4a間、第1屈曲部4a及び第2屈曲部4b間、並びに第2屈曲部4b及びタイヤ径方向の内端間は何れも直線部4c、4d、4eで構成されている。
このような構成になる空気入りタイヤにあっては、図3(a)、(b)に陸部3の側方端部3aを模式的に示すように、タイヤ赤道面Eに平行な断面でみて、サイプ4を、タイヤ径方向の外端を基準として、上記延在方向をタイヤの回転方向Iとは逆方向(すなわち、せん断力が働く方向とは逆方向であり、タイヤの進行方向)に傾斜させたことから、タイヤ転動時における、陸部3の側方端部3aの、サイプ4に隣接した部分の変動量を小さくすることができ、陸部3の側方端部3aの、サイプ4からみてタイヤの進行方向側の部分(図3(b)中、斜線で示す。)に発生する偏摩耗を低減することができる。また、図11を参照して既に説明したように、陸部3の側方端部3aにおいて周上で摩耗速度が早い部分と遅い部分とが発生した場合、摩耗速度が早い部分のサイプ4の、法線mに対する傾斜角度θ(図4(b)参照)は、摩耗速度が遅い部分のサイプ4の、法線mに対する傾斜角度θ(図4(a)よりも大きくなり、摩耗速度が早い部分は摩耗速度の遅い部分に比べて摩耗し難くなるため、周上での摩耗速度は均一化される。
したがって、周方向溝2によって区画された陸部3の、該周方向溝2に隣接する側方端部3aの偏摩耗を十分に抑制するとともに、該側方端部3aにおける周上での不均一な摩耗を抑制することが可能となる。
また、上記実施形態では、各サイプ4に屈曲部4a、4bを2箇所設け、該屈曲部4a、4bを経て、サイプ4の、法線mに対する傾斜角度θを変化させるよう構成したことから、周上で摩耗速度を均一化する効果を、通常のタイヤ摩耗における摩耗初期から摩耗中期の間(サイプ4の深さ方向の長さの大よそ1/3までの摩耗)と摩耗中期から摩耗末期の間(サイプ4の深さ方向の長さの大よそ2/3までの摩耗)の2回得ることができ、より長期に亘って周上での不均一な摩耗を抑制することができる。
ところで、上記実施形態において、上記傾斜角度α、β及びγは、0°≦α≦30°かつ15°≦β≦60°かつ30°≦γ≦75°を満たすことが好ましい。その理由は、傾斜角度αが0°未満であると陸部3の側方端部3aの、サイプ4に隣接する部分がタイヤ転動時に変形し易くなって該部分の偏摩耗が増大し、傾斜角度が30°を超えると摩耗初期以降に変曲点を経て偏摩耗抑制効果が大きくなる効果が薄れてしまうからである。また、傾斜角度βが15°未満であると摩耗初期との偏摩耗抑制効果の違いが小さくなり、傾斜角度βが60°を超えると偏摩耗中期以降との偏摩耗抑制効果に違いが小さくなるからである。さらに、傾斜角度γが30°未満であると摩耗中期との偏摩耗抑制効果の違いが小さくなり、傾斜角度γが75°を超えるとL1>L2を満たすことが難しくなるからである。
また、タイヤ周方向に隣り合うサイプ4の、タイヤ径方向の外端相互間のタイヤ周方向に沿った距離(サイプ4間距離)をL1とし、サイプ4のタイヤ径方向の外端及びタイヤ径方向の内端相互間のタイヤ周方向に沿った距離をL2としたとき、各距離L1、L2は、L1>L2を満たすよう構成することが好ましい。各距離L1、L2がL1≦L2の場合には、サイプ4間の距離が小さく、サイプ4間部分が変形し易くなり偏摩耗抑制効果が低下するからである。
さらに、上記実施形態にあっては、サイプ4の、タイヤ径方向の外端から第1屈曲部4aまでの法線mに沿った距離をD1とし、サイプ4の、第1屈曲部4aから第2屈曲部4bまでの法線mに沿った距離をD2とし、サイプ4の、第2屈曲部4bからタイヤ径方向の内端までの法線mに沿った距離をD3とし、サイプ4の、タイヤ径方向の外端からタイヤ径方向の内端までの法線mに沿った距離をD4としたとき、各距離D1、D2及びD3は、(D4×1/4)≦D1≦(D4×1/2)かつ(D4×1/4)≦D2≦(D4×1/2)かつ(D4×1/4)≦D3≦(D4×1/2)を満たすよう構成することが好ましい。D1、D2又はD3がD4×1/4未満の場合には、摩耗初期、中期、末期の偏摩耗抑制効果が段階的に大きくなる効果が低下し、D1、D2又はD3がD4×1/2を超えるとD1、D2、D3のうちの一つが大きくなることによって、他の距離が小さくなり、摩耗初期、中期、末期の偏摩耗抑制効果が段階的に大きくなる効果が低下するからである。
また、好適には、各サイプ4の深さD4は、周方向溝の溝深さの60〜95%の範囲である。これにより、摩耗末期まで偏摩耗抑制効果を持続させることができる。
また、好適には、各サイプ4の、周方向溝22に開口する一端から陸部3内で終端する他端までのタイヤ幅方向に沿った距離をW1、陸部3の幅(タイヤ幅方向に沿った距離)をW2としたとき、1/30≦W1/W2≦1/4である。また、上記サイプ4間隔L1と距離W1とは、0.2≦L1/W1≦5を満たすことが好ましい。このようにサイプ4の長さW1およびサイプ4間隔L1を設定することで、より確実に耐偏摩耗性を得ることができる。W1/W2が1/30未満の場合には、陸部3の周方向エッジ部の剛性を充分に低減することができないため偏摩耗を充分に抑制できなくなるおそれがあり、W1/W2が1/4を超えると、陸部3の剛性が低下し過ぎて操縦安定性が損なわれるおそれがあり、加えてサイプ4端テア(もげ)が発生するおそれがある。また、L1/W1が0.2未満の場合には、サイプ4の密集により陸部3の剛性が低下し過ぎて操縦安定性が損なわれるおそれがあり、L1/W1が5を超えると、陸部3の側方端部3aの剛性が高すぎて偏摩耗を充分に抑制できなくなるおそれがある。
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものである。例えば、サイプ4は、屈曲部を有していなくてもよく、図5に示すように、タイヤ径方向の外端からタイヤ径方向の内端に向かうに連れて法線mに対する傾斜角度θが連続的に増大するよう構成してもよい。なお、サイプ4の傾斜角度θが連続的に変化する場合、該傾斜角度θは、タイヤ径方向に平行な直線とサイプ4との交点における接線がタイヤ径方向となす角度を指すものとする。このような構成によれば、摩耗初期から末期に至るまで連続的に偏摩耗抑制効果を高めることができる。また、サイプ4は、上記屈曲部を3つ以上有するものであってもよい。また、上記実施形態では、陸部3はリブ状の陸部3として説明したが、図6に示すように両ショルダー側に配置される陸部3だけをリブ状陸部3とし、これらのリブ状陸部3に挟まれたセンター側の陸部3を複数個のブロック状陸部3で構成してもよく、あるいは図7に示すように、両ショルダー側に配置される陸部3を複数個のブロック状陸部3で構成し、これらのブロック状陸部3に挟まれた陸部3をリブ状陸部3としてもよい。さらに、サイプ4は、全ての陸部3に設ける必要はなく、1つの陸部3のみにサイプ4を設けてもよい。
次いで、この発明に従う空気入りタイヤ(実施例1〜7のタイヤ)及び比較としての空気入りタイヤ(比較例1のタイヤ)を試作し、耐偏摩耗性能に関する試験を行ったので、以下説明する。実施例1〜7のタイヤ及び比較例1のタイヤはいずれもタイヤサイズが295/75R22.5である空気入りラジアルタイヤであり、試験は、サイズ8.25×22.5のリムに装着し、内部にTRA規格に準拠した内圧(760kPa)を充填して行った。
ここで、実施例1〜7のタイヤは、図1及び図2に示すトレッドパターンをトレッド部に有するものであり、詳細な諸元は表1に示すとおりである。
比較例1のタイヤは、図8及び図9に示すトレッドパターンをトレッド部に有するものであり、詳細な諸元は表1に示すとおりである。
Figure 2013121757
耐偏摩耗性能に関する性能試験は、各供試タイヤを、実走行状態を模擬した条件に設定された摩耗ドラム試験機上で速度70km/h(一定)の下、実際にタイヤが摩耗するまで走行させ、25%摩耗時、40%摩耗時、50%摩耗時、65%摩耗時及び75%摩耗時の、周方向溝に隣接する陸部の側方端部での偏摩耗量(段差量)を測定することにより行った。なお、25%摩耗時、40%摩耗時、50%摩耗時、65%摩耗時及び75%摩耗時は、新品時主溝深さに対し、踏面全体の溝深さ平均で何%減少したかで判断する。
その結果を表2に示す。表2中の耐偏摩耗性能は、比較例1のタイヤの50%摩耗時の結果(平均値)を100とし、実施例1〜7のタイヤについての結果(平均値)を指数で表したものであり、数値が小さいほど陸部の側方端部での耐偏摩耗性に優れることを示す。また、表2中の耐不均一摩耗性能は、比較例1のタイヤの50%摩耗時の、周上での最も偏摩耗量の大きい部分(摩耗進展の早い部分)と最も偏摩耗量の小さい部分(摩耗進展の遅い部分)との差を100とし、実施例1〜7についての周上での最も偏摩耗量の大きい部分と最も偏摩耗量の小さい部分との差を指数で表したものであり、数値が小さいほど周上に発生する不均一な摩耗が抑制されることを示す。
Figure 2013121757
上記結果から、この発明を適用した実施例1〜7のタイヤは、従来例1のタイヤに比べて優れた耐偏摩耗性能を発揮することが確認された。また、この発明を適用した実施例1〜7のタイヤは、従来例1のタイヤに比べて周上での不均一な摩耗が抑制されることが確認された。
かくして、この発明により、周方向溝によって区画された陸部の、該周方向溝に隣接する側方端部の偏摩耗を十分に抑制するとともに、該側方端部における周上での不均一な摩耗を抑制することが可能な空気入りタイヤを提供することが可能となった。
1 トレッド部
2 周方向溝
3 陸部
3a 陸部の側方端部
4 サイプ
4a 第1屈曲部
4b 第2屈曲部
I タイヤの回転方向
R タイヤ径方向

Claims (6)

  1. タイヤの回転方向が指定され、かつ、トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも1本の周方向溝によって区画された陸部を備え、該陸部の、前記周方向溝に隣接する側方端部に、タイヤ幅方向における一端が前記周方向溝に開口する複数本のサイプをタイヤ周方向に相互に間隔をおいて設けてなる空気入りタイヤにおいて、
    前記サイプは、タイヤ赤道面に平行な面に沿った断面でみて、陸部表面に開口するタイヤ径方向の外端を基準として、該外端からタイヤ径方向の内端に向かう延在方向が、陸部表面の法線に対してタイヤの回転方向とは逆方向に傾斜しており、前記サイプの、前記法線に対する傾斜角度は、前記タイヤ径方向の外端から前記タイヤ径方向の内端に向かうにつれて大きくなることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記サイプは、前記タイヤ径方向の外端と前記タイヤ径方向の内端との間に少なくとも1つの屈曲部を有し、前記傾斜角度は、該屈曲部を経て変化する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記サイプは、前記屈曲部を2つ有する、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 2つの前記屈曲部のうち、前記陸部表面に近い方を第1屈曲部とし、該陸部表面から遠い方を第2屈曲部とし、前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端から前記第1屈曲部までの前記傾斜角度をαとし、前記サイプの、前記第1屈曲部から第2屈曲部までの前記傾斜角度をβとし、前記サイプの、前記第2屈曲部から前記タイヤ径方向の内端までの前記傾斜角度をγとしたとき、各傾斜角度α、β及びγは、0°≦α≦30°かつ15°≦β≦60°かつ30°≦γ≦75°を満たす、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
  5. タイヤ周方向に隣り合う前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端相互間のタイヤ周方向に沿った距離をL1とし、前記サイプの前記タイヤ径方向の外端及び前記タイヤ径方向の内端相互間のタイヤ周方向に沿った距離をL2としたとき、各距離L1、L2は、L1>L2を満たす、請求項1〜4の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 2つの前記屈曲部のうち、前記陸部表面に近い方を第1屈曲部とし、該陸部表面から遠い方を第2屈曲部とし、前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端から前記第1屈曲部までの前記法線に沿った距離をD1とし、前記サイプの、前記第1屈曲部から前記第2屈曲部までの前記法線に沿った距離をD2とし、前記サイプの、前記第2屈曲部から前記タイヤ径方向の内端までの前記法線に沿った距離をD3とし、前記サイプの、前記タイヤ径方向の外端から前記タイヤ径方向の内端までの前記法線に沿った距離をD4としたとき、各距離D1、D2及びD3は、(D4×1/4)≦D1≦(D4×1/2)かつ(D4×1/4)≦D2≦(D4×1/2)かつ(D4×1/4)≦D3≦(D4×1/2)を満たす、請求項3又は4に記載の空気入りタイヤ。
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