JP2013121415A - 車椅子固定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】撓みの発生しない車椅子でも確実に固定でき、モータの耐久性を確保することができる車椅子固定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一端に設けられたフック21、22を介して車椅子Iの前側に接続される前側牽引部材31、32と、一端に設けられたフック23、24を介して車椅子Iの後側に接続される後側牽引部材33、34と、前側および後側牽引部材31、32、33、34を床面に向って引っ張る駆動機構DMと、駆動機構DMの一部が所定位置まで移動したことを検知する検知手段8と、検知手段8の検知より駆動機構DMの作動を停止する制御手段Cとを備え、駆動機構DMが、前側牽引部材31、32のみを所定量引っ張った後に前側および後側牽引部材31、32、33、34の両方を引っ張ることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、撓みの発生しない車椅子でも確実に固定でき、モータの耐久性を確保することができる車椅子固定装置に関する。
図8に示すように、車室内に搬入した車椅子(図示せず)を車体の床面に固定する車椅子固定装置100として、ケーブル101の端部に設けられたフック102を車椅子の前後へ掛止させたあと、モータ103を駆動してケーブル101を同時に所定量巻き取ることによって車椅子を車体の床面に固定する特許文献1のようなものが知られている。
この車椅子固定装置100は、1つのラック104で4つのギヤ105を回転させることにより、ギヤ105と同軸上に設けられた回転ドラム106にケーブル101の巻き取り操作、引き出し操作を行ない、フック102が掛止された車椅子の固定および固定解除をする。図8に示す車椅子固定装置100は、ギヤ105と噛み合うラック104が所定量移動したことによってリミットスイッチ107が作動し、車椅子の固定完了または解除完了としている。
特開2006−304866号公報
この所定量とは、正常な車椅子のタイヤの撓みやフレームの撓みを考慮したうえで確実に固定される量として設定されているが、タイヤがパンクしている車椅子など撓みが発生しない車椅子では、ギヤ105と噛み合うラック104が所定量の移動に達する前に、ケーブル101を巻き取るための力のほうがモータ103の駆動力よりも大きくなってモータ103が拘束してしまい、モータ103が通電され続けてモータ103の耐久性が低くなる問題がある。
本発明は、撓みの発生しない車椅子でも確実に固定でき、モータの耐久性を確保することができる車椅子固定装置を提供することを目的とする。
本発明の車椅子固定装置は、一端に設けられたフックを介して車椅子の前側に接続される前側牽引部材と、一端に設けられたフックを介して車椅子の後側に接続される後側牽引部材と、前記前側および後側牽引部材を床面に向って引っ張る駆動機構と、前記駆動機構の一部が所定位置まで移動したことを検知する検知手段と、前記検知手段の検知より前記駆動機構の作動を停止する制御手段とを備え、前記駆動機構が、前記前側牽引部材のみを所定量引っ張った後に前記前側および後側牽引部材の両方を引っ張ることを特徴とする。
また、前記駆動機構は、前記前側牽引部材の他端が連結され、前記前側牽引部材を巻き取る前側リールと、前記前側リールと一体で回転する前側従動ギヤと、前記後側牽引部材の他端が連結され、前記後側牽引部材を巻き取る後側リールと、前記後側リールと一体で回転する後側従動ギヤと、前記前側従動ギヤと噛合する前側駆動歯列部と、前記後側従動ギヤと噛合する後側駆動歯列部とを有する駆動ラックギヤと、前記駆動ラックギヤを駆動する駆動源とを有し、前記前側駆動歯列部および前記後側駆動歯列部は、一方の歯列端部から所定距離離れた固定位置において、それぞれ前記前側従動ギヤおよび前記後側従動ギヤとの噛合により前記車椅子が固定されるように構成され、当該固定位置から他方の歯列端部までの歯列の長さが、前記前側駆動歯列部よりも前記後側駆動歯列部のほうが短く、前記前側駆動歯列部および前記後側駆動歯列部は、前記他方の歯列端部側からそれぞれ前記前側従動ギヤおよび前記後側従動ギヤと噛合することが好ましい。
また、前記前側牽引部材、前記前側リール、前記前側従動ギヤは対を成すようにそれぞれ2つ設けられ、前記車椅子の前側に異なる方向から接続可能とされており、前記後側牽引部材、前記後側リール、前記後側従動ギヤは対を成すようにそれぞれ2つ設けられ、前記車椅子の後側に異なる方向から接続可能とされていることが好ましい。
また、前記前側従動ギヤおよび前記後側従動ギヤは、前記駆動ラックギヤの延びる方向と平行に直列に配置されていることが好ましい。
駆動機構が、前側牽引部材のみを所定量引っ張った後に前側および後側牽引部材の両方を引っ張ることによって、撓みの発生しない車椅子でも確実に固定でき、モータの耐久性を確保することができる。
本発明の車椅子固定装置を示す全体図である。 本発明の車椅子固定装置により固定された車椅子を示す斜視図である。 (a)〜(c)は、本発明の車椅子固定装置に用いられる駆動ラックギヤを停止するためのリミットスイッチの一態様を説明するための図である。 (a)〜(c)は、本発明の車椅子固定装置に用いられる駆動ラックギヤを停止するためのリミットスイッチの他の態様を説明するための図である。 本発明の車椅子固定装置に用いられる駆動ラックギヤを説明するための図である。 駆動ラックギヤにおける前側駆動歯列部および後側駆動歯列部を説明するための駆動ラックギヤの拡大図である。 (a)〜(c)は、本発明の車椅子固定装置における、駆動ラックギヤと前側従動ギヤおよび後側従動ギヤとの位置関係を示す図である。 従来の車椅子固定装置を示す図である。
以下、添付図面を参照し、本発明の車椅子固定装置を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の車椅子固定装置1は、車椅子I(図2参照)の前側を固定するために、一端に設けられたフック21、22を介して車椅子Iの前側に接続される前側牽引部材31、32と、車椅子Iの後側を固定するために、一端に設けられたフック23、24を介して車椅子Iの後側に接続される後側牽引部材33、34を有している。また、車椅子固定装置1は、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34を床面に向って引っ張る駆動機構DMと、駆動機構DMの一部が所定位置まで移動したことを検知する検知手段8と、検知手段8の検知により駆動機構DMの作動を停止する制御手段Cとを備えている。
駆動機構DMは、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34を床面に向って引っ張ることにより、車椅子Iを床面(後述する昇降台Fなど、車椅子Iが載置されて、車椅子固定装置1により車椅子Iが固定される面をいう)に固定するために駆動される。また、駆動機構DMは、詳細については後述するが、前側牽引部材31、32のみを所定量引っ張った後に前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34の両方を引っ張るように構成されている。
検知手段8は、駆動機構DMの移動量を検知し、検知した情報を制御手段Cに伝達する。制御手段Cは、少なくとも駆動機構DMの作動を停止することができる制御装置として構成すればよく、図1に示す実施形態では検知手段8に接続され、図示は省略しているが、駆動機構DMにも接続される。なお、制御手段Cは、駆動機構DMの作動を停止する制御以外に、車椅子Iが載置された床面の駆動の制御等、他の操作の制御が可能となるように構成してもよい。
図1に示す実施形態の車椅子固定装置1では、駆動機構DMは、前側牽引部材31、32の他端が連結され、前側牽引部材31、32を巻き取る前側リール41、42と、前側リール41、42と一体で回転する前側従動ギヤ51、52とを有している。また、駆動機構DMは、後側牽引部材33、34の他端が連結され、後側牽引部材33、34を巻き取る後側リール43、44と、後側リール43、44と一体で回転する後側従動ギヤ53、54とを有している。さらに、駆動機構DMは、前側従動ギヤ51、52と噛合する前側駆動歯列部61、62と、後側従動ギヤ53、54と噛合する後側駆動歯列部63、64とを有する駆動ラックギヤ6および駆動ラックギヤ6を駆動する駆動源7とを有する。
車椅子固定装置1は、図2に示すように、車椅子Iを載置して昇降する昇降台F内に収容され、車椅子固定装置1により車椅子Iが固定されると、車輌に搭載された昇降台Fを昇降させる昇降機構(図示せず)により、車椅子Iが載置された昇降台Fを昇降させ、車輌内部の後部に車椅子Iを収容する。昇降機構は車椅子Iを車輌内に収容できる機構であれば特に限定されず、詳細な説明は省略する。また、昇降機構ではなく、スロープを用いて車椅子Iを車両内部に収容し、車両内部に搭載された車椅子固定装置1で車椅子Iを固定するようにしてもよい。
図2に示すように、車椅子Iを固定するために、フック21、22、23、24がたとえば、車椅子Iの左右のフレームIa、Ibに引っ掛けられる。なお、フック21、22、23、24は、車椅子Iの任意の場所に接続することができる形状であれば、特に限定されず、車椅子Iにおける固定場所も特に限定されない。
図2に示すように、フック21、22を介して、ケーブル等の前側牽引部材31、32が車椅子Iの前側に接続され、前側牽引部材31、32は、昇降台Fに設けられた開口部H1、H2を通って昇降台F内部から昇降台Fの外側に延びている。同様に、ケーブル等の後側牽引部材33、34が車椅子Iの後側に接続され、後側牽引部材33、34は、昇降台Fに設けられた開口部H3、H4を通って昇降台F内部から昇降台Fの外側に延びている。昇降台F内部の前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34は、図1に示すように、それぞれプーリ等の方向転換部材Pにより、方向転換され、前側リール41、42および後側リール43、44に巻き付けられる。なお、開口部H1、H2、H3、H4は、車椅子Iが昇降台Fに載った状態で、車椅子Iの前側および後側に位置し、車椅子Iの前側用のフック21、22は、車椅子Iの前側に向かって引っ張って固定し、後側用のフック23、24は、車椅子Iの後側に向かって引っ張って固定するように構成されている。しかしながら、開口部H1、H2、H3、H4の位置は、特に図2に示す位置に限られず、車椅子Iが昇降台Fに載置された状態で、車椅子Iの中央部の下部近傍に設けてもよい。
図1の実施形態では、前側リール41、42は、前側従動ギヤ51、52と同軸上に固定して設けられ、前側従動ギヤ51、52が回転することにより、前側リール41、42が一体で回転するように構成されている。また、後側リール43、44は、後側従動ギヤ53、54と同軸上に固定して設けられ、後側従動ギヤ53、54が回転することにより、後側リール43、44が一体で回転するように構成されている。なお、前側リール41、42と前側従動ギヤ51、52、および後側リール43、44と後側従動ギヤ53、54とが一体で回転することができる構成であれば、前側リール41、42と前側従動ギヤ51、52との間、後側リール43、44と後側従動ギヤ53、54との間に他の部材を介在させてもよい。
また、図1および図2に示す実施形態においては、前側牽引部材31、32、前側リール41、42、前側従動ギヤ51、52は対を成すようにそれぞれ2つ設けられ、車椅子Iの前側に異なる方向から接続可能とされており、後側牽引部材33、34、後側リール43、44、後側従動ギヤ53、54は対を成すようにそれぞれ2つ設けられ、車椅子Iの後側に異なる方向から接続可能とされている。前側牽引部材31、32、前側リール41、42、前側従動ギヤ51、52を有する車椅子Iの前側を牽引する構造や、後側牽引部材33、34、後側リール43、44、後側従動ギヤ53、54を有する車椅子Iの後側を牽引する構造の数は、特に限定されないが、前後にそれぞれ2つ設けることにより、前後で4つの異なる方向から車椅子Iを牽引して固定することにより、安定して確実に車椅子を固定することができる。
また、図1に示す実施形態では、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54は、駆動ラックギヤ6の延びる方向と平行に直列に配置されている。前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54の配置は、車椅子Iを前後方向から牽引できるものであれば特に限定されず、たとえば、駆動ラックギヤ6の延びる方向に対して線対称となるように、駆動ラックギヤ6の両側に2つずつ前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54を設け、駆動ラックギヤ6の前側駆動歯列部61、62および後側駆動歯列部63、64を前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54に対向する位置にそれぞれ設けてもよいが、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54を、駆動ラックギヤ6の延びる方向と平行に直列に配置することにより、車椅子固定装置1全体の幅を小さくすることができ、車椅子固定装置1を構成する部材を簡素化することができる。
前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54の上部側(図1中、紙面手前方向)には、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54が時計回りに回転するように付勢する渦巻バネ等の付勢手段Sが設けられている。この付勢手段Sにより、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54と一体で回転する前側リール41、42および後側リール43、44が、それぞれのリールに巻き付けられた前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34を巻き取る方向に付勢される。したがって、車椅子Iにフック21、22、23、24が掛止されていないとき(たとえば、車椅子Iからフック21、22、23、24を外したとき)には、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34が、前側リール41、42および後側リール43、44に巻き取られ、フック21、22、23、24が、昇降台Fの開口部H1、H2、H3、H4内に収納される方向に移動する。一方、車椅子Iにフック21、22、23、24を掛止させるときは、付勢手段Sの付勢力以上の力を加えて、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34を引き出すことにより、フック21、22、23、24を車椅子Iに掛止させることができる。
図2に示すように、フック21、22、23、24が掛止された車椅子Iは、車椅子Iを昇降台F上で安定した状態で固定するために、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34を牽引する。牽引を開始するために、車輌には図示しない固定指示スイッチを設けて、その固定指示スイッチをオンにすることにより、牽引を開始することができる。固定指示スイッチがオンにされると、電動モータ等の駆動源7により駆動ラックギヤ6が駆動され、駆動ラックギヤ6の延びる方向にスライドして、駆動ラックギヤ6に形成された前側駆動歯列部61、62が前側従動ギヤ51、52と噛合し、後側駆動歯列部63、64が後側従動ギヤ53、54と噛合して、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54が回転する。このとき、前側リール41、42および後側リール43、44も同方向に回転して前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34を巻き取る。前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34が巻き取られることにより、車椅子Iは前側および後側の両方から引っ張られて固定され、昇降台F上で安定する。
図1に示す車椅子固定装置1は、車椅子Iを固定するために固定指示スイッチをオンにした後、車椅子Iが固定されると自動で駆動源7がオフになるように、2つの検知手段8が設けられている。図1および図3(a)〜(c)に示す実施形態では、2つの検知手段8は、固定状態検知用リミットスイッチ81と、固定解除状態検知用リミットスイッチ82により構成されている。固定状態検知用リミットスイッチ81と固定解除状態検知用リミットスイッチ82は、駆動ラックギヤ6の延びる方向に沿って離間して配置されている。
図3(a)は、駆動ラックギヤ6が駆動されていない初期状態、すなわち車椅子Iが固定されていない固定解除状態における、駆動ラックギヤ6と2つの検知手段8の位置関係を示している。図3(a)の固定解除状態では、固定状態検知用リミットスイッチ81が、駆動ラックギヤ6の側面に当接してオン状態となっており、固定解除状態検知用リミットスイッチ82も、駆動ラックギヤ6の側面に当接してオン状態となっている。この固定解除状態から、車輌に設けられた固定指示スイッチをオンにすると、駆動源7が駆動ラックギヤ6を駆動し、駆動ラックギヤ6が図3(a)中、右方向にスライドする(図3(b)参照)。図3(b)に示すように、駆動ラックギヤ6がスライドすると、固定状態検知用リミットスイッチ81はオン状態のままであるが、固定解除状態検知用リミットスイッチ82はオフ状態となる。図3(b)の状態からさらに駆動ラックギヤ6がスライドすると、固定状態検知用リミットスイッチ81のレバー部81aが駆動ラックギヤ6の側面に形成された凹部65に嵌まり込み、固定状態検知用リミットスイッチ81がオフ状態となる(図3(c)参照)。図3(c)の状態が、車椅子Iの固定状態であり、2つの検知手段8が両方ともオフ状態になると、2つの検知手段8が接続された制御手段C(図1参照)に、固定状態になったことが伝達され、制御手段Cにより電動モータ等の駆動源7がオフにされて固定が完了する。
同様に、車椅子Iが固定された状態から、車輌に設けられた固定解除指示スイッチ(図示せず)をオンにしたときは、駆動源7が固定時とは逆回転をして、駆動ラックギヤ6を図3(c)中、左側に駆動し、図3(c)の状態から図3(a)の状態まで移動したときに、制御手段Cにより駆動源7がオフにされ、車椅子Iの固定解除をすることができる。
図3(a)〜(c)に示した固定状態検知用リミットスイッチ81および固定解除状態検知用リミットスイッチ82はあくまで一例であり、駆動ラックギヤ6の移動量に伴って、駆動源7をオフにすることができる構成であれば、固定状態検知用リミットスイッチ81および固定解除状態検知用リミットスイッチ82の位置や向きは特に限定されるものではなく、たとえば、図4(a)〜(c)に示すように、駆動ラックギヤ6の側面に突部66を設け、駆動ラックギヤ6が図4(a)〜(c)中、左右に駆動されることにより、固定状態検知用リミットスイッチ81および固定解除状態検知用リミットスイッチ82が交互にオン状態、オフ状態となることにより、固定状態と固定解除状態において、駆動源7を自動的にオフにすることができる。
つぎに、本発明の車椅子固定装置1に用いられる駆動ラックギヤ6の構成について図1、図5および図6を用いて説明する。
図1および図5に示すように、駆動ラックギヤ6は、前側従動ギヤ51、52と噛合する前側駆動歯列部61、62と、後側従動ギヤ53、54と噛合する後側駆動歯列部63、64とを有している。フック21、22、23、24を車椅子Iに掛止するときに、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54が自由に回転できるように、前側駆動歯列部61、62、後側駆動歯列部63、64のそれぞれの間には、歯が形成されていない。また、駆動ラックギヤ6の延びる方向の端部近傍には、駆動源7の動力を伝達する駆動源7側の歯車(図示せず)と噛み合う駆動力伝達歯列部67(図5参照)が形成されている。駆動源7が駆動されると、駆動源7側の歯車が回転し、駆動ラックギヤ6の駆動力伝達歯列部67と噛み合い、駆動ラックギヤ6をスライドさせる。駆動ラックギヤ6には、図5に示すように、ガイド孔6Hが形成され、ガイド孔6Hに挿通されるガイド突起G(図1参照)により駆動ラックギヤ6のスライド動作が直線運動となるようにガイドされる。
図5に示すように、前側駆動歯列部61、62および後側駆動歯列部63、64はそれぞれ、一方の歯列端部E1と他方の歯列端部E2とを有している。ここで、車椅子Iの固定解除状態(図1に示す状態)から、最初に前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54が噛み合う歯列の端部が他方の歯列端部E2であり、その他方の歯列端部E2の逆側の端部が一方の歯列端部E1である。
前側駆動歯列部61、62および後側駆動歯列部63、64は、図5に示すように、一方の歯列端部E1から所定距離離れた固定位置FPにおいて、それぞれ前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54との噛合により車椅子Iが固定されるように構成されている。所定距離とは、固定位置FPでの前側駆動歯列部61、62および後側駆動歯列部63、64と、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54との噛合を保持できるような歯列の距離である。また、固定位置FPとは、車椅子Iが固定され、駆動ラックギヤ6が停止した状態において、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54と噛み合う前側駆動歯列部61、62および後側駆動歯列部63、64の位置のことをいうものである。この固定位置FPにおいて、前側駆動ギヤ51、52および後側駆動ギヤ53、54が噛み合った状態のときに、固定状態検知用リミットスイッチ81が、駆動ラックギヤ6の凹部65に嵌まり込み、制御手段Cによって駆動源7が停止するように構成されている。
図5および図6に示すように、固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さは、前側駆動歯列部61、62よりも後側駆動歯列部63、64のほうが短く、前側駆動歯列部61、62および後側駆動歯列部63、64は、他方の歯列端部E2側からそれぞれ前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54と噛合する。すなわち、図6に示すように(説明の便宜上、前側駆動歯列部61と後側駆動歯列部63とを上下に並べている)、後側駆動歯列部63における固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さD1は、前側駆動歯列部61における固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さD2よりも短い。したがって、図7(a)および(b)に示すように、前側駆動歯列部61、62は、後側駆動歯列部63、64よりも先に前側従動ギヤ51、52と噛み合い、前側駆動歯列部61、62における固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さD2と、後側駆動歯列部63、64における固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さD1との間の差D3(D2−D1。図6参照)の間(図7(a)の状態から図7(b)の状態までに駆動ラックギヤ6がスライドする間)は、前側牽引部材31、32のみが牽引され、後側牽引部材33、34は牽引されない。その後さらに駆動ラックギヤ6が図7(b)から図7(c)の状態までスライドすることにより、図7(b)の状態で、前側駆動歯列部61、62と後側駆動歯列部63、64の両方が駆動ラックギヤ6と噛み合い、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34の両方により車椅子Iが前後から牽引される。図7(c)の状態で車椅子Iが固定され、固定状態検知用リミットスイッチ81のレバー部81aが、駆動ラックギヤ6の凹部65に嵌まり込み、制御手段Cによって駆動源7が自動停止し、車椅子Iの固定が完了する。このように、駆動ラックギヤ6と前側駆動歯列部61、62が噛み合い、前側牽引部材31、32のみを所定量引っ張って、車椅子Iを前側に引っ張った後に、駆動ラックギヤ6と後側駆動歯列部63、64が噛み合うようにして、前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34の両方を引っ張ることで、駆動ラックギヤ6の移動量は維持しながら、モータ等の駆動源7が拘束する前に検知手段8を作動させることができることによって、撓みの発生しない車椅子Iでも確実に固定でき、モータの耐久性を確保することができる。
以下、この点について詳述する。図7(a)の状態から図7(b)の状態までの間は、車椅子Iの前側牽引部材31、32および後側牽引部材33、34の前後両側から車椅子Iが引っ張られることがなく、前側牽引部材31、32により、車椅子Iの前側のみが引っ張られることになる。従来のような、固定位置と噛み合いが開始される他方の歯列端部との間の距離が前後の歯列で同じ長さの場合は、前後の従動ギヤが同時に噛み合うため、牽引の開始時から車椅子Iが前後から同時に引っ張られ、車椅子Iのフレームが高い剛性を有する車椅子Iや、タイヤがパンクしている車椅子Iなど、車椅子Iに撓みが発生しない場合は、計算上のラックギヤの移動量(所定量)が得られない。
すなわち、従来の車椅子固定装置は、フックが掛止されて前後から引っ張られたときに生じる車椅子Iのフレームの撓みや、昇降台F側に引っ張られたときに生じる車椅子Iのタイヤの撓み(潰れ)を計算に入れて、車椅子Iが確実に昇降台Fへ固定されるようなラックギヤの移動する所定量を決め、その所定量に達したときに電動モータを自動で停止させるように、初期状態からリミットスイッチがオンまたはオフになる状態までの距離を設定している。また、電動モータは牽引部材をリールで巻き取りながらラックギヤが所定量まで移動できる程度の駆動力を有するものが使用される。したがって、車椅子Iに撓みが発生しないような高い剛性の車椅子Iや、タイヤがパンクしていたり、乗員の重量によってタイヤが潰れている車椅子Iの場合は、ラックギヤの移動する所定量の計算時に入れていた車椅子Iのフレームの撓みや、タイヤの撓みの分のラックギヤの移動が無くなるため、予め設定していたリミットスイッチがオンまたはオフになる状態までの距離に達する前にケーブルを巻き取るための力のほうが電動モータの駆動力よりも大きくなって電動モータが拘束してしまい、ラックギヤが移動できなくなる。すると、リミットスイッチがオンまたはオフの状態にならないため、電動モータが通電された状態のままとなり、モータの耐久性が低くなってしまう。
一方、図6および図7(a)〜(c)に示すように、後側駆動歯列部63における固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さD1が、前側駆動歯列部61における固定位置FPから他方の歯列端部E2までの歯列の長さD2よりも短い場合は、まず前側駆動歯列部61、62が前側従動ギヤ51、52と噛み合い、後側駆動歯列部63、64は後側従動ギヤ53、54と噛み合っていない(図7(a)参照)。前側駆動歯列部61、62と前側従動ギヤ51、52だけが噛み合うことにより、後側牽引部材33、34には車椅子Iを牽引する力が加わらず、図7(a)の状態から図7(b)の状態までは、車椅子Iは、前側牽引部材31、32による牽引により前方に移動する。このときに、駆動ラックギヤ6もスライド動作を行ない、その後、後側駆動歯列部63、64と後側従動ギヤ53、54とが噛み合い、前後両方から車椅子Iを引っ張って車椅子Iを固定する。したがって、高い剛性を有する車椅子Iやパンクした車椅子Iであっても、車椅子Iが撓まない分だけ車椅子Iが前側に移動することにより、固定状態検知用リミットスイッチ81のアーム部81aが初期状態から、凹部65に嵌まり込むための駆動ラックギヤ6の移動量を確保することができる。したがって、撓みの発生しない車椅子Iでも確実に固定することができ、モータ等の駆動源7の耐久性を確保することができる。
なお、上記実施形態において、駆動機構DMとして、前側従動ギヤ51、52と噛合する前側駆動歯列部61、62と、後側従動ギヤ53、54と噛合する後側駆動歯列部63、64とを有する駆動ラックギヤ6を用いたが、駆動ラックギヤ6の代わりに、駆動源7により駆動され、前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54と噛み合って回転する駆動ギヤを用いてもよい。たとえば、駆動ギヤの全周に歯を形成せずに、一部歯欠き部(前側従動ギヤ51、52および後側従動ギヤ53、54と噛み合わない部分が所定の長さだけ形成された部分)を設け、前側牽引部材31、32を牽引するための前側用の駆動ギヤと、後側牽引部材33、34を牽引するための後側用の駆動ギヤとで、歯欠き部の長さを変えて、前側牽引部材のみを所定量引っ張った後に前側および後側牽引部材の両方を引っ張るようにすることもできる。この場合、当該駆動ギヤと同軸に設けた円盤状の部材の外周に、リミットスイッチのレバー部の先端が嵌まり込む凹部を形成することによって、所定位置まで駆動ギヤが回転すると、駆動ギヤの作動を停止させることができる。
また、上記実施形態においては、検知手段8として、リミットスイッチを用いたが、検知手段8は、光学的、磁気的に駆動機構の移動を検知するものであってもよい。
1 車椅子固定装置
21、22、23、24 フック
31、32 前側牽引部材
33、34 後側牽引部材
41、42 前側リール
43、44 後側リール
51、52 前側従動ギヤ
53、54 後側従動ギヤ
6 駆動ラックギヤ
61、62 前側駆動歯列部
63、64 後側駆動歯列部
65 凹部
66 突部
6H ガイド孔
7 駆動源
8 検知手段
81 固定状態検知用リミットスイッチ
81a レバー部
82 固定解除状態検知用リミットスイッチ
C 制御手段
DM 駆動機構
E1 一方の歯列端部
E2 他方の歯列端部
F 昇降台
FP 固定位置
G ガイド突起
H1、H2、H3、H4 開口部
I 車椅子
Ia、Ib フレーム
P 方向転換部材
S 付勢手段

Claims (4)

  1. 一端に設けられたフックを介して車椅子の前側に接続される前側牽引部材と、
    一端に設けられたフックを介して車椅子の後側に接続される後側牽引部材と、
    前記前側および後側牽引部材を床面に向って引っ張る駆動機構と、
    前記駆動機構の一部が所定位置まで移動したことを検知する検知手段と、
    前記検知手段の検知より前記駆動機構の作動を停止する制御手段とを備え、
    前記駆動機構が、前記前側牽引部材のみを所定量引っ張った後に前記前側および後側牽引部材の両方を引っ張ることを特徴とする車椅子固定装置。
  2. 前記駆動機構は、
    前記前側牽引部材の他端が連結され、前記前側牽引部材を巻き取る前側リールと、
    前記前側リールと一体で回転する前側従動ギヤと、
    前記後側牽引部材の他端が連結され、前記後側牽引部材を巻き取る後側リールと、
    前記後側リールと一体で回転する後側従動ギヤと、
    前記前側従動ギヤと噛合する前側駆動歯列部と、前記後側従動ギヤと噛合する後側駆動歯列部とを有する駆動ラックギヤと、
    前記駆動ラックギヤを駆動する駆動源とを有し、
    前記前側駆動歯列部および前記後側駆動歯列部は、一方の歯列端部から所定距離離れた固定位置において、それぞれ前記前側従動ギヤおよび前記後側従動ギヤとの噛合により前記車椅子が固定されるように構成され、
    当該固定位置から他方の歯列端部までの歯列の長さが、前記前側駆動歯列部よりも前記後側駆動歯列部のほうが短く、
    前記前側駆動歯列部および前記後側駆動歯列部は、前記他方の歯列端部側からそれぞれ前記前側従動ギヤおよび前記後側従動ギヤと噛合することを特徴とする請求項1記載の車椅子固定装置。
  3. 前記前側牽引部材、前記前側リール、前記前側従動ギヤは対を成すようにそれぞれ2つ設けられ、前記車椅子の前側に異なる方向から接続可能とされており、
    前記後側牽引部材、前記後側リール、前記後側従動ギヤは対を成すようにそれぞれ2つ設けられ、前記車椅子の後側に異なる方向から接続可能とされていることを特徴とする請求項2記載の車椅子固定装置。
  4. 前記前側従動ギヤおよび前記後側従動ギヤは、前記駆動ラックギヤの延びる方向と平行に直列に配置されていることを特徴とする請求項2または3記載の車椅子固定装置。
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