JP2013100578A - 連続焼鈍ラインの制御方法および制御装置 - Google Patents

連続焼鈍ラインの制御方法および制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の被焼鈍材の諸元が異なる場合でも、炉温の設定を考慮しつつ炉速を設定して、最適炉速と最適炉温とを関連調和させて設定可能な連続焼鈍ラインの制御方法および制御装置を提供すること。
【解決手段】連続する複数の被焼鈍材のそれぞれに所定間隔ごとに設定変更点を設定する。設定変更点ごとに被焼鈍材の入側制約炉速、中央制約炉速、出側制約炉速を比較し、最も低い炉速を初期最適炉速とする。初期最適炉速と被焼鈍材の諸元からの板温の上下限値から、伝熱モデルにより炉温の設定上下限値を算出し、設定上下限値間の炉温を炉温目標値とする。接合部前後の炉温目標値に基づき初期最適炉速を修正して炉速目標値を導出する。炉速目標値と炉温目標値とから伝熱モデルにより板温値を算出し、板温値が板温上限値と板温下限値との間から外れなくなるまで、炉速目標値および炉温目標値の設定を繰り返し行う。
【選択図】図4

Description

本発明は、連続焼鈍ラインにおける被焼鈍材のライン搬送速度および焼鈍炉の炉温の設定を行う連続焼鈍ラインの制御方法および制御装置に関する。
連続焼鈍ラインは、入側で先行する前コイルの後端と次に続く次コイルの先端とを溶接により接合し、このコイルを2000m以上の焼鈍炉の中に通過させることによって焼鈍する装置である。この焼鈍において、コイルを焼鈍炉内で停止させたり大きく減速させたりすると、コイルの焼鈍炉内を通過する時間が変化してしまい、製品となる鋼板の品質を一定にすることができなくなる。
そこで、設備条件として、連続焼鈍ラインの入側と出側とにルーパを設けることにより、入側の溶接時における減速や停止、または出側のコイルカットによる減速や停止によっても、焼鈍炉の内部を通過するコイルの搬送速度があまり変更しないように制御している。
また、コイルの焼鈍条件は、コイルの冶金特性および機械的性質から、1コイル単位で決められている。そして、連続焼鈍ラインの焼鈍炉の操業においては、主に、加熱炉の出側の板温目標値と均熱炉の出側の板温目標値とから与えられる焼鈍条件を満たすように、加熱炉や均熱炉の炉温目標値および炉速目標値が設定され、操業条件が決定される。
この操業条件を決定する方法としては、特許文献1に記載された技術が提案されている。特許文献1には、鋼板(コイル)の諸元が変化する過程において、炉から鋼板への入熱モデルおよび炉の熱応答などから、最適な炉温および炉速遷移経路を求める技術が開示されている。
また、特許文献2には、まず入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速をコイル単位で算出した後、コイルの搬送に伴って制約条件が発生するタイミングに応じて炉速を変化させる方法が開示されている。このような方法によれば、コイルの炉速を設備能力における最大の炉速とすることが可能になる。
しかしながら、炉速は通常、上述した入側のルーパおよび出側のルーパの使用量、すなわち、入側コイルや出側コイルの切替時間とルーパの設備容量との関係に基づいて変更する必要がある。
具体的には、入側のルーパにおいては、入側でのコイルの切り替えおよび溶接が行われてから、コイルが再度加速されてルーパの板速度が焼鈍炉の炉速と等しくなるまでの間において、蓄積したコイルが払い出される。また、この入側のルーパにおいては、蓄積したコイルが払い出されてから、次のコイルの切り替えが生じるまでの間において、焼鈍炉の炉速よりも速い速度でコイルの再蓄積が行われる。
このような入側のルーパの動作に起因して、焼鈍炉におけるコイルの炉速と入側での板速度との差が大きくなるほど、入側のルーパにおける必要な蓄積量が増加する。具体的には、入側でのコイルの切り替えに伴う溶接などのコイル切替シーケンスやコイルの長さに応じて、1本のコイルごとに必要なルーパ量が異なる。すなわち、ルーパ量がコイルに依存するので、設備定数として与えられたルーパの使用可能な蓄積量に対して、実現可能な炉速の上限がコイルごとに異なる。なお、このような制約は、出側でのコイルの切り替えにおいても同様に存在する。
特公昭63−034210号公報 特許第2910506号公報
ところが、特許文献1に記載された技術においては、このような入側のコイルや出側のコイルの切替時間の影響が考慮されていない。そのため、特許文献1に記載された技術は、コイルの切替時間を無視できる余裕のある条件、具体的には、焼鈍炉の炉速が入側のルーパおよび出側のルーパの容量に基づく炉速の許容値に比して十分に小さいという、限定された条件下でしか適用できない。
また、特許文献2に記載された技術においては、入側の制約や出側の制約を考慮して炉速を決定しているが、決定した炉速に対する炉温の設定をどのように決定するかについては開示されていない。
一般に、炉温は、その時定数が10〜15分程度と長時間であることから、緩やかに変化する一方、炉速は、その加速度が数10mpm/s程度であることから、比較的大きく変化させることが可能である。ただし、炉温設定を考慮することなく炉速を変化させると、鋼板の板温が炉速に従属してしまうので、コイルである被焼鈍材の諸元で与えられる焼鈍炉の出側における板温が所望の板温にならないという問題が生じる。
すなわち、特許文献2に記載された技術は、連続して焼鈍される複数の被焼鈍材における諸元が相互に類似し、これらの被焼鈍材が長時間通板される際の炉温設定や制約条件があまり変化しない場合にしか適用することができない。換言すると、特許文献2に記載された技術は、連続して焼鈍される複数の被焼鈍材においてその諸元が相互に大きく異なり、必要な炉温や炉速が被焼鈍材ごとに大きく変更される場合には、適用することができない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続して焼鈍される複数の被焼鈍材において諸元が相互に大きく異なる場合でも、炉温の設定を考慮しつつ炉速の設定を行うことができ、被焼鈍材の焼鈍における最適な炉温と最適な炉速とを関連調和させて設定することができる連続焼鈍ラインの制御方法および制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法は、連続する複数の被焼鈍材のそれぞれに、所定間隔ごとに設定変更点を設定する設定変更点設定ステップと、設定変更点ごとに、被焼鈍材における入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速を比較して、最も低い炉速を初期最適炉速として設定する初期炉速設定ステップと、設定変更点ごとの初期最適炉速、および被焼鈍材ごとの諸元に基づく板温上限値から、伝熱モデルによって炉温設定上限値を算出する炉温上限算出ステップと、設定変更点ごとの初期最適炉速、および被焼鈍材の諸元に基づく板温下限値から、伝熱モデルによって炉温設定下限値を算出する炉温下限算出ステップと、設定変更点ごとに、炉温設定上限値と炉温設定下限値との間の炉温を、炉温目標値として設定する炉温設定ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法は、上記の発明において、連続する複数の被焼鈍材のうちの、先行する第1の被焼鈍材と、第1の被焼鈍材の後端に接合される第2の被焼鈍材との接合部の前後において、第1の被焼鈍材における炉温設定下限値以上炉温設定上限値以下の範囲と、第2の被焼鈍材における炉温設定下限値以上炉温設定上限値以下の範囲との重なりの温度範囲が所定値以下であるか否かを検出する重複範囲検出ステップと、重複範囲検出ステップにおいて検出された重なりの温度範囲が所定値以下である場合に、第1の被焼鈍材における炉温設定下限値と第2の被焼鈍材における炉温設定下限値との低い方を判別する炉温下限判別ステップと、炉温下限判別ステップにおいて判別された炉温設定下限値の低い側の被焼鈍材における初期最適炉速を低下させた炉速目標値を設定する炉速設定低下ステップとを、重複範囲検出ステップにおいて重なりの温度範囲が所定値より大きくなるまで繰り返し行う炉速炉温設定変更ステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法は、上記の発明において、設定変更点ごとに炉温目標値が変化する際の変化速さを、焼鈍炉における炉温の変化速さについて決められた限度以下になるように設定する炉温変更平滑化ステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法は、上記の発明において、設定変更点ごとに炉速目標値が変化する際の加速度を、焼鈍炉における加速度の下限値以上上限値以下になるように設定する炉速変更平滑化ステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法は、上記の発明において、設定変更点ごとに、炉速目標値および炉温目標値から、伝熱モデルによって被焼鈍材の板温値を算出する板温算出ステップと、板温算出ステップにおいて算出された設定変更点ごとの板温値が、板温設定上限値と板温設定下限値との間であるか否かを判定する板温値判定ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法は、上記の発明において、被焼鈍材の送り量または時刻に沿って、炉速目標値、炉温目標値、板温上限値、板温下限値、および板温値を、連続焼鈍ラインにおける表示手段に同時に表示するガイダンス表示ステップを含むことを特徴とする。また、好適には、連続焼鈍ラインにおける被焼鈍材の送り量または時刻に従って、焼鈍されている時点の被焼鈍材の現在位置を示す基準と、基準から過去の領域における、被焼鈍材の炉速の実績値、焼鈍炉の炉温の実績値、および焼鈍材の板温の実績値と、基準から未来の領域における、炉速目標値のスケジュール、炉温目標値のスケジュール、および板温値のスケジュールとを同時に表示することを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御装置は、連続する複数の被焼鈍材のそれぞれに、所定間隔ごとに設定変更点を設定する設定変更点設定手段と、設定変更点ごとに、被焼鈍材における入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速を比較して、最も低い炉速を初期最適炉速として設定する初期炉速設定手段と、設定変更点ごとの初期最適炉速、および被焼鈍材ごとの諸元に基づく板温上限値から、伝熱モデルによって炉温設定上限値を算出する炉温上限算出手段と、設定変更点ごとの初期最適炉速、および被焼鈍材の諸元に基づく板温下限値から、伝熱モデルによって炉温設定下限値を算出する炉温下限算出手段と、設定変更点ごとに、炉温設定上限値と炉温設定下限値との間の炉温を、炉温目標値として設定する炉温設定手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る連続焼鈍ラインの制御方法および制御装置によれば、連続して焼鈍される複数の被焼鈍材において諸元が相互に大きく異なる場合でも、炉温の設定を考慮しつつ炉速の設定も行って、被焼鈍材において所定の間隔ごとに最適な炉温と最適な炉速とを併せて設定することができる。
図1は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインの構成を示す図である。 図2は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインで焼鈍される被焼鈍材ごとの板温の制約と、炉速および炉温の制約とを説明するための略線図である。 図3は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインにおける入側制約炉速について説明するためのタイミングチャートである。 図4は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインにおける炉速スケジュールおよび炉温スケジュールの設定方法を示すフローチャートである。 図5は、本発明の一実施形態による、出側制約、中央制約、および入側制約の制約発生タイミングおよび制約終了タイミングと、被焼鈍材における設定変更点について説明するための模式図である。 図6は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインにおける炉速および炉温の設定方法を示すタイミングチャートである。 図7は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインにおける焼鈍の状態を表示するガイダンス画面の一部を示す略線図である。 図8は、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインにおける焼鈍の状態を表示するガイダンス画面の全体を示す略線図である。
以下に、本発明の一実施形態による連続焼鈍ラインについて説明する。なお、本発明は、この一実施形態に限定されるものではない。
(連続焼鈍ライン)
図1は、本発明の実施形態に係る連続焼鈍ラインの構成を示す概略図である。図1に示される連続焼鈍ライン1は、ペイオフリール2a,2b、溶接機3、クリーニングセクション4、入側ルーパ5、焼鈍炉6、ウォータークエンチ設備7、出側ルーパ8、スキンパスミル9、後処理部10、およびテンションリール11a,11bを備える。さらに、連続焼鈍ライン1は、テンションレベラ12a,12b,12c,12dおよびテンションコントロールユニット13a,13bなどの多数の駆動ロールを備える。
ペイオフリール2a,2bは、連続焼鈍ライン1に通板する被焼鈍材をコイル状に巻いたものである。このペイオフリール2a,2bを巻き戻すことにより、連続焼鈍ライン1に通板する被焼鈍材が連続焼鈍ライン1に順次送出される。また、連続焼鈍ライン1に通板される被焼鈍材は、先行の被焼鈍材の後端と後行の被焼鈍材の先端とが後段の溶接機3によって溶接され接合された後に、連続焼鈍ライン1に通板される。
クリーニングセクション4においては、被焼鈍材が液剤中などを高速通板することによって、被焼鈍材に付着した油脂などが取り除かれる。その後、被焼鈍材は、テンションレベラ12a,12bにより歪みが矯正され、入側ルーパ5に搬入される。
入側ルーパ5は、後段の焼鈍処理のために、被焼鈍材の張力を保ちながら被焼鈍材を一時待機させるためのものである。入側ルーパ5によってタイミング調整された被焼鈍材は、テンションコントロールユニット13aを経由されて、焼鈍炉6に搬入される。
焼鈍炉6は、加熱炉6a、均熱炉6b、および冷却炉6cを備える。被焼鈍材を、これらの加熱炉6a、均熱炉6b、および冷却炉6cに順次通板することによって、被焼鈍材を適切に焼鈍処理することができる。焼鈍後の被焼鈍材は、ウォータークエンチ設備7およびテンションコントロールユニット13bを経由して、出側ルーパ8に搬入される。出側ルーパ8は、後段の後処理のために、被焼鈍材の張力を保ちながら被焼鈍材を一時待機させるためのものである。
スキンパスミル9は、テンションレベラ12c,12dと協働して、出側ルーパ8から送出された被焼鈍材を調質圧延するための設備である。調質圧延された被焼鈍材は、後処理部10を経由して、テンションリール11a,11bに巻き取られる。後処理部10は、被焼鈍材から不要部分を切断するトリマ、被焼鈍材にオイルを塗るオイラー、検査プロセスで検出された不良部を切断するシャーなどを含むセクションである。
また、プロセスコンピュータ(プロコン)20は、後述する方法に従って、炉速設定値、炉温設定値、および板温値を算出して、これらの炉速設定値および炉温設定値のスケジュールを導出し、そのデータを出力しつつ連続焼鈍ライン1を制御する制御装置である。炉速設定部21は、炉速設定手段として機能するプロセスコンピュータ20から供給される炉速目標設定値に基づいて、被焼鈍材の搬送速度を制御するための搬送速度制御手段である。炉温設定部22は、炉温設定手段として機能するプロセスコンピュータ20から供給される炉温設定値に基づいて、特に加熱炉6aおよび均熱炉6bの炉温を制御するための炉温制御手段である。また、プロセスコンピュータ20には、表示手段としての表示部20aが設けられており、被焼鈍材に関する、後述する炉速スケジュールや炉温スケジュールが表示される。
次に、上述のように構成された連続焼鈍ライン1における、被焼鈍材の炉速設定値および焼鈍炉6の炉温設定値の設定方法について説明する。
まず、この炉速設定値および炉温設定値の設定の前提となる制限について説明する。すなわち、図1に示す連続焼鈍ラインにおいては、種々の鋼板などの被焼鈍材が連続して焼鈍される。これらの種々の被焼鈍材の接合は、先行の被焼鈍材の後端と後行の被焼鈍材の先端とが溶接機3によって溶接されることにより行われる。一方、それぞれの被焼鈍材においては、要求される品質を確保するために、被焼鈍材ごとの諸元に基づいて、焼鈍炉6の均熱炉6b内での板温を所定の温度範囲内にする必要がある。
図2は、焼鈍炉において焼鈍される先行被焼鈍材31と後行被焼鈍材32とが接合部33において接合された状態と、この接合されたそれぞれの被焼鈍材31,32における諸元に基づく板温の許容温度範囲と、その際の炉速の速度範囲および炉温の温度範囲との一例を示す。
図2の例に示すように、先行被焼鈍材31が均熱炉6b(図1参照)を通過する際には、先行被焼鈍材31の諸元によって被焼鈍材31の板温を、θ31(℃)以上θ31'(℃)以下の範囲内にする必要がある。ところが、先行被焼鈍材31の板温は直接制御することができない。そこで、先行被焼鈍材31の板温をθ31(℃)以上θ31'(℃)以下にするために、熱伝導モデルに基づいて、焼鈍炉6の全般における炉速の範囲をV31(mpm)以上V31'(mpm)以下にするとともに、均熱炉6bの炉温の範囲をT31(℃)以上T31'(℃)以下にする必要がある。
同様に、後行被焼鈍材32の板温をその諸元に基づいてθ32(℃)以上θ32'(℃)以下にするためには、焼鈍炉6の炉速の範囲をV32(mpm)以上V32'(mpm)以下にするとともに、均熱炉6bの炉温の範囲をT32(℃)以上T32'(℃)以下にする必要がある。
それぞれの先行被焼鈍材31および後行被焼鈍材32は、その接合部33の前後においてもそれぞれ、上述した板温の許容温度範囲を満たす必要がある。この板温の許容温度範囲を満たす最も簡単な制御は、接合部33の前後において板温をθ32(℃)以上θ31'(℃)以下の温度θ(℃)とする制御である。そして、図2において一点鎖線で示すように、板温をθ(℃)にするためには、例えば、それぞれの先行被焼鈍材31および後行被焼鈍材32の炉速VをV31(mpm)以上V32'(mpm)以下に制御するとともに、均熱炉6bの炉温TをT32(mpm)以上T31'(mpm)以下に制御する必要がある。
これによって、先行被焼鈍材31および後行被焼鈍材32は、その板温が間接的に制御され、接合部33の前後において焼鈍炉6での炉速や炉温を大きく変化させることなく、それぞれの諸元による板温で焼鈍することができる。
上述の例においては、2つの被焼鈍材31,32の接合部33の前後における、炉速および焼鈍炉6の炉温の制御について説明したが、実際には、被焼鈍材31,32の後続に、これらの被焼鈍材と諸元が異なる種々の被焼鈍材が順次接合されている。そのため、さらに後続に接合される種々の被焼鈍材の諸元に基づく板温の許容温度範囲の制約も考慮する必要がある。これにより、実際には、焼鈍炉6内における被焼鈍材31,32の炉速や炉温は、被焼鈍材ごとに逐次変更される。
また、上述のように被焼鈍材における板温の許容温度範囲の制約によって、炉速および炉温がそれぞれ制約されるが、同時に、焼鈍される被焼鈍材の処理時間を短縮することによる生産性の向上も要求されている。この要求を実現するには、焼鈍炉6内で被焼鈍材31,32を搬送する際の炉速を、上述した板温の許容温度範囲の制約に基づいた炉温の範囲を満たしつつ、最大にすることが望ましい。
さらに、焼鈍炉6の炉温は、その応答が遅いことから急激に変更させることができず、炉温の上昇速度および下降速度に制約がある。これにより、例えば後行被焼鈍材32の焼鈍を行う際に、後行被焼鈍材32の先端が均熱炉6bに到達する時に適切な炉温にしておくためには、先行被焼鈍材31の後端が均熱炉6bに到達する前に、均熱炉6bの炉温の変更を開始する必要がある。
これらのことから、図2に示す例においては、炉速のグラフおよび炉温のグラフにおいて、被焼鈍材31,32の焼鈍炉6内における炉速および炉温を太実線で示すように制御する。これにより、被焼鈍材31,32の板温も、板温のグラフにおいて太実線で示すように変化される。
以上のように、被焼鈍材ごとに、その諸元に基づく板温の許容温度範囲が決定されているため、伝熱モデルによって、被焼鈍材ごとに焼鈍炉6における炉速や炉温も制約される。
図1に示す連続焼鈍ライン1の入側においては、先行の被焼鈍材のコイルが終了してから後行の被焼鈍材のコイルが設置される間や、先行の被焼鈍材の後端と後行の被焼鈍材の先端との接合時間などによって、入側ルーパ5での被焼鈍材の速度が変更される。この入側ルーパ5における被焼鈍材の速度の変更によって、その時点で焼鈍炉6に通板されている被焼鈍材の炉速が制約を受ける。このような入側での被焼鈍材への処理に基づいて制約される炉速の最大値を、入側制約炉速という。この入側制約炉速について、図3を参照しつつ説明する。
図3は、連続焼鈍ラインの入側の入側ルーパ5における被焼鈍材の搬送速度と、その時点での焼鈍炉6における被焼鈍材の炉速との時間経過を示すタイミングチャートである。図3に示すように、通常の焼鈍が行われている間は、入側ルーパ5および焼鈍炉6における被焼鈍材は、ともに焼鈍炉6において設定された炉速V0で搬送されている。その後、先行する被焼鈍材が終了する前の所定位置において、入側ルーパ5の減速が開始される。この開始時点が制約開始タイミングとなる。この制約開始タイミングは、この時点で先行する被焼鈍材の均熱炉6bに位置する部分の、長手方向に沿った位置情報とされる。
その後、先行する被焼鈍材が終了すると、入側ルーパ5における被焼鈍材の搬送が停止されて搬送速度が0となり、この間に先行する被焼鈍材の後端と後行する被焼鈍材の先端とが溶接機3により接合される。被焼鈍材の接合が終了すると、入側ルーパ5は被焼鈍材の搬送速度を増加させて被焼鈍材の蓄積を開始する。入側ルーパ5による被焼鈍材の搬送速度が焼鈍炉6において設定された被焼鈍材の炉速V0まで到達した時点で、制約が終了する。この終了時点が制約終了タイミングとなる。この制約終了タイミングは、この時点で先行する被焼鈍材の均熱炉6bに位置する部分の、長手方向に沿った位置情報とされる。
なお、制約終了タイミング後、入側ルーパ5は、被焼鈍材を焼鈍炉6の炉速V0より大きい所定速度まで加速して、この所定速度で一定時間経過させて焼鈍材を所定量蓄積した後、焼鈍炉6の炉速V0まで減速させる。
一方、上述した制約開始タイミングと制約終了タイミングとの間において、焼鈍炉6における被焼鈍材の炉速は、入側ルーパ5からすべての被焼鈍材が送出されないように、被焼鈍材の蓄積量(使用量)が考慮されて、所定の炉速まで減速される。この炉速が入側制約炉速となる。なお、入側制約炉速を決定する制約としては、入側ダウンタイムおよび入側ルーパ長による制約などがあり、具体的には、上述した入側ルーパ5による制約(入側ルーパ長制約)以外にも、装入コイル長制約や入側準備時間制約などがある。
このような制約は、出側ルーパ8による被焼鈍材の払い出しや後処理部10における被焼鈍材の切断分割(コイルカット)などにおいても、被焼鈍材の搬送を停止させる必要があるため、同様に発生する。これらの出側ルーパ8や後処理部10の処理によって焼鈍炉6において制約される炉速は、出側制約炉速となる。なお、出側制約炉速を決定する制約としては、出側ダウンタイムおよび出側ルーパ長による制約などがあり、具体的には、上述した出側ルーパ8や後処理部10による制約(出側ルーパ長制約)以外にも、分割長制約や出側準備時間制約などがある。また、出側制約炉速の制約開始タイミングや制約終了タイミングについても、入側制約炉速と同様に決定され、被焼鈍材の長手方向に沿った位置情報とされる。
また、上述した焼鈍炉6において制約される炉速は、中央制約炉速(炉制約炉速)となる。中央制約炉速を決定する制約としては、炉負荷燃焼および熱処理方法による制約などであり、具体的には、炉燃焼負荷制約、均熱時間制約、過時効時間制約、および設備制約などがある。また、中央制約炉速の制約開始タイミングや制約終了タイミングについても、入側制約炉速や出側制約炉速と同様に決定され、被焼鈍材の長手方向に沿った位置情報とされる。
次に、上述した入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速に基づいて、炉速スケジュールおよび炉温スケジュールを設定する方法について説明する。図4は、この一実施形態による連続焼鈍ラインの制御に用いられる炉速スケジュールおよび炉温スケジュールの設定方法を示すフローチャートである。なお、この炉速スケジュールおよび炉温スケジュールの設定は、オペレータが図1に示すプロセスコンピュータ20に入力する情報データに基づいて、プロセスコンピュータ20内部の情報処理部(図示せず)が所定のプログラムを実行することにより行われる。
図4に示すように、まず、ステップST1においては、プロセスコンピュータ20(図1参照)に被焼鈍材ごとのコイル諸元の情報データを入力すると、これらのコイル諸元のデータに基づいて、入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速が求められる。これらの制約炉速の算出に伴って、被焼鈍材の搬送に従ったそれぞれの制約炉速の制約発生タイミングと制約終了タイミングとが、被焼鈍材の長手方向に沿った位置情報として設定される。
次に、ステップST2に移行して、プロセスコンピュータ20により、複数の被焼鈍材におけるそれぞれのコイル諸元に基づいて、それぞれの被焼鈍材の先端から長手方向に沿って所定間隔L(m)ごと、具体的には例えば100mごとに設定変更点が設定される。このとき、プロセスコンピュータ20は設定変更点設定手段として機能する。
図5は、上述のステップST1およびST2を経た後の被焼鈍材に対する設定状態を示す模式図である。すなわち、図5は、この一実施形態による被焼鈍材に設定された設定変更点と、それぞれの制約炉速の制約発生タイミングと制約終了タイミングとの一例を示す図である。
図5に示すように、先行する第1の被焼鈍材41と、後行する第2の被焼鈍材42と、さらに後行する第3の被焼鈍材43とにおいて、上述のステップST1における制約炉速の制約発生タイミングと制約終了タイミングとが被焼鈍材の長手方向に沿った位置情報として設定されている。なお、図5中、出側制約、中央制約、および入側制約において、制約発生タイミングを「発生」、制約終了タイミングを「終了」と表記する。また、上述のステップST2における設定変更点が、第1の被焼鈍材41、第2の被焼鈍材42、および第3の被焼鈍材43において、それぞれの先端から例えば100mごとにそれぞれ、設定変更点a1〜a12、設定変更点b1〜b10、および設定変更点c1〜c11として設定されている。これらの各種設定は、外部から入力された情報データとしてプロセスコンピュータ20に記憶されている。
次に、図4に示すステップST3に移行して、プロセスコンピュータ20は、設定された設定変更点a1〜c11ごとに、入側制約炉速と中央制約炉速と出側制約炉速とから生じる制約炉速を相互に比較し、最も速度が小さい制約炉速を求めて、初期最適炉速とする。このとき、プロセスコンピュータ20は初期炉速設定手段として機能する。
すなわち、図5に示すように、第1の被焼鈍材41の設定変更点a1,a2においては、出側制約および入側制約が生じておらず、中央制約が生じているので、このときの中央制約炉速を設定変更点a1,a2における初期最適炉速とする。設定変更点a3においては、出側制約および中央制約が生じ、入側制約が生じていないため、このときの出側制約炉速と中央制約炉速との小さい方の炉速を設定変更点a3の初期最適炉速とする。設定変更点a4においては、入側制約および出側制約、および中央制約が生じているので、このときの入側制約炉速、出側制約炉速、および中央制約炉速の中の最も小さい炉速を、設定変更点a4の初期最適炉速とする。設定変更点a5においては、入側制約が生じ、出側制約および中央制約が生じていないため、このときの入側制約炉速を設定変更点a5の初期最適炉速とする。設定変更点a6においては、出側制約が発生しておらず、入側制約および中央制約が生じているので、このときの入側制約炉速と中央制約炉速との小さい方の炉速を設定変更点a6の初期最適炉速とする。また、設定変更点a7〜a12は、設定変更点a1,a2におけると同様にして初期最適炉速が決定される。
以上のような初期最適炉速の算出は、第2の被焼鈍材42や第3の被焼鈍材43においても同様にして行われる。すなわち、それぞれの設定変更点b1〜b10,c1〜c11において、入側制約炉速、出側制約炉速、および中央制約炉速のうちの発生している制約の中で比較が行われ、最も小さい制約炉速が初期最適炉速として求められる。なお、入側制約、出側制約、および中央制約のいずれも発生していない場合には、初期最適炉速は、設備上の制約炉速である設備による最高速度により制約されて決定される。
そして、設定変更点a1〜a12,b1〜b10,c1〜c11におけるそれぞれの初期最適炉速を用いて、炉速スケジュール初期計算が行われ、仮の炉速スケジュールが導出される。図6は、この仮の炉速スケジュールの導出以後の、図4のフローチャートに沿った炉速および炉温スケジュールの設定方法の一例を示すタイミングチャートである。
図6に示すように、ステップST3(図4参照)における初期最適炉速を設定変更点ごとに設定することによって、炉速スケジュール初期計算が行われ、図6中(1)に示す仮の炉速スケジュールが導出される。なお、図6中(2)に示す板温制約は、被焼鈍材ごとの諸元によって設定される板温上限値、板温目標値および板温下限値であり、オペレータなどによってプロセスコンピュータ20に入力される情報データである。
図4に示すステップST3における設定変更点ごとの初期最適炉速の算出が終了して、仮の炉速スケジュールが設定されると、ステップST4に移行する。ステップST4においては、図6に示すように、(1)仮の炉速スケジュールと(2)板温制約とから、被焼鈍材の伝熱モデルによって、炉温上限算出手段、炉温下限算出手段および炉温設定手段として機能するプロセスコンピュータ20により、設定変更点ごとの焼鈍炉6の炉温設定上限値、炉温設定下限値、および炉温目標値が算出される。これによって、図6中(3)に示す炉温制約が導出される。
図4に示すステップST4において炉温制約が導出されると、ステップST5に移行する。ステップST5においては、連続する被焼鈍材における接合部の前後において、炉温制約に基づく炉温設定下限値以上炉温設定上限値以下の範囲(炉温上下限幅)の重なりが所定値より大きいか否かが判定される。
具体例として、図5に示す第1の被焼鈍材41と第2の被焼鈍材42との接合部41aの前後、および第2の被焼鈍材42と第3の被焼鈍材43との接合部42aの前後において、炉温上下限幅の重なりを判定する場合について説明する。なお、以下の処理は、図4に示すプロセスコンピュータ20により実行される。
まず、図6の(3)に示す炉温制約において、接合部41aの前後における炉温上下限幅、すなわち第1の被焼鈍材41の後端部分の炉温上下限幅と、第2の被焼鈍材42の先端部分の炉温上下限幅との重なりを算出する。この炉温上下限幅の重なりが所定値以下、具体的には、例えば5℃以下である場合(ステップST5:No)には、図4に示すステップST6に移行する。
ステップST6においては、炉温設定下限値が低い側の被焼鈍材における初期最適炉速を低下させて、この被焼鈍材の新たな炉速目標値として修正する。すなわち、図6の(3)に示す炉温制約においては、第1の被焼鈍材41の後端の炉温設定下限値より第2の被焼鈍材42の先端の炉温設定下限値の方が低いので、第2の被焼鈍材42における炉速を低下させる。
その後、図4に示すステップST4に移行して、プロセスコンピュータ20により、修正後の炉速スケジュールに基づいて、設定変更点(b1〜b10)ごとに第2の被焼鈍材42における炉温上限値、炉温目標値、および炉温下限値が再計算されて、炉温スケジュールが修正される。これらのステップST4〜ST6は、接合部41aの前後における炉温上下限幅の重なりが所定値より大きくなるまで繰り返し実行される。以上により、第2の被焼鈍材42の炉速スケジュールが図6の(4)に示す点線部から実線部に修正されて炉速スケジュール第1修正になるとともに、炉温制約が図6の(5)に示す点線部から実線部に修正されて炉温制約修正になる。この修正は、接合部41aの前後における炉温上下限幅の重なりが大きくなる方向に行われる。
第2の被焼鈍材42の炉速スケジュールおよび炉温制約の修正後には、第2の被焼鈍材42と第3の被焼鈍材43との接合部42aの前後において、炉温上下限幅の重なりが所定値より大きいか否かの判定が行われる。この場合も上述した炉温制約の修正と同様に、接合部42aの前後における炉温上下限幅の重なりが所定値より大きくなるまで、ステップST4〜ST6が繰り返し実行され、第3の被焼鈍材43の炉速スケジュールおよび炉温制約の修正が行われる。以上により、第3の被焼鈍材43の炉速スケジュールが図6の(4)に示す点線部から実線部に示すように修正されて炉速スケジュール第1修正になるとともに、炉温制約が図6の(5)の点線部から実線部に示すように修正されて炉温制約修正となる。この修正は、接合部42aの前後における炉温上下限幅の重なりが大きくなる方向に行われる。
なお、上述したステップST4〜ST6の処理は、プロセスコンピュータ20に情報が入力されているすべての被焼鈍材を対象にして繰り返し順次実行され、それぞれの被焼鈍材の炉速スケジュールおよび炉温制約が修正される。そして、図4に示すステップST5において、プロセスコンピュータ20に情報が入力されているすべての被焼鈍材の接合部の前後で、修正された炉温制約に基づく炉温上下限幅の重なりが所定値より大きくなる(ステップST5:Yes)と、ステップST7に移行する。
ステップST7においては、被焼鈍材の炉温スケジュールにおける炉温の変更が、平滑に行われるように修正される。すなわち、焼鈍炉6においては炉温を急激に変化させることができず、炉温の上昇や下降の際の炉温の変化速さには制約がある。そこで、プロセスコンピュータ20により、図6の(5)に示す炉温制約修正に基づいて、設定変更点ごとに、炉温を炉温設定上限値と炉温設定下限値との間にしつつ、炉温の変更部分の炉温の変化速さが、焼鈍炉6における炉温の変化速さの限度以下になるように修正される。これにより、図6の(6)に示す炉温スケジュール第1修正が導出される。その後、図4に示すステップST8に移行する。
ステップST8においては、ステップST7において修正された炉温スケジュールに基づいて、炉速スケジュールが修正され、炉温の変更に伴って炉速がなめらかに変化するように修正される。すなわち、焼鈍炉6において被焼鈍材の炉速を急激に変化させると、被焼鈍材の板温に悪影響を及ぼしてしまう。また、上述したように焼鈍炉6の炉温を急激に変化させることはできない。これらのことから、焼鈍材の炉速を加減速させる際の加速度にも限界がある。そこで、プロセスコンピュータ20により、図6の(4)に示す炉速スケジュール第1修正は、設定変更点ごとの炉速の加速度が所定の限度以下になるように修正される。なお、この場合においても、炉速は入側制約、出側制約および中央制約により制約されていることから、設定変更点ごとの炉速はこれらの制約を満たしつつ修正される。以上により、図6中(4)に示す炉速スケジュール第1修正が図6の(7)の点線部から実線部に示すように修正され、炉速スケジュール第2修正が導出される。その後、図4に示すステップST9に移行する。
ステップST9においては、プロセスコンピュータ20により、図6の(6)に示す炉温スケジュール第1修正と(7)に示す炉速スケジュール第2修正とから、伝熱モデルに基づいて被焼鈍材の板温の推移が算出され、図6中(8)に示す板温スケジュール修正が導出される。その後、図4に示すステップST10に移行する。
ステップST10においては、ステップST9で導出された図6中(8)に示す板温スケジュール修正における設定変更点ごとの被焼鈍材の板温が、図6中(2)に示す板温制約の板温上限値と板温下限値との間に含まれるか否かが判定される。そして、図6中(8)に示す板温スケジュール修正のうちで、図6中(2)に示す被焼鈍材ごとの板温の板温上限値と板温下限値との間から外れた部分が存在した場合(ステップST10:No)、図4に示すステップST4に移行する。そして、都度修正される図6中(8)に示す板温スケジュールが、図6中(2)に示す被焼鈍材ごとの板温上限値と板温下限値との間から外れる部分がなくなるまで、ステップST4〜ST10が繰り返し実行される。
以上のようにして被焼鈍材の炉速スケジュールおよび炉温スケジュールが決定され、これに基づいて、図1に示す連続焼鈍ラインにおける焼鈍炉6の炉速および炉温が制御される。すなわち、プロセスコンピュータ20において最終的に導出された炉速スケジュール(図6中(7)炉速スケジュール第2修正)に基づいて、焼鈍を行っている時点から所定時間だけ後の炉速データ、具体的には例えば5秒後の炉速データが炉速設定部21に常時供給され、焼鈍炉6内における被焼鈍材の炉速が制御される。同様に、プロセスコンピュータ20において最終的に導出された炉温スケジュール(図6中(6)炉温スケジュール第1修正)に基づいて、焼鈍を行っている時点から所定時間だけ後の炉温データ、具体的には例えば10分後の炉温データが炉温設定部22に常時供給され、焼鈍炉6の加熱炉6aおよび均熱炉6bの炉温が制御される。
以上説明したこの一実施形態による連続焼鈍ラインの制御方法によれば、連続する複数の被焼鈍材において、所定間隔ごとに設定変更点を設定し、設定変更点ごとに入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速を比較して、初期最適炉速を導出した後、連続焼鈍ライン1の焼鈍炉6における炉温と焼鈍炉6内の被焼鈍材の炉速とを関連調和させて、被焼鈍材の板温が被焼鈍材ごとに決められた板温上限値と板温下限値との間に収まるように、炉温スケジュールおよび炉速スケジュールを決定していることにより、焼鈍炉6において被焼鈍材を焼鈍する際に、炉温と炉速とを最適に制御することが可能となる。
次に、この一実施形態による焼鈍ラインの制御方法において用いられる炉速スケジュール、炉温スケジュール、および板温スケジュールのガイダンス方法について説明する。図7は、このガイダンス方法によって図1に示すプロセスコンピュータ20の表示部20aに表示されるガイダンス画面の主要部分を示し、図8は、表示部20aに表示されるガイダンス画面の全体を示す。
さて、従来の連続焼鈍ラインにおける設定値の表示としては、主に、コイル単位の設定変更の項目と、焼鈍炉における焼鈍の状態をリアルタイムの逐次設定替項目とをそれぞれ一覧表に表示したものであった。そのため、従来の設定値の表示では、設定変更のタイミングが不明確であり、上述したこの一実施形態によるスケジュールなどをガイダンスすることができなかったため、オペレータにとって、設定値の妥当性を判断するのが困難であった。
そこで、この一実施形態においては、炉速スケジュール、炉温スケジュール、およびこれらの制約スケジュールに基づき伝熱モデルによって導出された板温スケジュールを、同一のガイダンス画面に表示する。
すなわち、図7および図8に示すように、この一実施形態による連続焼鈍ラインのプロセスコンピュータ20の表示部20a(図1参照)には、被焼鈍材の送り量に沿って、炉速スケジュール、板温スケジュール、および炉温スケジュールが同一のスケジュール画面51内に表示される。さらに、連続焼鈍ライン1に通板されている複数の被焼鈍材におけるそれぞれの被焼鈍材の諸元の一覧表52がスケジュール画面51と同一のガイダンス画面に表示される。
ガイダンス画面におけるスケジュール画面51には、炉速スケジュールに沿って焼鈍材が搬送されつつ焼鈍が行われている時点(現在)を基準とした基準線が表示される。このスケジュール画面51において、現在の基準線から過去の領域には、実際の制御実績が表示される。さらに、スケジュール画面51において、現在の基準線から未来の領域には、将来に向かって炉温および炉速を制御するための、上述のスケジュールの設定方法によってプロセスコンピュータ20により導出された炉速スケジュール、炉温スケジュール、および板温スケジュールが表示される。
なお、板温スケジュールにおいては、図7および図8において斜線部で示すように、被焼鈍材ごとに決定されている板温上限値と板温下限値との範囲が明確になるように表示される。これによって、オペレータは被焼鈍材ごとの板温がそれらの諸元によって決められた所定の範囲内に収まっているか否かを確認することができる。また、例えば、プロセスコンピュータ20によって、ガイダンス画面の上部に表示される被焼鈍材の諸元の一覧表52における被焼鈍材ごとの文字の表示色と、スケジュール画面51の下部に表示される進捗棒グラフの色とが同色になるようにしてもよい。これにより、現在焼鈍されている被焼鈍材のスケジュールと被焼鈍材の諸元とを容易に対応させることができ、焼鈍中の被焼鈍材と他の被焼鈍材とを容易に識別することができる。また、例えば、スケジュール画面51においては、連続焼鈍ラインにおける進行状況を示す横軸を、被焼鈍材の送り量としているが、代わりに時刻としてもよく、その場合には、基準線は現在時刻に設定される。
この一実施形態によるガイダンス方法によれば、オペレータは、被焼鈍材の焼鈍の進捗に従って、過去の焼鈍の実績と、未来の焼鈍における炉速スケジュール、炉温スケジュール、および板温スケジュールとを同時に認識することができるので、設定値の妥当性を容易に判断することが可能となる。
1 連続焼鈍ライン
2a,2b ペイオフリール
3 溶接機
4 クリーニングセクション
5 入側ルーパ
6 焼鈍炉
6a 加熱炉
6b 均熱炉
6c 冷却炉
7 ウォータークエンチ設備
8 出側ルーパ
9 スキンパスミル
10 後処理部
11a,11b テンションリール
12a,12b,12c,12d テンションレベラ
13a,13b テンションコントロールユニット
20 プロセスコンピュータ(プロコン)
20a 表示部
21 炉速設定部
22 炉温設定部
31 先行被焼鈍材
32 後行被焼鈍材
33,41a,42a 接合部
41 第1の被焼鈍材
42 第2の被焼鈍材
43 第3の被焼鈍材
51 スケジュール画面
52 一覧表
1〜a12,b1〜b10,c1〜c11 設定変更点

Claims (8)

  1. 連続する複数の被焼鈍材のそれぞれに、所定間隔ごとに設定変更点を設定する設定変更点設定ステップと、
    前記設定変更点ごとに、前記被焼鈍材における入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速を比較して、最も低い炉速を初期最適炉速として設定する初期炉速設定ステップと、
    前記設定変更点ごとの前記初期最適炉速、および前記被焼鈍材ごとの諸元に基づく板温上限値から、伝熱モデルによって炉温設定上限値を算出する炉温上限算出ステップと、
    前記設定変更点ごとの前記初期最適炉速、および前記被焼鈍材の諸元に基づく板温下限値から、前記伝熱モデルによって炉温設定下限値を算出する炉温下限算出ステップと、
    前記設定変更点ごとに、前記炉温設定上限値と前記炉温設定下限値との間の炉温を、炉温目標値として設定する炉温設定ステップと、
    を含むことを特徴とする連続焼鈍ラインの制御方法。
  2. 前記連続する複数の被焼鈍材のうちの、先行する第1の被焼鈍材と、前記第1の被焼鈍材の後端に接合される第2の被焼鈍材との接合部の前後において、前記第1の被焼鈍材における炉温設定下限値以上炉温設定上限値以下の範囲と、前記第2の被焼鈍材における炉温設定下限値以上炉温設定上限値以下の範囲との重なりの温度範囲が所定値以下であるか否かを検出する重複範囲検出ステップと、前記重複範囲検出ステップにおいて検出された前記重なりの温度範囲が前記所定値以下である場合に、前記第1の被焼鈍材における炉温設定下限値と前記第2の被焼鈍材における炉温設定下限値との低い方を判別する炉温下限判別ステップと、前記炉温下限判別ステップにおいて判別された前記炉温設定下限値の低い側の被焼鈍材における初期最適炉速を低下させた炉速目標値を設定する炉速設定低下ステップとを、前記重複範囲検出ステップにおいて前記重なりの温度範囲が所定値より大きくなるまで繰り返し行う炉速炉温設定変更ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の連続焼鈍ラインの制御方法。
  3. 前記設定変更点ごとに前記炉温目標値が変化する際の変化速さを、焼鈍炉における炉温の変化速さについて決められた限度以下になるように設定する炉温変更平滑化ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の連続焼鈍ラインの制御方法。
  4. 前記設定変更点ごとに前記炉速目標値が変化する際の加速度を、焼鈍炉における加速度の下限値以上上限値以下になるように設定する炉速変更平滑化ステップを含むことを特徴とする請求項2または3に記載の連続焼鈍ラインの制御方法。
  5. 前記設定変更点ごとに、前記炉速目標値および前記炉温目標値から、伝熱モデルによって前記被焼鈍材の板温値を算出する板温算出ステップと、前記板温算出ステップにおいて算出された前記設定変更点ごとの板温値が、前記板温設定上限値と前記板温設定下限値との間であるか否かを判定する板温値判定ステップと、を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の連続焼鈍ラインの制御方法。
  6. 前記被焼鈍材の送り量または時刻に沿って、前記炉速目標値、前記炉温目標値、前記板温上限値、前記板温下限値、および前記板温値を、前記連続焼鈍ラインにおける表示手段に同時に表示するガイダンス表示ステップを含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の連続焼鈍ラインの制御方法。
  7. 前記連続焼鈍ラインにおける前記被焼鈍材の送り量または時刻に従って、焼鈍されている時点の被焼鈍材の現在位置を示す基準と、前記基準から過去の領域における、前記被焼鈍材の炉速の実績値、前記焼鈍炉の炉温の実績値、および前記焼鈍材の板温の実績値と、前記基準から未来の領域における、前記炉速目標値のスケジュール、前記炉温目標値のスケジュール、および前記板温値のスケジュールとを同時に表示することを特徴とする請求項6に記載の連続焼鈍ラインの制御方法。
  8. 連続する複数の被焼鈍材のそれぞれに、所定間隔ごとに設定変更点を設定する設定変更点設定手段と、
    前記設定変更点ごとに、前記被焼鈍材における入側制約炉速、中央制約炉速、および出側制約炉速を比較して、最も低い炉速を初期最適炉速として設定する初期炉速設定手段と、
    前記設定変更点ごとの前記初期最適炉速、および前記被焼鈍材ごとの諸元に基づく板温上限値から、伝熱モデルによって炉温設定上限値を算出する炉温上限算出手段と、
    前記設定変更点ごとの前記初期最適炉速、および前記被焼鈍材の諸元に基づく板温下限値から、前記伝熱モデルによって炉温設定下限値を算出する炉温下限算出手段と、
    前記設定変更点ごとに、前記炉温設定上限値と前記炉温設定下限値との間の炉温を、炉温目標値として設定する炉温設定手段と、
    を備えることを特徴とする連続焼鈍ラインの制御装置。
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