JP7302563B2 - 冷延鋼板の連続焼鈍方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の冷延鋼板を接合してつなぎ部を形成し、先行材と後行材を連続して焼鈍する冷延鋼板の連続焼鈍方法に関し、特に、連続焼鈍方法における冷却工程及び再加熱工程におけるつなぎ部前後の板温の制御方法に関する。
一般に、冷間圧延を行った後の鉄鋼材料(冷延鋼板)は、塑性変形によって生じる転位が絡み合い硬化するため、鋼板の軟化を目的に焼鈍を行う場合が多い。
硬化した鋼板(冷延コイルなど)に対して行う焼鈍としては、巻き戻した多数の冷延コイルを次々に溶接して連続的に加熱炉内を通過させた後、この冷延コイルを再度巻き取る連続焼鈍が一般的である。この連続焼鈍は、鋼板を連続して焼鈍することができる連続焼鈍炉を用いて行い、一般的な工程は、予熱工程、加熱工程、均熱工程、冷却工程、更には再加熱工程などから構成されている。
冷延鋼板の特性は、その鋼種により異なるため、連続焼鈍後の冷延鋼板が目的とする特性を得るためには、前述の各工程における温度、具体的には、予熱温度、加熱温度、均熱(保持)温度、冷却温度及び再加熱温度などを目標とする温度範囲内に適正に制御することが重要となる。
また、冷延鋼板を連続して焼鈍するには、各冷延コイルを溶接(主にシーム溶接など)して接合することにより連続的な処理が可能となるが、その溶接部(以下、「つなぎ部」ともいう)の前後の鋼板、すなわち先行する鋼板(「先行材」ともいう)と後行する鋼板(「後行材」ともいう)とで、鋼種や寸法の異なる鋼板を連続的に処理することがあるが、そのような場合には、冷延鋼板の温度(「板温」ともいう)が先行材と後行材とで変動することがあり、それぞれの鋼板に対応した適正な板温の制御を行う必要がある。
このような板温制御の方法として、特許文献1では、先行の成品材(先行材)と後行の成品材(後行材)の間につなぎ材を挿入して板温を制御する連続焼鈍炉の板温制御方法であって、つなぎ材から成品材への変更時の板温変動量に基づき、つなぎ材尾端の目標板温を決定し、加えてつなぎ材通板中は、該つなぎ材尾端の目標板温を終点とし一定の傾きで目標板温を変更する方法が開示されている。
また、特許文献2では、ロール冷却装置の前にガスジェット冷却装置を備えた連続焼鈍設備冷却炉のストリップ温度制御方法であり、後行ストリップ(後行材)の板厚が先行ストリップ(先行材)の板厚よりも薄くなる場合、溶接点(つなぎ部)が炉出口を通過すると同時にガスジェット冷却量設定値を冷却装置出口におけるストリップ温度が一定となるように制御し(算出された所定値まで降下させ)、次いでその設定値を炉出口でのストリップ温度が所定温度となるように制御する(算出された目標値まで所定時間で降下させる)温度制御方法が開示されている。
さらに、特許文献3では、設定材質及び断面形状などが異なるコイルが溶接され連続的に焼鈍される際、連続焼鈍炉の一部に誘導または通電加熱装置を設け、部分的に焼鈍温度を高めることで、焼鈍温度を効率的に変化させる冷延鋼板の製造方法が開示されている。
特開平10-30127号公報 特開昭60-221532号公報 特開平07-97635号公報
しかしながら、特許文献1に記載の板温制御方法は、つなぎ材は前後の鋼板とは異なる材質、仕様の材料を用いた場合の板温制御方法であって、前後の成品材とは違うある程度の幅のあるダミー材を間に挟んでいることから、先行の成品材と後行の成品材のそれぞれの板温制御には対応できるとしても、つなぎ材を挟むことによって、つなぎ材前後の接合(溶接)処理が倍増することなどによる生産能率の低下を招くという問題がある。
また、特許文献2に記載の制御方法は、後行ストリップの板厚が先行ストリップの板厚よりも薄くなる場合しか検討されておらず、先行ストリップと後行ストリップの板厚が同じ場合でも発生するストリップ温度の変動については、何も考慮されておらず、単に冷却装置を制御するだけでは、その後の再加熱後の板温変動には全く対応することができないという問題がある。
さらに、特許文献3においては、加熱温度の効率的な制御は開示されているものの、冷却工程および再加熱工程における板温変動に対しては有効な技術とはいえず、板温外れによる冷延鋼板の特性値外れを生じ、その結果、成品の歩留低下を招くという問題がある。
〔つなぎ部前後における板温変動の検討〕
そこで、本発明者は、つなぎ部前後における先行材と後行材の板温変動について検討した結果を以下に説明する。
まず、図1は、冷延鋼板7が連続して焼鈍処理される連続焼鈍炉1の概略構成を示す断面図であり、図2は、連続焼鈍炉の各装置の配列を模式的に示したものである。この図2は、概念図であり、加熱装置2、冷却装置4、再加熱装置6の各装置は、水平に配置しているが、図1の縦型炉をも含む概念図であって、さらに、その中の加熱装置2は、予熱装置や均熱装置などを含む加熱処理する装置という広い概念の装置を意味する。
図5は、従来技術の冷却後及び再加熱後のつなぎ部前後の板温変動を表す図であって、つなぎ部の前後における冷却工程での冷却時とそれに続く再加熱工程での再加熱時の板温変動の挙動の一例を示したものである。図5には、2種類の図を示しているが、「(a)冷却後板温」の図で、上の図(縦軸が板温の図)が、図2の冷却板温計11で計測した板温の実績値の推移を示すものであり、先行材の鋼板A(7A)と後行材の鋼板B(7B)の冷却後の板温の挙動を表している。ここで、冷却後の板温とは、鋼板を冷却した直後に測温したもので、冷却した際の鋼板の表面温度を示している(以下、「冷却後板温」ともいう)。その下の図(縦軸が冷却装置出力%の図)は、その時の冷却装置の出力%を示している。
この「(a)冷却後板温」の図が示しているのは、次のような現象である。まず、先行材の鋼板Aが冷却工程にある間は、その板温は目標の上下限値の範囲内で安定に推移している。しかし、つなぎ部を過ぎて後行材の鋼板Bに変わったところ、その板温が急上昇して、目標とする板温の目標範囲の上限値を超えて板温外れが発生した。そこで、上昇した板温を下げるために、冷却装置の出力%を上げたところ、鋼板Bの冷却後板温が低下していき、しばらく経過した後、鋼板Bの板温を目標範囲内に収めることができた。
さらに、続く再加熱工程の挙動は、図5の「(b)再加熱後板温」の図が示している。こちらも同様に、上の図(縦軸が板温の図)が、図2の再加熱板温計12で計測した板温の実績値の推移を示すものであり、先行材の鋼板A(7A)と後行材の鋼板B(7B)の再加熱後の板温の挙動を表している。ここで、再加熱後の板温とは、再加熱した直後に測温したもので、再加熱した際の鋼板の表面温度を示している(以下、「再加熱後板温」ともいう)。その下の図(縦軸が再加熱装置出力%の図)は、その時の再加熱装置の出力%を示している。
この「(b)再加熱後板温」の図が示しているのは、次のような現象である。まず、先行材の鋼板Aでは、再加熱後の板温が目標範囲内で推移していたが、つなぎ部を過ぎて後行材の鋼板Bに変わると、前の冷却工程において冷却後板温が上昇した影響を受けて、再加熱後板温も大きく上昇し、再加熱後板温の目標範囲の上限値を超えて板温外れが発生した。そこで、上昇した板温を下げるために、再加熱装置の出力%を下げることにより、鋼板Bの再加熱後板温が低下し、しばらく経過した後、鋼板Bの板温を目標範囲内に収めることができた。しかし、板温外れによる製品の規格外れが発生している。
以上のように、冷却工程と再加熱工程において、つなぎ部前後で板温が急激に変動し、板温の目標範囲から外れるという問題が発生することが分かった。
本発明は、冷延鋼板の連続焼鈍方法における均熱工程を含む加熱工程後の冷却工程、又はその冷却工程とそれに続く再加熱工程において、つなぎ部前後における先行材と後行材の板温の変動を抑えるために、それらの板温が目標とする温度範囲に入るように制御して、各板温が目標温度範囲に該当しなくなる状態(以下、「板温外れ」ともいう)をなくすか又は少なくすることにより、冷延鋼板の製品として特性値から外れて規格外となるのを防ぎ、製品歩留を向上させ、さらには生産能率の低下を招かない焼鈍方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため、冷却工程及び再加熱工程におけるつなぎ部前後の板温変動の原因について鋭意検討した。その結果、つなぎ部前後の板温の変動は、冷延鋼板の冷却時の組織変態による発熱量(以下、「冷却時変態発熱量」ともいう)が重要な要因であることを見出し、前記課題を解決する冷延鋼板の連続焼鈍方法を発明するに至った。
本発明の要旨は、次のとおりである。
〔1〕複数の冷延鋼板を接合してつなぎ部を形成し、先行材と後行材を連続して焼鈍する冷延鋼板の連続焼鈍方法において、
該連続焼鈍方法は、加熱工程及び冷却工程を有し、
前記冷却工程における前記先行材と後行材のつなぎ部前後の冷却後板温の目標範囲及び冷却出力条件を設定する際に、
前記後行材の冷却時の変態発熱量を考慮して、前記つなぎ部前後の先行材と後行材の冷却後板温を前記目標範囲とするように冷却する、
ことを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔2〕〔1〕において、前記冷却工程の後に、さらに再加熱工程を有し、
前記再加熱工程における前記先行材と後行材のつなぎ部前後の再加熱後板温の目標範囲及び再加熱出力条件を設定する際に、
前記後行材の冷却時の変態発熱量を考慮して、前記つなぎ部前後の先行材と後行材の再加熱後板温を前記目標範囲とするように再加熱する、
ことを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔3〕〔1〕又は〔2〕の前記設定において、さらに、前記先行材と後行材の板厚も考慮して設定することを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔4〕〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記先行材と後行材の板厚が、0.3mm~2.5mmであることを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つにおいて、前記つなぎ部前後の範囲(長さ)が、つなぎ部を挟んで片側10m以上であることを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔6〕〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つにおいて、前記つなぎ部前後の冷却後の板温の目標範囲が、100℃~500℃であることを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔7〕〔1〕ないし〔6〕のいずれか一つにおいて、前記冷却工程を通過する通板速度が、30m/分~400m/分であることを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
〔8〕〔2〕ないし〔7〕のいずれか一つにおいて、前記つなぎ部前後の再加熱後の板温の目標範囲が、250℃~550℃であることを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
本発明は、冷延鋼板の連続焼鈍方法の冷却工程又は再加熱工程におけるつなぎ部前後で、先行材及び後行材の板温が目標とする温度範囲に入るように制御し、それぞれの鋼板の板温外れとなる部分をなくすか又は少なくすることで、冷延鋼板としての特性値外れを削減し、製品歩留を向上させ、さらには生産能率の低下を招かないという優れた効果を奏するものである。
連続焼鈍炉の概略構成を示す断面図である。 連続焼鈍炉の加熱装置、冷却装置及び再加熱装置の概略を示す模式図である。 本発明の第一の実施態様に関する板温制御の処理手順例を示す図である。 本発明の第二の実施態様に関する板温制御の処理手順例を示す図である。 従来技術の冷却後板温及び再加熱後板温の変動を示す図である。 本発明の第一の実施態様の冷却工程における板温予測の手順を示す模式図である。 本発明の第二の実施態様の冷却工程と再加熱工程における板温予測の手順を示す模式図である。 本発明の冷却後板温及び再加熱後板温の変動を示す図である。
まず、本発明に係る連続焼鈍炉及びつなぎ部前後における板温変動について検討した内容を説明する。
〔連続焼鈍炉〕
図1は、前述したように、冷延鋼板7が連続して焼鈍処理される連続焼鈍炉1の概略構成を示す断面図である。その構成は、まず加熱工程を担う加熱装置2、均熱装置3があり、続いて冷却工程を担う冷却装置4、5、さらに再加熱工程を担う再加熱装置6などが順次配置されている。加熱装置2としては、熱源としてコークス炉ガスを用いたラジアントチューブによる間接加熱方式のガス加熱装置などがある。また、加熱する工程の詳細は、予熱工程、加熱工程、そして均熱工程から構成されているのが一般的である。均熱工程で用いる均熱装置3としては誘導加熱装置などがある。次に、冷却装置としては、鋼板の両面にノズルから冷却ガスを吹き付けて鋼板を冷却するガスジェット冷却装置4や内部に冷媒を流通させた冷却ロールの外周面に鋼板を接触させて鋼板を冷却するロール冷却装置5などがある。さらに、再加熱装置6としては、誘導加熱装置などが用いられる。また、図1には図示していないが、加熱装置2の前段には、入側設備として、例えば、ペイオフリール、シーム溶接機、洗浄装置、入側ルーパーなどを備えている。そして、再加熱装置6の後段には、出側設備として、例えば、出側ルーパー、せん断機、巻取機などを備えている。
なお、再加熱工程は、軟質系鋼板、ハイテン系(高張力鋼)などの鋼種の場合に用いられることが多く、SPCC材、高張力鋼などの鋼種の場合には、冷却工程のみで焼鈍処理を終了する場合もある。
〔連続焼鈍方法〕
次に、連続焼鈍方法としては、前述のように、予熱工程や均熱工程を含む加熱工程、冷却工程、さらに再加熱工程からなる手順で処理されるのが、一般的である。この加熱工程の前に、鋼板の連続化処理を行う接合工程がある。この接合工程は、通常は溶接により接合することが多く、その溶接方法もシーム溶接方法を用いることが多い。このシーム溶接方法は、鋼板の板端を僅かだけ重ねて、ローラ電極を用いて通電・加圧により押し潰しを行いながら連続的な溶接を行う「マッシュシーム溶接」などが用いられている。この場合の溶接して形成されるつなぎ部の長さは、5mm以下であることが好ましい。5mm超では溶接不良となることがある。
また、一般的に焼鈍処理される際の冷延鋼板の板厚は、0.3mm~2.5mmであることが好ましい。0.3mm未満では、通板中の破断の恐れがあり、2.5mm超では、溶接不良を起こしやすい。
さらに、焼鈍処理される際の冷延鋼板の通板速度は、例えば、30m/分~400m/分程度である。
〔変態発熱〕
前述したように、つなぎ部の前後で先行材と後行材において板温変動が生じる原因を鋭意検討した結果、その主たる原因として、冷却時には鋼板の組織変態が起こり、それによっていわゆる変態発熱が発生するという現象によるものであることを突き止めた。すなわち、鋼板の鋼種が異なることによって、先行材と後行材とで変態発熱量の違いが生じ、変態発熱量が大きい鋼板を後行材として接合することにより、つなぎ部前後で板温が大きく変動し、急激な温度上昇による板温外れが発生することを見出した。
上記の変態発熱量とは、鋼板の組織変態に伴い発生する熱量のことであり、鋼板の鋼種によって変化する。
なお、鋼板の組織変態とは、A3やA1、Ar’、Ar”変態などの鉄の同素変態や、Acm変態などのセメンタイト変態、鉄の同素変態とセメンタイト変態が同時に起こるパーライト変態やベイナイト変態、A2やA0変態などが知られている。それらの各変態の詳細は、以下のとおりである。
・A3変態:α鉄~γ鉄の変態(加熱時はAc3、冷却時はAr3
・A2変態:鉄の磁気変態
・A1変態:オーステナイト~パーライトの変態(加熱時はAc1、冷却時はAr1
・Ar’変態:過冷時のオーステナイト→微細パーライトの変態
・Ar”変態:過冷時のオーステナイト→マルテンサイトの変態
・A0変態:セメンタイトの磁気変態
これらの中で、連続焼鈍炉の冷却工程における鋼板の組織変態は、主にオーステナイト→マルテンサイト変態である。
なお、この変態発熱のメカニズムは複雑であり、実際の操業においては、組織変態の状況やその変態の程度(変態率)の推定や変態発熱量の推定は極めて困難である。したがって、本発明においては、経験則により得られた過去のデータを基に、それらのデータを整理して変態発熱量を推定している。
〔本発明に係る第一の実施態様〕
以上の検討と知見を基に、つなぎ部前後における板温変動を制御し、板温外れを削減するために、本発明者が新規に発明した板温の予測と制御方法について説明する。
まずは、本発明に係る第一の実施態様である加熱工程の後の冷却工程における冷却装置の出力を制御する方法を説明する。
本発明に係る第一の実施態様の特徴は、次の通りである。
(a)複数の冷延鋼板を接合してつなぎ部を形成し、先行材と後行材を連続して焼鈍する冷延鋼板の連続焼鈍方法において、
(b)該連続焼鈍方法は、加熱工程及び冷却工程を有し、
(c)前記冷却工程における前記先行材と後行材のつなぎ部前後の冷却後板温の目標範囲及び冷却出力条件を設定する際に、
(d)前記後行材の冷却時の変態発熱量を考慮して、前記つなぎ部前後の先行材と後行材の冷却後板温を前記目標範囲とするように冷却する、
(e)ことを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
ここで、上記の(a)、(b)及び(e)は、前提条件とも言える要件であり、本発明の主たる要件は、(c)と(d)であって、本発明の特徴は、(d)である。
つまり、先行材と後行材の冷却後板温を目標範囲に収めるように冷却出力条件を設定するためには、その目標設定にあたって、後行材の冷却時の変態発熱量を考慮しなければならない。すなわち、その変態発熱量を加味して後行材の冷却時板温を予測し、その板温が目標範囲を超えると判定される場合には、その板温上昇を抑え込む必要がある。しかし、後行材に切り替わってから冷却出力条件を変更するのではその上昇を抑え込むことが出来ないので、そこで重要なことは、後行材に移る前に、つまり、つなぎ部手前の先行材のところから板温を下げておくことにより、後行材に移って変態発熱が発生してもその板温を目標範囲内に収めることができるということである。これらの設定は、操業前に先行材と後行材に用いる鋼種やその他の条件が決定した段階で、あらかじめ予測(計算)して設定することができる。
また、上記のつなぎ部手前の先行材の冷却出力条件を切り替える地点は、焼鈍炉の規模や通板速度などによって適宜定めるものであるが、一般的な連続焼鈍炉での通板速度(30m/分~400m/分程度)であれば、冷却装置の手前10m以上の地点であることが好ましい。
すなわち、本発明においては、つなぎ部前後の範囲(長さ)のつなぎ部を挟んで片側の範囲が、このつなぎ部手前の地点からつなぎ部までの範囲である。この片側の範囲が10m未満では、冷却出力調整時間が足りない。より好ましくは、30m~80mである。
つまり、この地点からつなぎ部までの間に先行材の冷却後板温を下げておき、後行材に切り替わった際の変態発熱量による板温上昇があっても板温の目標範囲に収めるようにすることができる。したがって、事前の目標設定は、上記の操業前でも良いし、操業中であっても、つなぎ部が冷却装置手前の前記の地点に到達するまでに、板温目標とそれに対応する冷却出力条件を設定することができれば良い。
さらに、実際の操業中における別の要因による板温変動の発生や操業中の何らかのトラブル発生を監視するために、前述したように各装置の後に板温計を配置し、随時板温を計測しているので、つなぎ部手前での直前の板温の情報を入手し、それに基づいてその後の変動状況を瞬時に予測できる場合には、つなぎ部手前の前記の地点における実績値を基に、冷却出力条件を設定修正するのが好ましい。
〔板温の予測方法〕
次に、板温の予測値を求める方法について説明する。
板温の予測方法としては、鋼板(鋼種)の成分組成や特性値、鋼板の寸法、また加熱装置や冷却装置の出力諸元などのパラメータを基に、理論的な熱量計算により板温を予測する方法、広範な実績データからAI的手法により近似的な予測値を求める方法、実績データを基に検量線を作成して板温を予測する方法、あるいは、板温と関連する各種パラメータとの実績データを収集したデータ表を作成し、それに基づいて板温を予測する方法などが挙げられるが、本発明においては、予測方法は特に限定されるものではなく、それらの予測方法のいずれかを用いて各工程後の板温の予測値を求めればよい。
本発明における重要な点は、この予測値を求める際に、つなぎ部前後の冷延鋼板、すなわち先行材と後行材の冷却時の変態発熱量を求めて、さらには、前後の鋼板の板厚の違いも考慮し、その発熱量と板厚の違いを織り込んで板温を予測することである。
そして、求めた各板温の予測値と目標値(目標範囲)との外れ具合を事前に把握することにより、加熱装置、冷却装置、さらには再加熱装置の出力を調整して、各板温を目標範囲内に制御することが本発明の特徴である。
なお、前述の予測方法の中からどの予測方法を選択するかは、実際の操業規模や条件などから適宜選択すれば良いが、簡便で効率的な予測方法としては、板温と関連する各種パラメータとの実績データを収集したデータ表を作成し、それに基づいて板温を予測する方法を用いるのが好ましい。
また、前記のパラメータとしては、前記つなぎ部前後の冷延鋼板の加熱後、冷却後及び再加熱後の板温、前記冷延鋼板の通板速度、前記冷延鋼板の板厚、前記冷延鋼板の冷却時の組織変態による発熱量、前記冷延鋼板の熱伝達率並びに前記冷却装置及び前記再加熱装置の出力に関する実績値又は予測値から選ばれるパラメータを用いるのが好ましい。
〔第一の実施態様に関する基本的な処理フローの例〕
本発明に係る第一の実施態様の特徴を、図3に示す基本的な処理フローの例を用いて説明する。この例は、板温と冷却出力条件の設定を、つなぎ部が冷却装置の特定地点を通過するタイミングで行う基本的な処理フローであって、以下に示す4つのステップから構成される。
[1-1.初期設定ステップ]
初めに、先行材と後行材の冷却後板温の目標範囲及び冷却装置に対する冷却出力条件を設定する。これが、初期設定ステップ(1-1)である。この設定方法の一例としては、これまでに収集登録した鋼種ごとの板温と関連する各パラメータ及び冷却装置の冷却出力(冷却能力)と板温との関係などの広範なデータを基に予測した結果から設定する方法がある。
[1-2.板温予測ステップ]
続いて、あらかじめ後行材の冷却時変態発熱量を考慮して先行材と後行材の冷却後板温を予測する。これが、板温予測ステップ(1-2)である。ここで、あらかじめとは、前述したように、連続焼鈍の操業前でも良いし、操業中であってもつなぎ部が冷却装置手前の特定地点に到達するまでに、板温目標とそれに対応する冷却出力条件を設定することができれば、それでも良い。この冷却装置手前の特定地点とは、前述したように、冷却装置の手前30m以上の地点であって、つなぎ部前後の範囲のうちのつなぎ部を挟んで片側の範囲のことである。この特定地点を鋼板Aの代表点P(図2の符号13)が通過するタイミングで、図2に示す加熱板温計10にて計測し、それを加熱後板温の実績値とし、その値に応じて、以降のステップにおいて、各板温の予測値を求めることになる。
[1-3.判定ステップ]
まず、先行材の板温予測値を目標範囲とする。次に、前述の板温予測ステップ(1-2)で得られた冷却後板温の予測値のうち、後行材の冷却後板温の予測値が目標範囲から外れるかどうかを判定する。これが、判定ステップ(1-3)である。
[1-4.出力調整ステップ]
上記の判定の結果、後行材の冷却後板温の予測値が目標範囲から外れる場合には、上記の初期設定ステップにおいて設定した先行材と後行材の冷却後板温の目標範囲に入るように、冷却出力条件を修正し、目標範囲から外れない場合には、初期設定ステップにおいて設定した冷却出力条件を継続する。これが出力調整ステップ(1-4)である。
冷却出力条件の修正に関する具体的な内容は、予測値が目標範囲を外れる場合には、後行材の鋼板Bの冷却時変態発熱によって発生する後行材の冷却後板温の上昇分に対し、冷却後板温を目標範囲内に抑えるために、先行材のつなぎ部手前の位置から冷却出力条件を上げて先行材の冷却後板温を下げておき、後行材に切り替わってその板温が上昇したとしても、その冷却後板温の目標範囲に収まるようにする。そのために先行材と後行材の冷却後板温を目標範囲に入るように冷却出力条件を修正するものである。
〔第一の実施態様に関する板温制御の具体例〕
以上の第一の実施態様に関する基本的な処理フローについて、さらに具体例について、図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第一の実施態様の冷却工程における板温予測の手順を示す模式図である。この図においては、鋼板Aが先行材で、鋼板Bが後行材である。図6は、前提条件として、その鋼種(組織成分)は異なっているが、板厚、熱伝達率は同じであり、冷却時の板温の目標範囲も同じとしているが、冷却時の変態発熱量は、鋼板Aが小さく、鋼板Bが大きい場合の例である。
このような条件において、まず図6の(a)では、鋼板Aの代表点P(図2の符号13、つなぎ部の30m手前の位置)が、加熱装置2の後にある加熱板温計10に到達した時の板温を、鋼板Aの加熱後板温の実績値として登録(把握)する。鋼板Bの方は、代表点Q(図2の符号14、つなぎ部の5m後ろの位置)が、加熱板温計10に到達した時の板温を、鋼板Bの加熱後板温の実績値として登録(把握)する。
続いて、図6の(b)では、冷却装置4によって冷却された鋼板Aの板温は、その後方にある冷却板温計11にて鋼板Aの冷却後板温が計測される。この場合、鋼板Aは、変態発熱量が小さく、冷却後板温はその目標範囲内で安定している。しかし、つなぎ部後の鋼板Bは、鋼板Aと比べて変態発熱量が大きいので、鋼板Aと同じ冷却条件では、変態発熱によって板温が上昇し、鋼板Bの冷却後板温は、その目標値の上限を超えて外れてしまう。これが、(b)の鋼板Bの<1>の部分である。この時の板温外れの値は、前述した予測方法を用いて予測することができる。
したがって、鋼板Bの冷却後板温の予測値が冷却後板温の目標値を外れると判定された場合には、図6の(c)に示すように、鋼板A及び鋼板Bの板温を下げて、両方の板温が目標値の範囲に収まるように、両方の冷却後板温を予測し直す。これが、(c)の<2>の部分である。
そして、冷却後板温の目標値の範囲に収まるような予測値が求められたら、その板温となるように、冷却装置4の出力を調整する。つまり、この図の場合には、冷却能力を上げるように出力条件を調整する。
なお、冷却後板温の目標範囲は、鋼種によって狙いの組織とするために個別に決定しているが、通常の操業の場合における冷却後板温の目標範囲としては、100℃~500℃とするのが好ましい。
以上のような手順により、つなぎ部前後における冷延鋼板の冷却後板温を予測し、冷却出力条件を調整することで、板温外れが無くなり、焼鈍された鋼板の特性値外れがなく、製品歩留が向上するという優れた効果が得られることになる。
なお、図6では、冷却時の変態発熱量が後行材が大きい場合であったが、先行材が大きい場合にも適用できることは当然である。
〔本発明に係る第二の実施態様〕
次に、本発明に係る第二の実施態様である冷却工程の後にさらに再加熱工程を有する連続焼鈍方法における板温制御の方法を説明する。
本発明に係る第二の実施態様の特徴は、前述の第一の実施態様の特徴に追加するものであり、その概要は次の通りである。
(a’)本発明に係る第一の実施態様において、
(b’)前記冷却工程の後に、さらに再加熱工程を有し、
(c’)前記再加熱工程における前記先行材と後行材のつなぎ部前後の再加熱後板温の目標範囲及び再加熱出力条件を設定する際に、
(d’)前記後行材の冷却時の変態発熱量を考慮して、前記つなぎ部前後の先行材と後行材の再加熱後板温を前記目標範囲とするように再加熱する、
(e’)ことを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
ここで、第一の実施態様の(a)~(e)の要件と比較すると、上記(b’)、(c’)、(d’)については、再加熱工程における処理が加わっている。要するに、再加熱工程を有する場合には、再加熱工程における再加熱後板温の変動を、その前の冷却後板温の状況を踏まえて再加熱装置の出力条件を設定することが特徴となっている。
〔第二の実施態様に関する基本的な処理フローの例〕
本発明に係る第二の実施態様の特徴を、図4に示す基本的な処理フローの例を用いて説明する。この例は、各板温と冷却及び再加熱の出力条件の設定を、つなぎ部が冷却装置の特定地点を通過するタイミングで行う基本的な処理フローであって、以下に示す6つのステップから構成される。
[2-1.初期設定ステップ]
初めに、先行材と後行材の冷却工程における冷却後板温及び再加熱工程における再加熱後板温の目標範囲並びに冷却出力条件及び再加熱出力条件を設定する。これが初期設定ステップ(2-1)である。この設定方法の一例としては、前述の初期設定ステップ(1-1)と同様に、これまでに収集登録した鋼種ごとの板温と関連する各パラメータ及び冷却装置の冷却出力(冷却能力)と板温との関係に加えて再加熱装置の再加熱出力と板温との関係などの広範なデータを基に予測した結果から設定する方法がある。
[2-2.板温予測ステップ]
続いて、つなぎ部が前記冷却装置手前の特定地点を通過する時に、後行材の冷却時変態発熱量を考慮して先行材と後行材の冷却後板温を予測し、さらに、その後の再加熱後板温を予測する。これが、板温予測ステップ(2-2)である。
上記の冷却装置手前の特定地点とは、前述した第一の実施態様の板温予測ステップ(1-2)において説明した内容と同じである。また、板温の予測方法についても同様である。
[2-3.判定ステップ]
上記の板温予測ステップ(2-2)で得られた冷却後板温の予測値及び再加熱後板温の予測値が、冷却後板温の目標範囲及び再加熱後板温の目標値から外れるかどうかを判定し、その結果、どちらかの板温の予測値がその目標範囲から外れると判定された場合には、続いて、その外れると判定されたのは冷却後板温の予測値の方かどうかを判定する。その結果、冷却後板温の予測値がその目標範囲から外れる場合には、次の出力調整ステップ(2-4)へ移る。
[2-4.出力調整ステップ]
このステップでは、その前の判定ステップ(2-3)において、判定された板温外れに対して、先行材と後行材の冷却後板温及び再加熱後板温がそれらの目標範囲に入るように、冷却出力条件及び再加熱出力条件を調整する。上記の各板温が目標範囲内であると判定された場合には、初期設定の条件を継続する。これが出力調整ステップ(2-4)である。
具体的には、前述したように、後行材(鋼板B)の冷却時変態発熱によって発生する鋼板Bの冷却後板温の上昇分を、その目標範囲内に抑えるために、つなぎ部手前の特定地点から冷却装置の出力を上げて先行材(鋼板A)の冷却後板温を下げておき、鋼板Bに切り替わってその板温が上昇したとしても冷却後板温の目標範囲に収まるように、冷却出力条件を調整するものである。
さらに、その冷却後板温の予測値を基に、冷却工程に続く再加熱工程における前記つなぎ部前後の再加熱後板温を予測し直す。つまり、その再加熱後板温の予測値が、再加熱後板温の目標範囲から外れる場合に、その目標範囲に入るように、再加熱後出力条件を調整するものである。この場合に、再加熱前の冷却工程において、後行材の板温上昇に対応するために、先行材の板温をつなぎ部手前から下げる調整をしていることにより、再加熱工程に移っても、先行材の板温が上昇せずに、先行材の再加熱後板温が目標範囲から低くなる場合が予測される。そのような場合には、先行材の最後、つなぎ部手前までの特定地点からつなぎ部までの間の板温を上昇させるように、再加熱出力条件を上げるような調整を行う必要がある。
〔第二の実施態様による板温制御の具体例〕
以上の第二の実施態様に関する基本的な処理フローについて、さらに具体例について、図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第二の実施態様の冷却と再加熱工程における板温予測の手順を示す模式図である。この図においては、鋼板Aが先行材で、鋼板Bが後行材であり、その他の条件等も図6と同様である。
このような条件において、まず図7の(a)では、鋼板Aの代表点P(図2の符号13、つなぎ部の30m手前の位置)が、加熱装置2の後にある加熱板温計10に到達した時の板温を、鋼板Aの加熱後板温の実績値として登録(把握)する。鋼板Bの方は、代表点Q(図2の符号14、つなぎ部の5m後ろの位置)が、加熱板温計10に到達した時の板温を、鋼板Bの加熱後板温の実績値として登録(把握)する。
続いて、図7の(b-1)では、冷却装置4によって冷却された鋼板Aの板温は、その後方にある冷却板温計11にて鋼板Aの板温が計測される。この場合、鋼板Aは、変態発熱量が小さく、冷却後板温はその目標範囲内で安定している。しかし、つなぎ部後の鋼板Bは、鋼板Aと比べて変態発熱量が大きいので、鋼板Aと同じ冷却条件では、変態発熱量によって板温が上昇し、鋼板Bの冷却後板温は、その目標値の上限を超えて外れてしまう。これが、(b-1)の鋼板Bの<1>の部分である。この時の板温外れの値は、前述した予測方法を用いて予測することができる。
続いて、冷却装置4の後にある再加熱装置6に搬送され、その際の鋼板Aの再加熱後板温は、再加熱板温計12で計測される。しかし、つなぎ部後の鋼板Bは、その前の冷却時の変態発熱による板温上昇((b-1)の<1>の部分)の影響を受けて、再加熱後板温もその目標値を外れて上昇する。これが(b-2)の<1>の部分である。
そこで、まず図7の(c-1)に示すように、鋼板A及び鋼板Bの冷却後板温を下げて、両方の冷却後板温がその目標範囲に収まるように、鋼板Aと鋼板Bの冷却後板温を再予測する。これが、(c-1)の<2>の部分である。
さらに、再加熱後板温について、その目標値の範囲に収まるように再予測を行う。この場合に、前段の冷却後板温の制御で、板温を下げ過ぎると、再加熱しても逆に鋼板Aの方の板温が上がらずに、目標値の範囲を外れることになる。これが図7の(c-2)の<3>の部分である。そこで、再加熱後板温を目標値の範囲に収まるように、一時的に再加熱装置6の出力を上げるように調整することが重要となる。これが図7の(c-2)の<4>の部分である。
以上により、冷却後板温の目標値の範囲及び再加熱後板温の目標値範囲に収まるようなそれぞれの再予測値が求められたら、その板温となるように、冷却装置4及び再加熱装置6の出力を調整する。つまり、この場合には冷却能力を上げるように指示を出す。
なお、再加熱後板温の目標範囲は、鋼種によって狙いの組織とするために個別に決定しているが、通常の操業の場合における再加熱後板温の目標範囲としては、250℃~550℃とするのが好ましい。
以上のような手順により、つなぎ部前後における冷延鋼板の冷却時変態発熱量を考慮して冷却後板温及び再加熱後板温を予測し、冷却出力条件及び再加熱出力条件を調整することで、板温外れが無くなり、焼鈍された鋼板の特性値外れがなく、製品歩留が向上するという優れた効果が得られる。
なお、図7では、図6と同様に冷却時の変態発熱量が後行材が大きい場合であったが、同じ様に先行材が大きい場合にも適用できることは当然である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例で用いた鋼板A(先行材)と鋼板B(後行材)の仕様は以下の通りである。なお、以下に記載の%は、いずれも質量%である。
・鋼板A:(鋼種)SPCC(C:0.05%、Si:0.02%以下、Mn:0.25%)、板厚1.6mm、冷却時の変態発熱量小。
・鋼板B:(鋼種)ハイテン、(C:0.20%、Si:1.4%、Mn:2.8%)、板厚1.6mm、冷却時の変態発熱量大。
以上の鋼板Aと鋼板Bをシーム溶接機にて溶接して、連続焼鈍を行った。溶接によるつなぎ部のサイズ(長さ)は、2.5mmである。
[実施例1]
実施例1の連続焼鈍方法の工程は、本発明の第一の実施態様に関わるもので、冷却工程における板温変動の試験を実施した。本実施例において、先行材の鋼板Aとして、SPCCを用い、後行材の鋼板Bとして、ハイテンを用いた。板厚は、ともに1.6mmとした。また、冷却後板温の目標範囲を、250℃~290℃と設定し、通板速度80m/分で実験した。
<比較例1>
まず、比較例1として、本発明の板温予測方法を行わない従来の方法で冷却後板温を調べたところ、図8の「(a)冷却後板温」に示した板温グラフにある点線のように推移した。つまり、先行材の鋼板Aの冷却後板温は、その目標範囲内で推移したが、後行材の鋼板Bに変わった途端、つなぎ部のところから冷却後板温が上昇し、目標範囲の上限値を超えてしまった。そこで、冷却装置の出力を上げるように冷却出力条件を調整したところ、約20秒経過後に鋼板Bの冷却後板温を下げることができ、それ以降は目標範囲内に収めることができた。
この結果から、後行材の鋼板Bにおいては、冷却出力条件を調整するまでの時間、冷却後板温が目標範囲を外れてしまっており、それにより鋼板Bの特性値も目標とするところから外れてしまい、製品歩留が減少することとなった。
<発明例1>
上記の比較例1に対し、冷却工程の板温制御において、本発明に係る冷却後板温の予測方法を実施した。
鋼板Aが冷却工程において、冷却後板温を目標範囲内で推移している間に、鋼板A(の代表点P)がつなぎ部手前の特定地点(30m地点)を通過した際に、その後に続く鋼板Bの冷却時変態発熱量を考慮して鋼板Bの冷却後板温を予測した。
その際の予測方法としては、簡便で効率的な方法である、板温と関連する各種パラメータとの実績データを収集したデータ表を作成し、それに基づいて板温を予測する方法を用いた。具体的には、鋼種別に、鋼板の板厚や熱伝達率などのデータや加熱装置、冷却装置、再加熱装置の出力条件などのデータと各装置での板温との関係を実績値を基にデータを整理し、その結果から得た予測値を登録したデータ表(テーブル)を用意した。このデータ表を用いれば、例えば、加熱装置にどの程度の出力を与えれば、どの程度の板温になるかが、簡単に読み取れるものである。
以上の予測方法により、つなぎ部後の鋼板Bの冷却後板温が目標範囲から外れると予測されたので、つなぎ部が通過する手前の時点で、冷却装置に対し板温を下げるような出力調整、つまり冷却出力条件を上げる調整を行った。その結果、鋼板Aと鋼板Bの冷却後板温が下がり、どちらも目標範囲内に収めることができた。それによって鋼板Aと鋼板Bの特性値も目標範囲から外れることがなく、製品歩留を向上させることができた。
[実施例2]
実施例2の連続焼鈍方法の工程は、本発明の第二の実施態様に関わるもので、冷却工程及び再加熱工程における板温変動の試験を実施した。実施例2で用いた鋼板A(先行材)と鋼板B(後行材)の仕様及びその他の条件は、前述の実施例1と同様とし、さらに再加熱後板温の目標範囲を、430℃~470℃と設定した。
<比較例2>
比較例2は、前述の比較例1で説明した冷却後板温の制御を行わない場合であって、それに続く再加熱工程においても板温制御を行わない例である。その内容は、図8の「(b)再加熱後板温」に示した板温グラフの「比較例2」で表した点線のように、つなぎ部後の鋼板Bで再加熱後板温が大きく上昇し、目標値の上限値を超えてしまった。これは、その前の冷却工程における鋼板Bの冷却時変態発熱量による上昇が大きく影響していることが分かる。
<比較例3>
比較例3は、上記の比較例2に対し、冷却工程において本発明の板温予測方法を取り入れて、鋼板Bの冷却後板温を目標範囲内に収めた場合であって、それに続く再加熱工程では何も板温制御を行わない例である。つまり、冷却工程において本発明の板温予測を行うことにより、鋼板Aと鋼板Bの冷却後板温は下がり、冷却後板温の目標範囲内に収まることはできたが、鋼板Aのつなぎ部手前の部分において冷却後板温を下げたことによって、それに続く再加熱工程においては、鋼板Aのつなぎ部手前部分の再加熱後板温が上がり切らずに、再加熱後板温の目標範囲内に収まらなかった。また、鋼板Aに続く鋼板Bにおいては、一応再加熱後板温の目標範囲内には収まってはいたが、それ程の上昇ではなく低いままで推移した。それが、図8の「(b)再加熱後板温」の「比較例3」の線で示す挙動となった。
<発明例2>
上記の比較例3において、鋼板Aのつなぎ部手前部分が再加熱後板温の目標範囲を外れることに対し、その外れをなくすために、本発明例2においては、再加熱後板温の予測値の修正を行い、再加熱出力条件を調整するものである。つまり、この再加熱後板温の予測値を基に、再加熱出力条件を一旦上げて、鋼板Aのつなぎ部手前部分の再加熱後板温を目標範囲内に収めることができた。さらに、その後に続く鋼板Bでも、同じ再加熱出力条件で調整したが、鋼板Bの再加熱後板温は、目標範囲内に収まっていた。その後、再加熱出力条件を下げて、鋼板Bが目標範囲内を安定して推移することができた。その結果、同図の「発明例2」の線で示すように、鋼板Aも鋼板Bもともに再加熱後板温の目標範囲に収めることができた。それにより、鋼板A及び鋼板Bの特性値も目標とするところから外れることがなく、製品歩留を向上させることができた。
1 連続焼鈍炉
2 加熱装置
3 均熱装置
4 冷却装置(ガスジェット冷却装置)
5 冷却装置(ロール冷却装置)
6 再加熱装置
7 鋼板(7A 鋼板A、7B 鋼板B)
8 つなぎ部
9 つなぎ部前後
10 加熱板温計
11 冷却板温計
12 再加熱板温計
13 代表点P
14 代表点Q

Claims (8)

  1. 複数の冷延鋼板を接合してつなぎ部を形成し、先行材と後行材を連続して焼鈍する冷延鋼板の連続焼鈍方法において、
    該連続焼鈍方法は、加熱工程及び冷却工程を有し、
    前記冷却工程における前記先行材と後行材のつなぎ部前後の冷却後板温の目標範囲及び冷却出力条件を設定する際に、
    前記後行材の冷却時の変態発熱量を考慮して、前記つなぎ部前後の先行材と後行材の冷却後板温を前記目標範囲とするように冷却する、
    ことを特徴とする冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  2. 前記冷却工程の後に、さらに再加熱工程を有し、
    前記再加熱工程における前記先行材と後行材のつなぎ部前後の再加熱後板温の目標範囲及び再加熱出力条件を設定する際に、
    前記後行材の冷却時の変態発熱量を考慮して、前記つなぎ部前後の先行材と後行材の再加熱後板温を前記目標範囲とするように再加熱する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  3. 前記設定において、さらに、前記先行材と後行材の板厚も考慮して設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  4. 前記先行材と後行材の板厚が、0.3mm~2.5mmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  5. 前記つなぎ部前後の範囲(長さ)が、つなぎ部を挟んで片側10m以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  6. 前記つなぎ部前後の冷却後の板温の目標範囲が、100℃~500℃であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  7. 前記冷却工程を通過する通板速度が、30m/分~400m/分であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
  8. 前記つなぎ部前後の再加熱後の板温の目標範囲が、250℃~550℃であることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1項に記載の冷延鋼板の連続焼鈍方法。
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