以下に、添付図面を参照して、本発明にかかるミルペーシング制御装置およびミルペーシング制御方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかるミルペーシング制御装置の一構成例を示すブロック図である。本実施の形態にかかるミルペーシング制御装置1は、図1に例示する熱間圧延ライン10のミルペーシング制御を行う装置である。なお、この熱間圧延ライン10は、圧延材を加熱して粗圧延する加熱・粗圧延ラインA1と、粗圧延後の圧延材を仕上圧延する仕上圧延ラインA2と、仕上圧延後の圧延材をコイル状に巻き取る巻取ラインA3とを組み合わせて構成される。また、この巻取ラインA3の後段には、コイル仕上搬送工程を行うためのコイル仕上搬送ラインA4が設置される。
図1に示すように、ミルペーシング制御装置1は、各種情報を入力する入力部2と、ミルペーシング制御に関する情報等を表示する表示部3と、ミルペーシング制御を実現するための各種演算処理を行う演算処理部4と、ミルペーシング制御を実行する制御部5とを備える。
入力部2は、キーボードおよびマウス等の入力デバイスを用いて実現され、操作者の入力操作に対応して各種情報を制御部5に入力する。なお、入力部2による入力情報として、例えば、制御部5に対してミルペーシング制御の開始または停止を指示する指示情報、熱間圧延ライン10内の各設備の仕様に関する情報等が挙げられる。
表示部3は、制御部5によって表示指示された各種情報を表示する。具体的には、表示部3は、入力部2による入力情報、ミルペーシング制御に関する演算処理結果等のミルペーシング制御に有用な各種情報を表示する。
演算処理部4は、熱間圧延ライン10のミルペーシング制御に必要な各種演算処理を行う。具体的には、演算処理部4は、熱間圧延ライン10の入側端に圧延材(スラブ)が投入される都度、この投入された圧延材の製品要求に関するオーダー情報9aを管理データベース9から取得する。演算処理部4は、この圧延材とオーダー情報9aとを対応付けつつ、このオーダー情報9aを用いて、この圧延材の搬送時間、圧延時間および巻取時間等の各製造工程の所要時間を算出する。また、演算処理部4は、このオーダー情報9aを用い、この圧延材について、コイル仕上搬送ラインA4によるコイル仕上搬送工程に要する所要時間を算出する。演算処理部4は、この算出したコイル仕上搬送工程の所要時間を加味して、この圧延材に後続する次圧延材を巻取ラインA3による巻取工程へ進める準備に要する巻取工程の予測準備時間を算出する。ついで、演算処理部4は、この算出した巻取工程の予測準備時間をもとに、仕上圧延ラインA2の仕上圧延装置14の入側における次圧延材の予測待機時間を算出する。演算処理部4は、このように算出した予測待機時間を示す電気信号を制御部5に送信する。
ここで、管理データベース9は、各種製品要求に対応して熱間圧延ライン10の圧延材を管理するためのデータベースであり、圧延材のオーダー情報9aを格納する。オーダー情報9aは、要求された鉄鋼製品を製造するために必要な圧延材の緒元および製造条件等である。例えば、オーダー情報9a内の圧延材の緒元として、圧延材の組成、鋼種等の金属種類、強度、スラブ寸法(厚さおよび幅等)、重量、圧延処理後の圧延材寸法(長さ、厚さ、幅)等が挙げられる。また、オーダー情報9a内の製造条件として、例えば、加熱後の圧延材温度、圧延材の搬送速度等の搬送条件、圧延速度および圧下量等の圧延条件、圧延材の巻取長さおよび張力等の巻取条件、コイルを固縛する結束バンドの結束パターン(本数、結束位置、結束方向)等が挙げられる。管理データベース9は、熱間圧延ライン10の入側端に圧延材が投入される都度、この投入された圧延材に対応するオーダー情報9aを演算処理部4および制御部5に提供する。
制御部5は、ミルペーシング制御装置1の機能を実現するためのプログラム等を記憶するメモリおよびこの記憶部内のプログラムを実行するCPU等を用いて実現される。制御部5は、ミルペーシング制御装置1の各構成部、すなわち、入力部2、表示部3、および演算処理部4の各動作を制御し、且つ、これらの各構成部との電気信号の入出力を制御する。一方、制御部5は、管理データベース9から、圧延材毎にオーダー情報9aを取得する。制御部5は、取得したオーダー情報9aに示される製品要求を満足するように、搬送装置11、加熱炉12、粗圧延装置13、仕上圧延装置14、サイドガイド部15、ピンチロール16、および巻取部17を各々制御する。特に、制御部5は、熱間圧延ライン10のミルペーシング制御として、上述した演算処理部4による次圧延材の予測待機時間をもとに、加熱炉12からの次圧延材の抽出タイミングを制御し、この抽出タイミングの制御を通して、仕上圧延装置14への次圧延材の進入タイミングを制御する。
また、制御部5は、搬送装置11、加熱炉12、粗圧延装置13、仕上圧延装置14、サイドガイド部15、ピンチロール16、および巻取部17を各々制御しつつ、これらの各設備から、圧延材の先端通過時間と尾端通過時間とを各々取得する。制御部5は、このように取得した各設備における圧延材の先端通過時間と尾端通過時間とをもとに、熱間圧延ライン10上の各圧延材の位置を把握する。なお、このような設備毎の圧延材の先端通過時間および尾端通過時間の情報は、制御部5から演算処理部4に提供され、上述したコイル仕上搬送工程の所要時間等の演算処理部4による各種算出時間の補正処理に適宜用いられる。
つぎに、図1を参照しつつ、上述したミルペーシング制御装置1の制御対象である熱間圧延ライン10の概略構成およびコイル仕上搬送ラインA4の概略構成について説明する。図1に示すように、熱間圧延ライン10は、加熱・粗圧延ラインA1、仕上圧延ラインA2、および巻取ラインA3を組み合わせて構成される。加熱・粗圧延ラインA1には、圧延材を搬送する搬送装置11と、圧延材を加熱する加熱炉12と、加熱後の圧延材を粗圧延する粗圧延装置13とが設置される。仕上圧延ラインA2には、粗圧延後の圧延材を仕上圧延する仕上圧延装置14が設置される。巻取ラインA3には、仕上圧延後の圧延材をコイル状に巻き取るために必要な各設備、具体的には、サイドガイド部15と、ピンチロール16と、巻取部17とが設置される。
加熱炉12は、加熱・粗圧延ラインA1の入側端部に配置され、圧延対象であるスラブ状の圧延材を受け入れる。加熱炉12は、この受け入れた圧延材を加熱する。その後、この加熱処理済みの圧延材は、加熱炉12から抽出されて、搬送装置11へ投入される。搬送装置11は、複数の搬送ロール等を用いて実現され、加熱炉12から抽出された圧延材を粗圧延装置13へ搬送する。一方、加熱炉12は、この圧延材に後続する次圧延材を受け入れ、この受け入れた次圧延材を加熱する。加熱炉12は、このような圧延材受入工程と圧延材加熱工程と圧延材抽出工程とを圧延材毎に順次繰り返す。ここで、この加熱炉12からの圧延材抽出タイミングは、上述したミルペーシング制御装置1の制御部5によって制御される。
粗圧延装置13は、1スタンド以上の圧延機を用いて実現され、加熱・粗圧延ラインA1の出側端部に配置される。粗圧延装置13は、加熱炉12から抽出後に搬送装置11によって搬送された圧延材を受け入れる。その後、粗圧延装置13は、この受け入れた圧延材を粗圧延する。粗圧延装置13によって粗圧延された圧延材は、仕上圧延ラインA2に送出される。
仕上圧延ラインA3は、加熱炉12によって加熱された圧延材を仕上圧延する仕上圧延工程を行うためのラインであり、上述したように、仕上圧延装置14が配置される。仕上圧延装置14は、複数スタンドの圧延機を用いて実現される。仕上圧延装置14は、粗圧延装置13から送出された圧延材を受け入れ、この受け入れた圧延材を仕上圧延する。この場合、仕上圧延装置14は、粗圧延後の圧延材を帯状に圧延する。仕上圧延装置14によって仕上圧延された帯状の圧延材は、巻取ラインA3に送出される。
巻取ラインA3は、仕上圧延工程後の圧延材を巻き取ってコイルにする巻取工程を行うためのラインであり、上述したように、サイドガイド部15と、ピンチロール16と、巻取部17とが配置される。サイドガイド部15は、仕上圧延装置14から送出された圧延材のセンタリング処理を行う。ピンチロール16は、所定の位置に設置された下側の回転ロールと、圧延材の厚さ方向に移動可能な上側の回転ロールとを備える。ピンチロール16は、これらの回転ロールの間にセンタリング処理後の圧延材を挟持しつつ、この圧延材を巻取部17側へ案内する。巻取部17は、帯状に圧延された圧延材をコイル状に巻き取るための装置である。具体的には、巻取部17は、圧延材を巻き取るためのマンドレル17aを有し、マンドレル17aを回転することによって、ピンチロール16からの圧延材をコイル状に巻き取る。
コイル仕上搬送ラインA4は、上述した巻取ラインA3による圧延材の巻取工程から搬送したコイルを仕上げるコイル仕上搬送工程を行うためのラインである。コイル仕上搬送ラインA4は、図1に示すように、巻取ラインA3の後段のラインであり、このコイル仕上搬送ラインA4において、結束バンドをコイルに掛けてコイルを固縛するコイル結束処理等が行われる。
ここで、熱間圧延ライン10内の先行材21は、図1に示すように、加熱炉12内の後行材25に先行して、粗圧延装置13によって粗圧延され、ついで、仕上圧延装置14によって帯状に仕上圧延される。その後、先行材21は、サイドガイド部15側へ送出される。
サイドガイド部15は、先行材21が巻取ラインA3に侵入する以前に、仕上圧延工程後の先行材21の幅に合わせてガイド(図示せず)を駆動する。その後、サイドガイド部15は、仕上圧延装置14から送出された先行材21を受け入れる(図1の太線矢印参照)。サイドガイド部15は、受け入れた先行材21の通板を阻害することなく、先行材21の先端部分から尾端部分に亘って、先行材21の幅方向の中心位置を一定にする。
ピンチロール16は、先行材21が巻取ラインA3に侵入する以前に、仕上圧延工程後の先行材21の厚さに合わせて上側の回転ロールの位置を調整する(図1の実線両側矢印参照)。その後、ピンチロール16は、サイドガイド部15によってセンタリング処理された先行材21をロール間に挟み込む。ついで、ピンチロール16は、このセンタリング処理後の先行材21をその厚さ方向から挟持しつつ、巻取部17のマンドレル17aへ先行材21を案内する(図1の太線矢印参照)。巻取部17は、マンドレル17aを回転させ、これによって、ピンチロール16から先行材21を受け取るとともに、この先行材21を巻き取ってコイル22にする。
コイル22は、巻取ラインA3から搬出されて、コイル仕上搬送ラインA4に受け入れられる。コイル仕上搬送ラインA4において、コイル22は、図1に示すように、搬送車18に載せられ、コイル結束処理を行う結束装置(図示せず)まで搬送される。その後、コイル22には、この結束装置によって、上述したオーダー情報9aに示される結束パターンの結束バンド(例えば図1に示す結束バンド23)が掛けられる。この結果、コイル22は固縛される。なお、搬送車18は、コイル22の搬送部として機能し、このようにコイル22を搬送した後、図1の太線矢印に示すように、巻取部17の近傍に戻され、コイル22に後続する次コイルを搬送すべく待機する。
一方、上述した先行材21に後続する後行材25は、加熱炉12によって十分に加熱処理された後、加熱炉12から抽出される。この抽出後の後行材25は、図1に示すように、先行材21に追随するように搬送され、粗圧延装置13によって粗圧延される。この場合、先行材21の尾端部分と後行材25の先端部分とが衝突しないように、先行材21と後行材25との圧延材間隔が確保される。粗圧延装置13から送出された後行材25は、仕上圧延装置14の入側において待機し、上述したミルペーシング制御装置1の制御部5によって制御された進入タイミングに、仕上圧延装置14へ進入する。
つぎに、本発明の実施の形態にかかるミルペーシング制御方法について説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかるミルペーシング制御方法の一例を示すフローチャートである。以下、図1,2を参照しつつ、本実施の形態にかかるミルペーシング制御方法を詳細に説明する。上述したミルペーシング制御装置1は、図2に示す各処理を順次実行して、熱間圧延ライン10内の先行材21と後行材25とが衝突しない最小の圧延ピッチを実現可能なミルペーシング制御を行う。
詳細には、図2に示すように、ミルペーシング制御装置1は、まず、熱間圧延ライン10内の先行材21の各工程所要時間を予測する(ステップS101)。このステップS101において、演算処理部4は、まず、先行材21に対応するオーダー情報9aを管理データベース9から取得する。ついで、演算処理部4は、取得したオーダー情報9aに含まれる先行材21の緒元および製造条件等をもとに、先行材21に要する各製造工程の予測所要時間を算出する。例えば、演算処理部4は、各製造工程の予測所要時間として、粗圧延装置13による先行材21の粗圧延工程に要する予測所要時間と、仕上圧延装置14による先行材21の仕上圧延工程に要する予測所要時間と、巻取ラインA3による先行材21の巻取工程に要する予測所要時間と、コイル仕上搬送ラインA4による先行材21のコイル仕上搬送工程に要する予測所要時間とを算出する。
つぎに、ミルペーシング制御装置1は、熱間圧延ライン10において先行材21に後続する後行材25のコイラー巻取準備時間を予測する(ステップS102)。このステップS102において、演算処理部4は、コイル仕上搬送ラインA4によるコイル仕上搬送工程に要する所要時間を加味して、先行材21に後続する後行材25を巻取工程へ進める準備に要する巻取工程の予測準備時間を算出する。なお、この巻取工程の予測準備時間は、後行材25のコイラー巻取準備時間の予測値である。
ここで、演算処理部4は、このコイル仕上搬送工程の所要時間として、コイル22の搬送作業に起因する搬送車18の占有時間と、コイル22に対するコイル結束処理に要する結束所要時間とを用いる。なお、この搬送車18の占有時間と結束所要時間との合計時間は、上述したステップS101において演算処理部4が算出したコイル仕上搬送工程の予測所要時間である。すなわち、演算処理部4は、先行材21に対応するオーダー情報9aに基づいて、この搬送車18の占有時間および結束所要時間の各予測値を算出し、算出した各予測値の合計値をコイル仕上搬送工程の所要時間として加味する。
また、ステップS102において、演算処理部4は、後行材25のためのコイラーS/G位置制御完了時間およびコイラーP/R位置制御完了時間を算出する。コイラーS/G位置制御完了時間は、巻取ラインA3のサイドガイド部15へ仕上圧延工程後の後行材25を進入させるために必要なサイドガイド部15の予測準備時間である。演算処理部4は、後行材25に対応するオーダー情報9aをもとに、後行材25のセンタリング処理の実行に必要なガイド幅変更距離とサイドガイド部15の動作速度とを把握し、このガイド幅変更距離をこの動作速度によって除算する。これによって、演算処理部4は、後行材25に対応するコイラーS/G位置制御完了時間を取得する。一方、コイラーP/R位置制御完了時間は、巻取ラインA3のピンチロール16へ仕上圧延工程後の後行材25を進入させるために必要なピンチロール16の予測準備時間である。演算処理部4は、後行材25に対応するオーダー情報9aをもとに、仕上圧延工程後の後行材25をその厚さ方向に挟持するために必要な回転ロール移動距離とピンチロール16の動作速度とを把握し、この回転ロール移動距離をこの動作速度によって除算する。これによって、演算処理部4は、後行材25に対応するコイラーP/R位置制御完了時間を取得する。
演算処理部4は、上述したように算出した搬送車18の占有時間と、コイル22の結束所要時間と、後行材25のためのコイラーS/G位置制御完了時間およびコイラーP/R位置制御完了時間とを合算する。これによって、演算処理部4は、後行材25について、コイル仕上搬送工程に要する所要時間を加味した巻取工程の予測準備時間を算出する。
その後、ミルペーシング制御装置1は、熱間圧延ライン10における後行材25の各工程開始時間を予測する(ステップS103)。このステップS103において、演算処理部4は、ステップS102の処理によって算出した巻取工程の予測準備時間に対応して、後行材25のコイル仕上搬送工程の開始時間を予測し、この予測したコイル仕上搬送工程の開始時間をもとに、後行材25の仕上圧延工程の開始時間を予測する。すなわち、演算処理部4は、この巻取工程の予測準備時間に対応して、後行材25のコイル仕上搬送工程の予測開始時間を算出し、この算出した予測開始時間から逆算して、後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間を算出する。
具体的には、演算処理部4は、まず、上述したステップS101において予測した先行材21の各工程所要時間をもとに、コイル仕上搬送工程への先行材21の進入完了時間を算出する。なお、この進入完了時間は、先行材21をコイル化したコイル22が巻取ラインA3からコイル仕上搬送ラインA4へ進入完了する予測時間である。つぎに、演算処理部4は、この算出した進入完了時間に対して、ステップS102において予測した後行材25のコイラー巻取準備時間を加算する。これによって、演算処理部4は、後行材25のコイル仕上搬送工程の予測開始時間を算出する。ついで、演算処理部4は、後行材25に対応するオーダー情報9a(例えば後行材25の緒元および製造条件等)をもとに、このコイル仕上搬送工程の予測開始時間から逆算して、巻取ラインA3による後行材25の巻取工程の予測開始時間を算出する。続いて、演算処理部4は、後行材25に対応するオーダー情報9aをもとに、この巻取工程の予測開始時間から逆算して、仕上圧延装置14による後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間を算出する。
つぎに、ミルペーシング制御装置1は、上述した後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間をもとに、仕上圧延工程の入側における後行材25の待機時間を予測する(ステップS104)。このステップS104において、演算処理部4は、ステップS103の処理によって算出した後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間と、仕上圧延装置14への先行材21の進入完了時間とをもとに、仕上圧延装置14の入側における後行材25の予測待機時間を算出する。例えば、演算処理部4は、この後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間から仕上圧延装置14への先行材21の進入完了時間を減算し、これによって、この後行材25の予測待機時間を算出する。
ついで、ミルペーシング制御装置1は、上述した後行材25の予測待機時間に基づいて、仕上圧延工程への後行材25の進入タイミングを制御する(ステップS105)。このステップS105において、制御部5は、ステップS104の処理によって算出された後行材25の予測待機時間を演算処理部4から取得する。制御部5は、この取得した予測待機時間をもとに、加熱炉12からの後行材25の抽出タイミングを制御し、この抽出タイミングの制御を通して、仕上圧延装置14への後行材25の進入タイミングを制御する。この抽出タイミングの制御において、制御部5は、後行材25に対応するオーダー情報9aを管理データベース9から取得し、この取得したオーダー情報9a(例えば後行材25の圧延条件等)と後行材25の予測待機時間とをもとに抽出タイミングを決定する。制御部5は、このように決定した抽出タイミングに加熱炉12から後行材25を抽出し、これによって、後行材25に対する加熱・粗圧延工程の完了時間と後行材25の予測待機時間との差を最小にする。制御部5は、後行材25の加熱・粗圧延工程の完了時間と後行材25の予測待機時間との差が最小になるタイミングに後行材25が仕上圧延装置14へ進入するように、後行材25の進入タイミングを制御する。
その後、ミルペーシング制御装置1は、熱間圧延ライン10に新たな圧延材が投入される都度、図2に示したステップS101〜S105の各処理を繰り返し実行する。これによって、本実施の形態にかかるミルペーシング制御方法が圧延材毎に達成される。
つぎに、図1に示した熱間圧延ライン10内の先行材21(コイル22を含む)および後行材25を例示して、本発明におけるミルペーシング制御を具体的に説明する。図3は、本発明におけるミルペーシング制御を具体的に説明するための図である。
図3において、相関線L1は、仕上圧延工程、巻取工程およびコイル仕上搬送工程と、先行材21の尾端部分の進入完了時間との相関関係を示し、相関線L2は、仕上圧延工程、巻取工程およびコイル仕上搬送工程と、後行材25の先端部分の進入開始時間との相関関係を示している。
相関線L1において、先行材21の尾端部分は、時間t1において仕上圧延工程(具体的には仕上圧延装置14)に進入完了する。ついで、先行材21は、時間t1から時間t2までの期間に仕上圧延工程から巻取工程(具体的にはサイドガイド部15)に進入し、先行材21の尾端部分は、時間t2において巻取工程に進入完了する。その後、先行材21は、時間t2から時間t3までの期間に巻取工程によってコイル状に巻き取られ、この先行材21をコイル化したコイル22は、時間t3においてコイル仕上搬送工程に進入完了する。
なお、上述した時間t1,t2の期間および時間t2,t3の期間は、図2に示したステップS101の処理による先行材21の各工程所要時間に基づいて予測可能である。例えば、時間t1,t2の期間は、先行材21の尾端部分が仕上圧延装置14の入側を通過してから巻取工程のサイドガイド部15の入側を通過するまでの経過時間である。したがって、先行材21の粗圧延工程および仕上圧延工程等の各製造工程の予測所要時間とオーダー情報9aとに基づいて、時間t1,t2の期間は予測可能である。このように、ミルペーシング制御装置1の演算処理部4は、上述した先行材21の各工程所要時間の予測値とオーダー情報9aとをもとに、先行材21の各時間t1〜t3を算出できる。
一方、図3において、コイラー巻取準備時間t7は、後行材25を巻取工程へ進める準備に要する準備時間の予測値である。演算処理部4は、コイル22に起因する搬送車18の占有時間と、コイル22の結束所要時間と、後行材25のためのコイラーS/G位置制御完了時間およびコイラーP/R位置制御完了時間とを合算し、これによって、コイル仕上搬送工程に要する所要時間を加味したコイラー巻取準備時間t7を算出する(図2のステップS102参照)。
ここで、上述したコイル22の結束所要時間は、コイル22に掛ける結束バンドの結束パターンによって決定される時間である。結束パターンは、処理対象のコイル22の寸法(コイル幅、コイル径等)に対応して異なり、コイル22に対応するオーダー情報9aによって予め設定される。なお、コイル22の結束パターンとして、例えば、コイル22に掛ける結束バンドの本数、位置、方向等が挙げられる。このような結束所要時間は、結束パターンが同一であれば略同じ時間であり、例えば、次式(1)によって算出される。
結束所要時間=結束バンドの掛け本数×バンド掛け時間+安全定数α ・・・(1)
なお、式(1)において、バンド掛け時間は、コイル22に対して1本の結束バンドを掛けるために要する所要時間である。また、安全定数αは、コイル22に対して結束バンドを掛ける際に適宜必要な処理の所要時間を示す。例えば、安全定数αとして、コイル22に結束バンドを掛ける際のバンド位置の調整時間、バンド方向の調整時間等が含まれる。このような安全定数αを式(1)に加味することによって、式(1)に基づく結束所要時間は、結束バンドの調整に起因するコイル結束処理の遅延時間等を加味した安全な時間、すなわち、1つコイル22に対するコイル結束処理を確実に完了するために要する時間に補正される。
演算処理部4は、上述したように搬送車18の占有時間と結束所要時間とを加味して算出したコイラー巻取準備時間t7を用いて、後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間を算出する(図2のステップS103参照)。
具体的には、コイラー巻取準備時間t7は、図3の破線矢印に示されるように、コイル仕上搬送工程への先行材21の進入完了時間、すなわち、時間t3に加算される。これによって、図3の相関線L2上の時間t6が算出される。ここで、相関線L2は、仕上圧延工程、巻取工程およびコイル仕上搬送工程と、後行材25の先端部分の進入開始時間との相関関係を示す。すなわち、この相関線L2上の時間t6は、コイル仕上搬送工程への後行材25の進入開始時間であり、後行材25のコイル仕上搬送工程の予測開始時間と見做せる。演算処理部4は、後行材25に対応するオーダー情報9aをもとに、この時間t6から逆算して時間t5を算出し、この時間t5から逆算して時間t4を算出する。なお、時間t6の場合と同様に、時間t5は、後行材25の巻取工程の予測開始時間と見做せ、時間t4は、後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間と見做せる。
ついで、演算処理部4によって、仕上圧延装置14の入側における後行材25の予測待機時間t8が算出される。この予測待機時間t8は、仕上圧延装置14への先行材21の進入完了時間から、後行材25の仕上圧延工程の予測開始時間までの経過時間であり、図3に示すように、時間t1から時間t4を減算することによって算出できる。
その後、本発明では、上述したように算出した予測待機時間t8と後行材25に対する加熱・粗圧延工程の完了時間との差を最小とするようなミルペーシング制御が行われる。具体的には、図1に示したミルペーシング制御装置1の制御部5は、加熱炉12からの後行材15の抽出前に、上述した予測待機時間t8を事前に把握する。ついで、制御部5は、この把握した予測待機時間t8を後行材25の加熱・粗圧延工程の実行時間に充てる。すなわち、制御部5は、この予測待機時間t8が経過する期間に、加熱炉12から後行材25を抽出して後行材25の加熱・粗圧延工程を進め、この後行材25の加熱・粗圧延工程の完了時間と予測待機時間t8との差が最小になるタイミングに、仕上圧延装置14へ後行材25を進入させる。このように、後行材25の工程進行に予測待機時間t8を有効活用して、後行材25の進入タイミングが制御される。
ここで、従来のミルペーシング制御では、先行材21の尾端位置に基づいて、先行材21と後行材25とが衝突しない圧延ピッチが算出される。このような従来のミルペーシング制御では、上述した後行材25のコイラー巻取準備時間t7を算出する際、コイル22に起因する搬送車18の占有時間および結束所要時間が加味されていない。すなわち、従来のミルペーシング制御では、熱間圧延ライン10の巻取工程までしか考慮されない。このため、従来のミルペーシング制御において、仕上圧延装置14の入側における後行材25の待機時間は、先行するコイル22に要するコイル仕上搬送工程の所要時間の大小に関わらず、予測されてしまう。
具体的には、従来のミルペーシング制御では、巻取工程におけるコイラーS/G位置制御完了時間とコイラーP/R位置制御完了時間とに基づいて、図3の相関線L3に示すように、後行材25のコイル仕上搬送工程、巻取工程および仕上圧延工程の各予測開始時間が算出される。この結果、図3に示すように、仕上圧延装置14の入側における後行材25の待機時間は、コイル22に要するコイル仕上搬送工程の所要時間に無関係な時間t9と予測される。この予測された時間t9は、仕上圧延装置14の入側における後行材25の実際の待機時間に合致しないのみならず、コイル仕上搬送工程のコイル受け入れ準備に要する時間に比して極めて短い。このようなミルペーシング制御では、たとえ先行材21と後行材25との衝突を回避する圧延ピッチを達成できたとしても、コイル仕上搬送工程のコイル受け入れ態勢が整う極めて以前に、後行材25を仕上圧延装置14の入側に到達させてしまう。この結果、たとえ巻取工程が後行材25を受け入れ可能な状態であっても、コイル仕上搬送工程のコイル受け入れ準備待ち(例えばコイル結束処理待ち、搬送待ち等)に起因して、仕上圧延装置14の入側に無駄な時間t10、後行材25を待機させなければならない。このような無駄な圧延材の待機は、圧延能率の向上を妨げるのみならず、後行材25の過度な冷却を招来し、これに起因して、後行材25の品質を低下させる。
これに対し、本発明におけるミルペーシング制御では、巻取工程の後段のコイル仕上搬送工程まで考慮して、後行材25のコイラー巻取準備時間t7が算出され、このコイラー巻取準備時間t7を用いて、上述したように後行材25の予測待機時間t8が算出される。このため、巻取工程の受け入れ準備時間のみならず、コイル22に要するコイル仕上搬送工程の所要時間の増減に対応して、後行材25の予測待機時間t8を的確に増減できる。このような予測待機時間t8を後行材25のミルペーシング制御に用いることによって、先行材21と後行材25との衝突を回避しつつ、後行材25の加熱・粗圧延工程の完了時間と予測待機時間t8との差が最小になるように、仕上圧延装置14への後行材25の進入タイミングを制御できる。これによって、巻取工程の圧延材受け入れ態勢とコイル仕上搬送工程のコイル受け入れ態勢との双方が整ったタイミングに、仕上圧延装置14へ後行材25を進入させることができる。この結果、コイル22に要するコイル仕上搬送工程の所要時間が如何に増減変化しようとも、先行材21と後行材25とが衝突しない圧延ピッチを達成できるとともに、仕上圧延装置14の入側における後行材25の待機時間を短くして、待機中の過度な温度低下に起因する後行材25の品質低下を防止しつつ、圧延能率の向上を促進できる。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、巻取工程後の先行材を仕上げるコイル仕上搬送工程の所要時間を加味して、後行材のコイラー巻取準備時間を予測している。また、この予測したコイラー巻取準備時間をもとに、仕上圧延装置の入側における後行材の予測待機時間を算出し、この予測待機時間をもとに、仕上圧延装置への後行材の進入タイミングを制御している。
このため、巻取工程への後行材の受け入れ準備時間のみならず、先行材に要するコイル仕上搬送工程の所要時間の増減に対応して、仕上圧延装置の入側における後行材の予測待機時間を的確に増減できる。このような予測待機時間をミルペーシング制御に用いることによって、先行材と後行材との衝突を防止しつつ、後行材の加熱・粗圧延工程の完了時間と予測待機時間との差が最小になるように、仕上圧延装置への後行材の進入タイミングを制御できる。これによって、巻取工程の圧延材受け入れ態勢とコイル仕上搬送工程のコイル受け入れ態勢との双方が整ったタイミングに、仕上圧延装置へ後行材を進入させることができる。この結果、先行材に要するコイル仕上搬送工程の所要時間が如何に増減変化しようとも、先行材と後行材とが衝突しない圧延ピッチの最小化を達成できるとともに、仕上圧延工程への後行材の進入タイミングを最適化して、仕上圧延工程の入側における後行材の無駄な停滞を防止できることから、待機中の過度な温度低下に起因する後行材の品質低下を防止しつつ、熱間圧延ラインの圧延能率の向上を促進できる。
また、本実施の形態では、上述したコイル仕上搬送工程の所要時間として、コイルを搬送する搬送部の占有時間と、コイル結束処理に要する結束所要時間とを加味している。このため、極厚の圧延材をコイル化する特殊な単一コイラー等、長時間に亘って搬送部を占有する必要がある巻取装置を用いる場合であっても、巻取装置の仕様または台数に対応して、コイル仕上搬送工程の所要時間を的確に算出できる。また、結束バンド本数が多数である等の結束パターンが複雑なコイルに対するコイル仕上搬送工程を行う場合であっても、各種結束パターンに対応して、コイル仕上搬送工程の所要時間を的確に算出できる。これによって、後行材のコイラー巻取準備時間を予測する際に加味するコイル仕上搬送工程の自由度を高めることができ、この結果、本発明によるミルペーシング制御を適用可能な巻取工程およびコイル仕上搬送工程のバリエーションを増やすことができる。
なお、上述した実施の形態では、後行材25のためのコイラー巻取準備時間t7を予測する際に加味するコイル仕上搬送工程の所要時間として、結束所要時間と搬送車18の占有時間とを用いていたが、本発明はこれに限定されるものではない。このコイル仕上搬送工程の所要時間として、結束所要時間および搬送車18の占有時間のうちの少なくとも一つを用いてもよいし、これら以外の時間を用いてもよい。すなわち、コイル仕上げ搬送工程の所要時間として、コイル仕上搬送工程において先行のコイルに要する作業時間等の必要な時間を用いればよい。
また、上述した実施の形態では、結束所要時間および搬送車18の占有時間は、先行材21に対応するオーダー情報9aに基づいて予測していたが、これに限らず、結束所要時間および搬送車18の占有時間は、コイル22に対して実際に費やした実績時間であってもよいし、過去の実績時間をもとに予測結果を補正した補正時間であってもよい。
さらに、上述した実施の形態では、図1に示したように1本の結束バンド23がコイル22に掛けられた場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、コイル22に掛ける結束バンド23の本数、結束方向、結束位置等の結束パターンは、製品要求に従うパターンであればよく、本発明において、この結束パターンの態様は問わない。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、先行材21および後行材25は、鉄鋼材であってもよいし、銅またはアルミニウム等の鉄鋼材以外の金属材であってもよい。また、熱間圧延ライン10内に存在する圧延材は、先行材21および後行材25の2つに限らず、3つ以上であっても本発明による作用効果を享受する。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。