JP2013047316A - ポリ乳酸樹脂組成物、成形品の製造方法、成形品、及び電子機器用ホルダー - Google Patents

ポリ乳酸樹脂組成物、成形品の製造方法、成形品、及び電子機器用ホルダー Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ポリ乳酸を含有しながら、外観不良が抑制され、且つ成形品の量産性が高く、更に耐久性の高い成形品に成形され得るポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸と、ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂とを含有する。前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記ポリ乳酸の割合は4質量%以上10質量%未満の範囲である。前記ポリ乳酸の分散度が4.0以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、前記ポリ乳酸樹脂組成物を用いる成形品の製造方法、前記ポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品、及び前記ポリ乳酸樹脂組成物から形成される電子機器用ホルダーに関する。
近年、地球温暖化の要因として、大気中における炭酸ガス濃度の上昇が指摘され、地球規模での炭酸ガス排出規制の必要性が唱えられている。炭酸ガスが発生する原因としては、生物の呼吸、バクテリアによる腐敗・発酵なども挙げられるが、石油資源に由来する物質の燃焼により発生する炭酸ガスの量は多く、現状の大気中の炭酸ガスによる温度上昇現象は、人間による産業革命以後の石油資源を浪費した経済活動によってもたらされているといっても過言ではない。更に、石油資源は有限な資源であり、将来的に枯渇することが予測される。
一方、近年、カーボンニュートラルな材料として、成長過程で大気中の炭酸ガスを吸収、固定する植物資源の有効活用が注目されている。植物資源を得る際には植物の植生によって大気中の炭酸ガスが吸収され、この植物資源で石油資源を代替することが試みられている。
プラスチック材料の分野においても、従来の石油を基礎原料とする材料から、バイオマスを利用した材料への転換が試みられている。バイオマスを利用したプラスチック材料は、当初は生分解性プラスチックとして注目を集めていたが、最近ではカーボンニュートラルな植物系プラスチックとしての価値が見直されており、一部で実用化されている。代表的な植物系プラスチックの一種として、ポリ乳酸樹脂が挙げられる。ポリ乳酸樹脂組成物を射出成形することにより、電子機器用ホルダー、電子機器の内部シャーシ部品、電子機器用筐体、電子機器用内部部品などの、種々の成形品を得ることが期待される。
例えば特許文献1には、ポリ乳酸樹脂を5〜75質量%、ABS樹脂を20〜60質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合体を2〜10質量%、タルクを3〜25質量%の割合で含有する組成物が開示されている。
しかしながら、従来前記のような分野で広く使用されているABS樹脂などの熱可塑性樹脂をポリ乳酸で代替することを考えると、解決しなければならない問題がある。すなわち、ポリ乳酸樹脂組成物を成形する際には、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を成形する場合と比べて、硬化収縮が大きくなったり金型に汚れの付着が生じて連続成形が困難になったりするなどして成形性が悪化しやすくなり、また成形品にはヒケやムラなどの外観不良が生じやすくなってしまう。更に、成形品の耐久性が低くなるという問題もある。これらの事実はポリ乳酸の普及の妨げとなっている。
特開2011−6639号公報
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、ポリ乳酸を含有しながら、成形性が良好であり、成形品の外観不良が抑制され、更に成形品の耐久性が良好になるポリ乳酸樹脂組成物、前記ポリ乳酸樹脂組成物から外観が良好であり且つ耐久性の高い成形品を量産性よく形成する成形品の製造方法、並びに前記ポリ乳酸樹脂組成物から形成される外観が良好で且つ耐久性の高い成形品及び電子機器用ホルダーを提供することを目的とする。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸と、ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂とを含有し、前記ポリ乳酸の割合が4質量%以上10質量%未満の範囲であり、前記ポリ乳酸の分散度が4.0以下である。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記ポリ乳酸の重量平均分子量が7.0万以上であることが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記ポリ乳酸の割合が4〜7質量%の範囲であることが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂がABS樹脂を含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記ABS樹脂が、使用済みの製品から再生されたABS樹脂を含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記ABS樹脂が、難燃ABS樹脂を含有することも好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリメタクリル酸メチル樹脂を更に含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記ABS樹脂の平均粒径が0.3μm以下であることが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記ABS樹脂のISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が15〜35g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が10〜30KJ/mであることが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を更に含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂を含有することも好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂がポリメチルメタクリレート樹脂を含有することも好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含有することも好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレン樹脂を含有することも好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート及び有機過酸化物を更に含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体を更に含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、カルボジイミド化合物を更に含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、イソシアネート基を有さないカルボジイミド化合物を更に含有することも好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、コアシェルゴムを更に含有することが好ましい。
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物からは、60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成されることが好ましい。
本発明に係る成形品の製造方法では、前記ポリ乳酸樹脂組成物を準備し、前記ポリ乳酸樹脂組成物を成形する。
本発明に係る成形品は、前記ポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより形成される。
本発明に係る成形品は、60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上であることが好ましい。
本発明に係る電子機器用ホルダーは、前記ABS樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより形成される。
本発明によれば、ポリ乳酸を含有しながら、成形性が良好であり、成形品の外観不良が抑制され、更に成形品の耐久性が良好になるポリ乳酸樹脂組成物、前記ポリ乳酸樹脂組成物から外観が良好で耐久性の高い成形品を成形性よく形成する成形品の製造方法、並びに前記ポリ乳酸樹脂組成物から形成される外観が良好で耐久性の高い成形品及び電子機器用ホルダーが得られる。
本発明の一実施形態における電子機器用ホルダーの外観を示す斜視図である。
[ポリ乳酸樹脂組成物中の成分]
本実施形態によるポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸及びポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂を含有する。更に、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸の割合は4質量%以上10質量%未満の範囲、好ましくは4〜7質量%の範囲であり、且つ、このポリ乳酸の分散度が4.0以下である。このポリ乳酸の重量平均分子量は7.0万以上であることが好ましい。
以下、本実施形態によるポリ乳酸樹脂組成物が含有し得る成分について更に詳しく説明する。
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸樹脂組成物が含有するポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)は7.0万以上であることが好ましく、この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の流動性と成形品の耐久性が射出成形材料として更に適したものになる。このポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は4.0以下である。更に、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸の含有量は4質量%以上10質量%未満の範囲であり、好ましくは4〜7質量%の範囲である。
このような条件を満たすことで、ポリ乳酸に適度な流動性が付与されてポリ乳酸樹脂組成物の良好な成形性が確保されると共に、成形時にポリ乳酸からガスが発生しにくくなる。これにより、成形品にヒケやムラなどが生じにくくなり、その外観が良好になる。更に、成形品が加熱されても白化などの外観不良が生じにくくなる。更に、金型成形時に金型汚れが生じにくくなり、このためポリ乳酸樹脂組成物の連続成形が可能となって成形品の量産性が向上する。更に、ポリ乳酸が使用されているにもかかわらず、成形品の耐久性が低下しにくくなる。尚、本発明は、耐久性向上の観点からポリ乳酸樹脂組成物が加水分解防止剤を含有することを妨げるものではないが、たとえ加水分解防止剤が使用されなくても、前記のとおり成形品の耐久性が低下しにくくなる。このため加水分解防止剤を使用せず或いは使用量を抑制することにより製造コストを低減しつつ、良好な耐久性を有する成形品を得ることも可能となる。
更に、ポリ乳酸が使用されることでポリ乳酸樹脂組成物中のABS樹脂の含有量が低減し、それに伴ってABS樹脂中のブタジエン単位における不飽和二重結合の割合も低減する。このため、成形品の耐光性が向上することも期待される。
更に、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂をポリ乳酸で代替するという観点からすると、本実施形態では、ポリ乳酸樹脂組成物を成形する際の成形収縮率と、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を成形する際の成形収縮率との差が小さくなる。このため、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を成形する場合と同様の構成を有する成形金型を用いて、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を成形する場合と同様の条件でポリ乳酸樹脂組成物を成形することが可能となる。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、7.0万〜50万の範囲であれば更に好ましく、7.0万〜30万の範囲であれば更に好ましく、7.0万〜10万の範囲であれば特に好ましい。更に、ポリ乳酸の分散度(Mw/Mn)が、4以下であることが好ましく、3.5以下であれば更に好ましく、3.0以下であれば更に好ましく、2.5以下であれば更に好ましい。
ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶媒(移動相)としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定結果を、標準ポリスチレンを使用した検量線により換算して算出される。ポリ乳酸の重量平均分子量及び数平均分子量の測定にあたっては、ポリ乳酸0.036gをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)9mLに48時間以上かけて溶解させ、これにより得られる溶液をフィルターで濾過することで、測定用のサンプルが得られる。このサンプルを東ソー株式会社製の高速GPC装置(型番HLC−8220)で測定すると、その測定結果に基づいて、ポリ乳酸の重量平均分子量、数平均分子量が算出される。
ポリ乳酸としては、乳酸の単独重合体と、乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との共重合体とが挙げられる。ポリ乳酸は乳酸がポリマー化することで得られる。乳酸は、例えばトウモロコシなどの植物に由来するデンプンが発酵することで得られる。
乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、乳酸の二量体であるラクトン等が挙げられる。
乳酸と共重合可能な乳酸以外のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸は、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸は、L−乳酸の重合体であるポリ−L−乳酸と、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸との少なくとも一方を含んでいることが好ましい。特にポリ乳酸がステレオコンプレックス型ポリ乳酸のみからなり、或いはポリ−L−乳酸とステレオコンプレックス型ポリ乳酸のみからなる場合には、外観並びに耐水性、耐衝撃性等の特性が非常に優れた成形品が得られる。
ポリ乳酸は、実質的に下記式[化1]で表されるL−乳酸単位及びD−乳酸単位からなる。
Figure 2013047316
ポリ乳酸は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%のL−乳酸単位から構成される。L−乳酸単位の割合が高いと、成形品の耐久性が更に向上する。L−乳酸以外の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の単位が挙げられる。
ポリ乳酸は、乳酸以外の単位を含んでいてもよい。乳酸以外の単位としては、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位、及びこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドを付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ポリ乳酸は、公知の方法で製造される。例えば、L−またはD−ラクチドが金属重合触媒の存在下、加熱されて開環重合することで製造される。ポリ乳酸は、金属重合触媒を含有する低分子量のポリ乳酸が結晶化した後、減圧下または不活性ガス気流下で加熱されて固相重合することによっても製造される。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸が脱水縮合する直接重合法によっても、ポリ乳酸が製造される。
重合反応は、従来公知の反応容器を用いて実施可能である。反応容器として、例えばヘリカルリボン翼等の高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器が単独で使用され、または複数が併用される。反応容器は回分式、連続式、半回分式のいずれでもよいし、これらの方式が組み合わされていてもよい。
重合開始剤としてアルコールが用いられてもよい。このアルコールは、ポリ乳酸の重合を阻害せず且つ不揮発性であることが好ましい。アルコールとして、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどが用いられることが好ましい。
固相重合法では、比較的低分子量の乳酸ポリエステルが、プレポリマーとして使用される。プレポリマーは例えば前述したような開環重合法や乳酸の直接重合法によって得られる。プレポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲に保持されることで予め結晶化されることが、融着防止の面から好ましい。この結晶化されているプレポリマーは固定された縦型或いは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中に充填され、プレポリマーのガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇温させても何ら問題はない。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性の向上のために、ポリ乳酸にさらにケイ酸カルシウムが添加されることが好ましい。ケイ酸カルシウムは六方晶結晶を含むことが好ましく、ケイ酸カルシウムの粒子径は小さい方が好ましい。例えば、ケイ酸カルシウムの平均一次粒子径が0.2〜0.05μmの範囲であるとケイ酸カルシウムがポリ乳酸樹脂組成物に適度に分散して、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性が良好になる。また、添加量はポリ乳酸樹脂組成物を基準として、0.01〜1質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましいのは0.05〜0.5質量%の範囲である。多すぎる場合には成形品の外観が悪くなりやすく、少なければ特段の効果を示さない。
ポリ乳酸のメルトフローレート(190℃ 2.16kg)は1〜16g/10分の範囲であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性(流動性)が特に向上する。
(ABS樹脂、PC樹脂、PMMA樹脂、PP樹脂、及びLDPE樹脂)
ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂)、PMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、LDPE樹脂(低密度ポリエチレン樹脂)のうち、少なくとも一種を含有することが好ましい。
(1)ABS樹脂
ポリ乳酸樹脂組成物がABS樹脂を含有することで、成形品の耐久性、寸法安定性、耐衝撃性、耐熱性、並びにポリ乳酸樹脂組成物の成形時の成形性が高くなる。また、ABS樹脂をポリ乳酸で代替するという観点からは、ポリ乳酸樹脂組成物中のABS樹脂の含有量が低減し、それに伴ってABS樹脂中のブタジエン単位における不飽和二重結合の割合も低減する。このため、成形品の耐光性が向上することも期待される。
ABS樹脂としては、市販品が適宜使用される。ABS樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のABS樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物全体に対して20〜97%の範囲であることが好ましい。ABS樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸及びABS樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合にはポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類に応じて設定される。例えばポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類によっては、ABS樹脂の含有量が80〜95質量%の範囲であることも好ましく、20〜80質量%の範囲であることも好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物が熱可塑性樹脂としてポリ乳酸とABS樹脂のみを含有してもよい。
このABS樹脂として、特に乳化剤、凝固剤が使用されることなく連続塊重合法(バルク重合)により合成された樹脂が使用されることが好ましい。この方法で合成されるABS樹脂は、合成時の添加成分が少なく、このためポリ乳酸樹脂の加水分解が引き起こされにくくなる。このようなABS樹脂としては、日本エイアンドエル株式会社製のサンタックAT−05,サンタックAT−08等が挙げられる。
ABS樹脂として、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたABS樹脂が用いられてもよい。使用済みの製品としては各種家電製品が挙げられる。ABS樹脂は、家電製品で多用されおり、リサイクル原料として好適である。使用済みの製品から再生されたABS樹脂が用いられる場合には、成形品の耐衝撃性向上のために、後述のようにポリ乳酸樹脂組成物がコアシェルゴムを含有することが好ましい。
また、ABS樹脂が、難燃剤を含有する難燃ABS樹脂を含有してもよい。この場合、成形品の難燃性が向上する。難燃ABS樹脂に含有される難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、酸化アンチモン、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
射出成形により得られる成形品の耐衝撃性等の機械的特性を充分に向上する観点からは、ABS樹脂を構成するスチレン単位の割合は72質量%以下であることが好ましく、更に70質量%以下であることが好ましく、特に62質量%以下であることが好ましい。更にスチレン単位の割合は40質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、特に58質量%以上であることが好ましい。すなわちスチレン単位の割合は40〜72質量%の範囲が好ましく、55〜70質量%の範囲であればより好ましく、58〜62質量%の範囲であれば更に好ましい。
射出成形により得られる成形品のウエルド及びフローマークを充分に抑制する観点からは、ABS樹脂を構成するブタジエン単位の割合は16〜23質量%の範囲であることが好ましく、16〜19質量%の範囲であれば更に好ましい。
ABS樹脂中のアクリロニトリル単位の割合は、スチレン単位及びブタジエン単位の割合に依存するが、1.5〜30質量%の範囲であることが好ましく、15〜30質量%の範囲であれば更に好ましい。特にABS樹脂が実質的にアクリロニトリル単位、ブタジエン単位及びスチレン単位のみから構成される場合にはアクリロニトリル単位の割合は15〜30質量%の範囲であることが好ましい。
ABS樹脂の構成単位には、アクリロニトリル単位、ブタジエン単位及びスチレン単位以外の構成単位が含まれていてもよい。例えばABS樹脂の構成単位には、メチルメタクリレート単位が含まれていてもよい。
ABS樹脂中のアクリロニトリル単位、スチレン単位、ブタジエン単位、メチルメタクリレート単位等の構成単位の割合は、ABS樹脂のNMR測定結果、並びにABS樹脂のグラジエント・ポリマー溶出クロマトグラフィ(GPEC:gradient polymer elution chromatography)による測定結果に基づいて導出される。
ABS樹脂の粒径は特に制限されないが、成形品の外観を長期に亘って良好に維持する観点からは、粒径が小さいほど好ましい。ABS樹脂の粒径が小さいと、成形品が高温下に長期間曝されても成形品に白化が生じにくくなる。このような白化の抑制は、ABS樹脂の粒径が小さいことで成形品中の成分が微細に分散すること、並びにスクイーズ効果が低減することによると、考えられる。成形体の白化が充分に抑制されるためにはABS樹脂の平均粒径は0.4μm以下であることが好ましく、更に0.35μm以下であることが好ましく、特に0.3μm以下であることが好ましい。この平均粒径の下限は特に制限されないが、0.1μm以上であることが好ましい。この平均粒径は、ABS樹脂の粒子を染色した上でその粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影し、撮影された画像を画像解析することで測定される個数基準の算術平均粒径である。この平均粒径の測定にあたり、粒子の粒径は粒子の投影面積を円に換算した面積相当径とする。
ABS樹脂のISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)は15〜35g/10分の範囲であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性が更に向上する。また、ABS樹脂のISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が10〜30KJ/mであることが好ましい。これにより、成形品の耐衝撃性等の機械的特性が更に向上する。
(2)PC樹脂
ポリ乳酸樹脂組成物がポリカーボネート樹脂を含有する場合、成形品の耐熱性及び耐衝撃性が向上する。
ポリカーボネート樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物全体に対して20〜97%の範囲であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸及びポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合にはポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類に応じて設定される。例えばポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類によっては、ポリカーボネート樹脂の含有量が80〜95質量%の範囲であることも好ましく、20〜80質量%の範囲であることも好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物が熱可塑性樹脂としてポリ乳酸とポリカーボネート樹脂のみを含有してもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂がABS樹脂を含有し、更にポリカーボネート樹脂も含有することも好ましい。この場合、成形品の耐熱性が更に向上する。この場合のポリ乳酸樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物中のABS樹脂とポリカーボネート樹脂との質量比が99:1〜30:70の範囲であることが好ましく、60:40〜40:60の範囲であれば更に好ましく、55:45〜45:55の範囲であれば特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールとカーボネート前駆体とが反応することで得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法などが挙げられる。
二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが、挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも成形品の靭性を向上させることができる点でビスフェノールA(BPA)が特に好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステル、ハロホルメートなどが挙げられる。具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
二価フェノールとカーボネート前駆体から界面重合法によって芳香族ポリカーボネート樹脂が製造される際には、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止のための酸化防止剤などが使用されてもよい。
ポリカーボネート樹脂として、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにこの二官能性カルボン酸及び二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂などが用いられてもよい。また、ポリカーボネート樹脂として2種以上のポリカーボネート樹脂が用いられてもよい。
分岐ポリカーボネート樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物の溶融張力が増加し、それにより押出成形、発泡成形、ブロー成形等における成形加工性が改善する。その結果、寸法精度により優れる成形品が得られる。分岐ポリカーボネート樹脂を得るために使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。その他の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、並びにトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、及びこれらの酸クロライド等が例示される。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、及び1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
分岐ポリカーボネート樹脂における多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位の割合は、二価フェノールから誘導される構成単位とこの多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、0.03〜1モル%、好ましくは0.07〜0.7モル%、特に好ましくは0.1〜0.4モル%である。また、この分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、この分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
一方、脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましく、その具体例としては、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールが好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。さらに、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
ポリカーボネート樹脂として、二価フェノール成分が異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等が2種以上用いられてもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等が2種以上用いられてもよい。
ポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献及び特許公報などで良く知られている方法である。
ポリカーボネート樹脂として、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネートが用いられてもよい。使用済みの製品としては防音壁、ガラス窓、透光屋根材、自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂などを含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体などは下記粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため好ましい態様として挙げられる。尚、上記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料である。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1×10〜5×10、より好ましくは1.4×10〜3×10、更に好ましくは1.8×10〜2.5×10である。粘度平均分子量が1.8×10〜2.5×10の範囲においては、ポリ乳酸樹脂組成物が特に良好な流動性と成形品の耐衝撃性との両立に優れる。最も好適には、粘度平均分子量が1.9×10〜2.4×10の範囲である。尚、この粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂全体が満足すればよく、分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂の混合物がこの範囲を満足してもよい。
粘度平均分子量の算出にあたっては、まず次式(a)にて算出される比粘度を、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解して調製される試料溶液についてのオストワルド粘度計による測定結果から求める。次に得られた比粘度から、次式(b)〜(d)を用いて粘度平均分子量Mを求める。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t …(a)
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度) …(b)
[η]=1.23×10−40.83 …(c)
c=0.7 …(d)
(3)PMMA樹脂
ポリ乳酸樹脂組成物がポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)を含有すると、成形品の寸法安定性、耐衝撃性、耐熱性が向上する。また、成形品の透明性が高くなると共に、成形品の耐候性が向上する。
PMMA樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のPMMA樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物全体に対して20〜97%の範囲であることが好ましい。PMMA樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸及びPMMA樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合にはポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類に応じて設定される。例えばポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類によっては、PMMA樹脂の含有量が80〜95質量%の範囲であることも好ましく、20〜80質量%の範囲であることも好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物が熱可塑性樹脂としてポリ乳酸とPMMA樹脂のみを含有してもよい。
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)の一部又は全部は、ポリメタクリル酸メチル樹脂エラストマー(PMMA樹脂エラストマー)であってもよい。
特にABS樹脂とPMMA樹脂とが併用される場合、PMMA樹脂の、JIS K7111に規定されるノッチ付シャルピー衝撃値は、5kJ/m以上であることが好ましい。このノッチ付シャルピー衝撃値は特に5.3kJ/m以上であることが好ましい。ノッチ付シャルピー衝撃値の上限は特に制限されない。
PMMA樹脂の、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(230℃ 3.8kg)が1.5g/10分以上であることが好ましい。さらにこのメルトフローレートが5g/10分以上であることが好ましい。このメルトフローレートが1.5g/10分以上であるとポリ乳酸樹脂組成物中でPMMA樹脂のポリ乳酸への相溶性が高まり、これにより成形品の外観が更に向上すると共に、耐衝撃性が更に向上する。
特にABS樹脂とPMMA樹脂とが併用される場合、PMMA樹脂の重量平均分子量は6万〜8万の範囲であることが好ましく、更に6万5千〜7万5千の範囲であることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中でPMMA樹脂のポリ乳酸への相溶性が高まり、これにより成形品の外観が更に向上すると共に、耐衝撃性が更に向上する。この重量平均分子量は、溶媒(移動相)としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
PMMA樹脂の具体例としては、住友化学株式会社製の商品名スミペックスHT03Y、スミペックスHT01X等が挙げられる。
また、特にABS樹脂とPMMA樹脂とが併用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のPMMA樹脂の含有量は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であれば更に好ましい。5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であればより好ましく、2質量%以下であれば更に好ましい。特にポリ乳酸樹脂組成物中のPMMA樹脂の含有量は1〜5質量%の範囲であることが好ましい。この含有量が1質量%以上であると成形品の寸法安定性、耐衝撃性、耐熱性が特に向上する。またこの含有量が5質量%以下であるとポリ乳酸樹脂組成物の適度な流動性が維持されることでポリ乳酸樹脂組成物の高い成形性と成形品の良好な外観が維持され、更に成形品の耐久性が低下しにくくなる。このPMMA樹脂の含有量は更に1〜2質量%の範囲であることが好ましい。
(4)PP樹脂
ポリ乳酸樹脂組成物がポリプロピレン樹脂を含有すると、成形品の比重が低くなり、成形品の軽量化が期待できる。
ポリプロピレン樹脂としては、成形材料として使用される適宜のものが使用され得る。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体のほか、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体が使用されてもよい。
ポリプロピレン樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物全体に対して20〜97%の範囲であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸及びポリプロピレン樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合にはポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類に応じて設定される。例えばポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類によっては、ポリプロピレン樹脂の含有量が80〜95質量%の範囲であることも好ましく、20〜80質量%の範囲であることも好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物が熱可塑性樹脂としてポリ乳酸とポリプロピレン樹脂のみを含有してもよい。
(5)LDPE樹脂
ポリ乳酸樹脂組成物が低密度ポリエチレン樹脂を含有すると、成形品の電気的絶縁特性が良好となる。
低密度ポリエチレン樹脂としては、成形材料として使用される適宜のものが使用され得る。
低密度ポリエチレン樹脂が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中の低密度ポリエチレン樹脂の含有量は適宜設定されるが、ポリ乳酸樹脂組成物全体に対して20〜97%の範囲であることが好ましい。低密度ポリエチレン樹脂の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物がポリ乳酸及び低密度ポリエチレン樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有する場合にはポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類に応じて設定される。例えばポリ乳酸樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の種類によっては、低密度ポリエチレン樹脂の含有量が80〜95質量%の範囲であることも好ましく、20〜80質量%の範囲であることも好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物が熱可塑性樹脂としてポリ乳酸と低密度ポリエチレン樹脂のみを含有してもよい。
(カルボジイミド化合物)
ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物を含有することも好ましい。この場合、これらの化合物が、ポリ乳酸のカルボキシル基末端の一部または全部と反応して封鎖する働きを発揮し、これにより成形品の高温高湿環境下での耐久性が更に向上する。
ポリカルボジイミド化合物としては、例えばポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。モノカルボジイミド化合物としては、例えばN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
このようなカルボジイミド化合物としては、市販品が適宜使用され得る。カルボジイミド化合物の具体例としては、日清紡ケミカル株式会社製の商品名カルボジライトLA−1(ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド))、カルボジライトHMV−8CA,カルボジライトHMV−15CA等が挙げられる。
カルボジイミド化合物は、イソシアネート基を有しないことが好ましい。カルボジイミド化合物がイソシアネート基を有しないとは、カルボジイミド化合物中にイソシアネート基を有する化合物が混入していないことを意味する。すなわち、カルボジイミド化合物中には、イソシアネート基を有する化合物が混入していることがあるが、このようなイソシアネート基を有する化合物がポリ乳酸か樹脂組成物に含まれないことが好ましい。この場合、成形品の耐久性が更に向上する。これは、イソシアネート基の反応性が、カルボジイミド基と比べて高すぎるためであると考えられる。すなわち、イソシアネート基は成形品中で速やかに反応して消費されてしまい、このためポリ乳酸のカルボキシル基末端を封鎖する働きが速やかに失われてしまうものと考えられる。
イソシアネート基を有しないポリカルボジイミド化合物としては、日清紡ケミカル株式会社製の商品名カルボジライトHMV−15CAなどが、挙げられる。
カルボジイミド化合物が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中のカルボジイミド化合物の含有量は0.1〜5質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が0.1質量%以上であることで成形品の耐久性が更に向上し、5質量%以下であることで成形品の高い機械的強度が維持される。カルボジイミド化合物の含有量は更に3質量%以下であることが好ましい。カルボジイミド化合物の含有量が0.1〜1.0質量%の範囲であれば特に好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲であれば更に好ましい。
カルボジイミド化合物が使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物の調製時にポリ乳酸とカルボジイミド化合物のみが予め混合されることでマスターバッチが調製されると、カルボジイミド化合物が使用されることによる前記作用が特に効果的に発揮される。
(メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体)
ポリ乳酸樹脂組成物は、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体を含有することも好ましい。この場合、成形品の耐衝撃性等の機械的特性が更に改善される。
メタクリル酸アルキルとしては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの重合モル比は40:60〜95:5の範囲であることが好ましい。メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体の重量平均分子量は100万〜500万の範囲であることが好ましい。この重量平均分子量は、溶媒(移動相)としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
このようなメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体の具体例としては、三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンP530が挙げられる。
メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体が使用される場合、熱可塑性樹脂組成物中のメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体の含有量は0.5質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が1.0質量%以上、3.0質量%以下であることで、成形品の耐衝撃性が特に向上する。その理由は、前記範囲において熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が充分に上昇し、これにより成形品の微細構造中に不定形な海島構造が形成され、これが成形品の耐衝撃性の向上をもたらすためと、考えられる。
(ポリブチレンアジペートテレフタレート)
ポリ乳酸樹脂組成物は、更にポリブチレンアジペートテレフタレートを含有することが好ましい。ポリブチレンアジペートテレフタレートは1,4−ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸の共重合体であり、その具体例としてはBASF社製の商品名エコフレックスが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物がポリブチレンアジペートテレフタレートを含有すると、ポリ乳酸樹脂組成物が成形される際に、ポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとが反応することでポリ乳酸がポリブチレンアジペートテレフタレートによって架橋される。これにより成形品中の組織が強固となり、その結果、成形品の耐久性や機械的特性が更に向上する。
ポリブチレンアジペートテレフタレートが使用される場合、そのポリ乳酸樹脂組成物中の含有量は0.1〜10質量%であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物がポリブチレンアジペートテレフタレートを含有する場合には、更にポリ乳酸樹脂組成物が有機過酸化物を含有することが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物が成形される際に有機過酸化物からフリーラジカルが生成することで、ポリ乳酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとのラジカル反応が促進され、成形品の耐久性や機械的特性が更に向上する。有機過酸化物としては、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂株式会社製の商品名パーヘキサ25B)が使用される。ポリ乳酸樹脂組成物中の有機過酸化物の含有量は特に制限されないが、例えば0.01〜1質量%が好ましい。
(コアシェルゴム)
ポリ乳酸樹脂組成物がコアシェルゴムを含有することも好ましい。この場合、成形品の耐衝撃性等の機械的特性が更に向上する。コアシェルゴムは多層構造の重合体であって、重合体で構成される最内層(コア層)と、コア層を覆い且つコア層とは異種の重合体から構成される1以上の層(シェル層)とを有する。コアシェルゴムとしては、例えばゴム状重合体の存在下で、スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体などの単量体が重合してなる樹脂が挙げられる。
コアシェルゴムが用いられる場合の、そのポリ乳酸樹脂組成物全体に対する含有量に制限はないが、成形品の耐久性向上の観点からは、この含有量は特に1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であれば更に好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物の流動性を向上してポリ乳酸樹脂組成物の成形性、加工性、取り扱い性等を向上する観点からは、コアシェルゴムの含有量は12質量%以下であることが好ましい。
コアシェルゴムについて、更に詳細に説明する。
コアシェルゴムとして、Siを含有するコアシェルゴムが挙げられる。Siを含有するコアシェルゴムが使用される場合、成形品の難燃性が更に向上する。Siを含有するコアシェルゴムには、コア層がSiを含む重合体から構成されているポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体とエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのうちの、少なくとも一方が含まれていることが好ましく、特にポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が含まれていることが好ましい。
Siを含有するコアシェルゴムとして、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムなどが挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物がポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含有すると、成形品の難燃性と耐衝撃性とが特に向上する。ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、次の(X)〜(Z)成分から得られる;
(X)ポリオルガノシロキサン粒子;
(Y)第1のビニル系単量体;
(Z)第2のビニル系単量体。
(Y)成分は、下記(Y−1)成分のみからなり、或いは下記(Y−1)成分及び(Y−2)成分からなると共にこれらの成分を下記の割合で含む;
(Y−1)多官能性単量体100〜50質量%;
(Y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50質量%。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)成分40〜90質量部の存在下で、(Y)成分0.5〜10質量部を重合し、更に、(Z)成分5〜50質量部を重合して得られる。前記の各成分の量は、(X)〜(Z)成分の合計量を100質量部とした場合の値である。
(X)成分は、トルエン不溶分量((X)成分0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量)が95質量%以下、さらには50質量%以下、特には20質量%以下であることが、成形品の難燃性、耐衝撃性の向上のために好ましい。
(X)成分の具体例としては、ポリジメチルシロキサン粒子、ポリメチルフェニルシロキサン粒子、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体粒子などが挙げられる。これらのうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
(X)成分の一部又は全部は、ポリオルガノシロキサン以外の重合体を含む変性ポリオルガノシロキサンの粒子であってもよい。ポリオルガノシロキサン以外の重合体の具体例としては、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体などが挙げられる。(X)成分中のポリオルガノシロキサン以外の重合体の含有量は低い方が好ましく、特に含有量が5質量%以下であることが好ましい。特に(X)成分が実質的にポリオルガノシロキサンのみからなる粒子であることが、成形品の難燃性向上のために好ましい。
(X)成分の平均粒子径は特に制限されないが、光散乱法または電子顕微鏡観察から求められる数平均粒子径が0.008〜0.6μmであることが好ましく、0.01〜0.2μmであれば更に好ましく、0.01〜0.15μmであれば特に好ましい。この数平均粒子径が小さすぎる場合は(X)成分の生産が困難であり、逆に大きすぎると成形品の難燃性を充分に向上することができないおそれがある。成形品の外観の向上のためには、(X)成分の粒子径分布の変動係数(100×標準偏差/数平均粒子径(%))が10〜100%の範囲であることが好ましく、20〜60%であれば更に好ましい。
(X)成分の製造にあたってのモノマーの組み合わせとしては、オルガノシロキサンの単独重合;2官能シラン化合物の単独重合;オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との共重合;オルガノシロキサンとビニル系重合性基含有シラン化合物との共重合;2官能シラン化合物とビニル系重合性基含有シラン化合物との共重合;オルガノシロキサン、2官能シラン化合物及びビニル系重合性基含有シラン化合物、或いは更にこれらの化合物と3官能以上のシラン化合物の共重合等が、挙げられる。
前記各化合物のうち、オルガノシロキサン又は2官能シラン化合物は、ポリオルガノシロキサン鎖の主骨格を構成する成分である。
オルガノシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(a)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(b)、デカメチルシクロペンタシロキサン(c)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(d)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(e)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(f)等が挙げられる。
2官能シラン化合物としては、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
特に経済性及び成形品の難燃性向上の観点から、(X)成分の製造に使用されるモノマー中の、(b)成分、(a)〜(e)成分の混合物、又は(a)〜(f)成分の混合物の割合が、70〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。残余の部分は、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が0〜30質量%を占めることが好ましく、0〜20質量%を占めることが更に好ましい。
ビニル系重合性基含有シラン化合物は、オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、3官能以上のシラン化合物などと共重合し、これにより共重合体の側鎖または末端にビニル系重合性基が導入される。このビニル系重合性基は、後述する(Y)成分または(Z)成分から形成されるビニル系(共)重合体と化学結合する際のグラフト活性点として作用する。更にこのビニル系重合性基含有シラン化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下でグラフト活性点間をラジカル反応により架橋結合させ得る。すなわちビニル系重合性基含有シラン化合物は架橋剤としても機能し得る。ラジカル重合開始剤として、後述のグラフト重合において使用され得るものと同じものが使用できる。尚、ビニル系重合性基含有シラン化合物が架橋剤として機能する場合も、その一部はグラフト活性点として残るため、グラフトは可能である。
ビニル系重合性基含有シラン化合物の具体例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシランなどのビニルフェニル基含有シラン化合物;ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有シラン化合物;メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シラン化合物などが、挙げられる。
これらのなかでは(メタ)アクリロイルオキシ基含有シラン化合物、ビニル基含有シラン化合物、メルカプト基含有シラン化合物から選択される少なくとも一種を用いることが、経済性の点から好ましい。尚、前記ビニル系重合性基含有シラン化合物がトリアルコキシシラン型である場合には、次に示す3官能以上のシラン化合物の役割も有する。
3官能以上のシラン化合物は、前記オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物などと共重合することにより、ポリオルガノシロキサンに架橋構造を導入して、(X)成分にゴム弾性を付与し得る。すなわち3官能以上のシラン化合物はポリオルガノシロキサンの架橋剤として用いられる。
3官能以上のシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどの4官能、3官能のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。このうちテトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランの少なくとも一方が用いられることが、架橋効率の高さの点から好ましい。
オルガノシロキサン、2官能シラン化合物、ビニル系重合性基含有シラン化合物、および3官能以上のシラン化合物の重合時の使用割合は適宜決定される。特にオルガノシロキサンと2官能シラン化合物との合計量の割合が50〜99.9質量%であることが好ましく、60〜99.5質量%であれば更に好ましい。尚、オルガノシロキサンと2官能シラン化合物との割合は、重量比で100/0〜0/100であることが好ましく、100/0〜70/30であれば更に好ましい。ビニル系重合性基含有シラン化合物の割合は0〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であれば更に好ましい。3官能以上のシラン化合物の割合は0〜50質量%であることが好ましく、0〜39質量%であれば更に好ましい。ビニル系重合性基含有シラン化合物と3官能以上のシラン化合物とは、少なくとも一方が用いられることが好ましく、特にビニル系重合性基含有シラン化合物と3官能以上のシラン化合物のうちの少なくとも一方の割合が0.1%以上であることが好ましい。オルガノシロキサン及び2官能シラン化合物の使用割合が少なすぎると、成形品が脆くなる傾向がある。逆に多すぎてもビニル系重合性基含有シラン化合物および3官能以上のシラン化合物の量が少なくなりすぎて、これらを使用する効果が発現されにくくなる傾向にある。また、ビニル系重合性基含有シラン化合物あるいは前記3官能以上のシラン化合物の割合が少なすぎると、成形品の難燃性が充分に向上しないおそれがある。逆に多すぎても、成形品が脆くなる傾向がある。
(X)成分は、上記モノマーの乳化重合により製造されることが好ましい。乳化重合は、例えば前記モノマーおよび水が乳化剤の存在下で機械的剪断により水中に乳化分散すると共に酸性状態となることで行われる。この場合、機械的剪断により数μm以上の乳化液滴が調製されると、重合後に得られる(X)成分の平均粒子径は乳化剤の量に応じて0.02〜0.6μmの範囲で制御される。また、(X)成分の粒子径分布の変動係数(100×標準偏差/平均粒子径)(%)が20〜70%の範囲に制御される。
平均粒子径が0.1μm以下で且つ粒子径分布の狭い(X)成分が製造される場合、多段階の重合により(X)成分が製造されることが好ましい。例えば前記モノマー、水および乳化剤が機械的剪断により乳化されることで得られる数μm以上の乳化液滴からなるエマルションのうちの1〜20%が先に酸性状態で乳化重合し、得られた(X)成分がシードとなってその存在下で残りのエマルションが追加的に重合することが好ましい。これより得られる(X)成分は、乳化剤の量に応じて平均粒子径0.02〜0.1μmの範囲で、粒子径分布の変動係数が10〜60%の範囲に制御される。更に好ましい方法では、多段重合において、(X)成分がシードとなる代わりに、後述するグラフト重合時に用いられるビニル系単量体(例えばスチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど)が通常の乳化重合法により(共)重合してなるビニル系(共)重合体が用いられることで、前記と多段重合によりポリオルガノシロキサン(変性ポリオルガノシロキサン)粒子が得られる。この場合、得られるポリオルガノシロキサン(変性ポリオルガノシロキサン)粒子の平均粒子径は乳化剤量に応じて0.008〜0.1μmの範囲でかつ粒子径分布の変動係数が10〜50%の範囲に制御される。前記数μm以上の乳化液滴は、ホモミキサーなど高速撹拌機が使用されることで調製され得る。
前記乳化重合では、酸性状態下で乳化能を失わない乳化剤が用いられる。具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸ナトリウム、(ジ)アルキルスルホコハク酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を用いることが、エマルションの乳化安定性が比較的高いことから好ましい。更に、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルスルホン酸はモノマーの重合触媒としても作用するので特に好ましい。
反応系の酸性状態は、この反応系に硫酸や塩酸などの無機酸やアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸が添加されることで達成される。反応系のpHは生産設備の腐食抑制や適度な重合速度の達成を考慮して1〜3に調整されることが好ましく、1.0〜2.5に調整されることがより好ましい。重合のための加熱は、適度な重合速度の達成のためは60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
尚、酸性状態下では、ポリオルガノシロキサンの骨格を形成しているSi−O−Si結合が切断と生成の平衡状態にあり、この平衡は温度によって変化する。このため、ポリオルガノシロキサン鎖の安定化のためには、反応系に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液が添加されて反応系が中和されることが好ましい。更に前記の平衡は、低温になるほど生成側に寄り、高分子量または高架橋度の生成物が得られやすくなる。このため、高分子量または高架橋度の生成物が得られるためには、モノマーの重合が60℃以上で進行した後、反応系が室温以下に冷却されて5〜100時間程度保持されから反応系が中和されることが好ましい。
このようにして得られる(X)成分は、例えば、オルガノシロキサンあるいは2官能シラン化合物、更にこれらにビニル系重合性基含有シラン化合物が加えられてこれらが重合する場合、通常はランダムな共重合によりビニル系重合性基を有する重合体となる。また、3官能以上のシラン化合物が共重合する場合、架橋による網目構造を有する共重合体が得られる。また、後述するグラフト重合時に用いられるようなラジカル重合開始剤によってビニル系重合性基間がラジカル反応により架橋する場合、ビニル系重合性基間の化学結合による架橋構造が形成され、かつ一部未反応のビニル系重合性基が残存する。
(Y)成分は、(Y−1)成分からなり、或いは(Y−1)成分と(Y−2)成分とからなる。(Y−1)成分は分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む多官能単量体であり、(Y)成分における割合は100〜50質量%である。(Y−2)成分は(Y−1)成分以外のビニル系単量体であり、(Y)成分における割合は0〜50質量%である。(Y)成分が使用されることで、成形品の難燃性及び耐衝撃性が向上する。
(Y)成分における(Y−1)成分の割合が50質量%以上であること、並びに(Y)成分における(Y−2)成分の割合が50質量%以下であることで、成形品の耐衝撃性が更に向上する。(Y)成分における(Y−1)成分の割合は、特に100〜80質量%であることが好ましく、100〜90質量%であれば更に好ましい。(Y)成分における(Y−2)成分の割合は特に0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%の範囲であれば更に好ましい。
(Y−1)成分としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの化合物のうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。これらの中では、経済性および効果の点で特にメタクリル酸アリルが使用されることが好ましい。
(Y−2)成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;イタコン酸、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
(Z)成分は、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体と(A)成分や(D)成分との相溶性を確保し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の分散性向上に寄与する。
(Z)成分としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、アクリロニトリル等の、上記(Y−2)成分と同様の化合物が使用され得る。これらの化合物うち一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
(Z)成分の溶解度パラメーターは、9.15〜10.15[(cal/cm1/2]であることが好ましく、9.17〜10.10[(cal/cm1/2]であればより好ましく、9.20〜10.05[(cal/cm1/2]であれば更に好ましい。溶解度パラメーターが前記範囲であると、成形品の難燃性が更に向上する。尚、溶解度パラメーターは、John Wiley&Son社出版「ポリマーハンドブック」1999年、第4版、セクションVII第682〜685頁)に記載のグループ寄与法でSmallのグループパラメーターを用いて算出される値である。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)成分40〜90質量部の存在下で、(Y)成分0.5〜10質量部が重合し、更に、(Z)成分5〜50質量部が重合することで得られる。(X)〜(Z)成分の合計量は100質量部である。特に(X)成分の割合は60〜80質量部であることが好ましく、60〜75質量部であれば更に好ましい。(Y)成分の割合は1〜5質量部であることが好ましく、2〜4質量部であれば更に好ましい。(Z)成分の割合は15〜39質量部であることが好ましく、21〜38質量部であれば更に好ましい。
(X)成分の割合が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも成形品の難燃化効果が低くなる。(Y)成分が少なすぎる場合、成形品の難燃化効果および耐衝撃性改良効果が低くなり、多すぎる場合は成形品の耐衝撃性改良効果が低くなる。(Z)成分が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも成形品の難燃化効果が低くなる。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、公知のシード乳化重合により製造され得る。例えば、(X)成分のラテックス中で(Y)成分がラジカル重合し、更に、(Z)成分がラジカル重合することで、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が得られる。(Y)成分および(Z)成分は、いずれも1段階で重合しても2段階以上で重合してもよい。
前記ラジカル重合にあたっては、ラジカル重合開始剤を熱分解することにより反応を進行させる方法、還元剤を使用するレドックス系で反応を進行させる方法など、適宜の方法が採用され得る。重合時の反応温度は30〜120℃が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、反応性の高さから、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、ラウロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、シクロヘキサンノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物などが、使用されることが好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量は、(Y)成分あるいは(Z)成分100部に対して、0.005〜20部、さらには0.01〜10部であり、特に0.03〜5部であることが好ましい。
一方、レドックス系で使用される還元剤としては、硫酸第一鉄/グルコース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/エチレンジアミン酢酸塩などの混合物などが、挙げられる。
ラジカル重合の際に連鎖移動剤が使用されてもよい。連鎖移動剤の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。連鎖移動剤が使用される場合の使用量は、(Y)成分あるいは(Z)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましい。
前記重合では、(X)成分がビニル系重合性基を含有する場合には(Y)成分がラジカル重合開始剤によって重合する際に、(Y)成分が(X)成分のビニル系重合性基と反応することにより、グラフトが形成される。(X)成分にビニル重合性基が存在しない場合、特定のラジカル開始剤、例えばt−ブチルパーオキシラウレートなどが用いられると、ケイ素原子に結合したメチル基などの有機基から水素が引き抜かれることで生成するラジカルによって(Y)成分が重合してグラフトが形成される。さらに(Z)成分がラジカル重合開始剤によって重合する際に、(Y)成分と同じように(X)成分と反応するだけでなく、(Y)成分によって形成された重合体中に存在する不飽和結合にも反応して(Z)成分によるグラフトが形成される。
乳化重合等によって得られるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、ラテックスから分離されてもよく、分離されなくてもよい。ラテックスからポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を分離する方法としては、通常の方法、例えば、ラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法が採用され得る。スプレー乾燥法が採用されてもよい。
尚、(X)成分の存在下での(Y)成分および(Z)成分の重合時には、グラフト共重合体の枝にあたる部分(ここでは、(Y)成分および(Z)成分の重合体)が幹成分(ここでは(X)成分)にグラフトせずに枝成分だけで単独に重合して得られるいわゆるフリーポリマーも副生し、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体とフリーポリマーの混合物が得られる。この両者を併せてポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体という。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)成分に(Y)成分がグラフトし、さらに(Z)成分が(X)成分だけでなく(Y)成分によって形成された重合体にもグラフトしている構造を有するため、フリーポリマーの量が少なくなる。このポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のアセトン不溶分量(ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体1gをアセトン80mlに室温で48時間浸漬した場合のアセトン不溶分量)は、80%以上、さらには85%以上であることが、成形品の難燃性向上のために好ましい。
このようなポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、市販品として入手可能である。市販されているポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体としては、例えば株式会社カネカ製の商品名カネエースMR01、カネエースMR02等が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物がエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムを含有する場合、その含有量は3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
エポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとしては、アクリル酸アルキル、シリル基末端ポリエーテル、及びグリシジル基含有ビニル系化合物の重合体が挙げられる。このエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムは、アクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体(シリコーンアクリル複合ゴム)と、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有ビニル系化合物の重合体との複合物であってもよい。この場合、アクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体と、グリシジル基含有ビニル系化合物の重合体との全部若しくは一部が共重合していてもよい。
このエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムのコア層はアクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体から構成され、シェル層はグリシジル基含有ビニル系化合物の重合体から構成される。この多層構造重合体は、例えばアクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体のラテックスにグリシジル基含有ビニル系化合物が添加されてグラフト重合することで得られる。
(メタ)アクリル酸アルキルとシリル基末端ポリエーテルとの共重合体(シリコーンアクリル複合ゴム)の代表的な一例の構造式を下記式[化2]に示す。この構造式の左部分が(メタ)アクリル酸アルキルに由来する(メタ)アクリル酸アルキル単位であり、右側部分がシリル基末端ポリエーテルに由来するシリル基末端ポリエーテル単位である。
Figure 2013047316
グリシジル基含有ビニル系化合物の代表的な一例の構造式を下記式[化3]に示す。
Figure 2013047316
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、具体的には、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸オクタデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸クロロメチル、メタアクリル酸2−クロロエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル;メタアクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタアクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルまたはメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどが挙げられる。これらの化合物のうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
シリル基末端ポリエーテルとしては、末端にシリル基を有するポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリエーテルが用いられる。前記シリル基としては、具体的には、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、ブチルシリル基などのアルキルシリル基、3−クロロプロピルシリル基、3,3,3−トリフルオロプロピルシリル基などのハロゲン化アルキルシリル基、ビニルシリル基、アリルシリル基、ブテニルシリル基などのアルケニルシリル基、フェニルシリル基、トリルシリル基、ナフチルシリル基などのアリールシリル基、シクロペンチルシリル基、シクロヘキシルシリル基などのシクロアルキルシリル基、ベンジルシリル基、フェネチルシリル基などのアリール−アルキルシリル基などが挙げられる。このようなシリル基末端ポリエーテルのうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
グリシジル基含有ビニル系化合物としては、メタアクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルまたは4−グリシジルスチレンなどが挙げられる。これらの化合物のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。
このようなエポキシ変性シリコーン・アクリルゴムとしては、市販品が適宜使用され得る。その具体例としては、グリシジルメタクリレートをシェルに含有するコアシェル構造体である三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンS2200が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂組成物は、Siを含有するコアシェルゴム以外のコアシェルゴム、すなわちSiを含有しないコアシェルゴムを含有してもよい。Siを含有しないコアシェルゴムの例として、不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体が使用される場合、不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体は、Siを含有するコアシェルゴムの機能の全部又は一部をSiを含有するコアシェルゴムに代わって発揮し得る。尚、この場合、コスト面でも有利となる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体を得るために用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。ジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン等の、ガラス転移点が10℃以下のゴムが挙げられる。芳香族ビニルとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等の核置換スチレンが挙げられる。これら不飽和カルボン酸アルキルエステル、ジエン系ゴム、芳香族ビニルは、それぞれ1種または2種以上使用することができる。
この不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体の代表例として、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)が挙げられる。メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体は、ブタジエン・スチレン重合体で構成されるコア層と、メタクリル酸メチル重合体で構成されるシェル層とを備える多層構造重合体であることが好ましい。
ブタジエン・スチレン重合体の構造式を下記式[化4]に示す。この構造式の左側部分がブタジエンに由来するブタジエン単位であり、右側部分がスチレンに由来するスチレン単位である。
Figure 2013047316
シェル層を構成するメタクリル重合体の構造式を下記式[化5]に示す。
Figure 2013047316
不飽和カルボン酸アルキルエステル−ジエン系ゴム−芳香族ビニルグラフト共重合体の製造法としては、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法が挙げられる、特に、乳化重合法が好適である。このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、前記ジエン系ゴム成分を50質量%以上含有していることが好ましい。
このようなメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体として、市販品が適宜使用されてもよい。メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体の好適な具体例としては、三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンC−223A、メタブレンC−323A、メタブレンC−215A、メタブレンC−201A、メタブレンC−202、メタブレンC−102、メタブレンC−140A、メタブレンC−132等、株式会社カネカ製の商品名カネエースM−600、ローム・アンド・ハース株式会社製の商品名パラロイドEXL−2638等が挙げられる。
(植物由来PET)
ポリ乳酸樹脂組成物が、植物由来原料を含む原料から合成されたPET(植物由来PET)を含有することも好ましい。このような植物由来PETは、例えばテレフタル酸と、サトウキビなどの植物由来のエタノール(いわゆるバイオエタノール)から製造されたモノエチレングリコール(バイオモノエチレングリコール)を含むモノエチレングリコールとが、脱水縮合することで合成される。
このような植物由来PETが使用されることで、ポリ乳酸樹脂組成物及びその成形品における石油由来資源の使用量が削減され、このため石油由来資源の削減が可能となり、このことが環境問題の解決のために貢献する。
植物由来PETの原料における、モノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合は特に制限されないが、1〜100質量%の範囲であることが好ましく、5〜100質量%の範囲であれば更に好ましい。尚、植物由来PETに関し、その原料におけるモノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合は、ASTM D6866−11 METHOD Bにより測定される。
植物由来PETが使用される場合、ポリ乳酸樹脂組成物中の植物由来PETの割合は特に制限されないが、1〜30質量%の範囲であることが好ましい。
(他の熱可塑性樹脂)
ポリ乳酸樹脂組成物中には、上記以外の種々の熱可塑性樹脂が含まれてもよい。例えばポリ乳酸樹脂組成物が、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(いわゆるPET−G樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂などの芳香族ポリエステル樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリカプロラクトン樹脂;ポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される熱可塑性フッ素樹脂;ポリエチレン樹脂、エチレン−(α−オレフィン)共重合体樹脂などを含有してもよい。ポリ乳酸樹脂組成物中には前記のような樹脂が一種のみ含まれていてもよく、二種以上が含まれていてもよい。このような種々の熱可塑性樹脂により、成形品の耐衝撃性が更に向上し得る。これらの熱可塑性樹脂が使用される場合、その含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物に対して3〜12質量%の範囲であることが好ましい。
(酸化防止剤)
ポリ乳酸樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。この場合、成形品中のポリ乳酸の加水分解が更に抑制されることで、成形品の耐久性が更に向上する。酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)ジシクロペンタジエンからなる群から選択される少なくとも一種が使用されることが好ましい。
(充填材等)
ポリ乳酸樹脂組成物は充填材を含有してもよい。充填材としては、例えば、タルク、ワラストナイト、マイカ、クレー、モンモンリロナイト、スメクタイト、カオリン、ゼオライト(珪酸アルミニウム)、ゼオライトを酸処理及び加熱処理して得られる無水非晶質珪酸アルミニウムなどの無機充填材が挙げられる。特にタルク、ワラストナイトが好ましい。これらの充填剤のうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
タルクとしては、樹脂成形材料のフィラー材として一般的に使用されているタルクが挙げられる。市販されている適宜のタルクが使用可能である。タルクの平均粒径は、通常は0.1〜10μmの範囲内であることが好ましい。この平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000IIシリーズなど)などを用いるレーザー回折散乱法により測定される値である。
ポリ乳酸樹脂組成物中のタルクの含有量は特に制限されないが、1〜30質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が1質量%以上であれば成形品の引張り弾性率が向上し、この含有量が30質量%以下であればポリ乳酸樹脂組成物の混練時におけるスクリューへのタルクの食い込みが抑制されて、良好な加工性、成形性が維持される。このタルクの含有量は、好ましくは1〜15質量%の範囲であり、更に好ましくは3〜8質量%の範囲である。この含有量が8質量%以下であると、複雑な形状の成形品を得る場合であってもウエルドやフローマークの発生が充分に抑制され、この含有量が3質量%以上であるとタルクの添加の効果が特に発揮される。
ポリ乳酸樹脂組成物は着色剤として染料や顔料などを含有してもよい。染料としては、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、ジアミノスチルベン系蛍光染料などの、蛍光染料(蛍光増白剤を含む);ペリレン系染料;クマリン系染料;チオインジゴ系染料;アンスラキノン系染料;チオキサントン系染料;紺青等のフェロシアン化物;ペリノン系染料;キノリン系染料;キナクリドン系染料;ジオキサジン系染料;イソインドリノン系染料;フタロシアニン系染料などが挙げられる。蛍光染料のうちでは、耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、及びペリレン系蛍光染料が好適である。顔料としては、金属被膜または金属酸化物被膜を有する各種板状フィラーなどのメタリック顔料、カーボンなどが、使用可能である。
ポリ乳酸樹脂組成物中の着色剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であれば更に好ましい。更に、着色剤の含有量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.00001質量部以上であれば好ましく、0.00005質量部以上であれば更に好ましく、0.5質量部以上であれば更に好ましい。
(難燃剤)
ポリ乳酸樹脂組成物は、更に難燃剤を含有することも好ましい。この場合、成形品の難燃性が向上する。難燃剤としては、Br系難燃剤、有機リン系難燃剤、酸化アンチモンが用いられることが好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物中のBr系難燃剤の含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、有機リン系難燃剤の含有量は、1〜30質量%の範囲であることが好ましく、3〜12質量%の範囲であれば更に好ましい。また、酸化アンチモンの含有量は、0.1〜3質量%であることが好ましい。このような範囲において、ポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品の難燃性が向上する。
有機リン系難燃剤として、特に下記[化6]に示される環状ホスファゼン化合物が用いられることが好ましい。
Figure 2013047316
及びRはそれぞれ独立にアリール基又は末端に不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸エステル基であり、R及びRは同じであっても異なっていてもよい。nは、3〜25の整数である。
[化6]に示される環状ホスファゼン化合物として、適宜の市販品が使用されてもよく、例えば大塚化学株式会社製の品番SPB100、SPB100L、株式会社伏見製薬所製の商品名ラビトルFP−100などが使用されてもよい。
この[化6]に示される環状ホスファゼン化合物は成分は液状であることが特に好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中での環状ホスファゼン化合物の分散性が向上し、成形品の難燃性が特に向上する。また、[化6]に示される環状ホスファゼン化合物の含有量を低減しつつ、成形品の難燃性を向上することもできる。特に液状の[化6]に示される環状ホスファゼン化合物として大塚化学株式会社製の品番SPB100Lが使用されることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物中の有機リン系難燃剤の一部又は全部が[化6]に示される環状ホスファゼン化合物であることが特に好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物中の[化6]に示される環状ホスファゼン化合物の含有量は、1〜30質量%の範囲であることが好ましく、3〜12質量%の範囲であれば更に好ましい。
[化6]に示される環状ホスファゼン化合物以外の有機リン系難燃剤として、下記式[化7]で表されるリン酸エステル化合物が挙げられる。このようなリン酸エステル化合物が使用されると、成形品の高い耐衝撃性が維持されながら、この成形品の難燃性が大きく向上する。
Figure 2013047316
式[化7]中のnは、0〜5の整数を示す。この式[化7]に示されるリン酸エステル化合物は、異なるn数を有する化合物の混合物であってもよい。リン酸エステル化合物が前記のような混合物である場合、平均のn数は好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2、更に好ましくは0.95〜1.15、特に好ましくは1〜1.14の範囲である。
上記式[化7]中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、及びジヒドロキシジフェニルよりなる群より選ばれるジヒドロキシ化合物から水酸基が除去された二価の基を示す。Xは特にレゾルシノール、ビスフェノールA、又はジヒドロキシジフェニルから誘導される二価の基であることが好ましい。
上記式[化7]中のR、R、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール基を表す。このR、R、R、及びRとしては、具体的にはフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどのヒドロキシ化合物から誘導される、一価の基が例示される。中でもR、R、R、及びRがフェニル基、又は2,6−ジメチルフェニル基であることが好ましい。
尚、このフェニル基はハロゲン原子を有する置換基を有してもよい。このフェニル基から誘導される基を有するホスフェート化合物の具体例としては、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェートなどが例示される。
一方、ハロゲン原子を有する置換基を有しないホスフェート化合物の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリ(2,6−キシリル)ホスフェート等のモノホスフェート化合物;レゾルシノールビスジ(2,6−キシリル)ホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;4,4−ジヒドロキシジフェニルビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするホスフェートオリゴマー;ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主体とするリン酸エステルオリゴマー等が、好適である。ここで主体とするとは、重合度の異なる他の成分を少量含んでよいことであり、より好適には上記式[化7]におけるn=1の成分が80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有されることである。
リン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。この酸価の下限は実質的に0とすることも可能であり、実用上0.01mgKOH/g以上が好ましい。ポリ乳酸樹脂が式[化7]で示され酸価が0.2mgKOH/g以下であるリン酸エステル化合物を含有すると、ポリ乳酸樹脂組成物の熱安定性が特に高くなり、またポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性が向上して成形品の耐水性が高くなる。リン酸エステル化合物中のハーフエステルの含有量は1.1質量%以下がより好ましく、0.9質量%以下が更に好ましい。下限としては実用上0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合、またはハーフエステル含有量が1.5mgを超える場合には、成形時の熱安定性に劣るようになり、芳香族ポリカーボネートの分解に伴いポリ乳酸樹脂組成物の耐加水分解性が低下する。
このようなリン酸エステル化合物の具体例としては、大八化学工業株式会社製、品番PX202が挙げられる。
[化6]に示される環状ホスファゼン化合物以外の有機リン系難燃剤として、リン酸アンモニウムも挙げられる。リン酸アンモニウムの具体例としては、クラリアントジャパン株式会社製の品番AP422が挙げられる。このようなリン酸アンモニウムが使用される場合も、成形品の高い耐衝撃性が維持されながら、この成形品の難燃性が大きく向上する。
(含フッ素滴下防止剤)
ポリ乳酸樹脂組成物は、更に含フッ素滴下防止剤を含有することも好ましい。含フッ素滴下防止剤は、成形品の燃焼時の溶融滴下を防止して難燃性を更に向上させるために使用される。
ポリ乳酸樹脂組成物中の含フッ素滴下防止剤の含有量は、0.2〜3質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜1質量%の範囲であれば更に好ましい。このような範囲において、成形品の高い機械的強度と高い難燃性とを両立させることができる。
含フッ素滴下防止剤として、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく使用される。フィブリル形成能を有するPTFEは極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示す。PTFEの、標準比重から求められる数平均分子量は、100万〜1000万の範囲が好ましく、200万〜900万の範囲であれば更に好ましい。このPTFEは、固体形状であっても、水性分散液形態であってもよい。分散性の向上と成形品の更なる難燃性及び機械的特性の向上を目的として、PTFEが他の樹脂と混合されることでPTFE混合物を構成していてもよい。フィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業株式会社製のポリフロンMPA FA500,F−201Lなどが挙げられる。PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製のフルオンAD−1、AD−936、ダイキン工業株式会社製のフルオンD−1、D−2、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製のテフロン(登録商標)30Jなどが代表として挙げられる。
混合形態のPTFEを得る方法としては、
(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60−258263号公報、特開昭63−154744号公報などに記載された方法);
(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4−272957号公報に記載された方法);
(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、この混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06−220210号公報、特開平08−188653号公報などに記載された方法);
(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9−95583号公報に記載された方法);
(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11−29679号などに記載された方法)等が、挙げられる。
混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン株式会社の「メタブレン A3800」(商品名)、GEスペシャリティーケミカルズ社製の「BLENDEX B449」(商品名)などが挙げられる。
混合形態のPTFEの場合、PTFE混合物100質量%中のPTFEの割合は1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜55質量%である。PTFEの割合が前記範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
(その他)
ポリ乳酸樹脂組成物は、本発明の目的に反せず、その効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、無機および有機系抗菌剤等の、公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、ポリ乳酸樹脂組成物の混練時に加えられても、成形時等に加えられてもよい。
[ポリ乳酸樹脂組成物及び成形品]
ポリ乳酸樹脂組成物は、上記のようなポリ乳酸樹脂組成物の原料が任意の方法で混合、混練されることによって調製される。前記混合、混練にあたっては、例えば、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール等が用いられるが、中でも二軸押出機による溶融混練が好ましい。
例えばポリ乳酸樹脂組成物の調製にあたって、ポリ乳酸樹脂組成物の原料をそれぞれ独立にベント式二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法や、原料のうちの一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法が採用されてもよい。また、原料の一部を溶融混練機に供給した後、残りの原料を溶融押出機の途中から供給する方法が採用されてもよい。溶融混練に際しての加熱温度は、ポリ乳酸樹脂組成物の組成に応じて適宜設定されるが、200〜260℃の範囲であることが好ましい。
尚、原料中に液状の成分がある場合には、溶融押出機への液状の成分の供給の際に、いわゆる液注装置、液添装置等が使用されてもよい。このような液注装置や液添装置には加温装置が設けられていることが好ましい。そのため溶融押出機は、液体注入用の原料供給口を持つことが好ましい。例えば溶融押出機へ液状の成分が供給される際は、液状の成分が、ギアポンプ等の公知の液体運搬装置によって、通常の溶融押出機のバレルに形成されているフィード口から、溶融押出機内の吐出圧以上の圧力で供給されることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物が必要に応じてペレット状に成形されてもよい。例えば溶融押出機により押し出されたポリ乳酸樹脂組成物が直接切断されてペレット化され、或いはこのポリ乳酸樹脂組成物のストランドが形成された後、このストランドがペレタイザー等で切断されてペレット化されることで、ペレット状のポリ乳酸樹脂組成物が得られてもよい。ペレット化に際して外部の埃などの影響が低減される必要がある場合には、溶融押出機の周囲の雰囲気が清浄化されることが好ましい。ペレット状のポリ乳酸樹脂組成物の形状は、円柱、角柱、球状などの一般的な形状でよいが、より好適には円柱状である。円柱状のポリ乳酸樹脂組成物の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱状のポリ乳酸樹脂組成物の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
ポリ乳酸樹脂組成物の成形法としては、射出成形、回転成形、ブロー成形、真空成形などの適宜の成形方法が採用され得る。特に射出成形が好ましい。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形などが採用されてもよい。
ポリ乳酸樹脂組成物の射出成形にあたっては、適宜の射出成形装置が使用され得る。特に、射出時の金型のキャビティ表面温度が上記のように制御されるためは、電気式のヒータを備える金型が用いられることが好ましい。この場合、ポリ乳酸樹脂組成物の射出時に、電気式のヒータによってキャビティ表面の温度が正確且つ速やかに調整される。
このようにして得られる成形品は、長期間の使用が想定される家電分野や建材、サニタリー分野など、広範囲の分野に使用され得る。
本実施形態による成形品には、上記のとおりヒケやムラなどが生じにくくなり、このためその外観が良好になる。更に、成形品が加熱されても白化などの外観不良が生じにくくなる。更に、金型成形によって成形品が形成される際に金型汚れが生じにくくなり、このため成形品の量産性が高い。更に、ポリ乳酸が使用されているにもかかわらず、成形品の耐久性が低下しにくくなる。
ポリ乳酸樹脂組成物が成形されることで、60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成されることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂から形成される成形品の、60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上であることが好ましい。引張強度の保持率とは、前記条件での曝露処理が施される前の成形品の引張強度に対する、前記条件での曝露処理が施された後の成形品の引張強度の比率である。引張強度はISO 179に従って測定される。
成形品の用途は特に制限されないが、例えば成形品がABS樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される場合には、成形品の特に好ましい具体例として、携帯電話機等の電子機器機用ホルダーの外装などの電子機器用筐体や、携帯電話機などの電子機器における内部シャーシ部品などの内部部品が挙げられる。成形品がPC樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される場合には、成形品の特に好ましい具体例としては、車載用部品、電子部品、家電筐体等が挙げられる。成形品がPMMA樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される場合には、成形品の特に好ましい具体例としては、家電部品、電子部品等が挙げられる。成形品がPP樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される場合には、成形品の特に好ましい具体例としては、車載内装部品、家電部品、食器用途等が挙げられる。成形品がLDPE樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される場合には、成形品の特に好ましい具体例としては、血糖値検査用穿刺針等が挙げられる。
図1に、ABS樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物から形成される成形品1の一例として、電子機器用ホルダー2を示す。電子機器用ホルダー2は卓上等において携帯電話機等の電子機器を保持固定する機能を有し、或いは更に電子機器内のバッテリーを充電するための充電器としての機能を併せ持つ。この電子機器用ホルダー2には、電子機器が載置される領域(載置領域3)と、この載置領域3の外縁から突出する保持リブ4とが形成されている。載置領域3上に載置される電子機器が更に保持リブ4によって支えられることで、電子機器が電子機器用ホルダー2に保持固定される。このため、電子機器用ホルダー2は、電子機器の形状及び寸法と合致するように形成される。電子機器用ホルダー2はこのような構造には限られず、電子機器を保持可能な適宜の構造を有していればよいが、そのために電子機器の形状及び寸法と合致するように形成される。
成形品には、各種の表面処理が施されてもよい。表面処理としては、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、めっき(電気めっき、無電解めっき、溶融めっきなど)、塗装、コーティング、印刷などの、成形品の表面上に新たな層を形成する処理が挙げられる。表面処理の具体例としては、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、メタライジング(蒸着など)などが挙げられる。
[製造例1]
Lラクチド及びDラクチドの混合物を、金属重合触媒及びアルコールの存在下で、窒素雰囲気下、撹拌翼を備える反応機内で加熱することで反応させた後、反応機内を減圧して混合物中に残存するラクチドを除去した。更にこの混合物をチップ化することで、ポリ乳酸を調製した。このポリ乳酸の調製にあたり、LラクチドとDラクチドの配合比を変更することで、後述する組成を有するポリ乳酸D及びポリ乳酸Fを調製した。
[製造例2]
Dラクチド(株式会社武蔵野化学研究所製、光学純度99%以上)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.006重量部、オクタデシルアルコール0.37重量部を加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて、190℃で2時間反応し、その後、エステル交換抑制剤(ジヘキシルホスホノエチルアセテートDHPA)0.01重量部を加えた後、減圧して残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリ−D−乳酸を得た。得られたポリ−D−乳酸の重量平均分子量は13万、ガラス転移点(Tg)60℃、融点は170℃であった。
このポリ−D−乳酸と、ポリ−L−乳酸(Nature Works LLC社製、商品名NatureWorks4042D、光学純度95%以上、融点150℃、重量平均分子量21万)とを、32mm径の二軸押出機(Coperion製、ZSK 32)を用い、シリンダー温度200℃〜250℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行い、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を得た。得られたステレオコンプレックス型ポリ乳酸の融点は213℃、ステレオ化度は100%であった。
[実施例及び比較例]
各実施例及び比較例について、下記表に示す成分を用い、樹脂成分については予め乾燥処理を施した上で、これらの成分をタンブラーで10分間混合した。得られた混合物を二軸押出機で、ダイス付近温度190℃、投入口付近温度200℃の条件で押し出してストランドを得た。
このストランドを速やかに冷却槽で冷却した後、カッターで切断して、長さ2〜4mmのペレット状の樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を、除湿乾燥機にて80℃で4時間加熱することにより乾燥処理を施した後、100トン射出成形機及びISO準拠試験片金型(カラープレート、60mm×60mm×2mm、2個取り)を用い、シリンダーの温度をヘッド付近で230℃、材料投入口付近で220℃に設定すると共に、金型温度を70℃に設定して射出成形し、成形品を得た。
[成形サイクル評価]
各実施例及び比較例につき、樹脂組成物の射出成形時に一点ゲートの金型を用い、成形品の寸法を60mm×60mm×2mmとした。この場合の金型への樹脂組成物の射出後、金型から成形品を変形が生じることなく取り出すことが可能となるまでに要した保持時間(冷却時間)を測定し、これを成形サイクルの指標とした。
[外観及び金型汚れの評価]
各実施例及び比較例につき、樹脂組成物の射出成形時に1点ゲートの金型を用い、成形品の寸法を60mm×60mm×2mmとした。各実施例及び比較例において100個のサンプルについて試験をおこなった。
このサンプルのヒケ及びムラの有無を確認し、ヒケ又はムラが生じている成形品の数(不良数)を確認した。
更に、サンプル中央部でのウエルド及びフローマークの有無を確認し、ウエルド又はフローマークが認められたサンプル数(不良数)を確認した。
更に、サンプルを成形するごとに金型汚れの有無を確認し、金型汚れが認められた回数を確認した。
[発色性評価]
各実施例において、組成物の調製時にカーボンブラック(三菱化学株式会社製のカーボンブラックMA600B)を、下記表に示される原料成分の総量100質量部に対して1質量部の割合で配合した。
このカーボンブラックが配合された樹脂組成物を射出成形機で成形して90mm×150mm×3mmの寸法の成形品を得た。分光光度計(村上色彩技術研究所製)を用いて前記の成形品の表面のL値を測定した。
その結果L値が10以下の場合を○、11〜15の場合を△、16以下を×と評価した。
[耐衝撃性評価]
各実施例及び比較例で得られた成形品のノッチ付きのシャルピー衝撃値を、ISO 179に従って測定した。
[耐熱性評価]
各実施例及び比較例における成形品の荷重たわみ温度を、ISO 75−1及び75−2に従って測定した。測定荷重は0.45MPaとした。
[耐久性評価]
各実施例及び比較例で得られた成形品を60℃、95%RHの雰囲気下に3000時間曝露した後、この成形品の引張強度を、ISO 179に従って測定した。曝露処理が施される前の成形品の引張強度に対する、曝露処理が施された後の成形品の引張強度の比率(引張強度の保持率)を導出し、これを耐久性の指標とした。
[80℃処理後の外観]
成形品を80℃の雰囲気下に48時間曝露する処理を施した。処理前の成形品と処理後の成形品の外観を目視で観察して比較した。
その結果、外観に特に変化が認められない場合を○、処理後の成形体の表面に白化が生じた場合を×と評価した。
[難燃性]
成形品に対し、UL94に従った燃焼試験を実施することで、難燃性のクラスを評価した。下記表に試験に供した成形品の厚み、並びに難燃性のクラスを示す。
[後収縮率]
成形品を80℃の雰囲気下に48時間曝露する処理を施した。処理前の成形品の寸法(a)及び処理後の成形品の寸法(b)から、次の式により成形収縮率を算出した。
{(b−a)/b}×100(%)
[評価結果]
以上の評価試験の結果を、各実施例及び比較例における配合組成と共に下記表に示す。
Figure 2013047316
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Figure 2013047316
Figure 2013047316
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表に示される各成分の詳細は次の通りである。
・ポリ乳酸A:Nature Works LLC社製、商品名NatureWorks3001D、D−乳酸単位の割合1.5モル%、重量平均分子量6.4万、数平均分子量2.6万、分散度2.5。
・ポリ乳酸B:Nature Works LLC社製、商品名NatureWorks4032D、D−乳酸単位の割合1.9モル%。
・ポリ乳酸C:Nature Works LLC社製、商品名NatureWorks4060D、D−乳酸単位の割合11.5モル%、重量平均分子量8.6万、数平均分子量2.1万、分散度4.1。
・ポリ乳酸D:製造例1で得られたポリ乳酸、D−乳酸単位の割合1.9モル%、重量平均分子量7.5万、数平均分子量3.1万、分散度2.4、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(190℃ 2.16kg)5.0g/10分。
・ポリ乳酸E:製造例2で得られたステレオコンプレックス型ポリ乳酸、重量平均分子量9.8万、数平均分子量3.6万、分散度2.7。
・ポリ乳酸F:製造例1で得られたポリ乳酸、L−乳酸単位の割合99.7モル%以上。
・植物由来PET:豊田通商株式会社販売、商品名EastPET PW1、植物由来MEG含有率5〜30%。
・PBAT:ポリブチレンアジペートテレフタレート。
・ABS樹脂A:アクリロニトリル単位割合20.5質量%、スチレン単位割合69質量%、ブタジエン単位割合10.5質量%、バルク重合による合成品、平均粒径0.46μm、ISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が32g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が14kJ/m
・ABS樹脂B:アクリロニトリル単位割合22質量%、スチレン単位割合58質量%、ブタジエン単位割合18質量%、乳化重合による合成品、平均粒径0.30μm、ISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が29g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が21kJ/m
・ABS樹脂C:アクリロトリル単位割合24質量%、スチレン単位割合62質量%、ブタジエン単位割合14.5質量%、乳化重合による合成品、平均粒径0.30μm、ISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が16g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が15kJ/m
・リサイクルABS樹脂A:家電製品の廃棄物から回収したABS樹脂。
・リサイクルABS樹脂B:ABS樹脂A(50質量%)とリサイクルABS樹脂A(50質量%)との混合物。
・難燃ABS樹脂A:アクリロニトリル単位割合15質量%、スチレン単位割合43質量%、ブタジエン単位割合15質量%、テトラブロモビスフェノールA17%質量%、酸化アンチモン6%質量%、乳化およびバルク重合による合成品、平均粒径0.10および0.30μm。
・難燃ABS樹脂B:ダイセルポリマー株式会社製、VF512、燃焼性UL−94 1.5mm厚みでV−2、ISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が35g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が18kJ/m
・難燃ABS樹脂C:ダイセルポリマー株式会社製、VF790、燃焼性UL−94 1.7mm厚みでV−2、ISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が26g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が20kJ/m
・ポリカーボネートABS樹脂:東レ株式会社製、品番PX10。
・ポリカーボネート樹脂:ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(300℃ 1.2kg)22g/10分、ISO 306に規定される荷重たわみ温度128℃。
・PMMA1:アクリルポリメチルメタクリレート、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(230℃ 3.8kg)16g/10分、ISO 306に規定される荷重たわみ温度78℃。
・PMMA2:アクリルポリメチルメタクリレート、ISO ASTM D1238に規定されるメルトフローレート(230℃ 3.8kg)1.8g/10分、ISO 306に規定される荷重たわみ温度87℃。
・ポリプロピレン樹脂:プライムポリマー株式会社、品番J−466HP。
・低密度ポリエチレン樹脂:旭化成ケミカルズ株式会社、品番サンテックLD。
・カルボジイミド化合物A:イソシアネート基を有するカルボジイミド化合物、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、カルボジイミド当量248、カルボジイミド基:イソシアネート基のモル比15:2、日清紡ケミカル株式会社製 LA−1。
・カルボジイミド化合物B:イソシアネート基を有さないカルボジイミド化合物、カルボジイミド当量262、日清紡ケミカル株式会社製、HMV−15CA。
・エラストマー:メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体、三菱レイヨン株式会社製の商品名メタブレンC223A。
・有機過酸化物:日本油脂株式会社製の商品名パーヘキサ25B。
上記ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出するにあたっては、まずポリ乳酸0.036gをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)9mLに48時間以上かけて溶解させ、これにより得られる溶液をフィルターで濾過することで、測定用のサンプルを調製した。このサンプルを東ソー株式会社製の高速GPC装置(型番HLC−8220)で、移動相としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いて測定した。その測定結果を標準ポリスチレンを使用した検量線により換算して、ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。
上記ABS樹脂の平均粒径は個数基準の算術平均粒径であり、染料で染色されたABS樹脂の粒子を透過型電子顕微鏡(日立製作所製、型番H−7650)で撮影し、その画像を画像解析装置(ニコレ株式会社製、ルーゼックスAP)を用いて画像解析処理することで導出した。平均粒径を導出するにあたり、粒子の粒径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の径に等しいものとした。

Claims (24)

  1. ポリ乳酸と、ポリ乳酸以外の熱可塑性樹脂とを含有し、
    前記ポリ乳酸の割合が4質量%以上10質量%未満の範囲であり、
    前記ポリ乳酸の分散度が4.0以下であるポリ乳酸樹脂組成物。
  2. 前記ポリ乳酸の重量平均分子量が7.0万以上である請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 前記ポリ乳酸の割合が4〜7質量%の範囲である請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂がABS樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 前記ABS樹脂が、使用済みの製品から再生されたABS樹脂を含有する請求項4に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  6. 前記ABS樹脂が、難燃ABS樹脂を含有する請求項4又は5に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  7. ポリメタクリル酸メチル樹脂を更に含有する請求項4乃至6のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  8. 前記ABS樹脂の平均粒径が0.3μm以下である請求項4乃至7のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  9. 前記ABS樹脂のISO 1133に規定されるメルトフローレート(220℃ 10kg)が15〜35g/10分、ISO179に規定されるシャルピー衝撃強度(ノッチ有)が10〜30KJ/mである請求項4乃至8のいずれか以降に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  10. ポリカーボネート樹脂を更に含有する請求項4乃至9のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  11. 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  12. 前記熱可塑性樹脂がポリメチルメタクリレート樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  13. 前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  14. 前記熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレン樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  15. ポリブチレンアジペートテレフタレート及び有機過酸化物を更に含有する請求項1乃至14のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  16. メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルとの共重合体を更に含有する請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  17. カルボジイミド化合物を更に含有する請求項1乃至16のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  18. 前記カルボジイミド化合物が、イソシアネート基を有さない請求項17に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  19. コアシェルゴムを更に含有する請求項1乃至18のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  20. 60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である成形品が形成される請求項1乃至19のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  21. 請求項1乃至20のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を準備し、前記ポリ乳酸樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
  22. 請求項1乃至21のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより形成される成形品。
  23. 60℃95%RHの雰囲気下3000時間曝露される場合の引張強度の保持率が80%以上である請求項22に記載の成形品。
  24. 請求項4乃至10のいずれか一項に記載のポリ乳酸樹脂組成物を成形することにより形成される電子機器用ホルダー。
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