JP2011144210A - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】難燃性、耐衝撃性、耐熱性、耐湿熱性および成形性に優れた樹脂組成物、および該樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、全100質量部のうち、ポリ乳酸樹脂10〜70質量部、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂4〜74質量部、難燃剤5〜40質量部、ガラス繊維8〜70質量部を含有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、耐湿熱性、成形性に優れた樹脂組成物、およびその製造方法に関する。
一般に、成形用の原料として、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリオカーボネート樹脂などの樹脂が使用されている。このような樹脂から成形された成形体は、成形性や、機械的強度などに優れている。しかしながら、該成形体を廃棄する際は、ゴミの量を増やすうえに、自然環境下でほとんど分解されないために、埋設処理を施しても半永久的に地中に残留する。
さらに、近年、環境保全の高まりから、ポリ乳酸樹脂に代表される生分解性を有する各種の脂肪族ポリエステル樹脂が注目されている。脂肪族ポリエステル樹脂のなかでも、ポリ乳酸樹脂は、透明性が良好で、かつ最も耐熱性が高い樹脂の一つであり、また、トウモロコシやサツマイモ等の植物由来原料から大量生産可能なためコストが安く、さらに石油原料の使用量削減にも貢献できることから、有用性が高い。
しかしながら、ポリ乳酸樹脂を単体で電気製品等の筐体に利用する場合、難燃性が不十分であるため、安全上問題がある。加えて、それらの用途には、多くの場合、少なくとも100℃を上回る高温環境にも十分耐えうる耐熱性が必要である。このように、ポリ乳酸樹脂には、難燃性、耐熱性に優れたものが求められている。なお、同時に耐衝撃性、耐久性を兼ね備えるポリ乳酸樹脂が求められていることは言うまでもない。
さらに、従来の樹脂と同様に、簡易な成形方法によって、良好な成形性が得られることが望まれていることも言うまでもないことである。ポリ乳酸樹脂に一定の耐熱性を付与するためには、100℃前後の高い金型温度で結晶化させる必要があり、成形に必要な時間や、成形体を取り出す際の剛性等の面において、問題がある。
この問題を解決する方法として、ポリ乳酸樹脂に各種材料を配合することは、これまでにも多く検討されてきている。
特許文献1には、ポリ乳酸樹脂、ABS樹脂、難燃剤および酸化チタンを含有する樹脂組成物が記載されている。しかしながら、かかる場合は、耐熱性が不十分であった。
特許文献2には、ポリ乳酸樹脂、ホスホニトリル酸フェニルエステルおよびガラス強化樹脂を含有する樹脂組成物が記載されている。ガラス強化樹脂としては、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリエチレンテレフタレート、乳酸系樹脂が例示されている。しかしながら、かかる場合には、一定の耐熱性や難燃性は得られているものの、耐衝撃性は未だ不十分である。
特許文献3には、ポリ乳酸樹脂、難燃剤およびガラス繊維を含有する樹脂組成物に、芳香族ビニル系増粘剤、ブタジエン−芳香族ビニル系コアシェル重合体を配合することが記載されている。しかしながら、かかる場合にも、耐衝撃性は不十分であった。
特開2009−144075号公報 特開2008−274224号公報 特開2006−193561号公報
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、耐久性および良好な成形性を兼ね備えた樹脂組成物およびそれにより得られる成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂、ABS樹脂、難燃剤およびガラス繊維を含有した樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、耐久性および成形性を兼ね備えることを見出し、かかる知見に基づき本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)全100質量部のうち、ポリ乳酸樹脂10〜70質量部、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂4〜74質量部、難燃剤5〜40質量部、ガラス繊維8〜70質量部を含むことを特徴とする樹脂組成物。
(2)難燃剤がリン系難燃剤であることを特徴とする(1)の樹脂組成物。
(3)リン系難燃剤が有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする(2)の樹脂組成物。
(4)有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤が、ポリリン酸メラミン系化合物を含有したものであることを特徴とする(3)の樹脂組成物。
(5)全100質量部のうち、カルボジイミド系加水分解抑制剤を0.1〜10質量部含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)いずれかの樹脂組成物を製造する方法であって、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、難燃剤を溶融混練する途中において、ガラス繊維を供給することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、環境負荷を低減でき、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、耐湿熱性および成形性に非常に優れた樹脂組成物を提供することができる。この樹脂組成物を電気製品の部品などに用いることで、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、ABS樹脂、難燃剤およびガラス繊維を含有してなるものである。
ポリ乳酸樹脂としては、耐熱性、成形性の面から、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体などを用いることができる。なかでも、生分解性、成形加工性の観点からは、ポリ(L−乳酸)を主体とすることが好ましい。
また、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂は、光学純度によってその融点が異なるが、本発明においては、成形体としたときの機械特性や耐熱性を考慮すると、融点を160℃以上とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂において、融点を160℃以上とするためには、ポリ(D−乳酸)の割合を約3モル%未満とすればよい。
ポリ乳酸樹脂は公知の溶融重合法で、あるいは必要に応じてさらに固相重合法を併用して製造される。
ポリ乳酸樹脂は190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜50g/10分であれば好ましく使用することができ、より好ましくは0.2〜20g/10分であり、さらに好ましくは0.5〜10g/10分である。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形体の機械的特性や耐熱性に劣る場合がある。メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなりすぎ操業性が低下する場合がある。MFRの測定方法としては、例えば、JIS K−7210に準じて測定する方法が挙げられる。
上記のMFRを所定の範囲に制御する方法として、MFRが大きすぎる場合には、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が使用できる。逆に、MFRが小さすぎる場合には、MFRの大きな生分解性ポリエステル樹脂などの低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂の含有量は、樹脂組成物全量を100質量部として、10〜70質量部であることが必要である。ポリ乳酸樹脂の含有量が10質量部未満であると、環境に対する有用性が不十分である。一方、70質量部を超えると、後述の難燃剤やガラス繊維など他の必要成分の含有量が抑えられ、かつ、ポリ乳酸樹脂の有する燃焼時の溶融滴下などの性質が多く発現し、燃焼試験時に綿着火を生じるなど、難燃性に悪影響を及ぼすほか、成形性への悪影響も発現するため、好ましくない。環境への有用性、特に、大気中の二酸化炭素の固定・貯蔵効果の観点から、ポリ乳酸樹脂を25〜70質量部含有することが、特に好ましい。
本発明の樹脂組成物には、耐衝撃性の付与と、良好な成形性を得ることを目的として、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(ABS樹脂)を含有する。
ABS樹脂としては、市販の種々のグレードを含め、あらゆるタイプのものを用いることができる。
ABS樹脂の含有量は、樹脂組成物全量を100質量部として、4〜74質量部であることが必要であり、好ましくは4〜65質量部である。上記含有量が4質量部未満では、耐衝撃性や成形性における効果の発現が不十分である。一方、上記含有量が74質量部を超えると、後述の難燃剤やガラス繊維などの他の原料の含有量が大きく制限され、難燃性や耐熱性に悪影響を及ぼす他、石油由来樹脂であるABS樹脂が組成物の大部分を占めることによる、低環境負荷においてのデメリットが大きいという問題がある。
本発明においては、難燃性能に優れた難燃剤を含有することにより、ABS樹脂中のブタジエン成分の有する高い燃焼性を抑制することができる。よって、ABS樹脂による良好な耐衝撃性と成形性とを付与するという効果と、難燃剤による高い難燃性を両立させることができる。
本発明に用いられる難燃剤は、難燃性効果、環境負荷の観点から、リン系難燃剤であることが好ましい。リン系難燃剤としては、具体的には、有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などが挙げられる。なかでも、難燃性効果や耐熱性の観点から、有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤が好ましい。有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤を用いることにより、燃焼性の高いポリ乳酸樹脂が多く含有されている場合でも、効果的に燃焼を抑制することが可能となる。加えて、耐熱性も向上する。なお、含ハロゲン系難燃剤は難燃性効果には優れるものの、環境に対する負荷が大きいため、本発明の目的からすると好ましくない。
有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤のなかでも、難燃性効果の観点から、特に、ポリリン酸メラミン系化合物が配合された有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤が好ましい。
有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤は、市販品を好適に使用することができ、例えば、クラリアント社製「エクソリットOP」シリーズなどが挙げられる。
また、ポリリン酸メラミン系化合物が配合された有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤としては、例えば、クラリアント社製「エクソリットOP1312」などが挙げられる。なお、ポリリン酸メラミン系化合物が配合された有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤を用いる場合は、別途、さらにポリリン酸メラミン系難燃剤を併用してもよい。
難燃剤の含有量は、樹脂組成物100質量部のうち、5〜40質量部であることが必要であり、好ましくは、10〜35質量部である。上記含有量が5質量部未満では、十分な難燃性が得られないため好ましくない。また、40質量部を超えると、耐衝撃性などの物性性能を低下させるだけではなく、押出時の操業性も低下させるため、好ましくない。
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の堅牢性を増加させ耐熱性を改善すること、および成形時の取り出しの際の剛性を向上させ良好な成形作業性を得ることを目的として、ガラス繊維が含有される。
ガラス繊維としては、あらゆる形状のものを用いることができる。具体的な形状としては、通常の丸断面を有するものの他、扁平断面を有するものが挙げられる。樹脂組成物に含有される成分の種類や、その含有量にも影響されるが、扁平断面を有するガラス繊維を用いることで、より高い耐衝撃性付与効果が得られる場合があるため、好ましい。
ガラス繊維の含有量は、樹脂組成物全量を100質量部として、8〜70質量部であることが必要であり、好ましくは15〜55質量部である。8質量部未満では、耐熱性などの必要な効果を得ることができないだけでなく、燃焼時に燃焼粒が滴下しやすくなり、十分な難燃性を得ることが困難となる。一方、70質量部を超えて含有した場合、混練が困難となり、成形品外観を悪化させるだけではなく、他の必要成分の含有量が大きく制約されることとなり、本発明の目的を満足することができない。
ガラス繊維は、市販品を好適に用いることができ、例えば、日東紡社製「CGS3PA830S」(扁平断面を有するガラス繊維)、オーエンスコーニング社製「FT592」(丸断面を有するガラス繊維)などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の耐久性を向上させ、その難燃性および耐熱性を、長期間、安定的に維持することを目的として、カルボジイミド系加水分解抑制剤を含有することが好ましい。
カルボジイミド系加水分解抑制剤としては、カルボジイミド化合物を用いることができる。
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができ、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するものであれば特に限定されない。カルボジイミド化合物としては、例えば、脂肪族モノカルボジイミド、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族モノカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。さらに、分子内に各種複素環、あるいは、各種官能基を持つものであっても構わない。
カルボジイミド化合物を製造する方法としては、特に限定されず、イソシアネート化合物を原料に製造する方法など、多くの方法が挙げられる。
カルボジイミド化合物としては、イソシアネート基を分子内に有するカルボジイミド化合物、およびイソシアネート基を分子内に有していないカルボジイミド化合物のどちらも区別無く用いることができる。
カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格としては、N,N’−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N、N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、4,4’−ジシクロへキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N’−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなど、多くのカルボジイミド骨格が挙げられる。
カルボジイミド化合物の具体例としては、多くのものが挙げられるが、例えば、脂環族モノカルボジイミドとしては、ジシクロへキシルカルボジイミドなどが挙げられる。脂環族ポリカルボジイミドとしては、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族モノカルボジイミドとしては、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族ポリカルボジイミドとしては、フェニレン−p−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミド、1,3,5−トリイソプロピル−フェニレン−2,4−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。上記のカルボジイミド化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、ポリカルボジイミドにおいては、その分子の両端あるいは分子中の任意の部分が、イソシアネート基等の官能基を有していてもよいし、または、分子鎖が分岐しているなど他の部位と異なる分子構造となっていてもよい。
カルボジイミド系加水分解抑制剤は、単一で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
カルボジイミド系加水分解抑制剤の含有量は、樹脂組成物全量を100質量部として、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。含有量が0.1質量部未満では、目的の耐久性が得られない場合がある。一方、10質量部を超えると、該樹脂組成物から得られた成形体の色調が色変するなど外観が損なわれる場合があり、さらに、コスト的にも不利である。
ポリ乳酸樹脂、ABS樹脂、難燃剤およびカルボジイミド系加水分解抑制剤を混合する手段は特に限定されず、一軸または二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態を良好にする観点からは、二軸の押出機を使用することが好ましい。
溶融混練する際の混練温度は、ポリ乳酸樹脂やABS樹脂の融点との兼ね合いから、170〜260℃が好ましく、より好ましくは180〜250℃である。混練温度が170度未満であると混練や反応が不十分となる場合があり、一方、260℃を超えるとポリ乳酸樹脂やABS樹脂が分解したり、着色が起こったりする場合がある。
溶融混練する際の混練時間は、20秒〜30分が好ましい。混練時間が20秒より短いと混練や反応が不十分となる場合があり、一方、30分を超えるとポリ乳酸樹脂やABS樹脂が分解したり、着色が起こったりする場合がある。
なお、本発明の樹脂組成物に含有される原料のうち、ガラス繊維については、溶融混練時の繊維切断による性能低下を抑えるために、押出機の途中から供給することが好ましい。
本発明の組成物の原料のうち、ポリ乳酸以外の各成分の目的・効果を下記に示す。
ABS樹脂は、耐衝撃性や成形性を向上させる役割を担う。
難燃剤は、難燃性を向上させ、ポリ乳酸樹脂やABS樹脂の高燃焼性を抑制する役割を担う。
ガラス繊維は、難燃性を向上させ、燃焼試験時における、滴下・面着火を抑制する役割を担う。また、樹脂組成物の堅牢性を増加させ、耐熱性を向上させる。さらに、成形時において成形体を取り出す際の剛性を向上させ、成形作業性を向上させる。
カルボジイミド系加水分解抑制剤は、耐湿熱性を向上させる役割を担う。
本発明の樹脂組成物においては、上記の各成分の含有量を調整することにより、各成分のそれぞれの効果を十分に発現させることができ、多くの性能を同時に満足することが可能となった。
本発明の樹脂組成物においては、その効果を損なわない範囲内で、目的に応じて、上記以外の各種添加剤が含有されていてもよい。例えば、樹脂組成物に強化剤を配合することにより、耐衝撃性をさらに向上させることができる。また、可塑剤を配合することにより、ポリ乳酸樹脂とABS樹脂との相溶化を促進させることができ、さらに、混練時に原料を供給する際に、供給原料の分級を防止することができる。さらにまた、樹脂組成物に酸化防止剤を配合することにより、樹脂組成物の耐久性がより向上する。
強化剤としては、例えば、アクリル変性系化合物が挙げられる。可塑剤としては、例えば、脂肪酸系やグリセリン系等の各種エステルが例示される。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、これら以外にも、増粘剤、結晶核剤、顔料、耐候剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。
なお、本発明の樹脂組成物に、上記の添加剤を配合する方法は、特に制限されない。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の公知の成形方法により、各種成形体とすることができる。なかでも、射出成形法を採用することが好ましい。射出成形法としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等を採用できる。本発明において、好適な射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度はポリ乳酸樹脂の融点(Tm)または流動開始温度以上であり、好ましくは190〜270℃の範囲である。シリンダ温度が低すぎると、樹脂の流動性の低下により成形不良や装置の過負荷に陥りやすい。逆にシリンダ温度が高すぎるとポリ乳酸樹脂が分解し、成形体の強度低下、着色等の問題が発生するため好ましくない。
また、本発明において、射出成形の際の金型温度については、樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、好ましくは(Tg−20)℃以下である。金型温度が低すぎると、成形品にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすくなったりする場合がある。逆に金型温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、樹脂組成物が着色したりする等の問題が発生するため好ましくない。
本発明の樹脂組成物を用いた成形体の具体例としては、パソコン周辺の各種部品および筐体、携帯電話部品および筐体、その他OA機器部品等の電化製品用樹脂部品;バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品等が挙げられる。また、フィルム、シート、中空成形品などとすることもできる。
そのうち、耐熱性、耐衝撃性、難燃性、耐湿熱性を必要とされる部品において、本発明の樹脂組成物は特に有用である。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
[原料]
以下に、実施例及び比較例において用いた各種原料を示す。
(1)ポリ乳酸樹脂
カーギルダウ社製、商品名「3001D」(以下、単に「3001D」と称する場合がある)[D体含有率:1.4mol%、融点:170℃、MFR:10g/10分(190℃、荷重21.2N)]
(2)ABS樹脂
テクノポリマー社製、商品名「ABS170」(以下、単に「ABS170」と称する場合がある)
(3)難燃剤
ポリリン酸メラミン系化合物が配合された有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤:クラリアント社製、商品名「OP1312」(以下、単に「OP1312」と称する場合がある)
ポリリン酸メラミン系化合物が配合されていない有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤:クラリアント社製、商品名「OP1230」(以下、単に「OP1230」と称する場合がある)
ポリリン酸メラミン系難燃剤:三和ケミカル社製、商品名「MPP−B」(以下、単に「MPP−B」と称する場合がある)
ポリリン酸アンモニウム系難燃剤:クラリアント社製、商品名「AP422」(以下、単に「AP422」と称する場合がある)
メラミンシアヌレート系難燃剤:日産化学社製、商品名「MC4000」(以下、単に「MC4000」と称する場合がある)
(4)ガラス繊維
扁平断面を有するガラス繊維:日東紡社製、商品名「CGS3PA830S」(以下、単に「CGS3PA830S」と称する場合がある)
丸断面を有するガラス繊維:オーエンスコーニング社製、商品名「FT592」(以下、単に「FT592」と称する場合がある)
(5)カルボジイミド系加水分解抑制剤
イソシアネート変性カルボジイミド:日清紡ケミカル社製、商品名「LA−1」(以下、単に「LA−1」と称する場合がある)
N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド:松本油脂社製、商品名「EN160」(以下、単に「EN160」と称する場合がある)
(6)その他の添加剤
強化剤:東亞合成社製、商品名「レゼダGP301」(以下、単に「GP301」と称する場合がある)
可塑剤:太陽化学社製、商品名「VR01」(以下、単に「VR01」と称する場合がある)
酸化防止剤:アデカ社製、商品名「PEP36」(以下、単に「PEP36」と称する場合がある)
[評価方法]
以下に、実施例及び比較例の評価に用いた測定法を示す。
(1)耐熱性
実施例および比較例で得られた試験片を用いて、ISO 75−1に従い、荷重1.8MPaでの荷重たわみ温度を測定した。下記の基準で評価した。
◎:荷重たわみ温度が120℃を超える。
○:荷重たわみ温度が110℃以上120℃以下である。
×:荷重たわみ温度が110℃未満である。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものとした。
(2)難燃性
UL94規格に従って測定した。試験片は厚み1.6mmのものを用いた。燃焼試験時にドリップ(炎の滴下)や綿着火の見られなかったものについて、燃焼テストの際の各試験片における残炎時間(接炎1回目の時間と接炎2回目の時間の合計)の平均を算出し、以下の基準で評価した。
本発明においては、残炎時間の平均が25秒未満であることが必要であり、20秒未満が好ましく、15秒未満であるものが特に好ましいものである。
(3)曲げ破断歪
ISO 178に従って、曲げ破断歪を測定した。以下の基準で評価した。
◎:曲げ破断歪が3を超える。
○:曲げ破断歪が2以上3以下である。
×:曲げ破断歪が2未満である。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(4)曲げ強度
ISO 178に従って、曲げ強度を測定した。以下の基準で評価した。
◎:曲げ強度が220MPaを超える。
○:曲げ強度が200MPa以上220MPa以下である。
×:曲げ強度が200MPa未満である。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(5)耐湿熱性(曲げ破断歪)
試験片を2本用意し、1本は上記(3)と同様の方法で曲げ破断歪を測定した。もう1本は温度60℃、湿度95%RHの環境下で700時間放置して湿熱処理を施し、上記(3)と同様の測定方法で曲げ破断歪(湿熱処理後の曲げ破談歪)を測定した。以下の式により、曲げ破断歪保持率を算出した。
(曲げ破断歪保持率)(単位:%)=(湿熱処理後の曲げ破断歪)/(湿熱処理前の曲げ破断歪)×100
以下の基準で評価した。
◎:曲げ強度保持率が60%を超える。
○:曲げ強度保持率が50%以上60%以下である。
×:曲げ強度保持率が50%未満である。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(6)耐湿熱性(曲げ強度)
試験片を2本用意し、1本は上記(4)と同様の方法で曲げ強度を測定した。もう1本は温度60℃、湿度95%RHの環境下で700時間放置して湿熱処理を施し、上記(4)と同様の測定方法で曲げ強度(湿熱処理後の曲げ強度)を測定した。以下の式により、曲げ強度保持率を算出した。
(曲げ強度保持率)(単位:%)=(湿熱処理後の曲げ強度)/(湿熱処理前の曲げ強度)×100
以下の基準で評価した。
◎:曲げ強度保持率が60%を超える。
○:曲げ強度保持率が50%以上60%以下である。
×:曲げ強度保持率が50%未満である。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(7)耐衝撃性
ISO 179に従い、シャルピー衝撃値を測定した。以下の基準で評価した。
◎:シャルピー衝撃値が12kJ/mを超える。
○:シャルピー衝撃値が10kJ/m以上12kJ/m以下である。
×:シャルピー衝撃値が10kJ/m未満である。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものとした。
(8)成形性
試験片成形時において、射出時間と射出後に圧力をかけた時間の合計を15秒とし、その後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの所要時間(秒)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:所要時間が50秒未満である。
○:所要時間が50秒以上60秒以下である。
×:所要時間が60秒を超える。
本発明においては、○以上であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(実施例1)
樹脂組成物100質量部のうち、ポリ乳酸樹脂として3001Dを25.5質量部、ABS樹脂としてABS170を10質量部、難燃剤としてOP1312を15.5質量部およびMPP−Bを1.5質量部、カルボジイミド系加水分解抑制剤としてLA−1を1.0質量部およびEN160を2.3質量部、強化剤としてGP301を1.6質量部、可塑剤としてVR01を0.1質量部、酸化防止剤としてPEP36を0.1質量部、をドライブレンドして二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM26SS型」)の根元供給口から供給し、バレル温度220℃、スクリュー回転数190rpm、吐出速度15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出を実施した。この際、ガラス繊維としてCGS3PA830Sを43質量部シリンダ内にサイドから供給した。押出機先端から吐出された樹脂をペレット状にカッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを、乾燥機(松井製作所製 熱風乾燥機P0−80)を用いて90℃で12時間熱風乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製 IS−80G型射出成形機)を用いて、金型表面温度を60℃に調整しながら、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製し、各種評価を実施した。評価結果を表1に示す。
Figure 2011144210
(実施例2)
実施例1における各原料の有無、含有量、種類を変えて、実施例1と同様にして、樹脂組成物のペレットを得、これを射出成形して各種評価を実施した。ただし、ガラス繊維も他の原料とともにドライブレンドし、二軸押出機の根元供給口から供給した。この結果を表1に示す。
(実施例3〜11)、(比較例1〜6)
実施例1における各原料の有無、含有量、種類を変えて、実施例1と同様にして、樹脂組成物のペレットを得、これを射出成形して各種評価を実施した。この結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜11においては、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、曲げ特性、耐湿熱性、成形性に優れていた。
実施例1および2では、難燃剤として、ポリリン酸メラミン系化合物が配合された有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤を用いていたため、難燃性に特に優れるものであった。
実施例2では、ガラス繊維を二軸押出機の途中ではなく、根元から供給したため、耐衝撃性において改善の余地を残す結果となった。
実施例3では、難燃剤の含有量が好ましい範囲を超えていたため、成形性に改善の余地を残す結果となった。さらに、難燃剤としてリン系難燃剤を用いなかったため、難燃性に改善の余地を残す結果となった。
実施例4では、難燃剤としてリン系難燃剤を用いたが、有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤を用いなかったため、難燃性に改善の余地を残す結果となった。さらに、カルボジイミド系加水分解抑制剤の含有量が好ましい範囲に達していなかったため、耐湿熱性に改善の余地を残す結果となった。
実施例5では、ガラス繊維の含有量が好ましい範囲を超えていたため、曲げ特性、外観などに改善の余地を残す結果となった。また、カルボジイミド系加水分解抑制剤を含有していないため、他の実施例と比較して、特に、耐湿熱性に改善の余地を残す結果となった。
実施例6、9、11においては、難燃剤の含有量が好ましい範囲に達していなかったため、難燃性に改善の余地を残す結果となった。
実施例8および9では、ガラス繊維配合量が好ましい範囲を下回っていたため、耐熱性に改善の余地を残す結果となった。
実施例9では、加水分解抑制剤の配合量が好ましい範囲を下回っていたため、耐湿熱性に改善の余地を残す結果となった。
実施例10では、難燃剤の配合量が好ましい範囲を超えていたため、成形性、曲げ特性、耐衝撃性に改善の余地を残す結果となった。
比較例1においては、ABS樹脂の含有量が過少であったため、耐衝撃性や成形性に劣るものであった。
比較例2においては、難燃剤の含有量が過少であったため、難燃性に劣る結果となった。
比較例3においては、難燃剤の含有量が過多であったため、耐衝撃性や曲げ物性に劣っていた。
比較例4においては、ガラス繊維の含有量が過少であったため、難燃性および耐熱性に劣っていた。
比較例5においては、ガラス繊維の含有量が過多であったため、ノズル部での詰まりが生じ、押出が困難であり、樹脂組成物のペレットを得ることができなかった。
比較例6においては、ポリ乳酸樹脂の含有量が過多であったため、成形性に劣るものであった。また、難燃性試験においても、炎の滴下や綿着火が起こり、難燃性に劣る結果となった。

Claims (6)

  1. 全100質量部のうち、ポリ乳酸樹脂10〜70質量部、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂4〜74質量部、難燃剤5〜40質量部、ガラス繊維8〜70質量部を含むことを特徴とする樹脂組成物。
  2. 難燃剤がリン系難燃剤であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. リン系難燃剤が有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤が、ポリリン酸メラミン系化合物を含有したものであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 全100質量部のうち、カルボジイミド系加水分解抑制剤を0.1〜10質量部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を製造する方法であって、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、難燃剤を溶融混練する途中において、ガラス繊維を供給することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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